日本国内にいるとそれほど気にならないことも、隣人には敏感に受け止められているようだ。隣人とは韓国の人々である。いま日本人は、意識的に米韓関係の危機を煽っているようだ。言い換えれば、アメリカに忠実なポチであることで日米同盟を誇ろうというものであろうか。隣人の云うところを聴こう。

「毎日東京の空気を吸いながら取材していて、このところ『韓米関係に問題がある』という発言をよく聞く。2月、かつて北朝鮮の核問題に関する6カ国協議の日本側首席代表を務めた藪中三十二・元外務次官の講演会に行ったが、ここでも韓米関係についての質問が出た。南北関係が進展したら在韓米軍の大幅削減や撤収が既定の事実となるのではないか、というもので、韓米関係に対する不信に根差した質問だった。同じく2月に慶応大学で開かれた北東アジア情勢に関する討論会でも、同様の言及があった。」(朝鮮日報)おそらく意識的に、日本の保守層が発信していることを、韓国のジャーナリズムは敏感にキャッチしているのだろう。


◎[参考動画]6カ国協議(ANNnewsCH 2017/09/19公開)※2年前の動画

◆アメリカのポチを競い合っていた日韓両国なのに

オバマ政権時代の朴政権下では、韓国の保守(反共・親日)系の論壇や報道で、日韓のどちらがオバマと親しいかという記事が中央日報や朝鮮日報の紙面を飾っていた。保守系各紙では、オバマの滞在時間が日本のほうが長かったこと、あるいはオバマが寿司を残したことなどもニュースになっていたものだ。基本的に反日ではあるが、韓米同盟を最重視し、いっぽうでは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との関係では日本も「友邦」であるという立場だった。

朴槿恵前大統領は父親ゆずりの親日家でありながら、反日を装うことで政権の求心力を維持してきたと言われている。いまや態度は180度変わった。朝鮮日報の云うところをさらに聴いてみよう。

「日本では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮との関係ばかりを重視し、米国のトランプ大統領は全てをカネでしか勘定せず、同盟は危険水位に達しているという認識が広がっている。合同演習の中止で『カカシ』と化した韓米同盟の次の動きは在韓米軍の削減および撤収、と予想している。日本のある月刊誌が2月号の記事に付けたタイトルが、こうした雰囲気を象徴的に示してくれる。「韓国が壊す『アジアの秩序』:日米韓同盟『空洞化』の代償」」だと云うのだ。

アメリカとの親密さを韓国と競っているのは、日本も同様である。反韓・嫌韓の空気は、それをいっそう助長してきた。書店ではいまだに反日本や反中本が、その無内容な罵詈雑言のボルテージだけで売れているのが現状だ。そして韓国にたいする日本の優位の証しとして、アメリカとの親密な同盟関係が挙げられてきた。これは安倍政権の外交政策の基本路線である。安倍政権の支持率は虚構のアベノミクスとともに、この日米同盟の「揺るぎなさ」にあると言えよう。

しかしである。日本がアメリカとの同盟を誇れば誇るほど、東アジアにおける孤立は明らかである。今度は労働新聞(朝鮮労働党機関紙)の云うところを聴かないわけにはいかない。米朝首脳会談(トランプ・金)の決裂を受けての論調である。

「(米朝の)新しい関係を樹立して朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制を構築し、完全な非核化へと進むことはわれわれの確固とした立場」としたうえで、共同声明も合意書も成らなかったことについて「唯一、日本の反動層だけはまるで待ち焦がれていた朗報に接したかのように拍手をしながら小憎らしく振る舞っている」「島国野郎たちは実に憎たらしく、ビンタをくらわせたい輩だと言わざるを得ない」と云うのだ。周知のとおり、わが安倍総理は米朝首脳会談にあたって、トランプ大統領に「拉致問題の解決を」議題にするよう電話で懇願した。


◎[参考動画]韓国・文在寅大統領と圧力強化で一致(ANNnewsCH 2017/11/23公開)

◆そして完全に孤立してしまった

「日本の反動層」が米朝会談に反対しようがしまいが、アメリカ政府の判断は変わらなかっただろうが、少なくとも日朝首脳会談などというものが、絵にかいた餅以前の課題であることは明らかになった。アメリカにすり寄り、ポチのように振舞うことによって、日本はますますアジアでの孤立を深めてしまうのだ。

朝鮮半島が分裂国家であるうえに、韓国もまた「反共」と「反日」の政治的分裂国家である。左派にかぎらず、右派にかぎらず、政権が代わるたびに元大統領が訴追され、あるいは暗殺・処刑される政治的分裂国家なのだ。いまその韓国文政権は、校歌や国家まで親日分子が作ったもの排除するという親日粛清、および「アカ」という言葉の追放に踏み込んでいる。

文大統領は三・一運動100周年の記念演説において歴史戦争に火をつけた。「日帝が独立運動家にレッテルを張った言葉」である「パルゲンイ(アカ=共産主義者)」という用語を「一日も早く清算しなければならない代表的な親日の残滓である」と云うのだ。

日本の報道機関は文大統領が「日本との新しい関係」に言及したことを奇貨のように報じたが、内容をまったく誤読している。行き詰った日韓関係は、歴史戦争の決着をぬきに一歩の前進もないことを、肝に銘ずるべきであろう。鳩山友紀夫前総理のように、従軍慰安婦像に額ずけとは言わない。少なくとも訪韓の努力をするふりくらいは、見せてもいいのではないか。東アジアに緊張感をつくり出し、それを政権維持の動力にするのは、いかにも危うい。


◎[参考動画]斎木外務次官続投へ(ANNnewsCH 2015/09/19公開)※4年前の動画

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

衝撃月刊『紙の爆弾』4月号!

日韓関係の冷え込みは、まさに極北まで達した。従軍慰安婦問題での約束の不履行(日本が出資した財団の解体)、徴用工にたいする個人補償を最高裁が決定する、自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射、そして天皇にたいする謝罪要求である。これら、国際慣例から逸脱する韓国の言動に、日本国内では「約束を守らないとは、まともな国家ではない」「日韓条約に反している」「無礼きわまりない」などと、世論が湧き起こっているかのようだ。嫌韓イデオロギー、ヘイトクライムもこの世論を沸騰させている。だが、よくよく考えてみると、韓国の政治家の言動には無理からぬところがあるのではないか。


◎[参考動画]【報ステ】悪化する日韓関係 外相会談の結果は?(ANNnewsCH 2019/02/15)

◆韓国人が戦犯だった時代

現在の文在寅(ムンジェイン)政権は、朴槿恵(パククネ)政権を打倒した大衆運動で誕生した左派政権である。かつて全斗煥(チョンドゥファン)のもとで光州蜂起を担った世代であり、朴正煕(パクチョンヒ)政権によって、血の海に沈められた1960年4月学生革命の末裔といってもよいだろう。つまり革命と反革命の血みどろの歴史の中から出現したのが、文政権なのである。

