大阪府と大阪市が大阪湾の人工島「夢洲」に誘致を計画しているカジノを含む統合型リゾ─ト施設(IR)の是非を問う住民投票を求める署名が6月6日、各市町村の選挙管理委員会に提出された。

6月6日府内の市区町村で一斉に署名が提出された。写真は午後1時30分、西成区役所選挙管理委員会で

地方自治法によれば、府内有権者の50分の1以上の署名数が集まれば、知事は住民投票条例の制定を府議会に求めなくてはならない。署名活動を行った市民団体によれば、3月25日から5月25日までに集まった署名は、必要法定数約14万6500筆を大きく上回る20万8552筆に達したという。

今後、選挙管理委員会の審査で署名が「有効」と認められれば、吉村知事は住民投票実施の条例案を府議会に提出しなければならない。

しかし、吉村知事は6日の会見で「大阪のIRについては、公募をして事業者が決定しているし、府議会でも議論を行い、誘致することを議決している。住民投票を行う必要はないと考えているが、反対派の意見も聞いて進めていくことが重要だ」などと発言した。

都構想では、税金100億円を投入した住民投票を、2度も実施してきたくせに、カジノの是非には住民の声は必要なしと、いとも簡単に切り捨てるようとする大阪維新の態度に、「20万人」は黙っていないだろう。


◎[参考動画]【集まった署名“20万”筆】大阪・IR事業“カジノ”是非の住民投票求め署名を提出 吉村知事「今の時点で住民投票は必要ない」「依存症対策を正面から対応していく」(ABCテレビニュース 2022年6月6日)

◆嘘とはったりの大阪カジノ構想

吉村知事がいうように、大阪府は議会で可決した「区域整備計画」を4月、国に申請し、受理されている。しかし、それまでの経緯には、不透明かつ不当な問題が山積していた。筆者も、地元・西成区の受任者となり、署名活動を行ったり、桜田照雄・阪南大教授、原口剛・神戸大准教授を招いて学習会を行ってきた。2人の講師から、カジノの様々な問題点を学び、その場で受任者になった人も多かった。私の住む西成区で進む「西成特区構想」と同様、カジノ構想も、一部の維新に繋がる人たちなどが利権を貪る構想だとの思いが一層強まった。

松井市長は「カジノには税金を一切使いません」(2016年12月)、「事業者がお金を払って建ててくれる。府は家賃を貰うだけ」(20年10月23日)、吉村知事は「IRは民接民営事業なので、公でお金をだすものではない」(2021年7月21日)などと、「税金は一切使わない」としていたが、昨年12月、夢洲の土壌改良対策に約800億円の税金を投入することが判明、しかも、今後、液状化、地盤沈下対策費用は青天井に膨らむと予測されるのだ。

署名を開始した当初は「カジノ?」と、その計画すら知らない人が多かった。それだけ、こっそり進められてきたからだ。折り返し地点の4月25日、西成区民センタ─で開催された「受任者パワ─アップの集い」で、議会で計画を否決させた和歌山で署名活動を行った人たちから、「和歌山ではすぐにメディアが動いてくれたことが大きな勝因のひとつ」とお聞きし、メディアが全く動かない大阪では無理かもと悲観した。

「庶民のお金でカジノを呼ぶな」

しかし、その後事態は大きく動き出した。「あんたら、パチンコ屋にも反対せえや」などと言われ「いや、パチンコ屋はパチンコ業者が出資してますが、何故私らの税金使って博打場作るんですか?」となり、「税金使うんか?」「ええ、一人当たりにしたら約10万ですわ」「10万円だったら給付金に回して欲しいわ」などの声も上がった。

「秋には決まると吉村がテレビで言うてたで?」「決めるのは吉村ではない、国ですよ」。「海外の金持ちが来て、どーんと使ってくれるがな?」「ターゲットは日本人。しかも、世界中のビップ客を連れてくる『ジャンケット業者』は日本のカジノに入れません」「まあ、でもいつかは儲かるんやろ?」「ええ、黒字になるのは54年後ですが…」等々、あちこちで議論が深まった。

桜田教授が仰る通り、カジノ構想が具体性を帯びるなか、次々と湧き上がる疑問を解くうちに、誰の目にも嘘とはったりの大阪カジノはアカンとわかってきた。そして「カジノで大阪がつぶれる」がオ─バ─な表現でもハッタリでないことも。

西成の三角公園での炊き出しのあと、次から次へと署名する労働者

◆詭弁、すり替えで必死の吉村・松井に、更なるパンチを!

20万人の署名が集まったことを受けて、吉村知事はこう語った。「誘致するかどうかの住民投票をする必要はないと思いますが、反対派の意見を聞いて進めていくことが重要だと思っています。反対派の方の意見の中心的なところは依存症対策のところだと思います。なのでこの依存症対策について正面から対応していく」。

吉村知事のいうように、依存症対策は重要だ。1人の依存症患者の周囲には約6名の犠牲者が生まれるという。この依存症対策費用及び依存症患者が生む社会的損失の大きさを考えても、カジノは辞めるべきだ。しかも、決めるのは吉村知事、アンタではない、認可するかどうかを決める国(国土交通省)だ。

その国土交通省に、6月2日、「カジノに反対する大阪連絡会」のメンバ─らが、「カジノ誘致計画を認可するな」と申し入れを行った。「大阪のカジノ申請には住民合意がない」「認定計画の経済効果は過大ではないか」「ギャンブル依存症の発症2%だというカジノ事業者の発言は重大」「夢洲は集客施設を建設できる場所ではない」などの問題点を指摘したという。

同じ6月2日、署名活動の拠点となったタ─ネンビルで、担当者会議が行われた。筆者は、参加できなかったが、参加した仲間によれば、約2時間、20万筆署名を獲得した人たちの多くの意見が途切れることなく語られたうえで、今後の取り組みについて説明がなされたという。

「カジノ住民投票条例制定直接請求権署名運動」は「第2段階」に突入した。多くのメディアは、維新が多数を占める「府議会では否決される」と予測するが、「否決される」ではない、制定させるためにどうするかだ。

そのために、今後は、
①20万筆の住民投票を求める大阪府民の声を無駄にせず、必ず大阪府議会で条例案を可決させる運動、カジノ誘致を撤回させる運動を作っていこう!
②大阪府内72市区町村を結び府民が主体的に参加する、これまでの大阪にない新しい運動、新しく作り出した大阪府民のつながりをより強く、大きく発展させ、大阪府政、各自治体を包囲する大きな世論形成を進めていく、更なる府民参加を作り出そうなどが確認された。

そして参議院選挙公示前の6月19日(日)、中間総括を明らかにし、今後の方針を打ち出す「スタ─トアップ集会」(仮称)が予定されている。

日時・場所 6月19日(日)大阪市立生野区民ホ─ル(650名)13:00~15:00 
お問い合わせ カジノの是非は府民が決める住民投票をもとめる会
〒540-0012 大阪市中央区谷町2-3-1 タ─ネンビルNo.2・2階
(事務所開館は特別な場合を除き13時~18時)
電話:06-6585-0258 FAX:06-6585-0259

最終日5月25日、あべのキューズモール前署名ステーションでの決戦

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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5月31日、北海道電力・泊原発(北海道泊村)の周辺住民1200人が、泊原発に地震や津波に対する安全性が不十分だとして、1号機から3号機の運転差し止めや廃炉などを求めていた裁判で、札幌地裁・谷口哲也裁判長は、「現在ある防潮堤は津波に対する安全性の基準を満たしていない」などとして、運転を認めない判決を言い渡した。

一方、廃炉の請求は「具体的な必要性がない」として認められなかった。提訴から10年、泊原発は再稼働に向けた原子力規制委の審査中であった。にも関わらず、「安全性に問題がある」と運転を認めない判決が下された背景には、多くの論点について北電が主張を先延ばししてきたこともある。そのため判決は「提訴から10年以上経っても(北電側が)主張を終える見通しが立っておらず、審理を継続するのは相当ではないと判断した」とされた。


◎[参考動画]”泊原発「運転認めない」判決 廃炉請求は棄却(2022年5月31日)

この大きな判決に先立つ5月29日、大阪市内の靭公園で「老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」が開催された。真夏のような猛暑のなか、全国から反原発、老朽原発廃炉を訴える人たちが2100人も結集した。

若狭の僧侶、中嶌哲演さんは、主催者あいさつで「戦争も原発もそれを推進する元凶は、もっともらしいプロパガンダで本質を覆い隠し、それに抵抗・反対する人たちを弾圧している。しかし、今や戦争に反対し、老朽炉稼働に反対する潜在的な世論は、絶対過半数を超えているはずだ。その不同意・不服従する意志を非暴力的に表明するチャンスは、6月の参議院選挙だが、その潜在的世論をどう高めていくか、本日の集会で共に考え、共に声をあげていきましょう」と訴えられた。

僧侶の中嶌哲演さん(前列中央)

以下、集会での発言者の報告を要約紹介する。

◆美浜3号機運転差止裁判と5月26日東京地裁で第1回期日が始まった「311子ども甲状腺がん裁判」について 井戸謙一さん(弁護士)

老朽美浜3号機の運転差止仮処分は、昨年5月に提訴されました。その後、6月23日に再稼働した美浜3号機は、テロ対策施設の未完のため、一旦停止、今年の10月テロ対策施設が完成したら再稼働の予定です。先日5月23日、第4回の審尋が行われ、関電はなんとかひきのばそうとしましたが、裁判所はそれを許さず、次回7月4日の審尋で期日は終わり、10月の再稼働までには判決が出そうです。関電はまともに反論出来ていないので、勝てると考えております。40年超の老朽原発を止める闘いは、非常に重要な闘いです。ぜひ、ご注目ください。

もう1つ、5月26日東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回期日がありました。沢山の方が集まり、27席しかない傍聴席の抽選に226人の方が並んでくれました。裁判は、まず弁護団が内容を説明したあと、原告6人のうち1人の女性の意見陳述がありました。原告は、この間の辛かったことを思い出して言葉にしており、水をうったように静まり返った法廷のあちこちですすり泣く声が聞こえ、本人も涙を流しながら、最後までしっかり陳述しました。裁判官も身を乗りだして聞いていましたが、その目は赤かったと私には見えました。

その後、私たちは裁判所に、残り5人の原告の意見陳述もさせて欲しいと訴えました。関電代理人は、事前の進行協議では反対していましたが、さすがに反対とは言えず「裁判所に任せます」と言わざるをえませんでした。それだけの力があった意見陳述でした。

