核の影は、いまも行政の奥底に潜んでいる 高橋博子先生「核へのレジスタンス」を聴いて

さとうしゅういち

◆核の影は、いまも行政の奥底に潜んでいる

広島が一年で最も静かに、そして深く息をする日が来た。
だが、静けさの底には、いまだ言葉にされない「構造」が沈んでいる。

今年の「8.6ヒロシマ平和の夕べ」で、高橋博子・奈良大学教授(元広島市立平和研究所研究員)は「核へのレジスタンス」と題して講演した。
その内容は、私たちが知っているつもりで知らされてこなかった“戦後日本のかたち”を、史料の裏付けとともに突きつけるものだった。

◆ミクロネシアは“解放”されていないまま核実験場にされた

米国は1944年、日本の委任統治領だったミクロネシアを占領した。
だが国連の信託統治領となったのは1947年。
つまり、国際法上の手続きが整う前に核実験を開始したことになる。

ビキニでの1946年の原爆実験。
住民は「解放」ではなく「軍事利用」の対象となり、米兵すら除染作業で被ばくした。
核の影は、戦争が終わった瞬間に消えたわけではない。

◆第五福竜丸だけではない。高知の漁船も、全国の漁民も被ばくした

1954年のビキニ水爆実験。
第五福竜丸の名は広く知られるが、実際には 高知県の漁船を含む多数の船が被ばくしていた。
延べ千隻規模とも言われる。

だが、米国は情報を隠し、日本政府は追随した。
高橋教授によれば、米側資料に基づく情報公開請求を外務省に行っても、「文書が存在するかどうかも答えない」という。
これは、広島県庁呉支所の虚偽公文書作成・公益通報つぶし事件での「存否応答拒否」と同じ構造だ。

核の影は、行政の奥底に沈殿し、今も形を変えて現れる。

◆戦前は“原爆投下は国際法違反”と抗議し、戦後は“残留放射能は大したことない”へ

1945年8月10日、日本政府は米国に対し「原爆投下は国際法違反」と抗議した。
ところが戦後になると、残留放射能の影響を過小評価する立場へ転じた。

理由は単純だ。
米国が残留放射能を認めれば国際法違反が確定する。
だから米国は否定し、日本政府は追随した。

その結果、被爆者の被害認定は極端に狭められた。
そして、広島のデータを基準にした国際的な被ばく基準は、福島第一原発事故の評価にも引き継がれた。

核の影は、基準となり、制度となり、いまも人々の生活を左右している。

◆戦犯の大量釈放と核被害の過小評価は同時進行だった

1950年代、日本の戦犯は次々と釈放された。
同じ時期、ビキニ事件は「政治決着」とされ、米国の法的責任は棚上げされた。

戦犯助命のために、核被害が軽んじられた。
高橋教授の史料は、その構造を裏付ける。

核の影は、政治の取引材料にされ、被害者の声は置き去りにされた。

◆広島の行政にも残る“核の影”

本紙が経験した、広島県庁呉支所の虚偽公文書作成・公益通報つぶし事件についての情報公開請求に対する「存否応答拒否」。
これは、核被害の資料をめぐる外務省の対応と同じ構造だ。

核の影は、行政の奥底に沈殿し、
「都合の悪い事実は存在しないことにする」という文化を生み続けている。

◆広島は、核の影を見つめ続ける街であるべきだ

広島は、核の影を最も深く知る街だ。
だが、その影は過去のものではない。
行政の構造に、国際政治の力学に、そして被害者の声の扱われ方に、いまも潜んでいる。

高橋博子教授の講演は、
「核へのレジスタンス」とは、
過去の記憶に向けてだけではなく、
現在の政治・行政の構造に向けてこそ必要だ
ということを教えてくれた。

広島が静かに息をするこの日、
私たちはその影を見つめ直す責任がある。

※本稿は、さとうしゅういちブログ(2026年8月6日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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【お知らせ】

来る11月1日(日)午後1時より高橋博子さんの講演会が、母校の同志社大学にて開催されます。会費無料、同志社OB/関係者でなくてもご自由に参加できます。多くのご参加をお願いいたします。

時:2026年11月1日(日)午後1時より

所:同志社大学京田辺キャンパス
  知真館3号館(TC3)202教室

講師:高橋博子さん(同志社OB)

テーマ:反原発問題の現在(仮)

主催:同志社大学学友会倶楽部
   ホームカミングデー講演会実行委員会
  (連絡先:鹿砦社・松岡まで)

※具体的な内容は後日お知らせいたします。
よろしくお願いします。

核先制不使用(NFU)こそ、核拡散の連鎖を止める唯一の現実的戦略

さとうしゅういち

今年は被爆81周年。そして、原爆ドーム世界遺産登録から30年です。核兵器の脅威が世界で高まり、中堅国家が次々と核武装を検討する今、核拡散を止めるために必要なのは、複雑な軍縮交渉でも、巨額の予算を伴う兵器削減でもありません。必要なのは、「核先制不使用(NFU)」という、ただの“言葉”です。

秋葉忠利・前広島市長は、8月5日の原水爆禁止世界大会広島大会の分科会でこう語りました。

「核の先制不使用は、言葉だけでできる。兵器を減らす必要も、態勢を変える必要もない。」

NFUは、核保有国が「核で先に攻撃しない」と宣言するだけで成立する。これほど簡便で、これほど効果が高く、これほど政治的に実現可能な核軍縮手段は他にない。

◆しかし日本政府は、そのNFUを“妨害した”

NFUは簡単にできます。中国もインドもすでに採用しています。米国もオバマ政権が踏み出しかけました。そして、地域限定ですが、東南アジアやアフリカ、中南米、中央アジアやモンゴルの非核兵器地帯はNFUが実現しているとも言えます。

にもかかわらずNFUが世界に広がらなかった理由は、核保有国の頑迷さではなく、
被爆国・日本政府の構造的矛盾にあります。秋葉氏はこう指摘しています。

「オバマが核先制不使用に踏み出そうとしたとき、日本の外務省が反対した。」

被爆国でありながら、核兵器の非人道性を訴えるべき立場でありながら、日本政府は米国の核使用を“正当化”し、NFUの採用を妨害しました。この矛盾が、NFUという“安全装置”を世界から奪い、核拡散の連鎖を加速させています。

◆トランプとプーチンの暴走が、中堅国家の核武装を正当化した

NFUが存在しない世界では、核保有国は「いつでも先に核を使える」。その状態で、トランプは核態勢強化を進め、核使用のハードルを下げた。プーチンは核威嚇を繰り返しながらウクライナへ侵攻した。この二大国の“例外主義”は、世界に危険な教訓を広げた。

「核を持たない国は侵攻される」
「核を持てば抑止できる」

こうした“合理的恐怖”が、中堅国家の核武装検討を一気に加速させています。

韓国、トルコ、サウジ、エジプト、インドネシア、ベトナム――。いずれも地域の不安定化と大国の暴走を見て、核武装の正当性を手に入れてしまった。NFUが存在しない限り、彼らの核武装は“合理的選択”になってしまいます。

