6月22日(日)原口剛氏講演 ── 釜ヶ崎から考える「反万博論」にお集りを! 大阪・関西万博の何が問題かをとことん考えてみよう!!

尾﨑美代子

大阪・関西万博だが、開幕前に予想していた以上の問題が噴出している。中でも釜ヶ崎に関わる者として気になるのは下請け業者への工事費未払い問題だ。アンゴラパビリオンを請け負った5次下請けの業者には約4300万が支払われないままだ。その下はひとり親方の業者だ。すぐに支払いがないとメシも食えないぞ。アンゴラのほかにもネパール、マルタ館も未払いだそうだ。もとは業者が集まらない中、「どうにかして、助けて」と呼び掛けていたくせに、国も大阪府・市、そして万博協会もしらんぷりだ。余りに無責任ではないか! 

「今回の万博は酷いが70年万博は良かった」という人もいる。しかし、それは大間違い!万博や五輪などメガイベントはずっと労働者を犠牲にしてきたのだった。

2019年1月5日西成区民センターで開催した「日本一人情のある街、西成が無くなる!?」、私も進行をさせて頂いたシンポジウムのコーナーで、島和博さん(大阪市立大人権問題研究センター)がこう話していた。

「一番大事なのは、釜ヶ崎は行政によって作られてきたということです。証拠ははっきりあります。70年大阪万博の前に、大阪府の労働局が『労働者を送ってくれ』とお願いをだした。その結果として大量の若い労働者が西日本を中心に釜に集められた。釜ヶ崎は国家によってつくられた。そうして作られた労働者が『もういらない』といわれている。これは絶対おかしい。普通の企業なら大問題になり、闘争が起こります。センターの撤去に象徴されているのは端的にこれは首切りです。釜の場合、個々の労働契約は個々に結んではいませんがね。『必要だから釜ヶ崎に来てね』といわれ集められたのに、今度は『もう必要なくなったから野たれ死んでね』といわれている、それの象徴的なあらわれがセンターの撤去です。『お前らが来い言うて釜ヶ崎に働きに来たのだから、死ぬまで面倒みろよ』ということでしょう。最盛期には約3万人の日雇い労働者が働いていた。国が呼び寄せた。それをさんざん安くこきつかって、『もういらないからどっかに消えて』という。あるいはせいぜいよくて3畳一間の福祉マンションに囲い込んで飼い殺しにする。普通の労働現場では『新しい機械入れたから、あんたは首や』などとは絶対できないが、釜ヶ崎では言えている。そこのところをぜひ皆さんには理解してほしいなと思います。」

そして22日、お話をされる原口さんも、70年万博当時も大量の労働者が犠牲になったと話されている。70年万博の工事では、尻無川水門事故で11名が生き埋め死亡、会場造成工事で17人が死亡、開幕後も万博関連事業の一環である地下鉄天神橋筋六丁目の建設工事では、ガス爆発で79名死亡、420名重軽傷の犠牲を出すなど、多くの労働者が犠牲になっている。

今回も万博だけを見ていてはわからない。万博開幕と同時に工事が始まったIR・カジノ事業の建設工事など、その前後に関連事業がやまほど行われる。それもすべて私たちの税金、そして、そこでどんだけ労働者が犠牲になることかわからない。 
そう、「70年万博は良かったのに……」ではないのだ。

そして万博などメガイベント開催と共に強化される差別と排除、釜ヶ崎でも露骨に進んでいる。

「万博は社会的弱者を排除する装置として機能しているのだ」

「万博の何が問題なのか?」

開催されている今だからこそ、みんなでとことん考えてみよう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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特区民泊が増え続ける西成区、大丈夫か?

