今、米欧で「もしトランプが大統領になったなら」が、「もしトラ」と縮められて、話題になっているらしい。トランプ旋風は、米国だけでなく、欧州でも大変だということだ。

実際、「バイデン大統領」と「トランプ大統領」とでは大違いだ。

そのトランプが本当に大統領になる可能性が出てきた。

新年になってからアイオワとニューハンプシャー、二つの州で共和党の大統領候補選出のための予備選挙が行われた。そこで、二度ともトランプが圧勝し、全米50州、48州の選挙を残して、早くもトランプの選出が確定的だと言われるまでになっている。

民主党の候補は、現職のバイデンで決まりだと言われる中、11月に予定される米大統領選が4年前と同じ、トランプ VS バイデンの争いになるのはほぼ確定的だと言われている。

77歳のトランプと80歳のバイデン、この前回と同じ二人の老人しか大統領候補がいないのか。そこから覇権大国、米国の黄昏を思わない人はいないのではないか。

◆トランプ人気の秘密 ── 見捨てられた人々の代弁者

それはともあれ、ここで考えてみる必要があるのは、トランプのことだ。

8年前、大統領に選出された時にも、歴代大統領には類例を見ない、型破りの大統領と言われたトランプが今度は、婦女暴行罪まで含めて、様々な罪と裁判まで抱えながら、そうなればなるほど逆に支持を集め、現職大統領バイデンを制して大統領に選出される可能性大だとまで言われている。

なぜそうなるのか。トランプ人気の秘密は何なのか考えてみたい。

それを知るためには、まずトランプを支持している人たちがなぜ支持するのか聞いてみることから始めるのがよいのではないか。

彼の支持者からもっともよく聞かれるのは、彼があんな金持ちなのに、少しも飾らず、彼らと同じように話し、彼らの気持ちを一番よく分かってくれると言うことだ。

言い換えれば、トランプが彼らアメリカ国民の、それもラストベルト地帯労働者など見捨てられた人々の代弁者だと言うことだ。

皆、トランプが大統領になるところに、自分たちの心、気持ちや要求を反映した政治の実現を見ているのではないか。

「偉大なアメリカ」「アメリカ・ファースト」など、トランプが掲げるもっとも基本的なスローガンにそれは象徴的に示されているように思う。事実、インタビュアーの質問に答えて、「あのスローガンがいい」と言う人々が大勢いた。

トランプの政策は、実際、アメリカを第一にし、アメリカ国民を第一にするというものが目に付く。移民、難民の米国への入国を制限。企業の海外進出に反対し、輸入品に対する関税を高くして、米国国内経済の振興を主張し、米国が世界の警察として海外でカネを使うことに反対する。

これらは、米国が世界第一の超大国としてドルや核で世界に君臨し、それによって権力を振るい、カネを儲けている一部特権層にとっては許し難いことだろう。

だから彼らは、国家機関、司法機関を動かし、メディアを動かし、それらと一体になって、トランプを異端とし、悪者にしながら、バイデンを勝たせようとする。

だが、それも今回はうまく行きそうにない。ウクライナ戦争や中東戦争など、勝ち目のない戦争、不正義の戦争にバイデンがカネを注ぐのに米国民は反対だ。

そこで、手がなくなった特権層も、前々回、8年前、キッシンジャーが「一度トランプにやらせてみたらどうか」と言ったように、もう一度トランプにやらせてみようと言うことになるかも知れない。

そうした中、「もしトラ」の声はこれからますます高まるのではないか。

◆「もしトラ」で、日本に問われているのは何か

そこで言えるのは、8年前と今とでは、米国が置かれた位置が大きく異なってきていると言うことだ。

今は、世界中が「ファースト」の時代だ。「ファースト」は、自国第一、自国の上に覇権が来るのに反対する。事実、ウクライナ戦争や中東戦争で米国に従う国は、日本などG7の国々くらいしか見当たらない。

この状況で「もしトラ」になったらどうなるか。本当に米覇権が崩壊する事態になるかも知れない。ならないという保証はどこにもない。なったらどうなるか。米欧の覇権側の人々の腰が定まらなくなるのも分かるというものだ。

「もしトラ」のこの時、米覇権から脱却するための闘いが日本においても、今こそ問われてきていいのではないだろうか。

と思っていたら、いるいる。「もしトラ」は日本にとっての大チャンス。今こそ、真に独立する時だと言う人々が出てきている。

ただ、その理由が問題だ。「もしトラ」の場合、対日軍事援助に消極的だ。だから、日本が独自に軍事力強化して独立だと言う人がいるようだが、それはどうだろうか。

軍事力の強化も真に日本を防衛するためのものならば、独立のためになるだろうが、昔のような侵略のための軍事力強化なら、対中対決戦の最前線に立たされるなど、米覇権のために利用されてしまうだけではないか。

「もしトラ」で、日本に問われているのは何か。それは、米国のファーストの下で生きるのを日本のファーストにするのではなく、米国のファーストの下で生きるのか否かを決定的な問題とし、米国のファーストから脱して生きるのを日本のファーストにすることではないだろうか。そうしてこそ、日本は米国の支配から脱し、真に独立することができると思う。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

今年は辰年です。辰年には大きな事件が起きると言われています。76年のロッキード事件も88年のリクルート事件も辰年でした。

そして元旦には能登大震災が起きました。亡くなった方々に哀悼の意を表すると共に、一日も速い復興を願っています。

それにしても心痛むのは過疎化した能登の光景です。見捨てられ置き去りにされたような光景は能登ばかりではありません。こうした「冷たい政治」を何としても変えなければならない。その思いで、今回の寄稿をさせて頂きます。

◆「日米統合」の下、国民の財産が米国に売られている

この間、貴誌への投稿で、日米統合の問題を何回かに渡って述べてきた。それは、日本の財産、日本国民の財産を米国に売るものとして進んでいる。

先の投稿では、法廃止問題を取り上げ、国の財産、国民の財産である日本の通信インフラが米国に売られようとしていることを述べた。

その内容を再度確認すれば、NTT法は、「日本電信電話公社」を米国の要求に応じて民営化(株式会社化)する時に、電信電話事業の公共性を維持するために定めた法律であり、そのため、そこには「国による株式の3分ノ1保有」「外資規制」「総務省による経営計画や人事の承認」などの規定があること。したがって、これを撤廃しなければ、米国企業に売却することも売却後に、米国外資が自分の意のままに、これを経営することができない。だからNTT法を廃止するということだ。

NTT法には又、「固定電話をユニバーサルサービスとして全国一律に提供する」という規定があり、離島や過疎地でも低価格でサービスを保証することが義務化されている。

これが如何に大事なものであるかは、今回の能登大震災を見ても分かる。今回のような大災害では、固定電話によるサービスが多いに役立ったことは想像に難くない。 

しかしNTT法を廃止すれば、それもなくなる。その代わりに移動電話でサービスを保証するというが、経営権を握った米国企業がそうしたサービスを保証するとは思えない。

岸田内閣はこうした国民の貴重な財産までも米国に売ろうとしているばかりではなく、日本国民が保有する2000兆円もの金融資産をも米国に売ろうとしている。

昨年6月の骨太方針で岸田首相は、「資産運用立国」を掲げたが、12月13日には、それを具体化した「資産運用立国実現プラン」なるものを発表した。

それによれば、「日本のメガバンク3社や大手証券会社に運用力の向上と企業統治の改善に向けた計画の公表」を求め、「海外の資産運用会社が進出しやすいように英語で行政手続きができる『資産運用特区』を創設する」、「機関投資家に新興運用会社の活用を要請する」などとなっている。

この資産運用会社が米国の会社であることは、岸田首相がニューヨークで米国の金融関係者を前に「資産運用特区創設」とこれへの参入を要請したことを見ても明らかだ。

その具体化として岸田政権は、12月に220兆円もの世界最大の年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用会社を拡大するという方針も打ち出している。

そればかりではない。岸田政権は、国家予算の立案執行まで米国ファンドにやらせようとしている。

今、岸田政権は、様々な政策執行で「基金」方式を導入している。卓越大学創設の「教育基金」、原発維持の「GX推進基金」、「中小企業イノベーション創出推進基金」などなど、今や基金は50事業にもなるという。

昨年12月、岸田政権は関係省庁にその運営を広告大手、民間シンクタンク、人材派遣会社など民間企業に委ねる通達を出したが、その民間企業が米国外資系や米国の意を汲んだ企業であることは言うまでもない。

国家経営で最も重要な予算の立案執行の多くを米国外資が握るようになれば、日米統合は決定的に進み、日本は最早、国とは言えない「国」になってしまう。

◆米国外資による企業支配、そして経済のバブル化

岸田政権の「資産運用」政策で注目すべきは、「企業統治の改善」が強調されていることである。それは「企業は株主のもの」だとする米国式の「企業統治」を意味し、米国外資が日本の企業の経営に介入し、終局的には、その経営権を握るものとなる。

昨年1月から日本の株価が急上昇している。それを主導しているのは米国外資である。そして彼らは「物言う株主」として日本の企業の人事や経営にまで口を出すようになっている。

昨年5月からの株主総会シーズンに、彼らは、現経営陣の退陣要求と社外取り締まり役の導入を提案した。その多くは否決されたが、今年の株主総会では、その攻防がいっそう激しくなると予想されている。

米国は自国のファンドや資産運用会社を使って、日本企業を支配しようとしているのだ。

そして、そのために米国の「投資助言会社」までが動いている。彼らは、取り締まり役に女性がいるか、温暖化対策を進めているかなどを判断基準にして、米国ファンドの投資の助言をするという。その中には日本的な「株の相互持ち合い」解消の基準もある。