裁判後の記者会見には、入りきれないほど大勢のメディアが来ていました。先日、TBSの報道特集がこの問題を取り上げており、その後「被ばくで甲状腺がんが増えるんはデマ」という激しいバッシングが起こっていました。しかし、福島で甲状腺がんになった被害者が初めて声をあげた歴史的な日だと思います。これを報道できないメディアは駄目ですが、そうならば、私たちは、口コミでこの話を伝えていかなくてはならないと考えます。この裁判を絶対勝たせるために、ぜひ強力なご支援をお願い致します。

弁護士の井戸謙一さん

◆福井県の敦賀市から駆け付けた元原発技術者・山本雅彦さん
 
電力会社と立地自治体は、この間、共同で巻き返しをはかっています。政府のカーボンユートラル政策、ウクライナ情勢に便乗し、エネルギー安定供給には原発が必要だと、政府のクリーンエネルギー政策に沿って、日本原電の3、4号機の新増設、廃炉のもんじゅ敷地内に新型原子炉の建設、更には美浜、1、2号機をリプレイスをさせようとしています。また首長は口を揃えて、原発をテロや戦争の攻撃から守るために自衛隊の誘致しようとまで言い始めています。

昨年秋、福井農業高校の生徒さんたちが、原発を題材にした「明日のハナコ」を上演したが、ケーブルテレビで放送除外となり問題となりました。劇中で、元敦賀市長が石川県で原発を誘致する際「原発は金になる木で、50年後100年後に産まれた子供が『カタワ』(脚本ではカタカナ表記)になるかもいれないが、今は原発をやったほうがいい」という台詞があり、それが差別発言に当たるからだと言われました。

福井県、財団から金がでていることから、彼らに忖度したのでもないかといわれています。こうした報告を聞くと、原子力ムラのやりたい放題ではないかと思われるかもしれない。しかし、昨年6月に私たちが実施した美浜町全戸でのアンケートでは、原発不必要の方が54%、反対が61% 再稼働に不安と考えている方が71%もおられた。今年4月講演会を行った際にも、皆さんは「避難先がおおい町では近すぎて不安だ」「避難ができたとして本当に故郷に戻れるのか」などの悲痛な声がでました。

私たちの運動によって、こうした声を圧倒的多数にすれば、原子力ムラの画策を止めることができるのではと確信しています。共に頑張りましょう。

◆「東海第二原発の再稼働を止める会」副代表の佐藤勝十郎さん

老朽原発の1つで、3・11の被災原発である茨城県東海第二原発のある茨城県からかけつけました。東海第二では、昨年3月、日本原電を相手とした裁判で、運転を禁止するという勝訴判決がだされました。その後、原告・被告とも控訴、現在東京高裁で控訴審に入っていますが、控訴審も一審勝訴を確定させたいと思っています。

この間、380頁にも及ぶ控訴理由書を提出し、再来月進行協議が始まる予定です。何故勝てたのか? 規制委は「深層防護」の1層~4層までは合格とし、第5層の住民避難については規制委の審査はないが、裁判所は不十分と判断しました。今後は、この問題を深堀し、事実として東京高裁に認めさせていきたいと考えています。

◆木原壯林さん(実行委員会)が読み上げた「集会アピール」(案)

ほかにも、青森県、島根県、愛媛県、鹿児島など全国の反原発を闘う皆さんが発言したり、アピールを寄せてくれた。最後に実行委員会の木原壯林さんが「集会アピール」(案)を読み上げた。

「老朽原発動かすな!の闘いは、国内だけではなく、韓国はじめ世界の脱原発運動から注目されている。現在、川内原発1、2号機、高浜3、4号機が運転開始後36年を超えており、韓国の原発5基も35年を超え、2機は来年40年を迎える。もし、高浜1、2、美浜3号機の再稼働を許せば、国内だけでなく、世界の原発の40年超運転の前例にされてしまう。
 一方、老朽原発の運転と原発新設を阻止すれば、最悪でも2033年に若狭から、2049年に存国から稼働する原発がなくなり、世界の脱原発の動きを先導できる。老朽原発完全廃炉に向けてやれることは全て実行しよう。
 とりわけ6月参議院選挙には『老朽原発動かすな!』を争点にし、核依存、原発推進の岸田政権にノーをつきつけよう!」

アピール(案)は、満場からの大きな拍手で確認された。

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

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5月26日、東京地裁で、311子ども甲状腺がん裁判の第1回口頭弁論が行われた。この裁判は、福島原発事故当時、福島県内に居住していた6才から16才だった男女6名が、東電に対し、事故に伴う放射線被ばくにより甲状腺がんを発症したとして、損害賠償を求める裁判だ。

6名はいずれも甲状腺がんの手術を受け、うち4名は再発に伴う手術で甲状腺を全摘、甲状腺がんの発症や、それに伴う手術、薬の服用などで進学・就職などにも大きな被害が生じている。

裁判では、原発事故と、6名の原告の甲状腺がんの因果関係や原告が受けた損害の評価が実質的な争点となる。午後2時からの第1回期日では、5名の弁護士が弁論を行ったのち、原告2さんが意見陳述を行った。

その後の報告集会の冒頭、井戸謙一弁護団長は、「今日の法廷の印象は、5人の弁護団が手分けしてそれぞれの弁論をしましたが、それは前座で、本番は原告の女性の素晴らしい意見陳述でした」と話されたあと、期日の成果を以下のように述べられた。期日前の進行協議では、毎回意見陳述を認めるかどうかが話しあわれていた。被告・東電は、毎回やることに反対し、裁判所も消極的な感じだった。しかし、今日原告の意見陳述を聞いたあと、再びその話題になり、裁判長が被告代理人に意見を求めた。被告代理人は、建前的には大事なのは争点整理で、それを優先すべきと主張していたが、原告の意見陳述を認めるか否かについて反対とは言えず「最終的に裁判所に委ねます」と述べた。

裁判所も「もう一度考えます」と態度を変えた。被告代理人が反対できなかったのは、原告女性の意見陳述が、彼らの胸にも響いたからだと思う。当時の子どもたちをどう救済していくかで一番大事なのは、原告がどう苦しんできたかを裁判所に理解させる、そのことによって真っ当な判決に導いていくことだ。

先日TBSで報道された「報道特集」について、中身も知らずに「デマだ」とバッシングする輩が大勢いるが、そうではないということを発信して頂きたい。このようにバッシングする社会の風潮を変え、被害者の原告を支援していく社会的風潮をつくっていくということが、この裁判で真っ当な判決を出させる大きな力になると思います。

原告2さんの意見陳述作成を担当した柳原敏夫弁護士から、それまでの経緯が話された。

「彼女は自分から第1回目に陳述すると言ってくれた。そのとき、私が偉そうに彼女に言ったのは、裁判官に届く言葉、あなたにしか言えない言葉を言って下さいとお願いした。人間として扱われなかった治療や手術のことは思い出したくないだろうが、あなたしか言えないのだから。本人も悩んだようだが、連休明け、それまで書いた文章に、本人も思い出したくないアイソトープ治療について2000字を書き足してきました。それが今日のメインテーマでした。書いただけで精魂尽き果てただろうに、今日法廷でもう一度読むのも大変だったろうが、今日は最善の意見陳述をしてくれました。ここには来れませんが、皆さん、彼女に拍手をお願いします」。

その後、前日意見陳述を練習した際の原稿2さんの声が、会場に流れた。「意見陳述要旨」から、その一部を紹介する。

「あの日は中学校の卒業式でした。友達と「これで最後なんだね」と何気ない会話をして、部活の後輩や友達とデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします」

3月16日、放射線量が高かったことを知らない彼女は地震の影響で電車が止まっていたため、歩いて学校に行き、外で友達と話し、歩いて帰ってきた。県民健康調査で甲状腺がんがみつかり、精密検査を受けた。結果は甲状腺がんだったが、医師はそうは言わず「手術が必要です」と説明した。

「手術しないと23才までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません」

病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学、しかし、その大学にも長くは通えなかった。甲状腺がんが再発したためだ。

……………………………………………………………………………………………

「治っていなかったんだ」「しかも肺に転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいのかわかりませんでした。「今度こそあまり長くは生きられないかもしれない」そう思いました。……

「手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療を受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被ばくさせる治療です。

1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。

3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至るところに黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。

病室には、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。

薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。

薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。

医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。

飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるよう指示されます。

すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。

食事はテレビモニターを通じて見せられ、残さず食べられるか確認し、汚染するものが増えないように食べられる分しか入れてもらえません。

その夜中、それまでは何ともなかったのに、急に吐き気が襲ってきました。すごく気持ち悪い。なかなか治らず、焦って、ナースコールを押しましたが、看護師は来てくれません。ここで吐いたらいけないと思い、必死でトイレへ向かいました。吐いたことをナースコールで伝えても吐き気止めが処方されるだけでした。時計は夜中の2時過ぎを回り、よく眠れませんでした。

次の日から、食欲は完全に無くなり、食事ではなく、薬だけ病室に入れてもらうことのほうが多かったです。2日目も1,2回吐いてしまいました。

私はそれまでほとんど吐いたことがなく、吐くのが下手だったため、眼圧がかかり、片方の目の血管が切れ、目が真っ赤になってしまいました。扉越しに、看護師が目の状態を確認し、目薬を処方してもらいました。

病室から出られるまでの間は、気分が悪く、ただただ時間が過ぎるのを待っていました。

病室には、クーラーのような四角い形をした放射能測定装置が、壁の添乗近くにありました。その装置の表面の右下には数値を示す表示窓があり、私が近づくと数値がすごく上がり、離れるとまた数値が下がりました。

こんなふうに3日間過ごし、ついに病室から出られる時がきました。パジャマなど身に着けていたものはすべて鉛のごみ箱に捨て、ロッカーにしまっていた服に着替えて、鉛の扉を開け、看護師と一緒に長い廊下といくつもの扉を通って、外に出ました。……こんなつらい思いをしたのに、治療はうまくいきませんでした。治療効果がでなかったことは、とてもつらく、その時間が無駄になってしまったと感じました。以前は、治るために治療を頑張ろうと思っていましたが、今は「少しでも病気が進行しなければいいな」と思うようになりました。……通院のたび、腫瘍マーカーの「数値があがってないといいな」と思いながら病院に行きます。でも最近は毎回、数値が上がっているので、「何が悪かったのか」「なぜ上がったのか」とやるせない気持ちになります。……自分が病気のせいで、家族にどれだけ心配や迷惑をかけて来たかと思うととても申し訳ない気持ちです。もう自分のせいで家族に悲しい思いはさせたくありません。もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。

……………………………………………………………………………………………

裁判の傍聴希望者は約200名、うち傍聴出来たのは27名、期日後の記者会見でも多くのメディアから質問があったとお聞きした。甲状腺がんなど原発事故の放射能による健康被害に関心が高まっている。被害者に対する支援の輪を、今後さらに広めていかなくてはならない。