◆日本が核武装すれば、世界のタガは完全に外れる

秋葉忠利は強い言葉で警告しました。

「日本が核武装すれば、一挙にタガが外れ、中堅国が核武装し、人類は滅亡に向かう。」

被爆国である日本が核武装に向かえば、世界はこう考える。

「被爆国ですら核武装するなら、我々も核武装して当然だ」

NFUが存在しない世界で、日本の核武装は核ドミノの“引き金”になります。

◆だからこそ、日本はNFUを“世界に広げる側”に回らなければならない

NFUは、核拡散の連鎖を止める唯一の現実的手段だ。そしてNFUは、言葉だけでできる。では、どうNFUを世界に広げるのか。秋葉忠利がこの日示した答えは、理念ではなく、現実の国際政治を動かす“戦略”でした。

◆日本が呼びかけ、中堅国家で徒党を組み、トランプに迫れ

秋葉はこう提案しました。

「日本が呼びかけて中堅国家でグループを組む。その上で、トランプらに迫ればいい。」

中堅国家は核武装を検討している。つまり、彼らは“核武装カード”を持っている。日本が彼らを束ねれば、そのカードは“交渉力”に変わります。

トランプは理念では動かない。しかし、ディール(取引)なら動く。だからこそ、中堅国家連合はトランプにこう迫るべきです。

「我々は核武装を検討している。しかし、あなたが核先制不使用を宣言するなら、核武装はしない。」

これは、トランプにとって“核拡散の危機を防ぐための取引”になる。NFUは言葉だけでできる。だからこそ、このディールは現実的なのです。

◆被爆国・日本は、核廃絶の“理念”ではなく“戦略”を持て

秋葉忠利がこの日、広島で示したのは、被爆国が道義的立場だけでなく、戦略的な外交プレイヤーとして核軍縮を動かす方法だった。日本が核武装すれば世界は滅亡に向かう。

しかし日本が中堅国家を束ね、NFUを世界に広げる側に回れば、核拡散の連鎖を止める“最後の防波堤”になれる。

被爆地・広島から発するべきメッセージは、もはや「核廃絶を願う」ではない。

「核先制不使用を宣言せよ。それができなければ、世界は滅亡する。」

これが、秋葉忠利がこの日、示した“戦略的核軍縮論”の核心である。

◆イラン核問題もNFU(核兵器先制不使用)で打開を

イランのペゼシュキアン大統領は8月7日、X(旧ツイッター)でこう述べた。

「広島と長崎への原爆投下は、人類に対する最悪の犯罪の一つだ」 「二度と繰り返してはならない」

大統領は国民の直接選挙で選ばれる。したがって、この発言は イラン市民の反核世論を反映した民主的な声 と理解するのが自然だ。

さらに大統領は、トランプ米政権がイランへの大規模攻撃を示唆していることを念頭に、「米政権は国家を滅ぼし、民間インフラを破壊しようとしている」と非難した。この発言は、イランの核問題を「市民の反核」と「国家の核開発」という二重構造の中で理解すべきだ という重要な示唆を含む。

◆イランは世界最多の「平和首長会議」加盟国

イランは1016都市が広島と長崎が主導する平和首長会議(Mayors for Peace)に加盟している。これは世界最多であり、市民社会レベルでは世界屈指の反核・反戦ネットワークを持つ国だ。

つまり、「イラン=核で暴れる国」という西側の粗雑な言説は、市民社会の実態とはまったく異なる。イランの市民は、広島・長崎と同じ方向を向いている。

では、なぜイランは核開発を進めるのか。理由は単純で、そして深刻だ。

● 米国はNFU(核先制不使用)を採用していない
● イスラエルもNFUを採用していない
● トランプは「イランを石器時代に戻す」と発言
● プーチンは核威嚇を繰り返す

つまり、NFUが存在しない=核保有国が先に核を使う可能性が残る。

この構造のもとで、イランは核開発を“合理的自衛”として進めざるを得ない。
市民は反核。国家は核開発。この二重構造こそ、NFUが欠落した世界の危険性を象徴している。

◆NFUがあれば、イラン核問題は「構造的に」解決できる

NFUは、核保有国が「核で先に攻撃しない」 と宣言するだけで成立する。兵器削減は不要/予算も不要/軍事ドクトリンの大幅変更も不要。秋葉忠利が言った通り、NFUは“言葉だけでできる”最も簡便で効果の高い核軍縮手段だ。NFUが広がれば、イランはこう考える。

「核保有国は先に核を使わない」
「ならば核武装の必要性は下がる」
「核開発の正当性が消える」

つまり、NFUはイラン核問題の“原因”に直接作用する唯一の政策 だ。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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酷暑の令和熊本大震災と広島

さとうしゅういち

2026年7月28日、熊本県を10年ぶりに震度7の大地震が襲いました。8月1日現在、36人が犠牲になられ、酷暑の中、1万人近くが避難されています。心からお悔やみ申し上げます。

◆帰省中に被災した広島県民一家

その令和熊本大震災が発生した7月28日。八代市内では、夏休みで帰省していた広島県安芸郡在住の会社員Kさん一家5人が被災した。
Kさんは8月1日、本紙のオンライン取材(Zoom)に応じ、当時の状況を語った。

◆死者が出たイオンモール宇城に「その日の午前中にいた」

地震当日の午前、Kさん一家はイオンモール宇城に遊びに出かけていた。
この施設では、崩落した壁の下敷きになり犠牲者が出ている。
「時間帯が違えば、どうなっていたか分からない」とKさんは振り返る。

◆地震発生の16時27分──ゆめタウン八代の駐車場で激震

地震が発生した16時27分、Kさんご夫妻、子どもさん三人、そしてKさんの母の計6人はゆめタウン八代の駐車場のスロープ(下記写真、Kさん提供)の車中にいた。
「激しい揺れで、何が起きたのか分からなかった。車が跳ね上がるようだった」と語る。
八代市は震度6強と発表されているが、Kさんは「体感は震度7のようだった」と話す。

◆実家は倒壊を免れたが、家財は散乱

Kさんの実家は八代城近くにあり、倒壊は免れた。しかし室内は家財道具が散乱し、生活空間は大きく乱れた。幸い、家族全員にけがはなかった。Kさんの父は仕事で不在だったという。

◆「平成熊本では壊れなかった煙突が折れた」

今回の地震では、日本製紙八代工場の巨大煙突が倒壊し、多数の死傷者が出た。
平成熊本地震(2016)では壊れなかった構造物が倒れたことについて、Kさんは「前回より明らかに破壊力が強い。断層がまた動いたのだろう」と語る。日奈久断層に近い九州新幹線や高速道路も大きな被害を受けた。

◆南下し、水俣へ──“ほうほうのてい”で広島へ帰還

地震後、Kさん一家は八代から水俣市へ南下。そこから国道268号を使い、伊佐市などを経由して宮崎県へ抜け、東九州自動車道に入り延岡市で一泊した。
「高速も一般道も寸断されていて、どこを通れるか分からなかった。酷暑の中、ほうほうのていで広島まで戻った」と語る。

◆「広島も他人事ではない。体験した人が伝えなければ」

最後にKさんはこう語った。
「広島も他人事ではない。体験した人が記憶し、伝えておかなければならない。」
2018年の西日本豪雨で広島が熊本に助けられた記憶は新しい。今回、広島からも警察・消防・水道、そして民間団体が支援に向かっている。
災害は忘れぬうちにやってくる。そして、体験者の言葉こそが、次の命を守る。

