◆「特重」問題とは何か

「特定重大事故等対処施設」略称「特重」。現在稼動している原発も「新規制基準適合性審査」の審査書が決定し再稼働準備中の東海第二や柏崎刈羽6、7号機、女川原発2号機も、どこも完成していない。これが完成しない限り、本来は原発を動かすことは出来ないはずだった。

「特重」は既存の原発とは別棟として建てられる。そこには原発の中央制御室を代替できる設備として、原子炉を直接コントロールできる制御盤等がある緊急時制御室、送電線からではなく自立的に発電できる発電設備、格納容器に水を送るスプレイポンプ、溶融した炉心を冷却する水を送るポンプ、そしてこれらの水源(淡水タンク、枯渇する場合は海から取水)を設置する。これが「特重」の主な役目だ。

「特重」とは、いかなる考え方から出てきたのか。

「『特定』重大事故等対処施設」とは、重大事故が起きている状況下でさらに『特定』のシナリオに乗って拡大することを防止するために対策することであり「特定重大事故等対処施設」として準備するよう法令上(原子炉等規制法第43条)で義務づけた。「テロ対策」のみをするような設備ではない。

新規制基準では「重大事故対策」が必須であり、それをさらに超えるシナリオ、予測困難な事態を想定しなければならない。そのことから「重大事故」の発展として「特定重大事故」がある。テロ対策はその中の1つに過ぎない。

現在重大事故になり得るものとして想定されているのは「地震」「津波」に加え、「火山噴火」「竜巻」「大規模火災」「内部溢水」などがある。

これらが発生し、原子炉冷却用のシステムが使えなくなり、外部電源はもちろん非常用電源も全て失って、炉心溶融へと進行し福島第一原発事故への道を辿る恐れが高まった場合に、代替冷却、拡散防止対策を実行できるように「特重」が設けられる。

なお、「テロ対策」としても機能させるかの法令上の記載、国や事業者の説明があり、マスコミでもそのように記載しているが、特重を対テロ施設、設備として活用できる証拠は何処にも示されていない。国や事業者は「テロ対策施設、設備は相手(テロリスト?)に手の内を晒すわけにはいかないから「秘密」などともっともらしいことを言うが、これは説明責任を回避するための方便に過ぎない。

特重については、規制委が2015年11月13日に出した文書に考え方が書かれている。

「特重施設等は、発電用原子炉施設について、本体施設等(特重施設等以外の施設及び設備をいう)によって重大事故等対策に必要な機能を満たした上で、その信頼性向上のためのバックアップ対策として求められるものである。」現状の重大事故対策では不足しているので、重大事故時においても大量の放射能を格納容器の外に出さないなどの規制基準を満たす「信頼性向上」のために求められている。

更田豊志委員長は「施設が完成し、実際に使えることがきちんと示せて初めてOKとなる」としているが、私たちに具体的な実証をしないまま理解を求められても認めるわけにはいかない。

「対テロ施設」が必要な状況ならば、テロ攻撃を受けるリスクのあるものを作るべきではない。現実に航空機の故意による衝突による攻撃があり得ると想定しているのであれば、そのような攻撃を受けた場合は「特重」があろうとなかろうと、結果に大きな違いはない。なぜならば「特重」の機能を使う想定をしているケースでは、炉心が溶融し、建屋にも大きな損傷が発生して格納容器から大量の放射性物質が拡散し続ける中、放水砲で大量の水を掛けてチリをたたき落とすことを「最終防衛」としている。この程度で大量放出を本気で止められると信じる人はいない。

大規模な土木工事を実施し、1000億円以上(川内原発は2基分で2420億円)もの費用を掛けても、福島第一原発事故を超える事故にならないような対策をすることはできない。ましてテロ対策としての特重では、攻撃内容、規模などが想定不可能なので、その実効性についての評価も不可能だ。

◎[参考資料]原子力規制委員会が2015年11月13日に出した特重に関する文書

◆全原発へのフィルタ・ベント設置

 新規制基準では「フィルタ・ベント」設置が全原発で要求されている。格納容器から配管を出して高圧になった蒸気を外へ抜く装置だ。原発サイトによっては、これを「特重」に分類するか、一般の重大事故等対処設備に分類するか違いがある。東海第二や柏崎刈羽原発の場合は、これを一般の重大事故等対処設備に分類しており、再稼働するときには必須なので新規制基準適合性審査前に工事を行っている。

◎[参考図版]柏崎刈羽原発のフィルタベント設備概念図(東京電力)

 

◎[参考図版]高浜発電所1、2号機の特定重大事故等対処施設について(関西電力)

一方、PWR(加圧水型炉)の9原子炉(大飯・高浜・玄海・川内・伊方など)の場合、「フィルタ・ベント」装置は「特重」に分類されているので完成するのは特重設置と同時で良いとされる。

「フィルタ・ベント」を再稼働後で良いとする理由は、炉心溶融が発生し放射性物質や水素ガスが充満するような状況で、格納容器が危機的な場合でも、BWRよりもPWRの格納容器の体積が大きく破壊されにくいとしているからだ。しかし事故の進行具合で、いくらでも変わり得るところである。大きな格納容器のPWRの場合はBWRよりも耐圧(格納容器が圧力に耐える力)が低いという問題もあり「フィルタ・ベント」を後回しに出来る理由にも疑問がある。

フィルタ・ベントには原発の設計思想と運用上の問題もある。ベントは福島第一原発にもあった。しかしこれは3号機では使用できたと見られるが、2号機では使用できなかったと考えられている。そのため2号機の格納容器は破壊され、放射性物質が大量に放出されている。

福島第一原発のベント装置は後から排気筒に配管を伸ばして取り付けたもので、電源がなくなると使用できなくなり、さらにバルブ開放は人が格納容器直ぐそばに行かなければならなかった。このため大量被曝覚悟の作業になってしまった。その反省でベント装置を独立して設置し、制御室からの遠隔操作で作動可能としている。

しかし本来は最後の砦として密封し続けるべき格納容器に予め穴を開けるような行為には問題がある。また、ベント装置の間には水槽があり、一端水の中を気体が通過することで放射性物質を取り除き排気するが、ここで大きく除去できるのは水に溶けやすいヨウ素や水で冷やされれば固体になるセシウムなど。希ガスのクリプトン、キセノンは全量放出される。それが敷地内空間に滞留した場合、空間線量が急速に高くなり作業員が被曝して活動できなくなる恐れがある。また、ベント装置自体が地震などで損傷を受けて破壊されれば、格納容器に穴を開けたことと同様の事態になりかねない。

こういったことにならない運用を問うても、規制委も事業者も「テロ対策設備」を理由にまともな回答はしない。実効性が証明されない設備を信じることなどできない。

◆特重施設全般の問題点

「特重」には格納容器スプレイ・圧力容器注水・格納容器の真下のペデスタル注水という3つの注水ラインがあるとされる。そこに水源から特重に設置されたポンプを使って水を入れる。

建屋は100m以上離れた場所にあり、特重施設との間の洞道を介して注水する。特重と原子炉建屋を離したのは、航空機が意図的にぶつかってくるような場合を想定しているからだという。これで特重施設が生き残るから重大な炉心溶融に陥ったとしても原子炉建屋に注水できる、というのだ。

