携帯電話の基地局設置をめぐる電話会社と地域住民のトラブルが絶えない。2005年から、この問題を取材しているわたしのところには、年間で50件ぐらいのトラブル相談が寄せられている。わたしは取材すると同時に、問題解決にも協力している。

 

かつてわたし自身がトラブルに巻き込まれた体験があり、この問題の深刻さを熟知しているからだ。2005年、埼玉県朝霞市岡3丁目にあるわたしの住居(集合住宅)の真上にKDDIとNTTドコモが基地局を設置する計画が浮上したのだ。計画は頓挫させたが、そのための労力は大変なものだった。

基地局を設置する電話会社は、それがみずからの特権と言わんばかりに強引に目的を達する。過去には熊本市で九州セルラー(現、KDDI)が警備員を使って、座り込みの抗議を続けていた住民らを排除した事件が起きている。

その強権的な実態は、戦車が住居をなぎ倒して進んでいくイメージに類似している。しかも、無線通信網の普及が国策になっている関係で、マスコミはほとんど基地局問題を報じない。

本稿では、最初に基地局から放射されるマイクロ波が、人体にどのような影響を与えるのかを科学的な観点から説明する。その上で現在、さいたま市で起きている2件の事件を紹介しよう。

 

楽天の基地局

ひとつは、JR大宮駅の近辺に位置する高層マンションのケースである。事業主は楽天モバイルで、すでに基地局を稼働している。もうひとつはJR武蔵浦和駅に隣接する商業施設の中にあるタワーマンションのケースである。事業主はソフトバンクで、マンションの管理組合と協働して基地局設置に向けて計画を進めている。管理組合の理事長は、意外なことに「人権派」弁護士の集まりとして有名な東京法律事務所(新宿区四谷)の弁護士である。

◆市民運動体による誤情報

電磁波による人体影響で代表的なものとしては、①電磁波過敏症(吐き気、頭痛、耳鳴り、不眠など)と②電磁波の遺伝子毒性の2つである。他にも指摘されている人体影響はあるが、ここでは①と②に言及しよう。

しかし、本題に踏み込む前に、電磁波に関するいくつかの誤った情報を紹介しておこう。電磁波問題を科学の観点から検証するためには、何が客観性の乏しい情報なのかを把握しておく必要があるからだ。電磁波に関する情報は、誤情報が多いので、客観性の乏しいものを排除することが、科学的見地の最初のステップである。

たとえば「オランダ・ハーグで駅前に設置した5Gのアンテナ塔から実験電波を飛ばしたところ、隣接する公園の木の枝に止まっていたムクドリが次々に墜落し、297羽が突然死した」(『女性自身』)といった情報である。この情報は根拠に乏しい。このような現象は、ハーグ以外の場所では、どこも起きていないからだ。何か別に原因があると考えるのが常識である。

携帯電話基地局の下を歩くのは危険だという話もほとんど根拠がない。基地局からの電磁波は、極めて微弱で、携帯電話末端からでる電磁波の100分の1程度しかない。しかも、基地局の下を歩いて通過するわけだから、被爆の時間も短い。

問題なのは、微弱な電磁波であっても、それを1日に24時間、5年とか10年の期間で被曝した場合に、どのような人体影響が現れるかという点なのである。

さらに電磁波による人体影響を調べる際のアンケート調査の結果も誇張されていることが多いい。たとえば2008年にA医師が行った有名な調査がある。調査の発端は、A医師一家の住むマンションの屋上に基地局が設置されたことである。A医師の家族は、鼻血や精神攪乱などさまざまな症状に悩まされるようになった。まもなくA医師は、その原因が基地局からのマイクロ波に違いないと推察して、住居を引っ越した。それに伴い体調不良も回復した。

A医師は、マンション(47世帯)の住民に、聞き取り調査を行った。その結果、述べ170の症状が報告された。電磁波過敏症の諸症状に加えて、犬、小鳥、金魚などペットの死亡例も報告された。

マンションの管理組合は、調査結果を重大視して、電話会社に基地局の撤去を打診した。幸いに住民の要求は聞き入れられ、基地局は撤去された。
 
その後、A医師は再び住民を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、報告された症状は述べ22件に激減した。

この調査は、電磁波過敏症を立証したものとして、市民運動の中で髙く評価されている。しかし、冷静に考えてみると決定的な疑問に逢着する。それは日本中に無数の基地局が立っているにもかかわらず、なぜ、このマンションの住人にだけ顕著なかたちで体調不良が現れたのかという点である。

わたしは、調査の前段で電磁波には人体に対する害があるという情報があらかじめ住民の耳に入っていたからではないかと考えている。電磁波に関する事前の情報があったから、些細な体調不良も電磁波に関連づけた結果である可能性が高い。たとえば頭痛や不眠症は、電磁波を被曝しなくても起こりうる。原因の特定が難しい。

しかし、体調不良の原因をすべて電磁波に結び付けた可能性が高い。また、電磁波が原因でペットが死ぬといったことも、普通はあり得ない。

ただ、A医師の一家が電磁波で体調を悪化させたことは事実である。世の中には、一定の割合で電磁波に対して極めて敏感に反応する人がいる。その人数は決して多くはない。彼らにとって、基地局問題は生死にかかわる問題なのである。

客観性がない情報は、フェイクニュースの種になり、逆に基地局問題の解決を遅らせる。電磁波過敏所が客観的な存在であるにしろ、わたしの取材体験から判断すると、その割合は極めて低い。しかし、重度の電磁波過敏症があることは紛れのない事実である。従って、電磁波に弱い住民を無視して、どこにでも基地局を設置していいことにはならない。基地局が住居の直近に設置された後、他の場所へ引っ越さざるを得なくなった住民もいるのだ。

◆マイクロ波の遺伝子毒性
 
では電磁波によって、万人が影響を受ける要素とは何か。それは電磁波の遺伝子毒性である。基地局からのマイクロ波を被曝しても、レントゲンと同じでほとんどの人は何の自覚症状も感じない。しかし、海外で行われた疫学調査で、基地局の近辺に癌患者が多いことを示す明確なデータが複数公表されている。

たとえば2011年のブラジルの疫学調査である。この調査は、ミナス・メソディスト大学のドーテ教授らが実施したものである。

ドーテ教授らが調査対象にしたのは、1996年から2006年まで、ベロオリゾンテ市において癌で死亡した7191人である。これら7191人と直近の基地局の距離を測定して、基地局と発癌性の関連性を調査したのだ。基礎資料として使われたのは、次の3点である。