一昨年の蝋燭革命は穏健なものに終始したとはいえ、その背後には数百万の組織された運動があり、いっぽうでは朴政権による戒厳令も準備されていたという。朴槿恵が逮捕され、生涯を獄中で暮らさなければならなくなったのも、革命のゆえんである。大統領を殺す国、革命と軍事クーデターが連続する国家ならではの歴史の書き直しこそが、このかんの韓国政府の言動にほかならないのだ。したがって「友好国なのに」とか「国と国の約束を反故にするなんて」などという日本人の反応は、かの国の姿を見誤っている。

たとえば、ナチス政権の蛮行を批判しない欧州諸国がないように、そしてヒトラーのもとで立法された「反ユダヤ法」の数々を、今日のドイツ人が認めないように、韓国においても旧政権の「約束」は「売国の約束」にほかならないのである。そう考えれば、最近の韓国政府の言動はまったく不思議ではなくなる。いや、政権交代だけではない。韓国政府および韓国の国民の大多数は、日本との関係を清算したがっているのだ。それは現在の日本人である、私たちとの関係ではない。韓国民のなかにある日本との決別なのだ。


◎[参考動画]関係悪化の韓国と外相会談 “天皇謝罪”発言抗議へ(ANNnewsCH 2019/02/15)

◆日韓条約は「日韓併合条約」と同等?

朴槿恵の父親・朴正煕が満州国の陸軍士官学校に志願入学し、日本の陸軍士官学校に留学したことは、ひろく知られている。帰国後は満州軍の将校となり、八路軍(中国共産党軍)やソ連軍と戦い、内モンゴル自治区で終戦を迎えている。つまり、朴正煕は日本の傀儡政権である満州国の軍人だったのだ。

したがって、1965年の日韓基本条約は、親日派であるばかりか、間接的にとはいえ日本軍に所属していた軍人政治家がむすんだ条約なのである。これを文民革命政権が「歪められた条約」とするのは当然であろう。そればかりではない。韓国政府は、1910(明治43)年に結ばれた日韓併合条約を否定するために、日本との政治紛争を、ある意味では意識的に実行しているのだ。

「ソウル聯合ニュース」から引用しよう。文在寅大統領は2月15日、青瓦台(大統領府)で主宰した国家情報院・検察・警察改革戦略会議において、「今年を、日帝時代(日本による植民地時代)を経てゆがめられた権力機関の影から完全に脱する元年とすべきだ」と述べ、権力機関の改革に強い意欲を示したという。情報機関の国家情報院と検察、警察は「ひとえに国民のための機関として生まれ変わる覚悟が必要だ」と指摘した。つまり、ひとり政府のみならず、情報機関や司法、警察権力もすべて、日帝時代から脱却しなければならないと宣言したのだ。


◎[参考動画]【報ステ】韓国国会議長「盗人猛々しい」批判激化(ANNnewsCH 2019/02/18)

◆日帝時代の脱却が始まっている

日帝時代からの脱却を意識しているのは、政府だけではない。たとえばスポーツの日韓戦において、フィギュアスケートやスピードスケートにおいて、韓国人たちは日本を徹底的に意識し、その勝敗を絶対に負けてはならない戦いに置き換えて観る。日本人が「友好国」だと思っている当の相手は、日本を激しく戦って勝たなければならない、永遠のライバルと思っているのだ。

これは日本文化に親しみ、観光においては圧倒的に友好的である同じ韓国人でありながら、まったく別の面である。われわれ日本人が韓流文化を愛すいっぽうで、かの国の不可解な言動に困惑するのと、好対照であり同質なのである。

歴史の棘という意味では、たとえば靖国神社に2万柱をこえる韓国出身日本軍人・軍属の御霊が祀られ、あるいは朴正煕のみならず、洪思翊(ホンサイク)など日本の陸軍中将として戦犯処刑となった人々があったのを、われわれは知っておく必要があるのではないだろうか。たとえばナチスドイツに併合されたオーストリアが、被害国家なのか加害国家(枢軸側)だったのかという評価は、終戦時とはまったく逆転している。いまやユダヤ人を迫害したナチス側の国家だったと評価されているのだ。かように歴史は書き換えられる。われわれと違って、世界では歴史の物差しが長いのである。


◎[参考動画]Pres. Moon vows to fulfill his duty to 23 last survivors of Japan’s sexual slavery(ARIRANG NEWS 2019/01/29)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

衝撃満載『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!

25回目のプーチン大統領との首脳会談の結果、安倍総理が事前に明言していた「北方領土問題の解決と平和条約の締結を実現する」という目的は果たされなかった。会談後の共同記者発表ではプーチン大統領はもちろん、安倍首相の口からも領土問題の進展についての言及はいっさいなかった。そればかりか、平和条約についてもプーチン大統領は「双方の国民が受け入れ可能で、支持されるものでなければならない」「双方が受け入れ可能な解決策を見いだすための条件をつくり出すには、長く忍耐を要する作業がこの先にあることを強調したい」と主張するだけで、何ら成果を語らなかったのだ。成果が何もなかったかといえば、ロシア側はそうでもない。

◆経済協力のみ約束させられた

領土問題でなんら進展がなかったいっぽうで、両首脳は新たに日露間の貿易額を今後数年で300億ドル(約3兆2900億円)に増やすことで合意したというのだ。ようするに安倍首相は、さらなる経済協力を強いられただけで、二島返還どころか、平和条約の締結も「時間がかかる」「国民に受け入れられるものでなければいけない」と釘を刺されたのだ。

そもそもロシアにとって日ロ首脳会談は、中国の経済成長に圧倒されその経済的支配下に入るしかない現状を打破するために、日本の経済協力を引き出そうとするものでしかない。その導きの糸として二島返還をちらつかせるのはもとより、前提なしの平和条約を先行させようというのも、ひたすら経済協力のための枕詞にすぎないのだ。資源と兵器産業しか経済的資源のないロシアにとって、ITや通信産業で中国の経済圏に受動的に組み込まれる運命にある。その意味ではロシアも必死だが、日本が約束させられた経済協力のいっぽうで、二島返還すらもおぼつかなくなったのが今回の結果だ。


◎[参考動画]北方領土で進展は?日ロ首脳が共同発表ノーカット1(ANNnewsCH 2019/01/23)

◆領土問題は軍事力ぬきでは解決できない

そもそも領土問題において、軍事的な圧力なしに交渉が成立した歴史はない。たとえば沖縄返還においてすら、核を配備した米軍基地の存続というオプション抜きにはありえなかったのは、現在もなお沖縄県民が基地問題で苦しんでいることに明らかだ。その意味では東西冷戦という冷たい戦争、すなわち日本による駐留費の肩代わりという戦争支援行為こそが、沖縄の返還をもたらしたのだ。

ヒトラーにおけるラインラント(第一次大戦後の非武装地帯)進駐も、日本の仏印進駐(フランス領インドシナへの軍事駐留)も、駐留する軍隊があってこそ、戦争を避けたい側(フランス・イギリス)に許容されたのである。ラインライトも仏印もヒトラーおよび大日本帝国にとって薄氷を踏むような軍事行動だったが、フランスは戦争によって領地をうしなうことを怖れて、軍事進駐を容認したのである。