新しい注水ラインを100mも引き延ばしたため、複雑な問題が発生する。まず、圧力容器への注水ラインを何処に取り付けるのかだ。既に圧力容器には通常の給水ラインに加え、非常用や水位計など様々な配管が繋がっている。

新たに圧力容器に取り付けるような改造工事は構造上不可能。従って既存の給水ラインに繋がる配管のどれかに接続するしかない。その配管が破断するなど機能を失っていれば、このラインも機能しない。信頼性はその程度である。

次に、圧力容器の他にもペデスタル(格納容器下部)への注水も行う想定だが、切り替えがどのように行われるのかを含め、運用が明確ではない。圧力容器は沸騰水型軽水炉で70気圧、加圧水型軽水炉で130気圧もあるので、高圧注入でないと入らないが、ペデルタルは数気圧から10気圧程度で入るだろう。どちらに何時注水するかの判断は難しい。

さらに、ペデスタル注水は別の問題も引き起こす。それは水蒸気爆発。最大2800度の溶融燃料を冷やすために水を張ると、落下した時に水蒸気爆発を引き起こさないか。事業者も国も何度も延期している。直近の計画では、2020年度末(2021年3月末)までに対策を完了するとしていた。

東北電力によると、女川2再稼働に必要な改修工事計画を規制委との協議を踏まえ、見直したという。その結果、工事全体の計画が遅れ、2022年度中(2023年3月期)まで後ろ送りとなった。

原因について日本経済新聞は5月4日の記事で次のように指摘している。

「2月に原子力規制委員会の安全審査に合格した後に精査したところ、重機などを置く場所などが同時並行では確保できないことが分かった。それぞれの工事を順番に行うことで再稼働が当初見込みより最短で2年遅れる。東北電の見通しの甘さが問われそうだ」。

東北電力は、2013年12月に規制委に対し女川2号(82.5万kW沸騰水型軽水炉)の新規制基準適合性審査を申請し、規制委は新基準に適合する対策がされていると判断した。審査書が決定され、再稼働への道が開かれた。今後は、対策工事の完了と地元自否定するが、これも「絶対に起きない」という保証はない。結局「背に腹は替えられない」とばかりに設計したとしか思えない。

欧州の新型加圧水型軽水炉「EPR」では、直接水で冷却せず回りを水で冷却できる「コアキャッチャー」という溶融燃料の回収装置を組み込んでいる。

これならば水蒸気爆発を極力抑制できると思われる。

◆女川原発2号機の工事に遅れ

2020年2月26日に規制委が原子炉等規制法に基づく新規制基準適合性審査の審査書を決定した女川原発2号機(以下、女川2)について、東北電力は4月30日、安全対策工事完了が予定より2年遅れ、2023年3月になると発表した。

東北電力は女川2の耐震補強や津波から発電所を守るための高さ29m、長さ800mの防潮堤建設などで約3400億円の対策費を見込んでいる。同社は当初、この工事を2017年4月までに完了させる予定だったが治体の住民との合意が必要となっている。しかし安全対策工事は進んでいない。被災原発として反対の声は強い。再稼働へのハードルは極めて高い。

女川原発は東日本大震災で被災した原発だ。揺れと共に耐震壁にも1130箇所にも上る重大な損傷を受け、さらに1号機のタービン建屋では地震直後に大規模火災(高エネルギー・アーク放電火災)が発生、鎮火まで半日を要し冷温停止にも支障を来した。

外部電源や非常用ディーゼル発電機が遮断や破壊されていたら福島第一原発事故と同様の事態になっていた可能性は高く、そうなったら津波で避難していた地元住民を多数巻き込んで大惨事になっていたと思われる。

たまたま津波よりも高い位置に設置されていたとはいえ、それ以上の津波が来ない保証もなく、過酷事故も偶然回避できただけの、結果オーライといえる。

しかしながら、その検証も十分されないまま再稼働へと突き進む姿は異常だ。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)さん

たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。著書(共著)は『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像』(明石書店 2015年)等多数。

6月11日発売開始!〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

『NO NUKES voice』Vol.24
紙の爆弾2020年7月号増刊
2020年6月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/148ページ

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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

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◆中部電力とJR東海──東海道新幹線の3倍以上の電力を消費する国策リニア新幹線

浜岡原発再稼働については目立った具体的動きはない。従って県民の再稼働に対する関心は川勝平太静岡県知事の度々の慎重論発言もあって、年々低下しているのが現状である。現在の県政における最大の課題は、新コロナ禍(5月5日現在)であり、JR東海が建設中のリニア新幹線問題である。リニア新幹線は、東海道新幹線の3倍以上の電力を消費すると言われ、その電源として浜岡原発再稼働が必要であるとのことから全くリニアと浜岡原発は無関係とはいえないが、現状ではその関係を中電もJR東海も表面には出していない。

浜岡再稼働への動きが低いと言っても全く無いわけではない。中部電力の勝野社長は、地元新聞の年頭のインタビューで「正念場を迎えている」「最大の課題である基準地震動と基準津波が決まれば、先行他社の工程に乗って、スムースに進む」としている。しかし、2月4日の静岡地裁での口頭弁論では、「原告主張に対する反論はなく、主張も何ら科学的論拠がない」と弁護団は批判している。浜岡原発が、南海トラフ巨大地震の影響を最も受けやすい原発であり、その巨大地震の規模も予想できない中での基準地震動と基準津波など意味があるはずもない。世界で最も危険な原発であることに変わりはない。中部電力は、再稼働へ向けての直球は投げてはいないが、講演会(中部原子力懇談会主催など)、原発見学会、マスコミなどにより宣伝を行っている。

◆「原発」を争点にしなかった御前崎市の市長選挙、市議会選挙

このような中で浜岡原発立地市である御前崎市の市長選挙、市議会選挙が4月12日投開票のもと行われた。原発に反対する市民運動団体、それに対する推進派の中部電力などの注目を集めていたのであるが、「原発」問題は争点として市長戦においても市議選においても全く俎上に上らなかったのである。候補者が原発問題から逃げ出してしまったのである。結果は、反原発の議員は2人、市長は口には出さねど再稼働推進である。共産党は、もともと基礎票が足りない中2人を立候補させたが共倒れとなった。

市議選には、昨年12月に行われた大規模産廃処理施設建設を巡っての住民投票の実施がある。大規模産廃処理施設は、すでに市長(4月選挙で再選)が業者との間に議会の同意もなく許可を与えたものであるが、市民の間から反対運動が起こり、それが予想以上の運動に発展し最終的に住民投票に持ち込まれ、12月に実施されたものである。結果は、圧倒的反対多数(90.20%)で産廃処理施設が拒否された(投票率60.81%)。この背景には産廃施設が、低レベルの核のゴミ処理を狙うものとしての市民が警戒したものの結果ではないか。

今まで御前崎市民は、こと原発問題となると口をつぐみ思うことがいえないことを強いられてきた。市議会も一部の議員に牛耳られ自由にものが言えない雰囲気の中で推移してきた。産廃住民投票は、過去の閉塞状態を打ち破ったといえる。従って、共産党が2人候補者を立てたのもうなずける。