1、市当局が管理している癌による死亡データ
2、国の電波局が保管している携帯基地局のデータ
3、国政調査のデータ

調査の結果、基地局に近いほど癌の死亡率が優位に高いことが分かった。また、基地局の設置数が多い地区ほど癌による死亡率が高いことも判明した。

この調査の信憑性が高い根拠としては、次の2点があげられる。

① 調査の対象が、ラットなどの動物ではなく、人間であること。ラットにマイクロ波を放射して発がん性の有無を調べる実験は、米国やイタリアで実施され、いずれの結果も2018年に公表され、発がん性が確認されているが、注意しなければならないのは、ラットと人間では体質が異なる点である。従って動物実験の結果はあくまで参考でしかない。それよりも人間を対象とした疫学調査の方がより信憑性が高い。ブラジルの調査は、人間を対象として行われたものなのである。

② 調査対象となった生物の個数が圧倒的に多いこと。先に言及した米国やイタリアの動物実験では、対象となったラットの数量は2000匹程度だった。これに対してブラジルの調査では、7191人を対象としている。

ちなみにドイツとイスラエルでも、ブラジルに類似した疫学調査が実施され、いずれも基地局の近辺(半径が300mから400m)で、それ以外の地域よりも3倍から3・5倍ぐらい癌が多いとする結果が出ている。従って「電磁波過敏症」に罹患しなくても、基地局の周辺では発がんリスクが高くなる。

以上の点を踏まえた上に、さいたま市の2件のトラブルを紹介しよう。(つづく)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

新聞販売店の元店主が「押し紙」(広義の残紙)により損害を受けたとして損害賠償を求めた裁判の控訴審(約6000万円を請求)で、大阪高裁は3月28日、元店主の控訴を棄却した。

「押し紙」というのは、ごく簡単に言えば残紙のことである。(ただし、独禁法の新聞特殊指定が定義する「押し紙」は、「実配部数+予備紙」を超える部数のことである)。

元店主は、2012年4月にYC(読売新聞販売店)を開業した。その際、前任の店主から1641部を引き継いだ。ところが読者は876人しかいなかった。差異の765部が残紙になっていた。このうち新聞の破損などを想定した若干の予備紙を除き、大半が「押し紙」となっていた。

以後、2018年6月にYCを廃業するまで、元店主は「押し紙」に悩まされた。

大阪地裁は、元店主が販売店経営を始めた時点における残紙は独禁法の新聞特殊指定に抵触すると判断した。前任者との引継ぎ書に部数内訳が残っていた上に、本社の担当員も立ちあっていたことが、その要因として大きい。

控訴審の最大の着目点は、大阪高裁が読売の独禁法違反の認定を維持するか、それとも覆すだった。大阪高裁の長谷部幸弥裁判長は、大阪地裁の判断を覆した。

その理由というは、元店主の長い業界歴からして、「新聞販売に係る取引の仕組み(定数や実配数、予備紙や補助金等に関する事項を含む)について相当な知識、経験を有していた」ので、従来の商慣行に従って搬入部数を減らすように求めなかったというものである。皮肉なことに長谷川裁判長のこの文言は、新聞業界のとんでもない商慣行を露呈したのである。

しかし、残紙が「押し紙」(押し売りした新聞)に該当するかどうかは、本来、独禁法の新聞特殊指定を基準として判断しなければならない。元店主に長い業界歴があった事実が、新聞特殊指定の定めた「押し紙」の解釈を変えるわけではない。この点が、この判決で最もおかしな箇所である。

新聞特殊指定では、残紙が「実配部数+予備紙」を超えていれば、理由を問わず「押し紙」である。もちろん「押し紙」のほとんどが古紙回収業者のトラックで回収されていたわけだから予備紙としての実態もまったくなかった。

 

◆「読売には『押し紙』は一部も存在しない」

この裁判の読売側の代理人を務めたのは、6人の弁護士である。この中にはメディア関係者から重宝がられている自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士も含まれている。喜田村氏は、わたしが知る限り今世紀に入ったころから、読売の「押し紙」裁判に登場して、読売には「押し紙」は一部も存在しないという出張を繰り返してきた。

◆日本の公権力機関に組み込まれた日本の新聞業界

今回の控訴審判決の内容から判断して、わたしは新聞業界と公権力機関の距離が極めて近い印象を受けた。今回に限らず、「押し紙」裁判の判決を読むたびに、両者は普通の関係ではないと感じる。先日の日経新聞「押し紙」裁判における最高裁の決定もそうだった。

新聞販売店訴訟、本社勝訴が確定 最高裁

その意味で「押し紙」裁判の提起は重要だ。たとえ販売店の敗訴であっても、判決のたびに新聞業界が公権力機関に組み込まれている実態が露呈する。「押し紙」により新聞業界が莫大な利益を上げる構図があるので、公権力機関はこの問題を泳がせておけば、新聞の紙面内容に暗黙の圧力をかけることができる。

本来、「押し紙」問題にメスを入れなければならないのは新聞記者である。自分の足もとの問題であるからだ。ジャーナリスト集団が従順な「羊の群れ」ではだめなのだ。有権者は新聞の情報を鵜のみにしてはいけない。

◆弁護団声明
 
濱中さんの弁護団は、次のような声明を発表した。

◎弁護団声明(PDF)
http://denjihanet.mods.jp/wp-content/uploads/2024/04/Statement-of-Defense-Counsel.pdf

※判決の全文の入手を希望される方は、xxmwg240@ybb.ne.jpまでご連絡ください。ただし、読売の喜田村弁護士らが裁判所に対して判決文の閲覧制限を求め、裁判所が早々にそれを認めたので、残紙の実態を示す部分など一部が伏字(■■)になっている点を承知ください。(黒薮)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

横浜副流煙事件の「反訴」で、被告A妻(3人の被告のひとり)の本人尋問が行なわれる公算が強くなった。しかし、A家の山田弁護士は、A妻の体調不良を理由として出廷できない旨を主張している。最終的に尋問が実現するかどうかは不透明で、3月11日に原告と被告の間で裁判の進行協議が行われる。

副流煙の発生源と決めつけられた音楽室と、「被害者」宅の距離を示す現場写真

裁判では、作田医師が被告3人のために作成した診断書が争点になっている。これら3通の診断書は患者が自己申告した病状に重きを置いて、化学物質過敏症、あるいは「受動喫煙症」の病名が付された。それを根拠として、約4500万円を請求する前訴が提起されたのである。従って診断書が間違っていれば、提訴の根拠もなかったことになる。

つまり診断書の作成プロセスが問題になっているのだ。言葉を返ると、患者の希望に応じて作成した診断書に効力はあるかという問題である。

この「反訴」の発端は、2017年の秋にさかのぼる。

横浜市青葉区のすすき野団地に住むミュージシャン藤井将登さんは、自室で煙草を吸っていたところ、副流煙が原因で、化学物質過敏所に罹患したとして、上階の斜め上に住むAさん一家(A夫、A妻、A娘)から、約4500万円の損害賠償請求を受けた。しかし、将登さんが喫煙していた部屋は、防音構造が施されている音楽室で、煙は外部にもれない。しかも、喫煙量は1日に2、3本程度だった。さらに将登さんは留守がちだった。A家が主張する副流煙の発生源に十分な根拠がなかった。

