◆カルロス・ゴーン逃亡で明けた2020年

2020年最大の話題として、やはり新型コロナウイルス(COVID-19)をはずすわけにはゆかないだろう。ことしはカルロス・ゴーン被告がレバノンへ逃亡した事件で幕を開けたが、あの事件は何年も昔の出来事のようにさえ感じる。思えばあの時期すでに中国から日本へ「先発隊」は飛んできていたのだろう。


◎[参考動画]「ゴーン被告を引き渡さない」レバノン強硬姿勢のワケ(FNN 2020年1月8日)

◆完全に後手に回った日本政府の対策

日本政府の対応は、完全に後手に回った。欧州での感染爆発が伝えられても、当初、国会審議中に議員はおろか閣僚の誰一人としてマスクを着用しておらず、民間人のほうが危機に対しての感応が早かった。どうしようもなくなった安倍政権は「緊急事態宣言」を発することになる。安倍の頭のなかには「うまくゆけば緊急事態宣言の実績を謳いながら、憲法改正案に『緊急事態条項』を潜り込ませることを容易にしよう」とのよこしまな考えがあったことだろう。


◎[参考動画]安倍総理「憲法論争に終止符」憲法改正に強い意欲(ANN 2020年1月17日)

安倍は国民の生命・財産・健康などにはまったく興味はなく、もっぱらみずからの〈成功〉(実は客観的にはまったく成功ではないのだが)を過剰に称揚したがる性癖の強い、低能な政治家だ。第一波が一応の落ち着きを見せた時には「日本モデルが勝利した」などと自画自賛に余念がなかったけれども、安倍の行った他国と異なる政策といえば、子供用としか思えない「アベノマスク」を全戸配布するという、素っ頓狂な行為だけであった。

これとて「中抜き」業者が利益を得る仕組みが稼働することが目論見であり、同様の「中抜き」業者が利益を得る仕組みの政策は「Go To トラベル」にも共通している。感染の可能な限りの抑え込みではなく、世界的なパンデミックに直面しても、相変わらず一部業者の利益誘導を優先していたことを、私たちは忘れてはならない。

「安倍政権を継承する」と明言し登場した菅のみっともなさは、官房長官時代の「ふてぶてしさ」とうってかわって「惨憺」の一言に尽きる。安倍を私は何度も「低能」・「原稿がないとスピーチや答弁ができない」と批判してきたが、菅のみっともなさは、まさしく「安倍の継承」にふさわしい。会食の自粛を呼びかけ、「Go Toトラベル」の一時運用停止を発表した足で、みのもんたや王貞治らとの会食に出かけたニュースを耳にした世論は、さすがに菅の態度に内閣発足以来最低の支持率39%を突きつけた。そして国民あげての批判に対しても、加藤官房長官は「総理はこれまで通り、いろいろな意見を伺うために会食は続けてゆく」と開き直っている。


◎[参考動画]「大声上げない」“成功のカギ”!?海外で注目「日本モデル」(FNN 2020年5月26日)

◆倒錯しているかのような光景 ── 感染拡大に無神経になったひとびと

12月に入り、毎日のように過去最高の感染者・重症者数が報じられる中、都市部での人出は、むしろ増えているそうだ。2011年に福島第一原発が大事故をおこしたあと「直ちに健康に影響はない」と当時官房長官だった枝野が連呼しても、福島はもちろん関東あたりの人々の中には、恐怖や警戒が数年は持続したように感じる。

ところが今次の新型コロナウイルス感染爆発に対しては「緊急事態宣言」が発せられたとき、「ここは別世界ではないか」と思わされるように人影が消え、パチンコ店には「自粛警察」(!)が営業妨害に訪れたあの光景と、まったく異なる様相がわずかあれから半年ほどのいま、12月後半に展開されている。


◎[参考動画]安倍総理 緊急事態宣言の全国拡大で記者会見(テレビ東京 2020年4月17日)

「緊急事態」の響きに市民は誠に忠実であった。当時わたしは自宅から京都のかかりつけのクリニックへ通院のために自家用車で出かけたが、京都市内にはまったくと言ってよいほどに自家用車は走っておらず、もちろん旅行者の姿はなかった。コロナウイルスに対する恐怖はもちろんであるが、日本人のこの徹底的といってもよいほどの「緊急事態宣言」に対する素直な姿勢に、正直言えば、少々気持ち悪さを感じた。

よその国がどうであるかどうか、は問題ではない。日本政府は明らかに感染封じ込めに対して無能であったし、むしろ感染を拡大させる「Go To」なる愚策を「経済政策」と称して実施し、案の定感染は拡大した。様々な業種の方々が、事業を断念したりギリギリの経営状態で踏みとどまっている。ことに個人経営の事業主の方々は想像を絶する苦境に置かれている。その一方でバブル以降株価が最高値を記録している現象は、どこかおかしくはないか。


◎[参考動画]株価一時500円高 バブル後の最高値を2日連続更新(ANN 2020年11月25日)

◆コロナ禍から学ぶものがあるとすれば

つまり、世界に広がる感染拡大の中で、日本においてはまことに不可思議な、本来両立しえない、あるいは背反するはずの諸現象が同時に、あたかも整合性があるかのごとく成立している。国策だけではなく、地方行政や企業の態度から個人の行動に至るまで、論理性や一貫性を大きく欠いた日常が常態化してきているのではないだろうか。

書籍に記録は残っていても、今を生きる人類の誰一人経験したことのない世界的感染拡大の中で、平時には気づくことが難しい特定集団の持つ、行動様式や思考傾向が表出している。むしろその中にこそ分析や研究の対象とすべき「核」のようなものがあるのではないだろうか。2020年われわれが得たものがあるとすればそれに尽きるような気がする。

本年もデジタル鹿砦社通信をご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。困難が予想されますが、2021年が読者の皆様にとって幸多き年となりますよう祈念いたします。


◎[参考動画]全世帯へ布マスク2枚ずつ配布へ 安倍総理発言全編(ANN 2020年4月1日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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首都圏に住んでいると、三方を山に囲まれた地形ゆえにか、列島を襲う天変地異と無縁な気がしてくる。それは阪神地区や中京地区にもいえる、歴史的に平野が都市化に向いていたことの反映なのだろうか。テレビやネットで各地の災難をみるたびに、記憶を新たにしなければならないと思う。

今年も自然の災禍はやってきた。松岡代表の故郷熊本は、球磨川沿いの狭隘な地域が集中豪雨に見舞われた。焼酎の取材で訪れたこともあるが、狭い川沿いに伝統的な家屋があつまる、その意味では良水にめぐまれたところならではの、名酒の産地である。

「わが故郷・熊本が未曾有の豪雨被害に遭いました。4年前の熊本地震は、熊本市を中心とする県内北部での被災でした。今回は人吉市を中心とする球磨川沿いの県内南部の被災でした。亡くなられた皆様に心より追悼申し上げ、被災された皆様方に心よりお見舞い申し上げます。」
「私や鹿砦社はこれまで、壊滅的打撃を受けた15年前の出版弾圧(2005年)、その前の阪神大震災(1995年)など、幾度となく困難に見舞われてきましたが、その都度、皆様方のご支援を賜り運良く乗り越えてまいりました。会社を再興したここ10年は、ヒットが続いた際には、高校の同級生がライフワークとして始めた島唄野外ライブ「琉球の風」はじめ志あるイベントや運動に利益を還元してきました。寺脇研さんの映画や3・11東北大震災(日本赤十字社)などにも100万円単位で寄付しました。中には還元する相手を見誤ったこともありましたが(苦笑)。今はそうもいかなくなりましたが、何卒ご容赦ください。
 そのようにお金に執着しない生き方をしてきた私もそろそろリタイアーを考えないといけない歳になりましたが、こんなことをやってきましたから、建売の23坪の自宅1軒が残ったぐらいで資産も預金も残せませんでした。無計画な中小企業経営者には退職金もありません。3千万円も4千万円も退職金をもらえる公務員が羨ましくないわけではありませんが、小役人的生き方を拒否してこの仕事に入ったわけなので、まあ仕方ありませんね。今のところはまだましなほうでしょう。なにしろ15年前は地獄に落とされ、「もう終わったな」と思ったぐらいですから──。とりとめのない話になりましたが、自分を鼓舞するために書いています。たまにはご容赦ください。ともかく今が踏ん張りどころ、「がまだす」しかありません。」(松岡利康 2020年7月21日)

年末にいたり、ようやく中断となったGoToトラベルキャンペーン。われわれは起動段階から警告を発してきた。

「今回の『Go To トラベル キャンペーン』を総理に提案したのは、その今井秘書官の指揮のもと、新原浩朗経産省産業政策局長だといわれている。この新原局長は内閣官房で日本経済再生総合事務局長代理補の肩書もあわせ持ち、今井氏と働き方改革や教育無償化など、総理肝いりの政策を実現させてきた人物だ。」
「そもそも「Go To トラベル キャンペーン」は、収束後の政策ならぬアイデアだったはずだ。じつはここに、安倍政権の本質が顕われているといえるのだ。危機管理にからっきし弱く、天災や今回のような疫病禍など困難には耐えられない。それゆえに、なるべく明るい話題に飛びつく。早すぎるアイデアの実行に飛びついてしまうのが、安倍総理の抜きがたい体質なのである。」
「もしも安倍政権が想定したとおりに観光が動いたとして、もしもコロナ感染がその観光地で拡散、死者が出たらどうするのだろうか。総理を辞任して済むような話ではないのだ。『Go To トラベル キャンペーン』の予算は1兆7000億円だという。持続化給付金同様に、大手代理店が中抜きをするのだという。そんなことであれば、その巨額予算はただちに観光業界の支援金に回すか、ホテルや旅館を感染者の一時待機施設として確保する。そんなアイデアこそ実現するべきではないか。」(横山茂彦 2020年7月18日)

8月段階で、全国の感染者はまだ1000人越えにすぎなかった、と今にして政府の失政を顧みるしかない。もっと声を大にして、Go To トラベルの危険性を訴えるべきであった。5月、6月と低減、あるいは封殺されていたコロナ感染を、この愚策は反転攻勢させてしまったのだ。そこには利権の構造があった。

「全国の感染者がデイリー1000人を越え、とくにウイルス感染の「密集・密接」が顕著な大都市東京において、いよいよ460人越えの感染者数となった(7月31日)。医療崩壊を怖れるあまり、PCR検査にハードルを課してきた厚労省官僚(医系技官)および国立感染研のテリトリー主義の結果、日本はいよいよウイルス禍のなかで滅亡のきざしを経験しつつある。」
『「週刊文春」によると、この『Go To トラベルキャンペーン』の推進者である二階俊博自民党幹事長をはじめとする自民党の観光立国調査会の役職者37人が、旅行関連業者(ツーリズム産業共同提案体)から4200万円もの政治献金を受け取っていることがわかっている。つまり、こういうことだ。国民をウイルス禍にさらす旅行キャンペーン(旅行費の35%補助、15%のクーポン支給)は、旅行業界からの政治献金(限りなく賄賂に近い)への見返りだということなのである。この『観光立国調査会』という組織は、二階幹事長が最高顧問を務め、会長は二階氏の最側近で知られる林幹雄幹事長代理、事務局長は二階氏と同じ和歌山県選出の鶴保庸介参院議員である。
 そして実際に『Go To トラベルキャンペーン』の事業を1895億円で受託したのが、上述の『ツーリズム産業共同提案体』なる団体である。自民党議員に4200万円を寄付したのも、じつはこの団体を構成する観光関連の14団体なのだ。
 そもそも二階幹事長は観光立国調査会の最高顧問を務めるばかりか、全国旅行業協会(ANTA)の会長でもある。この全国旅行業協会が、上述した観光関連14団体の中枢を構成するのはいうまでもない。二階幹事長はいわば、旅行業界のドンなのである。またもや利権政治、国民の生命を危機に晒しながら利権を追及するという、超の付く政商ぶりを発揮していると言わざるをえない。」
「週刊文春の記事から引用しておこう。『(ツーリズム産業共同提案体)は全国5500社の旅行業者を傘下に収める組織で、そこのトップである二階氏はいわば、”観光族議員”のドン。3月2日にANTAをはじめとする業界関係者が自民党の「観光立国調査会」で、観光業者の経営支援や観光需要の喚起策などを要望したのですが、これに調査会の最高顧問を務める二階氏が「政府に対して、ほとんど命令に近い形で要望したい」と応じた。ここからGo To構想が始まったのです』(自民党関係者)。これこそ、政治の私物化にほかならない。」(横山茂彦 2020年8月3日)