311子ども甲状腺がん支援ネットワーク 

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おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

大阪維新は、夢洲に日本人客をターゲットにしたカジノを作ろうとしている。公金(税金)は絶対使わないと公言していた松井市長だが、昨年末、公金をつぎ込むことが判明、潮目が一挙に変わってきた。議会の合意を得た大阪府は、国に申請を行ったが、まだまだカジノは止められる! 勝負の要は「カジノの是非を問う住民投票実施に向けた署名」の数だ。

5月3日憲法集会場が開かれた北区扇町公園の入口で行われた署名活動

桜田照雄阪南大学教授

◆吉村「秋には認可……」のウソ

維新のカジノ構想の欺瞞とウソを更に深く知るために、5月4日「カジノを止めよう!」緊急学習会を行った。講師・阪南大学教授桜田照雄教授のお話の中から重要な個所をまとめた。

はじめに「カジノの町の今~江原ランド」を視聴。2000年に開業した韓国の江原ランドは、韓国で唯一韓国人が利用できるカジノだが、9年後周辺に金融屋、質屋、風俗店が立ち並び、カジノホームレスが増え、若い子育て世帯は外に出ていく事態に陥ってしまった。

桜田教授の話では、夢洲のカジノ計画書の売り上げは、江原ランドの7~8倍を想定しているという。

博打というのは、博打をして7%の寺銭が入る仕掛けで、1兆円賭けたら700億がカジノに落ちる。夢洲のカジノでは、粗利を約5000億円と想定しているので、ざっと6兆円の賭博をやらないといけない(ちなみにJRAの全国合計が約3兆円)。

それには、年間1070万人(20歳以上の10人に1人)が6000円払って入場し、全員が60万円賭け、24時間365日フル稼働しなくては成り立たない。いまどき、そんな商売が実現可能だろうか?!


◎[参考動画]カジノの町はいま09′ ~韓国江原ランド~

吉村知事は盛んに「秋にも認可」と口にする。「議会通って国に申請したから、今更反対しても無駄や」と。しかし、国が認可しなければカジノは開けない。国が認可するためには、カジノ実施法の基準をクリアしなければならない。そのカジノ実施法の基準とは何か?

2018年7月に安倍首相(当時)は、参議院本会議で民主党杉尾議員の質問に対して「国際競争力の高い魅力あるIR施設でなければ区域整備計画の認定を行わない」と答えた。国際競争力とは何か? マカオのカジノと夢洲にできるカジノを比べたときに、夢洲に来るとなるかどうか。カンボジア、フィリピン、ウラジオストック、ベトナムにあるカジノと比べて国際競争力があるかどうか。ベトナム、カンボのカジノに行くのは、警察力が弱いから、悪いことができるからで、ソウルのカジノに行くのは、空港降りてすぐで便利だからだ。では夢洲はどうか?

◆夢洲カジノで大阪は潰される?

夢洲に出来るカジノは、従来のカジノと全く違って、6400台ものゲームマシンを予定している。10年先だから、どれだけバーチャルリアリティの技術が発達するかわからない。ただのスロットではなく、ポスト5Gという、例えば中国で操作するとブラジルで機械が動くような話が実現するようなゲームマシンになるだろう。

入場料6000円払っても惜しくないというマシン。当然オンラインカジノという形で、夢洲にサーバーを置いて、日本全国、世界各地から賭博ができるという仕掛けになるだろう。日本はゲーム機械の開発や中身をつくるのは世界トップクラスだから、オンラインでも楽しめるのに、わざわざ夢洲にいくという値打ちを出すようなゲーム機械を開発していくのではないか。

一方、カジノで、約5000億円という数字が粗利(あらり)として出ているが、実際の事業計画では粗利は4200億円、その差額約800億円は販売促進費だという。約800億円を販売促進費にかけて、ゲームに依存する感覚をもっている人たちをターゲットにした広告戦をやり、年間約1100万人をカジノに引き込む。広告代理店やマスメディアの前には、800億円ものデカイ商売がぶら下がっている。儲けるのはカジノ関連業者のみ、大阪経済は「カニバリゼーション」(共食い)の発生で確実に破壊されるだろう。

◆大阪カジノ誘致の最大の障害は「カジノ実施法」

カジノ誘致の最大の障害はカジノ実施法で、これは、カジノ施設だけではだめで、国際会議場や家族で楽しめるエンターテインメント施設等が一体になっている施設でないと認めないということだ。家族で楽しめるエンターテインメント施設など今の社会で実現しためしはない。

今のエンターテインメントは、「鬼滅の刃」にしろ、後楽園球場に3日間で15万人動員した韓国の少女グループにしろ、ターゲットを徹底的に絞っている。そんなところに世代を超えたエンターテインメント施設をつくらないと、カジノ実施法を満たさないという。

国際競争力についても、家族が世代を超えて楽しめるということについても、猛烈な詭弁を使わなければ通らないだろう。だから私たちも、まじめに誠実に向き合って、カジノ実施法を反対運動の味方につけていく必要がある。

◆国に認可されなければ、カジノはやめられる!

4月26日、共産党・宮本議員の質問を通じて、国土交通省は、①残土や汚泥処理、地中埋設物撤去の認定審査の基準となる。②認定はゼロもありうること。③認定に要する期間の定めがないので、認定がいつになるのかわからないことを明らかにした。2023年4月末日までに認可がない場合には、大阪府・市はカジノ事業者との契約を解除できると基本協定書で定めている。

吉村もそれを知りながら「秋には認可が……」と平然と言う。さすがスラップ訴訟の弁護士だ。

①について、地中埋設物、掘り起こして処分するのに20億円もかかるものが埋まっているはずはないという。これを説明されたとき、松井市長は「なんでもありや」といったそうだが、その通りである。夢洲の土地を埋めるにあたっては、約20年間はなんでもありだった。これは僕(桜田教授)が港湾局に情報公開請求で問い合わせて明らかにした。

②の認定はゼロもあるという話。認定に要する議会の定めがないので、認定がいつになるかわからないことが明らかになった。認可をだす国土交通省の大臣は、大阪府と市がオリックス・MGM とで交わした契約には拘束されない。吉村は「契約があるから守ってもらわんと困る」などと言ってくるだろうが、そんなことは専門家の間では通じない。そういうことを平気でいうのが維新のやり方だ。

2023年4月末までに、認可がない場合、大阪市はカジノ事業者との契約を解除できると定めている。認可されなかったら止めればいいのに、何故やめないのか。理由を説明してくれというと「決まっているから仕方ない」というだろう。国が認可するかどうかわからないし、認可しなければ止めることも出来る。それをカジノ反対派に言わせず、「反対しても仕方ない」と反対派の足を鈍らせる。それが維新の狙いだ。

◆人工島・夢洲に高層建造物は超危険!

夢島がある大阪湾は、洪積層地盤が沈下する、世界でも稀な地盤だ。7000年前の大阪湾は陸上で、そこに注ぎ込んできた様々な河川が土地をえぐりとって深い谷ができたり、複雑な地形をつくってきたため、非常にもろい。

しかも、夢洲の護岸計画は、そもそも高層建築物を想定していない。東京で高層ビルを建てる際の重さの計算は、1平方あたり100トンの荷重がかかると想定し杭を打つ。30~40メートルの地中の杭を100~200本打った上に高層物を建てるが、夢洲はそれを想定していない。しかも夢洲は、周囲を囲んだ箱の中に土をいれているので、重いものを置くと、下の力だけでなく横の力が働くため、護岸を強化しない限り持たない。

そこに高層建築物を作るとなったら、護岸の強化工事から始めないと無理だ。夢洲の場合、平均90~100メートル当たりまで掘らないと、硬い地盤にあたらない。温泉掘るのも1メートル当たり10万というから、100メートル掘るだけで1000万円、そこに1本2000万~5000万の杭を300本~500本位打たないと建物は建てられない。そんな工事やってまで、夢洲に高層建築物を建てなくてはいけないのか?そう質問しても、大阪市は一切口を閉ざしている。

もう1つ、土壌汚染、液状化問題は、公募の際に判明していた。オリックス・MGMは、それを知ってて申請した。それなのに何故、府と市が土壌対策に公金を出す必要があるのか?オリックス・MGMが自腹切るべきではないか。

こんな吉村、松井のウソ八百を並べた、まさに八百長賭博のような維新のカジノ計画の真実を、メディアは追及しない、できないでいる。ならば、私たちがどんどん広めていこう!「カジノはいらない!」「カジノの是非は住民が決めよう」の署名を増やし、力を見せつけていこう!ゴールの5月25日まであと15日、暴走する荒馬・維新を振り切っていこう! まくれ!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

「人間というのは、自分のやったことを決着できるから生きられる。決着できないで、自分の中にずっと持ち続け生活していくということは、辛いことだと思う。自分が昔泥棒した事実は消えない。もし、その泥棒で誰かの人生が変わったら、取り返しがつかない。
 犯罪とは、そういうことだと思ったら、(布川事件の)真犯人が逮捕されず刑務所に行かなかったら、『あんた気の毒だね』と考えてしまう。(真犯人が)決着をつけていたら、また違う人生があったかもしれない」

冤罪・布川事件で29年間服役し、その後再審で無罪が確定、国賠訴訟で完全勝利を勝ち取った桜井昌司さんの言葉だ。「悪いこと」をして、誰かの人生を変えてしまったら、取り返しがつかないし、自身も決着できない。そして人生を前に進めることもできない……。

◆突然の逮捕で教職を奪われた橋本さん

京都の高校教諭・橋本幸樹さん(当時32歳)が「京都府迷惑行為防止条例違反」で逮捕されたのは、2018年9月25日のこと。5月頃から9月までの間に、通勤の電車内で男子高校生に20回痴漢行為を行ったとされた。身に覚えのない橋本さんは、一貫して否認を続けたが逮捕・起訴され、一審・京都地裁の戸﨑涼子判事、二審・大阪高裁・三浦透裁判長は、橋本さんに有罪判決(懲役6月・執行猶予3年)を下し、上告審も棄却され、橋本さんの有罪判決が確定した。執行猶予付きというものの、有罪判決をうけた橋本さんは教職を奪われた。当時、高校3年生を担当し、本格化する受験シーズンを前に生徒を励まし、教師として充実した日々を送っていたのに……。

一審(京都地裁・戸﨑涼子判事)も二審(大阪高裁・三浦透裁判長)も有罪判決を下し、上告審も棄却され、橋本さんの有罪判決が確定した(写真は京都地裁)