それにもかかわらず原告(「反訴裁判の被告」)は、将登さんの煙草が原因で、化学物質過敏症になったと主張し、高額な金銭を請求したのだ。

裁判所はA家の訴えを棄却した。控訴審でも、A家の訴えは一切認められなかった。

将登さんは勝訴の確定を受けて、2022年3月にA家が起こした裁判はスラップに該当するとして、損害賠償裁判を起こした。これが現在進行している「反訴」である。この裁判の原告には、将登さんの他に、妻の敦子さんも加わった。さらに3人の診断書を交付した作田医師については、被告に加えた。

裁判は順調に進み、証人調べの人選の段階に入った。藤井さん側は、A夫の尋問を求めたが、A夫の山田弁護士は体調不良を理由に出廷はできないと主張した。しかし、藤井敦子さんは、A夫が戸外を歩いている場面をビデオに撮影して、山田弁護士の主張が事実に基づかない旨を主張した。

しかし、平田裁判官は山田弁護士の意見を重視して、A夫の尋問は行わない決定を下した。

これに怒った将登さん側は、平田裁判官に対する忌避を申し立てた。忌避の審理には、上級裁判所での審理も含めて、約1年を要した。結局、忌避そのものは認められなかったが、平田裁判官はA夫の尋問を決めた。

山田弁護士は、やはりA夫の尋問は難しい旨を説明した。医師の診断書も提出した。そこで藤井さんの側は、代案としてA妻の尋問を求めたのである。平田裁判長は、判断に迷ったようだが、最終的にそれを認めた。

こうしてA妻の尋問が実現する公算が高くなったが、山田弁護士はA妻の体調不良を理由に、出廷できないと主張している。既に述べたように、裁判の進行協議は3月11日に行われる。

作田学医師が交付したA妻の診断書。根拠なく副流煙の発生源を特定している

※このところ一部の市民団体が化学物質過敏症の患者数を誇張して報じている。化学物質が人体に有害な影響を及ぼすことは、紛れもない科学的な事実で、規制も必要だが、実際の患者数については慎重に検討しなければならない。誇張があってはならない。横浜副流煙事件のような「冤罪」を生む可能性があるからだ。

たとえば市民団体代表の加藤やすこ氏は、「あたらしい年は香害のないきれいな空気で過ごしたい」(『週刊金曜日』2月9日)の中で、化学物質による被害の実態について次のように述べている。

香害に関する情報発信などを行うフェイスブック「香害をなくそう」は、2022年に移香で困っていることについてWEBアンケートを実施した。

回答者600人のうち、「家の中に入る人や、近隣からの移香や残留で、家の中が汚染される」は、90.9%で、「外出先の空間や人から移香して汚染される」は90.0%……

有病率を明記しているわけではないが、香による被害を殊更に強調している。数値に客観性があるのか否かを慎重に検討しなければならない。

この件については、別稿を準備している。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

米国の外交政策を考えるときに、欠くことができない視点がある。それは全米民主主義基金(NED = National Endowment for Democracy)による世論形成のための工作である。

NEDは1983年に当時のロナルド・レーガン米国大統領が設立した基金で、ウエブサイトによると、「海外の民主主義を促進する」ことを目的としている。言葉を替えると、米国流の価値観で他国の人々を染め上げ、親米政権を誕生させることを目的に設立された基金である。そのための助成金を、外国のNGO、市民団体、それにメディアなどに提供してきた。「第2のCIA」とも言われている。

台湾政府とNED(全米民主主義基金)の面々。台湾のIT大臣・オードリー・タンの姿もある

NEDの活動の範囲は広く、毎年100カ国を超える国と地域のさまざまな組織に対して、2,000件を超える助成金を拠出している。NEDの財源は米国の国家予算から支出されるので、助成金の支出先、支出額、支出の目的は年次報告書で公開されている。従って年次報告書を見れば助成金の中身が判明する。(ただし、支出先の団体名までは追跡できない。)

2021年11月18日付けのキューバのプレンサ・ラティナ紙は、NEDによる助成金の特徴について、次のように述べている。

「米国民主主義基金(NED)が2021年2月23日に発表した昨年のキューバ向けプログラムに対して割り当てられた資金についての報告書によると、42のプロジェクトのうち、20がメディアやジャーナリストの活動に関連するものだった。割り当て額は、200万ドルを超えている」
 
NEDが採用したのは、キューバの左派政権を転覆させるための世論形成にメディアを動員する戦略だった。メディア向けのプロジェクトが全体の半数近くに及ぶ事実は、親米世論の形成が米国の外交戦略に組み込まれていることを示している。実は、この傾向は他の地域におけるNEDの活動でも変わらない。

台湾はNEDの活動が最も活発な自治体のひとつである。今年の1月に行われた総統選挙に焦点を合わせ、NEDと台湾政府の間でさまざまな工作が行われた。この点に言及する前に、助成金の支出先と金額をいくつか紹介しておこう。

◆世界各地で親米プロパガンダ

西側メディアは報じていないが、香港の雨傘運動のスポンサーはNEDであった。たとえば2020年度には204万ドルの助成金が、2021年度には43万ドルの助成金を支出している。日本の主要メディアは周庭を「民主主義の女神」と報じていたが、とんでもない話である。

また、中国の新疆ウイグル自治区と東トルキスタンの反政府運動を支援する団体に対しては、2021年度に258万ドルの助成金を提供している。「中国政府によるジェノサイド」というプロパガンダを拡散するための資金だった可能性が高い。

ちなみに少数民族に接近して、親米世論を形成する手口は、わたしが知る限りでは1980年代にはすでに始まっている。83年にNEDが結成されたちょうどそのころ、ニカラグアのサンディニスタ政権が、同国のカリブ海沿岸に住む少数民族・ミスキート族に迫害を加えているというニュースが盛んに流された。そしてサンディニスタ政権に異議をとなれる反政府ゲリラ・コントラが、ミスキート族の若者を軍に勧誘する事態が生まれた。

当時のNEDの年次報告書は確認できないが、最近の年次報告書では、ニカラグアの反政府組織向けの助成金も確認できる。たとえば2018年には約128万ドルが、2020年には157万ドルが支出されている。

ニカラグアでも香港の雨傘運動に類似した過激な「市民運動」が広がり、2018年にはクーデター未遂事件が起きた。ニカラグア政府が首謀者らを逮捕・投獄したところ、今度はニカラグア政府による「人権侵害」がニュースとして世界へ拡散された。

ベネズエラの反政府運動に対しても、NEDは助成金を支出している。2018年は201万ドルが、2020年には、323万ドルが提供された。

ロシアの反政府運動へも多額の助成金が支出されており、2021年の金額は約1,384万ドルである。この中には、もちろんメディア向けのものも含まれており、「反プーチン」の世論形成を意図した可能性が高い。

1979年7月のニカラグア革命。ニカラグアに反米政権が誕生した

◆だれが台湾海峡の火種なのか?