尾﨑美代子

大阪市内に増え続ける特区民泊、なかでも西成区は突出して多い。ほかに中央区、浪速区も多く、それぞれ1000件を超えている。確かに、ここ数年、ちょっとした道路に面して建設される多くの建物が民泊だ。全体的に日本家屋っぽい造り、入口にのれん、猫の額ほどの庭に、これまた日本っぽい樹木が植えられている。

しかし、民泊の名前が微妙だ。明らかに日本人がつけた名前ではない。知らない感じも使われている。実際、6割が中国人経営だそうで、香港、台湾を含めると8割にも上るそうだ。中には移住する人も。

ひとつき程前、毎日通うスーパー近くの小路に大きめなキャリーバッグをゴロゴロ転がした白人系のインバウンド客が10人ほどで入っていくのを目撃。「おいおい、どこいくんだよ。行き止まりじゃないのか?戻って来いよ」とのんびり見てたのだが……。

先日、そのスーパーに行ったついでに小路に入ってみた。写真は出さないが、古い一般住宅の間に民泊、また民泊。空き地もあるが、ここにも民泊が出来るのだろうか?この小路を突き抜け、左に曲がると、民泊ブランド「住一」が手掛けた一棟建て民泊が10数件立ち「住一VILLA花園町」もある。

このように、民泊名に日本では使われない文字が入っているのも特徴だ

それにしても、近隣住民の皆様はなんとも思わないのか? いや、中国人、外国人が危ないというのではない。ただ、ゴミを放置、昼夜構わず、キャリーバッグごろごろ、入室方法がわからず、隣の家にピンポンで「どーやってはいるのですか?」と尋ねるとか、様々な苦情も報道されている。「民泊建設反対」の声をあげる地域もあるほどだ。さきごろ、大阪市が売り払った土地に、14階建て200室以上もの部屋を有する民泊が建設済みで、まもなく運営されようとしているとの報道が。この規模の民泊なら、実質ホテルといってもいいくらい。しかし、ホテルや旅館より縛りが緩いため、さまざまな問題が起こるのではと近隣住民からは反対の声もあがっている。

こうした背景について、安倍政権時の2015年に「経営管理ビザ」を規制緩和したことがきっかけではないかとのことだ。

※編集部:2015年4月1日施行の入管法により、それまで「投資・経営」ビザと呼ばれていたものが「経営・管理」ビザに変更された。この改正により、外国資本との結びつきに関する要件がなくなり、国内資本企業の経営・管理を行う外国人にも「経営・管理」ビザが付与されるようになった。
※[参考]外国人経営者の在留資格基準の明確化について(出入国在留管理庁)
 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html

いずれにしても、今後、何らかの規制が必要なのではないか? いや、「もう、これだけ出来てるのだから、もうおせえよ」なのか。

しかし、この小路の住民は大変やなあ。誰も文句言わないのかな?と見てたら、小路入口の店舗が維新の会のメンバーのご実家だった。関係あるのか、ないかは定かではない。

◎[参考動画]テレビ大阪ニュース【急増する民泊と中国人】大阪を飲み込むチャイナマネー…500万円で日本に住める!?「経営管理ビザ」の実態とは?

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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7・12「鹿砦社反転攻勢の集い・関西」にお集りを!

尾﨑美代子

7・12「鹿砦社反転攻勢の集い・関西」にお集りを! 私も発起人になっています。

私と鹿砦社の関係をお話します。鹿砦社の松岡氏は以前から知っておりましたが、2005年松岡氏が不当逮捕された時期にはほとんどつきあいはありませんでした。なので一番大変な時期に救援も支援も出来てませんでした。

ふたたび、知ることになったのは、3・11以降でしょうか。月刊『紙の爆弾』も読ませていただきました。そんなおり、鹿砦社から反原発季刊誌『NO NUKES voice』(2014年8月創刊。現在の『季節』)が発刊されました。3・11以降、釜ヶ崎の仲間と反原発、反被ばく問題に取り組んでいた私は気になって購入しました。

ところが、内容は、いわゆるミサオ・レッドウルフ氏率いる「首都圏反原発連合」(以下、反原連)関係の記事が大半でした。松岡氏は反原連に結構な額のカンパを送っていました。のちに聞いたところ、反原連に送ったカンパは、鹿砦社が信頼し、懇意にしている「たんぽぽ舎」にも流れていると勘違いしていたそうです。

記事の中でも極めつけはミサオ氏へのロングインタビュー、ロングとあるだけにかなりの紙幅でした。ミサオ氏はそこで、「被ばく」のひの字を一回も使わずに反原発を淡々と論じてました。ある意味、すごい「芸当」だと感心したものです。3・11以降は小泉純一郎だって反原発です。では、私たちはなぜ原発に反対するか? それは、被災者に住民に労働者に無用な被ばくを強い続けるからではないですか?

