◆日米首脳会談のキーワード

去る4月10日、岸田訪米に際しての日米首脳会談、そこでのキーワードは、「日米同盟新時代」と「グローバルパートナー」だった。

実際、このキーワードに先の首脳会談の意味が凝縮されている。そこで問われるのは、その意味だ。

それについて、岸田訪米を前にして、4月4日、同じ日に、米駐日大使ラーム・イスラエル・エマニュエル、そして元米国務副長官リチャード・アーミテージと政治学者ジョセフ・ナイが発表した二つの提言が重要だと思う。

前者は、まず、米国による同盟のあり方の転換について言っている。ハブ&スポーク状の同盟から格子状の同盟への転換、すなわち、米一極を中心に各国が自転車の車輪状に結集した同盟から、AUKUS、日米韓、日米比などの同盟が重層的、複合的に重なり合ってつくられる格子状の同盟への転換であり、その中心には格子が重なり合う日米の同盟が位置するようになると言うことだ。

後者は、日米の統合について言っているのだが、それがこの間深まってきたのを評価しながら、これからは、それが同盟としての統合に深められる必要があることについて言っている。言い換えれば、日米同盟新時代の同盟にふさわしい日米の統合をと言うことなのだろう。

◆在日米軍司令部との連携・指揮の統合

この提言を前後して発表された陸海空三自衛隊を統括する統合作戦司令部の来春新設と米インド太平洋軍司令部の権限の一部が移譲される在日米軍司令部との連携・指揮の統合は、先の提言が何を意味するか、その重大さを証左するものだ。

戦後、日本の防衛はその盾となる自衛隊と矛の役割を果たす米軍の役割分担によっていた。しかしこれからは、日米は攻守をともにするようになり、その領域も日本を超え、インド太平洋全域に広がると言うことだ。

ここには、「日米同盟新時代」が持つ意味が示されており、これまでの「パートナー」から「グローバルパートナー」への転換が何を意味するかが示されている。

それは、一言で言って、あの日本の歴史始まって以来のもっとも悲惨な戦争の総括に基づく戦後そのものの終焉だと言うことができる。それは、不戦の憲法に基づき、非戦非核を国是とした日本のあり方そのものがその根本からが変わると言うことを意味している。

◆「異例の大厚遇」への代価

先の岸田訪米に際しての、米国の国賓待遇での大歓待を岸田政権による「安保防衛費大増額」へのご褒美だと言っていた人がいたが、「異例の大厚遇」への代価はそんなものではすまない。

この計り知れない代価を背負って、「日米同盟新時代」との闘いは開始されることになる。その最初の大事業がこれから行われることになる解散総選挙になるのではないか。

来るべき総選挙を日本と日本国民の命運を危機にさらす先の「日米合意」を一度の国会審議もなく敢行した岸田政権、自民党政権を弾劾し、懲罰する総選挙にするところから、「日米同盟新時代」「グローバルパートナー」との闘いは開始されなければならないだろう。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆原発推進派と反対派が共有する「ふるさとをどうするか」問題

先日取材した石川県珠洲市の元県議、元市議の北野進さんの著書『珠洲原発・阻止への歩み 選挙を闘いぬいて』を読み始めた。

取材中、北野さんは何度か「えっとあれは何だったかな」と書類を探そうとしていたが、私は時間がもったいないので「いいですよ、あとで本を読んで確認しますから」と言っていた。本には、住民運動と並行して、市長選、知事選、県議などの選挙を闘い続け、ついに原発建設を凍結に追い込んだ29年間の歴史がたっぷりと書かれていた。

北野進さんと著書『珠洲原発阻止へのあゆみ―選挙を闘いぬいて』(七つ森書館 2005年)

珠洲市は原発建設を凍結に追い込んだ2013年の翌年、市政60年をむかえ、記念事業として作成された「珠洲市勢要覧2004」の中の「珠洲市の歩み」には珠洲原発建設問題の記述は一切ないのだという。いくら敗北したとはいえ、それはないだろうよ、と考え、北野さんは闘いの歴史を、推進派の動きもなるべく忠実にして、この本を書かれたという。

北野さんのお話で感動したのは、原発建設を凍結に追い込んだのち、反対運動を闘った仲間らと「勝った!勝った!」と言わないようにしようと話し合ったということだ。

原発賛成あるいは推進してきた人たちにもいろんな思いがある。原発建設を心から望んで推進していたのは、それで稼げる一部の人たちだ。多くの人たちは年々過疎化が進む「おらがふるさと」をどうにかしたいとの思いから「原発ばなし」に乗っていった。

原発以外で過疎化を防ぐ手立てがあれば、そっちを必死で進めるだろう。川口勉監督のドキュメンタリー映画「彼らの原発」(2017年製作)で美浜町の方が最後につぶやいた、原発がだめというのなら「ほかのものをもってきてくれ」という言葉が忘れられないが、それと同じ。

これからは一緒に故郷を良くしていこうと手を組まなければならないからだ。北野さんはこう言った。

「当時推進派と反対派のわだかまりは、孫の代まで残るかと心配されてましたが、その後信じられないくらい早い段階でなくなっていきました。」

これには感動した。

珠洲原発の建設予定地だった地区。今年元日の能登半島大地震で地盤が北野さんが指差すあたりまで隆起した

◆「玄関あけたらすぐ建屋」の志賀原発を止める裁判に注目を!

あと、志賀原発建設までの闘いのお話も伺った。「珠洲原発は止めれたが志賀原発はなぜ建設されたの?」という人もいるが、志賀原発反対運動も非常に熾烈に闘われてきた。その結果、超危険な志賀原発ができた。

志賀原発の危険性は活断層などもあるが、志賀原発が、海→道路→志賀原発の玄関、そして「玄関あけたらすぐ建屋」の極狭物件になっていることも超危険ではないか。

イラストで説明すると、北陸電力はまずA、B地区の用地を買収しようとしたが、B地区の土地所有者の強い抵抗で買収出来なかった。そのため、予定地をA、C地区に変更したが、C地区の土地所有者の強い抵抗で買収出来なかった。そこで北陸電力は「狭くてもA地区に原発建ててやる」と「ゆっくり不動産」もビックリの極狭物件を建てた。

 

全国でも異例の県道のそばに建設された志賀原発。かつては1、2号機の姿を県道からしっかり確認することができた。今は防潮堤の上に頭を出すだけとなった(北野さんのブログより)https://blog.goo.ne.jp/11kitano22/e/621fdd4f882be0bc4367acb9ec3986de

「テロリストの皆さん、いらっしゃい」みたいな門構え。「志賀原発は県道からすぐ原発がみえるんです。テロ対策なんかできませんよね。そういうところは全国にないですよ」(北野さん)。

ふつうは「Cゲートから不審者侵入」「ピーピーピー」と屈強な警備員がさすまた持ってすっとんでくるが、その時すでにテロリストは建屋の玄関をタッチしましたけど……みたいな。確かに建設当時はテロ問題に喧しくなかったんだろうが。

そう、この志賀原発を廃炉への裁判、原告団長は北野さんだ! 裁判の行方に注目していこう!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『季節』2024年春号 表紙は関西電力が珠洲原発の立地可能性調査を予定していた区域にある高屋漁港の状況。1月1日の地震後、2メートルほどの隆起を指し示す北野進さん

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

龍一郎揮毫

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安芸高田市長の石丸伸二さん。突然、再選出馬をせずに、東京都知事選挙に立候補する、と表明しました。東京中心の日本を地方分散で変えるとのこと。筆者もびっくりしましたが、広島県内では驚きの声が広がっています。


◎[参考動画]広島 安芸高田市の石丸市長 都知事選へ出馬を表明「東京を変えて日本を変える」(TOKYO MX news 2024/05/17)

 