◎[参考動画]北方領土で進展は?日ロ首脳が共同発表ノーカット2(ANNnewsCH 2019/01/23)

◆共同統治こそ、島嶼紛争の解決策である

だから軍隊を北方領土に派遣しろと言っているのではない。島嶼領土紛争の平和的な解決はおよそ不可能であって、もしも本気で解決したいのなら「共同統治」という形式しかありえないのだ。韓国との竹島もしかり、中国との尖閣諸島も同様である。領土をめぐる外交交渉で他国に折れた政治家は、政権をうしなうだけでは済まない。売国奴としてその生命を奪われかねないと指摘しておこう。それはプーチンにおいても、安倍においても同様なのである。

ところが安倍総理は、あたかも歯舞、色丹の二島返還に向けて前進しているかのように印象づけて「プーチン大統領の考えがよくわかった。双方の理解が深まった」などと、交渉の行き詰まりを糊塗しているのだ。すでに四島一括返還という北方領土返還運動の原則は掘り崩され、日ソ共同宣言時の二島返還すら実現できない趨勢となってきた。25回もの首脳会談を行ないながら、ロシアから経済協力として国民の血税を奪われたうえに、本来の目的である北方領土の返還が絶望的になった今、もはや安倍政権は売国政権というべきではないか。


◎[参考動画]「私とプーチン大統領で終止符」 安倍総理が強調(ANNnewsCH 2019/01/06)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』


◎[参考動画]防衛省、韓国艦レーダー照射映像を公開(毎日新聞2018/12/28公開)

 

2019年1月4日付け防衛省・自衛隊HPより

昨年末、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機をレーダー照射した一件で、日韓両国はまるで戦争前夜のような騒ぎである。火器管制レーダーを照射すること自体は、たしかに発砲寸前と思わせるもので、国際慣習にしたがえば危険な行為である。レーダー照準でロックオンし「すぐにも撃つぞ」と脅しているようなものだからだ。防衛省が証拠として空自機の録画画像を公開し、韓国国防当局はそれに「救援活動のために、全レーダーを使用していた」と反論し、のちに「レーダー照射はしていない。日本機の低空飛行こそ脅威を煽った」などと日本側を批判した。ワイドショーでは、いまにも戦闘行為がはじまるかのように、この一件を大々的に報じている。いわく、事実関係を二転三転させる韓国政府は、まともな独立国家の呈をなしていない。国際的に恥を晒している、などと。

とはいえ、ただちに政治問題化するほどのものではなかったはずだ。経済水域内への艦艇の派遣は、相互に了解済みだからである。竹島(独島)をめぐる韓国はもとより、中国の尖閣諸島(釣魚諸島)海域への進出も、じつはいつも事前に通告がある行動なのだ。年間200回をこえる空自機のスクランブル発進も、じつは日常業務として日本・中国・韓国三国の了解事項なのである。と言えば、おどろく向きも少なくないのではないだろうか。だが、それが軍事の現場の実態である。


◎[参考動画]韓国国防省、反論の映像を公開(毎日新聞2019/01/04公開)

◆域内緊張の増大化は、予算獲得のためのデモンストレーションである

それらはもっぱら、予算獲得のためのデモンストレーションと言うべき現場の要請であり、幕僚の事実追認によるものである。いや、航空幕僚がそれを仕向けているのかもしれない。創設後60余年、戦争はもちろん戦闘行為をしてこなかった自衛隊(日本軍)は、紛争の警戒や緊急出動などを日々の糧に、その存在理由を示してきた。つまり予算獲得のために、つねに緊張感をつくっておかなければならないのだ。その事情は、中国海軍・空軍、韓国海軍においても同じである。

それは歴史問題で日本を批判するのと同じように、中韓両政府の求心力を高め、反政府運動を統制しうる内政の特効薬でもある。いわく、自衛隊機がカミカゼ特攻隊のように、わが国の艦船に低空で肉迫したと。たしかに歴史上、関東軍のたび重なる挑発で事変(紛争)が拡大し、日中15年戦争という災禍を引きおこした。それが結果的に太平洋戦争につながったのも史実である。とはいえ、平時の前線指揮官ほど紛争に敏感なものである。予算の獲得には熱心であっても、彼らは紛争の防止に神経をとがらせている。軍人ではなく、サラリーマン官僚としての安寧を第一に考えるからだ。ところが、ひとりだけ今回の事態に勇躍して発言をつよめた政治家がいる。わが安倍総理である。

◆総理の危険な感情

テレビの討論会で声高に、わが総理は韓国海軍に防止策を要求したのだ。ただでさえ反日を旗印にしている韓国左派メディアがこれに反応し、韓国国防省は「日本は謝罪をするべきである」となってしまった。これは安倍の意図したところなのであろう。国論を防衛費の増大にみちびき、改憲(自衛隊の国軍化)にむけた政権の求心力を意図したものにほかならない。だがそれも、穏便にやっているうちには成功したかもしれない。いや、やや過激に突き出すことで、世論を喚起する狙いは果たせたのかもしれない。

だがそのいっぽうで、韓国政府のエキセントリックな反応を引き出してしまったのだ。これではアジアにおける日本の政治的な主導権、とりわけ中国と北朝鮮に対する外交的な主導権は立ち行かないであろう。基調とする日米同盟に韓国をリンクさせることで、やっと日本の立ち位置はあるのだから。その意味では、緊張感をつくって存在をPRしようとした現場のパフォーマンスを、安倍は真に受けてしまったことになる。

けっきょく、安倍晋三という政治家は「感情」で政治をやってしまうのである。政治家の資質としては、じつに危険きわまりない。その「感情」がネット右翼や保守層の感情に訴えることはあっても、アジアの盟主を任じる本来の保守層を納得させるものではない。参議院選挙で自民党の大敗が予測されている。いまだに実感の持てないアベノミクスの「成果」とともに、この男に政権をまかせておくと、とんでもないことになりそうだと。ようやく保守層が考えはじめているのだろう。


◎[参考動画]日本の舵取りどう進めるのか? 安倍晋三総理に聞く(ANNnewsCH 2019/01/01公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

本日発売!月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

 

2018年11月19日付け朝日新聞

〈防衛省は「宇宙部隊」を新たに設ける方針を固めた。部隊は「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)と呼ばれる人工衛星やロケットの残骸のほか、他国の不審な衛星などを監視。陸海空の各自衛隊が統合運用する。2022年度をめどに設置する予定で、政府が来月改定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」にも新設が明記される。19日、複数の政府関係者が明らかにした。防衛大綱では陸海空に加え、サイバーや宇宙、電磁波など新たな領域の防衛力強化を打ち出す。「宇宙部隊」の新設はその柱の一つになる。〉(2018年11月19日付け朝日新聞)