政府の失政は、もっとも困難な生活者たちを直撃する。自治体もまた、独自の利害で動いてしまう。そこには人間への視点がないのだ。

「7月6日、昨年閉鎖されたセンター前に組合のバスを置く釜ヶ崎地域合同労組や、北西角に団結テントを設置する仲間に、『土地明け渡し請求事件』の訴状などが届いた。『出ていけ!』と訴えるのは大阪府だ。コロナ災いが続く中、センターから野宿者を追い出したいのは、都構想とリンクする西成特区構想を前に進めたいがためだ。」
「コロナ対策の特別定額給付金の支給も大阪が一番遅れている。大阪都構想を進める副首都推進局の職員数80名以上に対して、特別定額給付金を担当する市民局の職員数が18名と非常に少ないことも理由の1つだろうが、市民局がどこにあるかも『非公開』にするなど、吉村知事、松井市長のコロナ対策はあまりにいい加減過ぎるからだ。」(尾崎美代子 2020年7月17日)

コロナ禍を押しとどめられない段階で、安倍が政権を投げ出すのは目に見えていた。彼がなしえたのは、わずかに「アベノマスク」なる実効性も実現性もない、小手先のプレゼントだったのだから。これが7月末の、われわれの指摘だった。そして継承者の岸田がつまづく中で、自民党は次善ならぬ「次悪」の選択肢に向かうのだ。これもわれわれの予想どおり、最悪のものとなった。

「新型コロナ防疫対策で、無策と危機管理のなさを露呈した安倍政権が末期であることは、もはや誰の目にも明らかとなっている。朝日新聞が実施した世論調査(2020年5月第2回調査)によれば、支持29%、不支持52%である。安倍総理に批判的な朝日新聞とはいえ、29%という数字は危険水域であろう。
 共同通信が6月17~18日に行った調査では、安倍政権の支持率は44.9%で前回より10.5ポイント低下。不支持の43.1%と拮抗する結果であった(共同の調査では、2012年の第2次安倍政権発足以来、安定して50%以上の支持率を保っていた)。」
「岸田氏の肝煎りとされた新型コロナウイルス対策の『減収世帯への30万円給付』が、公明党が求める一律10万円給付に覆されたことだ。これによって力量不足が露呈し、各種世論調査の『次の首相にふさわしい人』では石破氏に大きく水をあけられたまま、差が縮まる気配もない。総理周辺は「あれでは石破氏に負けてしまう」と危機感を隠さない。」
「そこでにわかに浮上してきたのが時事報が伝えるとおり、菅義偉官房長官の中継ぎ総理・総裁就任説である。」(横山茂彦 2020年7月28日)

カウンターリンチ事件の検証、および鹿砦社に対する名誉棄損裁判である。そして、鹿砦社と特別取材班が懸念してきた、暴力事件の再発である。この事件にとつをとってみても、本件裁判の意義、必要性は明白であった。

◎【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書14】 闘いはまだ終わってはいない!(12) 平気で嘘をつく人たち(5) ~ 香山リカの場合(松岡利康 2020年7月2日)
◎【同15】 リンチ被害者M君を村八分にした「エル金は友達」祭りの首謀者・朴敏用が「あらい商店」再開! 再びしばき隊/カウンターの根城構築か? (松岡利康 2020年7月8日)
◎【同16】「黒田ジャーナル」の流れを汲む『新聞うずみ火』は、リンチ事件を黙過し耳触りの良い記事を掲載する前に、凄惨なリンチ事件に対する見解を明らかにせよ! 「黒田精神」は何処へ?(松岡利康 2020年7月14日)
◎【同17】あらためて〈差別〉について考える──鹿砦社特別取材班キャップで広島原爆被爆二世の田所敏夫さんのカミングアウトに触発されて(松岡利康 2020年8月25日)
◎【同18】〈差別と暴力〉について(松岡利康 2020年8月27日)
◎【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)続報】対李信恵第2訴訟、いよいよ天王山へ! 11・24、本人尋問決定! M君リンチ事件検証・総括本も編集開始! この4年余りのM君支援―真相究明の〈総決算〉を勝ち取ろう!(松岡利康 2020年9月7日)
◎【カウンター大学院生リンチ事件(別称・しばき隊リンチ事件)裁判報告】【前編】 2020年11月24日、鹿砦社対李信恵第2訴訟本人(証人)尋問行われる! 鹿砦社と李信恵らが直接対決! 鹿砦社側「圧倒」!! (鹿砦社特別取材班 2020年11月26日)
◎【カウンター大学院生リンチ事件(別称・しばき隊リンチ事件)裁判報告】【後編】 2020年11月24日、鹿砦社対李信恵第2訴訟本人(証人)尋問行われる! 鹿砦社と李信恵らが直接対決!鹿砦社側「圧倒」!! 終了後の当日夜、傷害事件発生!!(鹿砦社特別取材班 2020年11月27日)
◎《速報》歴史は繰り返すのか ──「M君リンチ事件」は教訓化されていない! 「カウンター/しばき隊」中心メンバー・伊藤大介氏逮捕について(鹿砦社特別取材班 2020年12月10日)

永遠の名作『はだしのゲン』の優れたリアリズムこそ、戦争のあるがままの姿を暴いている。

「テレビや新聞が毎年夏に繰り広げる戦争報道では、広島もしくは長崎の被爆者が『歴史の証人』として登場し、原爆や戦争の悲惨さを語るのが恒例だ。今年も例年通り、そういう報道が散見された。こういう報道も必要ではあるだろうが、残念なのは、被爆者たちが戦時中、自分自身が戦争に対して、どのようなスタンスでいたのかということを語らないことだ。」
「その点、『はだしのゲン』はそういうセンシティブな部分から目を背けない。この作品では、原爆の被害に遭った広島の町でも、戦時中は市民たちが「鬼畜米英」と叫び、バンザイをしながら若者たちを戦場に送り出していたことや、戦争に反対する者たちを「非国民」と呼んで蔑み、みんなで虐めていたことなどが遠慮なく描かれている。」
「『はだしのゲン』がさらに秀逸なのは、他ならぬ主人公の少年・中岡元やその兄たちも戦時中、必ずしも戦争に反対していなかったように描かれていることだ。」「さらに元は他の少年たちから非国民扱いされ、差別される一方で、自分自身も朝鮮人のことを差別する言動を見せている。たとえば、顔見知りの朝鮮人男性と一緒にいるところを他の少年たちにからかわれ、その朝鮮人男性に対し、一緒にいたくないということを直接的に伝えたりするのである。」「テレビや新聞の型どおりの戦争報道とは一線を画していると思うし、後世に残すべき作品だと思う。」(片岡健 2020年8月26日)

安倍辞任はわれわれのみならず、おおかたのメディアが予測してきたところだ。桜を見る会をはじめとする自身の政治疑惑に疲れ、新型コロナ防疫においては、ほとんどなすところのなかったお坊ちゃん宰相にとって、公然と病院検査をアピールする健康不安が最適の言い訳だった。8月末の記事である。

「予想された辞任劇だったが、まずはお疲れ様と申し上げておこう。そして、2期8年8か月におよぶ安倍政権というものが、国民と苦難をともにする指導者集団ではなく、危機において政権を投げ出す無責任な指導者に率いられた集団だったことに思いを致さずにはおれない。二度目の投げ出しである。」
「持病の潰瘍性大腸炎も、上部消化器系ほどではないが、ストレス性の発作疾患である。第1期においては、お友達内閣の辞任連鎖のはてに、参院選挙における敗北というストレスで政権を投げ出さざるをえなかった。今回は明らかに、コロナ防疫の失敗、その困難さゆえのストレスに負けたのだ。」
「世の中が好展開しているうちはいいが、いったん困難に向かうと、たちどころにストレスに負けてしまう。これでは政治家の価値はない。安倍晋三という人物は、まさに政治家の土性骨をもたない、お坊ちゃま政治家だったのである。」

憲法改正、拉致問題の解決という、安倍自身が政権に就くためのスローガンは、むなしく果たされないままだった。

「政権の最重要課題として、安倍総理は『憲法改正』『拉致問題』『北方領土問題』を掲げてきた。」
「このうち憲法改正は、辻本清美の『自衛隊が合憲か否かを、国民投票でやっていいんですか? かれらに国民が「違憲だ」とされてもいいんですか?』という、単純きわまりない質問で頓挫した。」
「そう、自民党の改憲草案および安倍私案は、自衛隊の合憲化にとって諸刃の剣なのである。小心者の安倍は、ついにルビコンを渡れなかった。」
「拉致問題はどうだろう。安倍にとってこの問題は、政権獲得の原動力だったばかりではなく、やはり諸刃の剣だった。いったんは北朝鮮の対日大使をつうじて、二度にわたる調査団を派遣するも、結果が思わしくないとなると調査を凍結(ストックホルム合意を反故)してしまった。」
「拉致された日本人たちが『帰りたくない』と言ったのか、あるいは『全員死亡、未入国』(北朝鮮)が事実だったのか。家族会には何も伝えないまま、北朝鮮が一方的に『調査を中止した』と言いくるめてしまったのだ。日本外務省の調査団は自主的に帰国した。」
「『北朝鮮による拉致問題は、私の内閣で必ず解決いたします。拉致被害者を最後の1人まで取り戻し、全員が家族と抱き合える日まで、私は必ずやり遂げると国民の皆さまにお約束いします』というのは、嘘となったのである。」
「いま、家族会をはじめとする拉致問題支援者たちは、安倍の不実を批判しているという。総理の座を射止めた政治テーマにおいて、かれは総理の座を追われたのかもしれない。」(横山茂彦 2020年8月29日)

女の敵は女、とはよく言ったものだ。

「ジャーナリストの伊藤詩織氏が、予告どおりセカンドレイパーを提訴した。元TBS社員の山口敬之氏から性的暴行を受けた(2020年1月、民訴で認定)伊藤氏は、2017年に実名を明らかにした後、ネット上で事実に基づかない誹謗中傷を受けていたのだ。」
「提訴の要件がみずから書いた『ツイート』ではなく他人のツイートへの『いいね』だけなのであれば、かなり微妙かつ画期的な司法判断が問われることになる。」(横山茂彦 2020年8月24日)

