世界最初の核攻撃の爆心地・広島一区の岸田総理は、自称「GX法」により、3.11以降、安倍政権すら維持してきた脱原発依存路線を転換しました。関西電力高浜原発など老朽原発の再稼働を推進し、核のゴミを増やし、上関に中国電力と共同で中間貯蔵施設という名の実は半永久的な貯蔵施設という形で押し付けようとしています。

一方で、福島原発事故の緊急事態宣言は継続中で、デブリ取り出しすらできていません。さらに2024年元日、能登半島大震災が発生。北陸電力志賀原発は、3.11以降は止まっていたこともあって、大事故には至りませんでしたが、油の流出やモニタリングポストの停止など、多くのトラブルが報告されています。その上、避難経路となるべき能登半島の道路が寸断されるなど、もし原発事故があれば避難どころではない現実も示されました。

また、大震災そのものが、複数の活断層の連動で起きています。今までは5km以上離れている断層は連動しない、と国もしてきたのですが、それが崩れた形です。日本全国の原発の安全審査がやり直し、というよりもことごとく、真面目に規制委員会が審査すれば、アウトになる可能性が高いと思われます。にもかかわらず、中国電力は広島から二番目に近い島根原発再稼働を8月にも強行しようとしています。
そうした中で、13年目の3.11を広島も迎えました。

◆島根原発再稼働を許さない! 集会開催

3月10日(日)にはフクシマを忘れない!さようなら原発 ヒロシマ集会が、広島弁護士会館で開催されました。

主催者を代表して山田延廣弁護士は、

「未だ故郷に戻れず、原発の廃炉も進まないのに岸田政権はGX法で原発を再開しようとしている。能登半島大震災で志賀原発の油流出事故が起きた」

「自民党への巨額の献金が再稼働に影響している。お金に影響される政治でいいのか?」

「島根原発の再稼働を目指しているが、いくら避難計画を立てても能登半島のように道路が寸断されたら機能しない」

「フクシマ原発問題は全国の問題。上関の中間貯蔵施設を作ろうとしている。しかし、世論は再稼働賛成が増えている。一方できちんと損害賠償するように求める裁判が闘われている。寄り添うというのはそういう闘いを一緒にやっていくということだ」

 

福島原発告訴団の武藤類子団長がビデオメッセージ

処理汚染水の海洋投棄が進む福島からは福島原発告訴団の武藤類子団長がビデオメッセージ。

裁判では、最高裁の草野耕一裁判官が任命される前に経営していた事務所が東電と利害関係が深かったということで、裁判から外れてもらうよう求めています。武藤さんは、「被害者は権力を持たない市民。中立としての裁判所に期待している」などと、思いを述べられました。

◆島根原発2号機の再稼働を止めよう!

ついで、広島と同じ中国電力管内の島根原発2号機の再稼働を止めよう!と「島根原発3号機差止訴訟原告団」事務局の芦原康江さん(元松江市議)が報告。以下は、芦原さんのお話しの概要です。

「この国は原発事故を忘れようとしているのか?」と問いかけました。そして、「広島にとって原発事故はよそ事ではない。島根原発で事故が起きたら17万人を広島が受け入れることになる。また、福島では島根―広島に相当する160km圏内でも風向きによっては、土壌で10万ベクレル/kgの汚染が起きている」

広島県選出でもある岸田総理が強行した脱炭素電源法=GX法は地球温暖化対策と称して衰退する原子力業界に救いの手を差し伸べていると指摘しました。

3.11福島原発事故を教訓に原子炉等規制法で運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の延長を認めていました。

ところが、それを撤廃してしまったのです。これは、例えば35年稼働している島根原発2号機を5年程度稼働しても採算に合わないからです。

全国知事会も、地方公共団体にきちんと説明しろ、事故が起きた場合には国は被災者への賠償も含め、責任を以って対処すること、という内容に全国知事会提言を2023年8月19日に出しています。しかし、住民の立場からすれば事故が起きた時点でたまったものではないのですから、「もっと踏み込んで住民に寄り添うべき」と芦原さんは知事会を批判しました。

◆避難計画に実効性なし! 明らかになった能登半島大震災

そうして忘れたころに災害が起きたのです。能登半島地震です。M7.6,最大震度7240人が亡くなり、5575棟が全半壊した大震災。志賀原発も震源域のすぐそばにありましたが、不幸中の幸いは福島原発事故以降、運転が停止したままだったことです。放射能漏れなど重大事態にはならなかったが、油漏れを含めて影響は無視できない状態です。

そして、何より、「避難計画」に実行性がないことが暴露されてしまいました。

・多くの家屋が倒壊で屋内退避も不可能。
・道路も液状化や土砂崩れなど寸断で避難が困難。最大24地区3345人が孤立。30km圏内では8地区400人が8日間孤立。さらに21の放射線防護施設のうち、6施設で損傷や異常が発生。
・断水は21施設すべてで発生した。原発事故の場合に支援がいる住民を守る機能が果たせなかった恐れがある。
・また、能登半島大震災では、北陸電力が96kmまでしか連動しないとした活断層の活動は150kmも連動してしまった。これは北電が悪いのではなく、5kmより離れていたら連動しないという国の基準に問題がある。

全ての原発の安全性、信頼性が失われている状態だということです。

◆審査に合格しても安全ではない

そうした中で、島根原発を再稼働させて良いのでしょうか?

島根原発は1号機が1980年に稼働開始し、2015年にすでに廃炉になっています。今焦点となっているのは2号機。1989年2月に運転を開始しています。2021年9月新規制基準に合格し、22年6月2日に島根県知事が再稼働容認を表明しています。2024年8月に再稼働を行う予定です。3号機はまだ稼働しておらず、新基準審査継続中です。

しかし、2号機は審査に合格しても安全ではないのです。基準地震動は820ガルのままです。1000ガルを超える地震動が頻繁に現実には起きているからです。火山噴火についても、近隣の三瓶山や大山の最大規模の噴火は想定していません。更田元規制委員長自身が「新基準に適合しても100寺ベクレルを超える放射性物質の放出を起こす事故の可能性」を否定していません。

こうした中で、2号機運転差し止め仮処分申し立てを芦原さんらは2023年3月10日に広島高裁松江支部に起こしています。中国電力は過小な地震動しか想定していない、というのが原告側の主張です。島根でも、直近の宍道断層だけでなく、鳥取県沖の断層も含めて連動する可能性はあります。

中国電力側は、宍道断層と鳥取県沖の断層は国の5kmより1km遠い6km離れているから大丈夫、というセコイ主張をしていました。しかし、今回の能登半島大震災でそれは否定されています。

また、三瓶山や大山が噴火しているときに事故が起きれば、事故処理のためのアクセスが困難になります。非常用電源を動かすにしてもフィルターが必要になります。そのフィルターを火山灰が降り続く中でどう運ぶのでしょうか?

さらに、県都・松江市にある島根原発で事故が起きれば、46万人が避難することになります。そのうち5万人は高齢者や障がい者などの要支援者で全国最多でです。都会でなおかつ高齢化が進んでいる地域の島根原発。事故が起きれば広島県には17万人が避難してきます。

すでに、どこにどう避難するかは決まっているのですが、広島県などの受け入れ先の住民には全くその説明はありません。

5km以内の住民には敷地境界で5マイクロシーベルト/時が10分以上継続して避難指示が出されるので、核燃料が溶け出しているような状態です。そもそも大震災が起きれば道路も寸断していますから直ぐに避難できず被曝する人が続出するでしょう。

※[筆者注]ちなみに福島原発事故の場合は、皆様もご承知の通り、沿岸部では津波で壊滅的な大被害だったのですが、少し内陸では、能登半島大震災との地震動の性質の違いもあって構造物への被害はさほどではなかった。内陸の東北自動車道が健在で、そこから枝分かれした道路もそこまでの被害はなかったのは不幸中の幸いでした。だから、関東や関西に比較的早く避難した・できた人も多かった。ただ、そのために、避難の困難性が注目されることはなかったとも言えます。

また、5km-30kmの人については500マイクロシーベルト/時の放射線量を記録したらら直ちに退避ということだが、2時間すれば年間の上限に達してしまいます。被ばくすることが前提の計画になってしまいます。

屋内退避をしろ、と国は言いますが木造家屋では被ばくを防ぐ効果は50%しかない。そして、屋内退避中に医療や介護を受けられる計画にもなっていません。そして、施設や病院にいる人は受け入れ先が決まるまで待機となりますが医療ケア対応の車両がたくさん必要になります。

能登半島大震災の時は被災地の人口は10万強ですが島根の場合は46万ですからこの点でも厳しい。しかも、職員の健康や生命を守る対策も不明です。

そして多くの人が車で避難することになりますが、車のスクリーニングもザルです。クルマの汚染がヨウ素剤服用の基準の6倍以下ならフリーパス、基準値を超えれば除染はしますが、乗っている住民は代表者のみ検査。そして、スクリーニングそのものがフル稼働しても164時間かかりそれだけで大渋滞です。

そしてそもそも、避難計画は原子力災害対策指針に基づくものであって、内閣府も避難計画の実行性を全く確認していないのです。

なお、能登半島大震災を受けて、全国の市民団体で原子力規制庁や内閣府に原子力災害対策指針の見直しを求めると、「災害対策は自治体の責任であって自分たちの責任ではない」という趣旨の開き直りをされたそうです。