◆広島からも官民の応援続々

8月2日には、本紙も何度も取り上げてきた広島の民間団体「シェアリンク広島」が、八代市の障がい者支援センターに水と食料を届けました(下記写真、左はシェアリンクの井原代表。)。熊本支援のため広島を出発しました。

広島からは、警察・消防・水道などの公務労働者、そして民間の支援団体が続々と現地へ向かっています。

広島は2018年の西日本豪雨で、熊本の皆さんに本当に助けていただきました。
あの時の恩を、今度は私たちが返す番です。県民を代表して熊本へ向かう皆さんに、心からの感謝を。

どうか安全に、そして力を届けてください。

熊本地震 #広島からの支援 #恩返しの災害支援

また、外国人コミュニティー内部での相互支援の動きも出ています。熊本県八代郡氷川町のミャンマー人から広島ミャンマーコミュニティーに水がないとSOS。災害時に外国人労働者は孤立し、支援が回らない、災害弱者になります。                  
急きょ、Hiroshima Myanmar Communityの2人が車で広島から支援物資をつんで一路熊本へ。8月1日夜12時前、支援物資を届けたそうです。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島市街地の液状化リスク インフラ崩壊と“エキキタ集中”の危険性

さとうしゅういち

◆能登半島大震災が示した「震度5弱でも道路が波打つ」現実

能登半島大震災では、震度5弱の内灘町で、道路が波打ち、橋が傾き、下水管が破断しました。これは、沖積層が厚い 地下水位が高い 造成地が多い という“都市地盤の弱さ”が原因でした。

広島市の市街地は、これらの条件が内灘町とほぼ同じか、むしろ悪い。

広島市街地の地盤特性は、①太田川デルタの沖積層で、地下水位が高い。 ②明治以降の埋立地(宇品・出島・マリーナホップ周辺)も多く、造成地(安佐南区・西区)も多く、③さらに、旧河道が多数(紙屋町・八丁堀・比治山下、西区福島町)です。つまり、震度5弱~6弱でも道路が波打つ可能性は高い(図は広島市HPより)。

◆液状化は「道路・橋・鉄道」を一気に破壊する

液状化は建物だけの問題ではない。むしろ、都市インフラの破壊が最大のリスクだ。

●液状化で起こること ①道路が波打つ ②橋脚が沈む ③高架が傾く ④下水管が破断 ⑤地下鉄が浸水 ⑥JR線の路盤が沈む ⑦港湾の護岸が崩壊 特に広島市の場合、広島駅周辺は最も液状化しやすい地盤。

◆その場所に“巨大県病院”を集中させて大丈夫か

広島県は、県立病院・旧JR広島病院・中電病院などを統廃合し、巨大県病院をエキキタに集中させる計画を進めている。しかし、エキキタは以下の理由で「最悪の立地」だ。

●エキキタの弱点 ①沖積層が極めて厚い ②地下水位が高い ③旧河道が走る ④周囲は高層ビル密集 ⑤道路が狭く、液状化で通行不能になりやすい ⑥救急車のアクセスが“一点集中”で脆弱 ⑦ヘリポートは周囲の高層ビルで危険 つまり、地震で道路が波打てば、巨大病院は孤立する。能登半島のように、「病院は無事だが道路が壊れて患者が運べない」という事態が広島駅北口で起こり得る。

◆公的病院は“分散配置”が正しい

本紙(広島瀬戸内新聞)が以前から主張してきたように、広島市は川で分断されやすく、災害時には“島状都市”になる。

だからこそ、公的病院は複数の島(地域)に分散配置するのが合理的です。

●分散配置の候補 ①南区宇品(県病院を耐震基準に満たない部分を改築) ②中区(中電病院) ③東区二葉の里(旧JR広島病院) これらを残し、④安佐北区(安佐市民病院)へのアクセスを芸備線と可部線の直通で改善すれば、災害時の医療アクセスは圧倒的に安定する。巨大病院を一箇所に集中させるのは、昭和的な「大規模=正義」という発想であり、現代の災害リスクには全く合わない。

◆行政のバックアップ拠点は“内陸の強固地盤”に必要

広島市の行政機能は、中区・東区・南区に集中している。しかし、これらはすべて液状化リスクが高い地盤だ。

●行政バックアップ拠点の候補 西風新都(石内・大塚)(①花崗岩の強固地盤  ②高台 ③液状化リスクほぼゼロ ④道路網が広い ⑤広島高速4号線で都心と直結) 

このほか沼田・伴地区や安佐北区の高台(口田・落合)が考えられます。これらは、災害時の行政・医療・通信のバックアップ拠点として最適です。

◆呉日鐵跡地に防災省を

瀬戸内海の巨大断層は、しまなみ海道から今治、高縄半島、周防大島、柳井沖、上関へと連続して伸びています。能登半島地震が示したように、断層は地形に沿って連鎖破壊します。

広島市街地は液状化危険度Aランクであり、震度5弱~6弱でも道路が波打ち、橋が沈み、都市機能が麻痺する可能性が高い。その中で、呉日鐵跡地は瀬戸内地震帯の“都市壊滅ゾーン”から外れ、地盤が比較的安定し、津波の直撃も受けにくい場所です。

本紙(広島瀬戸内新聞)が主張してきた「呉日鐵跡地に防災省を軸に、防災・環境テクノロジーの首都を」という構想は、今回の巨大断層発見によってますます正当性を増しました。ただし、津波を想定した2mのかさ上げ、地盤強化、免震構造、高台アクセスの確保など、リスクを踏まえた設計が不可欠です。

「個別断層前提」から「連動型・複合型災害前提」へ 広島と日本の未来を守るために

これまで広島県や広島市の防災対策は、「南海トラフ」「芸予地震」「五日市断層」「己斐断層」など、個別の活断層ごとに被害を想定する方式で作られてきた。しかし、能登半島大震災が示したように、地震は一つずつ起こるのではなく、複数の断層が時間差で連鎖破壊し、M6級の“飛び火”が周辺で多発します。

さらに、国の原発審査基準や自治体の原発避難計画も、連動型・複合型災害を想定していません。上関の核ゴミ貯蔵施設は、しまなみ海道巨大断層帯の延長線上に位置し最悪の立地条件を抱えています。豪雨災害と地震災害が同時に起こる“複合災害”も、能登半島で既に現実となった。防災は、「個別断層前提」から「連動型・複合型災害前提」へ抜本的に転換しなければならない。しまなみ海道巨大断層帯を軸に、連鎖破壊・飛び火・豪雨との複合災害を想定した新しい防災体系を構築することが、広島と日本の未来を守る唯一の道である。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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瀬戸内海に巨大活断層発見! 上関も危ない! 連動型・広島大震災に備えよ!