その後、ある事件をきっかけに反原連と鹿砦社は袂を分かつことになり、以降、鹿砦社の反原発誌は、反原発と同時に反被ばくを強く打ち出すようになりました。反原連と袂を分かつきっかけとなったのが、また衝撃的でした。その後、松岡氏、鹿砦社で、大々的に支援を始めることになった、カウンター内でのM君リンチ事件でした(筆者注・2013年東京新大久保、大阪鶴橋などで、在特会などによる、「朝鮮人殺せ」などとヘイトスピーチ[憎悪表現]を煽るデモが増えた。これに対してカウンター[対抗]行動を行う人たちがでてきた)。

じつは、偶然ですが、2013年鶴橋で行われたネトウヨらの差別的なデモ行進には、私もカウンターの一員として参加していました。M君はカウンターに最初から参加していました。私はその後、あることがきっかけで参加を止めてました。いわゆる鹿砦社のM君リンチ事件本に、私のそのいきさつを寄稿しています。関心のある方はぜひお読みください。

詳細は省きますが、その後、M君へのリンチ事件が発覚します。松岡氏らはM君への支援を始めます。その経緯もリンチ本でご確認ください。

私は特に、反差別、反権力を訴える方々が、リンチした側に付いたことに非常に驚き、M君裁判を傍聴するなどして支援してきました。

長々書きましたが、私は反原発や野宿者問題、そして冤罪事件などに関わっていますが、その中で、とりわけミサオ氏らの被ばくを矮小化、あるいは被ばくに反対する人たちを攻撃するような反原連の反原発運動に反対であることと、その反原連運動の延長線上にあるかと思いますが、次のターゲットであるカウンター行動に移ってきては、反差別、反権力を訴えながら、仲間・同志にリンチを加えた人たちを擁護することに絶対納得できず、鹿砦社に賛同してきました。松岡氏とは意見の違う点もあります。しかし、松岡氏と鹿砦社の「間違いがあったら、いつでも指摘してください」との対応が本当に素晴らしいと考えております。私もまた、死ぬまで間違いを指摘して欲しいと思っているからです。松岡氏とは意見の違う点もあります。しかし、松岡氏と鹿砦社の「間違いがあったら、いつでも指摘してください」との対応が本当に素晴らしいと考えております。私もまた、死ぬまで間違いを指摘して欲しいと思っているからです。

今回の集いは、『紙の爆弾』20周年、『季節』10周年の記念の集いです。私は『紙の爆弾』の「日本の冤罪」シリーズに執筆させて頂いたり、『季節』は編集委員で関わらせて頂いております。この2冊は、このような時代だからこそ、絶対続けていかなくてはと考えております。

どうぞ、皆さま、お集りください。また支援をお願いいたします。

参加できる方は尾崎までご連絡ください。
宜しくお願いいたします。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年6月号

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利権まみれの大阪・関西万博パビリオン建設 ── 維新は、お仲間業者を儲けさすことに必死のパッチ

尾﨑美代子

◆トラブル続きで「死者がでるかも」

維新の会は、お仲間業者を儲けさすことに必死のパッチ。

万博、開幕前予想していたトラブル以上のトラブルが起こっている。アンゴラパビリオンの建設を請け負った下請け業者に、上の業者が4000万円支払ってない件、しかもその上の業者が大阪府から建設許可証をとってないとか、建設の実績はほぼないとか、あり得ない事態もおこっている。

アンゴラパビリオンは開幕日に1日だけ開館し、その後ずっと閉めているって気の毒すぎだし、この件で万博協会が「民間同士の契約トラブルのため関与しない」とつれないそぶりなのも無責任すぎないか。これ、国家事業だろう? 大阪府も市も絶賛推進してただろう? 吉村なんかずっと万博ワッペン付けてただろう。それで「しらんぷり」はあり得んだろよ。下請け業者さん、うえの業者に何回連絡しても繋がらないって。「死者がでるかも」だって。

◆万博利権と類似した釜ヶ崎の労働関連施設建設をめぐる癒着構造

この件で思い出したのが、釜ヶ崎の「あいりん総合センター」の解体が決まって、そこに入っていた2つの労働施設、あいりん職安と西成労働福祉センターが2019年春に、隣の南海電鉄高架下の仮庁舎に移転した件だ。