1966年、突如毎週地球を襲う「怪獣」が登場し、全国各地を破壊しまくりだした。「科学捜索隊」は「怪獣」に対抗するために、毎週奮闘したが、最後まで一度として「怪獣」を倒すことはできなかった。いわば仮面ライダーにおける「ショッカーの戦闘員」のような役回りしか演じることができなかったわけだ。

「怪獣」には人間の力では勝てない。そこで「ウルトラマン」の出番となる。持ち時間が3分しかないウルトラマンはカラータイマーが青から赤に変わり、警告音が鳴り出すまでは必殺技「スペシウム光線」を怪獣にぶつけはしない。当時人気だったプロレスで、アントニオ猪木が散々痛めつけられながら、最後に「卍固め」や「コブラツイスト」でギブアップで勝ち切る。あるいはジャイアント馬場の「16文キック」(時に「32文人間ロケット砲」)、ジャンボ鶴田の「ジャンピングニーパッド」に匹敵するのが「スペシウム光線」だ。

「どうして最初からウルトラマンはスペシウム光線を出さないのか」は聞いてならない質問だった。禁句というやつだ。アントニオ猪木や、ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、デストロイヤー……必殺技を持つレスラーに「どうして最初から必殺技を出さないのか」を大人ですらが誰も議論しなかったように、見る側の慎み、あるいは、作り手と見る者の間に「次回も同様のストーリが確約される」担保として、黙約は成立していた。

まことに牧歌的な時代だったと振り返るしかないが、21世紀がはじまって、もうすぐ5分の1に手が届こうかという今日になって、自衛隊は冗談ではなく「宇宙部隊」の創設を決めたそうだ。真面目に批判するとバカバカしすぎるから、この素っ頓狂は徹底して揶揄させてもらおう。

「宇宙のごみ」を掃除するのなら「宇宙清掃隊」でいいんじゃないか? 他国の不審な動きは既に山ほど打ち上げられている人工衛星で10センチ単位まで監視ができる。GPSは携帯電話やカーナビに搭載され、民生利用されているが、あれのもっと精度が高い軍事技術を自衛隊が持っていないはずがない。「他国の不審な衛星」の動きだって同様に監視できる。

では、なんのために「宇宙部隊」は創設されるのか。それは最上級の国家機密で、閲覧可能者もごく少数に限られているけれども、ついに地球外生物の存在が確認され、数年後には地球を襲うことが確実視されているからだ! 地球外生物の存在! 怪獣だ! しかも奴らは極めて狂暴で、人類滅亡を計画しているとの情報まで入っている。どうする? 人類の危機だ! ウルトラマンでの「科学捜査隊」同様の地球防衛部隊の設立が、喫緊の課題となったのだ。ちなみに「科学捜索隊」は国際的な組織の日本支部であった(いわば対怪獣戦における「多国籍部隊」である)けど、自衛隊の「宇宙部隊」は日本単独の部隊だ(個別的自衛権の行使か?)。国際連携なしに、地球が守れるのか? 全国各地の都市はもちろん、都心にも毎週日曜日の19:00になると必ず「怪獣」がやってきて大暴れする19:00は日没で暗いことが多いが、画面の中はほとんど昼間であることなどを問題にしてはいけない。

日本(だけ)の平和を守るために「宇宙部隊」は創設されるのだ。そして日頃は宇宙空間で「お掃除」をしながら、敵の動向を見守る。ところで自衛隊には宇宙へ行く手段や技術がないがどうする?これはいい質問だ。この日のために長年に渡り、本性を隠していた種子島の連中がいよいよ脚光を浴びる。「人工衛星と称したミサイル打ち上げ」を重ねてきたJAXA(宇宙航空研究開発機構)である。JAXAは「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法」で規定されている組織であるが、同法には、以下の記載がある。

第四章 雑則(主務大臣の要求)

第二十四条 主務大臣は、次に掲げる場合には、機構に対し、必要な措置をとることを求めることができる。

 宇宙の開発及び利用に関する条約その他の国際約束を我が国が誠実に履行するため必要があると認めるとき。

 関係行政機関の要請を受けて、我が国の国際協力の推進若しくは国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるとき又は緊急の必要があると認めるとき。》

つまり「怪獣」が地球の平和を脅かすことになれば、主務大臣はJAXAに「要求」(すなはち自衛隊が創設する「宇宙部隊」への協力)することが法的にも可能であり、既に内々にその「要求」はJAXAに伝えられているのであおる(でなければ、宇宙に行くこともできない自衛隊が宇宙で活動できるはずがない)。

さて、問題は「宇宙部隊」を創設したはよいが、肝心の「怪獣」を倒すことができるかどうかという、死活問題をどう直視するかである。過去の経験則からすれば、人類はウルトラマン(あるいはそれに続く「ウルトラセブン」、「帰ってきたウルトラマン」らのウルトラ一族)によってのみ危機を脱しているのであり、「科学捜索隊」や「地球防衛軍」は名称こそ勇ましいものの、怪獣に壊滅的なダメージ与えたことはない。

それどころか、ウルトラマンだって、最終回にはゼットンに倒されてしまったではないか。ウルトラマンがゼットンに倒された最終回から、ウルトラセブン放送開始まで、当時の子供たちはどれほど心細い毎日を送ったことか。

どうせ何の役にもたたない「宇宙部隊」を創設するより、ウルトラマンがどこにいるかを探す方が賢明だろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

11月21日発売開始!板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

◆ついに6カ国協議の枠からも締め出される?

 

2018年10月10日付ロイターより

ロイターが伝えるところでは、ロシア外務省は朝鮮および中国との外務次官による3カ国協議の結果、関係5カ国による「5カ国協議」が必要との認識に達したという。おや、1カ国少ないではないか。朝鮮半島問題は「6カ国協議」ではなかったのか。情けないことに外されたのは、わが国であった。アメリカの半属国で、しかも時の総理がアメリカにベッタリの外交姿勢を変えないのだから、仕方がないといえば仕方がない。

利害をともにする中ロとしては、アメリカの外交カードを一枚はがすことによって、交渉を有利に導こうとの思惑は明白だが、もっと深刻なのは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が日本非難をつよめることで、韓国・中国との緊密な関係を維持し、その勢いで対米交渉を軌道に乗せようとしている、その裏側の意図であろう。その意図とは、いったい何なのか?