さとうしゅういち

◆瀬戸内海に潜む“起爆点” しまなみ海道沖巨大活断層

産総研は2025年冬、しまなみ海道沖合に海底巨大海底断層が存在することを突き止め、26年5月末に公表しました。その位置は、しまなみ海道の島々を形成した沈降帯の延長線上にあります。瀬戸内海は、沈降(リフト)+横ずれ断層の複合地形であり、巨大断層が存在しない方が不自然です。

この海底断層が破壊すれば、瀬戸内海全域の地殻の力関係が変化し、“連動型地震の第一段階”が始まる可能性があります。連動型地震とは、能登半島で2024年正月に起きた大震災が典型例です。地震発生の初期に動いた活断層からやや遠い活断層や、方向が違う断層も動いて大被害になりました。広島市や広島県の防災計画や都市計画も抜本的な見直しが必要です。

◆第一段階:海底巨大断層(M7.5~最悪の場合8.0)

しまなみ海道巨大断層は、今治で終わりません。地形的に見れば、高縄半島、周防大島、柳井沖、上関へと連続して伸びています。能登半島の教訓を踏まえれば、断層は地形に沿って連鎖破壊する。

瀬戸内海の巨大断層はM7.5~8.0に達し、上関に予定されている核のゴミ貯蔵施設を含む沿岸都市を直撃する可能性があります。

●想定震度 広島市:震度5弱~6弱呉・東広島:震度6弱尾道・三原:震度6弱今治:震度6強 

※連動が西側に広がれば松山・柳井・上関など震度6弱も

●津波到達時間 今治・尾道:数分 呉:5~10分 広島:10~15分 
南海トラフのような「3時間の猶予」は存在しません。

●想定被害 「海底の上下変位による局所津波」「しまなみ海道の橋脚損傷」「広島湾沿岸で液状化」「港湾機能の低下」(広島港・呉港・松山港) ※大きな揺れや津波が上関町に計画中の核のゴミ中間貯蔵施設直撃も

◆第二段階:安芸灘断層帯(M7.2)

海底断層の破壊で力関係が変わった場合、最も誘発されやすいのが安芸灘断層帯です。

●想定震度 広島市:震度6弱呉市:震度6強江田島:震度6強
●津波到達時間 呉:数分 江田島:数分 広島:10分前後
●想定被害 呉市の斜面住宅地で大規模崩壊/江田島の液状化/広島湾の護岸損傷/しまなみ海道の橋梁が再度揺れ、損傷が拡大

◆第三段階:広島湾‐岩国沖断層帯(M7.4~7.5)

安芸灘断層帯がのほかに懸念されるのは広島湾‐岩国沖断層帯です。

●想定震度 広島市:震度6弱~6強特に中区・西区・南区・安佐南区で震度6強。
●津波到達時間 宇品・出島:数分 南区沿岸:数分 廿日市:5~10分
●想定被害 都心部の老朽ビル倒壊/橋梁・高架の損傷/南区の液状化/安佐南区の造成地崩壊/JR山陽本線・呉線の長期不通/しまなみ海道の複数橋梁が通行不能

◆五日市断層・己斐断層への飛び火も

能登半島大震災では、その後も、周辺の断層への「飛び火」的な地震が相次いでいます。広島に当てはめれば、五日市断層や己斐断層への飛び火も危険だ。一部のセグメントだけがM6級で破壊しても、その直上の広島市街地にとっては“都市直下型本震”となります。断層の部分破壊こそ、広島が最も警戒すべき地震シナリオです。

◆瀬戸内海の津波は“数分で来る”

南海トラフのような外洋型巨大地震では、津波到達まで2~3時間の猶予がある。しかし瀬戸内海はまったく違う。 

①震源が近い ②海が狭い ③波が反射・増幅 ④海底断層の上下変位が直接沿岸に作用

そのため、津波は最短で数分、長くても10~20分で到達する。揺れたらすぐ逃げる――これが瀬戸内海の防災常識である。

◆瀬戸内海は“陸の隆起/海の沈降”を繰り返してきた 「日本のムー大陸」瓜生島伝説

瀬戸内海の地形は、断層の連動による上下動の履歴そのものである。①島が持ち上がる(隆起) ②海底が沈む(沈降) ③海岸線が変わる ④津波が発生するなど、能登半島地震で見られた現象は、瀬戸内海でも繰り返されていました。

大分には「日本のムー大陸」といわれる瓜生島沈没伝説があります。①島が沈む ②津波が襲う ③海岸線が変わる……これらは、能登半島地震の沈降現象と酷似しています。瀬戸内海は沈降帯であり、島が沈むことは自然です。

◆室町以前の地方での地震は“記録に残らない”

瀬戸内海の巨大地震は、中央政府=朝廷・幕府で記録されず、多くが文書として残りません。記録される地震の多くは、畿内・鎌倉のものが中心です。地方武士団は災害記録を残さないし、水軍文化圏は口承中心です。一方で、海岸線の変化は伝説化しやすい。瓜生島沈没は、失われた瀬戸内地震史の数少ない痕跡である。

◆結び すぐ逃げる防災を

瀬戸内海の津波は、南海トラフとは違う。揺れたらすぐ逃げる。数分で来る津波に備える。連動型広島大震災を想定する。これが、瀬戸内海沿岸に生きる私たちが持つべき新しい防災常識である。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島東洋カープオーナー一族経営の限界 ── 市民参加型の球団経営を議論する時だ

さとうしゅういち

我らが広島東洋カープ。私・佐藤周一はカープ初優勝の1975年に福山で生まれ、東京での小学校時代に、広陵高校出身の被爆者の担任の先生に平和とカープはしっかり叩き込まれました。そのカープは広島市民球場(マツダスタジアム)の指定管理者であり、単なる民間企業ではなく公共性を背負う組織です。その球団が、羽月元選手の薬物事件の説明責任を果たせず、交流戦6連敗という実力面の危機にも直面しています。こうした状況の中で、「オーナー一族経営の限界」を指摘する声が、市民の間で静かに、しかし確実に広がっています。

◆オーナー一族経営の強みと弱み

カープの歴史は、松田家を中心としたオーナー一族の献身によって支えられてきました。これは事実であり、功績でもあります。しかし、同時に閉じた経営構造が透明性を損ない、説明責任の弱さにつながっているという指摘も根強くあります。

不祥事への対応が遅い
情報公開が不十分
意思決定が属人的
外部の視点が入りにくい

こうした構造的な弱点は、今回の羽月事件で一気に表面化しました。

◆「市民が株を持つ」 ── 市民参加型経営という選択肢

広島では以前から、「市民が株を持ち、経営に参画できる仕組みを」という声があった。これは単なる理想論ではありません。

●実例がある
・FCバルセロナ(スペイン)
・グリーンベイ・パッカーズ(NFL)
・ドイツの“50+1ルール”による市民参加型クラブ
世界では、市民がオーナーシップを持つスポーツクラブは珍しくない。

●広島に合う理由
カープは地域密着球団市民の愛着が強い指定管理者として公共性が高い市民の監視が透明性を高める市民が株主となり、経営に一定の発言権を持つ仕組みは、球団の公共性と透明性を高める現実的な選択肢である。

◆指定管理者制度との相性

カープは市民球場の指定管理者であり、市民の財産を預かる立場にある。であれば、市民が経営に参画する仕組みは制度の理念とも一致する。公共性の確保説明責任の強化経営の透明化不祥事の抑止市民の信頼回復これらは、市民参加型経営によって大きく前進する。

◆いま必要なのは「議論を始めること」

私は断言しない。「市民株主制度が唯一の正解だ」とは言わない。しかし、議論を封じることこそ最大のリスクだ。オーナー一族経営を続けるのか? 外部取締役を増やすのか? 市民株主制度を導入するのか? 指定管理者の更新条件を見直すのか? 広島市、市議会、球団、市民が開かれた議論を始める時期に来ています。