◆20回も痴漢被害にあったと主張する男子高校生A

橋本さんが通勤で最寄り駅から乗る電車は、7時台のα電車かβ電車であり、電車に乗る際はすぐ降車駅で降りられるよう列の最後に並び、ドア付近に乗り込む習慣があった。一方、最寄り駅が同じA(当時15歳)は、橋本さんが逮捕される5月頃から9月までの間に、いつもα電車で通学しており約20回痴漢被害にあったと主張した(なお、Aはα電車以外で通学することは稀だったと証言している)。Aから被害を聞いた教師が両親に連絡したため、Aの母親は、Aに対して証拠を撮影するよう指示した。

6月11日、Aは同じ車両にいる橋本さんの姿を撮影した。少年と離れて立つだけの橋本さんの姿の写真を見た母親は、加害者の顔や被害にあっている場面を撮影するよう指示した。

6月13日、Aは、いつも通り最後にドア付近に乗車した橋本さんの後から、一番ドア側に後ろ向きで乗り込み、動画の撮影をはじめた。そこには、橋本さんが、右肩にかけた鞄を腕で挟みながら手すりに手を置いている様子や、Aが橋本さんの手の方に体の向きを変え接近させるような様子が映り込んでいた。動画には、橋本さんが手を動かす不審な様子は映り込んでいない。それどころか、手を反射的に回避させる様子が映り込んでいた(これらの点は高裁判決も認定している)。

◆被害申告の経緯と事件化

6月29日夜8時頃、最寄り駅で降りた後、橋本さんと遭遇したAは、「いま痴漢の犯人に後をつけられている」「駅まで迎えにきて」と母親に電話をし、駅前の駐車場から去る橋本さんの車のナンバーを母親にラインで送信している。翌日、この「つきまとい事件」に驚いたAの両親は、警察署に慌てて被害届を提出することにした。

このときになってはじめてAは、2週間前に撮影した動画を警察に提出した。こうした経緯で、この「事件」が表面化することになったのである(実は、被害申告のために両親が警察に行った際、当事者であるのにも関わらずAは家で寝ていたという。当時のAの様子について、母親は「警察に行くことを拒んでいた」と供述している。当事者として警察に呼び出されてはじめて、Aは警察署に赴いたのである)。

この日、警察官は、被害を避けるために橋本さんよりα電車より早い電車に乗るよう指示している。A自身も警察の指示に従い乗る電車を早めたという。しかし、α電車に乗らなくなったはずのAは、この日以降も、9月下旬までに約10回程度被害にあったと主張している。後に、弁護団が橋本さんの通勤履歴を精査したが、橋本さんがAに合わせて通勤で乗る電車の時間を早めた形跡はない。つまり、被害状況についてAの主張は自己矛盾していることになる。

橋本さんが教師であることを警察が知ったのは、Aの父親が橋本さんを降車駅で張り込み、職場の前まで追跡したためである。その報告を知った警察が色めき立ったことはいうまでもない。警察は、「高校教師による特定男性高校生への連続痴漢事件」として、杜撰な捜査に突き進んでいく。

◆同行警乗で痴漢を現認できなかった警察官

8月に入り、警察官らは、橋本さんの「行動確認」を行ったが、橋本さんの行動に特段不審な点はなかった。そこで、9月20日と21日に、警察官らは、延べ7名で同行警乗(2日間で合計40分間)を実施した。Aと一緒に電車に乗り、橋本さんの痴漢行為を現認し現行犯逮捕するためだ。

同行警乗の際、いつも通り最後に電車に乗った橋本さんと同じ車両に、Aや警察官らが乗り込み、警察官らは橋本さんを現行犯逮捕すべく注視していた。しかし、警察官らは誰一人として橋本さんを現行犯逮捕することができなかった。また、この同行警乗では、Aより先に電車を降りた橋本さんの後を2名の警察官が尾行している。Aと一緒に電車に乗っていた警察官が、Aから「痴漢された」と被害申告を受けた場合に備えるもので、被害があった場合、橋本さんを尾行する警察官が準現行犯逮捕するつもりだったのだろう。しかし、2日間とも準現行犯逮捕すら行われなかった。

証拠開示で明らかになったことだが、9月25日、同行警乗した警察官らは、「(同行警乗で)痴漢行為を現認できなかった」との捜査報告書を作成している。この捜査報告書と現行犯逮捕及び準現行犯逮捕がなかった事実からは、警察官らは「犯行を現認していない」「Aから被害申告がなかった」と結論づけることができる。そこに事件性は全くない。

ところが、9月20、21日の同行警乗で「痴漢行為を現認できなかった」警察は、例の6月13日に撮影された動画を証拠に、6月の件で橋本さんを通常逮捕することに踏み切ったのである。6月の件で逮捕すれば、橋本さんが犯行を「自白」すると見込んでいたのだろう。当然ながら、無実である橋本さんは一貫して容疑を否認した。

◆別人の証拠を提出するA

橋本さんが通常逮捕された翌日、警察に呼ばれたAは、もう一つ「証拠」を警察に提出した。それは、格子柄のシャツを着た「犯人」とされる人物が、電車内のロングシートに座っているように見える画像だった。この画像は、警察官らが同行警乗した9月20日にAが携帯電話で撮影したもので、Aは自分の立ち位置や股間の位置、犯人の手の位置などを具体的に説明し、同行警乗の際に被害あった証拠であると申告した。

ここにきてもう読者の皆さんの頭には疑問が浮かんでいるのではないだろうか。まず、痴漢の被害があったとすれば、当然ながらAも橋本さんも立っているはずである。さらに、橋本さんを注視していた警察官らは、当日の橋本さんの服装を明確に覚えていたはずだ。しかし、驚くべきことに、橋本さんが格子柄のシャツは着ていなかった事実が後に発覚している。それにも関わらず、同行警乗した警察官らは誰も異議を唱えず、この写真を「証拠」として採用し、否認する橋本さんを9月の件でも再逮捕したのである。

公判になって、Aはこの写真に映る人物が別人であることを認めている。被害者が提出した被害を受けている場面とする証拠画像が別人であることなど起こり得るだろうか。

◆「写真が君でないなら、犯人じゃないね」と検察官

橋本さんは、この別人の写真を再逮捕後の検察官の取り調べで初めて見せられた。「これ、橋本さんですか」「いえ、違います」「橋本さんでなかったら犯人でないことになりますね……」。検察官は戸惑うように橋本さんにそう言ったという。

写真の人物が橋本さんと別人の可能性があると知った警察は、慌てて橋本さんの家を捜索し、必死で「格子柄のシャツ」を探したが、シャツは出てこなかった。この時点で警察官も検察官も、Aの両親や教師などの大人に相談したり、あるいは少年に直接どういうことか尋ねてみたりするなどし、虚心坦懐に捜査を尽くすべきだった。当時、Aは中学生から高校生になったばかりの年齢である。友達とのライン履歴には「痴漢にあっている爆笑」「ストーカーしたった爆笑」など、真に「被害」にあっていると思えないやりとりが残っている。

6月29日の「つきまとい事件」を契機に、両親が被害届を提出、「警察沙汰」にまで発展してしまったが、Aは当初警察に行くことを拒んでいたのである。ならば、警察、検察、そして両親は、Aが本当に痴漢にあったのか問い正すべきではなかったか。

しかし、警察は、そうはせず、なんと同行警乗から1か月後の10月下旬になって、突如として「犯行目撃状況再現」なるものを実施し、「犯行を現認した」とする報告書を作成したのである。

◆裁判で次々と明らかになった少年のウソ

最寄り駅の防犯カメラ

Aの提出した画像に映る人物が別人であったことや、Aのいう被害状況に矛盾が生じていることは既に述べたとおりである。実は、それ以外にも、裁判では、Aのウソが次々と明らかになっている。

Aが友達に送っていたライン履歴を弁護団と橋本さんが精査した(Aの履歴から橋本さんが電車の乗っている時間帯に、Aが学校にいたことなどを客観的に裏付けていった)ところ、橋本さんとAが同じ電車に乗った日は、せいぜい4日(「被害」があったとする日を含めても6日)しかないことや、そもそもAがα電車に乗っていない日が多数あることが判明したのである。

つまり、いつもα電車に乗って通学していたというAの主張は、客観事実に反することが明らかになったのである。そのような状況で、どうして橋本さんとAが同じ電車に同乗し、5月頃から9月までの間に被害に20回もあうことが起こるのか。

さらに、6月29日の橋本さんによる「つきまとい事件」では、最寄り駅の防犯カメラ映像には、橋本さんの後ろをAが母親に電話をしながら歩く様子が映りこんでいた。なんと、Aは、橋本さんの後ろを歩きながら、母親に「あとをつけられている」「迎えにきて」と電話していたのである。

最寄り駅の防犯カメラ

Aは、最寄り駅の改札を出た橋本さんが駅前スーパーで買い物をしたあと、駅前駐車場から車を出す際も、橋本さんを待ち構えたり、橋本さんの車のナンバーを確認し母親に送ったりしている。橋本さんを執拗に付け回していたのはAだったのだ。

しかし、これらのAの嘘を、一審判決は「(被害回数の齟齬については)その程度はささいな違いに過ぎない」、「弁護人の指摘する程度の食い違いがあることをもって6月29日の出来事をAの自作自演であるということはできない」と不合理に救済し、弁護人の客観証拠に基づく主張は排斥されてしまったのである。

紙面の関係で詳細は書けないが、Aと同様、いやそれ以上に悪質なのは、警察、検察、裁判官だ。警察は、同行警乗で「痴漢行為を現認できなかった」としていた報告書を、何の合理的理由もなしに「現認できた」と変遷させ、法廷で偽証までした。A及び警察官の虚偽証言を薄々感じていたであろう検察官は、証人尋問でAや警察官らの矛盾する証言を必死で救済した。

一度逮捕・起訴したのちに「間違いだった」と認めたくない警察、検察、そして裁判官は、執行猶予付きの有罪判決で教職を奪われた橋本さんの人生にどう責任をとるつもりなのか。

冒頭の桜井さんの言葉からすれば、既に青年になったAも、橋本さんの職を奪い、人生を大きく狂わせてしまったことをどう思うのか。事件を知っている人、Aの近くにいた関係者に是非この記事を読んで欲しい。そしてどうか真実を語って欲しい。人生を前に進めるために。