センターは頑丈な重量鉄骨構造、職安は簡易なプレハブ構造と、構造がまるで違っていた。公金(税金)使う場合は最低限にしなくてはならないのだし、数年しか使わないのだから、簡易なプレハブ作りでよいはずだが。

センター仮庁舎は1517㎡、費用は約7億500万円。同じ規模の公的な建物(警察署とか公民館)と比べても非常に高い(ちなみにプレハブ構造の職安の建設費用は2億3000万円)。センター仮庁舎と同じく4年から6年使用する予定の他の仮庁舎の場合、建設から解体、現状回復までかかった費用は、センターの半分以下の3億円を超えるものはなかったという。センター仮庁舎を作った業者はどれだけ中抜きしているのだ!

当時、私たちもそれを問題にしてきたのだが、行政はその工事は南海電鉄高架下に作るという「特別な工法」なので、南海電鉄関連業者に随意契約でやってもらうしかないと言ってきた。どこがどう「特別な工法」かはわからなかったが、なんと出来て数か月で雨漏りがしたという……出来てすぐに雨漏りがするという「特殊な工法」だったのか。疑問が深まる。

プレハブ構造のあいりん職安
重量鉄筋構造のセンター
[左]開業から2ヶ月で天井から雨漏り。これが「特別な工法」のせいか??/[右]すんごい穴!

と、そんな頃、店の客の仮枠大工の兄さんから「ママ、7億あればけっこうなマンションが建つで」と言われた。「えっ本当?」と思っていたら、ある情報番組でハリウッドの「ヒルズだからビューが素晴らしい」という3階建て300坪、プール付きの大豪邸が約5億円と紹介されていた。建設費用と完成物の違いはあるものの、他でも調べると、ハリウッドのセレブな人たちの超豪邸が7億円未満でいくらでもあるではないか。7億円というのはそういう金額なのだ。セレブな方々の豪邸は何年たっても雨もりなんかしないゾ。

◆パビリオン建設に名を連ねる維新のお友達業者

ほかにもあるパビリオン建設費用の未払い問題で考えたのは、そのいい加減な業者は絶対維新のお友達業者であろうということだ。

維新の松井一郎の親族会社「大通」の主要取引先が南海電鉄グループの企業である住之江競艇場を経営する住ノ江興業で、松井の親族はここの電飾関係の管理や修理を行い儲けている訳だ。

あるいは、大阪城の樹木や大阪各地の街路樹をバッサバサと伐採する造園業「翠宝園」という八尾市の業者は、維新の前田洋輔府議の実家で、その前田府議の職歴見ると、この翠宝園のほかに大通も入っているという。ちなみに彼は松井の秘書をやっていたこともあるという、どんだけわかりやすいお仲間構図なんだ。

星野リゾート前のJR高架下に出来た「屋台村」もずっと閑古鳥が鳴き続けていたが、ついに撤去となった。あそこの連中もきっと維新のお仲間なのだろう。

◆万博会場で販売されていた統一教会系飲料水「メッコール」

そういえば、万博会場で販売されてた水「メッコール」が販売中止となったが、あれは、流石に社会的に問題となってる統一教会の関連業者とバレたからだ。バレなきゃ売り続けていたということか。お仲間業者を儲けさすことしか考えない維新の会。しかし、この万博が維新の会の命取りになるだろう。維新政治を終わらせるために、万博が始まっても万博反対を訴えていこう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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「あいりん総合センター」が解体されたら、釜ヶ崎の困窮者はどこへ行けばいいのだ……

尾﨑美代子

センターが解体される。困窮者はどこへ行けばいいのだ。

5月15日、大阪市議会で、新今宮駅前にどんと建つ「あいりん総合センター」、通称センターが解体されることが決まった。維新の会と共に解体したいと考える人たちは「耐震性に問題がー」と言っていた。しかし、それが嘘だったことは、「問題だー」と叫び始めて以降、何年間も問題視していなかったことからも明らかだ。「老朽化して危ない」ともいわれるが、70年に作られた際、この頑丈な構造物は100年持ちまっせ!と言われてたのだ。その後、何度も震災にあいながら太い柱はそのままだ。何より、ここは釜ヶ崎の人たちが生活するのに重要ななくてはならない場所だった。ここに来れば本当になんとかなった場所だった。それが解体される。次に出来る構造物に、そうした人たちが入れるスペースはほとんどないだろう。