要は、いい加減な被ばく防護しかせず、災害により住民が酷い被ばくをしても自治体に責任を押し付けるのが国の原子力災害対策であり、それをもとにした避難計画には実効性がかけます。IAEAの求める第5層の防護段階がかけています。

また、核燃料サイクルも破綻しており、だからこそ、上関に予定されている中間貯蔵施設も最終処分場になってしまうのではないか?と指摘しました。

これ以上核のゴミを増やさないためにもリスクだらけの島根原発2号機の再稼働、運転延長は認めてはいけないのです。

◆日本一規制が緩い広島の産廃行政、遠方から放射性廃棄物流入の恐れ

岡田和樹さんからは、上関原発と中間貯蔵施設問題、また産廃問題について報告がありました。岡田さんは、上関原発に反対する運動に参加する一方で、地元の三原市では本郷産業廃棄物処理場の問題に住民の先頭に立って取り組んでおられます。

祝島島民の会に対するスラップ訴訟は、この裁判は、原発建設の埋立予定地付近で漁業をしている祝島の漁船が、中国電力が行おうとしている海上ボーリング調査を妨害しているとして、その排除を求めた裁判です。これに対して島民の会は、祝島の漁民は漁業権に対する補償を受けておらず埋立工事は違法であること、海上ボーリング調査は埋立工事とは直接関係のない調査であること、上関原発の建設は事実上完全に破綻しており中国電力の請求は権利の濫用であることなどを主張して争っています。

「中国電力のお客様でもありこの国の主権者でもあるのはわたしたちだ」と岡田さんは強調されました。

また、岡田さんは、産廃問題にも言及。広島県内の産廃処分場は全国3番目に多く、安定型では2番目です。三原市の本郷産廃処分場だけでなく、広島市内や福山市内の産廃処分場でも汚染水が流出。そして、関東など遠方からもどんどん産廃が広島に入ってきています。そして、現状の産廃行政では、それら遠方の産廃の中に放射性廃棄物が紛れ込んでも全く分からないということです。

三原市では水源保護条例へ向けて動きが詰めの段階に入っています。東広島市や竹原市、尾道市でも続く動きが出ています。

「行政が被害を受ける住民の立場に立ってほしい」。そのために自治体に条例を、と岡田さんは強調されました。

最後に岡田さんは「上関中間貯蔵施設」に反対する立場から「芦原さんらがいらっしゃる前で申し上げるのは心苦しいが、核のゴミは発生場所で保管するしかない。だからこそ、核のゴミを発生させる島根原発再稼働は止めさせなければいけない」と述べられました。

◆3.11を忘れた? 追悼の半旗掲揚を止めた? 中国電力

 

3.11当日、中国電力本店前で抗議

翌11日の3.11当日には、島根原発再稼働の強行をもくろみ、また関西電力と共同で核のゴミの自称「中間」貯蔵施設を上関に造ろうとしている中国電力本店前で「上関原発止めよう!広島ネットワーク」呼びかけで抗議の街宣と署名提出が行われました。

木原省治さんが代表してスピーチ。「311なのに、半旗を掲げないのはいかがなものか?もう忘れてしまったのか?」と疑問を呈しました。

その上で、今もデブリの取り出しさえできていない東日本大震災。そして、モニタリングポストが壊れ、道路の寸断で原発事故だった場合に避難どころではないことが明らかになった能登半島大震災の教訓は、島根原発再稼働はすべきでないということだがなぜ生かせないのか?

また、上関中間貯蔵施設もつくるべきではないということを繰り返し訴えました。また、国は原発のリプレースではない新設はしないといっているのに中国電力はなぜ、純粋な新規原発である上関原発計画を維持し、埋め立て免許を申請しているのか?と疑問を呈しました。

その上で、上関原発計画は42年間も住民を分断している。これ以上住民をいじめないでほしいと中国電力にお願いしました。

 

藤井純子さんが島根原発再稼働に反対する署名を中国電力に提出。横断幕中央付近の人物が筆者

最後に、溝田一成さんが代表して中国電力に対して後記申し入れを行い、また、藤井純子さんからは、島根原発再稼働に反対する署名が提出されました。

なお、中電は毎年玄関前に国旗の半旗を掲げていたけど、なぜか今年はなかった。それで、それを木原さんが中電社員に問いただしたら、回答不能に陥ったそうです。ところが、なぜか私たちの街宣終了後の15時15分頃に急に半旗を掲げ始めたそうです。

国旗への賛否はともかく、半旗を忘れたということは、3.11が中国電力の皆様の頭からも消えているということに他なりません。そうした中で、のど元過ぎれば熱さ忘れる、で島根原発再稼働や上関中間貯蔵施設をやられたのではたまったものではありません。

引き続き、総理の地元の有権者としても声を上げ続けたいものです。

中国電力株式会社
代表取締役社長 中川賢剛 様

「島根原発2号機の再稼働」中止等を求める311声明

2011年3月11日に福島原発事故が発生しました。今日で13年目になります。しかしながら、未だ事故は収束しておらず放射性物質を放出し続けています。現在も福島県の人びとの命や生活を脅かし、貴重な森林や河川も汚染され続けています。除染ができたと宣言しても放射能値はまだまだ高く、帰還する人は少ない状態です。原子炉の廃炉作業は遅々とし進まず到底廃炉などできそうにありません。また、たまり続ける放射能汚染水の放出では、世界の人々の懸念をよそに海洋排出が続けられています。こんなことはすべきではありません。

今年1月1日に発生した能登半島地震は、石川県の「志賀原発」事故を発生させる寸前の規模でした。また2月26日には、愛媛県の「伊方原発」のすぐ近くでマグニチュード5.1の地震が発生しました。日本列島は今も地震活動期にあります。

しかし、中国電力は、地元住民による反対の声を無視して、島根原発2号機の再稼働を8月に行う姿勢を変えていません。そもそも中国電力は、島根原発近くにある活断層の存在の隠蔽、点検漏れ、虚偽報告などの不祥事を繰り返しています。

また、上関町での原発建設計画も断念しておらず、突然昨年8月に「使用済み核燃料の中間貯蔵施設」建設計画を発表しました。

私たちは、福島原発事故から教訓を学び、危険で放射性廃棄物の処分・処理ができそうにない原子力の利用はやめにして、原子力以外のエネルギー源で発電すべきだと考えます。中国電力に、下記3点の実行を要請します。

=要請3項目=
1、島根原発2号機の再稼働を中止すること
2、「上関原発」建設計画を白紙撤回すること
3、「中間貯蔵施設」建設計画を白紙撤回すること

2024年3月11日
上関原発止めよう!広島ネットワーク

                      
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

2月25日、広島瀬戸内新聞取材班は県内でも人口減少が激しく、製鉄所の撤退などのニュースも続く呉市を取材しました。自治会連合会長の城健康様からお話を伺いました。以下は会長のお話しの概要です。

◆人口流出への歯止め、「都会だったころ」の発想では厳しい

 

自治会連合会長の城健康様

人口流出はここまではある程度仕方がなかった。しかし、今後は歯止めをかけていかないといけない。昔は、呉は海軍の軍港として人口が一時は40万人に達するほどまで栄え、戦後の高度成長期は国の直轄事業で栄えた。しかし、そういうお金がもうないのだから衰退は当然だ。

呉市は(広島市や東広島市と比べても)立地は悪く、企業誘致は現実には難しい。遊ぶところも広島市と比べれば少ない。昔、呉市が都会だったころの発想では難しい。現実を前提としないといけない。

当面の経済活性化策としては、(地元最大の企業である)自衛隊への呉の地元企業からの納入率を上げていくことだろう。呉の企業ができるものを調べ、(県外大企業中心だった)流れを変えていく。これは商工会議所が中心となってやってもらうしかないだろう。

◆公約破りのオンパレード、市民の意見を聴こうとしない現市長

そうした(厳しい状況の)中で、いかに呉に住んでもらうか?が大事だ。市民の意見を聴いて議論していくしかない。しかし、現市長はその市民の意見を聴くことをしようとしない。

市長は初当選時、「退職金は自分の働きぶりを市民が評価して決めてもらう」と公約したが、コロナを言い訳に反故にした。

安芸灘大橋も無料化すると新原市長は言っていたが反故になっている。

市議会議員も、十分に仕事をしているとは言えない。ただ、市長を変えれば、議員も動き方は変わってくると思う。

リーダーを変えていくしかない。2025年11月の呉市長選挙でのリーダー交代が必要だ。

◇      ◇      ◇       ◇

◆呉のことは官僚ではなく市民が決めよう

2021年11月の前回の呉市長選挙では、新原芳明市長は現職であるにもかかわらず新人に2000票差まで肉薄されています。普通、現職首長は広島県知事でも市長でも二期目を目指す選挙は圧勝する場合が多いので、新原市長への呉市民の不満が高いことはよくわかります。

新原市長は、2017年の初当選前は、市役所の新築に反対し、駅前そごう跡への移転を推進する人たちに推されていたそうです。当選されたらもちろん、新築された市役所で執務されています。

また、小村前市長のときに決まっていた駅前の整備を、前市長への対抗意識からか、いったん凍結してしまいました。その結果、2027年度をめどに完成、という状況になってしまいました。受け継ぐべきものは受け継げばいいのに、そうはしない。