日本の「株の相互持ち合い」は元来、外部からの株式買い占めに対抗するための「日本式」対応策であった。米国は、これを解体しようとしているということだ。

米国外資は日本の企業支配を進めながら日本経済をバブル化している。

今年1月の連休明けの9日、東京証券市場ではバブル期1990年3月以来の最高値3万3763円を記録し、その後も高値を更新しつつある。まさに米国外資による日本経済のバブル化。しかし、それは30年前に破裂したバブル経済の再演であり破裂は必至だ。

確かに、2000兆円ものカネを注ぎ込めば、しばらくは、株式相場は活性化しバブル化するだろう。しかし、バブルは必ず破裂するのが経済法則であり、30数年前に現実に起こったことである。

その破綻後、米国が要求してきた構造改革、その新自由主義改革によって、「失われた30年」になり、格差拡大し、多くの地方が衰退し、国民の多くが貧困化に追いやられた。

これを又やるのか。米国外資は頃合を見て売り逃げする。残るのは紙屑なのであり、国民の生活に責任をもつべき政府がやることではないだろう。

◆根強い、抵抗勢力の存在

こうした政策に対して、日本の経済界、自民党内部にも強い抵抗があるのは当然である。

NTT法廃止の動きで甘利プロジェクトチームが最終報告でこれまで「25年まで」としたのを「25年をメドに」とし、来年8月の国会で「研究成果の公表義務」を撤廃するという一部改正、迂回案を提案したのも、自民党や総務省の中にある「抵抗勢力」の存在を念頭において、彼らとの衝突を避けながら、あくまでも廃止を実現するということだ。

この1月、トヨタは御三家と言われるトヨタ自動織機、アイシン、デンソーなど持ち株会社への出資を10%削減することを発表した。それは今後、株主総会などで「株の相互持ち合い」が問題視されることを見越した対応策であろう。

それは、他の日本の企業も分かっており、それぞれ対抗策を打ち立てている。それは、日本の企業の多くが「抵抗勢力」であることを示している。

こうした「抵抗」はクラウドをめぐっても起きている。

今日、デジタル化なくして社会の発展はないと言われる中、データを集積利用するクラウドは決定的に重要である。しかし日本のクラウドは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクルなど米IT大手4社が70%のシェアを占めている。

岸田内閣は、各自治体にクラウド導入を25年までに行うよう通達を出したが、それに対し、地域の自治体から「重要な個人情報を他国企業のクラウドで保管する状態でいいのか」「サイバー攻撃やデータ流出時の対応に懸念がある」「米企業が撤退した場合、どうするのか」、又、米国の「クラウド法」との関係で、米国政府の要求があれば、クラウド企業はそのデータを政府に提出しなければならないということへの懸念の声があがった。

クラウドを巡って上がる懸念の声は地方にも「抵抗勢力」があることを示している。

◆米国の焦りと政界再編策動

「抵抗勢力」の存在、それは米中新冷戦の最前線に立たされることへの「抵抗」、「日米統合」への「抵抗」が根本にある。これまで私が述べてきた「抵抗」は、直近の岸田政権の政策に対する「抵抗」を私なりに示したものだが、それは自民党や企業、自治体にとって具体的で身近な切迫した「抵抗」となっているということだ。

そういう中で、米国は何としても「日米統合」をやり抜かねばならない。

何故か、それは米国の覇権回復戦略で日本の米国への統合が決定的だからだ。

米国は米中新冷戦を掲げ、日本をその最前線に立たせるために日米統合を進めているが、その肝心の米国覇権がますます弱化している。

イスラエルのガザでの虐殺蛮行を見て、世界では人権や法の支配を掲げながらイスラエルの蛮行を承認する米国、米国覇権への非難の声が高まっている。またウクライナでのゼレンスキー政権の敗勢も明らかになってきた。こうした中で、グローバルサウスを始め世界の多くの国々が非米・離米の姿勢を強め、それが時代の流れになってきているのだ。

この流れに日本が合流すれば、米国覇権は最終的に崩壊する。米国としては何としても日本を統合しなければならない。

その期限は25年。軍事費倍増も25年までであり、クラウド導入も25年、NTT法廃止も25年をメドに、である。

そのためには、日本の経済界、地方を後ろ盾にした自民党内の「抵抗勢力」を何とかしなくてはならない。

自民党の献金問題での地検特捜部の動きは、その反映ではないだろうか。

54年の「造船疑惑」を契機に「大悪を暴く」として発足した地検特捜部の背景に米国があることは政界では常識である。

それが岸田政権を瓦解させ自民党を解体させるかのような動きをしている。米国は「日米統合」に「抵抗」する勢力を排除し、「統合」を促進するための「政界再編」「政治改革」を狙っているのだと思う。

◆米国主導ではなく日本国民主導の政治改革、自主的な政権樹立を

米国主導の政界再編、政治改革ではなく、これと真っ向から対決し、日本のための、日本国民のための日本国民主導の政界再編、真の政治改革が求められている。それは単に岸田政権批判、自民党政治批判に止まるだけでなく、対米追随、米国覇権追随ではない日本の自主的な政権樹立を視野に入れた戦いでなければならないと思う。

米国が25年までに「日米統合」の基礎を固めようとするなら、24年は、それを見越した闘いの年にしなければならない。

その主体は主権者である日本国民である。

勿論、米国主導の「改革」に対し、経済界や自民党などにも根強い「抵抗勢力」があることは事実である。しかし、それは、あくまでも「抵抗」に過ぎない。だからこそ日本国民が主体になって、日本のための、日本国民のための「改革」を主導し、選挙を通じて自主的な政権を樹立しなければならないし、それが出来る時代だと思う。

それは米国覇権が失墜し世界の大部分の国々が離米・反米を模索し始めているという時代の流れに合致するものだからであり、日本人であれば誰もが、米国の下に統合され、国とはいえない国にされるようなことを望まないからだ。

 

魚本公博さん

その戦いは左右の違いを乗り越え、党派の違いを乗り越えた日本という国、民族という自らのアイデンティティをどう守るのかという戦いになる。

左右の垣根、党派の垣根を越え、たとえ自民党であっても、大企業であっても、日本というアイデンティティを基礎にして国民が変革主体になり、すべての抵抗勢力を合流させ、日本のための、日本国民のための政治を実現する。

・・・・・・・・

24年は辰年の中でも甲辰の年だそうだ。甲辰には暗きを暴き出すという意味があって、甲辰の年にはこれまでの悪が暴き出され変革が起きるのだとか。24年はそういう闘いの年になる。私たちも老骨の身だが、この闘いに少しでも寄与したいと思っている。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◆どうなる解散総選挙

岸田内閣支持率の低下が止まらない。毎日新聞では、同社世論調査の1947年以来最低という16%を記録した。 それでも、岸田首相の口からは「解散総選挙」の5文字は出てこない。

元々、この5文字は、昨年末のテレビ出演で、岸田首相自身の口から出てきたものだ。以来、今年初から、一年間、当のご本人により事ある毎にちらつかされ続けてきた。

ところが、物価高騰による生活苦の深まり、それに対する無策の上の増税など、岸田政権への信頼が揺らぎ急落する中、それに追い打ちをかけるように法務、財務、文科、三副大臣の不祥事とそれが元での辞任、自民党各派閥のパーティー券、「裏金」問題、等々が重なり、解散総選挙の来年への先送りを首相自ら口にした矢先でのこの歯止めの利かない支持率続落、どん底だ。

進退窮まった岸田首相がどう出てくるか。「支持率ゼロまでやめないつもりか」など、ヤジが飛び交う中、その出方に注目が集まっている。

◆開陳された泉房穂「政権交代戦略」

そうした中、今、日本政界で急速に脚光を浴びてきているのが「泉房穂」。前明石市長である同氏の言動が時期適切、とにかく面白い。

「政権交代は一瞬でできる。こんなことを言えば、〈泉どうしたんか〉と言われそうやけど、皆できないと思いこんでいるだけ」。

これは、「週刊FLASH」12月12日号に載った彼自身の発言だ。

そこで提起された「政権交代戦略」は迫力満点、大いに説得力がある。

まず、政権交代のための基本戦術を全国289ある小選挙区で野党候補を一つに結束し、与野党一騎打ちに持ち込んで勝つことに置く。

そのために野党の一本化が必要だが、それは、政権交代のリアリティがあれば十分可能だ。言い換えれば、権力奪取の可能性があれば、幾らでも連立できると言うことだ。

その上で、重複立候補は禁止する。同じ選挙区で候補者がかち合った場合は、予備選挙をして統一候補を決める。

今日、「生活を何とかしてくれ」という国民の声がいつにも増して高まっている中、野党の一本化を実現する上で何より重要なのは、「救民」の旗を掲げ、「救民内閣」実現を目標に、それに向けた流れをつくることだ。これができれば、小選挙区での「一本化」はあっと言う間に進み、次の総選挙一発で与野党逆転、政権交代は十分可能になる。

「解散総選挙」をめぐり、岸田政権の出方が問われ、日本政界が大揺れに揺れている今、週刊誌に開陳された泉房穂氏の「政権交代戦略」。これまで自分自身の明石市長選をはじめ、数々の首長選、一騎打ちで勝利を重ねてきている同氏だけに、大いに注目に値するのではないだろうか。

この泉氏の問題提起にどう対するか。野党ばかりでなく、日本政界全体の鼎の軽重が問われているのではないかと思う。

◆「解散総選挙」の意味と「政界再編」

岸田首相が今年、一年を通して持ち出してきた「解散総選挙」には、様々な意味が込められていたと思う。

一つは、「米中新冷戦」の最前線を日本が担うための核やデジタル、等々、「日米統合」と連関する、軍事、経済など各分野での政策、施策を野党の反対、抵抗を最大限避け、スムーズに成立させるため、「解散総選挙」をちらつかせて、その矛先をかわしたということだ。