安芸高田市ホームページ

安芸高田市は、広島県北部に位置します。筆者の住む広島市からは、公共交通では芸備線か国道54号線経由のバスが便利です。筆者も、この安芸高田市内の病院兼高齢者施設で仕事を3年間させていただいた元在勤者です。元々は高田郡だったのですが、平成の大合併で安芸高田市となりました。戦国大名・毛利元就の本拠地・郡山城は旧吉田町内にあります。広島市中心部からはバスが便利です。また、Jリーグのサンフレッチェ広島の本拠地があるなど、スポーツの街としても知られています。

さて、市長の石丸伸二さんは今年、41歳。安佐南区にある県立祇園北高校を経て京都大学をご卒業後、東京三菱UFJ銀行へ。2020年、河井案里さんが当選無効になった公選法違反事件に連座して当時の安芸高田市長が引責辞任。それに伴い行われた安芸高田市長選挙で、当選が確実視されていた元副市長を破って初当選されました。

地元生まれとはいえ、政治経験が全くない石丸さん。市議会で居眠りをしている議員に「恥を知れ」などと発言をしたことで、一躍有名になりました。議会との対立を面白おかしく市の公式YouTubeで発信。自治体のサイトとしては全国一のアクセスを誇るようになりました。

しかし、議会との対立から、全国公募で選んだ副市長の人事がご破算になる、また、目玉施策の一つの無印良品の道の駅への誘致も議会の反対でご破算になる、という事態が起きています。

ネット上には石丸さんのファンの方も根強くおられます。そうした方からすれば「頭の固いおじいさん、おばあさんの議員が悪い」ということになります。

ただ、地方自治の実際を知る筆者からすれば、「もうちょっと、政策実現のために、反対派を切り崩すなどなぜしなかったのか?結果として面白おかしくはなっているが、どうなのか?」という疑問があります。

相手を意固地にすれば、ネット動画としては面白いのですが、妥協もなければ前には進みません。

また、そもそも、市長就任早々、いきなり、全国から副市長を公募、というのもいかがなものか? 確かに、広島県北部の権威主義的な政治風土は筆者も良く存じています。しかし、優秀な若手・中堅も庁内にはいます。そういう人を、登用した方がよかったのではないか?

石丸さんは政治経験がないからこそ、地元の優秀な人を大事にすべきではなかったか?

確かに、副市長人事を巡る対立も、面白おかしい動画にはなったが、それでよかったのか?疑問は尽きません。

◆ご出身高校の近所では散々な評価も、遠い県沿岸部では高評価?

広島市安佐南区。石丸さんが高校時代を過ごした場所です。その近所の方に5月17日、筆者は取材しました。

「彼は何考えとるのじゃ。安芸高田市もまとめられないものが東京へ行くなんて」。
「政治をおもちゃにしている」
「東京へ行ったら若い者が味方してくれると思い込んだのだろうが」。
「石丸氏はアメリカかぶれすぎる。地元の若い者をまず大事にすべきだった。」

などなど。もちろん、判断されるのは都民ですけど、安芸高田市以外ではあるが同じ広島3区、それもご自身の出身高校がある近くでの石丸さんへの風当たりは非常に強いです。

一方、安芸高田市から距離が離れている沿岸部の呉市では、広島瀬戸内新聞のA記者によると、石丸さんの評判はいいようです。やはり、距離が遠くなって、石丸さんの人となりが知られていない地区で評判がよくなっている状況があります。

◆小池VS石丸 グローバリスト対決では現職有利では?

いきなり広島の小さな自治体の首長から日本最大の自治体の長に挑む。石丸さんのその胆力には敬意を表したい。しかし、残念ながら、苦戦は免れまい、と筆者は感じます。

なぜか? 小池知事と石丸さんの違いはわかりにくいからです。

どちらも、いわばグローバリスト、アメリカンポストモダニストです。アメリカかぶれなのです。それなら現職の小池さんが有利になってしまうでしょう。

◆湯崎英彦知事の小型版                   

石丸さんに対しては、広島県知事待望論もネット上にはあります。しかしながら、広島県政の主要課題について、湯崎知事と石丸さんの違いはほとんどみられません。ズバリ申し上げれば、外部の企業、外部のお気に入り人材重視という点では違いが見当たらないのです。両者ともアメリカかぶれのポストモダニスト。違いがないなら、現職の湯崎さんが圧倒的に有利です。

湯崎知事は、平川教育長を登用し、平川氏は官製談合事件やお友達の赤木かん子さん優遇事件などを起こしています。また、女性副知事には、ご自身の高校・大学・経産省の後輩を充てています。県病院廃止・巨大病院建設を進める健康福祉局長には中央官僚の若手女性を充てています。他方、石丸さんも、副市長人事でご自分が全国公募で選んだお気に入りの方を、議会の反発を買って失敗しています。

そして、広島県の場合は、安芸高田市という狭い範囲よりはそれなりに優秀な人材や企業が県内に揃っています。安芸高田市政以上に県政では湯崎・石丸的な外部優遇より、地元で地道に頑張っている中堅・若手とか、企業を応援した方が良いのです。

また、湯崎知事が強行する三原本郷産廃処分場稼働継続や、県病院潰し・1300-1400億円の巨大病院、平川前教育長を庇う姿勢などにきちんと石丸さんが湯崎知事との違いを出せるかと言えば疑問です。

もちろん、石丸さんがガチガチに硬直化しきった地域の政治文化に突撃して、かき回したということは言えると思うし、歴史の一コマではあったと思う。ただ、石丸さんに長居されたらたまったものではありません。地味に地元で頑張っている中堅や若手、企業の力を活かせるようなリーダーが必要だと思いますし、筆者が広島県知事に就任すればそうします。

筆者が思うには、ここ20年の日本の悲劇は、森元総理的なコチコチの老害と、小泉・竹中・湯崎・小池・石丸的なグローバリストの挟み撃ちで、地域で地道に頑張っている中堅、若手や企業が割を食ってきたことだとも思います。  

◆勝ち目のない東京都知事選挙より県内・三原市長選挙に立候補はいかがか ── 百歩譲った筆者の提言

ここまで、ネガティブなことを石丸伸二さんに申し上げてきました。石丸さんは支持できない。しかし、批判ばかりで対案がないと言われたくもないので、百歩譲って、以下のことを石丸さんに進言します。

何か実績を上げるおつもりなら今夏、実施される県内・三原市長選挙に立候補されたらどうか?この三原市も4年前に、当時の天満市長が河井事件に連座して辞任しました。新たに岡田現市長が選ばれました。この三原市は、水源地のど真ん中に湯崎英彦知事が許可した三原本郷産廃処分場があり、汚染水を垂れ流しています。そこで、石丸さんが立候補し、「三原本郷産廃処分場即時停止」を訴えれば、当選確実ではないでしょうか?

当選したらもちろん、極めて厳しく産廃を規制する条例を作る。そして、同処分場を廃止に追い込むのです。極論すれば、とりあえず、産廃処分場を止めてくれるなら、新自由主義は議会や市民世論による修正で対応する。それくらい、三原の産廃は酷い問題なのだから。石丸さんは、同じ広島県内である三原でもそれなりに、知名度はあるだろうから。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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今興行タイトル「フェザー級の至宝が揃い踏み、甦る老舗の底力」に際し、前回に続いてのメインイベンターは、無くてはならない存在となった瀬戸口勝也。ベテランのガン・エスジムにはテクニックで敗れるも強打は優った。

ジョニー・オリベイラの王座戴冠後の初戦はムエタイテクニシャンに惜敗。

NJKFからやって来たTAKAYUKIと庄司理玖斗ともにインパクトあるTKO勝利。

◎TITANS NEOS.34 / 5月12日(日)後楽園ホール17:15~20:03 
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

(戦績は興行部データより、この日の結果を加えています。第4試合以降はプロ試合。)

◆第12試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 57.85kg)43戦31勝(14KO)9敗3分
        VS
ガン・エスジム(元・ラジャダムナン系フェザー級5位/タイ/ 58.0kg)107戦78勝26敗3分
勝者:ガン・エスジム / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本29-30. 宮沢28-29. 中山28-29