城会長が、「現市長はあくまで、財務省から送り込まれた官僚。地元のことは全然わかっていない。」「市民も目覚めて、呉のことは官僚に決めてもらうのではなく市民自身が議論して決めていかないといけない。」と強調されていたことが、印象に残ります。

◆観光ボランティアガイドの皆様に呉市の過去を学び、未来を考える 

取材班は、この日の午後は、呉市の過去を学び、未来を考えるため、観光ボランティアガイドの皆様にお話を伺い、また「呉湾おさんぽクルーズ」に乗船しました。

H様、O様からお話を伺いました。H様(写真)はIHI退職者。5歳の時、呉大空襲(市街地が標的となった7月1日分)の経験者。空襲が終わってから外へ出ようとすると防空壕の地表に近い側でたくさんの方がなくなられていたのが印象に残っているそうです。

軍港呉の歴史にお詳しいO様は、「呉湾おさんぽクルーズ」 で我々をご案内いただきました。呉に海軍鎮守府が設置されてから軍港として栄えた歴史と、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、そして満州事変、日中戦争、第二次世界大戦の歴史について熱く語ってくださいました。大陸に「防衛」を大義名分に出兵を続けた敗戦までの日本の歴史を教訓に「防衛と言ってもエンドレスだ」と指摘。現在の岸田政権による軍拡に懸念を表明されました。クルーズから帰還後も、呉市と日本の将来について、意見交換をさせていただきました。「東京への一極集中政策を止めさせないといけない。」で一致しました。

[左写真]H様 [右写真]O様

※この取材のあと、3月4日に防衛省が呉製鉄所跡地を買い取り、拠点を整備する案を広島県と呉市に提案しています。要は、製鉄所を明治から敗戦まで海軍工廠だった時代に逆戻りさせるということです。

広島瀬戸内新聞では、呉市の課題について、呉市民の皆様、またそれ以外の皆様からもご意見をお待ちしております。

090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp または、
オンラインおしゃべり会「さとうしゅういちと広島の政治にガツンと物申す」にお寄せ下さい。

毎週金曜 21時15分から zoom meeting ID とパスコードは以下です。

ミーティング ID: 411 718 3285 パスコード: 5N6b38 
(顔出し、声出しされなくても結構です。チャット欄でもご意見お待ちしております。)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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3月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年4月号

『紙の爆弾』2024年4月号

郷原信郎弁護士が問う自民裏金事件 検察捜査の穴
自民党派閥解散の茶番 所得税法から見た裏金「脱税」事件
欧州農民デモの訴え EUのエコロジー政策が農業を潰す
鈴木宣弘東大大学院教授が警告 残留農薬・人工肉・農業基本法改悪で「日本の農と食」が崩壊する
浮かび上がる“巨大地震”の実態 なぜ能登半島地震の名称は「大震災」でないのか
政権交代に向け本格始動 泉房穂前明石市長の「救民内閣」構想
どの道を行っても「解散」か「総辞職」岸田“低空飛行”内閣の八方塞がり政局
アメリカの日本支配機関「日米合同委員会」廃止デモ
日テレドラマ「セクシー田中さん」問題 漫画原作者自殺事件を生んだテレビ界の権力構造
マスコミが報じない朝鮮半島情勢 核ミサイル開発よりも危うい「白頭山大噴火」の現実味
BBCジャニーズ報道から一年 相次ぐ「性加害」報道に垣間見える危うさ
東京五輪汚職と酷似「異次元の無法地帯」と化した横浜市の電通癒着
「入管法」不備を放置する日本政府の問題だ 川口市「クルド人問題」の本質
大逆心中?夢洲万引博打
戦争報道・対米報道・対日報道 中国は世界をどう報じているか
シリーズ 日本の冤罪48 仙台筋弛緩剤事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
【新連載】The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
【最終回】キラメキ★東京漂流記:村田らむ
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵
◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTWN75P/

広島市議会は2月14日から2月定例会がスタートしました。会期は3月26日まであります。

会期の前半では、2023年度分に関する議案(請願や当局提出の財産取得議案)などが審議され、2月27日に採決に掛けられました。

◆ようやく「イスラエル・パレスチナにおける武力紛争の終結を求める決議案」

広島市は、世界で最初に核攻撃を受けた都市であり国際平和文化都市を名乗っています。ところが、ガザにおける大量虐殺については、これまで市議会も松井一實市長も沈黙を保っていました。「あの」保守的な広島県議会ですら、停戦決議を求めています。

こうした中、10月以降、原爆ドーム前で「STOP GENOCIDE」のスタンディングを続けている広島市立大学院生でユダヤ系米国人のレベッカさんらが、広島市と広島市議会が行動を起こすように公開質問状を2月13日に提出。

さらに、オンライン署名を2月29日期限として呼びかけました。署名数が2月27日時点で15000を突破、28日には2万を超えるという情勢の中、広島市議会定例会は、27日の議案採択の中で、「イスラエル・パレスチナにおける武力紛争の終結を求める決議案」を全会一致で可決しました。

ICJ=国際司法裁判所は南アフリカによる提訴を受けて1月26日、イスラエルに対して・集団虐殺(ジェノサイド)の防止・虐殺を扇動する行為の防止やその処分・虐殺が疑われる行為の証拠保全・ガザの人道状況を改善するための方策の導入について、1カ月以内の対策を指示しています。そのことに決議案は触れていません。こうした不十分さはあります。もちろん、全会一致での採択を目指したということで、こういう文言になったという事情はあります。それでも、遅まきながら広島市も決議を出したということです。

問題は、広島市の執行部=松井一實市長がノーコメントということです。引き続き、市長を動かすためにも広島には「さらなる」行動が求められます。

◆市長の迷走「エールエールA館買い取り」可決

一方で、松井一實市長の「暴走・迷走」の象徴である中央図書館の「エールエールA館」移転。ついに、広島市が広島駅南口開発㈱=広島市出資の第三セクター=から、土地と建物を買い取ることが可決されてしまいました。この広島駅南口開発(株)=広島市出資の第三セクター=は、広島市が7割近くを出資し(残りは政策投資銀行と金融機関など)、広島市の元局長クラスの方が幹部をされています

中区選出の門田佳子市議(無所属)のSNSは以下のように報告しています。

【市民に説明できない第三セクター救済(中央図書館等移転)】

本日の広島市議会本会議、第140号議案、中央図書館等移転のための財産取得について。土地の一部買入れ約3.1億、建物の一部買入れ約65.9億。今までも広島市と金融団は広島駅南口開発が資金ショートする度に融資を繰り返してきました。今回も名目を変えた救済です。これでは市民に説明できないとして、反対討論を行いました。

結果は残念なことに、賛成多数で可決されました。中古ビルのフロア、土地を高額で取得。目的は赤字体質の第三セクター救済。そのうえ、翌年度予算にも残りの不動産取得や取得できないフロア賃料、共益費、修繕費等を払う見込みが示されています。これでいいのでしょうか、広島市。

中央図書館については、広島市中区の中央公園にある現在の図書館を本体は広島駅前のエールエールA館に移転、浅野文庫と広島文学についての図書は広島市長公舎跡地に新築するということです。しかし、そもそもバラバラにするより、一体にした方が便利なのは明らかです。なんでこんなことをするのか?やはり、市役所の先輩が多数「天下り」されている「広島駅南口開発㈱」の救済ありきではないのでしょうか?

◆湯崎知事暴走=平和公園へのサミット記念コーナー施設建設強行に反対の請願は否決 「修学旅行生の休憩は狭い場所で!」

「G7広島サミット記念コーナー(仮称)を設置しないことについて」という請願は否決されてしまいました。

これは、本来は、サミット県民会議=湯崎英彦広島県知事=の主導で行われる事業ではあります。しかし、平和記念公園を管理するのは広島市である以上、広島市が許可しなければできません。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/552710.pdf

この事業は、当初からサミット県民会議の予算に組み込まれていた5000万円を使って、7年間限定で記念館を設置するというものです。建設予定場所は、資料館北側、被爆樹木アオギリの西側、峠三吉詩碑の南側という地点です。資料館から出てこられた方が一休みしたり、修学旅行生や校外学習の児童生徒が集合したり、お弁当を食べたり、そういった場所を潰してしまうことになります。

「この請願を出された方以外からも、平和公園でボランティアガイドをしてくださっている様々な市民の方から、同じようなご意見を頂戴しています。」(前出・門田市議)

こうした疑問に対して、「集合場所等々でしてですね、活用できる場所については、今記念コーナーを設置する場所、と例えば公衆トイレの間ですとか被爆アオギリ、被爆遺構展示館の間の土地等のスペースがございますのでそちらを活用いただけるのではないかと考えております。以上です。」と、要約すれば「修学旅行生らは狭い場所で休憩しなさい」と言わんばかりの答弁を当局はしました。

湯崎英彦・広島県知事の暴走を市議会は止めることなく、修学旅行生らに狭い場所を強いることを選んだのです。もちろん、G7広島サミットの「広島ビジョン」は西側の核保有は肯定するような内容です。そんなサミットを平和公園を使って持ち上げるのはいかがなものか?と筆者は思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

◆連日、長蛇の列 原爆資料館

広島の原爆資料館の入館者数が2023年度、まだ2月23日の時点ですが176万252人となりコロナ前の2019年度の175万8746人を上回り、過去最多となりました。2月23日の入館者数は4709人。今年度の一日平均だとここまでは5350人です。