台湾の民進党とNEDは兄弟のように親密な関係にある。2019年、台湾の蔡英文総統は、NEDのカール・ジャーシュマン代表に景星勳章を贈った。これは台湾の発展に貢献した人物に授与されるステータスの髙い勲章である。2022年11月、NEDは台北で世界民主化運動第11回世界総会を開いた。さらに2023年7月には、蔡英文総統に対して、NEDは民主化功労章を贈った。同年、台湾のIT大臣オードリー・タンは、NEDの設立40周年に際して、ビデオでお祝いのメッセージを送った。

しかし、NEDは台湾に対しては、直接の助成金は支出していない。両者の関係は次のような構図になっている。

2002年、台湾外交部は台湾民主基金会(TFD)を設立した。「世界の民主主義ネットワークの強力なリンクになる」というのが、設立目的である。運営予算は台湾の国家予算から支出される。

その見返りとして、アメリカ政府は巨額の資金援助を台湾政府に直接与えている。例えば、日本の代表的な新聞である日経新聞によれば、アメリカ政府は2023年7月、台湾政府に3億4,500万ドルの軍事援助を行った。

1978年の米中共同声明の中で、米国は中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であることを承認した。従って中国政府にとって、台湾におけるNEDの活動は内政干渉にほかならない。

中国は世論誘導などしなくても、台湾を統合する自信を持っていると推測される。と、いうのも経済的に台湾が中国に依存しているからだ。台湾の輸出の3割から4割は中国向けであり、多くの台湾人が中国本土で事業を展開している。経済関係が、そのほかの関係も決定づけるのは、自然の理である。

こうした状況に焦りを募らせるのが、台湾政府と米国なのである。

NEDから民主化功労章を授与された蔡英文総統

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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

携帯電話基地の設置をめぐる町長と住民のトラブルで、宮城県の簡易裁判所が前代未聞の暴挙に走った。発端は、今年の6月である。筆者のもとに、宮城県丸森町のAさん(男性)から、自宅の直近10数メートルの地点に楽天モバイルと丸森町が、町有地に基地局を設置したので相談に乗ってほしいと連絡があった。

 

携帯電話基地局

基地局からは、高周波のマイクロ波が途切れることなく放射され、近隣住民に健康上の被害を及ぼすリスクがある。とりわけマイクロ波の遺伝子毒性が指摘されていて、たとえばIARC(国際がん研究機構)は、2011年にマイクロ波に発がん性がある可能性を認定している。

ドイツやブラジルで実施された基地局と発がんの関係を調べる疫学調査によると、基地局周辺では癌の発症率が相対的に高い(3倍程度)ことが判明している。

Aさんは、町当局や弁護士に相談するなど孤軍奮闘していたが、結局、有効な解決策はみつからなかった。そこで裁判所に民事調停を申し立て、メディアで事件を公にする決心をしたのだ。民事調停の「相手方」は、楽天モバイルの矢澤俊介社長か丸森町の保科郷雄町長ということになる。

そこでAさんは、より身近な人物である保科郷雄町長を「相手方」として、10月2日に民事調停申立書を大河原簡易裁判所(管轄は仙台地裁)に提出した。

保科郷雄町長(出典:丸森町のウエブサイト)

通常、民事調停申立書が提出されると裁判所は調停の日程を決めて、「申立人」と「相手方」の双方へ通知する。ところがいつまでたっても、Aさんのもとには通知が届かない。

10月30日になってAさんのもとに、大河原簡易裁判所の山本久美子書記官から、照合書と題する書面が届いた。そこには3つの問い合わせ事項が記されていた。

1. 本件はいかなる法的根拠に基づく請求なのか
2.(基地局)を設置したのは楽天なのに、何故、土地を賃借した自治体(首町個人)を相手方とするのか。
3. 相手方について、住所は役場住所を記しておきながら、相手方を自治体ではなく自治体の首長個人としている理由

「1」の質問はともかくとして、「2」「3」の質問は、司法関係者とは思えないばかげた質問である。会社を提訴する場合に、社長名を明記するのと同じ原理である。

「1」についてAさんは、日本政府も署名しているリオ宣言などで明記されている予防原則に基づいた民事調停であると回答した。

【予防原則】予防原則(よぼうげんそく)とは、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。1990年頃から欧米を中心に取り入れられてきた概念であるが、「疑わしいものはすべて禁止」といった極論に理解される場合もあり、行政機関などはこの言葉の使用に慎重である。(ウィキペディア)

Aさんが大河原簡易裁判所に回答してからひと月になる11月29日、Aさんの宅に「事件終了通知」と題する書面が届いた。山本久美子書記官名で「頭書の事件は、令和5年11月29日、調停しないものとして、終了しました」と記されていた。印紙も返還された。

Aさんに送付された事件終了通知

民事調停や訴訟を受理しない場合、通常は不備がある箇所を書記官が指摘したうえで、受理する方向で指導する。しかし、Aさんのケースでは、そのプロセスが踏まれていない。調停のテーマが裁判所が毛嫌いしているタブーであるから、却下したとしか思えない。

◎却下された申立書の全文
 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/01/Rakumaru.pdf

12月末に筆者は、電話で山本書記官に却下の理由を問い合わせた。しかし、自分で回答する代わりに、仙台地裁の総務担当者に問い合わせるように指示してきた。そこでわたしは、仙台地裁の総務に問い合わせた。総務の回答は、「お答えできない」とのことだった。しかし、繰り返し回答を求めると、大河原簡易裁判所の山本書記官に問い合わせるように指示した。

筆者からの2度目の問い合わせを受けて、山本書記官も「回答しない」と繰り返した。

「上司の指示か?」
「裁判官はだれだ?」
「自分の意思で、却下を決めたのか?」

山本書記官は、当事者以外には回答できないと答えた。そして一方的に電話を切った。その後、Aさんが山本書記官に電話で問い合わせたところ、民事調停法13条を根拠にした却下であることが分かった。

【民事調停法】調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。

しかし、具体的に何を根拠として調停委員会がAさんの調停申立を却下したのかは分からない。裁判所が司法の役割を完全に放棄したとしか言いようがない 。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

9月に筆者が出演した番組を2本紹介しよう。いずれも須田慎一郎氏がキャスターを務める「別冊! ニューソク通信」の番組である。ここで取り上げた2件の事件に初めて接する人にも理解できるように編成されている。

 

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

◆週刊金曜日と鹿砦社の決別をめぐる事件

7月初旬に週刊金曜日と鹿砦社が決別しておよそ3カ月になる。週刊金曜日に掲載された森奈津子編著『人権と利権』(鹿砦社)の書籍広告に対して、週刊金曜日が差別本のレッテルを張り、今後、鹿砦社の広告を拒否することを告知したことが決別の原因だった。

しかし、この決定の背景にある事情を調査したところ、週刊金曜日に対して、鹿砦社の書籍広告を掲載しないように求める声が、SNSなどで炎上していたことが明らかになった。SNS上の暴言・苦言が週刊金曜日の植村隆社長にプレッシャーを与え、一方的に鹿砦社に決別を宣言したのである。