「杉田水脈(みお)衆議院議員の自民党内閣第一部会・内閣第二部会合同会議で発言したとされる。この会議に出席した複数の自民党関係者の証言から、共同通信が配信したものだ。」
「部会の会議では、男女共同参画の来年度要求予算額についての説明が行なわれ、その中で『女性に対する暴力対策』に予算が建てられたことを巡っての発言だったという(本人のブログから)。つまり、女性への暴力について『女性はいくらでも嘘をつける』と、あたかも被害者女性がウソをつくから問題だ、とでも云う被害者バッシングを行なっていたのだ。」
「慧眼な本欄の読者諸賢ならば、すぐに思い起こされる事件があるだろう。安倍政権の御用ライター・山口敬之のレイプ事件を擁護した、杉田の一連の発言。とりわけ、彼女のセカンドレイプに係る訴訟事件である。」
「どうしてこんな低レベルの政治家が生まれたのだろうか。杉田はもともと、日本維新の会から衆議院選挙(2012年)に出馬し、選挙区(兵庫6区)で敗れたものの、比例区(近畿ブロック)で復活当選した議員である。2014年の維新の会の分裂にさいしては次世代の党に参加し、2014年の衆議院選挙で落選している。つまり、いずれも選挙区では落選しているのだ。」「国民にウソをついたのだから、さっさと辞職するべきであろう。そもそも杉田水脈には、国民に選ばれた国会議員の地位にしがみつく正当な理由はないのだから。」(横山茂彦 2020年10月2日)

安倍の後継者は、最悪の法律知らずだった。この男の勘違いを、とことん叩き直さなければならない。引用が少々長くなるが、法理論的な論点をしっかりと把握してほしい。

「おそらく政治の権限というものを、あまりにも単純に考えているのだ。国民の負託を受けた政治権力(総理大臣)は、その任免権において何をやっても許されるのだと。ヒトラーの全権委任法を、21世紀において実行しようとしているかのようだ。」
「日本学術会議の新会員任命(任期3年)について、菅総理は105名のうち6人を任命しないという処置をとった。史上初めてのことである。」(横山茂彦 2020年10月3日)

「ここまでの問題点、および議論を整理しておこう。学術会議法(7条2項)によれば、会員の任命は『学術会議の推薦に基づき、総理大臣が任命する』であるから、総理大臣は『任命しなければならない』とするものだ。つまり『任命』はできても『選任』はできないのだ。これを混同したところに、菅総理の瑕疵がある。」
「この任命とは『内閣総理大臣は国会の指名に基づき、天皇が任命する』『最高裁長官は内閣の指名に基づき、天皇が任命する』(憲法6条)と同様で、『任命者は拒否できない』ということなのだ。」
「行政官たる閣僚が内閣総理大臣に任命されたり、省庁の行政官僚が大臣に任命されるのとは、したがって明確な違いがあるのだ。この独立性の必要は後述するが、学問の自由および学術会議が成立した理由にかかわる問題なのだ。」
「今回の政府側の任命拒否の理由は、一般社会および官僚組織から理解しがちな誤りだともいえる。」
「いわく『内閣府の所轄であり、総理大臣に任命権が存在する』というものだ。さらには、学術会議の会員は『特別公務員であるから、任免は総理大臣が行なう』と、その行政的な性格を述べている(いずれも加藤官房長官)。いずれも誤りである。」
「前回の記事(10月3日)でも明らかにしたとおり、学術会議法第3条には『学術会議は独立して……職務の実現を図る』とある。この独立性は言うまでもなく、学問の独立(憲法23条)に根ざしている。と同時に、科学および学問の戦争協力を反省することこそ、学術会議が発足する契機であったからだ。学術会議の存在意義とは、戦争の反省の上に立った『政治と学問の分離』なのである。」
「したがって、学術会議が政権からの独立性を強調しても、し過ぎるものではない。なぜならば、この独立性こそが、政府への諮問・提言が効果的・有効たりうる担保だからだ。政権の云うままの学識者ばかりであれば、その提言は何ら有意義な内容を持たないことになる。国政の方向性もまた、長期的な展望を欠いたものになるであろう。菅のような権力万能論者には思いもよらないことかもしれないが、政策にとって批判こそが有益なのだ。」
「ここに一般社会での任免権とは明確にちがう、学術会議の独立的な性格があるのだ。なかなか理解しづらいことかもしれない。」
「たとえば、任命(管理)責任が総理にあるのだから、任命の拒否も当然なのではないか。あるいは、税金を使っているのだから総理大臣が任免に責任を持つべきだ。という感想を抱く人もいないではないだろう。だが、そうではないのだ。」
「国政のうち、とりわけ科学技術や国防安保政策など、国家の方向性をめぐるきわめてセンシティブなテーマ、慎重を要する法案などについては、ひろく識者の意見を取り入れることが肝要である。国庫から10億円の予算を割いて、学術会議としての諮問機関を設置するには、その独立性こそが要件である。なぜならば、総理大臣には学術会議会員の任免の専門的な能力がない。そして多様かつ批判的な意見こそが求められるからだ。」(横山茂彦 2020年10月6日)

それにしても、可愛らしいほどのポンコツ総理である。菅を批判する人々が、ちょっと情けない、あまりにもお粗末との感想を漏らすのも理由がある。

◎学術会議問題を収拾できなければ、政治危機をまねく危機感から研究者たちを「扇動者」呼ばわりする菅義偉首相のポンコツ答弁(横山茂彦 2020年11月10日)

◎“GO TO 停止”発表直後に国民の血税で豪遊する菅義偉ポンコツ総理のトホホ晩餐会 ── 言行不一致の末、感染防止「勝負の3週間」の敗北が確定(横山茂彦 2020年12月18日)

部落問題へのアプローチである。けっして「マズイこと」が起きたのではないことを、まずは確認してもらいたいと思います。日本は差別社会であり、部落差別は水や空気のように存在する。がゆえに、議論が必要なのだ。多くの方に議論への参加を参加を呼びかけたい。

◎月刊『紙の爆弾』11月号、本日発売! 9月号の記事に対して解放同盟から「差別を助長する」と指摘された「士農工商ルポライター稼業」について検証記事の連載開始!(松岡利康 2020年10月7日)
◎部落差別とは何なのか 部落の起源および近代における差別構造〈前編〉(横山茂彦 2020年11月12日)
◎部落差別とは何なのか 部落の起源および近代における差別構造〈後編〉(横山茂彦 2020年11月17日)

最後になりましたが、今年も本通信をお読みいただき、ありがとうございました。言葉不足や熟慮の足りなさから、ご批判はもとより御不快をあたえることもあったやに思いますが、しょせんは未熟者の所業とご勘如いただければ幸甚です。みなさまの弥栄を祈念しつつ、筆を置きます。よいお年を。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

2011年3.11いらい、われわれ国民が異様な年として記憶する2020年になりそうだ。コロナ禍発生の年として、日本のみならず人類史に刻まれることだろう。

今年はクルーズ船のコロナ感染に始まった。記事から引用しよう。

「2週間の拘束となっている豪華クルーズ船ダイヤモンドプリンセスの乗客、3,771人(乗員1,000人余をふくむ)から、新たに3人の感染(累計64人)が判明した。濃厚接触者273人のほかに、70歳以上の乗客(1,000人)には、再検査が行なわれているという」
「バカンスのためにクルーズしていたのに、まるで罪人のように船室に拘禁されるとは、乗船している方々に同情するしかない。報道によれば、船内感染を予防するために、船室から出ることも禁止されているという(窓なし船室の客だけデッキに出られる措置となった)。また、香港でも別のクルーズ船(3,000人乗船)に乗客の下船が禁止されている。日本政府は新たなクルーズ船の入港を拒否する方針だという」(横山茂彦 2020年2月9日)

当初、その論調はクルーズ船の乗客たちを「棄民」化する政府の無責任を指弾するものだった。ところがこのクルーズ船には、とんでない秘密があったのだ

「すでにネットでは公然と語られるいっぽうで、マスコミが報じない脱法行為が存在する。いや、すでにその華やかな幕は下りてしまったが、ここ半月ものあいだ繰り返し報じられてきたクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセスに秘められた、とんでもない事実があるのだ」
「外国船籍であり、なおかつ公海上に出るという外洋クルーズによって、可能となっていたのがカジノである。比較的低価格で乗船できるプリンセスクルーズの場合、日本人客にカジノを体験させ、その上がりでペイするという側面もあったのではないか。とりあえず、ダイヤモンド・プリンセスがカジノ船であったことを、ほかならぬプリンセスクルーズのホームページから引用しよう」(横山茂彦 2020年3月9日)

けっきょく、クルーズ船から感染者を降ろすことで、市中に感染症がひろがった。台湾やベトナム、発生地とされる中国武漢、あるいは韓国でPCR検査がほぼ完全に実施されるなか、日本政府は後手を踏んだのである。

「感染の疑いを感じている国民が、PCR検査を受けられないという事態がつづいている。かかりつけの医院から検査機関に連絡をしても、中国武漢・湖北省の旅行歴がなければ受けられない。民間に検査をさせないから、旅行歴の基準を充たさない感染者が重篤に陥っているのだ」
「そしてこの事態に危機感をもった、元感染研の岡田晴恵教授が悲痛な告発をしたことが話題になっている。『これはテリトリー争い』『感染研のOBの一部が、自分たちのデータにしたいから、民間での検査をさせないんです』(テレビ朝日羽鳥慎一モーニングショー)というものだ。本稿の冒頭に、ICTVとWHOが新型コロナの学名を、それぞれ独自に発表しているように、医科学界は縄張り主義がつよい。かれらの功名(権威の獲得)や利権(予算の獲得)が国にとって、何の益をもたらさないのは言うまでもない」(横山茂彦 2020年3月3日)

このあと、春のゴールデンウェークにかけて自粛、さらには緊急事態宣言が発せられ、いったんコロナ禍は沈静化にむかう。

鹿砦社および支援者たちが取り組んできた、カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)がほぼ決着をむかえた。これも2月の記事から引用したい。

「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、巷間では「しばき隊リンチ事件」と呼ばれる、大学院生M君に対するリンチ事件で、ようやく確定判決で認められた賠償金が、金良平氏の代理人に就任した神原元弁護士からM君の代理人大川弁護士に振り込まれました。当初の代理人は別の弁護士でしたが、今年になり、なぜか代理人が交替しましたけど、まずはこの事件の一つの区切りといえる」(鹿砦社特別取材班 2020年2月7日)

そして検証作業が行なわれたので、ふり返ってみることにしたい。

◎【「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書1】朝日新聞・阿久沢悦子記者の蠢きと、「浪花の歌う巨人」趙博の突然の裏切りについて(松岡利康 2020年4月27日)
◎【同2】みんなグルだった!? (松岡利康 2020年5月25日)
◎【同3】闘いはまだ終わってはいない!「唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なう」!(松岡利康 2020年5月28日)
◎【同4】闘いはまだ終わってはいない!(2)私は血の通った一人の人間としてM君リンチ事件(被害者救済・支援と真相究明)に関わってきた(松岡利康 2020年5月30日)
◎【同5】闘いはまだ終わってはいない!(3) 真実を偽造させない!(松岡利康 2020年6月3日)
◎【同6】闘いはまだ終わってはいない!(4) 李信恵「陳述書」を批判する-01(松岡利康 2020年6月5日)
◎【同7】闘いはまだ終わってはいない!(5) 李信恵「陳述書」を批判する-02(松岡利康 2020年6月8日)
◎【同8】闘いはまだ終わってはいない!(6) 李信恵「陳述書」を批判する-03(松岡利康 2020年6月10日)
◎【同9】闘いはまだ終わってはいない!(7) 李信恵「陳述書」を批判する-04(松岡利康 2020年6月12日)
◎【同10】 闘いはまだ終わってはいない!(8) 平気で嘘をつく人たち(松岡利康 2020年6月16日)
◎【同11】 闘いはまだ終わってはいない!(9)平気で嘘をつく人たち(2)~ 野間易通の場合(松岡利康 2020年6月20日)
◎【同12】闘いはまだ終わってはいない!(10)平気で嘘をつく人たち(3)~ 再び李信恵の場合(松岡利康 2020年6月22日)
◎【同13】闘いはまだ終わってはいない!(11) 平気で嘘をつく人たち(4) ~ 師岡康子の場合(松岡利康 2020年6月25日)