◆広島の球団は、広島の市民とともにあるべきだ

カープは広島の誇りであり、広島の象徴であり、広島市民の財産を預かる存在です。だからこそ、閉じた経営ではなく、開かれた経営へ。実力の立て直しと同時に、倫理と透明性の改革を進めるためにも、市民参加型の経営モデルは真剣に検討されるべき時期に来ています。

◆カープは市民球場の指定管理者 ── 公共性を自覚し、膿を出し切れ

そもそもカープは、ただの民間企業ではありません。広島市民球場 ── マツダスタジアムの指定管理者です。つまり、市民の税金で整備された球場を預かり、市民の財産を管理し、市民の信頼の上に成り立つ、公共性を持つ組織なのです。

市役所と同じレベルの透明性、説明責任、倫理性が求められる。これは制度上の当然の前提です。

◆羽月元選手の事件 ── 公共性を持つ組織としての説明責任が問われている

羽月元選手の薬物事件。「複数の選手に売っていた」とされる売人が再逮捕されました。この状況で、球団が内部調査だけで済ませることはできません。なぜなら、カープは市民の財産を預かる指定管理者だからです。何が起きたのか? いつ把握したのか? 管理体制に問題はなかったのか? 他の選手への影響はどうか?

これを外部の専門家が調べ、市民に説明することは、義務であり責任です。第三者委員会の設置は、選手を守るためにも、球団を守るためにも、広島の誇りを守るためにも必要です。

◆カープが膿を出し切れないなら、指定管理者の非更新も視野に入る

指定管理者制度は、更新制です。透明性を欠き、説明責任を果たさず、管理体制に問題がある組織には、更新しないという判断が制度上可能です。これは球団を攻撃するためではありません。

市民の財産を守るための行政判断です。もしカープが真相究明を避け組織改革を拒み倫理教育を怠るのであれば、指定管理者の非更新を議論するのは、市民として当然の権利です。もちろん、非更新を私は望みません。しかし、市役所や議会が、カープの抜本的な改革を迫る「ディール」の材料として指定管理者非更新は使わざるを得ないと思うのです。

◆公共性を自覚し、実力と倫理の両面で立て直せ

カープは今、交流戦6連敗という実力の低下と倫理の揺らぎという二重の危機にあります。だからこそ必要なのは、実力の立て直しと、倫理の立て直しを同時に進めること。そして、公共性を持つ組織としての自覚を取り戻すこと。それができなければ、指定管理者の非更新という議論を、市役所や議会サイドから起こしていくべきでしょう。カープには広島の球団として、広島の財産を預かる組織として、いまこそ本気の改革が求められています。ご清聴、ありがとうございました。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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三原本郷産廃処分場裁判「住民逆転敗訴」 産廃汚染、環境基準オーバーでも違法じゃない?! 広島高裁は“ガンパイア”か?! 行政寄りの不当判決

さとうしゅういち

今回は、「住民逆転敗訴」となった三原本郷産廃処分場の裁判の広島高裁の控訴審判決について、私が現場に足を運び、法廷で判決を聞いた者として、その実感をお伝えします。

私は5月14日、広島高裁の法廷で、裁判長がこう読み上げるのを聞きました。
「原判決のうち、以下を変更する」 その瞬間、私は直感しました。

──これは不当判決だ。

なぜか。一審の広島地裁・吉岡裁判長は、県庁の許可手続きについて、こう認定していたからです。

「本来検査すべき井戸を検査していない」
「知事の判断過程に看過しがたい過誤があった」

つまり、許可の根幹に関わる重大なミスが広島県庁にあったと断じたのです。
だからこそ一審は、許可取り消しを命じました。

判決後の報告会
判決後の報告会

◆一審判決後も悪化する現場

私は、一審判決後、現場近くの競輪場外車券売り場の取材を兼ねて、何度も現場に足を運びました。そして、一審後の現場をこの目で見ました。

状況はどうなっていたか。良くなっていたのか。改善していたのか。違います。むしろ、悪化していたのです。

汚染水は相変わらず流れ出し、PFASも検出され、放射性物質も検出されている。
そして、これは私自身の体験ですが──2024年7月、現場近くの水をちょっと舐めてみたら、しょっぱい味がした。

山の水が“しょっぱい”はずがない。これは、何かが混じっているということです。

2024年7月、現場近くの水をちょっと舐めてみたら、しょっぱい味がした

◆アリバイ工作に終始する県庁

さらに問題なのは、県庁の対応そのものです。県庁は2025年春にかけて、何度かこの処分場を「使用停止」にしました。しかし、それは アリバイ的な停止 でした。原因を究明しないまま、数値が少し下がると、すぐに使用を再開させる。

これでは問題解決になりません。火事の原因を調べずに、煙が少し減ったからといって「もう大丈夫」と言っているようなものです。

現地では、米作りを断念した農家が9軒もあります。産廃による汚染の深刻さに失望し、広島に戻って農業をするのを諦めた若者もいます。県庁が人口流出を止めたいと言うなら、こういうところを改めるべきです。

◆産廃フリーパスで広島が「日本のゴミ捨て場」に

そして、ここが広島の構造問題です。島県は、安定型処分場の数が全国3位、残り容量は全国最大。つまり、広島は“日本のゴミ捨て場”のようになっている。安佐南区上安しかり、東広島黒瀬しかり、福山しかり。その各地の産廃処分場の下流で基準値を超えるPFASが検出されています。

なぜか。規制が緩いからです。フリーパスだからです。

そして、こんな裁量を県に許してしまっている廃棄物処理法そのものが、もう時代に合っていない。

◆国と経済界は石油危機だからこそ、資源循環の構造を見直せ

国はどうか。4月末、住民がこの問題を直訴した際、国の担当者はこう言ったそうです。

「規制を強化したら不法投棄が増える」

違うだろう。本当に違うだろう。必要なのは、ゴミの減量、再使用、リサイクルの徹底。 産廃ビジネスに依存しない経済構造への転換です。

石油危機で大変なのは分かる。しかし、石油危機だからこそ、資源循環の構造を見直すのが経済界の責任であり、それを促す仕組みづくりが国の責任ではないか。

◆ガンパイア判決を許さない!