この大量の荷物の下に台車が置かれ、おじさんはそれを必死で押しながら地区内で休める場所を探している

上の写真のように、台車に全財産積んで、休める場所を探す人たちはまだまだ釜ヶ崎の周辺に大勢いる。これらの写真は、この半年の間に撮った写真だ。私が昼のバイトから帰る途中で会うおじさん、高齢で足が悪く5メートルを数分かけて歩く。 

センターがあった時は昼間センターで段ボール敷いて休んでいたのだろう。足も顔も洗えるし、洗濯も出来る。シャワーも浴びれた。釜ヶ崎に来れば、毎日どこかで飯が食える。釜ヶ崎地域合同労組の炊き出しは毎日昼と夕方にある。朝飯や昼飯があちこちでやってる。弁当を配る人たちもいる。中には貧困ビジネスの連中もいる。「うちのアパートに入れますよ」と甘い言葉で勧誘している。いい物件ならばよいが、生活保護費をむしり取る酷いところもある。気いつけてや。 

それでもどこかで飯が食える。冬になれば冬物、夏になれば夏物をあちこちで「放出」してくれる。セーターやジーパンも露店で100円で買える。三角公園の「西村商店」でも300円だ。月初め、西成警察横東側の「子どもの里」で、毎週水曜日、西成警察西側の「いこい食堂」前でバザーが出て、かみそり、石鹸、タオル、靴下、下着も安く買える。生活に困った人には本当に住みやすい釜ヶ崎、そこに住む人たちが大切にしてきたセンター、それが解体される。

この国で、貧困や差別がなくなるというのならばまだしも、今後も生きるのに難儀な人たちはもっと増えていくだろう。 今でも、炊き出しの列には30、40代の人も並んでいるで。

この釜ヶ崎は、本当にふところの広い町。ニッカポッカ履いた鉄筋の兄ちゃんが、立ち飲み屋で大きな縫いぐるみ抱きながら飲んでても誰も何もいわない。女装するおじさんも山ほどいる。誰も何もいわない。いっとき、Tバックで釜ヶ崎を闊歩する兄さんもいたな。さすがにそのままうちの店に入ろうとしたから、「兄さん、店に入るときはズボンはいてな」といったけど。

罪を犯し刑務所に服役し、出てきた人も多い。ある時、店で仕事も年齢も全く違う、ほとんど接点のない客同士が、目で挨拶するのを見た。話はしないが、必ず「元気か」みたいに目で話をしている。親しい客の方に「あの人、知っているのか?」と聞いたら、「刑務所で一緒だった」という。突然店に来なくなり、数年後また顔を出すようになった人に、普通なら「久しぶり。どこへ行ってたの?」と聞くだろうが、私は聞かない。「久しぶりやね」というだけ。病気で入院してたか、借金が膨れて飯場に入ってたか、あるいは服役していたか。間違っても、故郷に戻って家族と楽しく暮らしていた、などという人はいない。素性も前歴も家族の有無なども、こちらからは聞かない。今でこそ、生活保護など受けたから本名を教えてくれる客が多いが、昔は労働者ばかりで、多くは偽名。山ちゃんなんか10人以上いた。のっぽ山ちゃん、ちび山、おデブな山ちゃん、がりがり山ちゃん、黒い山ちゃん、犬好き山ちゃん、女好き山ちゃん……仲間に刺されて亡くなったバンダナ山ちゃん。素性も前歴も関係ない。釜ヶ崎人情ではないが、「誰に遠慮がいるじゃなし じんわり待って出直そう」が出来る町だ。

星野リゾート近くのコインランドリー前に立てられた非常に差別的な幟。「浮浪者出禁」と書かれている

本当にこの町はどうなるのだろう。もう一度言うが、貧困や差別が無くなるのならばまだしも、無くなるどころか増えていくのだから。こういう町がひとつくらいあってもいいではないか。いや、なければ困る人たちがたくさんいるではないか。 

そのために、西成特区構想を進める維新の会こそ解体していこう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
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平野義幸さんの冤罪事件を知ってください! 京都で開催される平野さんの絵画展を見に来てください!