市長選挙では反対運動を進めてきた女性候補が立候補し従来と比較すると大幅に票を伸ばしたが、選挙時点では産廃反対に転じていた現職の市長には及ばず惜敗した。産廃賛成派として議会を牛耳り、市長おも上回る力を持っていた(?)グループは、議員数、票数を大幅に減らした。この点から見れば多少御前崎市政も僅かながらも民主化が進んだといえる。しかし、御前崎市の財政状況は極めて悪く、過去に箱物を作りすぎた付けが大きな負担となっている。この点を今後再稼働推進の大きな宣伝材料として市民に流布されることが予想され、如何にしてここを突破していくのか我が方にとっても大きな課題となっている。

◆全機停止9年目の浜岡原発の再稼働とリニアの繋がり

浜岡原発は、福島事故当時の首相菅直人の要請によって全機が停止し今年の5月で9年目を迎えた。マスコミは毎年5月になると周辺市町など首長に対し浜岡再稼働についてのアンケートを行っているが、5月12日発行の朝日新聞記事のアンケ結果では、31Km圏内(静岡県では30圏ではなく31Km圏としている)の11市町のうち4市長が反対、賛成はゼロと出たがこの結果は昨年までのそれと変わりは無い。御前崎市長は、「議論する段階ではない」と逃げに回った。知事は5月12日の記者会見で、「再稼働」して事故が起きたら大変なことになる。現状を知れば動かない。動くことはない」と述べたとしている(毎日新聞)。

浜岡再稼働と関連があるのかもしれないリニア問題は、県・大井川水系の市町とJR東海が真っ向から対立し、JRはトンネル工事に着手できずこのままでは予定の開通に間に合わないといわれている。そこで国交省が調停に乗り出し有識者会議なるものを設置しそこでのJR東海の金子社長が「県は実現困難な課題を示している」と発言。これに対し県知事は、関係自治体(多数が浜岡原発30キロ圏内)と連盟で抗議文を国交省に提出し益々対立を深めることとなった。リニアのトンネルを掘ることにより大井川の地下水流が変わり下流域は水不足となることはほぼ確実視されている。県と関係市は、これを許さず当然のことながら現状通り全量確保せよと主張している。このことを指して「実現困難な課題」と金子社長が発言した。もともと国交省のつくった「有識者会議」など中立であるわけがなく、事実県の推薦する有識者は一人も入らなかった。原発と同様にリニアは国策、そしてJR東海の2代目葛西敬之元社長はアベのお友達であり「有識者会議」が静岡県民を無視することはほぼ間違いないだろう。

川勝県知事は、浜再稼働再稼働について「県民投票で」と度々発言しており、そこへ国策であるリニア問題が絡み今後原発問題がどのように展開していくのか、情勢分析をしっかりし、的確な方針で反・脱原発を県民に浸透させていかねばならない。ちなみに、来年7月には知事選挙がある。

▼鈴木卓馬(すずき・たくま)
浜岡原発を考える静岡ネットワーク(浜ネット)代表。浜ネットは1997年結成、個人会員約300名、団体(労働組合)5。代表の鈴木卓馬は、3代目、全労協系労組出身。他に「浜岡原発とめます本訴の会」(会員約500名)を2002年立ち上げ、現在は東京高裁で運転差し止め訴訟継続中。

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滋賀医科大学医学部附属病院が、国立がん研究センターが公表したプレスリリースを改ざんして、6月11日に、同病院のウェブサイトに掲載していたことが分かった。

この資料は、国立がん研究センターが公表した時点では、1ページに満たない短い資料だった。ところが滋賀医科大は、これに約2ページ分の情報を複数の資料から抜粋して再構成し、3ページに編集した。そして、これら全部が国立がん研究センターによるプレスリリースであるかのように装って掲載したのである。

何が目的でこのような大がかりな改ざん行為に及んだのだろうか。既報したように、滋賀医科大病院は、岡本圭生医師による高度な小線源治療(前立腺癌が対象)を年内で中止して、岡本医師を病院から追放しようとしている。それを正当化するためには岡本メソッドが、他の癌治療と比較して、継続するだけのメリットがないという世論を形成することが必要になる。そこで権威のある国立がん研究センターのロゴが入ったプレスリリースを改ざんして、自分たちの目的に沿った内容に改ざんしたである。

具体的な手口は、次のYouTubeで紹介している。滋賀医科大病院に問い合わせた際の音声も、そのまま収録した。


◎[参考動画]滋賀医科大学のフェイク(安江博 2019/6/26公開)
https://www.youtube.com/watch?v=w3rPzAk9G3E

◆がんセンターの資料は1ページ目だけ

フリーランス記者の田所敏夫さんらが、この改ざんについて、国立がん研究センターへ問い合わせたところ、YouTubeで示されている部分のみが同センターが発表した部分であることが判明した。

国立がん研究センターは、元々のプレスリリースと改ざん部分の区別について、田所さんに対し、次のように文書で回答している。

「お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
 当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。」

つまり約2ページ分を滋賀医科大病院が我田引水に「編集」して、元々のプレスリリースを含む3ページの資料に編集し、あたかもそれが国立がん研究センターが発表したものであるかのように装って、病院のウェブサイトに掲載したのである。

改ざんされた資料は次のURLでアクセスできる。オリジナル(国立がんセンターのプレスリリース)と比較してほしい。

◎[参考資料]改ざんされたプレスリリース
https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/cms/file.php?action_disp&id=1156&fid=2013

 

改ざんされたプレスリリース

◆何が加筆・編集されたのか?
 
滋賀医科大学病院が改ざん・編集により印象操作を企てたのは、前立腺癌に対する4つの治療法における5年後の非再発率である。それによると次のような成績になっている。

・ロボット支援前立腺全摘除術(弘前大学):97.6%
・外照射放射線治療(群馬大):97.6%
・小線源治療(滋賀医大):95.2%
・重粒子線(放射線医学総合研究所病院):不明
・小線源治療(京都府立医大):94.9%

これらのデータを見る限りでは、滋賀医科大学の小線源治療(岡本メソッド)にはまったく優位性がないことになる。それどころかロボット支援前立腺全摘除術か外照射放射線治療を受けた方が、岡本メソッドを受けるよりも5年後の非再発率が高いことになる。当然、岡本メソッドの中止と岡本医師の追放はやむを得ないという世論が形成されかねない。おそらく滋賀医科大の塩田浩平学長は、それが目的でこのような誤解を与える記述の掲載を許可したのである。

◆データのトリック

これらのデータには、専門家でなければ見破れない巧なトリックが隠されている。端的に言えば、基準が異なるものを比較しているのだ。比較するのであれば、比較の基準が同じでなければならない。滋賀医科大病院は、その基本的な学術上のルールすらも無視しているのだ。

周知のように前立腺癌の検診は、血液を調べるPSA検査により行われる。PSAの数値が4.0 ng/mLを超えると前立腺癌の疑いがあり、精密検査で癌を発症しているかどうかを確定する。

意外に知られていないが、実はこのPSA検査は、前立腺癌の治療を受けた後の経過観察でも行われる。

施術方法のいかんを問わず、治療を受けた患者のPSA値は下降線をたどり、横ばいになるのだが、再発すると再上昇に転じる。この原理を応用して、医師は、PAS値の変化を観察することで、癌が再発したかたどうかを判断するのである。
 
この点を前提にしたうえで、データの改ざんについて説明する前に、前立腺癌の治療法についてもあらかじめ言及しておかなくてはならない。前立腺癌の治療では、ホルモン療法と呼ばれるホルモンを投与する療法により、施術前に癌を委縮させる方法が適用されることがままある。癌を小さくしたうえで、施術するのだ。

ホルモン治療が効力を発揮した場合、PSA値は下降する。そしてホルモン治療が終わった後も、1年から2年ぐらいの期間はその効用が維持されるので、PSAは上昇しない。

滋賀医科大が提示した他の医療機関のデータは、ホルモン治療の効用が持続している期間を含めた非再発率なのである。

とりわけ、弘前大学のデータにいたっては、論文の中でも、経過観察の期間が30カ月であることを明記している。それにもかかわらず都合のよいデータだけを提示して、あたかもロボット支援前立腺全摘除術と岡本メッソドでは、大きな違いがないような印象操作を行っているのである。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

◎[関連記事]黒薮哲哉[特別寄稿]小線源治療患者会が国会議員と厚生労働省へ嘆願、2万8,189筆の命の署名を提出(2019年3月15日付けデジタル鹿砦社通信)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
フリーランスライター。メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)の主宰者。「押し紙」問題、電磁波問題などを取材している。

創業50周年 タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号 発売中!