(本事件のさらなる詳細は後日、月刊『紙の爆弾』に掲載予定です)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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大阪で多重債務者らを支援する「大阪いちょうの会」の事務局長・川内泰雄氏から、西成でヤミ金に悩む人たちの相談の場を作りたいといわれ、店で相談会を数回やったのち、西成市民館での週1回の無料相談会に繋げることができた。10数年前のことだ。その川内氏から当時、ギャンブル依存症の問題からカジノ問題を教えて頂いた。韓国で、韓国人の入場を認めているカジノ「江原ランド」周辺に、質屋、中古車店、風俗店、金融屋が多数でき、「カジノホームレス」が増えている実態など。ほかにも、マネーロータリング、治安の悪化など問題山積のカジノを含むIR計画を、大阪維新が進めている。公金を絶対使わないと豪語してきた大阪維新だが、昨年12月公金を投入することが発覚し、潮目が一挙に変わってきた。

◆「違うんです」と公金投入を否定してきた松井市長

大阪府と大阪市は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を、大阪湾の埋め立て地「夢洲」で進めている。昨年12月21日、大阪府と大阪市、事業者に決まった米国MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス合同の大阪IR社で作成した「区画整備計画案」が公表された。3月24日府議会で、29日市議会でIRカジノ関連議案が採択されたため、4月末に国へ申請を行うこととなった。

これまで「カジノに税金は一切使わない」と公言してきた松井市長だが、12月21日の計画案で、夢洲の液状化対策や土壌汚染の改良工事費用に約800億円の公金が投入されることが明らかになった。

2月16日、大阪府と大阪市が大阪IR社との間で締結した「基本協定」によれば、初期投資1兆0800億円、経済波及効果は1兆1400億円(運営)で、年間売り上げは5200億円(うち8割の4200億円がカジノ)となりという試算が出ている。大阪府は、そこから年740億円の納付金を受け取るほか、入場者収入320億円と120億円の税収も入るという計算だ。儲かるならば、ばくちに公金を投入しても良いという訳ではないが、果たしてこの構想は実現可能なのだろうか。

大阪府内各地で繰り広げられる署名活動

◆大阪維新の「負の遺産を作り替える」のウソ

その検証の前に、大阪維新のいつものやり口からカジノ構想が始めった経緯を見てみよう。実は、松井市長自身も「IRは全員が賛成とは思っていない。賛否拮抗していると思う。ただ夢洲の負の遺産を有効な資産に作り替えると公約で掲げ、エンタメの拠点としていく」と発言している。出た! 大阪維新の「負の遺産」。「どうしようもない場所を維新が見事に発展させてやった」という維新がよく使ういつものパターンだ。しかし、それが嘘であることは、私の住む西成の釜ヶ崎の「西成特区構想」が見事に証明している。橋下氏が市長時代が「西成がよくなれば大阪がよくなる」と始めた「西成特区構想」で、「まちづくり会議」の座長を務めた鈴木亘教授も、「ゴミが溢れ、ションベン臭く、覚せい剤の売人がいる酷い町」と釜ヶ崎をさんざんコケにし、俺の手で釜ヶ崎がよくなったと手柄にしようとした。

しかし、長年この街に住む私は、この発言に非常に違和感を覚えた。確かにかつての町の主流であった日雇い労働者は高齢化し、多くが生活保護受給者、年金生活者になり、活気は失せつつあるものの、皆が助け合う町であること、新参者、生活困窮者、様々な障害などを抱えた人にも非常に住みやすい町になったとの印象しかなかったからだ。そんななか、始まった「西成特区構想」はどうなったか?

西成特区構想の目玉の「あいりん総合センター」(通称センター)の解体は、その理由を10年以上前から「耐震性に問題があるから」と言われてきたが、2019年4月23日強制閉鎖されて以降も進んでいない。センターは未だにしっかりそこに建っている。コロナ禍にあるとはいうものの、本当に「耐震性に問題がある」ならば、即刻どんな手段を使ってでも、解体工事を進めなくてはならないのではないか。しかも、解体後に空き地をどうするかの具体的な計画も決まっていない。インバウンドが押し寄せていた当時は、センター跡地に屋台村を作ろうとの構想もあったように、維新が欲しいのは金になる土地で、そこに維新関連業者を投入し、儲けさすだけだ。

維新が「負の遺産」という夢洲も、大阪市のごみの最終処分場として機能しているうえ、コンテナヤードが整備された関西圏の物流の中心拠点となっている。 釜ヶ崎同様、夢洲も決して「負の遺産」ではないのだ。

◆「カジノで儲けて福祉に回す」のウソと欺瞞

大阪IR・カジノがダメすぎる2つのポイント

松井市長は、2016年12月22日、総合区・特別区に関する意見募集・説明会(平野区)でこう発言した。「カジノに税金は一切使いません。これは民間が投資する話なので、皆さんの税金がIR,カジノに使いません。特定の政党が間違った情報を流布していますけれど、これだけははっきり言っておきます。IR、カジノには一切税金は使いません。」。

更に、2019年9月12日大阪維新の会親睦会ではこう発言していた。「よく役所の周りにデモ隊がくるんですよ、『カジノをやめて福祉に回せ』言うてね。違うんですよ。カジノをうまく利用して、儲けて福祉に回すんです」。おい、いいのか、これ。ギャンブル依存症のオヤジが、ごはん食べれない子供らに「父ちゃん、次のレース取ったら、お前らに旨いもん食わせてやっからな」と同じではないのか。

しかもこの間のコロナの影響などもあり、カジノを含むIR構想は、2019年12月の基本構想から、IR施設の延床面積が3分の2、展示場は5分の1に削減・縮小され、当初掲げてきた「世界最高水準のIR」とは程遠いものになっている。松井市長がいう「経済波及効果1兆円超、納付金など収入1060億円」を達成するには、カジノで年間約6兆円の掛け金が必要になるという。ちなみにセブンイレブンの国内売り上げは約5兆円、JRA(競馬)の掛け金の全国合計は約3兆円。それよりカジノが集客できるというのだろうか?

コロナでインバウンドが激減して以降、カジノへの来場者は国内の日本人などが想定されているが、年間1430万人の集客しているユニバーサルジャパンと比較し、カジノは年間1070万人を想定しているという。この数字は、日本中の20歳以上の10人に1人が入場料6000円を払ってカジノに来場し、全員が1日あたり60万円をかけるという想定だ。これ、実現可能なのか?

しかも、大阪IRは35年契約のうえ、その後「事業継続を前提に」30年の延長ができ、実質65年のライセンスという異例に長期契約になっている。マカオのライセンスが20年から10年と厳しくなったばかりなのに。

一方で、万博・IRのために夢洲造成費用は、2021年度以降で2482億円を予定。この金額は、大阪市の年間税収約7500億円の3分の1に相当し、大阪市民一人あたり9万円負担することになる。

さらに驚くことがある。大阪市港湾局の資料によれば、そんなカジノで利益が出るのは、2076年以降、つまり54年後ということだ。ここまで来たら、辞めるしかないと考えるのが普通ではないか。

では、何故大阪維新が、初めから「負け」がわかっているバクチに売って出るのか? 答えは簡単、そこに利権があるからだ。土建屋はじめ維新の関連業者に儲けてもらうためだ。こんな大バクチにつきあってはいられない。

3月25日から始まった、カジノ誘致の賛否を問う住民投票条例制定を求める署名が始まっている。「ノーカジノ」を突き付け、維新政治を終わらせよう!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

2001年、兵庫県姫路市の郵便局でおきた強盗事件の犯人とされたナイジェリア人のジュリアスさん(仮名)が再審開始を求めていた裁判で、最高裁(山口厚裁判長)は、3月30日再審請求を棄却する決定を行った。

証拠写真にマジックのようなもので加工する、証拠ビデオテープにノイズ(砂嵐)を入れる……これほどずさんな証拠改ざん、捏造が山積みの冤罪事件があったろうか? しかも、令状なしで事情聴取を始め、取り調べ室で一夜を過ごさせるなど、人権無視も甚だしい。こうした蛮行がまかり通るのは、被疑者が外国人、しかも黒人だからと蔑視しているからだ。日本に長く住み、結婚した日本人女性との間に子供も恵まれ、事件の5日前念願の永住権を取得していたジュリアスさんが、家族と離れ離れになるような危険を犯すことなどありえないのだ。

◆兄貴的存在だったジュリアスさん

2001年6月19日、午後3時10分頃、兵庫県姫路市内の郵便局に目出し帽と雨合羽の2人組が強盗に入り、現金約2,275万円を強奪した。警察は1時間後、郵便局近くの倉庫で現金と車両、目出し帽などを発見、倉庫を借りていたナイジェリア人のジュリアスさん(当時25才)を拘束し、深夜まで取り調べ、翌朝逮捕した。

ニュースを見たジュリアスさんの従弟で一緒に働いていたDが、翌日弁護士に伴われ警察に出頭、「自分がオーステインと2人で金を奪ったが、大金だったので怖くなり倉庫に隠した。ジュリアスは関係ない」と自供。犯行後、ジュリアスさんに相談して銀行に金を帰すため倉庫に行った、オーステインが逃走できないようにするため、車のナンバープレートを焼いたと話した。

ジュリアスさんは地元に大勢住むナイジェリア人の中で兄貴的存在だった。そんなジュリアスさんが警察に逮捕されたと知ったDは、無実のジュリアスさんに罪を被せてはならないと弁護士に相談に行った。ジュリアスさんは犯行を否認、強盗の起きた3時前後、自宅に寄り義理の祖母を会話し、その後自宅近くの知人の家によった。知人も「3時のCNNニュースを一緒に見た」と供述していた。

◆裁判で次々と明らかになった証拠の改ざん、偽造

検察は、犯行に使われた車はジュリアスさんのもので、犯行後に金などを隠していた倉庫は、ジュリアスさんしか開けられないとして、ジュリアスさんを実行犯の一人と断定したが、裁判では、子ども騙しのような嘘が次々と明らかにされた。

① 警察は、「近くでジュリアスさんを見た」という通報をもとに倉庫に出向き、隙間から覗いたら車が見えた、しかし正面の扉が開かなかったので、左横の窓から入ったと証言。しかし、その窓は半分が鉄格子、半分は内側に資材運搬用エレベーターで塞がれ入れる状態ではなかった。それでも検察は、ジュリアスさん以外倉庫を開けられないことを有罪の証拠にしているため、「正面の大きな扉は鍵がかかって入ることが出来なかった」と嘘をつき通した。一方、ジュリアスさんは日中は施錠せず、開けっ放しにしていたと証言、倉庫所有者の奥さんも「倉庫が開きっぱなしになっていたことがある」と述べ、再審では陳述書を新証拠として提出していた。