これら一連の経過は、デジタル鹿砦社通信やメディア黒書が報じてきた。また『紙の爆弾』(10月号)は、筆者が執筆した「『週刊金曜日』書籍広告排除事件にみる『左派』言論の落日」と題する記事を掲載した。さらにインターネット放送局である「別冊! ニューソク通信」が取り上げた。

「別冊! ニューソク通信」の須田慎一郎氏はこの問題に着目した。と、いうのもコラボ問題についての須田氏と森奈津子氏の対談が『人権と利権』に収録されているからだ。その本が「差別本」と烙印されたのだから、ある意味では須田氏も当事者である。


◎[参考動画]左翼は結局、権力に屈した!?…その権力の持ち主とは!? 野党の崩壊につながる!?(2023/09/13)

◆横浜副流煙事件の反訴

「別冊! ニューソク通信」が制作したもうひとつの番組は、横浜副流煙事件の反訴の進捗を紹介したものである。須田氏の他にわたしと、当事者である藤井敦子氏が出演している。

この事件の最初の裁判は、2017年11月に提起された。煙草の煙で「受動喫煙症」などに罹患したとして、A家の3人(夫・妻・娘)がミュージシャンの藤井将登氏を訴えた。この提訴の根拠となったのが、日本禁煙学会の作田学理事長が作成したA家の診断書だった。しかし、そのうちの1通が虚偽診断書であることが裁判の中で判明する。

裁判は、藤井氏の勝訴だった。その後、藤井夫妻は、作田医師を虚偽診断書作成の疑惑で刑事告発した。事件は受理され、作田医師は書類送検された。その後も藤井夫妻は反撃の手をゆるめずに、作田医師を訴権の濫用で提訴した。「戦後処理」としての反訴である。

この裁判の尋問の中で、作田医師は藤井敦子氏が「喫煙者である」と暴言を吐いた。さらに敦子氏の支援者に対しても根拠のない事実を摘示した。これに対して敦子氏と支援者の男性は、作田医師に対して名誉毀損裁判を起こした。男性は刑事告訴も行い受理された。その結果、作田医師は次の係争を抱えることになった。

1,前訴に対する損害賠償(訴権の濫用)裁判
2,損害賠償(名誉毀損)裁判
3,刑事告訴(名誉毀損)


◎[参考動画]【横浜副流煙裁判】まだまだ続きがあった!! 日本禁煙学会・作田学理事長のトンデモ発言連発!!タバコがダメなら〇〇で…誰もが被告になってしまう可能性が!?(2023/09/16)

◆「市民運動=善」という幻想

ここで紹介した2件の事件を通じて、筆者は読者に市民運動のあり方について考えてほしい。市民運動を敵視するわけではない。むしろ市民が結束して、社会運動を展開することは大事だと考えている。しかし、市民運動体の中には反社会的な勢力が紛れ込んでいることがあるのも事実だ。となれば、「市民運動=善」というスタンスは間違っている。

たとえばしばき隊が2014年に大阪市の北新地で起こした事件は、重罪である。重傷者が出ているわけだから、隠蔽するのではなく検証しなければならない。ところが実際は、多くの識者たちが隠蔽の方向で結束したのである。野党の一部もそれに加担した。

また、コラボ問題では、住民監査請求が通った事実があるわけだから、当然、ジャーナリズムはコラボの経理を検証しなければならない。仲間意識で曖昧にできる問題ではない。

ジャーナリズムは、市民運動の質を見極める必要がある。
 
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

このところテレビで大活躍している知識人らが次々とフェイスブックの広告に登場して、株式投資などを奨励している。たとえばジャーナリストの池上彰氏は、「リタイア層は現在ある資金を減らさずに運用することが最優先です」と呼びかけ、森永卓郎氏は「私は株で十分なお金を稼ぎ、父を最高の老人ホームに送り、そこで残りの人生を過ごしました」と自慢話を披露し、落合陽一氏は、「新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です」と露骨に投資を呼び掛けている。

左から池上彰氏、森永卓郎氏、落合陽一氏

これらの人々による指南は、投資を活性化するという政府の金融政策と完全に一致している。自分の老後資金は、年金よりも自己責任で確保すべきだとする新自由主義の自己責任論の反映にほかならない。

識者を通じて投資がPRされる背景には、社会福祉制度が崩壊に近づいている事情がある。投資に消極的な人は、いずれ行き場を失いかねないという恐怖を喚起して投資に走らせる目的があるようだ。これはわたしに言わせれば、悪質なセールスと同じである。

それをテレビの常連が、ジャーナリストや評論家の肩書で展開しているのである。投資に走らなくても、安心して老後が送れる社会を構築するために自らの職能を活用しようという視点は何も感じられない。日本の社会制度の中に埋没しているのだ。

投資に失敗して、露頭に迷う層が出現する状況は、カジノにのめり込んで自殺に追い込まれる層が現れる状況に類似している。

◆「中国による謀略論」の愚

日本のテレビには、良識のある識者が登場することは根本的にはありえない。福島原発の汚染水問題にしても、真面目な顔で中国の陰謀論を展開する連中が後を絶たない。政治的な意図があって、中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止したのだと。そんなことを評論家の肩書で、真面目な顔をして言っているのだ。

しかし、汚染水の問題を考える際の大前提になるのは、汚染水そのものが人体に及ぼす影響である。放射性物質が海のプランクトンを汚染し、そのプランクトンを魚が食べ、さらにそれが人間の体内に入った場合にリスクがあるのかどうかが、議論の中心にならなくてはいけないのに、汚染水の「安全」を大前提にして、中国謀略論が前面に出ているのだ。

海水をくみ上げて放射性物質を測定するのも、愚の絶頂である。海水ではなく海底の土壌を調査しなければ何の意味もない。

先日、筆者は遺伝子について詳しいある識者と話す機会があった。この人は、原発反対運動に参加しているわけではないが、物事を純粋に評価するので、わたしは客観的な意見を知りたいときに指導を仰ぐ。汚染水については、次のようなコメントを頂いた。

「危険に決まっているでしょう。テレビに出ている人たちは、本当のアホですわ。何も分かっていない。中国が日本の魚を買おうが買うまいが、そんなことは中国の自由でしょう」

◆軍事大国・米国の裏の顔

ウクライナ戦争の報道についても、慶応義塾大学の廣瀬陽子氏らを筆頭にウクライナが善でロシアが悪という構図での評論が主流になっている。しかし、海外では決してそうではない。

むしろ米国主導のNATOによる東方への勢力拡張やウクライナ政府による人権侵害を問題にしているケースが多い。少なくとも非西側メディアはその傾向が強い。

わたしはウクライナの戦地を取材するまでもなく、この戦争は米国による他国への内政干渉の結果である可能性が高いと推測している。次に示すのは、太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカへの軍事介入とクーデターを示した地図である。