安倍政権をゆるがす、総理の犯罪の実態があきらかになってくる。安倍長期政権は極右政権という印象とともに、第一次政権がそうであったように、お友だちを大切にする利権政権でもあった。その典型例が森友・加計学園であり、桜を見る会であろう。単に利権を友だちと分け合うならば実害は少ないが、わたしは間違ったことをしていない、と強弁することで不要な忖度を生み、犠牲者を出してきたのである。3月の記事から引用しよう。

「赤木氏の遺書が明らかになり、その遺書に対して『新たな事実はない』『再調査を行うつもりはない』と開き直る安倍総理。遺族(赤木氏の妻)の『自殺の原因は、安倍総理の発言を佐川理財局長(=当時)が忖度した』という主張に対しては、赤木氏が遺書に書いたわけではない、と切り捨てる安倍総理。そして野党議員の追求をかわす総理のかたわらで、ニヤニヤしながら笑みを見せている麻生財務相。憤死した死者に鞭打つかのような冷酷さに、国民の怒りは頂点に達しているといえよう」
「赤木さんの妻は23日に2度目となるコメントを発表した。そのなかで『怒りに震える』と感情をあらわにしている」
「今日、安倍首相や麻生大臣の答弁を報道などで聞きました。すごく残念で、悲しく、また、怒りに震えています。夫の遺志が完全にないがしろにされていることが許せません。もし夫が生きていたら、悔しくて泣いていると思います」
「新型コロナウイルスが猛威をふるう中、政府および自治体がイベントや花見の自粛を国民に求めている状況下、昭恵夫人はレストランで多人数の花見に興じていたというのだ(「週刊ポスト」)。総理夫人が花見に興じているいっぽうで、国民には外出の自粛を強要し、花見ができる公園を封鎖する政府に、なぜ従わなければならないのだろうか」(横山茂彦 2020年3月31日)

そして安倍総理は、みずからが訴追されることを怖れて、三権分立を掘り崩す暴挙に打って出る。検察人事への介入である。

「これほど法案反対が国民的な運動になったのは、いつ以来だろうか。いうまでもなく、検察定年延期法案(検察庁法改正)に対する批判である」
「ネット上では法案反対の声が1000万ツイートにもおよび、安倍政権への国民の怒りを象徴している。小泉今日子や東ちづるなど、国民的人気の芸能人が反対を訴えることで、コロナ不作為とはまた別の意味で、安倍政権の致命傷となりそうな気配だ。政府は強行採決も辞さない構えだが、そのことが「消えた年金」以来の自民党凋落の予兆となることを、ここに指摘しておこう」
「とくに安倍政権にというよりも、官房長・事務次官時代をつうじて、政権一般に協調的・親和的といわれる黒川弘務検事長の定年延長(閣議決定)を、安倍総理はさりげなくやったつもりだった。森友・加計・桜を見る会という具合に、総理自身の利益供与、公職選挙法違反という刑事訴追の可能性も浮上してくる中、おそらく軽い気持ちでやったのではないか。じっさい、市民運動家や弁護士による安倍総理刑事告発が、複数回にわたって官邸を悩ませてきた」
「しかしそれは、卑怯な戦術として国民の目に映った。国民の目には、官邸が訴追を怖れるあまり、三権分立を侵す検察官の人事権を掌握する挙に出たと映ったのは、あまりにも当然のことだった」
「黒川検事の定年延長をきめた閣議が法的担保のない、行政行為(法解釈の変更)であるのとは違って、停年延長法は検察に対する官邸の優位を決定づける。もはや形式的な任命権。すなわち検察官を内閣の指名により天皇が任命するという、法手続きの域を超えてしまうがゆえだ。まさに訴追権を時の政権が掌握するという、ナチス政権ばりの独裁法(全権委任法)である」
「それゆえに、松尾邦弘元検事総長は『内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更』することが『フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる『朕は国家である』という中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない』とまで安倍政権を批判しているのだ」(横山茂彦 2020年5月17日)

しかし、民意は安倍政権を追い詰めた。国民は訴追逃れの卑劣な法案を葬り去ったのである。(横山茂彦 2020年5月19日)

いっぽう、コロナ禍による影響はスポーツ界にも波及していた。安倍首相の緊急事態宣言後のキックボクシング界の経営難をレポートする。

「キックボクシングに限らず、多くの競技が先行き未定の興行中止や延期となり、ジムが自粛休業された所属選手は試合出場を目指して、今は出来る範囲でひたすら身体が鈍らないように自己練習に明け暮れる日々」
「自粛休業も、賃貸で経営するジムは家賃・光熱費が大きな負担となってくるので、経営難に陥るジムも出てくることが懸念されています」
「昭和50年代後半のキックボクシング低迷期、国内で興行予定が立たない団体と各ジムは、香港でのキックボクシングブームに乗って選手の遠征試合を重ねました。また時代を問わず、選手個人はタイへ修行に出掛け、たとえタイの田舎の無名なリングでも勧められれば臨んで出場していました。でも現在は、タイに入国も労働許可証を持った者のみと制限されている上、どこの国にも遠征することも難しい現状です」(堀田春樹 2020年4月26日)

滋賀医科大学附属病院問題において、不当判決がくだされた。

「4名の患者及びその遺族が、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り、440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)事件の判決言い渡しが、14日大津地裁で15時からおこなわれた」
「西岡前裁判長の転勤にともない、裁判長となった堀部亮一裁判長は『主文、原告らの請求をいずれも却下する』と飄々と短時間で判決言い渡しを終えた。退廷しようとする裁判官に向かい傍聴席から『ナンセンス!』の声が飛んだ」
「この事件の期日には、これまで『患者会』のメンバーが裁判前に集合し、大津駅前で集会を行ったのち傍聴を埋めるのが常であったが、判決日は折からの『新型コロナウイルス』への配慮から、『患者会』は集会や傍聴の呼びかけをおこなわなかった。したがって本来であれば判決を裁判所の外で待ち受けていたであろう、約100名(毎回裁判期日には100人ほどの人が集まっていた)の姿はなく、静かな法廷のなかで冷酷無比な判決言い渡しの声が響いた」(田所敏夫 2020年4月16日)

「紙の爆弾」が創刊15年をむかえた。東西で祝賀パーティーが開かれ、同誌の役割の大きさが確認された。

「15年前の4月7日、『紙の爆弾』は創刊いたしました。2005年のことです。新卒で入社した中川志大(創刊以来の編集長)は、『噂の眞相』休刊(事実上の廃刊)後、約1年間、取次会社に足繁く通い、取得が困難とされる「雑誌コード」を取得し、『紙の爆弾』は創刊いたしました。創刊号巻頭には、悪名高い「〈ペンのテロリスト〉宣言」が掲載され、独立独歩、まさに死滅したジャーナリズムとは違った道を歩み始めました。創刊部数は2万部でした。4月7日、『紙の爆弾』創刊15周年! 創刊直後の出版弾圧を怒りを込めて振り返ると共に、ご支援に感謝いたします!」(松岡利康 2020年4月6日)

コロナ禍のなかで、路上生活者には過酷な日々が続いている。新宿における生活防衛の闘いをのレポートを引用する。

「新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都はネットカフェにも休業を要請した。安定した住居を持たずネットカフェなどで生活する『ネットカフェ難民』は、2018年から2019年にかけての東京都の調べによると約4000人。文字通り路上生活を余儀なくされている人に加え、24時間営業のファストフード店やネットカフェが休業してしまえば、そこで寝泊まりする人々が路上にたたき出されてしまう恐れがあった。そこで、ホームレス支援30団体以上が協力して『新型コロナ災害緊急アクション』を結成。東京都に緊急支援を要請してきた。その結果、施設休業で済む場所を失った人をビジネスホテルに一時滞在できるようになっていった。……中略…… コロナ災害の状況では、就職先が確保されたなどというのは少数で、多くの人は野宿を強いられている可能性がたかい」(2020年林克明 2020年6月26日)

(下半期につづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

昨年来、「東京五輪が終わるまでは死刑執行はないだろう」と言われていたが、その東京五輪自体が無くなってしまい、本稿を書いている時点では、今年は久々に「死刑執行ゼロ」で終わりそうな気配だ。

死刑関連の重要な判断を立て続けに出した大阪高裁

しかし、それでも死刑関連の話題は今年も色々あった。その中から重要な話題トップ5を選定した。

◆今年もあった死刑判決の破棄!

まず5位。淡路島5人殺害事件の平野達彦被告が1月に大阪高裁であった控訴審判決で、第一審裁判員裁判の死刑判決を破棄された話題を挙げておきたい。

筆者は過去、平野被告と面会したり、その裁判員裁判を傍聴したりしていたが、事件の背景に国家的な陰謀があるように訴える平野被告は明らかに重篤な精神障害者だった。今回の控訴審判決は平野被告の完全責任能力を否定し、減刑したものであったから、事実に忠実な判決ではあった。

この種の事件では、これまで裁判官が無理な理屈で強引に被告人の完全責任能力を認め、死刑判決を宣告してきたが、近年は他にも熊谷市の6人殺傷事件など被告人の責任能力が厳格に判断され、死刑が回避されるケースが増えている。

平野被告の死刑が回避されたことによりこの流れがいっそう強まりそうな予感がする。


◎[参考動画]男女5人刺され死亡 兵庫・淡路島(共同通信2015年3月9日)

第4位は、大阪高裁が11月、寝屋川中1男女殺害事件・山田浩二被告の控訴取り下げを有効だと認める決定をしたことだ。山田被告は2018年12月に大阪地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けたのち、自ら控訴を取り下げて死刑を確定させた。さらにその後、弁護人の異議申し立てにより控訴取り下げが無効との決定を受けながら、再び自ら控訴を取り下げていた。

異例の経過をたどり、これで今度こそ山田被告の死刑が確定する公算が大きいが、弁護人が異議を申し立てており、死刑が確定するか否かの土俵際での応酬はもう少し続きそうだ。


◎[参考動画]遺体は不明の中1少女 大阪・高槻の殺人死体遺棄事件(共同通信2015年8月18日)

◆「官邸の守護神」と呼ばれた男とオウム死刑囚大量執行の関係

第3位は、相模原大量殺傷事件の植松聖死刑囚が3月に死刑確定したことだ。裁判が始まる前、植松死刑囚と面会していた筆者は当欄で何度か植松死刑囚の実像を紹介している。知的障害者を大勢殺害したことから、「差別主義の身勝手な殺人犯」として報じられてきたが、実際には、植松死刑囚は自分が正しいことをしていると本心から思っており、要するに善悪の基準が常人と異なる人物だった。

このような植松死刑囚の実像がメディアでは十分に報じられているとは思えず、第3位に選定した。なお、植松死刑囚の実像を知りたい方には、笠倉出版社から出ている拙著『平成監獄面会記』、その漫画化版である『マンガ「獄中面会者物語」』(画・塚原洋一)を参照して頂きたい。


◎[参考動画]植松聖被告に死刑判決(テレビ東京2020年3月16日)