ガンエスジムは2022年9月、馬渡亮太にはヒジ打ち相打ちでKO負けしているが、2022年7月、ジャパンキック協会の睦雅に判定勝利、2023年6月、NJKFスーパーフェザー級の龍旺に判定勝利、2023年8月、NKBライト級の棚橋賢二郎にTKO勝利しているベテランムエタイ戦士。

初回早々は両者ともローキックで牽制、徐々にミドル、前蹴りなど高めの蹴りからパンチの距離に移る。ガンエスジムは重いパンチで牽制。ジャブを幾らか瀬戸口にヒット。瀬戸口勝也も得意の強打でボディーから顔面へ打ち返す。

蹴りはガン・エスジムが優る。ヒジ打ちで斬られた瀬戸口勝也は苦戦

第2ラウンド、瀬戸口はパンチ、ガンエスジムは重いミドルキック、接近した際にガンエスジムは左ヒジ打ちで瀬戸口の眉間をカットし、そのまま組み合ってヒザ蹴りで攻勢を強める。一旦ドクターチェックに移るもすぐ再開。ガンエスジムは余裕が出てきた流れ。

パンチは瀬戸口勝也が優る。しかし凌ぐのが上手いガン・エスジム

第3ラウンド、瀬戸口のパンチを蹴りと首相撲へ導いて凌ぐガンエスジム。瀬戸口はガンエスジムのテクニックに躱されるまま終了。

駆引き勝負はガンエスジムが優った勝利、無念の瀬戸口勝也

◆第11試合 60.0㎏契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 59.8kg)
62戦16勝(1KO)28敗18分
       VS
ペットボーライ・チュワタナ(タイ/ 59.6kg)129戦86勝38敗5分
勝者:ペットボーライ / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢28-30. 中山29-30

チャンピオンに成ればやって来るムエタイ路線。3月に王座に就いたジョニー・オリベイラも然り。今回の対戦相手はペットボーライ。タイではペッチンチャイというリングネームらしい。文字をカタカナ読みすれば“ペットチンチャイ”。パンチとローキックが強いテクニシャンという情報だった。

ペットボーライのローキック、頑丈なジョニー・オリベイラは崩れない

パワーで優るジョニー・オリベイラのパンチの攻勢

ペットボーライの体幹良いミドルキック。パンチで行きそうなジョニーは重心が前足に掛かるスタイル。テクニックでは敵わずもパンチのパワーで圧し優りたいジョニーと、ムエタイテクニック発揮のペットボーライ。危機感あったジョニーの劣勢感は無く、ペットボーライのテクニックを凌ぎ切った。

ジョニーは「ペットボーライは上手かったです。」と一言。

セコンド陣営の中川卓氏は「ペットボーライはテクニック有りましたけど、大差を付けられることは無いと思っていて、ジョニーはリーチあるのでもっとジャブも出せればいいけど、練習では出るのに試合では力んでしまって出さないから勿体無かったです。離れ際にハイキックも出せればよかったですね。」と語った。

体幹、テクニック優って勝利のペットボーライ、無念のジョニー・オリベイラ

◆第10試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級2位.TAKAYUKI(金子貴幸/K crony/ 57.05kg)
29戦16勝(1KO)12敗1分
        VS
KAZUNORI(元・DEEP KICK 53㎏級3位/REAL/ 56.9kg)40戦14勝26敗
勝者:TAKAYUKI / TKO 3ラウンド46秒
主審:勝本剛司

序盤は互角も次第に的確に隙を見て空いたところを打ち込む金子貴幸のリズムが上回って行き、ローキックでバランス崩させたり、パンチ蹴りでも攻勢を強め、ノックダウンへ繋いだ。KAZUNORIはノックダウンを喫した後、そのままドクターチェックに移り、ヒジ打ちによるカットと見られたが、そのままドクターの勧告を受け入れたレフェリーストップとなった。

TAKAYUKIが組み合ってのヒザ蹴り、徐々にベテランの技で圧倒した

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級6位.庄司理玖斗(拳之会/ 55.9kg)12戦8勝(5KO)3敗1分
        VS
玉城慧(真樹ジム沖縄/ 56.35→56.3→55.95kg)9戦5勝4敗
勝者:庄司理玖斗 / TKO 3ラウンド44秒 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

第1ラウンドはアグレッシブに蹴りがヒットしていた玉城慧だが、徐々に庄司が調子を上げ、ヒジとパンチで逆転していくと玉城慧は後退気味。第3ラウンドにはラッシュをかけた庄司がパンチからヒジ打ちを玉城の頭部へ落としてノックダウンを奪った。蹲った玉城はそのまま横たわり、テンカウント間近ではあったが、カウント中のレフェリーストップで庄司理玖斗がTKO勝利した。

庄司理玖斗が多彩な攻めで成長を見せた巻き返しの勝利

◆第8試合 70.0kg契約2回戦 義人欠場につき磯村真言に変更

ヴェジー・チョル(伊原/ 68.9kg)1戦1分
    VS
磯村真言(グラップリングSB名古屋/ 68.95kg)6戦5敗1分
引分け 0-1 (19-19. 19-20. 19-19)

ヴェジーは蹴りが速く、重くヒットするインパクトを与えた初回。磯村真言も対抗し、打ち合い蹴り合って巻き返しに掛かるとヴェジーのパワーがやや失速、磯村が巻き返した第2ラウンドによって、取って取られた採点の0-1ではあるが引分けとなった。

中国出身のヴェジー・チョルとシュートボクシングから出場の磯村真言の意地の攻防

◆第7試合 63.5kg契約2回戦

宇野澤京佑(伊原/ 63.3kg)2戦1勝1敗
    VS
今野龍太(笹羅/ 62.5kg)5戦1勝3敗1分
勝者:宇野澤京佑 / 判定3-0 (20-17. 20-18. 20-17)

パンチの交錯はやや打ち優った宇野澤京佑が判定勝利。

宇野澤京佑がパンチの攻防を優って判定勝利を導いた

◆第6試合 OVER FORTYFIGHT 60.0㎏契約2回戦(2分制)

長友亮二(KING/ 59.5kg)3戦2勝1敗
      VS
伊興田翔(Team lmmortaL/ 59.6kg)3戦3勝(1KO)
勝者:伊興田翔 / TKO 2ラウンド52秒 /

伊興田翔がパンチでラッシュ掛け、長友亮二はスタンディングダウンを奪われるが、更に打たれながらもカウンターの右ストレート数発繰り出し、伊興田翔をグラつかせるも一発のみで、伊興田翔の勢いが優り左ストレートでノックダウンを喫した長友亮二。立ち上がるもしっかりファイティングポーズをとれず、カウント9でレフェリーストップとなった。

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)44.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級11位.UveR∞miyU(T-KIX/ 43.85kg)8戦3勝4敗1分
       VS
友菜(Team lmmortaL/ 44.0kg)6戦1勝3敗2分
引分け 0-1 (29-29. 29-29. 29-30)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)55.0kg契約3回戦(2分制)

三宅美優(拳之会/ 54.2kg)vsMIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 54.05kg)
松田沙和奈欠場、三宅美優に変更
勝者:三宅美優 / KO 1ラウンド1分8秒 / 2ノックダウン
主審:中山宏美

◆第3試合 アマチュア男女混合 37.0㎏契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原越谷/ 36.8kg)vs永井りい(VALLEY/ 36.3kg)
勝者:西田永愛 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)

◆第2試合 アマチュア 43.0㎏契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/ 42.7kg)vs渡部翔太(KING/ 43.0kg)
勝者:西田蓮斗 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-18)

◆第1試合 アマチュア 34.0㎏契約2回戦(2分制)

武田竜之介(伊原越谷/ 33.45kg)vsヨムトュノーイ・ロークパークデーン(タイ/ 33.8kg)
勝者:武田竜之介 / TKO 1ラウンド40秒 / カウント中のレフェリーストップ