滋賀医科大学医学部附属病院(以下、滋賀医科大病院)で岡本圭生医師による前立腺癌・小線源治療を受けた患者や治療の順番を待っている患者らでつくる小線源治療患者会(以下、患者会)のメンバー4人が、3月13日、国会議員と根本匠・厚生労働省に対して、それぞれ別個に2万8,189筆の署名と嘆願書を提出した。同病院が告知している岡本医師による小線源治療の中止を撤回させ、継続させる方向で、政界の支援と行政指導を求めた。

患者会が3ヶ月で集めた2万8,189筆の署名

本ウェブサイトで報じてきたように、滋賀医科大病院は、前立腺癌の治療で卓越した成果を上げてきた岡本医師による小線源治療を、今年の6月末で打ち切り、7月からは手術を受けた患者の経過観察だけに切り替える。新規の患者は受け付けない。そして今年一杯で前立腺癌小線源治療学講座そのものを廃止して、岡本医師を解雇する。

そのために岡本医師の治療を強く希望しながらも、順番遵守の原則で手術の予約ができない患者が増え続けている。すでに30名を超えている。手術を受けた患者も経過観察が受けられなくなる。患者会による今回の嘆願は、こうした事態の打開を求めて行われた。

嘆願メンバーの患者会、代表幹事・安江博さんは、次のように現在の異常事態を訴えた。

「一番問題なのは、滋賀医科大病院に対して他の病院から治療の依頼がきているにもかかわらず、治療を断り続けていることです。滋賀医科大病院には治療ができる岡本医師がいるし、施設もあります。治療を希望している患者さんがたくさんいるにもかかわらず治療を拒否しているのです」

紙の爆弾のグラビアを示し説明する安江さん

 

議員への陳情

◆死への秒読みの恐怖にたえる日々

岡本メソッドに最後の希望を託していながら治療予約のできない2人の前立腺癌患者も、みずからの胸中を議員や官僚に訴えた。このうち東京都在住の山口淳さんは、昨年10月に癌の診断を受けた。転移するリスクが極めて高い癌だった。

「医師に5年生存率を尋ねると、70%といわれました。最初、前立腺癌は慌てなくてもいい病気だと思っていましたが、調べていくうちにそうではないことが分かってきました。暗い気持になりました。将来のことを考えると眠れなくなり、食事もすすまなくなりました。体重が7キロ減りました。必死で治療できる医師を捜したところ、高リスクでも再発率が3%程度の治療をする病院があることを知ったのです。それが滋賀医科大病院でした。岡本先生による治療だったのです」

有名で人望に厚い医師なので、はたして初診を受けることができるかどうか山口さんは不安で一杯だった。しかし、メールを送ったところ、すぐに岡本医師から返信があり、11月に初診を受けることが決まった。

「その時は、本当にほっとしました。やっと死から脱出できると安堵したのです。食欲も、体重も戻りました」

ところがその後、2019年の6月以降は岡本医師の治療が廃止になると告げられた。一度は命拾いしたと確信したのに、無惨にも再び絶望の底へ突き落とされたのだ。
山口さんは、現在、別の病院でホルモン治療を受けながら、滋賀医科大病院が方針を見直すのを待っている。が、そのホルモン治療も2年ぐらいが限度だと言われている。死への秒読みが始まっているのである。

 

記者会見風景

◆「きちっと癌を治せる治療を受けさせて」

山口さんと同じく東京在住の木村明(仮名)さんも岡本メソッドを希望しながら手術予約ができない患者のひとりである。昨年の9月、4段階に分類される癌ステージの「2」に該当する中間リスクの癌と診断された。木村さんが言う。

「わたしの場合、高リスクではありませんが、確実に再発しないように癌を治したいという強い希望があり、いろいろインターネットを検索したところ、岡本医師の存在を知りました。岡本先生に直接メールを送り、10月に1回目の診察を受けました」

患者にとって治療後のQOL(生活の質)を度外視することはできない。たとえば前立腺癌の摘出手術を受けた場合、尿もれなどの後遺症が頻繁にみられる。癌そのものは征服できてもQOLのレベルが低くなることがあるのだ。木村さんは、QOLを重視して、岡本メソッドを求めたのだ。ところが予想外の展開になる。

「12月に2回目の診察を受けたときに、『申し訳ないが、自分が治療できるのは6月末までで、木村さんは間に合わなかった』と言われました。わたしだけではなく、ほかに何十人もそういう患者さんがいるとも言われました。初診すら病院側から拒否されている患者さんもいるとのことでした。6月で治療が中止になると、わたしも他の患者さんも困ります。きちっと癌を治せる治療を受けさせてほしいというのが願いです」

◆責任を問われるべきなのは泌尿器科の医師たち

滋賀医科大病院で、起きている異常実態の発端は、泌尿器科の医師による不適切な医療にある。2015年1月、同病院は岡本医師を特任教授とする小線源治療学講座とそれに併設する外来を開いた。ところが同講座を下部組織にすることを目論んだ泌尿器科が、岡本医師を頼ってきた患者の一部を泌尿器科に誘導。独自に小線源治療を計画し、手術の前段で不適切な医療を行ってしまった。医師らは、小線源治療の手術経験のない素人だった。

滋賀医科大の塩田浩平学長は、被害を受けた患者の治療を岡本医師に命じた。しかし、被害を受けた患者らは怒りが収まらずに告発の動きにでた。そこで患者の口を封じるために、病院は小線源治療学講座の終了と岡本医師の追放を計画したのである。本来、両者はまったく別の問題なのだが。

◆寒空の下の署名活動の果実

こうした実態について岡本医師の治療を受けた体験を持つ、原田勝一(仮名)さんは、次のように訴えた。

「本来、病院から排除されるべき人物は、不適切な医療を行った泌尿器科の教授らであって、被害にあつた患者さんを救った岡本先生ではありません。岡本先生こそ滋賀医科大病院に残って患者さんの治療を続けるべきですが、現実にはまったく逆で、泌尿器科の医師らはなんのお咎めも受けていません。患者を助けた岡本先生が逆に排除されようとしています。まったく非常識なことが滋賀医科大で起こっているのです。こうした滋賀医科大病院のやりかたに疑問を持った方がたくさんおられて、それが2万8,000筆を超える署名になったのです」