G7広島サミット以降、特に外国人観光客の方の関心が高まったのは事実です。筆者も平和公園周辺を出勤のために自転車で通過することも多いのですが、外国人とみられる方が原爆資料館周辺に並ばれているのを目撃します。

原爆資料館は1955年に開館。22000点の資料が収蔵されています。被爆から80年近くたった今、被爆者の方も少なくなってきました。原爆被害の実態を伝えるという意味での資料館の役割はますます高まっています。来館者が増えるのはもちろん、良いことです。

◆平和首長会議、1780自治体加盟で全加盟まで「マジック1」

一方、この2月、京都府城陽市が平和首長会議に加盟し、国内の1781の基礎的自治体=市区町村で加盟していないのは長崎県佐世保市のみとなりました。

1982年6月24日、当時の荒木武 広島市長は、米ソの軍拡競争に危機感が高まる中、米国・ニューヨーク市の国連本部で開催された第2回国連軍縮特別総会において、世界の都市に国境を越えて連帯し、共に核兵器廃絶への道を切り開こうと呼び掛けました。また、広島・長崎両市は、この呼び掛けに賛同する都市(自治体)で構成する機構として、世界平和連帯都市市長会議を設立しました。

1991年には、国連経済社会理事会のNGOに登録されています。その後、2001年8月5日、「世界平和連帯都市市長会議」から「平和市長会議」に、さらに2013年8月6日に「平和首長会議(へいわしゅちょうかいぎ)」に名称変更され、現在に至っています。

目的は以下です

「平和首長会議は、加盟都市相互の緊密な連帯を通じて核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起するとともに、人類の共存を脅かす飢餓・貧困等の諸問題の解消さらには難民問題、人権問題の解決及び環境保護のために努力し、もって世界恒久平和の実現に寄与することを目的としています。」

◆めでたさも中くらいなり

上記の出来事は、基本的には平和都市・広島にとり、「めでたい」ことであるのは間違いない。そうなのですが、素直に喜べない。それはなぜか。やはり、この間も何度もお伝えしているように、「戦後初の中央官僚出身市長」松井一實市長のもとで進んでいる「広島市自身の変質」の問題があるからです。

もう一つは、原爆資料館労働者の労働環境の問題もあるからです。まずは、こちらからご紹介したい。

◆原爆資料館労働者に相談なく開館延長

松井市長は、G7広島サミットの開催を受け、原爆資料館の開館延長を急遽実施しました。さらに、3月から開館延長を本格実施します。しかし、これらは、原爆資料館の現場労働者には寝耳に水でした。開館延長ということはそれだけ、現場労働者には負担をかけるということです。

筆者も幹部をさせていただいている広島自治労連でもこの問題でアンケートを労働者に対して行っていますが、とくに小さいお子さんをお持ちの職員を中心に不安の声が上がっています。労働者に十分相談もなく、決めてしまうあり方は、「平和都市」としていかがなものなのか?

広島市民の皆様、また市民を代表する議員の皆様にも関心を持っていただきたい。

◆パレスチナ問題で決議すら出さず

そして、情けないことがあります。広島市長はガザで進行中のイスラエルによる大虐殺について沈黙し、広島市議会も決議さえ出していません。広島県議会でさえも停戦を求める決議を既に出している中で、世界で最初の戦争被爆地そのものである広島市議会が沈黙している。情けないことです。原爆ドーム前で即時停戦を求めるアクションを呼びかけられている皆様も、堪忍袋の緒が切れ、市議会と市長に公開質問状を出していますが、返答はぱっとしないものでした。

◆G7広島サミットで「米国忖度」

これも繰り返しになりますが、G7広島サミット以降、急速に広島県も広島市も米国への忖度路線を強めています。広島市の松井市長はサミット後にパールハーバーと平和記念公園の「姉妹公園協定」を締結しました。しかし、そもそもパールハーバーは現役の軍事基地です。戦争となれば、核も含む攻撃の拠点となる場所です。そこと平和記念公園の協定というのがおかしい。

そもそも、原爆投下を反省・謝罪しない米国政府と広島市が協定を結ぶことは、核使用への「免罪」の雰囲気を世界に広めてしまいます。米国だけでなく、ロシア、中国、英国、フランス、そしてインドやパキスタン、朝鮮、イスラエルの核保有国の為政者も図に乗らせてしまいます。

また、「はだしのゲン」を平和教材から削除した件も、結局は、サミットを前に米国に忖度した、とみるのが自然でしょう。

◆広島市は「王道」に戻れ

広島市が自治体として本来すべきことは、平和首長会議に加盟する都市の横の連帯で、為政者に核兵器廃絶を迫っていくことです。当面の目標として核兵器先制不使用を厳守させることです。(先制使用をしなくなれば、いわゆる核抑止論を正当化している敵国への恐怖感もかなり取り除かれるため)

核兵器は、使用されれば、結局はどこかの自治体に対して使用されることになります。自治体の市民への脅威である核兵器をやめさせる。そこで、がっちり、世界の自治体に所属する市民とスクラムを組む。それが平和首長会議の会長都市でもある広島市が進むべき「王道」ではないでしょうか?

むろん、街づくりで国からの補助金が欲しいとか、いろいろな事情があることは存じています。それでも、王道を歩むことがいま、広島市に求められるのではないでしょうか?

そして、そのためにも、筆者が常々主張しているように、広島の政治や経済、社会の在り方を、民主的なものにたて直していくことが大事である。残念ながら、「はだしのゲン」に登場する政治家「鮫島伝次郎」のような広島の政治や経済、社会の在り方が、結局は平和都市広島の変質の背景にある。そこから根本的に改めていく必要がある。そのことを付け加えたいと思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

広島県知事の湯崎英彦さんは、2024年2月13日開会した広島県議会に2024年度予算案を提出しました。

一般会計の規模は1兆957億円。8日の予算案発表に当たってのキャッチコピーは「広島の元気をブースト」です。

ご承知の通り、広島県は3年連続で人口流出全国ワーストワンです。その汚名を返上したいという思いを込めておられるのでしょう。問題は、中身がそれにふさわしいか、ということです。

◆ゴミ不法投棄を人工衛星で監視は良いが

今回、筆者が注目した項目の一つが、産業廃棄物対策です。2023年6月、県が三原市と竹原市の水源地のど真ん中に許可した三原本郷産廃処分場からついに汚染水が流出してしまいました。そして、広島地裁は7月、湯崎英彦知事による産廃処分場許可は判断過程に瑕疵があったとして許可取り消しを命じる判決を言い渡しています。湯崎知事はこの判決に控訴しました。しかし、そうはいっても、現に汚染水が出ているという事実があるわけです。なんらかの抜本的な対策を新年度予算で示してしかるべきです。

湯崎さんは2024年度予算案において「人工衛星で不法投棄を監視する」としました。確かに、山の中まで不法投棄の産廃を一々県庁職員がチェックにいくのは大変です。人工衛星で監視というのはグッドアイデアではあります。しかし、広島県の産廃行政の根本問題はそれでは解決しません。

◆問題は県「公認」産廃処分場の「ザル」状態

広島県の産廃行政の問題点の根本は「県が許可=公認した」産廃処分場が「ザル」状態だということです。

三原本郷産廃処分場はまさにその典型です。長野や群馬など遠方の産廃が今も白昼堂々と捨てられています。そして、昨夏のように県が検査に来るときは、検査対象の井戸水に水道水などを混ぜて汚染値を引き下げてしまえば、県は「安全」と判断してしまうわけです。

また、裁判所が産廃処分場の設置許可の取り消しを命じても、県はそれを控訴し、業者に処分場稼働=汚染水排出を続けさせています。まさに、県自身が、加害者となっています。

そもそも、この産廃処分場の所有者であるJAB協同組合は、かつて所有していた安佐南区の上安産廃処分場で水の汚染や危険盛り土の上への産廃処分場建設などの問題を起こしています。だが、上安の問題を本格的に明らかにしたのは当初は、県の調査ではありませんでした。三原本郷産廃処分場計画を知って不安に思った原告団共同代表の岡田和樹様ら、三原市民たちでした。県は、本来、自分自身でやるべきことを住民にさせていたのです。

◆東広島市でもまた、大型産廃処分場計画!