◎[参考動画]【Nスタ】植松聖被告に死刑判決、遺族「19の命を無駄にしない」
(TBS2020年3月16日)

第2位は、安倍政権下で「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀による失脚だ。「それが死刑と何の関係が!?」と思われた方もいそうだが、実は黒川氏は在職中、ある重大な死刑関連の任務に携わっていた。それは、麻原彰晃元死刑囚をはじめとするオウム死刑囚13人の大量執行だ。

2018年にあの大量執行があった際、黒川氏は法務省の事務方トップである事務次官の地位にあった。法務大臣や全国各地の検察、拘置所などと連絡を取り合い、死刑執行全般を取り仕切る役割を務めたとみて間違いない。

この黒川氏が前評判通り、東京高検検事長の次に法務・検察の最高位である検事総長に就任していれば、死刑執行のペースが上がっていたように思われる。黒川氏の失脚は、そういう意味で死刑関連の重要なトピックだ。


◎[参考動画]高検検事長の『定年延長』は安倍政権の“守護神”だから?立憲・本多議員が追及(テレビ東京2020年2月5日)


◎[参考動画]黒川検事長が辞任へ 森大臣「賭博罪にあたる恐れ」(ANN2020年5月21日)

◆来年は次々に死刑執行がある? 帰ってきた「あの人物」

そして第1位は、菅内閣で上川陽子氏が再び法務大臣に就任したことだ。上川氏が法務大臣を務めるのは4回目だが、これまでも在任中は上記のオウム死刑囚13人の死刑を執行したほか、あの有名な闇サイト殺害事件の神田司死刑囚や、犯行時に少年だった市川一家4人殺害事件の関光彦死刑囚らを次々に絞首台に送ってきた。

今年は東京五輪が無くなっても、コロナ禍で拘置所職員に負担をかけたくないためか、このまま死刑執行が一件もないまま年が明けそうだ。そんな状況下、法務大臣に上川氏が再任されたのは、菅義偉首相が「来年はまたどんどん死刑を執行したい」という思惑を抱いていることを窺わせる。

オウム死刑囚を大量執行した上川氏が再び法務大臣に……(法務省HPより)


◎[参考動画]闇サイト事件、死刑執行 名古屋で女性会社員殺害(共同通信 2015年6月25日)


◎[参考動画]元少年の死刑20年ぶり執行 群馬の3人殺害も、上川法相が命令(共同通信2017年12月19日)


◎[参考動画]慎重に執行の準備進めた法務省 大臣が説明会見へ(ANN 2018年7月6日)


◎[参考動画]オウム元幹部の死刑執行で会見する上川陽子法相(朝日新聞2018年7月26日)


◎[参考動画]【菅内閣発足・閣僚記者会見】上川陽子法相(時事通信2020年9月18日)

◎片岡健が選んだ《2020年死刑問題トップ5》と関連記事

【1】菅内閣で上川陽子氏が再び法務大臣に就任
・とんでもないことをするかも内閣 菅政権の発想が浅薄すぎる件について(2020年10月27日 横山茂彦)
・菅義偉政権が推し進めるマイナンバー制度強行普及の不気味 国民ナンバリングこそが独裁権力の本質である(2020年12月9日 横山茂彦) 

【2】安倍政権下で「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務東京高検検事長の賭け麻雀による失脚
・黒川元検事長を訴追せよ! 検察の自浄作用こそ、民主主義を担保する(2020年6月2日 横山茂彦)
・黒川氏は氷山の一角! 検察庁法改正案に反対した松尾邦弘氏をはじめ、検察は天下りでもマスコミとズブズブ(2020年6月17日 片岡健)

【3】相模原大量殺傷事件の植松聖死刑囚が3月に死刑確定
・相模原障害者施設殺傷事件とマスコミ「植松聖は絶対悪だ」と言えるのか?(2018年5月30日 片岡健)
・報道によって別人のように変わる相模原殺傷事件・植松聖被告(2019年8月2日 片岡健)
・相模原殺傷事件裁判:マスコミが伝えない「植松聖に関する重要な情報」(2020年1月30日 片岡建)

【4】大阪高裁が、寝屋川中1男女殺害事件・山田浩二被告の控訴取り下げを有効と認める決定
・寝屋川中1男女殺害事件犯人、面会室や手記で見せた実像(2019年6月21日 片岡健)

【5】淡路島5人殺害事件の平野達彦被告が1月に大阪高裁であった控訴審判決で、第一審裁判員裁判の死刑判決を破棄
・淡路島5人殺害事件へのコメントを控える元祖「集スト被害」殺人犯の見識(2015年4月30日 片岡健)
・《2020年展望・死刑》最大の注目は一審死刑の淡路島5人殺害事件の控訴審判決(2020年1月6日 片岡健)
《死刑破棄殺人犯の実像1》真顔で「政府の陰謀」を訴えた淡路島5人殺害犯(2020年2月6日 片岡健)

◎[カテゴリー]片岡 健 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=26
◎[カテゴリー]司法と冤罪 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=13

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。分冊版の最新第14話では、会津美里町夫婦殺人事件の高橋明彦を取り上げている。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

◆2月28日、興業の中止・延期が始まった

世界中が凍り付いた新型コロナウィルス蔓延。日本においては2月26日に安倍首相(当時)が、スポーツや文化に関するイベントの中止や延期を要請しました。プロボクシングはJBC(一般財団法人日本ボクシングコミッション)より、翌日には28日からの3月31日までの興行を中止または延期とし、各プロモーターに通達しました。

クラスターが発生したルンピニースタジアム(画像は2015年撮影)

キックボクシングは統一管轄機関がないため、自粛要請を受け入れない事態もあり、当初は各イベントによって対応が分かれました。中止が長引く中、8月半ばから観衆50パーセント以下の制限と会場入口に消毒剤の設置、主催者とマスコミ関係者は会場に入る際もコロナ抗体簡易検査や検温が実施され、リングサイド関係者はマスクとフェイスシールド着用が義務付けられる処置を決行。これらは昨年末には誰もが想像し得なかった初体験。規制がやや緩い団体もありますが、この体制は延々と続いています。

これで何とか興行再開となったものの、興行収益は激減。その後はクラウドファンディングや、有料生配信という体制も増えていきました。

石毛慎也はコロナで防衛戦出来ずに返上か(写真は2019年11月28日の獲得時)

これで国内は何とか興行は続くものの、困ったのが日本人ムエタイ殿堂チャンピオン。タイでは3月6日のルンピニースタジアムで集団感染が発生し、タイ政府は3月10日以降、スタジアムやジムの閉鎖に踏み切りました。

2019年11月28日に、現地で日本人9人目の殿堂王座、ラジャダムナンスタジアム・ミドル級王座獲得となった石毛慎也(ライラプス東京北星)の場合、戴冠後初の試合をノンタイトル戦ながら3月15日、ラジャダムナンスタジアムにて予定されていましたが突如中止。

5月に予定されていた初防衛戦も開催見込みが無くなり、興行権を持つプロモーター(シェフブンタム氏)がラジャダムナンスタジアムを離れた為、石毛慎也はこのまま王座返上となる見込みという。

タイは実質軍事政権と言われ、こういう緊急事態の際には統制が取れて規制厳しく、その効果で感染者激減に伴い、7月4日にはオムノーイスタジアムで無観客興行が始まり、ラジャダムナンスタジアムも続いて15日から無観客興行が暫く続きましたが、ルンピニースタジアムは集団感染発生地でもあり、延々閉鎖が続いています。
その後も感染者小康状態が続き、平常に戻りつつあったタイでしたが、12月に入ると22日までにサムット・サコーン県の海産物市場で再びコロナウィルス集団感染が起こったため、政府は再び厳戒態勢。高リスク地域を封鎖した模様。

ムエタイ興行も23日から再び中止に陥った様子です。3月の時は厳戒態勢で感染者が激減した効果もあるので今後もその効果が期待されます。

本来のラジャダムナンスタジアム。ギャンブラーが居てこそ盛り上がる

藤本会長の勇姿。勝次は伊原信一氏のもとで藤本ジムを引き継いだ(2016年12月11日)

◆5月5日、キックボクシング創生期からの最古参、藤本勲会長永眠

コロナに関係なく、今年の一番印象深いのは、5月5日に78歳で永眠された藤本ジム会長の藤本勲氏。経歴はすでに何度か掲載しているので省きますが、1966年に日本初のキックボクシングジムとしてスタートした目黒ジムは1998年に藤本勲氏がその伝統を受継ぎ、その後も多くのチャンピオンを誕生させてきましたが、数年前から患った多臓器の病が悪化し、前年12月8日には勇退式を行ない、その後もジムには顔を出す程度でしたが、やがて継続困難となり、2020年(令和2年)1月30日をもって閉鎖されていました。

前身の野口ジムからの、下目黒の聖地を閉鎖することには、その後継者がいなかったことはまた別事情があり、所属していたチャンピオンと主なランカーはそれぞれが選ぶジムに移り試合出場を果たしています。創生期を知る藤本氏、「もっと話を聞いておけばよかった」「また食事にお誘いしたかった」等、我々から見ればやり残したこと多く、その存在感は改めて大きかったと失望感が漂いました。

◆キック界は「打倒!那須川天心」を中心に回っている

キックボクシング界の中心人物、那須川天心(2016年12月5日)

プロボクシングでは井上尚弥が中心、キックボクシング系では那須川天心が中心に回ったのは今年だけではなく、ここ数年続いていますが、格闘技界の構造もかなり変わってきたもので、今に始まったことではないものの、K-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等のビッグマッチを興すイベント興行会社が徐々に増えつつある時代です。

そこで話題の強者が集約されたトーナメント戦で頂点を極めることが定着。その中のひとつに那須川天心に挑戦する為のトーナメントも行われている現状。そういうイベントに呼ばれるが為のアグレッシブな試合と、目立つ発言を起こし話題を集めた選手が出場、注目されるというのが今の時代でしょう。

◆既存の協会、連盟といった団体の存在感

今後、長き歴史を持つ各団体も存続していくことでしょう。しかしここでチャンピオンになってもすぐ返上する選手が多く、 “元チャンピオン”の肩書でも、そこから落ちることなく通用するキックボクシング界。その先に選手が目指すK-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等があると、既存団体はもうすでに日本タイトルとは言えないローカルタイトルに成り下がっている状況でもあります。

さらには分裂を繰り返し乱立するより、フリーになった方がいいというジムが現れるのもこの時代でしょう。その既存の各団体も、今年はコロナウィルス蔓延による活動が制限された年であり変化は少なかったものの、今後コロナが収束に向かうならば、2021年はまた各団体の在り方に変化が見られるかもしれません。本来あるべき姿が協会や連盟という団体。そこに権威が増すことも各団体が今後、目指さなければならない頂点でしょう。

ビッグイベントは音響、照明、ゲストまで豪華に演出される大舞台

◆11月19日、格闘技振興議員連盟が発足 2021年はどうなるか?