《取材戦記》

主力選手が少ない中、どうやって甦っていくかが注目され続ける新日本キックボクシング協会。閑散とした会場の静けさは、キックボクシングが最も低迷していた昭和57年頃の会場のようだった。各選手の応援団の歓声が幾らか騒めく役割を果たしたが、試合によっては歓声よりセコンド陣営の声が響く会場内。

2興行連続でメインイベンターとなった瀬戸口勝也。前回、木下竜輔との王座決定戦を制し、チャンピオンロードを歩むことになったジョニー・オリベイラの二人は今後もメインイベンタークラスとして起用されそうな流れである。

昨年10月、脳腫瘍の大病から復活宣言した江幡塁は、未だ完全復活の目途は立っていないが、仮に復活が叶うならば、新日本キックボクシング協会の「甦る老舗の底力」がより期待出来る存在である。コーチとして指導に当たる現在だが、新たな復活の展開も見えて来そうな江幡塁である(私の予想はすぐ外れるので御容赦ください)。

次回、新日本キックボクシング協会興行は7月7日(日)後楽園ホールに於いてMAGNUM.60が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

カウアンオカモトという青年の登場によって「性加害」という表現が爆発的に広まったと思う。

彼の証言によれば、しかるべき場所で喜多川氏から「マッサージしてあげる」と言われて、素直にその好意に応じたところ、マッサージする手が上半身から次第に下半身に、そして下腹部の性器にまで達したということなのであるが……。

 

在りし日のジャニー喜多川

しかし、その先がはっきりしない。マッサージの延長行為の末に、カウアン君の性器はしかるべき反応を示したのか、それとも無反応であったのか。もしこの問題が裁判で争われるとすれば、そこが肝であると思われる。

ただ、どちらにせよ、私にはそれが「性加害」と言えるほどの事態であったとは、残念ながら思えない。無理矢理しかるべきでない場所に引きずり込まれて、暴力的に衣服を剥がされてレイプされたというわけではない。

それを「性加害」と言い切ってしまうと、刑法上の犯罪行為であるというイメージを、聞く者の耳に与えてしまう。

さらに不思議なのは、カウアン君がジャニー喜多川の性癖を知らずに、ジャニーズ事務所の合宿所のようなスペースで想定外の行為を強いられて傷ついたという証言をしていることである。

はっきり言って耳を疑う証言である。ジャニーズ事務所でその種のいかがわしい行為が行われているという醜聞は、国民的常識とまでは言わないが、1970年代後半にはもう少なくとも私の周囲には知らない者はいなかった。

ジャニーズ事務所に所属するタレントのファンの間でさえ、その噂は公然と囁かれていた。郷ひろみのファンだった女性は、私に向かって「それが芸のこやしになっているんだから、それでいいんじゃないんですか」と言い切った。彼女の表情から不快感は全く感じられず、むしろ必要枠として評価したいという気持ちが伝わってきた。

そこまで広まった噂の真相をカウアン君が知らずにジャニーズ事務所に身を寄せたとしたら、あまりにも無防備であったと言わなければならない。「自己責任」という嫌な言葉が口をついて出そうにもなる。

今回の騒動に関して「僕には楽しい思い出しか残っていない」と田原俊彦が語っていたそうだが、タレント志望のジュニアの多くもジャニー喜多川の愛玩物となることを覚悟して(あるいは甘受するつもりで)その場に身を置いたと思われる。そこを通らなければ、デビューさせて貰えなかったそうだから。

解散してしまったSMAPの木村拓哉と中居正広はジュニアの時代に在学していた都立代々木高校で、周囲が心配するほどの犬猿の仲であったという。かなり遠くからでもお互いの存在に気づくと、しばらくの間にらみ合っていたというほど険悪な関係であったと、当時同校に在学していた女子高校生が語っていた。2人の不仲の原因が、ジャニー喜多川の寵愛を競う争いであったことは明らかだったという。

その話も、後に2人がSMAPというグループのメンバーとしてデヴューすることになった途端に和解してしまうと「個人的な感情を棄てて仕事に徹する……さすがプロだ」という美談にすり替わってしまったようだが。

SMAP時代の木村拓哉と中居正広

概してジャニタレファンは、鷹揚で包容力に富んでいる。木村拓哉が工藤静香と結婚するというニュースが流れた時、彼のファンの多くは「何であんなヤンキーと一緒になるの!」と激しい怒りを露わにしたが、それでもファンであることをやめようとはしなかった。

カウアン君の突然の告発にも動じる気配はない。逆にカウアン君のことを「被害妄想っていうか、被害者意識が過剰なのよね。かわいそうな人ね」と同情したり、「ああいう人はジャニーズでは例外でしょう」と完全に自分の意識から排除したりする。

その反面、カウアン君を「日本の恥」と切り棄てたデヴィ夫人に対しては「お前こそ。日本の恥だ」「お前だって。元は高級売春婦じゃねえか」「地位と名誉が欲しくて、色仕掛けで某国の大統領夫人にまで成り上がったくせに」と、何もそこまでいと言いたくなるほどの悪罵を投げつける。「吐いた唾は飲まんとけよ」という映画『仁義なき戦い』の名ゼリフを彷彿とさせる言い草ではないか……

しかし、「日本の恥」というデヴィ夫人の表現を、必ずしも不適切だと私は思わない。カウアンは今まで恥ずかしくてとても言えなかった心の傷をジャーナリスト相手に堂々と公表し、ついに国連にまでその「性加害」問題が取り上げられるに至った。

それは確かに「日本の恥」を世界に晒す行為であると言えるだろう。だが、「恥をかけ、とことん恥をかけ」というアントニオ猪木の警句を実践したと解釈すれば、勇気ある行動と言えなくもない。

昭和のプロレスの悪役の如く、未だにマスコミに重宝されているデヴィ夫人としては、憎まれ役は自分の本領と自覚しているに違いない。「日本の恥」という表現は、意地悪な悪女が純朴な青年をイジメている演出に沿ったものであるに違いない。むろん彼女自身の演出である。

そして、ラストシーンは、闇の奥に潜んだまま鬼籍に入ったジャニー喜多川を、死後世界史に稀代の変人として名を連ねることになると、筆者は予想するのである。
そしていつか、彼の名声と共に「性加害」という言葉も軽い恋愛感情を示す表現になっているのではないかと思う。(つづく)

板坂 剛 ジャニーズよ 永遠なれ(全3回)
〈1〉死して尚、放たれる威光
〈2〉「性加害」という表現への疑問

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

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◆新規制基準と耐震性能の問題

東京から最も近く、今年9月に再稼働が迫る東海第2の基準地震動は建設時点ではわずか275ガル、今では1009ガルである。しかし基礎から造り直したわけではない。もともとあった安全余裕を食い潰し、配管や支持構造物が壊れなければ良いなどとして、本来はあるべき裕度はまったくなくなっても「耐えられる」と、書類上で「評価」しているに過ぎない。

付け足したのは耐震補強のサポート類や梁の強化などだが、圧力容器を支える構造物や格納容器などは取り替えることもできない。

そのため、いびつな補強にならざるを得ず、かえって統1的な耐震安全性の観点からは後退したところもある。

比較的細い管や管台部分などは、大きな配管が揺れを抑える補強をしたため振動による応力が集中しやすくなった可能性もある。実際に発生する力に耐えられるかは、地震動の固有周期にも依存するため起きてみなければ分からない。机上の空論で1部を耐震補強をしてもダメなのだ。設計とはそういうものである。

1981年改定の新耐震基準法で建てたビルと、旧耐震を補強したビルでは、明らかに耐震強度は新耐震で建てたほうが優れている。

原発は全部、旧法で建てて新法になって補強した建物と同じだ。耐震性を要求する新規制基準は2012年の原子炉等規制法の改定で施行されているからである。それ以後に建てた原発や原子力施設などどこにも存在しない。原発の安全規制を強化してバックチェックではなくバックフィット(新基準に適合しなければ許可しない)をするならば、いったん全原発の許可を取り消し、新法で設計、建設しなければ認めないとすべきだ。耐震補強でよしとするならば震災前と何も変わらない。