その上で、もう一つ、実はこちらの方が本命だったと思われることとして、米国は本当に岸田政権に解散総選挙を望んでいたのではないかということがある。

一昨年の総選挙大勝利により、今は、「黄金の三年」、岸田政権は向こう三年間、選挙をする必要がない。その上、この一年、当初より岸田政権への支持率は下降線を辿っていた。そこでの「解散総選挙」は、岸田政権にとって、マイナスにはなってもプラスにはならない。それがなぜ今、「解散総選挙」なのか。

求めているのは、米国くらいしか考えられない。では、その目的は何か。なんのための「解散総選挙」なのか。

そこで想定されるのは、「政界再編」だ。

今日、「米中新冷戦」の最前線を日本に担わせるため、進行する「日米統合」。そこにあって、最も立ち後れているのが政治の統合だ。

日本を「日米統合」の「新冷戦体制」に「改革」するため、自民党は一丸となっていない。その内部は、親米改革派と非米保守派に分かれており、そこには国家主義、親中派などが混在している。これでは、日本が対中対決戦をその最前線で担うことなど到底できない。

そこで狙われているのが「解散総選挙」による自民党大惨敗であり、それを契機とする自民党の親米改革と非米保守、国家主義、親中などへの分裂、与野党の垣根を超えた親米改革派の大結集、「政界再編」といった青写真なのではないか。

この間進行するパーティー券、「裏金」問題などで東京地検特捜部による攻撃が比較的国家主義的、あるいは親中的な要素、傾向が濃く、党内影響力も強い安倍派や二階派へ集中されたのは、そのことを示唆しているのではないだろうか。

◆激動の新年日本政治

新年日本政治の展望はどうか。

それは、今、世界に広がる「大動乱」、非米VS親米の世界史的攻防と無縁ではあり得ない。

「米中新冷戦」とウクライナ戦争、そしてハマス・イスラエル戦争と「三正面作戦」に直面させられ、それに覇権国家としてまともに対処できない姿を全世界に晒した米覇権が新年、その世界史的終焉を全世界の前に刻印するようになるのはほぼ疑いの余地のない事実だ。

そうした中、米国の日本における策動はどうなるか。すべてを放棄し、米国に撤退するのか、それとも、その真逆に、従来の戦略をより悪辣に強行してくるのか。答えは明確だ。後者以外にあり得ないと思う。それが米覇権回復の死活的環となる対日戦略に他ならないからだ。

この対中対決戦に向けた「日米統合」にあっても焦眉の問題、「解散総選挙」「政界再編」をめぐる闘いは決定的だ。これがどうなるかですべてが決まる。

そのために、親米改革派の大結集による「新冷戦政治体制」の構築を許すのか、それとも非米保守派、国家主義、親中派、そして何より、広範な国民の大団結に基づく新しい日本政治の実現を勝ち取るのかが切実に問われていると思う。

この闘いにあって、泉房穂氏が提起した「政権交代戦略」は、極めて示唆的なのではないだろうか。自民党惨敗が目に見えている解散総選挙にあって、「救民内閣」実現を掲げながら、与野党の良心的部分を結集し、国民に直接訴える選挙がこれまでになかった結果を生み出すことは十分に予測可能なのではないだろうか。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆青春時代からの目標は、いま……

この通信に昨年秋から「ロックと革命in京都 1964-70」を今年の夏まで掲載させて頂いたが、いま私は「京都青春記」の続編、「ピョンヤン青春記」を生きている。

82歳の現役建築家、安藤忠雄さんはこう言った。

「70歳でも、80歳でも目標がある限り青春です」

十代、二十代の「京都青春記」がLike A-Rolling Stone-転がる石ころのような人生、「目標を求め暗中模索の青春」だったとすれば、七十代「ピョンヤン青春記」、2023年末のいまはようやく「目標に向かう青春」だと言えるようになった気がする。

「京都青春記」からの私の目標とは「戦後日本の革命」だが、それが76歳になった今年、決して遠い目標ではないことが見えてきた。

◆「戦後日本の革命」が問われる時が来た

天皇陛下万歳からアメリカ万歳に変わっただけの敗戦直後の日本に生まれた私たち団塊の世代あるいは全共闘世代は、「アメリカに追いつけ追い越せ」の戦後日本に常に不信感のあった世代だ。大学受験を控え人生選択岐路にあった私は「米国についていけば何とかなる」という戦後日本の生存方式に違和感を覚え、曖昧模糊としたなんとなく平和で民主主義の昼間の日本に背を向けるようになった。

そんな「戦後日本はおかしい」という私の十代、二十代の青春は暗中模索の果てにベトナム反戦、反安保の学生運動に出会うことによって「戦後日本の革命」をめざすようになった。でも私たちの闘いは未熟さ故に敗北、「戦後日本の革命」は未遂に終わった。

米中心の国際秩序は揺るがず、よって「米国についていけば何とかなる」という日本の生存方式を揺るがせることもできず、日本は60年代高度経済成長から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の80年代へと、そしてグローバリズム全盛の90年代から21世紀へとひたすら走り続けることになった。

しかし、いまは違う。

本通信11月5日号に、“2023年を通して「米中心の国際秩序の破綻」、すなわち「パックスアメリカーナの終わり」は、ウクライナとパレスティナでの戦争を通じて世界が眼にすることになった”と書いた。それは「米国についていけばなんとかなる」という戦後日本の生存方式が根本から揺らぐ時代になるということだ。

10月下旬のフジテレビ「プライム・ニュース」では「“世界動乱の時代”の幕開けか」というテーマを取り上げた。「これはアメリカを中心とする国際秩序が破綻していることを映すのか」が番組の問いかけだが、それは言葉を換えれば「米国についていけば何とかなる」時代ではなくなったということだ。

私の問題意識から言えば「戦後日本の革命」が問われる時ということだ。

◆「一丁目一番地に居続ける」のか否かという問題

 

宮家邦彦氏の提言「一丁目一番地に居続ける」

上記「プライム・ニュース」番組最後にキャノングローバル戦略研究所研究主幹、内閣官房参与の宮家邦彦氏は提言ボードにこう書いた。

「一丁目一番地に居続ける」

この意味はいかなる時であっても米中心の国際秩序の恩恵を受ける同盟国という「一丁目一番地に居続ける」、したがって「米国についていけば何とかなる」という生存方式を続ける、そのためには崩れゆく米覇権秩序維持のために「一丁目一番地」の役割、米国のいちばんの同盟国として自身の役割を日本は果たすべきだということだ。

いまそれは具体的にはこう提起されている。

「アメリカがウクライナとガザで手一杯でインド太平洋地域の抑止力が弱っていく、それは困る」と宮家氏は述べたが、その結論は東アジアで「米国の抑止力が弱っていく」不足分を日本が補うべきであるということだ。

「米国の抑止力が弱っていく」不足分を日本が補う、それは具体的に何を指すのか?

結論的に言えば、対中“核”抑止力の不足分を補うことだ。具体的には敵基地攻撃能力保有の目玉、陸上自衛隊に新設のスタンドオフミサイル(中距離ミサイル)部隊の“核” 武装化であり、日本列島の中距離“核” ミサイル基地化、米国側からすれば日本の対中・代理“核”戦争国化だ。

これについてはこの通信で何度も述べたので詳細は省く。

陸自に中距離ミサイル部隊がすでに新設された現時点で残る課題は、自衛隊のミサイルに核搭載を可能にすることであり、そのための鍵はNATO並みの「核共有」のための日米韓「同盟」間での“核”協議体の設置にある。

宮家氏は内閣官房参与の位置にある人物だけに、わが国が「一丁目一番地に居続ける」ために新年には日米韓「核共有」に関する協議体の設置、自衛隊“核”武装化の道筋をつけていくことに積極的に関わっていくことだろう。

それは滅び行く米覇権秩序と運命を共にする道、米国との「無理心中」の道、日本破滅の道になる。

「一丁目一番地に居続ける」のか否か、答は自ずと明らかだ。

まずは「一丁目一番地」から引っ越し、自分の新しい住所を定める。これが「米国についていけば何とかなる」という生存方式からの脱却、自分の足で立ち自分の頭で考える「戦後日本の革命」の第一歩だ。

「ピョンヤン青春記」、来るべき新年はこのことを具体的に考えていく年になるだろう。

若林盛亮さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

この間、貴誌には日米統合問題について何回か寄稿させて頂いた。この11月にも見逃せない問題が起きている。すなわちNTT法廃止問題である。今回はこの問題を考えてみたい。

◆NTT法廃止問題

11月8日の読売新聞に「NTT法見直し 白熱」の記事があった。今、自民党内でNTT法廃止議論が白熱しているという。

この論議は、6月頃、前幹事長の甘利氏が増大する防衛費をどう解決するかの問題で、NTT株を売却して、これに当てるという案を提起したことに端を発する。

甘利氏は、自民党内にこれを討議するプロジェクトチーム(PT)を作り、議論を牽引している。その案では、時価評価で5兆円になるNTT株を20年間、毎年2500億円で売却して、それを軍事費に当てるとしている。これに軍事費倍増のための増税で不評を買う、岸田首相が飛びついた。

しかしNTT法では「NTT株の3分の1以上を国が保有する」となっており、この条項をなくさなければ売却できない。だからNTT法を廃止するということである。

NTT法廃止論者の狙いは、それに止まらない。読売新聞は、甘利PTが重要なポイントと見ているのが、NTTに対する「総務省の関与度合いの縮小」だと指摘する。

甘利氏は「監督官庁による規制は日本の競争力への規制に他ならない」と述べ、荻生田政調会長も「NTTが海外と勝負できる会社に成長する可能性を阻害したのがNTT法だ」とし、その旨、衆院予算委員会で質問し、岸田首相は「規制を抜本的に見直す必要がある」と答弁している。