2015年にスポーツ庁が設立し、2020年11月19日には超党派で「格闘技(プロレス・総合格闘技等)振興議員連盟」が発足しました。https://sp.njpw.jp/270525名声有るお方からの理想論としても、「統括するコミッションができたらいい」という発言が出て、それは10年前なら夢物語でも、今後何らかの形で進展するかもしれないのが2021年からの10年間かもしれません。

まずコロナウィルス蔓延が収束に向かわねば興行が儘ならず、ジム運営も規制が掛かれば競技そのものが成り立たなくなるので、2021年はただひたすら以前のような興行が行なえることを目指し、選手が安心して練習と戦いの場が与えられることが先決されるでしょう。

有料生配信、実況・解説は自前の選手とマッチメーカーという新たな挑戦(2020年12月12日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

◆総理の犯罪 ── 経緯

このかんの経緯を確認しておこう。

一昨日、安倍元総理事務所の政治資金規正法違反について、東京地検特捜部は第一公設秘書配川博之(61)の略式起訴に踏みきった(罰金100万円)。この公設秘書は辞職したという(24日安倍会見)。そして事務所の最高責任者である安倍晋三の起訴は、ついに見送られた。

検察による任意の取り調べに対して「わたしは知らなかった」「秘書がやったことなんです」「秘書が勝手にやっていた」(元総理)という、およそ自己責任のない抗弁が、わが国の政界ではまかりとおるのだ。あれほど何度も(118回)確認を求められたのに、ウソをつきとおした人物を第一秘書を雇っていたこと自体、政権の最高責任者にはあるまじき事態である。

かくして、明らかな公職選挙法違反(寄付=買収行為)であるにもかかわらず、検察の方針は安倍元総理に忖度した格好になったわけだ。一説によると、黒川検事長(当時)の定年延長で、検察人事に介入した安倍への意趣返しと見られることで、地検特捜部には安倍起訴に躊躇があったという。

その黒川元検事長は、賭けマージャンの一件で検察審査会が「起訴相当」との議決となった。起訴猶予処分となっていたが、市民感覚では許すまじということであろう。このさい元検事長には後学のためにも、臭いメシを食べることをお勧めしたい。


◎[参考動画]【ノーカット】安倍前総理 「桜を見る会」で記者会見(テレビ東京 2020年12月24日)

◆参加費補填(選挙民買収)は5600万円か?

いっぽう、補填額にも異論が出ている。5年間にわたり、800万円もの参加費補填とされているが、その額は5600万円にもおよぶとの指摘があるのだ。これは安倍を刑事告発した泉沢章弁護士らによるものだ(12月21日共同通信)。

すなわち、告発状を提出した泉沢章弁護士ら(1000人の弁護士)は、今回は15~19年分を対象とし、「補填は一切ないという安倍氏の国会答弁は虚偽だったことが明確になった。幕引きを許すべきではない」としている。ようするに、幕引き出来ないのだ。

第一秘書を人身御供的に辞職と罰金刑に終わらせても、安倍晋三が刑事訴追される余地を残している(検察審査会)ことにおいて、積年の政権私物化の罪業が追及されなければならない。

世論はもとより、マスコミも安倍訴追には積極的だ。政権寄りと評価されてきた八代英輝(TBSひるおび、元裁判官弁護士)ですら、「無罪相当でも、起訴して疑惑を問うことが必要ですよ」「嫌疑なしではなく嫌疑不十分であれば、立件できる証拠が足りないということ。国民に知らせる意味でも起訴すべきだ」「なぜ秘書にだけしか確認されていないのか。これだけの問題になっていることを、というところも含め、ご自身の口で語っていただきたいと思います」というありさまだ。


◎[参考動画]桜前夜祭で安倍前総理が陳謝“説明”は尽くされた?(ANN 2020年12月24日)

◆総選挙の年に、自民を悩ます安倍訴追

かつて、陸山会事件で政治資金規正法違反の共謀に問われた民主党の小沢一郎幹事長(当時)は2010年2月に不起訴となったが、その後に地獄が待っていた。小沢氏を告発した市民団体がこの審査に不服を訴え、4月には「起訴相当」の議決が出ているのだ。検察の再捜査後、同年5月に再び不起訴となるも、10月には検察審査会が2度目の起訴相当の議決を出し、翌年1月に小沢氏は強制起訴されたのだった。

来年は総選挙の年である。元総理の犯罪をめぐって、何度も検察審査会がひらかれ、そのうち一度や二度は起訴相当の決定がなされるはずだ。悪の所業の報いとはいえ、安倍のみならず自民党にとっても地獄のような年になると予告しておこう。


◎[参考動画]小沢氏無罪判決から一夜 再び党内抗争の兆し(ANN 2010年4月27日)

◆安倍の謝罪と弁明

いっぽう、国会の場で118回にわたり虚偽答弁を重ねてきたことは、刑事処分とは別物である。国会での虚偽答弁は、いわば国民に対してウソをついてきたことにほかならないからだ。

衆議院調査局によれば「安倍事務所の関与はない(参加者が支払った)」が70回、ホテルからの「明細書はない」が20回、そして「補填はしていない」が28回だという。

虚偽答弁問題の拡散に、さすがに自民党も安倍元総理への事情聴取に応じざるを得ない趨勢となり、25日の衆議院議運理事会での弁明(答弁に事実ではないことがあった、との弁明)となったものだ。

安倍の政策には全面的に賛意をしめす橋下徹は、関西テレビの番組で「議員辞職せざるをえない」「国会の場であれほどのウソがまかり通ったのだから、辞職しなければ国会が成立しない」「議員や大臣がウソばかりつくのでは、国権の最高機関が地に堕ちる」「ホテル側に電話一本いれれば、確認できていた話」と口をきわめて、安倍の居直りともいえる態度を批判した。これこそ正論であろう。


◎[参考動画]桜を見る会 安倍氏の国会答弁を振り返る(朝日新聞 2020年12月22日)

◆菅総理も同罪である

この「謝罪」を受けて、国会(予算委員会)の場で答弁をせまられるのは菅現総理である。

過去の国会答弁では、野党の「(菅)官房長官の答弁も虚偽答弁になるんですよ」という追及に、

「ドン!(答弁席のテーブルを叩く)わたしの答弁が、なぜ虚偽答弁なのですか?」と気色ばみ、さらにこう断言したのだ。

「わたしの答弁は総理の答弁で、(安倍)総理の答弁は正しい!」

いや、元総理が認めたとおり、答弁は虚偽だったのだ。相応の責任を取ってもらう以外にない。24日段階では「総理の言ったとおりを答弁した」「国民には申し訳ないが、他の政治家の事務所の話でもあり……」などと、開き直りの「謝罪」が行なわれたのだった。自分がどこで発言をしたのか、このトホホ総理はまるでわかっていないのだ。

そのうえで、桜を見る会の疑惑(総理が犯罪の看板に使われたなど)について、再調査するか、という質問には「国会できちんとした質疑答弁が行なわれた」ことを理由に、拒否したのである。虚偽の答弁がなされたことを、つい今しがた謝罪しておきながら、またも居直るのである。国会答弁ではまたもやトホホな答弁、秘書官メモにたよる光景が予想される。

そしてもうひとつ、今回のことで菅総理が狙っているものを指摘しておきたい。すなわち、Go Toキャンペーン中断で二階派の反発を買い、相対的に孤立化を深めている菅総理にとって、安倍晋三の再登板の画策をここで断っておきたいのだ。

その意味で桜を見る会疑惑は、政権基盤の脆弱な菅総理にとって両刃の刃でもあるのだ。みずからも傷つきながら、安倍再登板の芽をなくす。今回の安倍の弁明よりも、年明け国会(1月18日)での菅総理の安部への責任なすりつけという、醜怪なふるまいこそ見ものだと指摘しておこう。

◎[参考動画]「桜を見る会」で菅総理を追及 衆院予算委(テレビ東京 2020年11月25日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)

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◆鉄骨の入っていない橋脚の存在が明らかに! 南海電鉄は安全なのか?

12月18日、大阪地裁(森鍵一裁判長)で釜ヶ崎の住民訴訟が行われた。この裁判では、あいりん総合センター(以下、センター)に入っていた西成労働福祉センターとあいりん職安の仮庁舎を建てた南海電鉄高架下の安全性や、南海電鉄の傘下である辰村建設と随意契約したことの是非などを争っている。

大勢の労働者が集まり、昼間野宿者が休息する、毎日数十万人が利用する南海電鉄の耐震性は大丈夫なのか?

南海電鉄高架下、仮庁舎エリアの北側部分は、橋脚に鋼板をまく耐震補強工事が実施されている

高速道路の橋脚が倒壊するなど未曽有の被害を出した1995年阪神淡路大震災のあと、近畿運輸局は各鉄道会社に対して、既存のRC(鉄筋コンクリート)柱に緊急耐震補強措置を取るよう求めた。南海電鉄は、難波駅や今宮戎駅周辺で、橋脚に鋼板を巻き付ける耐震補強工事を実施、今年に入り仮庁舎エリアの北側萩ノ茶屋駅周辺や、南側新今宮駅周辺などでも同様の工事を実施してきた。しかし何故か、この工事が仮庁舎エリアでは行われていなかった。これについて南海電鉄は裁判で「このエリアはRC柱ではなく、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)柱であるため、緊急耐震補強の対象外だ」と反論し、橋脚の中央に鉄骨が入るSRC柱のイラストを証拠提出していた。

しかし、10月9日、住民訴訟の原告の仲間が専門業者に依頼し、センター仮庁舎の北側エントランスの橋脚6本の非破壊検査を行ったところ、「鉄骨反応は確認できない」との調査結果が報告された。

センターの解体・建て替えは「耐震性に問題がある」として始まったが、そのため仮移転した南海電鉄高架下の橋脚に、南海電鉄が「入っている」と豪語した鉄骨が入っていないとは?!高架下の仮庁舎には毎日大勢の労働者が出入りし、昼間段ボールを敷き寝ている人もいるし、職員も大勢働いている。その上を走行する南海電鉄には、1日数十万人もの利用者がいる。センターの耐震性が問題なら、仮庁舎が入る南海電鉄の耐震性も問題にすべきではないのか!

前回の裁判で原告は、「鉄骨反応は確認できない」とした非破壊検査の調査報告を裁判所に証拠提出し、裁判長も被告の大阪府に「事実を明らかにせよ」と要求していた。

そうして迎えた18日の裁判で、南海電鉄が提出してきたのが、80数年前の南海電鉄建設時の図面らしきものだった。そこで大阪府と南海電鉄は「鉄骨が入っている」とした従来の主張をくつがえし、一部の橋脚には鉄骨は入っていないこと、しかし「(せんだん破壊先行型ではなく)曲げ破壊先行型である」と主張を変えてきた。

南海電鉄高架下の西成労働福祉センター仮庁舎北側入口の橋脚2本に鉄骨が入ってないことが明らかになった

◆税金を使って無駄な引き延ばしを行った南海電鉄と大阪府

この結論を引き出すまでに、何回裁判を開廷してきたことか? どれだけのお金(税金)を費やしてきたことか?これまで南海電鉄は、コロコロ主張を変え、裁判を長引かせ、大阪府もきちんと調査、指導できないままできた。裁判で、原告弁護団の武村二三夫弁護士は、被告弁護団に「南海の主張がころころかわっているが、きちんと確認していないではないか」と厳しく非難した。森鍵裁判長も「曲げ破壊先行型だから、大丈夫というわけではなく、その根拠を示しなさい」と要求した。

実は、この裁判の数日前、仮庁舎の問題の橋脚の「破壊検査」(橋脚に穴を開けて中を確認する)が行われていた。大阪府が行ったか、南海電鉄が行ったかはわからない。中に鉄骨が入っていたかどうか、南海電鉄が裁判で提出した証拠のように、鉄筋の中心部に鉄骨が入っていたかどうかも含めて調査結果を明らかにすべきである。

破壊検査で穴を開け中を検査した跡が残る、南海電鉄高架下の橋脚

「大阪府敗訴」のビラ

◆地元のひとたちを大切にするまちづくりを!

