去る5月30日、中日新聞のホームページで次のような記事が配信された。

滋賀・呼吸器事件、調書作文か
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019053002000078.html

この記事は、冤罪被害者・西山美香さん(39)の再審が近く始まる「湖東記念病院事件」について、報じたものだ。中日新聞本紙では、同日の朝刊一面に掲載されたという。この報道をうけ、私が調べを進めたところ、この「調書作文」の疑惑についても、あの滋賀県警の「問題刑事」が元凶だった疑いが浮かび上がってきた。

◆中日新聞では、疑惑の検察官が実名で登場していたが・・・

確定判決によると、西山さんは2003年、看護助手として勤務していた滋賀県の湖東記念病院で、寝たきりの男性入院患者の人工呼吸器のチューブを外し、殺害したとされ、懲役12年が確定し、服役した。しかし、弁護団の調査により、男性入院患者は「致死性不整脈」で亡くなった可能性が高いと判明し、今年3月に最高裁で再審開始が決定していた。

記事などによると、男性入院患者の人工呼吸器は、チューブが外れて1分が経つとアラームが鳴るが、西山さんの供述調書では、チューブを外してから1分を「数え」、1分が経過する前にアラームの消音ボタンを押し、誰にも気づかれずに犯行を完遂したように記載されていた。しかし、軽度の知的障害と発達障害のある西山さんは、「私は六十まで数えられない」と同紙と弁護団に告白したという。

西山さんは「私は頭の中では、二十までしか数えられません。絶対自分からは、言っていません。裁判でも、きちんと言います」とも語っているそうで、この主張が事実なら、たしかに調書は刑事や検察官による「作文」だとみるほかない。検察官調書を作成した早川幸延検事(現福島地検検事正)は同紙の取材に対し、地検広報を通じ、「コメントはできません」と回答したという。

では、この調書に刑事の関与はなかったのか。同紙の報道をうけ、私が調べてみたところ、またしても名前が浮かび上がってきたのが、あの滋賀県警の山本誠刑事だ。

当欄で過去にもお伝えした通り、山本刑事といえば、脅迫や偽計を駆使した取り調べにより、西山さんを虚偽の自白に追い込んだ疑いがあるが、それだけではない。窃盗の容疑で誤認逮捕した無実の男性に対して取り調べ中に暴行し、特別公務員暴行陵虐容疑で書類送検された余罪もある問題刑事だ。

◆「余罪」もある山本刑事

ここに掲載した調書は、その山本刑事が平成16年(2004年)7月22日に作成したした西山さんの警察官調書だ。このうち、次の部分を見て頂きたい(引用者注 ■は、原本では、男性入院患者の名前が書かれていた部分)。

山本刑事が作成した問題の調書。黒塗りは、男性入院患者の名前が書かれていた部分

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■さんが死んでいく様子を見届けながら
頭の中で次にアラームが鳴り出す
1分まで時間

1、2、3、4
と数え続け、1分前になる前に消音ボタンを
押して、これを2回繰り返し、■さんが
大きく目を
ギョロッ
と見開いた状態で、白目をむき(後略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

西山さんが頭の中で「六十」まで数えられないというのが本当なら、この調書は、山本刑事が作文したことを疑わざるを得ない内容だ。裁判記録によると、中日新聞の記事に出てきた早川検事の検察官調書は、作成日付が平成16年(2004年)7月25日で、山本刑事の作成した警察官調書より3日遅い。西山さんの供述内容が「作文」だった場合、原作者は山本刑事である疑いが濃厚だ。

山本刑事の悪事については、当欄ではすでに繰り返し伝えているので、知らない人は後掲の関連記事をご覧頂きたい。私は、西山さんの再審では、無罪という公正な結果が出るだけでなく、山本刑事の疑惑もきちんと解明されて欲しいと改めて思わされた。

西山さんに対する山本刑事の取り調べが行われた大津警察署

なお、6月16日(日)には、午後2時より大阪・大国町の「社会福祉法人ピースクラブ」の4階で、西山美香さんを囲む会が開かれ、主任弁護人の井戸謙一弁護士も講演を行うという。詳細は、以下のURLで。
https://twitter.com/hanamama58/status/1137904900724051968

6月16日(日)午後2時より大阪・大国町の「社会福祉法人ピースクラブ」にて冤罪被害者西山美香さん囲む会を開催。詳細はこの画像をクリック。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)。

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