 

厚労省課長申し入れ

署名は患者が中心になって、寒空の下、3カ月という短期で集められた。駅頭などで街宣活動を繰り返し集めたのである。

署名と嘆願書を受け取った厚生労働省の北波孝・厚生労働省医政局総務課長は、「出来ることと出来ないことがありますが、 こういう嘆願があったことは滋賀医科大病院へ伝えます」と、約束した。

なお、厚生労働省への嘆願に先立って、参議院議員会館で行われた国会議員に対する嘆願では、次の国会議員の秘書が、患者会の4人に対応した。

こやり隆史・参議院議員(自民党)
足立信也・参議院議員(国民民主党)
山下芳生・参議院議員(共産党)
三ツ林裕也・衆議院議員(自民党)
櫻井 周・衆議院議員(立憲民主党)

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衝撃月刊『紙の爆弾』4月号 前立腺がん患者による“史上初”の仮処分申立て 滋賀医大病院は治療を妨害するな!他

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 総力特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

 

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』価格1000円(税込)連絡先 090-9424-7478(黒田)

福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第4回(最終回)。

◆オキナワとフクシマ

アラフォーならぬアラセブンの女友だちで辺野古のカヌー教室に行ったのは、2017年冬の辺野古だった。沖に出て実際の抗議行動に参加するには一定の技術がないとダメなのだ。詳細をいえば……カヌーをわざと転覆させてから(当然、自らも海へジャボンと落ちる)それをひっくり返して再び乗り込むこと(復帰する)が、初心者には難しいのである。ベテランにいわせると「何でできないの?」となるが、若い人は女性でも数回やればゴーサインが出るのにそこはやはりアラセ。腕力体力も足りない、勘も鈍ったのだろう。なんとかして上がろうとしては何度もカヌーの縁で右腰骨を擦り、帰ってからもしばらくは痛かった。(以上、ウチワの話ですみません)

ところで、私たちはなぜ福島から全国からはるばる沖縄に向かうのだろうか。沖縄のロケーションはその理由の1つとして大きいものがあるのは確かだ。カヌーに揺られて広い海原に漂う感覚はある種の憧れでもある。しかし、それだけじゃないダロと。

沖縄には古い友人がいる。再会を喜び、連れて行ってもらった居酒屋でのこと。「沖縄の闘いはすばらしい。フクシマは学ばなくっちゃいけない。沖縄には希望がある」みたいなことをツルンと口走ったら、「そんな簡単にいわないで欲しい。こっちにはこっちの苦労があるのよ」とやんわり返されたことがあった。

シマッタ。自分の浅はかな言い方にちょっと恥じ入り反省もしたが、でも、でもやっぱり希望があるよ、オキナワには。圧倒的かつ卑劣な国のテコ入れにも負けずデニーさんを見事に当選させたし、なにより、全国から人が馳せ参じる辺野古には、その闘い自体に強く惹かれるものがあるんですよ。それらをもしかして「希望」と言い換えてもいいんじゃないかと思うんですよ。

さて、辺野古を巡っては、翁長前知事は8月31日に埋め立て承認を撤回し、法的根拠を失った国は工事を中断した。その後、県知事選挙で移設反対を訴える玉城デニーさんが当選。新知事が対話を求めている中で政府は工事を再開してしまった(11月1日)。

新軍事基地阻止行動は非暴力で貫かれている。「民意を無視した工事強行は許せない」「辺野古の海を後世に残せ!」ゲート前座り込みは照る日や雨の中で続いている。「1分でも1秒でも」埋立て工事を遅らせるために、カヌーチームは再び懸命にパドルを漕いで海保の暴力に抵抗している。「悲しくて悔しくて何と伝えたら良いのかわかりませんが、でもカヌーに乗らないわけにはいかないのです……」

辺野古(撮影=辺野古ぶるー/2019年版4月より)

◆山形県米沢市・行き場のない避難者たちの闘い

区域外避難者の住宅提供打ち切りから1年半ほど。行き場のない避難者に追い打ちをかける住宅明け渡し訴訟が山形地裁で起こされている。2017年9月、山形県米沢市の雇用促進住宅に住む避難者8家族を被告として、国の外郭団体「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が明け渡しと相当額の支払いを求めて提訴したのだ(住宅管理の「ファースト信託株式会社家賃」が後で参加)。

「訴える矛先は国・東電ダロ!」「避難者を被告にするな」「国と福島県は原発事故避難者の生存権を守れ」などのプラカードを掲げて、地裁前では全国からの支援者が山形市民にアピールしている。原発事故による〝自主避難者〟が訴えられた、別称「雇用促進住宅明け渡し訴訟(米沢追い出し訴訟)」は、まさに人権侵害そのもの。弁護団と支援する会は、国連人権理事会勧告(2017年11月)の尊重を訴えながら、「訴訟を取り下げるよう原告と福島県を指導せよ」との意見書を政府に提出してもいる。

報告集会では、被告代表の方が「私たちが頑張ることで、東京など同じような状況にある人たちが『よし、やれる!』という気持ちになれば、この裁判の意味があると思う」との挨拶をされた。そう、誰しも自分らの利益のためにだけ、ここまで頑張れはしない。「人間の尊厳」という意味を考える。今、日本という国は人間の尊厳と権利を奪い続け、フクシマの命たちを傷つけ続けている。ご注目とご支援をよろしくお願いします。

山形裁判(2019年版6月より)

◆カレンダーを通じて気づいてほしいこと

最後に、今年のカレンダーは「明るいからホッとした」といった感想を複数の友人からもらった。おほめの言葉なのに、これを聞いて実は複雑な気持ちになっているのです。壁や机の上に掛けて1年間眺めるのには、暗くうっとうしいよりも明るい写真の方がいいに決まっている。

それはそうなんだけれど、ご存知のようにフクシマは先が見えない状況にあって、私たちは実は鬱を内在している。山下センセじゃないけれど、真面目に考え続けていたらまず精神がもたないに違いない。さらに語弊を恐れずにいうなら、ある意味ごまかしながら私たちは福島で日々を暮らしているわけです。確かに、明るさは人を呼ぶ。しかし今のフクシマで「明るく!」という注文は、かなり複雑な思いをさせることでもあるのを、少しは分かって欲しいんです。

ここでまたオキナワを思い出す。苦難の歴史と現在がありながら、歌や踊りが出る闘い、そして何度でも立ち上がる。はたしてフクシマにそのようなことが可能な日がやってくるのだろうか。「原発=核の災害はこれまでの世界を変えてしまった。新しい世界が始まってしまった」と表現したのは、ロシアのスベトラーナ・アレクシエービッチ。新しい世界、つまり新しい苦悩が始まってしまったと予感するのは、なにもノーベル賞作家だけではない。フクシマは、たち打ちできるのだろうか。(了)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発いらない ふくしまカレンダー』連絡先
ふくしまカレンダー制作チーム 
090-9424-7478(黒田) 070-5559-2512(青山)
梨の木舎 メール info@nashinoki-sha.com
FAX 03-6256-9518

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』
価格1000円(税込)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

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2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』価格1000円(税込)連絡先 090-9424-7478(黒田)