こうした中、今度は三原市の西隣の東広島市安芸津町にも大型産廃処分場が計画されています。安芸津町は大相撲・元関脇で横綱千代の富士や同・旭富士などから大量の金星を得たことで有名な安芸乃島関=高田川親方の出身地です。三原本郷産廃処分場を水源地とする竹原市の西隣にもあたります。その安芸津では、住民は産廃業者に対して土地を売らないことで対抗しようとしています。

しかし、業者もさるもの。会食を開くなどして地主の切り崩しに躍起になっています。こうした中で、三原本郷産廃処分場の問題を反省していない広島県の湯崎英彦知事を信用できるのでしょうか?信用しろと言われても信用する方がむしろおかしいでしょう。

◆産廃問題おろそかにしては「県産食材や広島料理のPR」も台無しに

湯崎英彦知事は、2024度予算案の中で、広島の食材や料理のPRにも力を入れる、としています。

それは結構なのですが、産廃行政がザルではそうした施策も台無しではないでしょうか?水が汚染されれば、農産物にも、広島の名産品であるカキを含む海産物にも、そしてお酒にも悪影響が出ます。

◆人口流出も加速する「産廃無策」

広島県内には、2011年の「3.11」以降、実は東京などからUターンしてこられて、農業やお酒やパンの製造などに乗り出すいわゆる30代、40代くらいの方が結構おられました。それにより、一時期、人口流出が下火になっていました。

「大学進学時や就職時には東京の有名大学や有名企業に一度は行ってみたい。だけど子育てはやっぱりのんびりした広島」というライフサイクルの方は結構おられます。だから、筆者は、実を言うと18歳や22歳での人口流出については比較的楽観していました。

しかし、全国から産廃が広島に集まり、汚染水も事実上ダダ漏れ、という状態では、それこそ、広島にUターンしてくる人も減ってしまいます。東京の環境汚染を懸念して広島に戻っても、今度は産廃汚染水ダダ漏れ、では帰ってくる意味がありません。

人口流出を騒ぐのであれば、産廃規制強化は急務です。別に口には出さなくても、産廃規制が緩すぎるということで広島を敬遠してしまう層はそれなりにおられます。広島に活力を取り戻すためにも他都道府県並みの産廃流入規制を求めます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2024年の春闘が本格化しています。岸田総理の選挙区で筆者の地元・広島でも連合広島は2月5日春闘をスタートさせました。

連合広島の大野真人会長は8日には、各経営者団体などに対し、「デフレ経済からの脱却には、労働者の7割を占める中小企業や非正規雇用の労働者の賃上げが重要」とし、「2023年を上回る5%以上」の賃上げを要請しました。

こうした中、筆者もよく利用するスーパー「ハローズ」(本社・福山市)が4月から全社員の基本給を3万円引き上げると発表しました。ハローズさんは物価の高騰の中、従業員の生活を支援する、としています。

この20-30年、まさに労働者虐待政治とでもいうべき状況が続き、日本の労働者の実質賃金は主要国でも唯一伸びていないという有様です。一人当たりGDPではイタリアに抜かれ、日独伊のいわゆる第二次世界大戦のいわゆる枢軸国でも最下位になってしまいました。そもそも、「賃金が伸ない」というのは、通常は失礼ながら内戦が続いたアフガニスタンやリビアなど、いわゆる失敗国家状態の国の現象であり、日本のような戦争も革命も起きていないような国で起きること自体が異常です。

こうした中で、韓国や中国よりは緩いとはいえ少子化の激化、外国人労働者も日本を敬遠し、日本人でも若手女性を中心に海外へ流出するなどの現象もみられます。こうした中で、賃金を上げていくこと自体は大いに結構です。連合広島は、筆者も2000年~2011年の広島県庁在職時代は組合員でもあり、筆者は連合OBでもあります。鹿砦社刊『労働貴族』の中でも苦言は呈してきましたが、そうはいっても、OBとして労働者のために頑張っていただきたい。筆者は、現在は「広島県労連」系広島自治労連の幹部を拝命していますので、お互いの持ち場で労働者のために頑張っていきたいものです。

今回の春闘では、とくに中小企業の賃上げを、大手企業が発注単価の引き上げという形で支援するという構造も連合広島はつくりたいとのこと。これは、大手企業に組合を持つ連合広島にがんばっていただくことが実現への必要条件です。

◆置きざりにされる介護労働者 賃上げ2.5%

しかし、介護福祉士として介護現場で働く筆者は、自分自身も含めて、介護労働者が置き去りにされていることに危機感をおぼえます。

すなわち、厚生労働省が1月に発表した2024年度の介護保険についての省令では、介護労働者の給料は2024年度2.5%、2025年度2%というベースアップを想定しています。

ただでさえ、介護労働者の月給は、全産業平均より4万円低い状態(2022年12月現在)です。そのことを背景に、2022年はついに初めて介護分野から労働者が流出超過となってしまいました。このままでは、さらに全産業平均と介護労働者の格差は拡大してしまいます。

広島では、介護分野では外国人労働者も流出しています。いったん広島に配属された「特定技能」の外国人労働者も、東京の給料が広島より高いと知れば、結局東京へ行ってしまう。その繰り返しです。東京の介護施設に行く場合もあれば、それ以外の業種へ行く場合もあります。

今回の春闘2024を経て、4月以降、その傾向が激化することは間違いありません。

◆報酬本体引き下げの訪問介護は崩壊の恐れ

特に危機的なのは「訪問介護」です。在宅で過ごしたいという高齢者や障がい者の皆様に不可欠です。もし、「訪問介護」がなくなれば、ご家族が仕事や勉強を犠牲にして要介護のご家族を介護せざるを得なくなります。今でも深刻ないわゆるビジネス・ケアラー(仕事をしながら介護)、ヤング・若者ケアラー問題が大変なことになります。ヘルパー不足は高齢者・障がい者だけの問題ではなく、社会全体の問題です。

しかし、広島都市圏も含めた一部の地域では、人手不足から事業者がサービス提供をお断りするケースも続出しています。若い人もなかなか介護、とくに訪問介護で働こうとせず、職員=ホームヘルパー自身の多くが後期高齢者という事業所もあります。それこそ、ヘルパーがぶっ倒れてお年寄りが救急車を呼ぶという、笑い事ではない事態も発生しています。そして、2023年には訪問介護事業者の倒産・廃業が過去最悪を記録しました。

原因は、あまりにも低賃金で労働基準法違反が横行していることです。例えば、本来、労働基準法では労働時間に入るべき移動時間や待機時間、キャンセル発生なども労働時間に入らず、給料をもらえない実態があります。その原因は、あまりも介護報酬が低いために適切な給料を事業者が払えないからです。厚生労働省は、きちんと給料を払うように、と通達を出すだけで、有効な対策を取らないできました。

そうした中で、2024年度からの報酬改定では「平均的に見ると訪問介護は儲かっているから」という理由で、報酬をカットされてしまいました。利益が出ている事業所もありますが、そうではない苦しい事業所も多いのです。平均値だけを見て、報酬カットとは言語道断です。

◆ホームヘルパー国賠訴訟、控訴審で介護現場の惨状認定 ボールは総理の手に

そこで、現役のホームヘルパー3人が、国を相手取って、介護保険制度が違法であるとして、損害賠償を求める裁判を2019年11月1日に東京地裁に提起しました。2022年11月1日、東京地裁は原告の訴えを全面的に退ける不当判決。原告は東京高裁に控訴し、2024年2月2日、控訴審判決が言い渡されました。

判決は、賃金未払いなどの問題が解決されていない「訪問介護員の現状(権利侵害)」に言及し、「賃金水準の低さとこれを一因とする慢性的な人手不足が長年にわたり問題とされながら、いまだ問題の解消に至っていない」状況を認めました。損害賠償請求そのものは認められませんでしたが、介護現場の惨状を司法が認定した形です。

司法が事実を認定した以上、ボールは為政者である総理の手にあります。岸田総理は、今回の東京高裁の判決を受け、厚労省に対して訪問介護報酬カットの撤回、そしてさらなる抜本的な介護労働者の給料アップを指導するとともに、今からでも、2024年度予算案にしかるべき修正をすべきです。

そもそも、介護保険制度では介護サービスの維持が難しいというなら、さらなる国費投入もすべきです。また、介護保険制度導入の前は、訪問介護は、広島市では市の公社が、東京23区でも公務員ヘルパーが担っていた時代がありました。特にサービス提供が民間では困難な地域では、公務員としてヘルパーを雇い、サービス提供を保障することも選択肢とすべきです。

◆総理は「日本だけが大損」の「軍拡・台湾介入」より「介護現場防衛」を

岸田総理に申し上げたい。台湾有事に備えた軍拡のために、社会保障費を削るなどやめていただきたい。また、少子化対策と称した、社会保障支出カットも止めていただきたい。

そもそも、米国でさえ、中華人民共和国が中国を代表する政府と認めています。何かあってもせいぜい武器を中華民国=台湾に送るだけで米国自身が表で闘うなどあり得ません。そんな中で、国共内戦の延長に日本が首を突っ込み、中華人民共和国への敵基地攻撃でもした日には、それこそ、中国への侵略と受け取られ、中華人民共和国による日本の侵略への反撃と称した日本攻撃の口実を与えるだけです。日本には平和的な問題解決を言い続けるしか選択肢はないのです。「日本だけが大損をする」台湾有事介入。そしてそれに備えた軍拡などおやめなさい。選挙区・広島も含めた介護現場の崩壊を防いでください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

『紙の爆弾』2024年3月号

電通・靖国・笹川財団・CIA 安倍派とは何か
「首相は自分のことしか考えていない」岸田派解散の舞台裏
躍進するロバート・ケネディ・ジュニア アメリカ大統領選挙の実相
民進党勝利で改めて問う 米国仕込みの虚構の台湾有事
東京五輪は東日本復興を遅らせた 能登半島地震でも維新「万博固執」の大愚
「司法の偏向」で形骸化する「三権分立」辺野古代執行訴訟が孕む三つの大問題
重信房子氏が語るパレスチナ・ハマース「決起」の理由
3回接種で特定のがんが多発 ワクチン問題研究会が明かす「メッセンジャーRNA」の真実
企業が学問・教育を崩壊させる第二の日本学術会議問題 国立大学法人法改正
権力による教育内容への管理統制強化 加速する「教育デジタル化」の陥穽
問われる「こども家庭庁」委員の関与「ベビーライフ事件」と国際養子縁組の闇
高GABAトマト、マッスル・マダイ、ウイルス耐性ブタ……「ゲノム編集」は生態系も人類も損壊する
「松本人志」「旧ジャニーズ」で見えた変わらぬ大手メディアの忖度体質
米国マスコミが自主検閲で隠してきた2023年の重大ニュースTop25
シリーズ 日本の冤罪47 鶴見事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTMNC4ZD/