証拠のビデオテープの画像。犯人の顔が判別できそうな瞬間になるとノイズ(砂嵐)が入って映っていない

② Dが共犯者と供述したオーステインについて検察は、当初「存在せずすべて作り話」と決めつけた。そこで、ジュリアスさんは、事件の一月前、オーステインがスピード違反をしたことを思い出し、オービスに残っているオーステインの画像を入手させた。画像は少しボケてはいるものの、黒人というほかにジュリアスさんとの共通点はなかった。しかし、裁判で出された写真には、坊主頭のオーステインの頭に黒いマジックのようなもので何か書き足してあった。当時、ドレッドヘアだったジュリアスさんに似せるように。これについて弁護団は再審で、BAHID(イギリス人物同一性判定協会)のK・Aリンジさんによる「写真の頭の左側の部分が加工されている」とした鑑定書を新証拠として提出していた。

ほかにも血液型や、ジュリアスさんの知人の「3時のCNNニュースを一緒に見た」が「4時のCNNニュース」に改ざんされるなど、ジュリアスさんが犯人でない証拠はことごとく改ざん、捏造、隠蔽されてきた。中でも私が最も悪質と感じたのは、郵便局内で犯人らを映した防犯カメラ画像に施された工作だ。1分13秒の画像には、犯人の1人がカウンターを飛び越えた際、息苦しくなったのか、目出し帽を脱ごうとする場面がある。裁判で出された画像は、そこにノイズ(砂嵐)が入って映っていないのだ。専門家によればこのように数秒単位でノイズが入ることはあり得ないという。しかも検察は、重要証拠の原本を廃棄したという。よほど見せたくない画像があったに違いない。

◆再審無罪を勝ち取らないと家族はバラバラに

2004年、神戸地裁姫路支部は、ジュリアスさんに懲役6年を言い渡した(Dは懲役4年6ケ月、出所後は国外退去)。ジュリアスさんは、その後控訴、上告も棄却され、2006年刑が確定、神戸刑務所で服役、2009年1月に出所した。

出所したジュリアスさんには退去強制命令書がだされ、大阪入管収容所に移された。処分取り消しを求める裁判でジュリアスさんは、仮放免という措置で拘束を解かれたが、裁判所は「有罪判決が事実誤認であることを当該外国人が立証すべき」と求めた。ジュリアスさんと家族は、再審無罪を勝ち取ることでしか、共に暮らし続けることができなくなった。

◆それでも「正義の人」はいた

ジュリアスさんと奥さんは、何度も神戸地裁姫路支部に通い、再審に向け新たな証拠を探し続けていた。そこにいつも親切に応対してくれる検察事務官がいた。

ある日ジュリアスさんが、証拠ファイルを見ていると、「コピーはできないが撮影してもいい」と言ってくれた。それは犯人が被っていた目出し帽に付着していた毛髪の鑑定書だった。弁護団がジュリアスさんの毛髪鑑定を行い比較したところ、「いずれも形態的に類似性に乏しかった」との結果がでた。

その後、犯人の1人が被っていた目出し帽が還付された。鑑定の結果、帽子から3人のDNA型が検出されたが、すべてジュリアスさんのものとは一致しなかった。事務官はジュリアアスさんに「無罪を信じている」とも言ってくれたという。

ジュリアスさんが「正義の人」と呼んだ事務官は、その後、懲戒免職を受けた。一方、ジュリアスさんは、彼から受けた証拠を新証拠として、2012年3月、神戸地裁姫路支部に再審請求を申し立てたが、2014年3月に棄却された。

刑事裁判では、ジュリアスさんが実行犯か否かが争点だったにもかかわらず、棄却判決は、ジュリアスさんを実行犯の1人であると認定できないとしながら、電話などの遠隔操作で指示を与えたりなどした共犯者であるという推測が妨げられないとした。

ジュリアスさんの代理人・池田崇志弁護士

これに対して2016年3月、大阪高裁は「姫路支部は、これまで争点になかった認定をしており、男性に主張、立証の機会が与えられず、審理が尽くされていない」とし、審理を神戸地裁に差し戻したが、神戸地裁は再び請求を棄却、ジュリアスさんは、最高裁に上告を申し立てていたが、今回棄却された。しかも、裁判を担当する池田弁護士が急病で倒れたため、ジュリアスさんと守会は最高裁に決定を待つよう要請し、後任弁護士の相談を進めていた矢先の棄却。血も涙もない不当決定である。

一方、ジュリアスさんは、国と兵庫県に対して「無実を証明する証拠を改ざんされた」などとして国賠訴訟を提訴していたが、神戸地裁は、請求権は20年の時効によって消滅したと請求を退け、現在、裁判は大阪高裁で争われている。同時に再度再審を申し立て必ず無罪を確定しなくてはならない。日本で家族と過ごすために。今後の裁判にご注目を!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

3月14日、2020年に政府が行ったコロナ支援策「特別定額給付金」を、住民票がないことを理由に、給付されなかった、大阪市西成区内に居住していた10名が、大阪市・松井一郎市長を提訴した。

原告の1人Sさんに「裁判が始まるよ」と報告した

◆2007年、釜ヶ崎に暮らす2088名の住民票を強制削除した大阪市

「特別定額給付金」は、新型コロナウイルスの感染が猛威を振るい始めた2020年、すべての人を対象にした唯一出された支援対策であった。政府は、4月20日、一律10万円の特別定額給付金の給付を閣議決定、その際、2020年4月27日付けで、住民基本台帳に名前の記載がある者、つまり住民票がある者と条件づけた。

しかし、ご存知のように、釜ヶ崎には、様々な理由で住民票を持てない者がいる。野宿生活を余儀なくされた人たち、ドヤ、アパートに住んでいるが、そこでは住民票が取れない人たち、元の住所あるいは本籍地から、様々な理由で住民票を移せない人たちだ。

かつて、大阪市は、釜ヶ崎では住民票が取れない労働者に対して、白手帳(日雇い労働者の失業保険)をとったり、各種資格を取る必要がある場合には、釜ヶ崎地域合同労組が入る「解放会館」などで住民票を置くことを進めておきながら、2007年2088名の住民票を強制削除した。今回、住民票がない人の中には、その被害者もいた。

アルミ缶、銅線などを集めて暮らす彼は「解放会館」に置いていた住民票を強制削除された被害者だった

◆市長室にはほとんどいない松井市長

私は、釜ヶ崎地域合同労組、日本人民委員会、釜ヶ崎炊き出しの会、釜ヶ崎公民権運動のメンバーとともに、大阪市・松井市長に対して、住民票を持たない、持てない人たちにも必ず給付金を渡すようにと要請活動を行ってきた。4月28日、西成区役所に要請行動を行った際、「給付については大阪市役所市民局が行う」と返答されたため、5月8日、松井一郎・大阪市長と大阪市役所市民局に対して「特別定額給付金が、住民票をもっていない人にも必ず渡るように」との要望書を提出した。

市長室にも要望書を届けようとしたが、松井市長は市長室にいないことがほとんどで、いつも秘書課職員に渡すだけで終わった。松井市長は、登庁する日も、ほかの自治体首長と違って極端に低いようだ。しかも、この時、市民局の職員はわずか12名しかいない一方で、IR事業、大阪万博を推進する副首都推進局のスタッフは80名もいた。大阪市は、根本的に、住民の命を守る気などないのだ。

◆行政の責任者は、すべての人に行き渡る施策を執る努力をすべきなのに……

その後も大阪市は、「給付対象者は令和2年4月27日において、住民基本台帳に記載されている者であること」と繰り返し主張するばかりであった。しかし、この給付金は、コロナウイルス感染拡大防止に伴う自粛要請などで経済活動が停滞するなか、「簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計へ支援を行う」(実施要項)として、国から唯一出された支援策であり、各自治体、行政の責任者は、すべての人に行き渡る施策を必死で執る努力をすべきだった。

実施要項には、「記載がなくてもそれに準ずるものとして、市町村が認める者を含む」とあり、実際、DVで、住民票のある家からシェルターなどに避難している人や、出生届けが出されず、戸籍の記載がない約800名の「無戸籍者」なども受け取れるような緊急措置が、各自治体で執られ、じっさいに給付されていた。

「住民票のあるなし」にこだわり続けていた大阪市は、その後、NPO釜ヶ崎支援機構が運営するシャルターに、1日でも泊まれば、そこで住民登録を行うとした。しかし、シエルターに泊まることが嫌だから、野宿している人がいることも事実だし、前述したように、様々な理由で住民票をとることが困難な人、あるいは嫌な人がいることも事実だ。

人権問題に詳しい弁護士の南和幸さんは「給付金について、ホームレスの人だから、受け取る権利がないというのは間違い。住民票のあるなしは、権利のあるなしの問題ではなく、とのように受け取れるかの手続きの問題でしかない。それについて、この住民登録があるないだけで、権利があるなしかのように取り扱うのは間違いである」と述べている。

つまり、野宿している人が、その場で、本人確認が行われればいいのだ。大阪市は回答書には、住民登録されれば給付対象となることなどを「周知を図ってまいります」とあるが、野宿者に「周知」して回る際、その場で野宿者の名前、本籍などを確認すればいいではなかったか。じっさい、2008年リーマンショック後の2009年、一律12000円が支払われた給付金の際には、住民票を持たない野宿者らが、西成市役所1階のロビーで、職員らにより本人確認の手続きが行われ、給付金をうけている。今回も同じようにするよう要請したが、「コロナなので」を理由に断られた。何百人も殺到する訳でもないのに。

閉められたままのセンター(右)と、南海電鉄高架下に入ったセンター仮庁舎(左)

◆住民票がないことを理由に特別定額給付金を給付をしないのは違法である

私たちは、2020年8月18日、原告10名とともに、原告の住所、氏名、生年月日を記載した特別定額給付金申請書を持参し、被告である大阪市西成区保険福祉センター分館に赴き、申請を行った。しかし、松井市長により、住所地に住民登録がないとの理由で、給付がなされなかった。そのため、10名の原告から委任状を受け、今回提訴することになった。

訴状によれば、「ホームレス状態にある原告らに被告が、住民登録がなされていないことなどを理由に、特別定額給付金の給付をしないことは、憲法14条及び31条が規定する平等原則及び比例原則に反する。よって、被告の原告らに対する本件給付金の不給付は、いずれも、被告大阪市長に与えられた実施主体としての裁量を逸脱あるいは濫用するものであって、違法であることは明らかである」としている。

さらに「被告の公権力の行使にあたる公務員は、原告らのように、ホームレス状態にある人々に対し、その状態に相応しい住民登録の方法を工夫するなどして、特別定額給付金の給付を実施すべき義務があるにもかかわらず、これを漫然放置し、不給付とした点において、重大な過失がある。従って被告は国家賠償法第1条により損害を賠償する責任に任ずる」とし、「原告らは、本件申請拒否によって、各自、少なくとも、給付額と同額の被害を蒙った」として、1人10万円の損害賠償請求を行った。

今回弁護団を構成する武村二三夫弁護士、遠藤比呂通弁護士、牧野幸子弁護士は、いずれも釜ヶ崎のセンターをめぐる訴訟、監視カメラ訴訟の弁護団を兼任し多忙を極めていたため、提訴が遅れてしまった。しかし、いよいよ裁判は始まった。全国でもおなじように、住民票がないことを理由に受け取れなかった人がいるのではないか。ぜひ、この裁判にご注目していただきたい。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年4月号!