太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカ諸国への軍事介入とクーデターの発生年を示した地図

この地図を見るだけで、戦争国家としての米国の性質が理解できる。そこから米国が主導するウクライナ戦争の性質も推測できるのである。

日本のテレビがジャーナリズムとして機能しなくなって久しいが、このところ識者たちが、テレビを通じて国策に全面的に協力する傾向は一層露骨になっている。わたしは、最近、テレビよりもユーチューブの番組の方が相対的にレベルが高いように感じる。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

8月24日に福島原発の汚染水を海に放出し始めたのち、中国から激しい批判の声が上がっている。これに対して、外務省は9月1日に反論を発表した。中国の主張を「科学的根拠に基づかないものだ」と決めつけ、国際原子力委員会(IAEA)のお墨付きがあるので、安全性に問題はないという趣旨である。

マスコミはALPSを通過する水を「処理水」と表現するなど国策に寄り添った方向で報道を続けている。テレビは連日のように福島沖で捕獲させる魚介類をPRしている。「汚染水」という言葉は絶対に使わない。売れない魚を学校給食で使う案も出始めているらしい。

政府や東電、それにマスコミの主張は、「規制値を遵守しているから絶対に安全」だというものである。しかし、この考え方は、放射線や化学物質の安全性には「閾値」がないことを隠している。

「閾値とは、ある値が所定の水準を超えると特定の変化が生じたり判定・区別が変わったりする、という場合の『所定の水準』『数値的な境目』『境界線となる値』を意味する語である」(Weblio)

放射線の人体影響に閾値がないことについて、岡山大学の津田敏秀教授は次のように指摘している。

(日本では)「100ミリシーベルト以下ではがんが増加しない」ことになってしまっている。2013年5月27日付けで出された「国連特別報告者の報告の誤りに対する日本政府の修正」と題された日本国政府代表部の文書にも、「広島と長崎のデータに基づき、放射線被ばくによる健康への影響は、100ミリシーベルト以下の水準であれば、他の原因による影響よりも顕著ではない、もしくは存在しないと信じられている」と記されている。これは100ミリシーベルトの放射線被ばくが、発がんの「閾値(しきい値)」のように考えられていることを意味する。

よく知られていることだが、国際X線およびラジウム防護委員会IXRPは1949年に、放射線被ばくによる癌の発生に閾値はないことを結論づけ、この結論は現在に至るまで変えられていない。(『医学的根拠とは何か』津田敏秀著、岩波書店)

◆マイクロ波の規制値もでたらめ

汚染水の規制値に限らず、日本の総務省が設けている公害に関連した規制値は、科学的な根拠に乏しいことが多い。それがよく分かる例としては、スマホの通信に使われるマイクロ波の規制値(電波防護指針)がある。

スマホの通信基地局から放出させるマイクロ波の規制値の国際比較は次にようになっている。

日本:1000μW/c㎡
国際非電離放射線防護委員会:900μW/c㎡
中国:40μW/c㎡
欧州評議会:0.1μW/c㎡

マイクロ波は、エックス線やガンマ線と同じ放射線(電磁波)の仲間である。前者はエネルギーが弱く、後者はエネルギーが強いという違いはあるが、現在では、エネルギーの大小にかかわらず、放射線には遺伝子毒性があるというのが、欧州での主要な考え方である。実際、欧州評議会は、日本の規制値よりも1万倍も厳しい数値を設定している。ここにも「閾値」はないという考えに基づいている。あるいは極めて微量でも、放射線による人体影響があるという考えである。
 
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、電磁波の工業利用の促進を目指している団体である。それゆえに規制を緩やかにしているのだ。日本の総務省は、マイクロ波の規制値を国際非電離放射線防護委員会よりもさらに緩くして、電話会社に基地局の設置を奨励している。住民から苦情がでると電話会社は、「規制値を守っていますから絶対に安全です」と原発とまったく同じ抗弁をする。そして強引に基地局の稼働を始める。筆者には2つの光景が重なって見える。

福島原発の汚染水をめぐる「安全宣言」の原型は、実は携帯電話の基地局問題の中で使い古されているのである。「安全と思う」ことと、「客観的に安全」であることは区別しなければならない。両者を混同すると世論誘導に乗ってしまう。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立映画賞(London Independent Film Award)の最優秀外国映画賞を受賞した。作品は、11月18日から東京渋谷のユーロスペースで2週間に渡って再上映される。

麻王監督は、フェイスブックで、「元々、化学物質過敏症というテーマから、制作開始時点でこの映画はヨーロッパ圏の方にも刺さるんじゃないかと考えていたので、この連絡を頂けて嬉しいです」と、コメントを発表した。

映画『[窓]MADO 』

この映画は、デジタル鹿砦社通信でもたびたび取り上げてきた横浜副流煙事件に材を取ったフィクションである。実在する事件と作品との間には、若干の隔たりがあるが、化学物質過敏症をめぐる問題の複雑さをテーマにしているという点では共通している。

事件の発端は、2016年にさかのぼる。横浜市青葉区のマンモス団地で、煙草の副流煙をめぐる隣人トラブルが発生した。

ミュージシャンの藤井将登さんは、同じマンションの上層階に住むA家(夫、妻、娘)の3人から、「あなたの煙草の煙が原因で体調を崩したので禁煙してほしい」と、苦情を言われた。

将登さんは喫煙者だった。1日に2、3本の外国製の煙草を自宅の音楽室で嗜む。しかし、音楽室には防音構造がほどこされ、密封状態になっているので、副流煙が外部へ漏れることはない。

とはいえ、自分に加害者の疑惑がかけられたことに衝撃を受けた。そこで暫くのあいだ禁煙してみた。ところがA家の3人は、なおも同じ苦情を言い続けた。煙草の煙が自宅に入ってくるというのだ。疑いは、煙草を吸わない奥さんと娘さんにも向けられた。将登さんは、A家の苦情にこれ以上は対処しない方針を決めた。副流煙の発生源は自分ではないと確信したからだ。

ところがその後もA家からの苦情は続き、警察まで繰り出す事態となった。2017年になって将登さんは、A家の3人から4518万円の損害賠償を求める裁判を起こされた。裁判が始まると日本禁煙学会の作田学理事長が全面的にA家の支援に乗り出してきた。提訴の根拠になったのも、実は作田医師が交付した「受動喫煙症」の病名を付した診断書だった。

裁判が進むにつれて、恐ろしい事実が浮上してくる。作田医師が作成したA家3人の診断書のうち、娘のものが虚偽診断書であることが分かったのだ。作田医師は、A娘を診察していなかった。診察せずに診断書を交付していたのだ。これは医師法20条違反に該当する。こうした経緯もあり、裁判は将登さんの全面勝訴で終わった。A家の主張は、何ひとつ認められなかったのだ。