◆日本の賠償を最大限に引き出す、金政権の思惑

本来ならば、6月の米朝対話につづいて日本政府も8月から9月に日朝首脳対談を計画していた。トランプ・金対談が実現した段階で、それまで対朝和平の崩壊を念じていた安倍政権にとって、バスに乗り遅れるなという方向転換が行なわれたのだった。当時の報道を引用しておこう。

〈安倍晋三首相と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の日朝首脳会談の実現に向けて、両国の政府が調整に動いていると複数のメディアが報じた。共同通信は政府関係者の話として、ロシアが9月11~13日にウラジオストクで開く東方経済フォーラムが日朝首脳会談の場になる可能性を伝えた。ロシアは同フォーラムに金正恩委員長を招待している。読売新聞は「日本人拉致問題の解決などについての事前交渉」として、安倍首相が8月頃に平壌を訪問する案も検討されていると報じた。〉

◆無能な内閣情報官

 

北村滋内閣情報官(wikipediaより)

ところが、北村滋内閣情報官が裏交渉を進めようとしたところ、7月に日本人ツアー客がスパイ容疑で北朝鮮の公安当局に逮捕されるという事態が発生した。のみならず8月には中国でも「公安調査庁のスパイ」として、愛知県の男性が中国公安当局に逮捕されるという事態がつづいた。

北村滋といえば、官邸のアイヒマンと呼ばれる情報官である。アイヒマンというネーミングはしかし、けっして有能という意味ではない。後年、裁判でアイヒマンを見たドイツの哲学者ハンナ・アーレントによれば「なぜあんな凡庸な人物が、ユダヤ人大虐殺を行なえたのか」という疑問であり、つまるところ、唯諾々と上官の命じるままに職務をこなす凡庸さという意味である。わが官邸のアイヒマンも外交には凡庸らしく、ベトナムで北朝鮮の高官(キム・ソンヘ統一戦線策略室長)と極秘交渉したことを報道機関にすっぱ抜かれてしまった。これには直属の上官である安倍総理ではなく。上部組織の親分であるトランプが激怒したという。

そもそも疑似情報機関の人間を外交交渉に使ったところに、安倍外交の失敗がある。やはりここでも、お友だち政権なのだ。北村情報官は古巣である警察庁の公安ルートで折衝しようとして、北朝鮮の警戒心を煽ってしまったのだ。

◆安倍の無策こそ、国を滅ぼす

いまのところ、米朝主脳の再会談が3ヵ月先、つまり来年1月というマスコミの観測(つまり外交筋のリーク)である。米朝会談のうえで関係各国の協議が行われるとして、日本はその埒外に置かれそうな空気である。トランプは朝鮮半島にドルをびた一文(びた1セントか? 苦笑)も出さないと明言してきた。おそらく米朝のあいだで朝鮮戦争の終結が宣言されると、関係国である中国(朝鮮戦争に義勇軍が参戦)ロシア(金王朝創設の縛バックボーン)もこれを承認するであろう。

そしてわが国はといえば、その和平の枠組みのなかで、兆単位といわれる戦後賠償を課せられるのだ。金正恩はおそらく、日本がアメリカ主導の和平案、新たな東アジア秩序の形成にさからえないことを見越して、日本批判を繰り返しているのだ。

もしも安倍に本気で金正恩と対話をする気があるのなら、総理経験者を特使として派遣するなり、親書を送るなりのアクションがあってしかるべきだ。あいかわらず、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)とその支援組織「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)など、安倍応援団の「対北制裁論」に迎合しているようでは、事態は1ミリも動かせない。孤立のすえに莫大な賠償金を支払わされ、そのツケはわれわれ国民に課せられるのである。


◎[参考動画]9.23全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会報告01 櫻井よしこ(総合司会)(sukuukaiweb2018年9月25日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

衝撃満載『紙の爆弾』11月号!公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

 

2018年7月22日付け福井新聞より

7月22日の京都新聞は1面トップで〈「原発テロ備え大型巡視船 海保、来年度から福井に2隻配備〉の大見出しで、以下のように報じている。〈原発のテロ対策を目的に、海上保安庁が2019年度から順次、15基の原発が集中立地する福井県に大型巡視船2隻を配備することが21日、関係者への取材で分かった。東京電力柏崎刈羽(新潟県)、中国電力島根(島根県)といった原発での有事にも対応可能で、日本海側の要にする。今後、同規模の巡視船を全国に展開してゆく方針。〉だそうである。(注:太文字は筆者)

◆国際的には笑いものになりかねない頓珍漢

こういう政策を日本語で「愚策」または「頓珍漢」という。まず巡視船が「原発での有事にも対応可能」ではないことは、柏崎刈羽原発の事故や、言わずと知れた福島第一原発事故で明らかだ。原発での有事=事故が起これば、海上保安庁の巡視船など、一切役には立たない。原子炉に直結しない部分で火災が起きたときも、海上保安庁ましてや、大型巡視船はなんの役にもたたない。そもそも「原発テロ」と、問題を設定しているけれども人間の意志とは無関係に、機械の故障や、地震、津波などで大災害が起こることをわたしたちは経験しているだろうが。2011年3月11日福島県沖に大型巡視船が、待機していたらあの事故は防げたのか? 防げずとも少しは被害の程度をマシにできたというのか?

 

海上保安庁のPL型巡視船艇。PL型(Patrol Vessel Large)とは700トン型以上の大型巡視船。ヘリ甲板を設けた巡視船が増えつつある(海上保安庁HP)

大型巡視船を若狭湾に浮かべて、誰(なに)から原発を「守る」つもりなのだろうか。韓国か、朝鮮か、中国か? あるいは遠い国から船に乗ってくるどこかの「国際テロ」集団からか。いくら猛暑日が続いていて、正常な思考が難しくなっているからと言って、冗談や、寝言は家の中だけにしておいてもらわないと困る。こういう間抜けなことをしていると必ず国際的には笑いものになるだろう。その前に海上保安庁は税金で活動しているのだから、納税者は「いいかげんにしろ」と責任追及をしなければならない。

◆若狭湾にICBMが飛んで来たら、海保の巡視船は「迎撃」できるというのか?

原発事故のシナリオは無数に想定ができる。その中に「意図的な人為破壊」もないわけではない。遠くの国から原発をターゲットにミサイルを撃ち込まれたら、瞬時に原発は破壊され、大惨事になるだろう。仮にそのようなことが起こった場合に、若狭湾に展開する大型巡視船は、何かの役にたつのだろうか? たとえば、ロシアから、あるいは米国からICBMが飛んで来たら、海保の巡視船は「迎撃」できるというのであろうか。

「米国からICBMがとんでくるはずがない」といぶかられる方がいるに違いないから、その可能性がゼロではないことを示しておこう。日本と米国が「日米原子力協定」を締結しており、7月17日に自動延長された。1988年に発効したこの協定は米国が日本の原子力(核)開発を黙認する代わりに、監視する役目を担っている。自動延長はしたものの、今後は半年まえのいずれかからの申し出により、同協定は破棄することが可能となった。そして自動延長に際して、米国は日本が保有するプルトニウムについて、憂慮の念を表明している。

日本がいま貯めこんでいるプルトニウムの量はどれくらいであろうか。核兵器弾頭換算で約4000発の弾頭を作ることができる、と言われる47トンである。日本には人工衛星打ち上げに見せかけた「ミサイル」技術が確立されている。プルトニウムさえあれば、それを「核兵器化」する技術は専門家によると、さほど高度なものではないという。