福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第3回。

◆6年目のカレンダー

いつの間にか6年目のカレンダーを販売している。大変な冒険の旅立ちともいえる当初のカレンダー作りだったから、正直いって6冊目を作れるようになることは想像できなかった。3・11後の様々な動きと混乱、自分たちの生活そのものが明日をも知れない状況の中での、やったこともないカレンダー作り。多くの協力を得ながらなんとかやってきている。

◆「こんな小ぎれいにあの大惨事をまとめられてなるものか!」

2017年版12月のこの1枚は、どうも、いい写真がカレンダーに足りない感じがして、船引町の友人に半ば強引に被写体になってもらい、近所の「環境創造センター」に出向いてもらって撮ったものだった。(仕事中にゴメンナサイ、でした)

写真のキャプションは『環境創造センター内で:「こんな小ぎれいにあの大惨事をまとめられてなるものか!」と、彼女はつぶやいた。小学生向けにゲーム感覚で放射能に慣らそうとするなど、原発事故による被害の過小評価が懸念される』となっている。彼女の怒りの表情といい、その偶然のアングルといい、ラッキーだった。なにより、この環境創造センターの果たす役割こそ、その後のフクシマ棄民政策を象徴する最初の巨大なオブジェと私には印象付けられたのだ。

復興とは何だろう。立派な建物ができたら復興なのか、道路や列車が開通したら復興なのか。この1枚の写真に託した彼女と私の怒りは、月日の経過と共に収まるどころかむしろ次第に強まるばかりだ。

環境創造センター(2017年版12月より)

◆フォトジャーナリスト・山本宗補さんの1枚

「原発いらない福島の女たち」による「原発いらない!地球(いのち)のつどい」も昨年春で6回を重ねた。分科会方式で各テーマ別に福島の現状報告、全体集会では東京の女たちの友情出演でなされた詩の朗読もあった。福島の詩人が書いたものだけが選ばれていた。「心に沁みたヨ」と参加者からの感想ももらっている。集会後は友人たちによるチャンゴ隊(太鼓。朝鮮の民族楽器)を先頭に福島市内を元気にデモ行進。このスタイルが近年は続いているが、沖縄、水俣、愛媛、宮城など全国各地からの参加者と共に、「また1年、諦めないで頑張ろうネ」とエールを交換する。

いいね!の写真が1枚が入ると1冊全体が変わってくるような印象を持ってくることに気がついた。フォトジャーナリスト・山本宗補さんの1枚は、自分たちでたくさん撮った3・11行動のどの写真よりもいいと思ってしまったのだ。あれこれ手を伸ばして宗補さんと連絡がつき、これをお借りすることに快諾を得た。

女たちの3・11(撮影=山本宗補さん/2018年版3月より)

それまでは、自分たちが撮ったものでというのがふくしまカレンダーの「売り」だったわけだが、いいものを見てしまうともう見劣りしてしまってアカン。このことがあった18年版以来、1、2枚はプロのものをお借りするようになった。やはり素人とはチガウのだ。おかげさまで、ある種‘重み’が出たふくしまカレンダーになったと思うんですが、これもまた手前味噌だろうか。

◆若狭の空き地に花咲くマーガレット

福井県の高浜原発再稼働反対のデモ行進中に見た風景。天は高く、若狭の街並みは落ち着いた自然豊かなたたずまいだった。空き地に花咲くマーガレット。この海も山も集落も、フクシマの二の舞いにしてはいけない。心からそう思いつつ歩いたことだった。

若狭を歩く(2018年版5月より)

原発事故は大切なもの、美しいものほど真っ先に全てを奪っていく。それまで子ども等が無邪気にはしゃぎまわって遊んでいた緑のジュウタンがとても放射能の値が高く、季節折々の山や畑、川からの豊穣な恵みは他の食品より何倍ものセシウムが検知されている。これは間もなく8年になる現在も同じ傾向にある。コンクリートとは違い、天然の細胞深く取り付いた放射能は、雨風で容易には流れないのだ。

フクシマで失ったものの大きさを思い、道端に健気に咲く花たちが愛おしい。だから、この写真を見ると今でも涙が出るんです。(つづく)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
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福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第2回。

◆2017年版の思い出 ── 未来をあきらめるわけにはいきません

~以下、2017年版チラシから一部コピーを紹介。

……2011年3月11日の震災と福島原発事故は、私たちの暮らし、人生を一瞬のうちに変えてしまいました。5年半がたち、被害はさらに広がっています。溶け落ちたままの核燃料、海へ流される汚染水。高線量被ばくのリスクを抱えながら働く作業員の方々。子どもの甲状腺がんなど増える健康被害。除染、強いられる帰還、焼却炉問題、核汚染物の中間貯蔵地…。これらの問題はますます深刻になっています。清明で豊かだった風土は変容し、農林業の原発賠償や避難者への支援は打ち切られようとしています。  

さらに、熊本大地震や各地の火山・地震活動活発化など自然界の警告も無視して、昨年の鹿児島県川内原発に引き続き、2016年1月福井県高浜原発、8月愛媛県伊方原発が再稼働されてしまいました。

しかし、未来をあきらめるわけにはいきません。真実を伝え続けるために、自分たちで撮った写真で今年もまたカレンダーを作りました。収益は「女たち」のさまざまな活動、フクシマを伝えに行くための交通費や集会・学習会費用などに役立てられています。さらに広めていただければ嬉しいです。どうぞこれからも福島に心を寄せ続けてくださいますように。                     

◆脱原発への思いを込めて、元気にカレンダーを作り続けたい

 

フレコンバック(2017年版カレンダーより)

手前味噌が続いたが、どうかご容赦を。確かに年毎に写真巧くなっているね、とほめ言葉もいただく。素直にうれしく思う。しかし、私たちが最も心に響くのは、支払い用紙(郵便振替伝票)のメモ欄に書いてあるこんなひとことだ。

「他には何もできないでいるけど、せめてこの1冊を買うことで福島を支援したいと思っているのです」「福島の女たちの笑顔にかえって励まされている」etc。全国の皆さんに感謝感謝です。

そもそものカレンダー作成の目的について振り返ってみたい。イギリス映画に触発されたのは、活動資金を得るというのが動機の1つだったことはあるが、何より目標に向かって動き出す女たちの「共同戦線」がすごく楽しそうだったことが大きい。私たちは、回を重ねる毎に、写真は人々に強く訴える力があることを学んでいった。私たちはフクシマの実情を、本当のフクシマを世界に知って欲しいのだ。

「行動の記録」という2ページを設けている。これは女たちと原発に関する様々な運動と出来事の記録である。目まぐるしく日々は過ぎ去って行く。運動のポイントをたとえ1行でも、記録に残しておく必要があると感じている。フクシマは、永い闘いの、その序の口に入ったところだ。フクシマの現状(を伝える)・記録(を残す)・活動資金(を稼ぐ)、この3点セットが女たちのカレンダーの目的となったことを自覚したい。どれも健全な市民運動に不可欠なことだ。

さて、先が見えない中でも忙しい毎日が続いている。全国の地に散って行った福島の女たちよ、疲れすぎてはいないだろうか。いつかのあのときの写真のように、時には大声で笑っているだろうか。どうか……休み休み行こうゼ。フクシマのようなことが2度とあってはならない、原発のない社会を作っていくんだ、という同じ決意をそれぞれの胸に秘めながら。(つづく)

牛たちの……(2017年版カレンダーより)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
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福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第1回。