麻王監督が映画化したのはこの段階までである。実際、事件を取材してきたわたしも横浜副流煙裁判は、将登さんの勝訴で終わったと思った。拙著『禁煙ファシズム』(鹿砦社)で、わたしが記録したのもこのステージまでだ。

映画『[窓]MADO 』

◆横浜副流煙事件のその後

将登さんの勝訴で裁判が終わった後のことを若干補足しておこう。既に述べたように作田医師がA娘に交付した診断書は虚偽診断書だった。そこで将登さんと妻の敦子さんが中心になって、作田医師を地元の神奈川県警青葉警察署に刑事告発した。青葉警察署は事件を捜査して、作田医師を書類送検した。

しかし横浜地検は、作田医師を不起訴とした。これに対して藤井夫妻らは、検察審査会に審査を申し立てた。検察審査会は、「不起訴不当」の議決を下したが、時効の壁に阻まれて作田医師は起訴を免れた。公式には不起訴処分となった。

その後、藤井夫妻はA家の3人と作田医師に対して、根拠に乏しい不当な裁判を提起されたとして約1000万円の損害賠償を求める裁判を起こした。俗に言う反スラップ裁判である。この裁判の本人尋問の中で、作田医師が藤井敦子さんを指して、喫煙者だと事実摘示する場面もあった。この件についは敦子さんが、別の裁判が起こす公算が強くなっている。

◆ラジカルな市民運動

憎悪が憎悪を誘発するこれら一連の事件の背景には、喫煙者の撲滅といういささか過激な旗をかかげた市民運動の存在がある。「悪魔」に等しい喫煙者を探し出して徹底的に糾弾する方針である。その際に司法制度も利用する。

煙草の煙が人体に有害であることは紛れもない事実であるが、1階の密封された空間で吸った2、3本の煙草が、はたして上階の住民の健康を蝕み、その被害が4518万円にも値するかといえば別問題である。科学的な検討が必要だ。この事件を通して科学を軽視したラジカルな市民運動の実態が浮上する。

日本禁煙学会の作田医師は、「喫煙者の撲滅」という政策目的を先行させてしまい、隣人トラブルに油を注いだのである。映画「Mado」は、日常生活の中に潜む恐怖をみごとにあぶりだしている。日本中の団地で起こり得る事件なのである。


◎《予告編》映画 [窓]MADO

◎映画 [窓]MADO 公式サイト https://mado-movie.jp/

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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

今回の問題は、「カウンター大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)に対する、私たち鹿砦社による被害者支援と真相究明に陰ながら不快感を持っていた『週刊金曜日』編集部内の日本共産党としばき隊につらなる人たちによって画策されたものと推察いたします。くだんのリンチ事件の加害者側代理人と植村社長の慰安婦訴訟の代理人兼事務局長は同じ神原元弁護士ですしね。

この非人間的なリンチ事件に関わり始めてから、これについての取材と支援、訴訟などの内容を2016年以来6冊の本にし出版、同時に『金曜日』にもその都度巻末広告を出広してきました。それ以前にも広告は定期的に出広してきましたが、一度たりとも抗議などありませんでした。『金曜日』に抗議がなされ始めたのは、これ以降だと思われます。

これが問題の広告。たった4分の1の小さな広告で大騒ぎする輩と、これに簡単に屈した『週刊金曜日』

北村肇さんによれば、『金曜日』の定期購読者は3つに分かれていて、(1)日本共産党支持者、(2)社民党支持者、(3)無党派だということですが(今はれいわ新選組なども出来たので少し変わったかもしれませんが)、(2)の一部と(3)の読者が鹿砦社の読者と重なるそうです。また、小さな会社なのに組合も3つあり、なにかあればいちいち3つの組合と団交しないといけないそうで疲れるとこぼされていました。北村さんの命を縮めた一因は組合だということは元社員からも聞きました。誤解ないように私たちは組合の存在と活動を否定しているわけではありません。

生前の北村肇前社長。太っ腹な方だった

今回の鹿砦社に対する「ヘイト出版社」扱い、森奈津子編『人権と利権』に対する「差別本」呼ばわりで私たち鹿砦社も、まさに「名誉毀損」に遭っているというほかありません。植村隆社長ら『金曜日』の見解が一方的に喧伝され、特に重なる読者層の方々に誤解を生むことを懸念します。『金曜日』と鹿砦社の力関係は、マジョリティとマイノリティですから。鹿砦社の書籍や雑誌の広告が掲載できなくなることで、ますます私たちの出版活動の内容を外部に知らせる場が一つなくなりました。

今回の件で、『金曜日』に言論の多様性などなく、異論を簡単に排除する左翼教条主義的な組織に成り下がったことを実感しました。今後は「多様性」とか「表現の自由」とか言うなよ!

鹿砦社は「ヘイト出版社」? 森奈津子さんは「差別者」? 人の人権を顧みず、簡単に「ヘイト」だ、「差別」だと言う者こそ差別者だ!

以下、このかん寄せられた読者の皆様方からのご意見です(一部の方を除いてお名前を省いています)。畏敬するゲバリスタ(元・日大全共闘)、板坂剛さんからは11・2金曜日30周年集会へ「乗り込む」ことが提起されました。狂犬・板坂さん一人で乗り込ませるわけにはいかんでしょう。私も抗議のビラ撒きぐらいはやりたいと考えています。行動を共にしてもいいという方はご連絡ください。久しぶりに「老人行動隊」(古い!)を組みましょう! 情宣貫徹! 闘争勝利!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆板坂 剛 『マツオカ』へ 1       
 怒りと笑いが同時にこみあげる今回の『週刊金曜日』の広告拒否事件。鹿砦社の出版物に不適切な表現があったから、鹿砦社の広告を掲載するなと、多くの読者から脅迫的な要求があって、それで発行人が今後同誌に鹿砦社の出版物の広告を一切載せないことになったという。完全な倒錯である。
「文春砲」と揶揄され現実の巨悪を撃つ『週刊文春』の足元にも及ばない『週刊金曜日』の末路というべきか。文章で表現された内容に異議があるなら、文章で反論すればいい。
 百歩譲って鹿砦社の出版物の内容を否定するなら、鹿砦社に抗議するのが筋であろう。それを同業他社に広告の掲載を打ち切るように迫るなど卑怯の極み、昭和の右翼が好んで用いたヤクザまがいの手口だ。
『週刊金曜日』の読者がここまで低レベルであったことに驚くと共に、そんな姑息な言動に屈するのは出版人として自殺行為であることを自覚できない『週刊金曜日』の編集者には、もはやジャーナリスト失格であると言い渡しておこう。彼らには自分の仕事に対する意地も誇りもないのだ。今まで『週刊金曜日』を書店で購入したことは何度もあったが、もう二度と買わない。