◆「原子力防災」は崩壊している

原発が過酷事故を起こった際、原子力防災計画に基づき、住民は避難しなければならない。避難範囲は、国の防災対策指針に基づけば稼働中の原発で全交流電源喪失や冷却システムの全停止で原子力災害対策特別措置法第15条に基づき、原子力緊急事態解除宣言が出されたら5キロ圏内に設定されているPAZ*(予防的防護措置を準備する区域)の住民は、30キロ圏外に避難を開始するか、避難準備を開始することになっている。

同時にUPZ*については、屋内退避が発令される。その後、放射性物質の拡散が続き空間線量が一定水準以上になった場合、UPZにも避難指示が出される。

今回の地震でもし志賀原発で施設内緊急事態や全面緊急事態が宣言されるような災害になっていたら、PAZから避難を開始しなければならなかったが、周辺の道路の状況は深刻なものだった。

特に原発から北側と東側では、主要道路のほとんどが地震の影響で遮断されていた。志賀原発防災計画において最も重要な道路である「のと里山海道」は大きな被害を受けていた。金沢市から能登半島へ延びる道路は、至るところで道路が陥没して車が通れない状況になり、羽咋(はくい)市の柳田インターチェンジから、のと里山空港インターチェンジまでの上下線で通行止めになっている。

原子力防災に関しては、規制委は原子力防災対策指針を策定している。しかしこれは原子力事業者への規制基準にはなっていない。原子力防災も地域防災計画の1つとして、自治体が防災計画を作ることになっている。

しかし能登半島地震の実態は、指針の内容さえも機能しない現実を示している。

この事態について、山中伸介原子力規制委員長は次のように述べている。

「基本的に我々は基準を満たしていれば許可をいたしますけれども、稼働について何か我々が、その許可をするということはございませんし、防災基本計画を立てられるというのは、自治体と内閣府の連携によって立てていただくというのが基本的なところかというふうに思います」

「我々原子力規制委員会は、原子力災害の複合災害を受けたときにどうすべきかというのを科学的、技術的に助言をする、そういう組織であるというふうに理解をしておりますし、決して稼働を我々が何か許可をしたというわけではございませんし、自治体のサポートを、科学的、技術的に原子力について行うのが我々の務めだというふうに考えています」(1月2十4日記者会見議事録より)

原子力防災計画については、自治体と内閣府の原子力防災会議の責任であり規制委はサポートの立場でしかない。

新規制基準適合性審査が終わった後は防災計画が崩壊状態でも規制委は助言しかしない。法的不備を理由に差し止める権限さえない。しかし防災指針は規制委の責務である。その規制が実行不可能な状況に現在能登半島が置かれていることぐらいは理解できるだろう。

そのことをどのように感じているのか。特に、再稼働した原発の立地自治体は深刻に考えるべきだ。

*PAZ(Precautionary Action Zone:予防的防護措置を準備する区域)。実用発電用原子炉の施設において異常事象が発生した際、EAL(緊急時活動レベル)に基づいて、放射性物質放出の有無にかかわらず屋内退避、避難などの予防的防護措置が迅速に行えるように準備する区域をいう。

*UPZ(Urgent Protectionaction planning Zone:緊急時防護措置を準備する区域)。実用発電用原子炉の施設において異常事象が発生した際、OIL(運用上の介入レベル)及びEAL(緊急時活動レベル)に基づいて、住民等の緊急防護措置(避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用等)が迅速に行えるように準備する区域をいう。

◆大地動乱の時代に突入している

石橋克彦神戸大学名誉教授の提唱した「大地動乱の時代」は、1993年北海道南西沖地震(M7.8)に始まったと筆者は考える(1983年の日本海中部地震(M7.7)も含めば、1983年からということになる)。

2011年の東日本大震災を挟み、1993年2月7日能登半島沖の地震(M6.6)1995年兵庫県南部地震(M7.3)、2000年鳥取県西部地震(M7.3)、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2007年能登半島地震(M6.9)、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)、2008年岩手.宮城内陸地震(M7.2)、2016年熊本地震(M7.3)そして2024年1月1日の能登半島地震(M7.6)。

たった20年ほどの間に10回もの大地震が発生している。

これらは大平洋プレート、フィリピン海プレートからの巨大な力によりストレスが解放されて断層が動いた地震だが、能登や新潟では何度も繰り返し起きてきた。それだけ地震を起こすエネルギーが溜まっているところだ。

しかし動いていない断層も地下ではストレスが溜まっている。南海トラフ地震の切迫度は、これまで以上に高まっているとの指摘もある。歴史地震を見るとプレート境界巨大地震の前後に内陸地震が多発してきたのは事実だ。

2004年、2007年の中越、2008年の岩手.宮城内陸地震の4年ほど後に東日本太平洋沖地震が発生している。

2024年能登半島地震で、南海トラフ地震との相関を感じずにいられない。その前後には必ず、北陸地方から中国、四国、九州地方の内陸の地殻内地震が多発すると考えられる。特に、中央構造線は巨大な活断層で、これが動けば瀬戸内海を中心に甚大な被害を出す。その真ん中に伊方原発が建っている。

若狭湾の原発群も、甲楽城.浦底断層系、上林川断層、熊川断層等が活動したら、原発に深刻なダメージを与える。他にも、警固断層と玄海原発、日奈久断層と川内原発、宍道断層と島根原発など、原発の周囲には大きな断層がたくさんある。

今すぐにしなければならないことは、来るべき地震に備えて、今から「止める」「冷やす」「閉じ込める」対策を取ることである。地震や津波は止められない
が、原発は止めることができるのだから。(終わり)

本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

山崎久隆「大地動乱」と原発の危険な関係(全3回)
〈1〉2024年元日の能登半島地震と志賀原発
〈2〉あまりに楽観的に過ぎる原発の地震対策
〈3〉「原子力防災」は崩壊している

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

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岸田首相は4月訪米し米議会で、「米国が築いてきた国際秩序は新たな挑戦を受け、自由と民主主義が世界中で脅威にさらされている」と述べ、「日本国民は自由の存続を確かなものにするために米国とともにある。自由、民主主義、法の支配を守る。これは日本の国益だ。……これらの価値を守ることは世界中の未来世代のための大義であり、利益でもある」とし、日本がグローバル・パートナーとして米国とともにその価値観にもとづく国際秩序を守っていく決意を述べた。

はたして米国の「自由、民主主義、法の支配を守る」価値観にもとづく国際秩序を守ることが日本の国益なのだろうか。

今日、世界において「自由と民主主義」の価値観で国を否定し覇権をおこなっていくということが通じなくなっている。ウクライナ戦争もロシアはNATOの東方拡張政策に反対し、祖国とロシアの価値観を守る戦いとして位置づけているゆえに勝利していっている。パレスチナ人民のイスラエル占領に反対し国の主権確立をめざす戦いもかならず勝利していくだろう。そして、アジアでは米国の対中新冷戦も国を守り発展させようとする中国人民により破綻するのは明白だ。

ロシアと中国、イスラム圏だけでなく、インド、ブラジル、南アフリカなどもBRICSや上海機構に結束し、米国の古い覇権的秩序に代わる新しい反覇権多極化秩序の確立をめざしている。この流れにASEAN諸国、アフリカ諸国、中南米諸国が合流している。

そのなかで岸田首相だけが「米国は独りではない、日本というパートナーがいる。共に『自由と民主主義』の価値観にもとづく国際秩序を守っていこう」としたのだ。それは時代の潮流に逆行するものであり、米覇権秩序が崩壊することは避けることができない。

にもかかわらず岸田首相の米国の国際秩序を守ろうとするという覚悟は、あくまで日本が米国を盟主として仰ぎ従い、世界の反覇権勢力に敵対していこうとするものだ。結局、米国のいうがままに日本が利用され使い捨てられていくのではと思う。

「日米同盟の新時代」で米国のもとの統合がすすめられれば、日本の政治、軍事、経済、教育文化と地方のすべての領域にわたって米国に統合し米国式におこなうことが強制され、日本という国が名実ともになくなってしまう。

また、今回の日米会談で統合作戦司令部の発足が決められたように、日本は米軍の指揮のもとで「自由と民主主義」を掲げた米国覇権の軍事外交作戦に動員されていくようになる。かつて日本軍国主義が侵略と戦争の道を突き進んで滅んだとしたら、現在、米国覇権の汚らわしい番犬、駒として世界の自国第一主義の潮流に飲み込まれ滅亡する道を歩んでいるといえよう。

その結果、国民はどうなるのか。中国との戦争で戦禍を蒙るだけではないか。国民にとって戦争を絶対望んでいないし、米国のもとに日本が統合されることを望んでいない。平和で豊かで生きがいある生活をもたらす自分たちの国であってほしいと思っているのではないか。

なぜ日本が米国に統合されていき、米軍の尖兵になるのか?