◆「日本の核武装が危ない」という発想が国際社会で生まれる可能性

トランプ大統領は保護主義に走り、日本からの自動車輸入に25%の関税をかけるという。自動車産業や、これに繋がる関連企業にとっては一大事である。TPPにも入らないし、こんな話は「想定外」だったに違いない。また別の想定外だって私たちは目にしたばかりだ。双方絶対に譲れない「天敵」の如く反発を続けてきた朝鮮と米国の首脳会談がシンガポールで実現したのは、つい先月のことだ。昨年の今頃だれが「米朝首脳会談」を予想できただろうか。

米国は明確に日本が保有するプルトニウムに懸念を示している。朝鮮との首脳会談を実現させたトランプの脳の中で、「日本の核武装が危ない」との発想が生まれない保証がどこにあるだろうか。

諸悪の根源は、事故を起こせば人間の手には負えないし、事故を起こさなくとも運転すれば無毒化に10万年以上かかる、膨大な放射性汚染物質を生みださざるを得ない原発の存在そのものだ。「若狭湾に大型巡視船を2隻浮かべたら安全ですよ」といわれて、「ああそうか」と納得するような国民性では、早晩この国は破滅するだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

 

2018年6月24日付け読売新聞

〈政府は、北朝鮮の非核化工程で人的な貢献をする方向で検討を始めた。複数の政府関係者が明らかにした。原子炉の廃炉に関わる民間の技術者や専門家らの派遣を想定している。東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい考えだ。〉(2018年6月24日付け読売新聞

だそうだ。「制裁!」、「制裁!」ばかり叫んでいて、まさか本当に米朝首脳会談が行われるなどと、予想も予見も、さらに言えば独自ルートでの情報収集もできなかったのがこの島国の政府と、その外交能力である。トランプには電話で「拉致問題を話題にしてくれ」と頼み、何の証拠もないのに「拉致についての言及があった」と一人よがりしているのが、安倍晋三という男であり、その恥ずかしい姿を頂くのに痛痒を感じないのが、外務官僚の低能ぶりだ。

米国にとっては「どーでもいい」日本の拉致問題をたった40数分の会談の中でトランプと金正恩が議論した、などと信じている人はまずいまい。初対面の休戦国(米国と朝鮮はいまだに「戦争状態」であり「休戦」が続いているに過ぎない)首脳同士の会談で、他国の問題を議論する余地などあるはずがないだろう。

米朝首脳会談前に、この島国ではことさら「拉致問題」を新聞は大きく取り上げ、さらには「北朝鮮への制裁足並みに乱れはでないか?」と底意地が悪く、恥ずかしいほど的はずれで、短射程のコメントが飛び交った。それらをのうのうと口にした「識者」は今でも同様のだらしないコメントを垂れ流しているけれども、状況は世界屈指の外交音痴の安倍ですらが、冒頭紹介したように「朝鮮非核化に人的貢献を検討する」と発言せざるを得ないところまで来ているのだ。

6月21日朝日新聞は、
〈政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定して今年度中に全国各地で予定していた住民避難訓練を中止する方針を固めた。米朝首脳会談が開かれるなど対話ムードが高まる中、北朝鮮によるミサイル発射の可能性は低いと判断した。21日、政府関係者が明らかにした。政府関係者によると、訓練を中止するのは宮城、栃木、新潟、富山、石川、奈良、徳島、香川、熊本の9県。総務省が近く通知を出し、正式に伝える方向だ。
 訓練は政府や自治体が主催し、ミサイル発射を全国瞬時警報システム(Jアラート)や防災行政無線で伝え、住民らが学校や公共施設に避難するもの。昨年3月以降、25都道県で計29回行い、12日の米朝首脳会談の直前にも群馬と福岡の各県で実施した。〉と報じた。(2018年6月21日付け朝日新聞

国民の危機意識を扇動し、「北朝鮮憎し」の世論を高め、軍事膨張の隠れ蓑に利用していた「まったく意味のない訓練」を中止すると発表した。この訓練のバカさ加減を証明するのには多言を要しない。例えば朝日新聞に掲載された下の写真だ。

東京都23区内の多くの小学校の防災(主として地震)訓練では、ヘルメットや防空頭巾が登場する。2011年3月11日、東日本大震災の日にも集団下校する小学生は、防空頭巾をかぶっていた。私は本物の防空頭巾を目にするのは初めてで、小学生の姿に驚いたが、地震後の集団下校にはふさわしい防御具だと言えるので、その準備の良さに感心した記憶がある。

 

2018年6月21日付け朝日新聞

それに対してこの写真である。こんな無意味な訓練をさせる行政や、何の問題も感じずに記事化する朝日新聞のトボけた感覚には、もうあらゆる論評をする気力も失せかける。それにしても仮に「ミサイル」が飛来したときに「倉庫の中で頭を守る」行為がなにを意味するか、誰か思案する人はいないのだろうか。

「ミサイル」は通常火薬や爆発物質(時には核爆弾)を搭載して攻撃に利用する。それに対して「倉庫の中で頭に手をのせたら」何らかの防御になると、考えている人がいるのであれば、私にその根拠を教えて頂きたい。メールアドレスは本文の下に明記してある。

ガラスの破片や屋根瓦の落下を頭部に受ければ、深刻は怪我が予想される。だから集団下校する小学生が、防空頭巾をかぶっていたのは理にかなった防御策だといえる。他方直撃を受ければ、建物そのものが破壊(消えてしまう)される「ミサイル」飛来に対して、この姿は何を意味するか。

そもそも朝鮮の危機を煽るだけでなく、「対話と圧力」と言っていたはずの姿勢が、一方的に「制裁!」、「制裁!」と狂信的にエスカレートし、「世界で一番悪い国」のように政府が国民を洗脳し、また外交政策上も各国にそのような方向を牽引する方向でのみにあくせくしていたから、緊張が高まったのではないのか。そして誰にでもわかるが、今回の米朝首脳会談実現に、日本政府は「まったく」寄与していない。むしろ婉曲な妨害を画策していたのではないと、思われるほど「意地悪」を貫徹していたし、今でもそうである。

まったくの「他力」で実現した結果としての緊張緩和によって、無意味な「訓練」が中止になったのは結構なことであるが、もうこの島国の国民は、こんなにも無意味で、害悪でしかない「国民総動員」を企図する訓練に参加することを、なんとも思わなくなっていることに薄気味悪さを感じる。

そして、冒頭の「朝鮮非核化への人的貢献」である。私は日本にその資格はないと考える。その理由は記事中にもある通り、「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい」が理由とされているからだ。

通常の原子炉の廃炉作業は多くの、原発保有国に経験がある。この国にもある。しかし「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見」とはなんだ。原子炉冷却のため、ひたすら水を入れ続け、汚染水が溜まり続けたら「希釈して海に流す」という。こんな知識を「知見」と呼べるか? 世界初の原子炉4機連続爆発を防げなかった国に、どうしてわざわざ核関連施設の解体作業を依頼する理由があるのだ?