尾﨑美代子

徳島刑務所で服役中の平野義幸さん(60歳)の絵画展「為心願成就之也」が5月16日から京都で開催されます。

2003年1月16日、京都市下京区の平野義幸さんの自宅で火災が発生し、交際女性のAさんが焼死しました。3ケ月後、平野さんが殺人と現住建造物等放火の罪で逮捕、平野さんは、一貫して無実を訴えましたが、2005年3月25日、京都地裁は懲役15年を言い渡し、控訴しましたが、2006年4月28日大阪高裁は審理を行わないまま、平野さんが「反省していない」などの理由で控訴を棄却、無期懲役を言い渡しました。2006年10月2日、最高裁での上告も棄却され、刑が確定。現在、徳島刑務所で服役中です。この事件について私たちは冤罪と考え、支援する会(代表・青木恵子)を作り、活動を続けています。  

平野義幸さん

◆「動機」も「証拠」もない!「恩人」を殺せる訳がない!

平野さんは、三池崇史監督の「荒ぶる魂たち」「新・仁義の墓場」などに出演する俳優でした。事件前、兄貴分だった男性俳優と親友の俳優(菅原文太さんのご長男、踏切事故で死亡)、そして妻の3人を相次いで亡くし、自暴自棄になっていました。そんな頃知り合ったAさんは、平野さんを「あなたは絶対俳優やらないとあかん」と励まし続け、平野さんも再び俳優業をやろうとしておりました。

火災があった日、平野さんは、東京で開催される深作欣二監督の告別式に出席予定で、映画関係者に自身をプロモートするための資料作りを1階で行っていました。そんなとき、前日からAさんが泊まっていた2階で火災がおきました。平野さんは必死でAさんを救出しようとし、燃え盛る家に入り火傷を負いました。近所の人たちが「このままでは義くん(平野さん)が危ない」と数人がかりで止めたことも裁判で証言されました。しかし、それらの平野さんを無罪とする証言・証拠は検察官にことごとく隠され、平野さんに有罪判決が下されました。

そもそも平野さんには多くの思い出が残った自宅を燃やしたり、新たな映画のオファーを投げうってまでAさんを殺害するような「動機」も「証拠」もありません。何よりAさんは平野さんの「恩人」です。

一方、Aさんは平野さんと交際しつつ、常日頃から「目の前から消えます」「私は死にました」「タブーを犯してしまったんです」と自殺を仄めかす言葉をノートに多数書き綴っていました。また、遺体を解剖した安原正博教授は「このような熱傷死の場合は、焼身自殺の場合を除外すると極めて少ない」と、Aさん自殺説を裏付けるような証言しています。 

火災後、平野さんも覚せい剤使用で逮捕されましたが、担当の検事は「放火で逮捕はない」と何度も断言していましたが、3ケ月後交代した検事が、いきなり平野さんを放火殺人犯に仕立てました。ほかの冤罪同様、裁判ではさまざまな証拠や証言のねつ造などが行われています。詳細は、2022年に行ったクラウドファンディングのHPでご確認ください。


平野さんは現在、徳島刑務所で服役しながら、絵を描き、支援する会の代表・青木恵子さん(東住吉冤罪事件)や私たち支援者らに送ってくれていました。今回、この絵を一堂に集め、皆さんにごらん頂きたいと考えています。お一人でも多くの皆さまに、平野さんのこと、冤罪事件のことを知って頂きたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

◎平野義幸絵画展「為心願成就之也」
2025年5月16日(金)~18日(日)
京都府部落解放センター4階ホール(京都市営地下鉄「鞍馬口駅」徒歩5分)
平野義幸さんを支援する会(代表・青木恵子)

なお、会場ではミニトークショーが行われます。
16日は、午後6時半~30分(青木恵子)
17日は、午後2時半~30分(青木恵子)
18日は、午後2時半~(青木恵子、堀弁護士)

※毎日時間帯が違っています。チラシでご確認ください。
https://www.bll-kyoto.jp/topics/2025/3466/

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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原爆被爆と原発被曝に詳しい村田三郎医師に「被ばく」の話を聞いてきた

尾﨑美代子

5月2日、阪南中央病院の村田三郎医師に取材に行ってきました。ずっと前からお話を聞きたいと思っていた方。4月20日、「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」が主催する「チェルノブイリ原発事故39年の集い 被爆80年 核も戦争もいらない」に村田先生が講演を行うというので参加し、ご挨拶させてもらっていた。そのあとすぐに連絡し、お時間をとってもらうことになった。