NTT法は、84年に「日本電信電話公社」が民営化され「日本電信電話株式会社」(NTTはその略称)になった時、その公共性を保障するための規制を定めたものである。

そのために3条で、会社の使命として、①固定電話をユニバーサルサービスとして全国一律に提供する。②電話通信技術の普及を通じて公共の福祉に資する研究開発を行い、その成果を公表する、としており、NTTが公共性を守り、営業本位に走らないように、「取り締まり役の選任」や「事業計画」で総務相の認可を義務付けるなどの規定が明記されており、その中には「外資規制」もある。

NTT法廃止については情報誌『選択』(11月号)が「NTT法廃止という亡国」という記事を出している。それは「杜撰なロジック、大義のない議論」だとして、その亡国性を突いたものである。

また、この議論の過程で、甘利PTがNTTや携帯電話業者のKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社の意見を聞く場を設けたが、廃止を主張するNTTに対し、他の3社が廃止はNTTの巨大化許し「公正な競争」を阻害すると反対し、議論が「公正な競争」を論議になったことも「巧妙な『論点外し』」と指摘する。

ただ、『選択』誌は、「NTT法廃止には外資規制の重要問題もあるが、紙幅も尽きた」として、これが米国外資への売却という点を述べようとせず、結論も「将来、ユニバーサルサービスが失われ、しかも通信インフラが中国資本に握られる・・・」などとと、中国が日本の情報インフラを握る危険性があるかのようになっている。

「米国隠し」は、日本マスコミの宿命とは言え、残念なことである。

◆米国への日本の統合を見てこそ浮き彫りになる問題の本質

『選択』誌が指摘するように、NTT法廃止議論は、「杜撰なロジック」「巧妙な『論点外し』で、物事の本質が見えにくい。しかし、この問題も米国が米中新冷戦での最前線に日本を立てるために、日本の全てを米国に統合するという政策との関係で見れば、その狙いと問題の重要性が浮き彫りになる。

それは米国が日本統合のために通信インフラまで掌握しようとしているということであり、甘利やそのPTメンバー、荻生田政調会長、岸田首相など自民党中枢は、それに応じてNTT法を廃止して、その株式を米国外資に売却しようとしているということである。

元々、甘利は、TPP(環太平洋貿易協定)交渉でデータ主権放棄を米国に約束した人物であり、TPP交渉の過程で「国境をまたぐデータの自由な流通の確保、国内でのデータ保存要求の禁止という原則」を受け入れている。そして2020年1月に、安倍政権は、それを「日米デジタル貿易協定」として締結し、自らデータ主権を放棄している。当時、トランプ大統領は、この締結について「4兆ドル相当の日本のデジタル市場を開放させた」と自身の成果を誇っている。

NTT法廃止問題は、データ主権放棄の更なる深化である。

今、データに関しては、これを集約利用するクラウドが重要になっている。それ故、岸田政権は6月の骨太方針で「国産クラウド」育成の方針を打ち出した。それはデータを米国に握られる危険性を承知している日本経済界の要望を入れたものだろう。今、日本のクラウド市場では米国3社が60-70%のシェアを占める。その危険性は日本の大企業も充分承知しており、日本製のプラットフォームやシステムを採用している企業や地方自治体も多い。

「国産クラウド」が言われた時点では、マスコミなども、「日本勢の健闘が期待される」などと言っていた。そこで期待されたのは、NEC、富士通、そしてNTTであった。その中でも、かつて公社であり、NTTドコモなど高い技術力を持つNTTであった。

まさにNTT法廃止は、このNTTの経営権を米国に売ることで、「国産クラウド」の芽を潰し、日本のデータを日本勢が管理する道を阻害するものになるということである。

それだけに止まらない、NTTは日本の通信インフラ(固定電話回線、光ファイバー回線、電柱、管轄、局庁舎など)を握っており、米国は、それまで掌握しようとしているということなのだ。通信インフラ自体を握れば、徹底して日本の情報(データ)を握ることができるし、今後起こりうる「反逆」も潰すことができる。

今、米国覇権は崩壊の度を増している。ガザでのイスラエルの虐殺蛮行を容認する米国への非難の声が世界的に高まり、日本が米中新冷戦の最前線に立たされ「新たな戦前」が言われる中で、米国一辺倒、米国覇権をあてにした生き方が本当に日本のためになるのか、それで日本はやっていけるのかという声が高まっている。

「これを何としても阻止し、反逆は許さない」、NTT法を廃止して、社会のデジタル化の基礎である通信インフラを掌握しようとする米国の意図はそこにある。

NTT法を廃止して、NTT株を米国外資に売るということは、それだけの重大性を持っている。そこに「亡国」の本質がある。

◆「公共性」を守り、国民の財産を守る

NTT法廃止問題は、公共性を維持保障するための規制を廃止するかどうかの問題である。

84年制定のNTT法は公共性に基づいている。電信電話という情報インフラは公共のものであり、それは国民の財産であり、国として守らなければならないという考え方である。

NTT法が、「固定電話によるユニバーサルサービス」や「研究開発」を義務づけたのもそのためである。

これに対し、NTTの現経営陣は、固定電話によるユニバーサルサービスが加入者の減少によって赤字になっていることや研究開発義務が外国企業との共同研究の足かせになっていると主張する。

それは、まさに日本の通信をGAFAMに委ね、日本独自の研究を止めて米国との共同開発を進めるという米国の下への日本の通信の統合のためのものだ。

彼らは、それを「NTT法は40年前の時代遅れの規定」として正当化する。

40年前、「JAPAN AS NO.1」と言われた日本の競争力を削ぐため、米国は、日本の国営企業を問題視し、3公社(日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社)の民営化を要求してきた。

日本政府はその要求に応じて、日本電信電話公社を民営化したが、民営化されたNTTが営業本位に走り、公共性を放棄しないように、NTT法を制定したのであり、当時は、そうした考え方が健在であったのであり、「外資規制」も米国外資がNTTを買収する危険性を防止するためのものであったと見ることができよう。

NTTが所有管理している電柱、管轄、局舎などは加入者の使用料や国民の税金で作られたものであり、国民の財産である。

KDDI幹部の「民営化前に15兆円、現時価で40兆円の国民の資産を継承している責任は重い」、「許せば、NTTは過疎地や離島での固定電話サービスを止める」の指摘はもっともなことである。

これと関連して、イーロン・マスクが進めているグローバルな衛星通信網「スターリンク」との関係で、固定電話によるユニバーサルサービスなど時代遅れだとの論説が流れた際、総務省幹部が「馬鹿な わが国の緊急通報をイーロンマスクに委ねろというのか、スターリンクに低廉な料金やサービス維持の仕組みはない。明日やめるとマスクが言えば万事休すだ」と反論しているが、まったくその通りであろう。

 

魚本公博さん

公共とは皆のものということであり、NTTは国民皆のものである。それを米国外資に売却するなど許してはならないと思う。

岸田政権は、甘利PTの提案を受け、来年8月の国会に法案を提出したいとしている。

事は国民の財産を守るのか、米国に売り渡すのかの問題であり、甘利PTのような自民党内の狭い議論ではなく、国民的な議論にしなければならない。こうした議論の中で、「亡国」のNTT法廃止の法案を廃案にさせなければならないと切に思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

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◆一帯一路「国際協力フォーラム」

去る10月17日と18日、中国の北京で第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが開かれた。

10年前、習近平主席の提唱でつくられたこの巨大経済圏構想「一帯一路」には、現在、国連加盟国193カ国中約8割の152カ国が参加しており、今回のフォーラムには、20カ国の首脳が登壇した。

だが、2017年、第一回フォーラムの時は、29カ国、2019年、第二回フォーラムでは、38カ国の首脳が参加していた。

それに比べ、今回の首脳参加が減り、特に欧州からの首脳の参加がハンガリーのビクトル・オルガン首相一人だけだったのは事実だ。

これをもって、米欧側は、中国の力の減退を騒ぎ立てている。

◆一帯一路の評価で決定的に欠けていること

一帯一路に対する上記の米欧側の評価には決定的に欠けていることがあるように思われる。

それは、2017年、2019年から2023年、この数年の間には、2019年、米国が中国に対して仕掛けた「米中新冷戦」があったという事実だ。

この「新冷戦」で米国は、全世界に向け、中国に対する包囲を呼びかけた。

クァッド(米、日、印、豪)による包囲、広範な「民主主義陣営」による中国をはじめとする一握りの「専制主義陣営」に対する包囲、その他にも包囲は、ネットや最先端技術など、「経済安保」の広範な領域にまで及んだ。

問題は、こうした包囲の結果がどうなったかだ。

今回開かれた第3回国際協力サミットフォーラムで最も注目すべきは、このことだったのではないだろうか。

だが、残念ながら、日本の大手メディアにあっては、こうした視点からの今回のフォーラムについての分析が何もなかったように思う。

◆「フォーラム」で何が明らかになったか

確かに今回の「フォーラム」への欧州各国からの参加はなかった。

しかし、アジア、アフリカ、中南米、南太平洋地域などいわゆる「グローバルサウス」の国々から、140余りの国々、30余りの国際機関の代表が参加した。

これは、米国によって仕掛けられた中国に対する包囲網が完全に破れていること、すなわち「米中新冷戦」がすでに大きく破綻しているということを見ることができるのではないだろうか。