そして今回の控訴審判決。県庁のミスを「大したことない」と扱い、被告の県側ですら主張していない「環境基準は少々オーバーしても違法ではない」という論理を裁判所が勝手に持ち出した。

私は、この瞬間、大昔のプロ野球のある事件を思い出しました。篠塚選手の明らかにファウルな打球を、讀賣寄りの審判がホームランにしてしまった事件。当時、審判は「ジャンパイア」と揶揄されました。今回の判決を聞いた瞬間、私は思いました。

──これは“ガンパイア”だ。
government(行政)寄りの判決だ。

司法は本来、行政の暴走やミスをチェックする“最後の砦”のはずです。それが行政に寄りすぎてしまうなら、市民はどこに救いを求めればいいのか。原告代表は上告すると宣言しました。当然です。広島高裁も私の元職場・広島県庁も、県民を舐めています。

私は、広島県民の一人として、元広島県庁職員として、この不当判決と闘う側に立つことを、ここに宣言します。広島の未来を守るために、共に声を上げていきましょう。

2018年~2019年
三原市と竹原市の水源地のど真ん中に産廃処分場計画
地元で猛烈な反対運動

2020年 
4月 湯崎英彦知事が三原本郷産廃処分場を許可
7月 三原市と竹原市の住民が許可取り消しを求め住民訴訟を提起

2022年
秋 三原本郷産廃処分場稼働開始

2023年
6月頃 三原本郷産廃処分場付近で硫黄臭や泡立ちなど異常
7月 訴訟の一審判決。広島地裁は許可取り消しを命じる。湯崎知事が控訴

2024年
1月 控訴審で県が事業者・JAB協同組合と一体となって県民に敵対
6月 三原市議会で住民側から見れば不十分ながらも水源保護条例可決
7月 筆者が産廃処分場からの排出口付近の水のしょっぱさを確認

2025年
前半 三原本郷産廃処分場がアリバイ的に閉鎖されている間、安佐南区上安産廃処分場に廃棄物が集中

2026年
3月 安佐南区上安産廃処分場下流から基準値の28倍のPFAS
4月 福山の産廃処分場下流から基準値の14倍のPFAS
5月14日 三原本郷産廃処分場許可取り消し住民訴訟、広島高裁で不当判決

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「あなたのお困りごと聞かせて ── 生存のためのメーデー IN 広島 2026」参加呼びかけ

さとうしゅういち

私たちは、いま再び「生存」という原点に立ち返らざるを得ない時代にいます。

2000年代後半、格差と貧困が急速に広がり、非正規労働者の声が既存のメーデーに届かない現実がありました。

その中で、広島でも2008年から2010年にかけて「生存のためのメーデー IN 広島」が立ち上がり、働く人びとの実態を可視化し、声を届ける場をつくってきました。

あれから15年以上。状況は改善するどころか、より複雑で、より深刻で、より“生活に直撃する形”で私たちを追い詰めています。

コロナ禍、ウクライナ戦争、中東戦争── 世界の混乱は、輸入物価の高騰やコストプッシュインフレとして、私たちの台所、家計、働き方、そして未来の見通しを直撃しています。

かつて「就職氷河期」と呼ばれた世代は、不安定雇用のまま年齢を重ね、中間層とされてきた層にも貧困が広がり、闇バイトのような“生存の隙間”を狙う犯罪が社会の影に忍び寄っています。

「生きるために働く」ことが、「生きることそのものが苦しくなる」社会になってはいないか。この問いを、私たちは避けることができません。

◆2025年、そして2026年 ── 再び始まった「生存のためのメーデー」

2010年を最後に一度途絶えたこの取り組みは、2025年にオンラインで復活しました。

そして今年2026年も、「あなたのお困りごとを聞かせて」 をテーマに、誰も置き去りにしない広島、一人ひとりの声を大切にする日本を取り戻すために開催します。
メーデーは「労働組合のイベント」だけではありません。
生活に困っている人、働き方に悩んでいる人、将来が見えない人、孤立している人──
すべての人の声を持ち寄る日です。

あなたの声が、誰かの生存を支えるヒントになります。あなたの困りごとが、社会を変える第一歩になります。

◆日時・参加方法

2026年5月2日(土)20時~ 途中入退室自由
Zoom ミーティングID: 411 718 3285
パスコード: 5N6b38
https://us02web.zoom.us/j/4117183285
主催:広島瀬戸内新聞 共催:庶民革命ひろしま

当日参加が難しい方は、 hiroseto2004@yahoo.co.jp または @hiroseto あるいはこの記事への返信でも声をお寄せください。

最後に私たちは、誰かの「困りごと」を“自己責任”で片づける社会ではなく、「声をあげれば届く」「つながれば変えられる」社会を諦めていません。

広島から、再び。生存のためのメーデーをともにつくりましょう。あなたの参加を心からお待ちしています。

◆生存のためのメーデー IN 広島 年表

《2006年》 
5月 広島瀬戸内新聞代表のさとうしゅういちが東京の独立系メーデーに賛同

《2008年》
5月2日 生存のためのメーデー IN 広島
8月31日 広島で初の雨宮処凛先生講演会
※9月 リーマンショック。
12月末 岡山・野宿生活者を支える会炊き出しに参加

広島で初の雨宮処凛先生講演会(2008年8月31日)

《2009年》
3月8日 国際女性デーの取り組み
5月2日 生存のためのメーデー IN 広島

《2010年》
5月2日 生存のためのメーデー IN 広島
5月8日 生存のためのメーデー IN 広島、当時の与党民主党に政策提言
7月31日 当時の与党民主党に政策提言
8月1日 岡山・野宿生活者を支える会炊き出し参加
8月20日 館長雇止め裁判報告集会IN福山

《2011年》
 ※1月31日で広島県職員を退職して以降、活動に割く資源の余裕がなくなる。
3月11日 東日本大震災・東電福島原発事故
5月2日 生存のためのメーデー IN 広島 実際には中国電力前での原発事故を受けての街頭演説にとどまる。

《2012年》
 ※12月~安倍時代 
事実上休眠を余儀なくされる。左派リベラルの関心が原発事故に集中。
他方でこのころから、団塊世代の労働市場撤退もあり、就職率改善。
「働き方改革」などもあって、安倍晋三さんが多くの若者の心を掴む。
筆者も既存労組(全労連系)への活動上の合流を余儀なくされる。

《2022年》
10月 さとうしゅういちが既存労組の幹部を拝命。

《2025年》
5月3日 生存のためのメーデー IN 広島オンライン。10年ぶりにメーデーがオンラインで復活。

《2026年》
5月2日 生存のためのメーデーin広島オンライン

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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参院選広島再選挙2021告示から5年 ── 不透明な候補者選びと政治の劣化を超えて、市民の手に政治を取り戻すために

河井案里さんの当選無効に伴う2021年の参院選広島再選挙から、5年が経過しました。

立憲民主党の宮口治子さんが当選。筆者も完全無所属で立候補し、20848票で6人中3位という結果でした。

しかし、あの選挙は、「単なる補選」ではありませんでした。政党の候補者選びの不透明さ、政策協議の欠如、そして「政党の都合」が市民の政治参加を押しつぶす構造が、あからさまに露呈した選挙でした。

◆不透明な候補者選びが象徴した「政党の劣化」

当初、立憲民主党は楾大樹弁護士を候補に内定していました。 しかし、党内の力学によって宮口治子氏に差し替えられ、楾氏は“はしごを外された”形となりました。いわゆる「仁義なき候補者選考・楾─宮口事件」です。(この事件の経過については、『改訂版 茶番選挙 仁義なき候補者選考』[楾大樹著 1540円 あけび書房]に詳述されています。)

さらに、野党系候補者の一本化をめざして政策協議を打診した筆者・佐藤周一に対し、立憲陣営幹部はこう答えました。

「宮口さんは具体的な政策が分かる人じゃないから」

政党が自らの候補者をそう評する異常さ。そして、他の既存野党も立憲に追随するだけで、政策協議の場はついに開かれませんでした。この時点で、既存野党の劣化は始まっていました。