最近の出来事を目にするたびに、「私の頭はずいぶん狂っている」ような気がする。でもひょっとしたら、私以上に政府や社会がとんでもないのかもしれないとも穿っている。どなたか教えて下さらないものであろうか?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

朝鮮半島の和平に向けた動きに、まったく関与できなかった安倍首相は、4月29日文在寅韓国大統領と電話会談し、「日本が朝鮮と交渉する際には助けをお願いするかもしれない」と情けない陳情をした。

なに言ってるんだ! 近隣の朝鮮と交渉するのに、どうして韓国助けが要るのだ! 小泉純一郎は自分で訪朝したじゃないか。安倍の無能ぶりは、情けなく、恥ずかしい。海外の報道でも、当然だが大いに馬鹿にされ「蚊帳の外」と呆れられている。虐めるときだけは「制裁!制裁!」と、過剰に騒ぎ立てるくせに、韓国、米国が直接対話に舵を切ると、あたふたするばかり。日頃軽視している韓国に「助けて」と泣きつく安倍のザマは、右派の人びとにとっても腹立たしい姿ではないのか。

◆国民の権利の制限と国家支配の強化を目指す憲法改正は「時代の要請」なのか?

安倍政権の本質は第二次安倍政権発足時に、安倍が明言した通り「改憲」を目指すことを、重要な到達目標に置く政権であり、現実に「解釈改憲」を強行した政権である。安倍の志向する「改憲」は、日本国憲法を大日本帝国憲法に近い形へ作り変えようとの意思に依拠しており(自民党が示した「改憲案」参照)、単純化すれば、国民の権利の制限と国家支配の強化を目指している。「時代の要請にこたえる憲法」などと安倍は繰り返したが、果たしてそれは事実であろうか。

時代は、世界は日本の憲法にどのような役割を期待しているのだろうか。ここで注意しなければならないのは「時代」とは曖昧模糊とした雰囲気や気分ではなく、「現在」の主権者たる日本国国民であることと、「世界」とは近くは東アジアではあるが、中近東、アフリカ、欧州などを含めた全世界であることだ。

◆政府・マスコミあげての「北朝鮮・中国の脅威」という軍拡改憲プロパガンダ

日本国民は今年のはじめまで、「朝鮮」に脅され続けていたのではなかったか? 全国各地で行われる「ミサイル飛来に対する避難訓練」、「Jアラート」の過剰な宣伝、明日にでも朝鮮からミサイルが飛来するかのような政府・マスコミあげてのプロパガンダに、大方の世論も「北朝鮮の脅威」論に傾きつつあった。しかし、金正恩が板門店を一人きりで歩いてくる姿、そして国境を越えて文大統領と握手をし、1日をかけて会談し「板門店宣言」が合意された事実を、われわれは目にした。

これまで「北朝鮮の脅威」を主たる根拠として展開されてきた、日本の軍備増強路線は根拠を失うことになる。「いやむしろ軍事大国中国の方が危険だ」と、またしても標的を変えて軍備増強主義者は論難するかもしれないが、日中は「戦略的互恵関係」を2006年10月、ほかでもない、第一次安倍政権の初外遊で中国を訪問した安倍晋首相自身と中国の胡錦濤国家主席の間で確認しあっている。この文書は現在も死文化してはいない。

憲法前文は「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」とある。つまり現憲法が十全にその精神と法体系を確立し、行政が運営されても、「国民が福利を享受できない」状態に陥った場合に「改憲」は国民から、発議されるべきものである。あくまでも国民が憲法の不十分さを認識したときに「改憲」は論じられるものであるのだ。

◆「改憲」策動に総理大臣が血道をあげる行為自体が憲法99条違反である

この点は長年勘違いされてきている。現役の総理大臣や国務大臣、そしてすべての公務員は憲法を尊重し、擁護しなければならない「義務」を課されている。日本国憲法第99条で 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明確に述べられている。

つまり、憲法尊重・擁護義務を課されながら「改憲」策動に総理大臣が血道をあげる行為自体が「憲法違反」なのであり、今日の日本は憲法が十全に機能している社会とは到底言い難いことを注視すべきだろう。

だから「改憲」を論ずるのであれば、まず現日本国憲法を正当かつ、真っ当に体現した社会を実現し、そのうえで「国民が福利を享受できるか」否かを議論の中心に据えねばならない。その前提に立てば、現在の「改憲」論議はいずれもその最低条件を満たすものではない。首相が提唱する「改憲」議論それ自体がとんでもない違憲であり、完全に無効である。

◆「これ以上悪い憲法を作らせない」意思を明確にするしか現実的な選択肢はない

さて、憲法記念日のきょう、まずはほとんどその問題点が論じられることはないけれども、憲法99条に照らせば、現在の政権が画策する改憲議論が基本的に「憲法違反」であることを再度確認し、憲法についての私見を開示したい。

私は現憲法が到達しうる最高形態であるとは考えない。「平和主義」、「国民主権」、「基本的人権の尊重」は妥当な理念であるが、憲法前文はその後に連なる1条から8条(天皇についての記述)と極めて大きな齟齬を示している。日本国憲法の最大の問題点は、「基本的人権の尊重」を謳いながら、1条で国民の権利を定義することなく、天皇を持ってきてしまっていることだ。

さらに、細かい問題が他にもないわけではないが、「憲法違反」ながら進められている、現在の「改憲」論議を目にすると、私の抱く現憲法の問題を解決する方向への「改憲」は、現実味がまったくないと言わざるをえない。逆に自民党に限らず、野党各党も「改憲」を容認し、党是として「護憲」を掲げる政党は日本共産党しかない(党の政策とは異なり個人で強く護憲を指向する議員が野党にはいるが)。かような状況の中では「これ以上悪い憲法を作らせない」意思を明確にするしか現実的な選択肢がない。

このことが、日本政治の今日的最大の困難と不幸である。半数以上の国民は「改憲」の必要性など感じていない。しかし、その意思を投票行動で表そうとすると、政党では、「日本共産党」しか選択肢がないのだ。「護憲」だけれども共産党に好感が持てない人が投票すべき政党が、国政レベルでは存在しない。この異常事態にこそ憲法をめぐる問題の深刻さがある。

◆護憲派リベラルかのように振る舞う「隠れ改憲派」の危険性

また、一見「護憲」と思われるような名称の団体や個人が、じつは「隠れ改憲派」であったりするから、油断がならない。以前本コラムでご紹介したが、「マガジン9」というネット上のサイトは「護憲」ではない。ソフトな護憲派のような立ち振る舞いをしていて、その実「改憲派」が跳梁跋扈するのが2018年の日本だ。山口二郎、高橋源一郎などは同様に「護憲」と勘違いされるかもしれないが、その発言を詳細に分析すると「改憲派」であることを見て取ることができる。池上彰、佐藤優も同様だ。

政界だけでなく、言論の世界でも「護憲」を明確に主張する人は減少傾向にある。そして一見「リベラル」、一見「護憲」に見せかけて息巻く人の多くが「隠れ改憲派」である事実。この危険性は再度強く指摘しておきたい。