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

3月7日、水戸喜世子さんのご自宅で、脱被ばく子ども裁判の控訴審と、被ばくで甲状腺がんを発症した若者6人が東電を訴えた裁判についてお話を伺った。居間に通されるなり、目についたのが水戸さん手作りのプラカードだった。ロシアのウクライナ侵攻から2週間以上経過し(3月7日現在)、世界中で反戦の声が高まっている。

とりわけロシアがウクライナの原発を攻撃したことで水戸さんの怒りが最高潮に達した。こうした事態を予測していたかのように、2017年7月、水戸さんは、日本の原発へのミサイル攻撃を懸念し、運転差し止めの仮処分を提訴した。裁判は敗訴。その苦い経験から、懸念したことが現実となった今、「心配していたことが現実になって寒気がする」と話される。 (聞き手・構成=尾崎美代子)

◆世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう

 

高槻駅で続けられるスタンディングに立つ水戸さん(写真提供・二木洋子さん)

水戸 去年から、ずっと眩暈がひどくて、家でも何かにつかまって歩いていたのですが、ロシアの武力攻撃を知って、いてもたってもいられなくて、キャリーを引きずってスタンディングに参加するようになりました。

2017年、今頃の季節でしたね。北朝鮮が弾道ミサイルを立て続けに発射したことがありました。その時、私はたった一人で、高浜3、4号機の運転差し止めの仮処分を大阪地裁に提訴したのです。あのときは内閣総理大臣が自衛隊法の「破壊措置命令」、つまりミサイルが飛んできたら撃ち落としていいという指示を発令していたのです。

新幹線を運休したり、東京では地下鉄も止めましたよね。子どもまで学校で真剣に避難訓練をさせられ、登下校時の注意書きまで、学校から家庭にお手紙が配られました。戦時中、警戒警報や空襲警報のたびに防空頭巾をかぶって、机の下にもぐった国民学校時代のドキドキした息の詰まるような記憶がよみがえって、言葉にならない怒りがこみあげてきました。国民学校3年の3月です。家の地下に掘った防空壕では危険だからと、商品取引所の地下室に逃げて、命だけは助かりましたが、家は焼けて、着の身着のまま、弟の手を引いて、逃げた時の記憶は消えないのです。 二度と子どもに、あんな思いはさせないぞと強く願って生きてきましたから。

 

高槻駅陸橋で行われているスタンディング。3月10日、働いている人たちにもアピールしようと、夕方から行われた(写真提供・二木洋子さん)

「原発は、自国に向けた核爆弾だ!」ということは世界の常識。国が知らない筈はないのに原発を動かしたまま、子どもまで動員して避難訓練させる安倍内閣の意図をマスコミも指摘しないという呆れ果てた世情に怒り絶頂だったのです。

そんな時、河合さんから電話があって「水戸さんはどう思う?」と言われたので「訴訟したい!」と二つ返事だったのです。同志に出会えた、と本当に嬉しかった。政府のいかさまを裁判長に見抜いてほしい、万一訴訟に負けても世間に「ミサイルと原発」を意識してもらうきっかけになるし、安倍政権の危険な世論操作に気づいてもらえる、そんな思いでしたね。

本当に危険であれば、真っ先に原発を止めるのが常識だってことを、今度のウクライナ侵略戦争が、世界に示したと思います。キエフの住民たちも、まさかこんな戦争になるとは思わなかったと語っているように戦争はいつの時代も突発的です。世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう。

◆プーチンも教科書でトルストイを読んでいるはず

 

水戸喜世子(みと・きよこ)さん 子ども脱被ばく裁判の会・共同代表。1935年名古屋市生まれ。お茶の水女子大学、東京理科大学で学ぶ。反原発運動の黎明期を切り開いた原子核物理学者・故水戸巌氏と1960年に結婚後、京大基礎物理研究所の文部教官助手就任。1969年「救援連絡センター」の設立に巌氏とともに尽力。2008年から2年間中国江蘇省建東学院の外籍日本語教授。2011年3月11日以降は積極的に脱原発・反原発運動にかかわる。

── プラカードに書いてある「トルストイが泣いている」に込めた思いは?

水戸 私はヤースナヤ・ポリャーナにあるトルストイの生家に行ったことがあるんです。植民地文学学会の西田勝先生(故人)が「トルストイの旅」という小さな企画をされて連れていって貰いました。

広大なお屋敷にはお孫さんの家族が住んでおられて、小さな女の子が真っ白の馬に乗っていました。私は高3の頃、教科書がきっかけでトルストイを読みふけるようになりました。弱者への目、深い洞察からの非暴力主義に、とても感銘を受けたような気がします。ロマン・ロランやマルタン・デュ・ガールなど長編小説にのめりこむきっかけでした。

彼は貴族の出身ですが、弱い人と共にありたいという思いが強く、晩年は家出をして、どこかで死んでしまったのだと記憶しています。『アンナ・カレーニナ』など時代を超えて、ロシアで一番愛され、読み継がれているのがトルストイです。ロシア人の心のふるさとであり、プーチンも間違いなく少なくとも教科書では読んでいるはずです。トルストイの非暴力主義の前で、トルストイを心のふるさととするロシアの民衆の前で、己の行為を恥じてほしいのです。

◆日本の原発のテロ対策

── ウクライナではザポリージャ原発を守ろうと周辺の住民がロシア軍に抵抗しましたが、日本の原発のテロ対策はどうでしょうか?

水戸 規制委員会が要求している原発のテロ対策工事は、テロなどで飛行機が落ちても大丈夫な程度の工事です。ミサイルで狙われたらどうなるか、3月9日の衆議院経済産業委員会で立憲・山崎誠議員の質問に対して、「放射能の拡散は避けようがない」と規制委員会の更田委員長が答えています。私が仮訴訟を起こした頃は、規制委員会は機密に属することなので、と明言しなかったのですが、はっきり言いきったのは今回が初めてですね。

関電側は耐えられると強弁していましたが。 めったに起きないテロ対策を電力会社に要求したのですから、ミサイル発射に対して、対策工事を規制委員会は電力会社に要求すべきです。無防備衛あることを認めたのですから。

◆福島の被ばくの闇の深さ

── まもなく11回目の3・11を迎えますが。(3月7日当時)

水戸 「子ども脱被ばく裁判」がいま控訴審の最中で、毎日が3・11ですから、特別の感慨はありません。福島を振り返るのはまだずっと先のことのような気がしています。

昨日(3月6日)FoE japan主催の国際集会があって、私はズーム参加しました。基調報告で武藤類子さんが福島の現状として被災者切り捨て、矛盾を地元に押し付けたままの見かけの復興、進まぬ廃炉作業、加害責任を果たさない姿などを具体的に話され、改めて、心が引き締まりました。早急に被害者への補償と原発の後始末をさせる、脱原発を実現すること。頑張らねば、と思います。

類子さんの話で私が衝撃を受けたのは、「この1年で友人が6人亡くなりました」と語っておられたことです。数年前にお会いした時も、「今年一年で5人の友人が亡くなったの」と顔をくもらせておられたことと重ねて、福島の被ばくの闇の深さに言葉を失う思いがしました。一体いつまで、国と御用学者は『被ばく者はいない』とごまかし続けるつもりなのか、闘いの本命です。広島・長崎の被ばく者から学ぶことがとても大事ですね。

少し先ですが、5月21日、地元高槻市の高槻現代劇場文化ホール2階で「黒い雨訴訟」の原告である高東征二さんをお呼びして「切り捨てられる被ばく 黒い雨から福島へ」と題した講演会を行っていただきます。ほかに「子ども脱被ばく裁判」主催の展示・学習会も致します。第一歩を踏みだしました。どうぞみなさまもお集まり下さい。

5月21日大阪・高槻市で開催される講演会「広島・長崎から福島へ続く核被害~内部被ばくの危険性を考える」&写真展「広島黒い雨から福島へ」

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
『NO NUKES voice』改題 通巻31号
紙の爆弾2022年4月増刊

2022年3月11日発売
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

《グラビア》福島第一原発現地取材(写真・文=おしどりマコ&ケン
《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原子力は即刻廃絶すべきもの

樋口英明(元裁判官)
原発問題はエネルギー問題なのか

中村敦夫(俳優/作家)
表現者は歩き続ける

井戸謙一(弁護士)
被ばく問題の重要性

《インタビュー》片山夏子(東京新聞福島特別支局長)
人を追い続けたい、声を聞き続けたい
[聞き手・構成=尾崎美代子]

おしどりマコ(漫才師/記者)
事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
犠牲のシステム 数兆円の除染ビジネスと搾取される労働者

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream〈サンドリ〉代表)
「いつまで避難者といってるのか?」という人に問いかけたい
「あなたは避難者になれますか?」と

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
沈黙と叫び 汚染水海洋放出と漁師たち

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈最終回〉
語られなかったものは何か

《講演》広瀬 隆(作家)
地球温暖化説は根拠のないデマである〈前編〉

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
原発は「気候変動」の解決策にはならない

細谷修平(メディア研究者)
《新連載》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈1〉
真の暴力を行使するとき――『人魚伝説』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
機を見るに敏なんて美徳でも何でもない

板坂 剛(作家/舞踏家)
大村紀行──キリシタン弾圧・原爆の惨禍 そして原発への複雑な思い!
 
佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
“騙(かた)り”の国から“語り部(かたりべ)”の国へ
絶望を希望に転じるために いまこそ疑似「民主国」ニッポンの主客転換を!