 

赤木志郎(あかぎ・しろう)さん

それは、先に引用した岸田首相が「自由、民主主義、法の支配を守る。これは日本の国益だ」と述べているように、米国の「自由と民主主義」を日本の国益の上においているからだ。いいかえれば、日本は植民地でも傀儡国家でもないが、無条件降伏した国家として日本の上に戦勝国である米国が君臨しているからだ。そしてそこには、米国に従うことによって自己の利益を得ようとする日本の勢力がいる。侵略戦争をおこなってきた旧支配層は他国を隷従させたので自己が従属してもなんとも思わない。そして、米国の覇権にすすんで加担することなる。単なるかいらい売国勢力ではなく従米覇権勢力ともいうべきか。地検特捜部が米国の指示で動く部署だとしたら、財務省や外務省が従属覇権勢力の巣窟と考えれば分かりやすいかもしれない。

しかし、今や戦後日本を占領し日本を従属させてきた時と異なり、米国の力は著しく弱化している。歴代自民党の首相をはじめ多くの政治家、学者、マスコミは「自由と民主主義が日本の国益」「米国の国益が日本の国益だ」と言ってきたが、今回の岸田首相の発言にたいしては大手マスコミでも必ずしも全面賛成ではなく、疑問を呈している。

米国の力が弱化したもとで日本が「同盟者」として先頭に立って頑張りますよというのが岸田首相の言い分だが、実際は米国の尖兵として肉を切られ骨を切られるまで使い捨てられることを甘い言葉で強要されているのだ。もともと米国の国益が日本の国益になりえないが、米国の国益を日本の国益とするその乖離、軋轢、矛盾が耐えられないほど大きいなものになっている。

もはや日本国民にとって米国の国益が日本の国益ではない。日本の国益はあくまで日本国民の利益を守ることであり、日本を米国に統合し米国の尖兵となって対中戦争をおこなうことではない。

日本国民の利益を守る真の国益を擁護するために、「日米同盟新時代」を掲げた米統合と戦争策動に反対する闘いを起こしていくことが問われているのではないかと思っている。

▼赤木志郎(あかぎ・しろう)さん
大阪市立大学法学部中退。高校生の時は民青、大学生のときに社学同。70年赤軍派としてハイジャックで朝鮮に渡る。以来、平壌市に滞在。現在、「アジアの内の日本の会」会員

『一九七〇年 端境期の時代』

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『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

5月12日、大阪・大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」4階ホールに於いて和田央子(なかこ)さん(「福島イノベーションコースト構想」を監視する会)の講演会を開催しました。和田さんのパワーポイントのタイトルは「福島イノベーション・コーストとは被害者置き去りの復興政策と軍民共用産業拠点化」。前日神戸で学習会がありましたが、遠い明石市や三木市からも仲間がかけつけて下さいました。ご参集くださった皆様、どうもありがとうございました。

和田央子さん(写真提供=末田一秀はんげんぱつ新聞編集長)

◆国家的ビッグ・プロジェクトなのにヒッソリ・コッソリ進められる理由

 

和田さんと菅野さん(写真提供=Eiji Etoh)

福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)とは、ホームページによれば「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域などの産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです」とあります。

具体的に進めていきたい主要プロジェクトには、①廃炉 ②ロボット・ドローン ③エネルギー・環境・リサイクル ④農林水産業 ⑤医療関係 ⑥航空宇宙など6部門があり、それらを浜通り地域の15市町村で、税制を優遇させたり、リノベ推進機構の強力な後押しで、多くの企業を進出させていこうというものです。

例えばドローンなどはすでにバンバン飛行訓練させている訳です。参加者からは、「だったら、能登半島地震で被害にあった奥能登の孤立した村の人たちにペットボトルでも持っていかんかい!」と怒りの声があがりました。

私は、イノベ構想が進む浪江町請戸地区には2019年初めて訪れました。請戸地区は津波被害にあい、家屋のほとんどが流され、広大な更地が広がっていました。そこにぽつん、ぽつんと大きな建物が建っていましたが、当時はまだ何が起きているかはしりませんでした。

しかし、イノベ構想はそれ以前から着々と進んでいたようです。のちに、浪江町から関西に「避難」してきた方から「私たちの故郷はもう壊されています」と聞かされました。それがきっかけで、浜通りで何がおきているかを更に知りたくて、昨年7月今野寿美雄さんの案内して頂き、イノベ構想が進むさまをこの目で確かめてきました。「何をやっているんだ!これは!」。それが最初の感想でした。

イノベ構想という国家的なビッグプロジェクトは、街がなくなり、人気がなくなった場所でヒッソリ・コッソリ行われていました。表面的には「震災と原発事故で多大な被害を受けた福島のため」「早く廃炉をやるため」「街を活性化させよう」と威勢の良い、聞こえのいい理由をつけています。

しかし、それらは全て口実、言い訳で、実態はまったく真逆をいく内容です。福島の被災者や世間の皆さんによほど知られたくない、関心を持ってほしくないのでしょう。つまり、そこで行われているのは、私たちにとって良くないこと、知られたらまずいことなのでしょう。

◆戦争のできる国と人づくりを進めるイノベ構想

大震災と原発事故を経験した被災者は、原発は原爆と双子であること、原発を推進することは、戦争への道をひた進むことであること、原発を止めなければいけないことを、身を持って体験されました。しかし、福島の浜通りで起こっていることは、そうした被災者や日本だけではなく、世界の平和を願い、核廃絶、全ての原発を廃炉へと願う人たちの思いに、逆光するものです。

「被災した福島を復興させよう」と謳いながら、軍民一体となって軍事産業、核開発、そして戦争のできうる国と、戦争で闘え、他国の人たちを殺戮できる子どもたちを作ろうともしています。
 
それを明らかにすることが起こりました。先日訪米した岸田首相は、イノベ構想の司令塔とされる「福島国際研究教育機構」(エフレイ・浪江町)と米国パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)と覚書を結ぶ確認をしてきました。

PNNLは、広島、長崎に投下された原爆を研究・製造したマンハッタン計画につながるものです。なぜ、3.11以前に広島、長崎の甚大な原爆被害にあった私たちが、再度、その首謀者とともに歩んでいく必要があるのでしょう。和田さんはこうした日米が進めるエフレイとPNNLの連携強化について「マンハッタン計画とのかかわりを考えれば、PNNLとの連携は日本が核兵器を肯定する。あり得ない。台湾や中国との戦争を想定するアメリカが日本を巻き込みたいだけだ」と懸念を示しています。

福島イノベーション・コースト構想については、これだけでは説明がたりません。和田央子さんのお話の10分の1も説明出来ていません。私もまだまだ学習する必要があります。皆さんもぜひ、被災地の福島で何が起こっているかを知ってください!

なお、「西成青い空カンパ」では久々の講演会でしたが、遠い福島から和田央子さんをお招き出来て、本当によかったです。

これからもイノベ構想を注視していきましょう。イノベ構想に騙されないぞ!!