一方、この一帯一路に対して、米欧側は、「債務の罠」だとの攻撃を強め、一帯一路に基づく中国の援助により途上国、グローバルサウスの国々が借金漬けに陥り、借金の形に中国に隷属化されていっているというキャンペーンを強めている。

実際、これが事実無根の誹謗中傷ではなく、こうした現実があるのは事実のようだ。

今回の「フォーラム」でも習近平主席自身、鉄道や道路建設など大規模投資中心から小規模事業投資優先、人への投資へと援助のあり方の転換を打ち出し、環境問題やきめ細かい支援を重視する姿勢を明らかにしたという。

この発言が単に米欧側の覇権の競争相手、中国に対する「債務の罠」攻撃をかわすための虚言なのか、それとも真に途上国への支援のあり方の改善を考えてのものなのかは、これからの「一帯一路」の進展がどうなるか、その現実によって判定されるのではないかと思う。

その上で、重要なことは、この開発援助こそが、米欧による援助と中国による援助を分ける決定的な違いになっているということだ。

米欧が新自由主義経済の見地から、経済自由化の法整備を強調し、市場メカニズムが貫徹されれば自ずと経済成長が実現されるというカネを出さない「援助」なのに対し、中国による援助が成長の起動力として大規模プロジェクトの必要性を痛感している途上国の要求に応えるカネを出す援助になっているということだ。

ユーラシア全土にわたる広域開発計画で、一帯一路の双方で交通、通信、エネルギー等のインフラの接続などの開発構想を提示しているのなどは、その一例だ。

今日、中国の一帯一路が「シルクロード経済ベルト」(一帯)、「21世紀海上シルクロード」(一路)の枠を超え、アフリカ、中南米、南太平洋地域にまで広がって行っているのには理由があり、この辺に「米中新冷戦」による中国包囲網が完全に破綻した要因があると言えるのではないだろうか。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆はじめに

 

10月下旬のフジTV「プライム・ニュース」では「“世界動乱の時代” の幕開けか」というテーマを取り上げた。ウクライナ戦争に続くハマスの軍事行動を契機に露わになった世界の現実を「(米国中心の)国際秩序の破綻か」としてとらえたものだった。

2023年は「パックスアメリカーナ(アメリカによる平和)の終わり」を世界が見、なかでも日本の誰もがそのことを知るようになった年になった。来るべき新年は「米覇権秩序の破綻」という現実を前提にこれにどう対処するかが問われるだろう。

とりわけ米国によって「対中対決の最前線」の役割を担わされたわが国にあって、それは明日のわが国の運命に関わる問題、他人事ではない。

◆「G7の孤立」さらした広島サミット

5月末にG7広島サミットが開催された。米国を中心とする「G7=先進国」が世界をリードするという会議だ。ここにはロシア制裁、ウクライナ支援に中立的態度をとるグローバルサウス数カ国首脳が招待され、目玉はゼレンスキー大統領出席の下、ウクライナ支援を世界に訴えるというものだった。

G7の「普遍的価値観、法の支配に基づく国際秩序」はG7会議が自ら認めるように、いま時代の厳しい挑戦を受けている。挑戦者は何も中ロ「修正主義勢力」だけではない、いまグローバルサウスと呼ばれる発展途上諸国が古い国際秩序から離反しつつある。

広島サミット後、G7に招待されたグローバルサウス諸国はこうG7を批判した。

「ウクライナとロシアの戦争のためにG7に来たんじゃない」(ルラ・ブラジル大統領)。インド有力紙は「ゼレンスキー氏の存在に支配されたG7」見出しの記事を配信。インドネシア有力紙は「世界で重要性を失うG7」見出しの記事を掲載、ベトナム政府系紙は「ベトナムはどちらか一方を選ぶのではなく、正義と平等を選択する」と書いた。

広島サミットはグローバルサウス諸国を取り込むどころか彼らの離反を招き、逆に「G7の孤立」を世界にさらす場になった。

8月、南アで開催のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)首脳会議では新たにサウジアラビア、アルゼンチン、イラン、アラブ首長国連邦、エジプト、エチオピアの6ヶ国の参加が認められ、BRICSはG7とは一線を画する新興国の国際秩序形成の巨大集団になった。

また9月にインドで開かれたG20首脳会議ではG7諸国が求めたウクライナ問題、「ロシアの侵略」明記やロシア非難の文言のない首脳宣言が採択されたことが世界の注目を集めた。また会議ではAU(アフリカ連合:20ヶ国網羅)の加入も決定され、G20でもG7先進諸国は全くの少数派に転落した。

今年、英国エリザベス女王の国葬の際、アフリカのある首脳は「女王は一度も植民地支配への謝罪の言葉を述べなかった」と不満を語った。また5月のチャールズ国王戴冠式の際にはインドと英国の間で若干もめごとがあった。カミラ王妃が即位式でヴィクトリア女王の王冠をかぶるかどうかを巡って起こったものだが、王冠の巨大なダイヤモンドは英国がインドから奪ったインド植民地化の象徴だったからだ。結果はその王冠をかぶらなかったが、インドは不快感を示した。7月に西アフリカのニジェールでは若手将校によるクーデターが起き、駐留フランス軍は年内撤収に追い込まれたが、いまも植民地主義の名残がしこりを残していることを示すものだった。

G7の「米欧日」先進諸国というのはかつての植民地主義者、帝国主義列強諸国だが、「韓国併合」を(当時の)国際法的に合法とする日本だけでなくかつて自分がやった植民地支配をまともに反省総括した国はどこにもない。「反省の模範」とされるドイツにしても「ナチスの残虐性」を反省しただけ、植民地主義に関しては反省も謝罪もない。米英仏「連合国」側の諸国は自分たちが「反ファッショ」正義の「民主主義国」側ということで反省の必要も感じていない。

だから「G7がリードする」米国中心の国際秩序はかつての植民地支配秩序の現代版「覇権秩序」に過ぎないことをグローバルサウス諸国は知っている。 

よって彼らがBRICSやG20でめざす国際秩序は、各国の主権尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決といったASEANのような脱覇権の新しい国際秩序形成をめざすものになるだろう、パックスアメリカーナ、米覇権専横の時代は歴史の遺物として排斥される。

◆とどめを刺したハマスの先制的軍事行動

「パレスティナ置き去り-焦り」(読売10/9朝刊)-10月8日のハマスのイスラエルへの先制的軍事行動に対するマスコミの見方だ。サウジアラビアがイスラエルとの国交交渉に入り、UAE(アラブ首長国連邦)はすでに国交を結んだ、こうしたアラブ諸国の動きに「置き去り」にされるとの「焦り」をハマスの今回の軍事行動の理由としたが、果たしてそうだろうか?

そのような消極的なものではなく、パレスティナ国家樹立に向けた主導的、攻勢的、戦略的な観点に基づくものだという見方も可能だと思う。

その根拠は一言でいって、いまは米国の覇権力が衰亡段階にあることが明らかであり、よって米国の支えのないイスラエルなど怖くないとハマスが判断することはじゅうぶんありうることだ。

米国はいま、主戦場の対中対決に加え、ロシアの先制的軍事行動によるウクライナ戦争で「対ロ」の加わった二正面作戦を強いられ青息吐息なのに、このうえ「対中東」が加わる三正面作戦などとうてい耐えられるはずがない。だからいまはイスラエルとの戦争は負けない、いや勝てる-私たちにも想像できることが当事者のハマスにわからないはずがない。

事実、ハマス侵攻からほぼ1ヶ月も経った現在(10/31)、大量の戦車部隊待機のままイスラエルは空爆だけに終始している。イスラエル軍ガザ地区制圧戦争は北部の局地的侵攻に留まり「かけ声」だけに終わっている。「地上侵攻でハマス殲滅、ガザ地区完全制圧」を叫び、やられたら「十倍返し」が通例のイスラエル軍としては異例の事態になっている。米バイデン大統領自身「人質救出まで侵攻を停止するように」とイスラエルに圧力をかけたということだが、「人質救出」は「口実」、本音は「戦争にはするな」にある。最近は「中東地域派遣の米軍が攻撃を受けるから(実際、ヒズボラやフーシ派から無人機、ロケット攻撃を受けた)しばらく侵攻を控えてほしい」などと言い出している。

米国、イスラエルに戦意がなければいずれ停戦合意は成り、パレスティナ問題解決が国連などで上程され、発言権を失った米国に代わってロシア、中国、グローバルサウスの非米諸国が主導する解決案をイスラエルも受け入れざるを得なくなる事態に進むかも知れない。少なくともその可能性を秘めている。宿願のパレスティナ国家樹立も夢ではなくなる。

米ロ代理戦争のウクライナ軍「反転大攻勢」が半年以上も「かけ声倒れ」に終わり、最も軍事支援に積極的だったポーランド大統領が「ウクライナは溺れゆく人、なんにでもしがみつく。危険だ」とまで言うようになったが、ウクライナ事態に続く中東でのハマスの軍事行動は「米国の無力ぶり」を世界が知る上でとどめを刺したと言えるだろう。

◆動揺始まる日本の政界

2023年を通して「国際秩序の破綻」、すなわち「パックスアメリカーナの終わり」は、ウクライナとパレスティナでの戦争を通じて世界が眼にすることになった

米国によって対中対決の最前線を担う決断を迫られているわが国の政治家、政治勢力もこの「時代の潮目の変化」を誰よりも注視しているはずだ。先の鈴木宗男氏の大胆な訪ロ行動と「ロシアは勝つ」発言も「米国の終わり」を見越したものだろう。岸田派古参幹部の古賀誠氏は「日米安保に引っ張られすぎるのは危険だ」と岸田政権を批判した。対中対決を迫る米国との「無理心中」を躊躇する政治家、政治勢力が出てくる、いや、すでに出ていることを示すものだと思う。