◆板坂 剛 『マツオカ』へ 2       
 どうも腑に落ちない『週刊金曜日』の鹿砦社に対する広告打ち切り措置。事実上の絶縁宣言であるにもかかわらず「鹿砦社を否定するわけではありません」というヒラ社長のコメント。
「今回の『人権と利権』の広告問題で、『もう鹿砦社の広告をやめるべきだ』という読者の声がさらに強まりました。社内でも『広告取りやめやむなし』いう意見が大多数です」って、ヒラ社長よ「読者の声」「社内の意見」ではないあんたの本音を聞かせてくれと言いたい。
『人権と利権』のどこが問題なのか、自分の言葉で語った上で、今後一切鹿砦社の広告を取りやめる必然性があるのかを説明しない限り、鹿砦社の支持者=読者は納得しないだろう。説明責任を果たさないのは自民党だけで結構。
 11月2日木曜日に日本教育会館一ツ橋ホールで『週刊金曜日』創刊30周年記念大集会が行われるという。私はここに乗り込むつもりである。鹿砦社シンパ関西派の結集を望む。

◆黒薮 哲哉 わたしの新刊の広告も同じスペースで掲載された(週刊金曜日の)号なので、具体的にどのような事情があったのか、週刊金曜日と仁藤氏には説明してほしい。

◆週刊金曜日が鹿砦社の広告掲載を止めた、だけの理由ではなく積もり積もったもの(北村肇さんへの敬意を踏みにじられたことなど)もあり、定期購読を止めました。他人を排斥するなら、自分も排斥されることを知るべきです。

◆本日付の「デジタル鹿砦社通信」を読みました。 6月29日付の記事とあわせ、この間の事情がよくわかりました。松岡さんのおっしゃることは理路整然としており、賛同いたします。
『週刊金曜日』は長く定期購読してきた愛着のある雑誌であり、西宮ゼミでお会いした北村肇さんのお顔も浮かぶのですが、自ら省みることができないようなら区切りをつけるべきかと思案しております。
これに代わる週刊誌が今の日本に無いので困るのですが…。

◆創刊からの購読者でしたが、とっくにやめました。

◆ちょっとひどい ネ、中島氏はやめちゃうし、週刊金曜日にがっかりした。

◆(『週刊金曜日』の)7/7日号確認しました。「社会的には非正規雇用問題を批判しながら、社内に同じ問題を抱え込んでいる」とおっしゃってますが、今回の問題が決定的だったんでしょう。残念です。

◆本多勝一さんのような文章成金がうらやましいですよ。

◆特にというのも変だが2014年のブルデモやリンチ事件のことは今後も何かと付きまとうであろう…

◆週刊金曜日 8/11 1435号読書会から 植村社長鹿砦社決別宣言について さいたま読者から 仲良くしろよ。
と言あり、要は単なる喧嘩口喧嘩のレベルか?
できれば紙の爆弾読書会を開いてこの問題を討議できないだろうか?

◆金曜日に問う
週刊金曜日の植村さんは、自分への攻撃には敏感のようだが、その際の自分の反撃がどういう意味をもっているのかを判断する力は弱いようだ。
反ヘイトなどの運動体の中には、内包する問題を指摘されているところもある。それにつけこんで、誹謗中傷する輩もいる。
しかし、まともな疑問や批判に対しても、誹謗中傷あるいは差別だと逆にレッテル貼りをすることがないとはいえない。
その運動体が社会的にも、さらにさまざまな運動を支持しているひとたちにも、認知をされている場合、この団体が「虐められている」と声を挙げれば、その主張が受け入れられやすくなる。
しかし、大事なことは、事実関係をきちんと押さえ、そのことに歴史的にも理論的にも、正しい解釈をすることだ。感情に流されてはならない。
今回の記事だけでは、当該団体の詳細が分からないので、そのことには触れない。
ここで明らかにされているのは、週刊金曜日が、鹿砦社の出版物の広告を掲載したが、某団体のクレームを受けたら、鹿砦社とは何の話し合いをすることなく、自分が広告掲載を了承した本を「差別的だ」と決めつけたうえ、某団体への謝罪を表明した、ということだ。
右翼の脅迫を受けて、一度出していた会場使用許可を一方的に取り消す自治体の例を想起してしまう。
しかし今回は、ことなかれ主義の自治体が行ったのではなく、言論機関である。それも、一部のリベラル勢力が信頼を寄せているメディアである。
直ちにいい悪いの結論を出す必要はない。
何が問題点であるのか、議論を闘わせてほしい。特に、金曜日に寄稿している人々には、その論争に参加すべき義務がある。

◆「一番弱い所」として生け贄にされた「週刊金曜日」。
カウンター界隈に煽動されたColabo

◆一番の問題点は『金曜日』が鹿砦社を今後無視することだと思う。

◆公開討論を開催するべき案件。

◆「買ってはいけない」の非科学性を(もっと言えば「トンデモ」)を訴え続けた熊野寮OBたちの意見をガン無視し続けた段階で、『週刊金曜日』の購読をやめています。あそこ、サヨクの悪い所を煮詰めたようなところがありますね。

◆う~ん、『週刊金曜日』は左翼なのかなあ。私にはリベラルという認識しかないけど。

◆僕がカタカナで書くときは基本的に「リベサヨ」という、軽蔑的ニュアンスを込めています。

◆松岡さん応援しています。

◆言論弾圧に屈せずに、おかしいことにおかしいと言う松岡さんの姿勢断固支持します。
今日、八鹿高校事件の動画を見ていました。
汗水垂らして働く必要の無い特権階級どもが、デマや暴力で言説を封殺する。今も昔も全く変わらぬ構造に悔しさと虚しさが溢れてきます。
出身や性別や民族やセクシュアリテで括る左派が何故人民大衆に見放されたか。
それは貧しい者、所得の低い者、低賃金労働者を見殺しにし、差別問題や民族問題、LGBT問題にしかとりくまなかったからだ。
左派が被差別者と規定している者たちの中にも、富裕層や搾取収奪を繰り返してきた輩はたくさんいる。
持つ者と持たざるもので分けるべきところ、部落か否か、在日か否か、女性か否か、ゲイか否かで分ける。
こんなふざけたことを未だに続けている。
上記のどれにも当てはまらなくても、ギリギリの生活をしている者はたくさんいる。餓死する人も首括る人もいる。
多くの左派はそんなことなどおかまいなし。彼ら自身が富裕層だから。活動家も2世3世が多い。
労働組合を名のりながら、労働とは無縁の貴族ども。

浅野健一 松岡さんの投稿に賛同します。私が山口正紀さん(故人)、中嶋啓明さんの三人で担当していた「人権とメディア」連載を打ちきり、小林和子編集長(当時)が私を完全排除(植村社長の業務命令)したのも、もう1つのターニングポイントだったと思います。YМ子助教の私の週刊金曜日記事の盗用を不問にしたのも、縁故主義、編集の私物化でした。植村氏は、私に対しては絶縁宣言をしていません。

◆大内問題というタブーも抱えてしまった。タブ―なき雑誌を売りにしていたのにタブーだらけになっては魅力がなくなってしまう。タブーに挑戦する若さも勇気もなさすぎ。

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