村田三郎さん 高知県出身、大阪大学医学部卒業後、1978年から阪南中央病院(大阪府松原市)に内科医として勤務。広島・長崎の原爆被爆者、水俣病患者の検診・診療、原発で働く被ばく労働者の実態調査や労災認定などを行う。著書「福島原発と被曝労働」(共著)ほか

近鉄南大阪線布忍駅下車、徒歩8分にある阪南中央病院。そこで3時から4時半までびっしりお話をお聞きした。村田先生は、水俣病患者さん、広島・長崎の被ばく者の診療・治療にあたったほか、原発の被ばく労働者の治療や労災認定のお手伝いを行ってきた。今日はとりわけこの被ばく労働問題についてお聞きしてきた。お話の内容はまたどこかで報告させてもらいます。

村田先生、とにかく優しい方。病院へのアクセスもめっちゃ詳しく説明してくださったうえ、お会いするなり、「わかりましたか」と聞いてくださる。優しさのその原点は、生まれ育った高知県で、教師だった父親から言われ続けた「弱い人の立場で行動しろ。そうしていたら間違いはない」という言葉を信じてやってきたからだという。その言葉を信じ、子どもの頃、漠然と医師か弁護士になろうと考えていたという。両親は村田先生に「医師になれ」とはいわないものの、クリスマスプレゼントに野口英世など医師の伝記の本をくれたことも影響しているかなと話されていた。

◆釜ヶ崎では「原発の仕事に行った」と話す労働者に会ったことがない

一番最後の質問で、私が釜ヶ崎で25年店をやっていて、建設業界のほとんどの職種の労働者を知っているが、原発の仕事に行ったという労働者はほとんどいない。土工さんで掘削作業をした人でも「ママ、阿倍野ハルカス作ったの、俺やで」と自慢したがるのに、「敦賀原発行ってきたわ」などという人の話はほとんど聞かない。それは何故なのだろうか?という話を村田先生とあれこれお話させてもらった。

村田先生のお話とは別なのだが、初めて行った阪南中央病院、病院の前の道路を挟んだ向かい側に全国チェーンを展開する「スギ薬局」があり、病院の隣に「うめ薬局」があった。私はうめ薬局のほうが、スギ薬局に対抗して出来たものと思った。「おいおい、スギに対抗してうめかよ」と。それを村田先生にお聞きしたところ、うめ薬局が先なのだという。その後、病院前に広大な空き地ができ、何が出来るかと思ったら、スギ薬局が進出したのだという。まあ、どうでもいい話だが、ちょっと驚いた。うめにスギかよ。

阪南中央病院
阪南中央病院の向かい側にあるうめ薬局とスギ薬局

◆国と電力会社は原発推進のために仲間だって「殺す」

あと、村田先生の動画が何かをみてて、先生が「もんじゅのナトリウム漏れ事故では自殺者も出ていますよね」と話しておられたので、生意気だと思ったが、ひとこといわせてもらった。「先生、もんじゅのナトリウム漏れ事故で自殺者が出たと話してましたが、あれ、自殺ではないですよ。殺されてますよ」と。

村田先生は驚いたように「何か、資料や記事ありますか?」と聞かれたので、「私はずっと気になっていたので、直接亡くなった動燃の職員・西村成生さんの遺族、奥様の西村トシ子さんに何度もお会いしました。トシ子さんと息子さんは、今も裁判続けてますよ。私も裁判を傍聴したことがありますし、トシ子さんの家に伺って裁判資料全部見せてもらいましたよ」と話し、その内容をまとめたものを送らせてもらうと約束した。

原発は被ばく労働で大量の労働者を「殺して」いるが、そのうえ国と電力会社の原発政策に邪魔になる人、あるいは推進するためには、仲間だって「殺す」ということ、それを伝えたかった。

村田医師、本当に素晴らしい方だった。

もんじゅ、西村職員の事件について書いた記事(1~6)はコチラから読めます。どうぞ、ご一読を。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 京都での冤罪講演で伝えたかったこと