11月4日、中日本高速道路は耐震補強工事で、鉄筋が8本不足するなどの施工不良が判明したとして、工事のやり直しとともに、工事を発注した大島産業に賠償請求している。本来大阪府も、南海電鉄に賠償請求を求める立場なのに、これまでまともに調査を要求してなかったどころか、センターを解体したいがために、なんとかごまかし仮移転を強行してきた。センターを早急に解体したい大阪府と、大阪府の税金で賄われる仮庁舎建設費用でガッポリ儲けたい南海電鉄の利害が相互に合致したためたろう。それもこれも大阪維新の会が進める「まちづくり」で、新今宮駅前の一等地をきれいで広大な更地を確保するためだ。

識者、専門家、地元のNPO団体、労働組合、市民団体、町内会らが集まる同会議で、この土地をどう使うか検討されている。しかし、もともとこの町に住む日雇い労働者、生活保護、年金などで生活する人たち、野宿者らの生活を最優先に考えられているのだろうか? インバウンド頼みで一時的に賑わい儲けても、新型コロナの感染拡大などの非常事態に一気に衰退してしまうようなまちづくりでは、もともといた労働者らの暮らしは守れない。釜ケ崎の持つ魅力を最大限に引き出すまちづくりこそが、今、問われているのだ。

◆「一等地」の確保を最優先する開発主義

先日、大阪市立の高校21校を大阪府に移管する条例案が府議会で可決した。移管時期は2022年4月で、これにより1500億円の資産価値をもつ大阪市の学校や土地などが大阪府に無償譲渡されることになる。大阪都構想の住民投票に負けた大阪維新は、その後もこうしてあの手この手で大阪市から金をむしりとろうとしている。JR新今宮駅前の広大な「一等地」を奪おうとする大阪維新の「西成特区構想」もその1つだ。下のチラシにあるイラストを見てほしい。凸凹のセンターを「耐震性に問題がある」として解体・建て替えようとしているが、更に使い勝手を良くするため、L字内に建つ第二住宅まで解体してどかそうとしている。そこは耐震性に問題はないのに、しかも税金を使って。
 
◆釜ケ崎を破壊していく大阪維新の「成長を止めるな」

南海電鉄を挟んでセンターの反対側に出来たインバウンド向けのおしゃれなホテルは早々と閉鎖された

先日、神戸大学准教授の原口剛さんを講師に学習会を行った。テーマは「開発主義の暴力を解体するために~反五輪、反万博、反ジェントリフィケーション」。2002年小泉内閣によって制定された「都市再生特別措置法」により全国で都市再生特区がつくられ、開発されていく。

重要なのは五輪、万博などメガイベントのために土地の開発があるのではなく、まずは土地の確保が先行的に行われていることだ。2020東京五輪や2025大阪万博ほか様々なメガイベントは、そうした開発を正当化・加速させるために強行されていく。

大阪維新の会は、新今宮駅前のきれいな台形の「一等地」を何が何でも手にいれたいがために、センター周辺の野宿者を立ち退かせようとした。しかし大阪府が提訴した土地明渡断交仮処分は、12月1日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)によって却下され、その後大阪府・吉村知事は期限までに異議申し立て出来ず、決定は確定した(本訴は係争中、次回裁判は、来年2月9日午後14時30分より、大阪地裁202号法廷)。住民訴訟でも、大阪府と南海電鉄は嘘をつきとおすことができない事態に追い込まれている。決して気を抜かず、今後も闘っていこう!大阪維新のなりふり構わぬ、「成長を止めるな」という開発主義を解体するために!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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◆経済政策優先のリベラル派

巷はGo To トラベル中止をめぐって大騒ぎである。今年冬から春にかけての新型コロナウイルス感染第一波では、政府は緊急事態宣言を出して外出・営業自粛を呼びかけた。

しかし政府は、自粛による損失補償をごく一部に限り、多くの人々が経済破綻した。その失政に対する世の中の“空気”を感じ取ったのか、表向きは「経済のことを考えてます」と示すための策がGo To トラベルだったのかもしれない。

大規模な自然災害が今後何年も続くといえるのだから、ここは大規模な財政出動で生活を補償して乗り切るしかないだろう。

こうした基本の必要性を改めて痛感したのは、アメリカ大統領選挙の動きを見てだった。経済活動の制限をしても感染拡大防止優先を主張する民主党バイデン候補に対し、コロナ対策を軽視し経済優先を明らかにしていたのはトランプ大統領だった。

しかし、この両者の差はコロナ対策に限定されるわけではなく、トランプ氏が当選した前回の大統領選においても明らかだった。

単純化しすぎかもしれないが、経済的苦境にあえぐ労働者階級(特に白人労働者層)に対して、リベラル派は「実利」(仕事とカネと生活)を与えられず、むしろ右派の方が経済活性化により生活保障をわずかながら推進させた。

振り返って日本。リベラル派から左派までを主な支持基盤とする政治勢力で、全面的に経済を出した「れいわ新選組」(以下「新選組」)は、「実利」を主要政策の上位にした点で、それまでのリベラル派新党とは明らかに違う。


◎[参考動画]みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか?(れいわ新選組 2020年5月8日)

昨年(2019年)の旗揚げ3ヶ月後の参院選で緊急八策を全面に掲げて新選組はキャンペーンを重ねた

消費税廃止、最低賃金1500円政府補償、奨学金徳政令などが主柱である。

同党発足時は、山本太郎代表がかねてから強く主張して原発廃止などをスローガンにせず、ほとんど経済だけに特化して世論運動を始めたとき、

「なぜ政党名に元号を使うのか!」
「彼が大切にしてきた原発廃止をまっさきに掲げないのはがっかり」
「憲法問題はどうか……」

とリベラル派の中で批判的に見る人も少なくなかった。


◎[参考動画]東京は手遅れ? (れいわ新選組 2020年5月20日)

◆Go to“トラブル”からGo to 消費税廃止へ
 
そして参院選から2か月余り経ち、消費税が8%から10%へ増税されたことにより、昨年末には、リーマンショックを上回るほどの経済的被害が生じた。

そこにコロナ禍が襲い掛かり、多くの人々の生活が脅かされている。今こそ消費税廃止と財政出動による生活補償が必要だ。

新選組のコロナ緊急政策は、昨年の経済八策をベースに、①消費税廃止、②コロナ収束まで一人当たり毎月10万円給付、③コロナを災害指定にする。などが柱だ。

結党時から最大の政策担っている消費税廃止は、突然物価が10%下がり続けることと同じで、シンプルな即効性がある。この恒常的大幅減税で生き延びる個人や事業主により社会経済の再生がしやすくなる。

一丁目一番地の消費税廃止に加え、同党のコロナ対策の骨子のうち、毎月一人当たり10万円給付と災害指定について、どのような考えに基づいているか見てみよう。

一人当たり10万円の給付をコロナ収束まで続ける政策はどうか。問題は財源だが、政府には通貨発行権があるから事態が収束するまでは金を出せ、というのが新選組の基本的考え方だ。

山本太郎代表は、10万円給付の根拠としてインフレ率2%までの財政出同出動はまったく問題ないとしている。

この2%とは、インフレ率が2%までならば政府の債務が増えても大丈夫なラインといえる。この数字は、平成25年(2013年)1月の政府と日銀とで確認されたもの。

参議院調査情報担当室のシミュレーションによると、一人当たり毎月10万円を1年間給付した場合、人口を1億2000万人で計算すると144兆円の財政出動が必要になり、インフレ率は1.215%。

3年続けると1.809%で4年目は1.751%になり、その後は下がる。

月10万円ならインフレ率2%には達しないというのが、新選組の主張だ。たしかに、消費税が廃止されれば物価が10%も下がり、なおかつ月10万円あれば、コロナで倒産廃業した事業主や職を失った労働者は、生活は苦しくても飢餓状態にはならないだろう。


◎[参考動画]【コロナを災害指定せよ!! 2分Ver..】2020年6月29日 自由が丘街宣ダイジェスト(れいわ新選組 2020年7月3日)

◆コロナを災害指定したら家と生活費が補償される可能性

さらに一歩進めて、コロナを災害指定すると、生活者にどのような恩恵があるのか。

れいわ新選組のホームページによると、次のようなことが考えられる。

第1に、災害対策基本法60条3項により、外出禁止が可能になる。加えて63条1項により、当該地域への立ち入りを禁止できるので、いわゆるロックダウンが事実上可能になる。

第2に、そうなれば生活が破綻するので十分な補償が不可欠だ。そのために災害救助法4条を適用。この条文では、仮設住宅の供与、食料飲料水などの供給、生業に必要な資金等の給与もしくは貸与などが定められている。

このような「コロナ災害指定」の考え方の元には、1995年に起きた阪神淡路大震災の経験がある。災害復興制度の充実に取り組んできた兵庫県の弁護士がSNSに災害指定の意見を投稿したことから反響を呼んだのだ。

災害や復興関連の法制度を適用すれば、コロナで生活基盤を破壊された人々を救うことが可能なのである。しかも、新たな法改正は必要なく既存の法律を適用できる。

消費税廃止や、一人ひとりに月10万円給付やコロナ災害指定のほうが、Go to トラベルならぬ“Go to トラブル”よりは、確実ではないだろうか。


◎[参考動画]【街宣】 豊橋駅東口(木)(れいわ新選組 2020年12月17日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

筆者はこれまで当欄で、様々な冤罪の話題について書いてきた。2020年を振り返り、個人的な視点から今年の冤罪の重要な話題トップ5を選定した。

まず5位。やはり、これを挙げておかないわけにはいかないだろう。先日報道があったばかりの免田栄さんの逝去である。

死刑囚としては初めて再審で無罪を勝ち取った免田さん。死刑囚が再審無罪になった前例がない状況の中、独房で絶望することなく無実を訴え続け、その訴えを司法に認めさせたのは偉業だと言っていい。筆者は5年ほど前、免田さんに取材を申し込んだことがあるが、免田さんの体調がすぐれず、実現しなかった。それは残念だが、享年95歳だから大往生だろう。

第4位は、米子市のラブホテル支配人殺害事件の第2次裁判員裁判で石田美実さんが無期懲役の判決を受けたことだ。

石田さんは2016年に鳥取地裁の裁判員裁判で懲役18年の判決を受けたのち、翌2017年に広島高裁松江支部の控訴審で逆転無罪を勝ち取った。しかし検察が最高裁に上告したところ、最高裁に無罪判決を破棄され、その後に広島高裁で審理を鳥取地裁に差し戻す判決を受け、またイチから裁判員裁判をやり直す羽目になっていた。

この事件はすでに当欄で何度か紹介しているので、ここでは事件の内容には触れない。しかし、一般市民が一度受けた無罪判決を取り消され、延々と被告人の立場に留め置かれるのは、検察官も上訴ができる日本の裁判制度特有の問題だ。来年1月末に発売される雑誌『冤罪File』2021年冬号で第2次裁判員裁判の詳細を報告しているので、関心のある方は参照して頂きたい。

第3位は、2005年に栃木県旧今市市で小1の女児が殺害された「今市事件」で、勝又拓哉さんの無期懲役判決が確定したことだ。

この事件は冤罪を疑う声が非常に多いが、勝又さんが実際に冤罪であり、無実であることは当欄で繰り返し報告してきた通りだ。

支援者が多数存在し、勝又さんへのサポート体制は万全だが、勝又さんのお母さんは体調が良くないこともあり、少しでも早く勝又さんの濡れ衣が晴れて欲しい。

第2位は、やはり当欄で繰り返し取り上げてきた湖東記念病院事件の再審で、西山美香さんが無罪判決を受けたことだ。

過去記事を検索してみたところ、筆者が当欄で初めて西山さんが冤罪であることを伝えたのは、2012年のことだった。あれからもう8年になるのか……と感慨深いものがある。