講演会後はなで行われた親睦会で(写真提供=Eiji Etoh)

和田央子さんを囲んで(写真提供=とばりあかりさん)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

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尾﨑美代子著『日本の冤罪』

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1994年10月、広島県内各地でアジア競技大会が開催されました。あれから、今年で30年になります。

あのアジア大会を前に、平岡敬・広島市長(当時)は、地元テレビ局社長という経済界ご出身ながらも、初めて1991年8月6日の平和宣言で、先の大戦についての加害責任に言及しました。

広島は原爆と言う意味では米国の被害者ですが、一方で、広島の陸軍・呉の海軍が近隣への軍事侵攻の先鋒を担った歴史があります。日中戦争はもちろんのこと、東南アジアでも、マニラの戦いなどで多くの現地の方を殺害しており、とてもではないが「西洋からの解放に協力した」などと胸を張れる状況ではありませんでした。

 

それらの歴史的事実を踏まえた平和宣言に当時、筆者は感動したものでした。謝るべきは謝る。その上で、訴えるべきは訴える。それが今後の平和都市・ヒロシマの在り方だと思ったし、今もその考え方は変わりません。もちろん、平岡氏は経済界ご出身の政治家で「内政面」で必ずしも全面的に支持できるものではありませんが、それでも筆者が尊敬する政治家の一人ではあります。

アジア大会開催中は「一国一館運動」といって、一つの公民館が一つの大会参加国を応援する運動も行われました。その後の長野五輪等にそれは引き継がれました。もちろん、このアジア大会へ向けた過大な設備投資が広島市や広島県の財政を悪化させたのも事実です。その後始末のために、全国以上に、特に広島県政において、新自由主義的な政策が強行されることになったのも事実です。

ただ、それを割り引いても、対等なパートナーとしてアジアを重視するという当時の広島県政、市政のスタンスは筆者的には評価できるものでした。

ところが、そのヒロシマが最近、急速に米国に忖度するHIROSHIMAに変質しています。そのことが、筆者は残念でなりません。

◆安倍晋三さんより酷い! 岸田総理の「米国忖度」

岸田総理は4月前半、訪米し、米議会で演説を行いました。マスコミなどでも報道の通り、米国の議員たちは大歓迎しました。それはそうです。何しろ、米国従属どころか、米国に忖度して、日本国を米国様に差し出しますよ、という内容なのですから。かつての日本の自民党政権は、米国に従属しつつも、面従腹背的なところもあった。安倍晋三さんでも、今にして思えば、岸田さんほどはひどくなかった、と痛感します。

岸田総理は、G7広島サミット以降、特に暴走が酷いものがあります。はっきり申し上げると、岸田総理は、名誉白人扱いされて舞い上がっているのではないでしょうか?もちろん、今は、インド系のスナク英国首相などもいて、米国も独仏英も白人国家とは言えないのですが、少なくとも「旧白人帝国主義国家」とは言えるでしょう。戦前は植民地だったカナダを除けば列強とも言われた。その国々と同列だということに酔っているだけではないのか?もはや、産業面で、中華人民共和国はもちろん、韓国や台湾(中華民国)にも逆転され、「振り向けば朝鮮」という状態です。そうした中で、名誉白人であることでプライドを保っているのではないか?そんな疑念がぬぐえないのです。

総理は2023年5月、G7広島サミットをご自身の選挙区である広島1区で開催。米国など西側の核兵器は防衛用核兵器だとして、正当化する「広島ビジョン」を起草しました。そこには、核兵器の先制不使用すら盛り込まれていなかったのです。いきなり廃絶は無理にせよ、先制不使用で核戦争のリスクをぐっと下げることくらいなぜ提案しないのか?情けない、の一言です。

◆原爆正当化の国会議員に「遺憾の意」さえ出せず

今回の訪米の前には、イスラエルによるガザ虐殺を正当化する文脈で「ヒロシマ・ナガサキのようにしなければならない」と暴言を吐いた米国の国会議員がおられました。その議員も当然、岸田演説を聞いていたはずです。演説の中で、暴言への遺憾の意くらい表明できなかったのか?この点も情けない限りです。

◆G7広島サミットを記念する施設建設、米国式腐敗をはびこらせる湯崎県知事

 

原爆資料館の北側で建設中のG7広島サミット記念施設と筆者

原爆資料館の北側には、ご覧のような施設が建設中です。これは、G7広島サミットを記念する施設ということです。

しかし、G7広島サミットとは、この広島において世界で最初に核攻撃をおこなった米国の核保有は正当化するしろものです。そして、日本を除くG7と、途中でいわば「乱入」してきたゼレンスキーも含めてイスラエルによるガザ虐殺を当初は全面支持してしまったのです。いわば、ガザ虐殺応援団サミットという、広島にとっては黒歴史のサミットです。そのG7広島サミットを持ち上げるとは?!

その上、この場所は原爆資料館のすぐ北側です。修学旅行で原爆資料館に来られた小中高生はこの場所でよく休憩しておられました。その場所も奪ってしまうのが湯崎英彦知事です。

その湯崎知事ですが「内政」面でも米国型の腐敗を広島に持ち込んでしまいました。日本の政治の腐敗もたいがいですが、米国の腐敗も実は一段と酷いものがあります。試験を受かった官僚よりも政治家や政治家が任命した公務員が強い。その政治家のお友達が利権をあさる構造はむしろ日本よりも酷いかもしれません。米国が戦争国家であることとそれは深く関係しています。

湯崎知事が任命した平川前教育長は、まさにその典型です。平川前教育長は、ご自身のご友人のNPOパンゲアのために県費で仕事を造ったり、東京のご友人の赤木かん子をぼろ儲けさせたりするなどしたとして、合計で1億500万円を返すように住民訴訟を起こされています。また、広島地検に官製談合防止法違反、地方自治法違反の被疑事実で告発され、正式に被疑者となっています。そんな平川前教育長の法令違反を湯崎知事は「改革の副作用」と持ち上げています。平川前教育長のやったことは、米国型の腐敗であり、湯崎知事もそうした米国型の腐敗に汚染された知事である、ということです。

業者が賄賂を政治家に渡す「お代官様」「越後屋、お主も悪よのう」的な、旧来の日本的な(?)腐敗はわかりやすいが、こうした米国型の腐敗はわかりにくいのかもしれません。しかし、放置していけば、日本を大きくダメにしていくでしょう。

◆反省無き米国と姉妹協定、いよいよ始動の松井市長

そして、松井一實広島市長。原爆投下の反省も謝罪もない米国政府と、平和記念公園―パールハーバーの姉妹協定を結んでしまいました。そして、その協定が予算化され、この4月から若者のパールハーバー視察などの形で始動しています。

日本政府は、裁判内容が適切かどうかは別として東京裁判で戦争責任者が処罰されています。また、対アジア諸国と言う意味では、いわゆる、「国策を誤り戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって諸国民に多大の損害と苦痛を与えたことを反省し、謝罪を表明する」村山談話をアジア大会の翌念にもあたる1995年に発表しています。その村山談話はその後の自民党内閣にも引き継がれています。

しかし、米国政府は、原爆についてまったく、反省や謝罪はありません。そもそも、世界最強の暴力装置ともいえる米国政府にそれを強制させる主体がなかったとも言えます。

もちろん、広島市の平和行政としては米国政府にことさらに謝罪や反省は求めず「もう誰にも同じ思いをさせたくない」というスタンスを前面に、国際的な支持を取り付ける戦略を取ってきました。それは平和行政としては一概に誤りとは言えないと思います。しかし、露骨に原爆を今でも正当化する国会議員も抱え、政府自体も謝罪や反省もない政府を相手に姉妹協定とは、違和感しかありません。しかも、議会で批准に準ずる手続きもとることもなく、市長のほぼ独断でされたわけです。仲よくするから良いじゃないか、というのもおかしなことです。

すでに自治体レベルで広島市とホノルル市とは姉妹都市協定があり、ホノルル市は平和首長会議にも参加いただいているわけです。地方行政における平和行政の王道は、平和首長会議を軸に各都市が各国政府を突き上げていくということではないでしょうか?