◆「近衛文麿」化したネタニヤフ、出口見えぬ戦闘

2月4日、広島パレスチナ連帯デモが行われました。

10月7日に、ガザ地区のハマス政権がイスラエル・シオニスト政権への越境反撃を行うと、シオニスト政権の首相・ベンヤミン・ネタニヤフ被告人[※]は、これに対して、ガザへの侵攻を開始。北部の住民に南部への避難を呼びかけながら、実際には南部にも侵攻し、狭い範囲に100万人が密集しているとも言われる状態の地域へ激しい空爆を加えています。2月5日現在で2万7365人が犠牲になっています。

[※]ネタニヤフ被告人は、日本の安倍晋三さんとほぼ同じことをしたとして、イスラエルの警察に書類送検され、起訴。首相のまま裁判を受けています。また、妻のサラ・ネタニヤフ元被告人は、安倍昭恵さんとほぼ同じことをしたとして、罰金刑が確定しています。

一方、イスラエル・シオニスト政権は、UNRWA(国連パレスチナ難民支援機関)に職員が10・7のハマス政権による攻撃に参加した疑惑があるとして米日政府などに通報。これを受けて米日などの政府はUNRWAへの拠出金を一時停止。シオニスト政権による攻撃に加えて、砂漠気候のこの地域には珍しい大雨、そして支援の遅滞が人々に襲い掛かっています。

また、ネタニヤフ被告人は2月5日現在、米国などの仲介工作に対しても「一切の取引に応じない」としています。これは、まるで、日中戦争の時、当時の大日本帝国首相の近衛文麿がナチス・ドイツのトラウトマンによる和平工作を蹴り、「蒋介石を相手にせず」と突き進んだことを想起させます。近衛は軍部の、ネタニヤフは連立相手の宗教極右のコントロールが効かなくなった状態です。

そうした中で、今度は、紅海を航行する船舶にイエメンのアンサール・アッラー政権が攻撃。米英軍がイエメンを攻撃。一方で、シリアやイラクを攻撃する米軍の基地が、攻撃を受け、米軍が報復するなど、あちこちに戦火も飛び火をし、予断を許さない状況です。

一方で、ICJがイスラエルに対して虐殺を予防するよう勧告を行いました。こうしたことを背景に日本を代表する商社・伊藤忠が防衛装備品の輸入におけるイスラエル企業との協業を停止することを発表しました。イスラエルへの包囲網も着実に狭まってはいます

◆広島では毎日17時半から原爆ドーム前集合

 

こうした中、広島では、イスラエルによるガザ大虐殺が始まって以来、原爆ドーム前で、米国人留学生レベッカさんの方らが呼びかけて、毎日17時半~スタンディングを行っています。筆者も、会社帰りのルートに原爆ドームがあるため、ちょうど時間があう場合には参加させていただいています。

2月4日は、16時に広島市中心部の若者の「聖地」とも言われるアリスガーデンに集合(右写真)。16時半に出発し、広島市中心部を「FREE PALESTINE」「子どもを殺すな」「誰も殺すな」などとレベッカさんらの指揮に合わせてコールしながら広島の中心部を原爆ドーム前へ行進しました。筆者は、家庭では、夕食の準備が担当なので、途中で抜けさせていただきました。

これより前、2月1日の17時半からの原爆ドーム前のスタンディングでは、ミャンマーを軍政支配から解放することを目指しているミャンマー人や支援者の日本人も参加し、連帯の挨拶をされていました。日本政府はミャンマー軍事政権に対して多大なODAを行っています。筆者自身の勤務先にもミャンマー人労働者がおられます。彼女らの故郷が人権の保障された平和な状態になることを筆者も願っています。

パレスチナに平和を ミャンマーを救え in 原爆ドーム前(広島瀬戸内新聞ニュース2月1日)

◆G7「虐殺応援団」サミット以来、「米国忖度都市 HIROSHIMA」へ

2023年5月開催のG7広島サミット。結果的には、「虐殺応援団」サミットだったことになります。すなわち、G7のうち、日本を除く米英仏独伊加が「10・7」ののち、直ちにイスラエル断固支持を表明。広島サミットに「乱入」したウクライナのゼレンスキー大統領もイスラエル支持を表明し、わざわざ、イスラエルを訪問しようとしてネタニヤフに断られるという醜態も演じました。

そして、こんなサミットを「顕彰」する施設をサミット県民会議、実質的には湯崎英彦知事は平和記念公園内に作ろうとしています。また、松井一實・広島市長は、イスラエルの後ろ盾・米国政府に忖度し、平和記念公園とパールハーバーの姉妹協定を米国が言うがまま、締結してしまいました。そして、原爆の爆心地を含む広島1区を選挙区とする岸田文雄総理が、西側の核保有は肯定する『広島ビジョン』を作成しています。

もはや、平和都市としてのヒロシマは、行政的には2023年5月のあのサミットを境に「米国忖度都市HIROSHIMA」に変質したと言わざるを得ません。

◆広島市民・県民が汚名返上へ声を

松井市長―湯崎知事―岸田総理という「米国忖度の枢軸」が君臨する広島。しかし、市民はそうではない、というところを示していくしかありません。総理とて、政治家の一人。地元有権者の声は気になるはずです。次回も同様のデモが3月16日(土)に行われるそうです。

こうしたデモに参加するもよし、総理の事務所に意見を言うのもよし。また、総理の選挙態勢を支える自民党の市議や県議らに意見を言うのもよし。いろいろな方法で総理を揺さぶるのも、選挙区の有権者として大事なことではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

『紙の爆弾』2024年3月号

電通・靖国・笹川財団・CIA 安倍派とは何か
「首相は自分のことしか考えていない」岸田派解散の舞台裏
躍進するロバート・ケネディ・ジュニア アメリカ大統領選挙の実相
民進党勝利で改めて問う 米国仕込みの虚構の台湾有事
東京五輪は東日本復興を遅らせた 能登半島地震でも維新「万博固執」の大愚
「司法の偏向」で形骸化する「三権分立」辺野古代執行訴訟が孕む三つの大問題
重信房子氏が語るパレスチナ・ハマース「決起」の理由
3回接種で特定のがんが多発 ワクチン問題研究会が明かす「メッセンジャーRNA」の真実
企業が学問・教育を崩壊させる第二の日本学術会議問題 国立大学法人法改正
権力による教育内容への管理統制強化 加速する「教育デジタル化」の陥穽
問われる「こども家庭庁」委員の関与「ベビーライフ事件」と国際養子縁組の闇
高GABAトマト、マッスル・マダイ、ウイルス耐性ブタ……「ゲノム編集」は生態系も人類も損壊する
「松本人志」「旧ジャニーズ」で見えた変わらぬ大手メディアの忖度体質
米国マスコミが自主検閲で隠してきた2023年の重大ニュースTop25
シリーズ 日本の冤罪47 鶴見事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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広島県内の公立学校の先生が盗撮などの不祥事を起こすと、「不祥事のデパート」教育長の名前で懲戒免職される……。そんな「締まらない」状態も、2023年度いっぱいで終止符が打たれます。

広島県の湯崎英彦知事は2月1日、報道各社の取材に応える形で、2024年3月末で二期目の任期が切れる平川理恵・教育長の再任をしない方針を明らかにしました。

◆任期切れでお役御免! 知事の狡猾な責任逃れ 

「もともと2期6年のつもりだった」と湯崎知事は強弁しておられます。しかし、そんなことは、後付けでいくらでも言えます。人間、そう簡単に権力の座は手放したくないものです。再任しない、ということになればご本人も抵抗する可能性も高い。

平川教育長ご自身も一連の不祥事さえなければ、当然、次もやる気満々だったのではないでしょうか? 下手をすれば湯崎知事の後継の知事候補、ということも考えられます。しかし、県民の批判の前に、さすがの知事も庇いきれなかった。罷免はしなかったが、任期切れでお役御免、という形にした、というのが見え見えです。

通常、教育長というのは、その自治体によって違いますが、現場の教員上がりか、当該自治体出身の文部科学省の官僚かというのが「相場」です。それを敢えて打ち破り、リクルートご出身で横浜市の民間登用校長をされていたという平川氏を湯崎知事が一本釣りしてきた、という経過があります。

したがって、知事としては、任期途中で罷免すれば、自分の任命責任が余計問われます。任期切れでお役御免。知事としてはもっとも狡猾な「逃げ方」です。

◆「改革」という名の「身びいき」だった!