◆いつの間にか6年目 ── 映画「カレンダー・ガールズ」にヒントを得て

 

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』価格1000円(税込)連絡先 090-9424-7478(黒田)

この秋、いつの間にか6年目のカレンダーを販売している。大変な冒険の旅立ちともいえる当初のカレンダー作りだったから、正直いって6冊目を作れるようになることは想像できなかった。3・11後の様々な動きと混乱、自分たちの生活そのものが明日をも知れない状況の中での、やったこともないカレンダー作り。多くの協力を得ながらなんとかやってきている。

そもそもカレンダー作りを思いついたのが、英米合作映画「カレンダー・ガールズ」を観たことから始まる。映画は、実話を元にしたヒューマン・コメディ。小さな町で女たちがある年の教会カレンダーを自分たちの女写真集にした。保守的な田舎のこと、夫たちの猛反対にもあうが、しかし、思いがけなく大ヒットして彼女たちの目論見は大成功を収める。女たちの友情や勇気、フェミ的視点もきっちりあって、抱腹絶倒の映画だった。

さて、この映画を見て「そうだ、福島の女たちのカレンダーを作ろう!」といったのが、友人Aさん。イイネッ! さらに、反原発運動などで昔から活動されていたKさんとは震災後に再会したが、いろいろなことを教えていただいた。Kさんが日本に紹介している、これまたイギリスのドキュメンタリー映画「グリーナムの女たち」を福島の女たちで観るなどしたこともあったな(2011年クリスマス)。これは何回見ても感動。女たちへパワーを与えてくれる秀作だ。

 

経産省前、白いタイベックス姿(簡易防護服)で歌う女たち(2015年版カレンダーより)

福島原発事故後、良かったことが1つだけある。それは人との出会い・再会である。梨の木舎・羽田ゆみ子さんを紹介してもらったこともあって、カレンダー作るならここと決めていた。梨の木舎は良い本を出しているところとして私でも知っていて、どんなに立派な出版社かと思いきや、神保町の片隅で社主が掃除から編集、荷造りまで全てをほぼ1人でやっているようなところで、初めて訪問したときには驚いたものだった。

「苦節35年」は、ゆみしゃんのおどけた時の口癖である。たくさんの作業をここでやらせてもらっていたが、2016年の夏、近くに引っ越されて、今度はオーガニックなコーヒーや手作りケーキも注文できる素敵な空間のブックカフェと様変わりした。もちろん本もたくさん並んでいる。

◆2014年版の思い出 ──「弾丸バスツアー」で行った大飯原発反対福井集会

 

行進する女たち(2015年版カレンダーより)

2014年版、最初のカレンダーを眺める。本当に懐かしい。刷り上がった1冊を手にした際には、ジ~ンと熱いものがこみ上げてきたのだった。当初、海のものとも山のものとも知れないカレンダー作りに女たちの中で積極的な賛成意見はなかったのだが(当然といえば当然か)、半ば押し切って赤字覚悟で始めた。女たちには規則や会則はなく、原則のようなものがあるのみ。代表も置かないいわばいい加減な、良くいえば人間を信頼(しようと)している自由なグループだ。やりたい人がやりたいところをやるというアメーバ的な運動体を私はイメージしている。(ただし、話合いと報告はダイジ)

カレンダーの表紙は、「弾丸バスツアー」で行った大飯原発反対福井集会で撮影した写真から、たかくあけみさんがイラストに変換して描いてくれた。このあけみさんのイラストは4作目に至るまで続いていて、写真集ではあっても柔らかい感じが素敵だと女たちも気に入っているし、全国の皆さんにも好評だ。

ページをめくる。買ってくれた人の1ヶ月の視線に耐えるような写真が足りなくて、かなり苦労したな。どうにかこうにか、デザイナーさんの手腕で乗り切った感じ。このカレンダーができあがってから、被写体に大きく登場して亡くなってしまった友人、福島から避難して行った仲間、様々な経過があり女たちと離れてしまった人たちもいる。特に遠方に避難した人たちにとって、この頃は超激動の日々だったと思う。新天地で頑張っている若い人たちは「私たちの誇りだ」と発言していた私だが、その思いは今も変わらない。生活するだけでも大変だろうに、脱原発の新しい世界に向けて、着実にあるいは目ざましい活躍を開始している女たちがいる。1年の年月は福島に生きる私たちにとっては、10年、20年の重みがあるのだ。

◆2015年版の思い出 ── 福井地裁・樋口裁判長の名判決と司法界への希望

2015年版。何となくカレンダー作りの流れというのが分かってきた。女たちの手作りバナーやノボリが写真に登場してくる。皆もカレンダーを意識して「ハイ、来年のカレンダー用!」とかいって、撮影時にポーズをとったりするのは楽しい一瞬だ。14年版の成功に気を良くして、それなりに写真も集まってくるようになった。

白いタイベックス姿(簡易防護服)や上野公園での女たちの堂々としたデモ行進が目を引く。「大飯原発稼働停止ばんざーい!」の1枚は、福井地裁・樋口裁判長の名判決のおかげで、司法界に希望がまだあることを確認できた喜びが女たちの満面に溢れている。イエ~ィ!

◆2016年版 ── 安達太良山の雪化粧は息を呑むほどに美しい

2016年版。正月、安達太良山の雪化粧は息を呑むほどに美しい。それだけに同時にまた悲しさにおそわれる。「放射能さえなければ」どんなにか心からこの大自然を堪能できるだろうかと。

正月、雪化粧の安達太良山(2016年版カレンダーより)

プロもタジタジの写真が存在感あるものとして登場する。鹿児島県川内原発再稼働前夜の久見崎海岸で、夕陽を浴びながら無邪気に遊ぶ子どものシルエット。抗議行動に一緒に参加したAさん(前述のアイディア・ウーマン)の絶妙なシャッターだった。

鹿児島・川内原発。再稼働前夜の久見崎海岸。夕陽を浴びながら無邪気に遊ぶ子どもたち(2016年版カレンダーより)

他にも、帰宅困難区域の「帰れない家」からショボショボ歩いて来るタイベック姿の3人と「柿」の写真。巨大な放射性ゴミ焼却炉等々、フクシマの現実をうまく表現している写真が集まった。

柿の木のある「帰れない家」(帰宅困難区域)(2016年版カレンダーより)

キング牧師の演説に乗せて創作した「私には夢がある」という絹江さんの詩は、読む人の心を動かした。ここには、絶望と希望、未来への意志と共生への願いが込められている。絹江ちゃん、ありがとう、今でも泣けるよ。(つづく)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発いらない ふくしまカレンダー』連絡先
ふくしまカレンダー制作チーム 
090-9424-7478(黒田) 070-5559-2512(青山)
梨の木舎 メール info@nashinoki-sha.com
FAX 03-6256-9518

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』
価格1000円(税込)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

取材班に対する朝日新聞記者、及び朝日新聞本社の対応について、これまで山口正紀氏(元読売新聞記者)、現在も活躍中の「元全国紙記者」から頂いたコメントを既に本通信でご紹介した。このたび新聞に関わる問題(特に「押し紙」)を長年追求してきたフリーランスライターの黒藪哲哉氏からも論評を頂けたのでご紹介する。取材班は今後も無謬性に陥ることなく、つねに「私たちは間違っていないか」、「他者の意見に理はないか」と検証を続けながら、取材・報告を続けるつもりだ。(鹿砦社特別取材班)