新年に持ち越されたが「日本の代理“核”戦争国化」は米国の対中対決、対中“核”抑止力強化で譲れない日本への要求だ。これは何度もこの通信に書いたので詳細は省くがいつか必ずこれを押しつけてくる。「米国の終わり」の見えるいま、「米国との無理心中」を躊躇する政治家、政治勢力が出てくるだろうが、誰かを待つのではなく「無理心中拒否」の闘いを主導する政治家、政治勢力が出るべき時だと思う。

米国も日本国民の非核意識を恐れて虎の尾を踏まないように慎重に事を運んでいる。それは彼らの弱点でもあるということだ。ハマスの先制的軍事行動とまで行かずとも、主導的に非核を掲げ「核持ち込み」「核共有」を許さない「代理“核”戦争国化」阻止の積極的闘いを挑む時、日本人の性根が問われる時に来ている。

ピョンヤンからは「時代の風」を伝えることしかできないが、国内からこのような闘いが起こることを新年は期待している。いまはそのような時だと思う。

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

最近のマスコミ紙面を賑わせているのは「汚染水放出」「ビッグモーター」「ジャニーズ問題」「風力発電汚職」などである。その一つ一つは、それぞれの問題がありSNS上でも論議されている。しかし何か的はずれの感を否めない。

今、米国は衰退する覇権回復のために米中新冷戦を掲げ、日本をその最前線に立たせるために日本を米国の下に統合する「日米統合」を異常なほどの早さで進めている。

このことを見なければ物事の本質が見えてこないのではないか。米国とその追随勢力は何を狙っているのか。今回は最近の各「事件」を読み解きながらそれを探っていきたいと思う。

◆風力開発収賄事件 ── 米国の狙い、「日本のエネルギー自立は許さない」

先ず、地検特捜部が動いた「風力開発収賄事件」から見ていきたい。地検特捜部は米国の機関というのは常識であり、そうであれば、そこに米国が何を問題視し、何を狙っているのかが分かるからだ。

この事件は、秋本衆院議員が、洋上風力の用地入札を巡って、その入札基準をこれまでの「価格」から「早さ」に替えるように国会質問などで要求したことが、「日本風力開発」に便宜を図った収賄事件であるとして摘発されたものである。

「日本風力開発」の坂脇社長の「自前のエネルギーが日本の安全保障を支える。風力が日本にとっての石油になる」との言葉は日本の国益にもかなった正しい見解だと思う。それ故23年3月に、国交省、経済産業省も評価基準を「安さ」から「早さ」に変更している。

風力発電は脱原発であり、米国は、「それは許さない」ということだ。

何故か? 日本はエネルギーでは米国に依存している。石油もさることながら、原子力も濃縮ウランは米国が供給している。米国は日本のエネルギーを支配することで日本を従属化しているのであり、日本のエネルギー自立を絶対に許さない。それは70年代に田中角首相が「自主資源外交」を唱え、ロッキード事件で失脚させられたことでも明らかだ。

風力発電では中国が世界の先端を走っており、風車などの設備も安価なものが世界を席巻している。日本で風力発電を進めれば、中国との関係が深くなる可能性は高い。

米国は、これを警戒しているのではないか。

米中新冷戦で日本をその最前線に立て中国と対決させようとしている米国にとって、日本が「自前のエネルギー」開発を進めて、「エネルギー自立」を図ることなど許せないことであり、ましてや中国との関係を深くすることなど、わずかな兆候でも許せないことなのだ。

◆汚染水放出問題 ── 米国の狙い、「日本と中国の対決を煽る」

内外の反対を押し切って福島原発で溶解したデブリを冷却した汚染水の海洋投棄が始まった。その結果は安全であるという「処理水安全」キャンペーンが張られている。

しかし放水は、廃炉まで続けなくてはならず、政府が言う、30~40年でなど政府自身も信じておらず、世界の専門家は200年、数百年は掛かるだろうと見ている。それまでの安全性を一体どうやって保証すると言うのか。無責任も甚だしい妄言だとしか言いようがない。

その安全性はIAEAが保証していると言うが、IAEAとは米国の核覇権体制であるNPT体制のための機関であり、実質、米国の機関である。

そのお墨付きで行った汚染水放出強行は米国の後押しで行ったということであり、そうであれば米国は何故、今、汚染水放出を強行させたのかを考えなければならない。他の方法は幾らでもあり、内外の専門家も貯蔵を継続し、その間に安全な他の方法を採用すればよいといっているのに、何故、今、それを強行させたのか。

これも米中新冷戦の下で米国は日本を対中対決の最前線に立たせようとしているという関係の中でこそ見えてくる。

即ち、対中対決のためには中国敵視の雰囲気を高めなくてはならず、そのために汚染水問題をもって、それを煽るということだ。

中国は汚染水放出に反対し、それを強行すれば、相応の措置を取ると明言してきた。だから放出強行に対して中国が日本の海産物輸入禁止などの措置を取ることは当然予想されていたことであり、それを利用して反中国キャンペーンを行うことは既定のスケジュールだったということだ。

汚染水問題では、政府の見解以外は全て「偽情報」とし、マスコミもこれに従えという報道管制が敷かれている。そこでは「汚染水」と呼ぶこと自体が偽情報であり、中国が汚染水放出の停止を要求し日本の海産物の全面禁輸措置をとったことも偽情報によるものとされている。

この戦前を髣髴させる大本営報道の渦の中で、汚染水放出に反対したり疑問を抱くことは非国民にされかねない状況になっており、対中対決の雰囲気が煽られている。

「処理水安全」キャンペーンは、そのためのものだということである。

その上で、「汚染水安全」は、米国の核戦略の上からも絶対必要なものであることを見ておかなければならない。

米国の核戦略は、原発と結びついている。原発稼動の過程で出るプルトニウムが核兵器の原料になるからである。そして原発からは必然的に汚染水が出るのであり、これを海洋放棄するしかない。その「安全性」はIAEAという米国の機関が「保証」するという自分で自分の正当性を「保証」するものでしかない。

米国が核覇権を維持するためには原発がなくてはならず、「汚染水放出は安全」でなければならないのであり、そのためにも「処理水安全」キャンペーンが張られているのだ。

さらには「汚染水は安全」は米中新冷戦で日本を最前線に立て核の共有化という「核武装」させるために桎梏となる日本人の核アレルギーを弱化圧殺するためのものになるということも見ておかなければならない。

今、米国は、日本を対中対決の最前線に立たせ、敵基地攻撃能力を保有させ、それに核を搭載する核の共同保有を狙っている。そこでネックになるのが被爆国日本の核アレルギーである。そこで「汚染水は安全」から「原発は安全」にすることで日本人の核アレルギーを弱化させ解体していく。そして日本人に核戦争の覚悟をさせる。

それは、米軍が指揮権をもつ核の共同保有の覚悟、米軍の指揮によって日本が核の戦場にされるといいうことであり。米国覇権のためにウクライナのような米国の代理戦争、それも核代理戦争をやらされるということである。

◆ビッグモーターとジャニーズ ── 米国の狙い、「日本的システム」は解体する

日本の自動車業界では中古車市場が独特の地位を占めている。日本車は高品質で中古品でも海外で人気があり、多くの輸出が行われている。自動車業界もこれに目を付けて新車を中古車として売るなどしており、これは米国の神経を逆なでする実質ダンピングになっている。

自動車を所有すれば自動車保険に入らなければならない。保険会社にとって自動車保険は大きな市場。そこで損保各社が中古車販売会社に出向して、その保険を取る。そのために中古車会社が意図的に自動車に傷をつけたものも賠償する。そうした持ちつ持たれつの関係を破壊する。それは米国保険のこの分野への進出を図るものになる。

日本的システムの破壊は、日米統合のために不可欠だ。「ビッグモーター」問題で経済産業省が動き「社長の辞任だけでは済まない」と息巻いている背後には米国がある。

今、日本では米国ファンドが「もの言う株主」として様々な業界で、米国式の株主主体の会社にせよと要求しているが、日本的システムもその標的にされている。そうした関連の中で、「ビッグモーター」問題があるということを見なければならないと思う。

一方、ジャニーズ問題は、久しい以前から様々なメディアに取り上げられて来た。それが今になって、世界のメディアも取り上げる大事件、日本のテレビ業界、マスコミ、広告企業も巻き込む大事件として連日のように報道されている。

その報道ぶりに、「何故、今になって」との声も聞くが日米統合のためという観点から見れば、その疑問も解ける。

今ジャニーズは社名を「SMILE-UP」に変更し、タレントと個別にエージェント契約を結ぶ形式を基本にした経営を行う、内部通報制度を改革するなどの方針を打ち出している。

それは、米国式経営だということではないか。

日本の場合、芸能会社が強く、それにテレビ界、マスコミ界が関与して、強固な「芸能村」を形成してきた。この封建的とも言える日本的なシステムを解体し、米国が日本の芸能界や芸能村を指揮し管理する、そうした狙いがあるのではないか。

確かに古めかしい日本的システムを解体することは必要である。しかしそれを壊して米国が日本の芸能界、芸能村を取り仕切るということになってはなるまい。

問われているのは、芸能人や関係者が主体的に時代に合った新しい日本のシステムを作っていくことだと思う。

◆日米統合一体化を促進する「資産運用特区」

9月22日に岸田首相がニューヨークで講演し、「資産運用特区」を創設して、ここに外資を呼び込むという政策を発表した。

岸田首相は、これまでもNISA(小額投資非課税制度)の拡充、恒久化に取り組んできたと述べながら、今後さらに「資産運用の高度化を進め、新規参入を促進し、資産運用特区を始めとした各種の規制緩和を通じて運用能力の高い海外人材の受け入れを積極化する」と表明した。