もっとも、西山さんの恋心につけ込み、虚偽の自白をさせて冤罪に貶めた滋賀県警の山本誠刑事がその後、県警内で出世しているなど、この事件にはまだ放置できない問題が色々ある。今後も事件に関する動きが何かあれば、当欄で報告したいと思う。

実家でくつろぐ西山さん。今年、ついに再審無罪を勝ち取った


◎[参考動画]“事件性の証拠ない”元看護助手に無罪(テレビ東京 2020年3月31日)

そして最後に第1位は…。

これはもう完全に個人的な思いから、あの有名冤罪事件・布川事件の桜井昌司さんが国と県に約1億9000万円の国家賠償を請求した訴訟の控訴審が12月15日、東京高裁で結審したことにさせて頂いた。

一審判決では国と県が約7600万円の国家賠償を命じられているが、2度目の判決は来年6月25日に出るという。

2014年、広島であった冤罪被害者・守大助さんの支援者集会で話す桜井さん

なぜ、この事件を1位に取り上げたかというと、桜井さんが現在、ガンで闘病中で、余命宣告も受けているからだ。ご本人は回復に向かっていると公言しているが、予断を許さない状況であることは間違いない。桜井さんは自分自身の冤罪を晴らすだけでなく、様々な冤罪被害者に手を差し伸べてきた人で、筆者自身、取材でお世話になったこともある。

来年6月の判決が、長年冤罪闘ってきた「生きたレジェンド」桜井さんの努力に報いるものになって欲しいと願い、この件を第1位とした。


◎[参考動画]『塀の中の白い花~ほんとに何もやってません』(FMたちかわ/84.4MHz)で2020/11/2と11/16の2回に渡って放送した、桜井昌司さんへのインタビュー全編(冤罪犠牲者の会)

◎片岡健が選んだ《2020年冤罪問題トップ5》と関連記事

【1】布川事件と桜井昌司さん
・冤罪のない社会をめざして 布川事件冤罪被害者、桜井昌司さんインタビュー
〈1〉(2019年1月16日尾崎美代子)
〈2〉(2019年1月18日尾崎美代子)
〈3〉(2019年1月22日尾崎美代子)
・布川事件冤罪コンビ「ショージとタカオ」のショージさん、大阪トークライブ──シャバに出てきて23年、「桜井昌司」で本当に良かった!
〈前編〉(2020年4月14日尾崎美代子)
〈後編〉(2020年4月17日尾崎美代子)

【2】湖東記念病院事件と西山美香さん
・刑事への好意につけこまれた女性冤罪被害者が2度目の再審請求(2012年10月8日 片岡健)
・滋賀患者死亡事件 西山美香さんを冤罪に貶めた滋賀県警・山本誠刑事の余罪(2018年2月16日片岡健)
・湖東記念病院事件・再審開始決定を勝ち取った井戸謙一弁護士の思想と行動(2019年3月21日田所敏夫)
・中日新聞が報じた西山美香さんの作文疑惑調書、元凶はやはり山本誠刑事か(2019年6月12日片岡健)
・組織ぐるみで西山美香さんを「殺人犯」に仕立てた滋賀県警は責任をとれ! 湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんに1日も早く無罪判決を!(2019年6月20日尾崎美代子)
・《湖東記念病院事件》冤罪を作った滋賀県警・山本誠刑事 法廷で自白していた不当捜査への「上司と検事」の関与(2020年4月29日片岡健)

【3】今市事件と勝又拓哉さん
・今市女児殺害事件をめぐる冤罪疑惑──見過ごされた自白調書の明白なウソ(2017年4月6日片岡健)
・《殺人現場探訪08》今市女児殺害事件 自白の「嘘」を如実に示すわいせつ現場(2017年7月24日片岡健)
・栃木県警の「今市事件証拠遺棄」を否定した栃木県行政不服審査会の不見識(2018年4月2日片岡健)
・《殺人事件秘話13》今市事件:隠ぺいされた被告人以外の人物の「不審車両」(2019年1月23日片岡健)
・検証・冤罪疑われる今市事件の自白調書
【上】嘘を見抜くポイントは漫画と服装(2019年7月30日片岡健)
【中】自宅と現場を見れば嘘は一目瞭然(2019年8月31日片岡健)
【下】犯行の詳細を語れなかった被告人(2019年9月6日片岡健)
・冤罪説根強い今市事件 上告棄却の勝又拓哉氏が手記に綴った「再審無罪への決意」(2020年3月27日片岡健)

【4】米子市ラブホテル支配人殺害事件と石田美実さん
・無罪判決を受けた被告人が勾留される理不尽 ―― 米子ラブホテル殺害事件(2018年12月27日)

【5】免田事件と免田栄さん

◎[カテゴリー]片岡 健 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=26
◎[カテゴリー]司法と冤罪 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=13

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。分冊版の最新第14話では、会津美里町夫婦殺人事件の高橋明彦を取り上げている。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

11月の秋篠宮(皇嗣殿下)が「長女(眞子内親王)の結婚について、それを認めるのは憲法にもあり、親としても認めるべき」という発言によって、眞子内親王と小室圭氏の婚姻は事実上、皇室によって認められた。

と同時に、週刊誌による小室母子バッシングが百家争鳴といったありさまだ。小室家はけしからん、眞子さま(300円カレー、旧型パソコン)にくらべても贅沢(キャビアのパスタ)をしている。ほかにも900万円の借金がある。三菱東京UFJ銀行勤務時代に、書類の紛失を女性行員の責任にした。はては、眞子内親王の「秘密」を知っている(暴露する可能性がある)などと。

ここにこそ、生身の個人を「象徴」にいただく憲法第1条、戦後天皇制の矛盾が露呈し始めたというべきであろう。

かつて、眞子内親王と小室圭氏の婚約話が俎上にのぼったとき、宮内庁は以下の祝辞を、そのホームページに掲載したものだ。

「小室圭氏は、眞子内親王殿下のご結婚の相手にふさわしい誠に立派な方であり、本日お二方のご婚約がご内定になりましたことは、私どもにとりましても喜びに堪えないところでございます。この度のご婚約ご内定に当たり、お二方の末永いお幸せをお祈りいたします」

ところが今、宮内庁は定例記者会見で、小室圭氏に対して異例の「苦言」を呈しているのだ(西村泰彦長官、12月10日)。

「ご結婚に向けて説明をしていくことにより、批判に対して答えていけることになるのではないか」「説明責任を果たすべき方が果たしていくことが極めて重要だ」

この発言自体は、秋篠宮が11月の会見で、「実際に結婚するという段階になったら、もちろん、今までの経緯とかそういうことも含めてきちんと話すということは、私は大事なことだと思っています」と小室氏に説明を求めたことを、補完するものといえよう。

しかし、2017年の婚約内定まで、5年間という長い春をへてきた二人にとって、母親の借金問題(400万円)が、青天の霹靂であったことは自明であろう。本人ではなく母親の過去をほじくり出され、借金を背負った家庭の子は結婚できない、ということにほかならない。

いや、皇族の結婚は「普通の家庭」の問題ではない。と、天皇制を護持する人々は言う。そうであるならば、皇族は国民ではなく、したがって恋愛の自由はないのだと明言すればよいではないか。自民党の天皇制護持派は、実際にそう明言している。


◎[参考動画]宮内庁長官「小室さん側が説明責任果たすべき」(ANN 2020年12月10日)

◆やはり国民ではない皇族

こんどは自民党、伊吹文明元衆議院議長の「苦言」である。

「(秋篠宮の)父親としての娘に対する愛情と、皇嗣という者のお子様である者にかかってくるノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)としての行動と両方の間の、相剋のような、つらい立場に皇嗣殿下(秋篠宮)はあられるんだなと思った」
などと、秋篠宮の「苦渋」をおもんぱかりながら。かえす刀で、小室氏に「苦言」を呈するのだ。

「小室さんは週刊誌にいろいろ書かれる前に、やはり皇嗣殿下がおっしゃってるようなご説明を国民にしっかりとされて、そして国民の祝福の上に、ご結婚にならないといけないんじゃないか」

さらに伊吹文明は、法律論に踏み込んで、二人の結婚そのものに疑義をとなえる。
「国民の要件を定めている法律からすると、皇族方は、人間であられて、そして、大和民族・日本民族の1人であられて、さらに、日本国と日本国民の統合の象徴というお立場であるが、法律的には日本国民ではあられない」

皇族は日本人であるが、国民ではないと明言するのだ。だが、皇族が国民ではないことと、国民としての権利がないことは、果たして同じなのだろうか。

それは投票権や納税の義務などという、付加的な権利義務関係ではない。人間としての生存権にかかる婚姻。すなわち人間の尊厳にかかわることなのである。それをもって、憲法は国民の権利を「基本的人権」として、第一義に謳っているのだ。国民ではない者は、それでは人間ではないのか、と問い返してみることだ。

「眞子さまと小室圭さんの結婚等について、結婚は両性の合意であるとか、幸福の追求は基本的な権利であるとかいうことをマスコミがいろいろ書いているが、法的にはちょっと違う」

よくぞ言った、と評価しておこう。皇族には人間的な尊厳や基本的人権はない、と言っているのにひとしい。伊吹文明において、皇族は人間ではないのだ。


◎[参考動画]伊吹元衆院議長が小室圭さんに異例の苦言(FNN 2020年12月3日)

◆納采の儀と1億4000万円問題

けっきょく、秋篠宮の「婚約と結婚はちがいますから」という暗喩によって、宮内庁および自民党は小室家にたいして、謝金をチャラにしないと1億4000万円の一時金はとんでもない、と世論に訴えているのだ。国民的な合意が得られない、税金を使うのだから。という理屈で、象徴天皇制の矛盾を取り繕う。国民が祝福しない(と思う人によって)、その婚姻は不可能とされる。そんな人道にもとる不合理、人権侵害があるだろうか?

これまでに、皇籍離脱による一時金1億5000万円前後が、支払われなかった前例はない。じつは上記の秋篠宮発言も、単に婚約(納采の儀)と結婚という段階を追ってのものである。そこを見誤ると、とんでもない事態が生起するだろう。

眞子内親王において自主的に皇籍離脱して、恋のためにすべてを捨てる。ふたりが、いわば駆け落ち的な婚姻に至った場合、もはや皇室典範も象徴天皇制もガタガタになってしまう。一時金が宙に浮くはずはないのだから、祝福しない国民は皇室に「No!」を突き付けるのだろうか。今回の婚約問題は、そこまで根底的な内容をはらんでいるのだ。

かつて、大正天皇は女官(実質的な側室)を遠ざけ、昭和天皇は女官制度そのものを廃止した。そして平成天皇は「自由恋愛形式」の婚姻をして、教育も核家族的なもの(宮中にて皇子傅育)を採用した。秋篠宮に至っては、ほぼ出来ちゃった婚で、兄よりも先に結婚という暴挙。令和天皇もまた、自分の意志を貫いてエリート官僚と結婚した。男性皇族においては三笠宮寬仁親王のごとく、皇族としての制約を嫌って皇籍離脱発言した人物もいる。

いまや皇室の民主化・自由化が果てしなく旧来の天皇制を掘り崩し、新たな別物に変貌してゆくことを、国民的な議論をつうじて実現できる可能性が高まってきたと、結論しておこう。


◎[参考動画]「皇女」とは…皇室研究者に聞く(テレビ東京 2020年12月11日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

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