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈15〉
森友学園国有地売却公文書 改ざん国賠・『認諾』への考察

再稼働阻止全国ネットワーク
国政選挙で原発を重要争点に押し上げよう
7月参議院選挙で「老朽原発阻止」を野党共通公約へ
《全国》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《全国》石鍋 誠(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《六ヶ所》中道雅史(「4・9反核燃の日」全国集会実行委員会)
《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
《反原発自治体》反原発自治体議員・市民連盟
《東海第2》披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)
《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
《規制委・経産省》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍

季節編集委員会
我々はなぜ『季節』へ誌名を変更したのか

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B09TN1SL8X/

3月7日、久しぶりに高槻市の水戸喜世子さんのご自宅にお邪魔した。2月14日、仙台高裁で2回目の期日が開かれた「子ども脱被ばく裁判」の控訴審と、1月27日、3・11の原発事故の被ばくにより甲状腺がんを発症した6人の若者が東電を訴えた「311子ども甲状腺がん裁判」について、お話を伺ってきた。 (聞き手・構成=尾崎美代子)

 

水戸喜世子(みと・きよこ)さん 子ども脱被ばく裁判の会・共同代表。1935年名古屋市生まれ。お茶の水女子大学、東京理科大学で学ぶ。反原発運動の黎明期を切り開いた原子核物理学者・故水戸巌氏と1960年に結婚後、京大基礎物理研究所の文部教官助手就任。1969年「救援連絡センター」の設立に巌氏とともに尽力。2008年から2年間中国江蘇省建東学院の外籍日本語教授。2011年3月11日以降は積極的に脱原発・反原発運動にかかわる

◆「子ども脱被ばく裁判」5つの争点

水戸 2月14日の2回目の期日は、私は体調が悪くて行けませんでしたが、井戸謙一弁護士から頂いた期日報告に沿っておおまかに説明します。

1つ目は、国の意見の中に「1ミリシーベルトの被ばくをしない利益が法的保護に値しない」というのがあります。この1ミリシーベルト被ばくしても当たり前という国の言い分に対して弁護団は、1ミリシーベルトがどれだけ危険かと準備書面で反論しました。ICRP(国際放射線防護委員会)は、100ミリシーベルト以上浴びると癌で死ぬ確率が0.5%高まると主張しているので、それに基づいて計算すると1ミリシーベルト浴びると年間350人が死ぬことになる。

一方、日本の環境基本法は、大雑把に言って生涯それを飲み続けた場合に、10万人に1人がん死するようなものを「毒物」と規定しています。東京の豊洲市場の地下水が汚染され、ベンゼンが検出されたが、それをずっと飲み続けると10万人に1人以上が亡くなるということで大騒ぎになった。一方で1ミリシーベルト被ばくすると、10万人中350人の死者が出るという環境を放置していいというのが「法的保護に値しない」という内容で大嘘ですね。

2つ目は、「裁量論」についてです。判決では、安定ヨウ素剤を飲ませなかったのも、スピーディーを公開しなかったのも、授業再開も行政の裁量権の範囲内であるというものでした。つまり、法律で決められていることもあるが、決められてないこともある。放射線に関しては事故を想定してないから、決められてないことのほうが多い、そのときは、行政の裁量権に任すしかないというわけです。

── ヨウ素剤を飲ませる、飲ませないも、各自治体、現場の判断に任せると。

水戸 そう。でもそれは違うでしょう。命に関わる重要なことを行政が勝手に決めていい訳がないというのが、弁護団の言い分です。法の取り決めがない場合、では何を根拠にするかというと、1つは憲法、もう1つは国際法です。 それを準備書面の[5]で提出しましたが、未完成だったので、次回に改めて提出します。

── 国は、控訴人らによる「被災者の知る権利」の主張に対し、反論を拒否したとありますが、反論を拒否するとは?

水戸 「あなたたちは独特の理論を主張しているから、勝手にやってください」という態度だと、井戸弁護士は仰ってました。この裁判は、前に話したように、放射線についての国内法が整備されていないのですから国際人権とか憲法とか、もっと大きな土台の上でやっています。放射線に対する規制がないからなのです。環境基本法にもやっとこの間、放射線の項目をとりこむことはできたが「教室なら、この線量以下で」とかの基準とすべき具体的な数字は、今も一切出ていません。いかに安全神話のうえにあぐらをかいていたかということですよね。

「子ども脱被ばく裁判」裁判前集会(武藤心平さん撮影)

── 3つ目の、控訴人が「国賠訴訟」を追加したというのは?

水戸 子ども人権裁判は義務教育を受けている子どもが原告になって訴訟をおこしたが、もう中学生が4人しかいなくなった。それで裁判が自動消滅したら困るので追加訴訟を加えました。安全なところで義務教育を受けられなかったので損害賠償をしろと。でも、福島市、郡山市、いわき市は、裁判の途中で新たに追加するのは「違法だ」と異議を申し立ててきた。裁判長もちょっと首をかしげてます。次回却下されるかもしれないが、さらにしっかりと反論していくことになります。

4つ目が、危険な環境の施設で教育をしてはいけないという原告の要求に対して裁判長から、地方自治体の学校指定処分とどのような関係になるのか、子どもがいれば学校を作るという規則がある、でも今の学校では線量が高いから教育を行ってはいけないということの関係性はどうなるのですかと聞かれ、次回弁護団から説明することになりました。一時的に線量の低い地域に避難して教育を継続出来るのですから矛盾することではありません。安全な環境で教育をうける権利という教育基本法を根拠に反論していくでしょう。

5つ目は、原告の意見陳述で、Aさんが、無用な被ばくをさせられてしまったため、子どもに何か体調が悪いことがあると、被ばくと結び付けて考えてしまうという苦しさについて述べられました。

「子ども脱被ばく裁判」街頭で訴える(武藤心平さん撮影)

◆「311子ども甲状腺がん裁判」甲状腺がん発症者6人による生身の訴え

 

「311子ども甲状腺がん裁判」報告集会の様子

── 先日、東電を提訴した6人の訴訟ですが、弁護団は子ども裁判とほぼ一緒だそうですが?

水戸 ええ、私たちは無用な被ばくをさせられたこと、安全な環境で教育を受ける権利を争っていますが、6人の訴えは生身の訴えですものね。一見理念的にみえた子ども脱被ばく裁判が突如リアリティを伴って立ち現れた思いがして衝撃でした。6人は実際に甲状腺がんを発症し、全員が2回から4回の手術を受けている。経緯は子ども裁判の主張と完全に一致するので、脱被ばく子ども裁判弁護団は全員入り、ほかに海渡弁護士なども加わり、弁護団がつくられています。17歳から27歳までの若者が自分の人生をかけて法廷に立つのですから、何としても勝利したいと思います。

── 提訴後の報告会に私も出席しました。皆さん、10年間孤立していた。先日、井戸弁護士と河合弁護士が出席した日本外国特派員協会の記者会見で、6人の方々は河合弁護士のところに相談にきたと仰ってましたが。

水戸 崎山比早子さんが代表で河合弁護士に関わっておられる「3・11 甲状腺がん子ども基金」などでも繋がる機会はあったんでしょう。福島県立医大は嫌だからと避難先の病院で見てもらっている人もいるし、患者さんは孤立していて、繋がるのは本当に困難だったと思います。その意味でも氷山の一角ですね。「黒い雨裁判」の原告を足を棒にしてつないで歩いた高東征二さんのご苦労から学ばねばと思います。

── 今後、子ども裁判と6人の裁判はどのように闘われるでしょうか。

水戸 全く別の裁判として展開されるのは当然ですが、私は、子ども裁判には、絶対「黒い雨裁判」の成果を取り込まないと勝てないと思っていて、子ども裁判の通信に書かせて頂きました。まだ弁護団のなかで話しあわれてはいませんが。

「黒い雨裁判」の一番のポイントは、黒い雨には明らかに放射能が含まれていて、降った地域の野菜を食べたり、空気を吸って内部被ばくしたことを認めたこと。広島県がとても偉いと思うのは、アンケート調査を何度もやり、降雨地域で病気になった人が非常に多いという事実をつかんだこと。これは外部被ばくだけでは全く説明がつかない。だから残留放射線を浴びた人、食べ物や空気から放射線を吸った人が内部被ばくしたということを、広島地裁も高裁も認めたわけです。地裁は、国の決めた11の疾病にり患していることを根拠にしたが、高裁は、内部被ばくは晩発性だから、今そういう病気がでていなくても、いつでてくるかわからないから、黒い雨を浴びた人全員被ばく者と認定した。そうしないと、一般のがん患者と放射線によるがん患者の区別は今の医学では因果関係を証明できないと思います。本質の到達出来ない時には、現象から迫るのは科学の手法であると、武谷三男の三段論法論で説かれていますけどね。

6人の裁判は「311甲状腺がん子どもネットワーク」が中心に支援していますが、私たちの子ども裁判も実質的に支援していきます。6億円超の損害賠償を求めていますから、訴状の印紙代だけでも大変な額になります。裁判をおこすということは本当に大変。でも一人1億円なんて、若い人の一生涯のことを考えると、小さな額だと思いますよ。 とくに親はどんなに辛いかと思いますよね。私たちの力不足を若者たちにお詫びしたいです。今回のウクライナもそうですが、私は、大人の愚かさのために、無邪気な子どもたちが犠牲になることだけは本当に耐えられません。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

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事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

《グラビア》福島第一原発現地取材(写真・文=おしどりマコ&ケン
《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原子力は即刻廃絶すべきもの

樋口英明(元裁判官)
原発問題はエネルギー問題なのか

中村敦夫(俳優/作家)
表現者は歩き続ける

井戸謙一(弁護士)
被ばく問題の重要性

《インタビュー》片山夏子(東京新聞福島特別支局長)
人を追い続けたい、声を聞き続けたい
[聞き手・構成=尾崎美代子]

おしどりマコ(漫才師/記者)
事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
犠牲のシステム 数兆円の除染ビジネスと搾取される労働者

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream〈サンドリ〉代表)
「いつまで避難者といってるのか?」という人に問いかけたい
「あなたは避難者になれますか?」と

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
沈黙と叫び 汚染水海洋放出と漁師たち

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈最終回〉
語られなかったものは何か

《講演》広瀬 隆(作家)
地球温暖化説は根拠のないデマである〈前編〉

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
原発は「気候変動」の解決策にはならない

細谷修平(メディア研究者)
《新連載》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈1〉
真の暴力を行使するとき――『人魚伝説』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
機を見るに敏なんて美徳でも何でもない

板坂 剛(作家/舞踏家)
大村紀行──キリシタン弾圧・原爆の惨禍 そして原発への複雑な思い!
 
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“騙(かた)り”の国から“語り部(かたりべ)”の国へ
絶望を希望に転じるために いまこそ疑似「民主国」ニッポンの主客転換を!

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山田悦子の語る世界〈15〉
森友学園国有地売却公文書 改ざん国賠・『認諾』への考察

再稼働阻止全国ネットワーク
国政選挙で原発を重要争点に押し上げよう
7月参議院選挙で「老朽原発阻止」を野党共通公約へ
《全国》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《全国》石鍋 誠(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《六ヶ所》中道雅史(「4・9反核燃の日」全国集会実行委員会)
《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
《反原発自治体》反原発自治体議員・市民連盟
《東海第2》披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)
《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
《規制委・経産省》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍

季節編集委員会
我々はなぜ『季節』へ誌名を変更したのか

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