◆5年後の今、与野党ともに「劣化競争」に陥ったのではないか

あれから5年。既存の野党は、2021年再選挙で宮口氏が勝ったことを“最後の栄光”としてしまったかのように、後退の一途をたどりました。2021年衆院選では、立憲民主党は大敗し、日本共産党も立憲と同列とみられ後退しました。2022年参院選では、自民党の前に手も足も出なかったのです。

2024衆院選、2025参院選では、自民党が過半数割れしたものの、立憲民主党、日本共産党となども既存野党も得票数や得票率では後退を続けています。

勝ったのは「新勢力」であり、野党第一党ではありませんでした。

2026衆院選では、高市総理が「初の女性」「反グローバリズムっぽい」という“雰囲気”で支持を集め、自民が圧勝しました。いわば、庶民家庭出身の女性が始めて総理になったことである種の「革命の熱狂」が若い女性や反グローバリズム層を中心に起きました。立憲と公明が合併してできた「中道」は古臭いとみられて壊滅しました。日本共産党も、2023年の県議選を前に一部支持者が行った佐藤周一への誹謗中傷で佐藤に裁判で敗北的和解したことへの反省や、執行部の気に入らない言動をしただけで党員を排除してきたことへの反省は見られませんでした。

一方、参政党やれいわ新選組といった新興野党も独自性を強調しすぎた結果、政策実現力が見えず埋没しました。参政党は2025参院選から票を伸ばせず、れいわ新選組は大敗しました。ともに、新しさが故のガバナンスの不十分さという課題に直面しています。

しかし、大勝したはずの自民党・高市総理のもとで、日本政府の「統治の空白」が目立っています。

米国・イスラエルによるイラン攻撃では、トランプ大統領への過剰な忖度でせっかくのこれまでのイラン外交を活かせず、石油の確保に不安を抱かせています。れいわ新選組の伊勢崎氏や共産党の田村氏、自民党の岸田氏など超党派の役付きでない議員が水面下で動き、その空白を埋めている実情はあります。

陸自青年将校の中国大使館侵入事件では半月経っても村田被疑者への厳しい処分の方針や再発防止策を中国側に示せていません。

結局のところ、この5年間で、与野党ともに、政治の質が上がらない。むしろ「劣化競争」に陥っているのではないでしょうか。

◆広島の政治・行政の劣化はさらに深刻だ

2021年再選挙で「お灸をすえた感」が県民に広がりました。しかし、裏金問題を中心とする「政治とカネ」の問題も、「企業団体献金」を梃子にした「強者による政策買収」も、何一つ変わっていません。

さらに、河井事件後に地方行政の監視能力がある保守系議員が失脚したことで、広島市政・県政の監視機能は著しく弱まっています。

その結果──

●虚偽公文書作成と公益通報つぶし
●情報公開請求に対して存在するかどうかも明らかにしないブラックホール体質
●産業廃棄物汚染水の垂れ流し
●強引な県病院つぶしと巨大病院構想
●県民の意見を聞かない高校統廃合原案
●前教育長の官製談合事件への甘すぎる対応
●不透明な県外企業優遇

こうした行政の腐敗が連鎖しています。そして、「広島は古臭い」というイメージが全国に広がり、人口流出や移住者減少につながっています。

◆必要なのは「政策・政治姿勢本位」の政治への転換だ

いま必要なのは、政党の都合ではなく、政策と政治姿勢で候補者を選ぶ政治文化である。

そのためには──

●選管主催の公開討論会を軸とした選挙制度への移行
 お金や組織力に左右されず、候補者の政策や政治姿勢を市民が直接判断できる制度が必要です。

●小選挙区比例代表並立制(1994年政治改革)の見直し
二大政党の“エライ人”の目にかなわなければ立候補すら難しい現行制度は、市民政治を阻害しています。

●政策・政治姿勢本位の候補者選び
 党派ではなく、個人の倫理・覚悟・能力で選ぶべきです。

●高すぎる供託金の廃止・大幅引き下げ
  被選挙権の制限は憲法違反です。

◆市民・県民の手に政治を取り戻すために

2021年再選挙から5年。あの時の不透明な候補者選びは、「政党の都合が市民の政治参加を奪う」という構造の象徴だった。だからこそ今、市民・県民の手に政治を取り戻すという原点に立ち返る必要がある。

広島でも、全国でも、政治を変えるのは政党ではない。市民ひとりひとりであり、候補者の覚悟である。

この5年を教訓に、政策と政治姿勢を軸にした政治を、私たち自身の手でつくり直していきたい。「庶民革命ひろしま」では、2027年広島市長選挙・市議会議員選挙・県議会議員選挙に向けて候補者を公募しています。

庶民革命ひろしま 候補者公募要項(案)

(2027年4月執行予定:広島市長選挙/広島市議会議員選挙/広島県議会議員選挙)

庶民革命ひろしまは、2027年4月に予定されている広島市長選挙、広島市議会議員選挙、広島県議会議員選挙に向け、広く市民から候補者を公募します。

私たちは、庶民とともに広島の未来をつくる意思を持ち、法令順守と人権尊重を基礎とした健全な政治活動を行うことのできる方を求めています。

1.募集する選挙区・職種

広島市長選挙(広島市全域)
広島市議会議員選挙(広島市内各区)
広島県議会議員選挙(広島県内各選挙区)

2.応募資格

以下のすべてを満たす方。

25歳以上
庶民とともに広島の未来をつくる覚悟がある方

選挙区要件
広島市長選挙:日本国籍を有し、広島市長の被選挙権を持つ方
広島市議会議員選挙:広島市民
広島県議会議員選挙:広島県民
法令順守の姿勢を持ち、学ぶ意欲がある方
(憲法の基本原則、公職選挙法、行政の中立性など)
ハラスメントを行わず、人権を尊重できる方
団体の行動規範に従い、組織と協力して活動できる方

3.求める人物像

市民の声を丁寧に聞き、対話を重視できる方
行政との適切な距離感を理解し、政治的中立性を尊重できる方
批判や逆風に対して冷静に対応できる精神的安定性を持つ方
SNSを含む情報発信において節度と責任を持てる方
自己中心的ではなく、公共性を優先できる方
忠告や助言を受け入れ、改善できる柔軟性を持つ方

4.選考プロセス(3段階方式)

【第1段階:エントリーシート提出】

以下の書類を提出していただきます。

履歴書
志望動機書
行政・市民活動の経験(任意)
SNSアカウント一覧
法令順守に関する自己評価(簡易フォーム)
※この段階では「知識の量」ではなく「姿勢」を重視します。

【第2段階:記述式審査(ハラスメント・行政倫理)】

民間企業レベルの基準を参考に、以下のテーマについて記述していただきます。
被害者から相談があった場合の対応
行政機関との距離感に関する理解
候補者として避けるべき行動
自己の誤りにどう向き合うか
ボランティア・市民・職員への配慮
※社労士・外部専門家の意見を取り入れた設問を使用します。

【第3段階:面接(複数名)】

忠告を受け入れる姿勢
精神的安定性
市民との対話能力
団体方針への理解
ハラスメント・法令順守に関する価値観
行政との距離感
必要に応じて、外部の広島市民による面接協力を依頼する場合があります。

5.行動規範(コンプライアンス誓約)