要するに日米統合一体化を促進し、日本国民の2000兆円もの資産を外資に開放するということである。

その講演では「英語のみで行政対応を完結できるようにする」とある。90年代に規制緩和を要求してきた米国に対し、「これじゃあ、日本語も障害になると言われかねない」と笑い話し的に語られたが、今や笑い話しではなくなったということである。

岸田首相は「日本独自のビジネスルールの是正」にも言及している。上で述べたような「中古車市場」「芸能村」などのルールも日本独自のビジネスルールであって、それをなくして日本を外資が自由に闊歩するような「外資天国」にして、一体どうしようと言うのか。

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魚本公博さん

米中新冷戦で日本を対中国対決の最前線に立たせる、そのために日本の全てを米国に統合する。そこから見てこそ、物事の本質が浮き彫りになる。それは日本国民の財産を米国に売り渡し、ひいては日本の国土を米国の代理戦争、核代理戦争の場に提供するところにまで至るものとしてある。

そのようなことを決して許してはならない。今、日本には様々な問題が山積している。しかし、それを正すのは日本、日本人でなければならず、決して米国やそれに追随する者たちであってはならない。

今ほど、日本人としての主体的な対応が求められている時はないと思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

◆「汚職大国」、ウクライナ

先日、ウクライナで兵役免除と引き換えに賄賂を受け取る汚職が続出し、全州の軍部委員会トップ全員の解任が行われた。

周知のように、今、ウクライナにおいて、成人男子の出国は禁止されている。兵役を免れるため、成人男子が海外に逃亡するのを防ぐためだ。

そのウクライナで兵役免除のための賄賂が横行しているというのだ。

これは、戦争の行方を左右する大問題だ。

だが、今日、ウクライナでは、こうした由々しき深刻な汚職問題が至る所で、日常茶飯事になっている。

兵士らの食料調達や軍服購入が小売価格、通常価格の2~3倍で行われていた事実、国防省の調達責任者が使い物にならない防弾ベストを購入、調達費を着服していた事件、等々、明るみに出た事実だけでも枚挙に暇がない。

一方、政府や軍部高官の特権を使った生活や遊興も目に余るものになっている。高級住宅や別荘、高級自動車の購入や海外行楽地、避暑地での豪遊、等々、国民が戦火の中、家を失い、命を危険にさらしながら飢えに苦しんでいる時、これはあり得ないことだ。

この間、戦争勃発以来その任にあった国防相、レズニコフが更迭になったのをはじめ、少なからぬ政府、軍部の幹部、高官たちが相次いで解任になっているが、その原因も、主としてそのためだという。

そうしたウクライナを指して言われている言葉がある。それは、「汚職大国」だ。

◆「汚職大国」、その原因を問う

これまで、ウクライナと言えば、「苦難に耐え、国民皆が一致団結して、ロシアに抗戦している」、そんなイメージだった。

だが、現実はそうではない。その落差は大きい。

なぜそうなのか。それを説明するものとして出されてきているのが「汚職大国」だ。

もともと「ソ連帝国」にはびこっていた官僚主義、それと一体だった「汚職大国」がこの戦火の中で蘇ったというのだ。

ソ連の一部だったウクライナがロシアともどもそうなるのは必然だ。少なからぬ識者がそう言っている。

それも一理あるかも知れない。人間過去と無縁ではない。かつての悪弊が蘇ることは十分にあることだ。

だが、現実に今生まれている問題の原因を過去にのみ求めるのはいかがなものか。やはり今起きていることの原因は、今ある現実の中に求めるのが基本だと思う。今ある現実を見ようともせず、過去にのみ原因を求めるのは間違っているのではないか。

今ある現実で決定的なのは、このウクライナ戦争が、その本質において、ウクライナとロシアの戦争なのではなく、米欧とロシアの戦争であり、ウクライナは、その狭間で、米欧に押し立てられ、代理戦争をやらされているという事実ではないかと思う。

この戦争が勃発する以前、米英をはじめとする米欧によるロシア包囲は、甚だしいものになっていた。

この30年近く続いてきた旧東欧社会主義諸国のNATO化の締めくくりとして、ロシアと国境を接する大国、ウクライナのNATO加盟が日程に上らされていたこと、米英がその軍事顧問団や大量の米国製最新兵器をウクライナに送り込み、その対ロシア軍事大国化を推し進めてきていたこと、さらには、東ウクライナに多数在住するロシア系住民へのファッショ的弾圧と虐殺が敢行されていたこと、等々。

これらが、米国家安全保障会議で、「現状を力で変更する修正主義国家」だと中国とロシアを名指しで決めつけたのに基づき、中国に対しては、「米中新冷戦」が公然と宣布され、その一方、ロシアに対しては、その包囲殲滅への準備が隠然と推し進められてきたのがこの間の歴史的な事実だ。

この分断と各個撃破の米覇権回復戦略に対して、プーチン・ロシアが米英覇権を中ロへの二正面作戦、引いては「グローバルサウス」など非米反覇権勢力全体を敵に回す戦争に引きずり出し、米英覇権との闘いに決着をつけるため敢行したのが先のウクライナに対する「特別軍事作戦」に他ならないと言えるのではないだろうか。

この戦争において、ウクライナは、米英覇権の矢面に立たされ、米英に代わって代理戦争をやる役を押し付けられている。

この押し付けられた代理戦争の傀儡指導部がどういう精神状態に陥るか、それは推して知るべしだと思う。

事実、2019年、「米中新冷戦」が宣言された年、奇しくもウクライナ大統領に選出されたゼレンスキーが数百万ドルの別荘、十数億ドルに上る預貯金を海外数カ国に分け持ち、自らの親族は、戦争勃発の前にイスラエルに退避させていた事実は、すでに公然の秘密になっている。

なぜウクライナが「汚職大国」になったのか。そのもっとも基本的な原因がどこにあるのかは、余りにも明白なのではないだろうか。

◆問われている日本の選択

「汚職大国ウクライナ」を前にして、今、われわれに問われているのは何か。

それは、何よりも、日本の進路ではないかと思う。

ウクライナの汚職と日本の進路、それは、米覇権の運命を通して、密接に結びついている。

一言で言って、ウクライナの汚職は、米覇権の崩壊を意味していると思う。

ウクライナ戦争でのウクライナの敗北、それは、米覇権の崩壊に直結していると思うからだ。

ウクライナ戦争が始まって以来、米覇権の崩壊は一挙に顕在化した。国連でのロシア非難、ロシア制裁決議、それは、最初のほぼ満場一致から棄権、反対の続出まで、米国の意思は急速に通らなくなっていった。

国際決済機構SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)からのロシアの排除など、ロシアに対する経済制裁は、ロシアの米欧市場からの撤退と中国を含む非米市場への参入から生じる世界的な物価高騰、欧米の経済危機など、むしろ米欧側により大きな被害を及ぼし、ロシアと中国など非米世界の結びつきを強め、その勢力拡大を生み出している。

BRICSやG20など世界的な諸会議でも米欧側の衰勢は顕著で、もはやその意思が影響を及ぼせるのはG7ぐらいしかなくなり、そのG7も、招請した「グローバルサウス」の国々のウクライナ戦争支持を取り付けることもできなくなっている。

ウクライナへのもっとも熱心な支援国、ポーランドまでその軍事支援中止を表明したこと、事態はここまで進展しているのだ。

こうした米欧覇権力の低下にあって、ウクライナ戦争の結果がもたらす影響は決定的だ。ウクライナ戦争での敗北は、すなわち、米覇権の最終的崩壊を意味している。

「ウクライナの汚職」に米覇権の呪縛から解き放たれた脱覇権日本の未来を見る。

それこそが今、日本に問われていることではないだろうか。

その時が近づいていると思う。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆代理“核”戦争国化の鍵、「有事の際の核使用協議体」

日米韓キャンプデービッド首脳会談を前にした本連載(8月5日付けデジタル鹿砦社通信)で次のように書いた。

“主要議題について「“核の傘”を含む米国の拡大抑止の強化も議論するとみられる」とすでに報道にあるように、日米韓“核”協議体創設について何らかの合意をめざす、これが米バイデン政権の狙いであろう。”

でも今回、このような合意は見送られた、しかし何としてでもこれを実現したい米国はきちんと布石を打ってきた。このことを以下、見てみたい。

なぜこれほど米国は日本の代理“核”戦争国化、そのための「有事における核使用に関する協議体」創設にやっきになるのか? 焦るのか? このことは8月5日付け本連載で詳しく述べたが、重要な問題なので視点を変えて、まずこのことを考えてみたい。

日本の代理“核”戦争国化は、米国にとって米中新冷戦戦略に必須不可欠の死活的課題だ。その理由は、対中対決で米核抑止力、特に戦域核領域、具体的には核運搬手段である戦術ミサイル(中距離ミサイル)分野では質量的に中国、朝鮮に圧倒的に劣り、「抑止」が効かない、つまり「威嚇」になっていない、そして戦争になれば必ず負けるというコンピューターシュミレーションの結果も出ている。

この劣勢挽回の切り札が「日本列島の中距離“核”ミサイル基地化」だ。

米国は戦略核ミサイル、ICBM(大陸間弾道弾)を使えば自国が核報復攻撃で壊滅的打撃を受けるから使う気はない。だから対中対決最前線と位置づける「日本列島の中距離“核”ミサイル基地化」が死活的課題になっている。

すでに岸田政権が閣議決定した「安保3文書」で敵基地攻撃能力保有、自衛隊に地上発射型「中距離ミサイル部隊」新設が決まった。最後に残った課題は、「核共有」論に基づく自衛隊の核武装化、そのためのNATO並みの「有事における核使用に関する協議体」創設だ。その切り札が韓国を巻き込んだ日米韓“核”協議体創設だと米国は考えている。

一言でいって、いまこの“核”協議体創設こそが対中対決で生死を決める最後の課題として残った。だがこれが簡単でないこともわかる。だから米国は必死だ、いやいまは焦っている。

では今回のキャンプデービッド会談でいかにその道筋をつけたか? このことについて見てみたいと思う。

◆「前のめりの米国」と書いた朝日

キャンプデービッド会談を評して朝日新聞(8月20日付け)はこう小見出しに書いた。

「前のめりの米 日韓のズレに懸念も」

「前のめり」ということは事を急いでいる、焦っているということだ。米国は何を急ぎ、なぜ焦るのか?