◆暴力事件の「当事者」が同時に「反差別運動の騎手」という構図そのものが問われている

朝日新聞社の対応に問題があるのは、いうまでもありませんが、最大の問題は朝日新聞社がこの事件をどう考えているのかという点だと思います。前近代的な内ゲバ事件だという認識が欠落しているのではないでしょうか。感性が鈍いというか。事件は、単なるケンカではありません。加害者の一人が、原告となってヘイトスピーチを糾弾するための裁判を起こしている反差別運動の旗手です。しかも、朝日新聞は報道というかたちで、この人物に対してある種の支援をしているわけです。ヘイトスピーチや差別は絶対に許されるべきことではありませんが、暴力事件の当事者(本人は否定しているが、現場にいたことは事実)が同時に反差別運動の騎手という構図、そのものが問われることになります。

◆「反原連」関係者による国会前の集会も検証が必要になる

また、間接的であるにしろ反原連の関係者も事件を起こした人々とかかわりがあるわけですから、残念ながら、国会前の集会も検証が必要になります。あれは何だったのでしょうか。それはタッチしたくはないテーマに違いありません。出来れば避けたい問題です。しかし、それについて問題提起するのがジャーナリズムの重要な役割のはずです。さもなければ差別の廃止も、原発ゼロも実現は難しくなるでしょう。第一、自己矛盾をかかえた人々を圧倒的多数の市民は信用しないでしょう。

◆「M君リンチ事件」をもみ消そうとする異常な動きそのものも検証が必要だ

しかも、『カウンターと暴力の病理』に書かれているように、この事件をもみ消そうとする動きが活発になっております。そうした異常な動きそのものも検証することが必要になっているわけです。本当に朝日新聞が独立した自由闊達なメディアであれば、だれに気兼ねすることもなく、その作業に着手できるはずですが、それが出来ないところに朝日新聞社の限界を感じます。「村社会」を感じます。

もちろん、どのような事件を報道して、どのような事件を報道しないかは朝日新聞社の自由ですが、報道機関としての資質は問われます。

▼黒藪哲哉(くろやぶ・てつや)
1958年兵庫県生まれ。1993年「海外進出」で第7回ノンフィクション朝日ジャーナル大賞・「旅・異文化テーマ賞」を受賞。1997年に会社勤務を経てフリーランス・ライターへ。2001年より新聞社の「押し紙」問題を告発するウェブサイトとして「メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)」を創設・展開。同サイトではメディア、携帯電話・LEDの電磁波問題、最高裁問題、政治評論、新自由主義からの脱皮を始めたラテンアメリカの社会変革など、幅広い分野のニュースを独自の視点から提供公開している。

◎黒藪哲哉氏【書評】『カウンターと暴力の病理』 ヘイトスピーチに反対するグループ内での内ゲバ事件とそれを隠蔽する知識人たち(2018年02月27日「MEDIA KOKUSYO」)

最新刊『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD

『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(紙の爆弾2017年6月号増刊)

『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

過日、本通信に、元読売新聞記者山口正紀さんが朝日新聞の取材班に対する対応について、率直に鋭い指摘を寄せて頂いた。以下の紹介するのは、やはり元全国紙の記者であり、いまも一線で活躍されている方からのコメントだ。感想を求めたところ、

「ごぶさたしております。なかなか凄い対応ですね!」との書き出しから次のような感想をいただいた。

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ことは、個々の記者あるいは『朝日新聞』『毎日新聞』に限らず、マスメディア全体にかかわる問題だと思います。コンプライアンスの名の下に官僚組織化した全国紙などでは、事実上、記者の言論の自由は剥奪されています。よけいな問題を起こされたら責任問題になると、保身に走る管理職だらけになってしまったからです。外での執筆活動や講演活動は届け出制、あるいは許可制となり、今回のように外部から取材を受けるときは広報部を窓口にするのが基本となっています。

このような傾向が強まったのは雲仙普賢岳の火砕流事故以来です。「とにかく危険なことはするな、危険な場所に行くな」ということで、現場記者は上司の管理下に置かれるようになりました。容易に想像がつくと思いますが、こうした傾向が続くと、何から何まで「上司のお伺い」が必要になり、あっという間に組織は官僚化します。

そこへネット時代が重なりました。ツイッターやブログは多くの目にさらされますから、記者のツイッターが炎上するといった事態も起きます。当然、上司に責任がいく場合もあります。外部から取材を受けたときも、そのやり取りがネットにあがることがあり、管理職は異様に気をつかいます。すべては自己保身による事なかれ主義です。だから、正直、河野氏も現場記者も見方によっては「被害者」だと感じてしまう自分がいます。現場記者はもちろん中間管理職も組織に逆らえば直ちに処分対象になりますから。

いまのマスメディアの堕落は「コンプライアンス」から始まったと私は考えています。かつての記者は、相手が上司だろうが「おかしなことはおかしい」といったものですし、上司もまたそれを受け入れていました。つまり、記者はひとりのジャーナリストとして自立していたのです。そうした文化が意味不明なコンプライアンスにより潰えてしまいました。言論の自由を標榜するマスメディアで社内民主主義が消えかけている――極めて深刻な問題だと思っています。

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なるほど。朝日新聞、毎日新聞に限らず、「コンプライアンス」が幅を利かせる時代になって「自立した記者」が放逐される仕組みが出来上がったので、今回のような対応が生じたとの分析だ。報道機関に限らず「コンプライアンス」は近年、金科玉条のように持ち上げられている。しかし「法令順守」といえばまったく同義で意味が通じるのに「コンプライアンス」があたかも「高尚な価値」のように扱われるようになってから、新聞社や記者はがんじがらめになって「自立した記者」が存在しにくくなっているようだ。だとすれば「コンプライアンス」という概念自体が報道の基礎を邪魔しているとうことにはならないか?

新聞社はもとより「企業」でもあるが、「報道機関」、「権力監視」、「公平な報道」などの機能を読者は無意識に期待しているのではないだろうか。取材班の中には「日本の報道機関は、過去も現在も常に腐っていて批評すること自体ナンセンスだ」との極論を曲げないスタッフもいるが、それでも生活の情報源として新聞からの情報に一定の信頼をおく読者は少なくないはずだ。

であるから、「元全国紙記者」氏の指摘は、深刻な構造的問題を提示してくれている。

「法律に従うこと」と「過剰な自己保身に走る」ことは異なる。自己保身に必死な「新聞記者」(あるいは新聞社)から、本質的な「スクープ」が生まれてくるだろうか。権力が撃てるか。「規制が強すぎて書きたいけども書けない」のであれば、むしろそう告白して欲しい。新聞社の内実が、そのような「自己保身」を中心とした価値観で占められていることなど、多くの読者は知る由もない。

(鹿砦社特別取材班)

◎朝日新聞本社広報部・河野修一部長代理が鹿砦社に答えた一問一答の衝撃(2018年2月20日鹿砦社特別取材班)

◎〈特別寄稿〉こんな官僚的対応をしていて、新聞社として取材活動ができるのか ── 大学院生リンチ事件・鹿砦社名誉毀損事件をめぐる朝日新聞の対応について (2018年2月24日山口正紀)

最新刊『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD

『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(紙の爆弾2017年6月号増刊)

『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

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