この協定は5年おきに更新期限が来ます。米国政府が原爆についての反省や謝罪などをしない限り、次回は更新しない方向で検討すべきでしょう。

◆広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が虐殺にあっているのに……

そして、広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が今、イスラエルによる大虐殺にあっています。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻はすぐに批判した広島市長は、今回のガザ虐殺についてはだんまりです。

市議会はそれでも停戦を求める決議をしました。だが、肝心の市長がだんまり。米国への忖度ではないか、と疑われても仕方はありません。

◆戦前戦中の廣島から戦後のヒロシマ、そして米国忖度のHIROSHIMAへ

明治から第二次世界大戦敗戦までの戦前戦中は「廣島市」は軍都として、アジアへの出兵の拠点となりました。日清戦争では明治帝、伊藤博文首相、帝国議会が広島に来て、広島は臨時首都となりました。第二次世界大戦敗戦直前には第二総軍がおかれ、本土決戦に備え、大日本帝国の西半分を指揮する司令部がおかれたのです。

敗戦後は、日本国憲法施行を経て、同憲法第95条に基づき、住民投票を経て1949年7月、広島平和記念都市建設法が制定されました。平和都市ヒロシマとして再出発したのです。

しかし、2023年のG7広島サミットにより、広島は米国に忖度するHIROSHIMAとして、米国の核戦略正当化に利用されるようになっているのではないか?また、内政面でも湯崎知事に代表されるように、県民のためではなく、知事のお友達中心の政治になっているのではないか?

◆庶民革命で市民・県民の手に広島を取りもどそう

アジア大会から30年。ますます、おかしな方向へ向かっている広島。ただ、「はだしのゲン」に登場する政治家・鮫島伝次郎のような広島の政治文化の本質が表れているだけかもしれない。

そうなのだろうけれども、そうだと簡単にあきらめるわけにはいかない。広島の政治を、暴走する総理、知事、市長から市民、県民の手に取りもどす。それしかまずはない。

筆者はあきらめずに「ヒロシマ庶民革命」を呼びかけ続けるものです。

広島瀬戸内新聞とさとうしゅういちは「あなたの手に広島を取り戻し広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を呼び掛けています。 「我こそは庶民派の政治家に!」(首長、地方議員、国会議員)、また庶民派の政治家とともに広島を取り戻したいというあなたからのご連絡や記事のご投稿をお待ちしております。
電話番号 090-3171-4437 メール hiroseto2004@yahoo.co.jp

また、さとうしゅういちの政治活動としてのヒロシマ庶民革命に対するご寄付もお待ちしております(日本国籍の方に限る)。
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆津波対策と地盤変状対策は現実に即しているのか

志賀原発では、「能登半島北方沖(石川県想定波源)」と「能登半島西方沖の海底地すべり」による津波の組み合わせを「基準津波」の根拠として選定している。

押し波には基準津波7.1メートルに対して敷地高さ11メートル、防潮堤の高さ4メートルで、合わせて15メートルの高さまで対応できるとしている。

冷却用海水の取り込みは海底トンネルを使って敷地内のピットに送られ最上部は敷地内で防水板により15メートルまでの高さに耐えられるように造られている。内部溢水は15メートルを超えなければ起こらない。

一方、津波は押し波だけでなく引き波もある。基準津波による最低水位はマイナス4.0メートルとして、さらにそれより2.2メートル低い位置に取水口を設けている。

今回の地震では4メートル以上の隆起が確認され、輪島市や珠洲市では海面が下がり海岸線が最大250メートル後退した。

もし、志賀原発において同等以上の隆起が発生した場合、海水トンネルは破壊され、取水口も露出し、海水取り込みができなくなる可能性が高い。

これで、どの程度まで冷却が可能だろうか。海水ポンプによる冷却は使用済燃料プールも、残留熱除去系統も、非常用ディーゼル発電機も、すべてこれに頼っている。特定重大事故等対処施設での発電機は何を冷却材にしているのか明らかにされていないが、海水であれば同じ問題になる。

別途「可搬型代替海水ポンプ(大容量ポンプ車)」も配備しているが、取水場所はピットである。4メートル以上隆起したら結果的に取水不能になる。

淡水貯水槽や1部空冷の発電機や電源車はあるものの、これでいつまでもつのか、今回のように国道など主要道路は地震や津波で使用不可能になり、大規模な救援は1ヶ月以上も止まることを前提として考えなければならない。

◆地震評価は現実に即しているのか

基準地震動は現在1000ガルで申請されている。これは「笹波沖断層帯による地震」および「福浦断層による地震」を想定した評価を行ったという。

現在の基準地震動は「笹波沖断層帯による地震」のみで600ガルだ。また、「震源を特定せず策定する地震動」については2004年の北海道留萌支庁南部地震の観測記録に基づく地震動を考慮しているという。

今回発生した能登半島地震で活動した断層系については十分に考慮されていない。
今回の地震は、現段階では3つないしそれ以上のセグメント(断層区分)が同時または連続的に活動したと分析されている。

志賀原発の地震想定に含まれている「笹波沖(ささなみおき)断層帯」「富来川(とぎがわ)南岸断層」も今回活動した可能性があるが、北陸電力はこの断層系と今回地震を起こした3つの断層系、猿山沖セグメント、輪島沖セグメント、珠洲沖セグメントの連動について否定していた。

なお、この3つのセグメント、合計96キロが動く可能性があることは以前から想定していた。しかし北陸電力は原発から離れていることで安全性に問題はないと判断し評価対象には含めていなかった。

3つまたはそれ以上のセグメントが連動して活動したことは、その南側にある富来川南岸断層から眉丈山(びじょうざん)第2断層や邑知潟(おうちがた)断層帯までの区域においても、複数の断層が連動して活動する可能性が高まったと考えられる。この区域の真ん中に志賀原発がある。

◆志賀原発の耐震評価の実態

新規制基準以降、原発の地震対策は強化されていると考えるならば楽観的に過ぎる。2007年3月25日の能登半島地震(M6.9)では、旧耐震設計審査指針のもとでS1は375ガル、S2は490ガルとして設計された原発で観測された揺れは最大711ガルだった。

この時も1、2号機は停止していた。今回同様、使用済み燃料プールから溢水したが、燃料の冷却は継続されており、重大事故には至らなかった。しかし女川原発に次いで基準地震動を超える揺れに襲われた2例目の原発として大きな問題となった。

兵庫県南部地震による震災を契機に、耐震設計審査指針が過小であるとの批判が高まり、2006年9月に28年ぶりに抜本改訂された。この改訂には志賀原発2号機差し止めの金沢地裁判決(井戸謙一裁判長)が大きく影響している。

当時の原子力安全.保安院は既設の原子力施設についても新指針に適合するかどうかバックチェックを行うよう指示を出した。電力会社等は、活断層調査などを実施して2008年3月に中間評価結果を保安院に報告した。

志賀原発では、それまで認めていなかった活断層を追加認定した結果、基準地震動が600ガルに引き上げられた。

その後の福島第一原発事故を受けて、新規制基準適合性審査の申請で、2014年には2号機で基準地震動を1000ガルに引き上げると申請している。

こうした経緯を知らなければ、今回の地震では約399.3ガルの揺れに対して基準地震動は十分余裕があるから安全と思ってしまうかもしれない。

基準地震動を引き上げたから安全性も高まるのかというと、そうとは言えない。

建設前の地震想定が現実から乖離してきたため、基準となる揺れの大きさが過小評価されてきた。結果的に基準地震動を2.7倍も引き上げざるを得なかった。これは志賀原発に限った話ではない。日本中すべての原発、原子力施設で同様の事態が起きている。そのため耐震補強を行っているが、建屋など取り替えられないところなどでは、安全余裕を食い潰しているに過ぎない。(つづく)

山崎久隆「大地動乱」と原発の危険な関係(全3回)
〈1〉2024年元日の能登半島地震と志賀原発
〈2〉あまりに楽観的に過ぎる原発の地震対策

本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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