候補者には、以下の行動規範への署名を求めます。
ハラスメントを行わない
行政機関の政治的中立性を侵害しない
出納責任者に不当要求を行わない
SNSでの不適切行為を行わない
団体の名誉を損なう行為を行わない
法令順守を最優先とする

6.合格者ゼロの可能性について

基準に満たない場合は、該当者なしとします。
代表者を含め、誰であっても同じ基準で評価します。

7.応募方法・締切

(※ここは毎週土曜日21:15-オンラインで開催される庶民革命ひろしま総会で決定後に追記)

8.問い合わせ先

庶民革命ひろしま 佐藤 09031714437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

庶民革命ひろしまでは、毎週土曜日21:15― オンラインおしゃべり会=総会を開催しています。

どなたでもご参加いただけます。入退室自由。お待ちしております。

ミーティングID:4117183285
パスコード:5N6b38

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島からの平和外交と市民責任

さとうしゅういち

2026年春、広島は再び「世界に向けて声を上げる都市」としての役割を一定程度は果たした。中東情勢が緊迫し、国際秩序が揺らぐ中で、広島市長、広島市議会、そして地元選出の代議士による一連の発信は、地方自治体と市民社会が果たし得る外交的役割の大きさを示している。

◆広島市長のアピール:平和首長会議からの発信

3月16日、平和首長会議議長として広島市長・松井一實氏が発した共同アピールは、米国・イスラエル・イラン間で新たに発生した武力紛争に対し、即時停戦と外交的解決を求める強いメッセージだった。

平和首長会議は世界166の国・地域、約8,600都市が加盟する巨大ネットワークであり、イランは日本以外で最多の1016という加盟都市数を持つ。広島からの発信は、単なる地方都市の声明ではなく、国際社会における市民外交の一翼を担う重みを持つ。

◆広島市議会の決議:国連憲章に基づく姿勢の明確化

3月26日、広島市議会は「中東地域における人道危機の平和的解決を求める決議案」を全会一致で可決した。米国とイスラエルによるイラン攻撃、そしてイランの報復攻撃により、多くの市民が犠牲となった現状を踏まえ、国連憲章第2条第4項に反する武力行使を明確に非難した。ホルムズ海峡の緊張が世界経済に与える影響にも言及し、外交努力の徹底を求める姿勢は、被爆地としての責任を体現している。

◆岸田文雄代議士の動き:議員外交の可能性

同じく3月26日、爆心地である広島1区選出の代議士である岸田文雄さんがイラン大使と会談した。政府が米国との関係に配慮し動きづらい局面でも、議員外交という形で対話の窓口を開こうとする姿勢は、広島の政治家として評価される動きである。こうした多層的な外交努力は、国家レベルの停滞を補完する役割を果たし得る。

◆国内政治の課題:総理の姿勢と過激支持層の影響

一方で、現在の総理による外交姿勢は大問題だ。米国の意向を過度に忖度し、中国や中東への対応が偏る傾向が指摘されている。特に、総理が、台湾有事発言で悪化した対中関係を米国大統領にとりなしてもらおうとして、中東政策での忖度が強まっているのではないか。

また、総理の過激な支持層が中東外交に手腕を持つ穏健保守の議員をネット上で攻撃し、萎縮させている現状は、外交の多様性と理性を損なう危険な兆候である。

さらに、24日発生の陸上自衛隊青年将校による中国大使館侵入事件に対し、政府としての正式な謝罪が28日現在も行われていないことは、国際社会の信頼を損なう重大な問題である。こうした問題を放置すれば、広島からの誠実な発信の効果も相殺されかねない。一方で、多数の市民が中国大使館に対してネット上で政府に代わって謝罪をしていることにはほっとさせられるが、総理の責任を免じるものではない。

◆医療現場への影響:中東危機が突きつける現実

中東情勢の悪化はエネルギー供給や物流に影響し、医療現場では資材・備品不足が予測されている。こうした国内の危機にこそ、総理が率先して対応すべきであり、外交だけでなく生活インフラへの責任が問われている。

◆広島からの市民外交:あきらめず声を上げ続ける

広島は、戦争の惨禍を経験した街として、平和の尊さを世界に発信し続ける使命を持つ。市長、市議会、議員外交、市民による自主的な謝罪や対話──これらはすべて「広島発の市民外交」を構成する重要な要素である。

2027年の広島市長選挙を前に、平和行政の軸をどう再構築するかが問われている。広島からの声は、あきらめずに続けることで国際社会に届く。ヒロシマの心をもって、理性ある対話と責任ある行動を求め続けたい。

原爆ドームと広島市役所(筆者撮影)

◆決議案第7号 中東地域における人道危機の平和的解決を求める決議案

2月28日、米国及びイスラエルによるイランへの攻撃が行われ、これに対しイランは中東地域の米軍基地等への攻撃を実行した。報道によれば、こどもを含む多くの犠牲者が出ており、情勢は極めて深刻かつ緊迫した状況にある。

イランの核兵器開発問題は、核協議と外交的手段によって解決されるべきものである。しかし、一連の攻撃は、国連安全保障理事会における脅威認定も得ておらず、また、主権国家に対する威嚇及び武力行使は、戦争を否定した国連憲章第2条第4項に明確に違反する行為であり、断じて看過も容認もできない。

また、今回の緊張の高まりの中で、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行の安全が脅かされている。同海峡は国際海上交通の重要な要路であり、その封鎖など、航行の自由を妨げる行為は、我が国を含む世界経済及び国際社会に深刻な影響を及ぼしかねない。 今なお、一般市民の生命と安全が重大な危険にさらされている。

ヒロシマの心である核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を願う本市議会は、関係国政府に対し、国連及び国際社会と緊密に連携し、事態の解決に向けたあらゆる外交努力を尽くすことを強く求める。

以上、決議する。

3月26日 広島市議会

◆平和首長会議共同アピール

現在、世界では多くの武力紛争が続いており、世界の安全保障が深刻な危機に瀕しています。ロシアによるウクライナ侵攻は5年目を迎えますが、終息の兆しは見えません。今回さらに、米国、イスラエル、イランの間で新たな武力紛争が勃発し、市民を含む多くの人々が殺害されるとともに、重要なインフラも破壊されています。報復が報復を呼び、ますます多くの国の施設への攻撃にエスカレートしており、中東地域だけでなく、世界全体の政治・経済安全保障に深刻な影響をもたらしています。

その上、私たちは国連憲章を含む法の支配を蔑ろにすることにより、さらなる武力紛争につながることを懸念しています。武力紛争に関与する全ての国に対し、直ちに停戦し、平和と安定を回復するよう強く求めます。

平和首長会議は、世界166の国・地域の約8,600の都市が加盟する、市民の安全と安心を守ることに尽力する地方自治体の首長で構成する世界的なネットワークです。私たちは、国際紛争が対話による外交努力をもって解決されることを強く求めます。武力行使は、いかなる国に対するものであっても、何の罪のない市民の命を奪うものであり、断じて許されません。

平和首長会議を代表して、私たちは、世界中の平和を希求する全ての人々と共に、世界恒久平和と核兵器廃絶の実現に向けて、あらゆる努力を尽くすことをここに改めて宣言します。

2026年3月16日
平和首長会議会長 広島市長 松井一實
     副会長 長崎市長 鈴木史朗

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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