確かに広島県の社会は閉鎖的な面が強い、という声は特に広島県から他県や進学・就職された30代くらいの方からよく伺います。そうした、閉鎖性を平川教育長が打破してくれるのでは?2018年の就任当初、そのように、期待した県民も多いし、マスコミも平川教育長を天まで持ち上げました。

しかし、2期目の途中の2022年夏。事態は暗転します。「文春砲」で一連の不祥事が発覚します。

平川教育長ご出身の地・京都のNPO法人「パンゲア」にわざわざ仕事を県費でつくってあげたと解釈されても仕方のない官製談合問題。外部の弁護士の調査で、地方自治法違反、官製談合防止法違反が指摘されました。

ところが、その弁護士への費用も異様に高額なものでした。しかも県費からの支出です。さらに、県教委と取引のある大阪の企業の女性経営者を平川教育長が自宅に泊めていたということも発覚しました。

これとは別に学校図書館のリニューアル事業と称して、赤木かん子さんを顧問に招聘。赤木さんの著書が大量に学校図書館に送り込まれました。

平川氏は常々、「子どもたちのために」とおっしゃいます。しかし、やっていることは、どうみても、完全な身びいきです。官僚や教員上がりと言った既存タイプの人材よりも酷い腐敗を平川氏は招いてしまいました。

◆木に竹を接ぐ「高校入試」改革

また、平川氏は2023年の高校入試から「自己表現」を導入する改革を強行しました。そもそも、広島県の社会(広い意味での政治)は非常に権威主義的です。それなのに、中学生に「自己を表現しなさい」などと言っても、中学生も親も先生も混乱するだけですし、実際に混乱が見受けられました。

結局、この手の入試改革は、そういうことの対策にお金がかけられるお金持ちの家庭の子に有利になるだけです。以前の、学力テスト+部活も含めた内申点で決めるやり方の方が、お金持ちでない家庭の子にもチャンスがあったのではないでしょうか?

権威主義の広島の社会で、中学生にアメリカンな自己表現を課す。木に竹を接ぐとはこのことです。

◆叡智学園には巨費、非正規教師の正規化には後ろ向き

平川氏は、2019年、瀬戸内海に浮かぶ大崎上島にグローバルエリート養成を目的とした中高一貫校「叡智学園」を開学しました。しかし、この学園開学早々いじめ問題が発生。なんと被害者が退学を余儀なくされるという「日本的」な結果に終わりました。

そんな叡智学園には巨額の県費をつぎ込む平川氏。しかし、既存の公立学校では1000人以上も非正規の先生がおられます。その先生方を正規化するよう、保守系の県議が議会で要望すると、「予算がない」と切り捨てたのです。

また、図書館の問題にしても、図書館司書が確保できていないことが問題なのに、図書館司書の確保はせずに、赤木かん子さんの著書を大量に入れて赤木さんを儲けさせただけでした。

◆これで幕引きは許されない

しかし、これで幕引きは許されません。平川氏は、違法に使った県費は返していただきたい。現在、平川氏を相手取って、違法に使用した県費の返還を求める住民訴訟が広島地裁に提起されています。結果が注目されます。

そして、平川氏を一本釣りしてきた湯崎英彦知事の任命責任も重大です。

県議会も県議会です。なぜ、ここまで、平川氏への辞職勧告決議案は出せなかったのか?

他の自治体では辞職勧告決議案を準備した結果、教育長は辞任、というケースも起きています。議会がやる気になればいつでも平川教育長は打倒できたのにしなかったのです。

◆じり貧を恐れて平川任命、ドカ貧を招いた湯崎知事、万辞に値する

たしかに、広島県は3年連続人口流出ワーストワンです。まさに、じり貧の状態にあります。そこで、真新しいことをやろうという知事の気持ちはわからないではありません。平川教育長を関東から一本釣りして教育長に任命したのもその現れかもしれません。

しかし、実際に平川氏が行ったのはさらに事態を悪化させるというドカ貧」を招いた独裁でした。湯崎知事は「万死」ならぬ「万辞に値する」と言わざるを得ません。湯崎知事から広島の政治・行政を県民の手に取りもどす「ヒロシマ庶民革命」。その必要性はいよいよ明らかです。

広島瀬戸内新聞と筆者は「あなたの手に広島を取り戻し広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を呼び掛けています。「我こそは庶民派の政治家に!」(首長、地方議員、国会議員)、また庶民派の政治家とともに広島を取り戻したいというあなたからのご連絡をお待ちしております。

Tel. 090-3171-4437  メール hiroseto2004@yahoo.co.jp

また、ご寄付もお待ちしております(日本国籍の方に限る)。
・郵便振替口座 01330-0-49219 さとうしゅういちネット
・広島銀行 本店営業部 普通 3783741 さとうしゅういちネット

オンラインおしゃべり会さとうしゅういちと広島の政治にガツンと物申す 
毎週金曜 21時過ぎから
zoom meeting IDとパスコードは以下です。
ガツンとご意見をお待ちしております。
ミーティングID: 411 718 3285 パスコード: 5N6b38

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

広島県の湯崎英彦知事は、既報の通り、2030年度開院予定で、広島県立広島病院(県病院)、JR広島病院、中電病院、広島高精度放射線治療センターなどを統合し、広島駅北口に1000床規模の巨大病院をつくる計画です。人材育成や高度医療を行い、若手医師を引き寄せる、という触れ込みです。

 

新病院予定地になるJR広島病院

新病院開設に先行して、新病院予定地になるJR広島病院は2025年度から県がつくる独立行政法人に組み込まれ「県立二葉の里病院」と改称し、5年間だけ存続、その後は新病院の駐車場になる計画です。

これだけでもわかりにくい。なぜ、新しいJR広島病院を壊さなければならないのか? しかも、1300~1400億円という消費税を財源とした公費を投入するのです。

その上、周辺の交通渋滞が懸念されます。周辺では2025年度には巨大な広島駅ビルも開業し、現在よりも交通が激しくなることは明らかです。その上で巨大病院です。救急車や通院患者を乗せた車の病院到着が遅れる可能性は高まります。

◆がん高精度放射線治療センターが赤字累積

そして、さらなる暗雲が湯崎知事の行く手に立ち込めています。がん対策日本一を掲げる湯崎知事が肝いりでつくった「がん高精度放射線治療センター」。新巨大病院予定地の隣にあります。「リニアック」と呼ばれる放射線治療装置を使用した放射線治療を行います。そのセンターが2015年に開業して以来、累積赤字が9億円になるというのです。この赤字の扱いを巡って、広島県当局も頭を痛めています。大まかに言えば、初期の設備投資にお金がかかり、それがそのまま赤字になって今も改善していないということです。

そして、リニアックという当時は最新式だった設備もいまや、県病院が2022年10月に新型のものを導入するなど、がん高精度放射線治療センターの優位性は崩れています。

◆「現時点」では否定的でも将来は「県費」で救済?

こうした中、現時点では、県費投入での救済には当局も議会も否定的ですし、新巨大病院を担う「独立行政法人」も負担することはない、とされています。しかし、それはあくまで「現時点」でのことです。ほとぼりが冷めたころに、県費をこのセンターの赤字の穴埋めに使ってしまおう。そういうことは十分起きえるのではないでしょうか? 正直、湯崎英彦知事は、今回の病院問題でも、産廃問題など他の問題でも説明責任を果たそうとしません。「こんな」知事のもとでは、なし崩し的な公費による赤字穴埋めの可能性は高いと言わざるを得ません。

◆見通しが甘すぎる湯崎知事が巨大病院を進める「泥船医療行政」

むろん、「儲からないことだからこそ行政がやるべき」という意見もまた正しい。県は事業なら赤字だからやらないというのではなく、県民に必要とされているかどうかで実施の可否を判断すべきです。しかし、それにしても、湯崎知事の見通しは甘すぎたと言わざるを得ません。

問題は、そんな見通しの甘い湯崎知事のもと、広島県が進める医療行政が、新巨大病院というさらに大型の事業に乗り出そうとしていることです。広島県民にとってこのことは恐怖であり脅威ではないでしょうか?

予算1300~1400億円という全国でも例のない巨大病院開設事業。それも、高度医療を進めるという。しかし、高度医療をやるというなら、高度な機械が必要で、べらぼうな初期投資が必要になります。そして、一度病院を造れば、その機械の更新にも将来お金がかかります。

とてもではないが、保険診療の枠内では採算が取れないのではないか?そうなったとき、湯崎知事はどうするのか? あるいは、湯崎さんはそのときは知事ではないかもしれない。後始末をさせられるのは県民です。

◆大赤字の挙句に地域医療崩壊

そして、高度医療と称する新巨大病院に資源を集中させた挙句、広島市南区の現県病院周辺、中区の現中電病院周辺の住民から医療の選択肢を奪うのが、湯崎知事の構想です。そして、付け加えれば、現県病院は島しょ部にお住いの皆様からすれば県病院は船で行きやすい唯一といっていいほどの大型病院です。

下手をすれば、大赤字を出した挙句、いままで便利だった地域の利便性も低下する。踏んだり蹴ったりの結果になりかねません。

母親を介護する主婦で元看護師の広島瀬戸内新聞・熊田栄子記者はこの新巨大病院問題など広島県の医療行政について精力的な取材を行っています。熊田記者は「がん高精度放射線センターの件でも、あそこの高額な機器に県費を入れて、地域の医療は後回しになっている。安芸津病院の耐震化がほっとかれたのはそういうことだ。大金をはたいて設備や機器を入れて、儲かる時はいいけど、そうでない時は、県費を注ぐ。」と指摘します。

また、過疎地の医療で活躍するドクターを養成する、と湯崎知事は意気込みますが、最新式の機械に引き寄せられるようなドクターと、地域医療の本当に厳しい現場で仕事をしたがるドクターの人物像は重なりません。

◆病院赤字は医療ツーリズムで穴埋め?!