別の記事の見出しにはこうあった。

「日米韓、核戦略では温度差」

その内容はこうだ-「日本では核関与に前のめりな韓国への警戒心が強い」、首相官邸のある幹部は「(韓国に)取り込まれすぎるわけにはいかない」-要は「北朝鮮の核」対抗に積極的で「有事の核使用に関する協議」に前のめりの韓国に日本が引っ張られることへの警戒心が日本政府内にあるという「日韓のズレ」がある。この問題ではいちばん「前のめりの米」という朝日の評価は、「日韓のズレ」がわかるだけに「日米韓“核”協議体創設」合意を急ぎ焦らざるを得ない米バイデン政権の悪あがきを反映したものであろう。

非核を国是としてきた日本政府はできるなら国民の反発を受けるこの問題を避けたい、しかし岸田政権はこれが避けられない米国の強い要求であることもわかっている。本音は国民を説得する(世論を欺く)時間的余裕がほしいということだろう。

しかし「時間的余裕」はない。日米韓首脳会談を前に「日米韓でも拡大抑止(核)の協議を進めたい」とバイデン政権高官は述べた。そしてすでに4月末の尹錫悦((ユン・ソクヨル)大統領「国賓」訪米時、米韓間には米韓“核”協議グループ(NCG)新設が合意され7月には実務協議も稼働した、これに日本を引き入れ「日米韓“核”協議体」に発展させる、これが米国の最終的狙いだ。

このための仕掛けはすでに準備されている。

◆「仕掛け」役・尹錫悦(ユン・ソクヨル)

米国の狙う日本の対中・代理“核”戦争国化、その仕掛け役に任じられたのが韓国の尹錫悦大統領だ。

周知のように日韓関係「改善」を主導したのは尹大統領だ。彼は元徴用工賠償金問題で最悪化した日韓関係を「打開」すべく「賠償金の韓国立替」という離れ業をやった。このような韓国国民の猛反発を呼ぶ「売国行為」を敢えて犯してまでも日韓首脳会談開催につなげた。

 

『核の傘』日米韓で協議体創設、対北抑止力を強化……米が打診(2023年3月8日付け読売新聞)

尹大統領の「勇断」(バイデンの言葉)によって日韓首脳会談のメドが立った3月6日から二日後の8日、読売新聞は米国が日韓政府にこのような打診をしてきたことを伝えた。

「“核の傘”日米韓で協議体の創設」を! 

これを受けた尹大統領は4月末の「国賓」訪米時の「ワシントン宣言」に米韓“核”協議グループ(CNG)創設を謳った。これが日米韓“核”協議体創設の布石であろうことは明白だ。

今回のキャンプデービッドでの米韓首脳会談ではこのCNG稼働をバイデンが高く評価し、先述の言葉「日米韓でも拡大抑止(核)の協議を進めたい」を米政府高官に言わせた。

すでに韓国は「対北朝鮮・代理“核”戦争国化」に一歩足を踏み入れた。次ぎにこれを日本の「対中・代理“核”戦争国化」につなげる、その「仕掛け」役を「確信犯」尹大統領が果たして行くであろうことは疑いない。

◆「日韓を固定し米国を固定する」の意味

米国の執拗さと焦りの表現としてあるのが、今回の会談で日米韓首脳会談、閣僚級会談の毎年定例化、次官級協議の不定期定例化を「制度」として決めたことだ。

これを「日韓をフィックス(固定)し、米国をフィックスする」ことだと米政府高官は述べた。英語で「フィックス」は「動かないようにする」という概念だ。日本側からすれば「動けないようにされる」、縛り付けられるということになる。

読売社説はキャンプデービッド会談の意義を「今回の合意が極力継続するよう(日米韓)協力の枠組みを“制度化”したこと」としたが、制度化(固定化)しなければ揺らぐほど日米韓協力はもろいものだということの裏返しの表現でもある。

「日韓のズレ」は根強い、今回の日米韓首脳会談を論じる「プライムニュース」出演の日本の識者、政治家は「日韓の壁」「朝鮮半島の軍事は鬼門」「韓国とリスク共有は“?”、つまり疑問」とすべて悲観的だ。米国からすれば、だから日韓を「固定化」(会談の制度化)し「韓国とリスク共有」を渋る日本の尻を叩く必要があるということだ。

また韓国の尹錫悦政権は脆弱だ。大統領選でも僅差でやっと勝った、また国会は野党、共に民主党が絶対多数を占め政権側の法案も否決される場合が多い。それを強権で乗り切っているのが尹錫悦大統領だ。次期、大統領選では政権が変わる可能性が高い。だから政権が変わっても「今回の合意が極力継続するよう協力の枠組みを制度化」(読売社説)したのだと言える。

キャンプデービッドで日米韓「固定化」を強要したのも米国の焦りの表現だ。

今回、日米韓“核”協議体創設合意は見送られたが、「制度化」された首脳級、閣僚級会談、次官級協議で日本をフィックスし、がんじがらめに縛り付けた上で日米韓の「有事に関する核使用に関する協議体」創設は強引に進められるだろう。

◆「無理心中」同盟

いま西の米国の対ロ対決・代理戦争、ウクライナ戦争での米国の敗北は避けられないものになっている。

5月頃から「反転大攻勢」のかけ声勇ましいゼレンスキーだが、最近の「南部戦線でロシアの第一防御線突破」報道はあったが地雷原を越えた程度であり、2.5メートルという深い塹壕戦防御陣形をとるロシア防御線の戦車突破は至難の業だ。新聞報道ではもしこのまま冬が来ればぬかるみになる戦場で戦車も動かせなくなる。だから「戦果」を焦る米国はウクライナ軍を分散配置ではなく南部に集中させることをゼレンスキーに「勧告」、その結果がこの程度の「戦果」だ。ぬかるみが固まる来年春か初夏までゼレンスキーには何の「戦果」も得られない、「反転大攻勢」は空文句に終わる。このままでは来年以降の欧州諸国の「ウクライナ支援」は確実に動揺する、そう報道は伝えている。

ウクライナ国防相解任があったが兵士用の食糧、衣服が市場価格の2~3倍で購入され差額は汚職されたからだ。徴兵募集当局もワイロで「兵役免除」汚職蔓延で更迭改編されるなど醜態の続くゼレンスキー政権が国民から見放される日も遠くはないだろう。こんな代理戦争で誰が愛国心に燃えて「祖国防衛戦争」に命を懸けられるというのだろう。

フランスのマクロン大統領は訪中後、「欧州は対米従属を続けるべきではない」と言明して世界を驚かせた。英国を除く他の欧州諸国も心の中ではそう思っている。

ウクライナ戦争での敗北は米覇権の衰退滅亡を早める。それだけに東の米中新冷戦戦略実現に米国は自己の覇権の死活を賭けてくる。その矛先は対中対決・最前線とする日本の代理“核”戦争国化だ。

いまや「米国についていけば何とかなる時代ではない」どころか「覇権破綻の米国と無理心中するのか否か」が問われる時代になった。

今回のキャンプデービッド会談は日米韓「無理心中」同盟を日本に迫るものになったとも言える。

焦れば焦るほど米国の強引さは苛酷になるのは必至だ。岸田政権にこれを拒む力はないだろう。現在のままの野党政治勢力に期待するのも難しい。では希望はないのか?

◆希望はある

いま国民の間でタモリの「新しい戦前」という言葉が共有されつつある。これは日本という自分の国の運命を憂える心、自身の運命を日本に重ねる憂国、愛国の心の萌芽とも言える。この「新しい戦前」の正体が対中・代理“核”戦争国化、米国と「道連れ心中」の道であることが国民の共有する「身に迫る危険の正体」の認識になって、この憂国、愛国の心が大きな塊になれば、「新しい戦前」阻止の力になるだろう。


◎[参考動画]タモリ「(来年は)新しい戦前 になるんじゃないですかねぇ」(テレビ朝日『徹子の部屋』2022年12月28日放送)

いま政界再編に向けた動きが活発化している。その動きの底流には「新しい戦前」阻止の政治勢力の存在がかいま見える。

最近、岸田派(旧宏池会)古参幹部のハト派、古賀誠氏が次のような発言で岸田政権を批判した。

「日米安保に引っ張られすぎるのは危険だ」と。

古参の自民党政治家には「新しい戦前」の正体が何かはわかっているはずだ。

いま政界再編は二つの「改革」を巡るものになる可能性を秘めている。

一つは親米「改革」、日本の対中・代理“核”戦争国化、そのための日米統合「改革」推進勢力だ。

いま一つはその逆の改革を志向するいわば「新しい戦前」危惧の憂国、愛国の政治勢力だ。それはまだ萌芽にすぎないが、この政治勢力と「新しい戦前」危惧の国民の声が合体すれば大きな力になる可能性を秘めるものになる。

希望はある。だから希望実現に少しでも力になれるよう私たちも「ピョンヤンから感じる時代の風」発信を続けていく。

若林盛亮さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

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