◆あらゆる改憲議論を無視すること

では個人レベルでどのような対抗策が考えられるか。前述の通り現在交わされている「改憲」論議は、その前提からして、無効なものであるのだからか、相手のリングに乗らないこと。すなわち「あらゆる改憲議論を無視」することだろう。政党、市民団体を問わず、明確に「護憲」を掲げる集団以外との憲法論議は、前提からして底が抜けているのだから、一切応じないことである。いま政治・言論界に求められているのは「平和主義」、「国民主権」、「基本的人権の尊重」を堅持する『護憲原理主義(護憲ファンダメンタリズム)』と言ってよいだろう。

現政権に領導されるすべての「改憲論議」は憲法違反であり、私は『護憲原理主義』を主張する。

◎[参考資料]日本国憲法全文(1947年5月3日施行)(国立公文書館デジタルアーカイブより)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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私たちはどう生きるか『NO NUKES voice』15号

 

サイト「マガジン9」

〈憲法と社会問題のことをやってます。「マガジン9」の“9”が示す通り、ずばり憲法9条のことから始まりました。日本国憲法と私たちの生活のつながりについて考えたり、憲法に関わるさまざまな出来事や議論について、広く伝えるためのウェブサイトです。発足以来、多彩な企画や執筆者のコラムによる独自コンテンツをお届けしています。〉(「マガジン9」とは?

長年勘違いしていた。上記は「マガジン9」のサイト内紹介文だ。しっかり読んでいなかったのでてっきり「9条を守る」趣旨で始まったと長年思い違いを続けていたけど、〈憲法と社会問題のことをやってます。「マガジン9」の“9”が示す通り、ずばり憲法9条のことから始まりました。〉とあるように、どこにも「護憲」や「9条を守る」とは書かれていない。

石坂啓(漫画家)、上原公子(前国立市市長)、小山内美江子(脚本家)、香山リカ(精神科医)、姜尚中(東京大学教授)、きむらゆういち(絵本作家)、小林カツ代(料理研究家)、小室等(ミュージシャン)、斎藤駿(カタログハウス相談役)、佐高信(評論家)椎名誠(作家)、ピーコ(服飾評論家)、毛利子来(小児科医)、森永卓郎(経済アナリスト)、吉岡忍(ノンフィクション作家)、渡辺一枝(作家)、渡辺えり(劇作家/演出家/女優)

2006年の発足当時の発起人には上記の人たちが名を連ねている。12年でだいぶ豹変なさった方も含まれるが、当時のこの顔ぶれは少なくとも「改憲を目指す」集団には見えないし、見えなかった。

◆伊勢崎賢治の主張は正気の沙汰とは思えない

しかしその後の登場人物は、どんどん怪しくなる。先日あまりの無知ぶりを本コラム(「確信犯か?バカなのか?東京外大・伊勢崎賢治〈リベラル改憲〉論の支離滅裂」)で批判したら伊勢崎賢治が、

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

と反応してきた。伊勢崎のツイッターを初めて見たが、正気の沙汰とは思えない主張が延々続く。ちょっとまて。理解できないわたしの頭が悪いのだろうか?

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

時間にゆとりのある、好戦的な年金生活者や、青年期に小林よしのりに影響を受けて育ってしまった、不幸にも無知な若者が書き込んでいるのではない(もっとも小林よしのりは、「再転向」して最近は反自民になっているようだが)。伊勢崎は東京外大の教授だ。

繰り返すが、いったい何を主張したいのか? わたしにはさっぱり理解できない。どなたかわかりやすい解説をしていただける方がいらしたらわたし宛にメールを頂きたい(メールアドレスは本文の下に明記している)。

◆「マガジン9」は「護憲」なのか?「改憲容認」なのか?

原発賛成で本性が明らかになった森永卓郎。思想・立場を変幻自在に変え、一見物分かりがよさそうに見えて、確信的な右翼にして「しばき隊」の擁護者、鈴木邦男。保守を自認・明言する中島岳志。仲間内ではなんとなく「護憲」のように振る舞っているけれども、2014年5月15日に関西発極右娯楽番組「たかじんのそこまで言って委員会」に出演した際、決して頭脳明晰とは思われない、軍事漫談家の井上和彦に「右翼でもいいから、何でもいいから、9条好きなんでしょ?」と聞かれ、「好きっていうよりは、具体的なツールとして根拠として使えるんじゃないかと思ってますね。」としか言えなかった雨宮処凛。ひたすら「国民投票」を行いたくて、福島第一原発事故後にも「原発の是非を問う国民投票を!」と、突拍子もない我田引水をあちこちで言い回り、周囲から呆れ果てられた今井一。

「マガジン9」には、「護憲」を明言する者はほとんど見当たらない。こういった「何かを主張しているようで、その実曖昧模糊として、改憲派のアマルガム(合成物)たる」役割を担っているのが「マガジン9」の実態ではないのか。正面突破を目指す「改憲勢力」は「マガジン9」のように「リベラル」の衣を纏った「間諜」によって援護射撃を受ける。

「マガジン9」に質問する。あなたたちは「護憲」なのか?「改憲容認」なのか? 旗幟を鮮明にせよ。過去「マガジン9」が主催するイベントに参加したこともあり、その際には強い違和感を覚えなかったが、伊勢崎を筆頭に明確な改憲派や憲法についての知識のない者が、ここまで多数登場すると問い質さざるをえない。

わたしは日本国憲法至上主義者ではない。現憲法が最高の完成形だとは考えない。前文には同意し好感するが、その直後1条から8条で国民ではなく天皇が規定されている点などに違和感を持つ。しかし、それらを甘受しながら、現在かわされている改憲をめぐる議論を目の当たりにすると、わたしは「護憲」ファンダメンタリストでしかありえない。

「9条加憲」などと中途半端な責任逃れの議論は、唾棄の対象でしかない。残念ながらこの島国の民族は、

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

と、ここまで明確に軍隊の不保持と交戦権の放棄を憲法に明文化しても、御託を並べて、自衛隊を作り、海外に派兵する国なのだ。この文言が少しでも緩まれば、為政者がさらなる軍備増強と戦争を企図することは、現状を見れば明らかじゃないか。悲しきかな最高法規を守ることのできる知的水準と、遵法精神がこの国にはないのだ。だから現状がどうであれ、改憲には絶対に反対する。PKOを肯定する論などには一切賛同できないし、集団的自衛権など論外だ。

読者諸氏にも自己点検をお勧めする。もとより改憲派のかたはともかく、自分の考えがどうなのか、定まっているかどうか不明瞭な方に。リトマス紙として「マガジン9」を一読されると良いかもしれない。こと「改憲」問題において中間的態度などは存在しない。「戦争」を引き起こすのが「普通の国」とする考えに賛成するのか、反対か。鹿砦社社長松岡もわたしも「改憲」に関しては絶対反対の原理主義者だ。

騙されてはいけない。街頭でラップ調の「安倍政権反対」を口にする連中の中にも、改憲派は潜り込んでいる(もちろんそうではない護憲派が多数だが)。9条2項削除を明言した、軽率学生集団SEALDsやそれを擁護した知識人ども。連中は全員改憲派と見做していい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他

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