熊田記者は新巨大病院が赤字になった場合、海外の富裕層を呼び込む「医療ツーリズム」を湯崎知事が考えているのではないか?とも懸念しています。筆者も、最近の湯崎知事の「一部の人の金儲けを優先させる」行動から推測してその可能性は高いとみています。

その場合、採算は取れるのかもしれませんが、そんな話は、そもそも県が公の医療へ回すべき資源を割いてでやるべきではありません。湯崎知事は、やりたいなら、県知事を退陣し、ご自分で民間企業を立ち上げてやるべきです。

◆やはり高度医療は国主導で

熊田記者は「高度医療は国で担うべき」と主張しています。筆者も同感です。高度医療には巨額の投資がかかります。採算ラインにのせようと思えば、ある程度患者数が必要です。しかし、広島県内だけでは確保は難しいでしょう。さりとて、県外からも患者を集めるとなれば、県民以外のために公費を使うことになります。高度医療の便益は結局県外にも及びます。「国が高度医療は責任をもって担う」のが筋ではないでしょうか?

ともかく、湯崎英彦知事が進める医療行政はまさに泥船で、広島県を破滅させかねません。こんな事業に消費税をつぎ込むなら消費税を下げてほしい。広島県議会も多数派は結局、湯崎知事支持。2025年11月の広島県知事選挙で県民の手に広島を取り戻す。「泥船医療行政」から県民を避難させるには、これしかありません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

◆核兵器禁止条約発効から3年

2024年1月22日。核兵器禁止条約発効からちょうど3年になります。核兵器禁止条約は、市民運動が国際的にスクラムを組んで、国家を動かしてできた条約です。1月15日にサントメ・プリンシペが批准し、70か国が加わる条約となっています。

米露中英仏や印パ、朝鮮、イスラエルの核兵器保有国を市民の横のつながりで包囲していく。その先頭に立たなければならないのは、やはり広島です。最近の広島市の松井市長は、平和記念公園とパールハーバーの姉妹協定など、原爆投下の反省がいまだない米国政府に忖度する方向に走っています。

しかし、広島市がリードする平和首長会議には、ホノルルはじめ多くの米国など核保有国の自治体も参加しており、核兵器禁止条約を推進しています。こうした自治体やそこに住む市民の横のつながりを大事にしたいものです。

◆四国電力側は「爆睡モード」(?!)の弁護士も 原告本人最終尋問

その1月22日、広島地裁では筆者も原告である「伊方原発運転差止広島裁判」の原告本人最終尋問が行われました。

原告を代表して広島市在住の会社員・森本道人さんと福島県南相馬市から京都に避難中の福島敦子さんが出廷し、原告・被告双方の弁護士からの尋問を受ける予定でした。

しかし、実際には、原告側の弁護士による主尋問のみが行われました。その間、被告の四国電力側の弁護士の中には居眠りどころか爆睡モードではないかと疑われる状態の方もおられました。

そして、裁判長に「被告側、反対尋問はありませんか?」と聞かれると、原告側の主任弁護士が「ありません」と答え、あっさり、二人の最終尋問は終わりました。

◆広島市民/フクシマからの避難者 それぞれの立場で熱弁

被告弁護人の一部が爆睡モード(?)だからと言って、原告弁護士による尋問への回答という形での原告お二人の訴えに迫力がなかった、というわけではありません。それぞれの立場で熱弁を振るわれました。

森本道人さんは広島市在住。一部上場の大手化学会社の製造設備の技術者で、2011年3月11日には千葉県市原市で東日本大震災に遭遇しました。地震の翌日、広島に帰る新幹線の中でニュースのテロップで原発の爆発を知ります。そして、屋内退避指示などのニュースを見て「原発とは、放射線とは、恐ろしい、許しがたい」と思ったと振り返りました。

そして、その後、自分なりに勉強され、日本の放射線規制はICRP(国際放射線防護委員会)の勧告をもとにしていて、それは広島のABCC(現・放影研)の調査をもとにしていること、内部被ばくを過小評価していること、欧州放射線リスク委員会などからは見直しを勧告されていることなどを知りました。そして、経産省のエネルギー白書でも電気の消費量が下がり続けていること、使用済み核燃料の最終処分場も決まっていないことなどをあげ、伊方原発の停止を求めました。

福島敦子さんは2011年当時、原発から20kmの福島県南相馬市に在住。下水処理場の水質分析の仕事に従事していました。年収300万円くらいで正社員、職場環境は良好だったそうです。二人の娘は小学生で、福島さんの両親も歩いて15分の所に在住で、5人で仲良く生活していました。

しかし、3月11日に地震が発生。その日は、職場の片づけや、地震で壊れた下水処理場への対応などで帰れず、帰宅は12日の午前0時過ぎに。翌日も午前中は出社し、午後は自宅の片づけをしていたところ、突然、防災無線が鳴り、避難を呼びかけてきたのです。

しかし、屋内退避のほかはどこへ避難しろという指示も行政からはなく、そうした中で、車でその夜には娘二人と両親と5人でまず飯館村へ避難。しかし、飯館村へ向かう道は大渋滞で、同村の道の駅も長くとどまれる状況ではなく、押し出されるように川俣町の警察署へ移動し、そこの駐車場で一夜を過ごしたそうです。

そして、翌13日に福島市の飯坂温泉に避難。そこでは、「死ぬときは死ぬんだ」があいさつ代わりになっていたそうです。

ただ、なぜか、福島さんが避難していた福島市などは放射線量が高かったのです。のちに、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で、福島第一原発から北西方向の飯館村―福島市に放射能が濃く飛び散ったことが明らかになったのですが、そんなことも知らずに、当時の福島さんたちは放射線が高い地域に長くいてしまったわけです。

その後、14日に3号機爆発、15日に4号機爆発、そして、19日に職場の元上司からプルトニウムが原発敷地外で発見されたことを聞いて、さらなる遠方避難を決断。京都へ移り、南相馬の会社は退職。京都府内で非正規公務員を経て、就活に苦戦しつつも契約社員として働くようになったのです。

両親とは別れ別れになってしまった。子どもたちも祖父母とは別れ別れになってしまいました。

現在、国は避難区域の人たちへの医療補助を削減しようとしています。また、福島さんが原告団長となっている京都での避難者訴訟では、国や東電は、なんと「賠償金を払いすぎたので返してほしい」ということまで言いだしたのです。

だが、現実には、現在でも現地では山火事が起きれば、放射線量が一挙に上がる状況もあります。福島さん自身も一度、南相馬に車で帰り、放射線量を測定し、福島市でも1mSV/年を余裕で超えてしまう場所もあることを確認したそうです。また、能登北陸大震災で北陸電力による志賀原発のトラブル隠しに対して、2011年の東電と同じことを繰り返している、と断罪しました。

二度と、自分と同じ思いをする人が出てほしくない。原告となった理由を福島さんはずばり述べられました。

広島の被爆者が、核兵器に反対するのと同じ理由です。

◆7月17日(水)、最終弁論へ

尋問終了後、大浜寿美裁判長は、原告・被告双方に、新たな主張は4月26日までに提出すること、7月1日を最終準備書面の期日とし、7月17日(水)を最終弁論とする、と言い渡しました。

◆「元日大震災」で破綻明白な地震想定・避難計画 見直し迫る判断を

さて、この間、1月1日には、M7.6の北陸能登「元日」大震災が発生しました。能登半島の広い範囲で地盤が4mも隆起しました。志賀原発の過酷事故は避けられたものの、復旧までに半年以上かかる大ダメージを受けました。能登半島ではもっとも壊滅的な被害が出た珠洲市にも2003年までは原発計画が存在していました。しかし、地元の住民の反対運動で撤回されました。

その原発予定地は、今回の大震災で孤立集落になっています。孤立集落が生じるということは、原子力防災計画も機能しないということです。福島の場合は、そうはいっても道路などは崩れていませんが、能登半島のように崩れていれば避難も出来ません。

また、原発が孤立すれば、震災で原発にダメージがあっても、電力会社の社員も応援に駆け付けられず、それこそ、フクシマを上回る事故になっていた可能性が高かった。

被害に遭われた地元の皆様には心からお見舞い申し上げるとともに、しかし、皆様が「珠洲原発」を阻止したことが、大げさではなく日本を救ったと言わざるを得ません。

今回の「元日」大震災では、3つ以上の向きも角度も異なる活断層が同時に動きました。今までは、向きや角度が異なる活断層が連動するということは国も想定していませんでした。

しかし、そうした地震が実際に起きてしまった以上、地震動についての基準も見直す必要があります。ひずみが近くに溜まれば、あまり注目されていない断層も動いて大地震を引き起こす。そもそも、日本列島自体が、地震で地形ができているようなものである。

当然、伊方原発についても、それは見直される必要があります。国に、伊方原発についても基準を見直すよう迫る判断を裁判所には求めます。

◎伊方原発運転差止広島裁判 https://saiban.hiroshima-net.org/

◎原発賠償訴訟京都原告団を支援する会 http://fukushimakyoto.namaste.jp/shien_kyoto/ 

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年冬号

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

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