尾﨑美代子

4月24日、京都府部落解放センター4階大ホールで行われた第76期京都人権文化講座「さまざまな冤罪を取材して」に来てくださった皆様、どうもありがとうございました。私の知り合い10人を含めて100人ほどの方が参加されました。とはいえ、私の知り合い以外は部落解放・人権政策確立要求京都府実行委員会に加盟する各団体・企業の皆様で、皆さま、ピシッとしたスーツ姿の方が多く、ちょっと戸惑いました。

今回レジュメ・パワーポイントを作ったり、関係書籍を再読し、改めて「冤罪」は警察、検察により必死のパッチに作られていることに確信をもちました。レジュメに書いた二つの事件より、それを証明してみます。

◆青木恵子さんの東住吉事件

ひとつは、青木恵子さんの東住吉事件。1995年7月22日、大阪市住吉区の住宅で火災が発生。家には青木さん、同居男性、そして青木さんの長女、長男の4人がいたが、風呂に入っていた青木さんの長女が亡くなった。翌日の新聞は「風呂釜の種火が漏れたガソリンに引火した可能性がある」とあったが……。9月10日、青木さんと男性が任意で警察に連行された。

青木さんは火災の原因を知らされると考えていたが、取調べ室でいきなり「お前らがやったんだろ」と刑事に怒鳴られ、あげく男性が長女に性的暴行を行っていた事実をぶつけられた。青木さんはショックと同時に娘を守ってやれなかったことを悔やみ、一刻も早く留置場に帰り、娘のもとへ行きたいと考えた。そう死にたいと。そのため、刑事に言われるがままに、嘘の「自白調書」を書いた。

一方の男性は、長女に性的暴行を行っていたことを事件にしないかわりに、長女にかけていた保険金を欲しさに青木さんと共謀し放火したとの調書を書かされた。それはポリタンクに7リットルのガソリンを移し、車庫に撒いてライターで火をつけたとの内容だった。

裁判で2人は否認に転じた。しかし、自白調書がある。私が30年ほど前に読んだ冤罪の専門書に「日本の刑事司法は未だに自白中心主義だ」と書いていた。30年前に「未だに」と批判されていたのだが、その後も警察、検察はまず自白をとることに必死になる。もちろん自白だけでは有罪にできないが、自白をとったあとは、証拠や証言を捏造、改ざんしたり、嘘の鑑定書まで作って自白を固めるのだ。青木さんの裁判もそのため、1、2審で無期懲役が下され、最高裁で確定し、2人は服役した。

その後青木さん、男性は再審を請求。弁護団、検察側双方が、燃焼実験を行ったが、どちらの実験でも男性が自白した内容とは全く違う結果がでた。自白通り、ガソリン7リットル撒きライターで火をつけたならば、男性が大やけどを負ってしまう。しかし、男性は全く火傷を負っていない。男性の自白は殴る蹴られして強要されたものだった。そして2016年8月、2人に無罪判決が言い渡された。

火災があった青木さんの家
東住吉事件で行われた燃焼実験、弁護側、検察側共に男性の「自白」とは全く違う結果となった

ここでの問題点だが、検察は起訴前に「放火ではない」ことを知っていたのに起訴したことだ。というのも警察は、起訴前に男性の自白通りの燃焼実験を行って、自白は嘘と知っていた。でも検察は2人を起訴した。起訴内容は青木さんらが計画していたマンション購入の初期費用170万円欲しさから、娘を殺して保険金を詐取しようというものだった。しかし、火災が起きたとき、まだマンションのローンの審査は通っていなかった。通ったとしても170万は親から借りられた。なのに、わずか170万円のために、実の娘を殺すだろうか?

これについて、大阪地裁は判決分で、このような「こじつけ」を行った。青木さんが未だに憤っている個所だ。わずか170万円のために、娘を殺すだろうかとの疑問に裁判所は「そのために本件犯行を企てるというのは、いかにも不自然さが否めないし、他からの借り入れ等をも考えれば経済的な逼迫度はそれほどではないともいえる」としつつも、「被告人らが当時決して余裕のある経済状態ではなかったことは確かであり(中略)より楽な暮らしがしたいために、手っ取り早く大金が手に入ることを考えるということも、あながちあり得ない話ではない」。

そう、170万円のためじゃないのよ。1500万円の保険金で楽な暮らしができる、そのために実の可愛い娘を殺せれると考えるような人たちがいるということもあながちあり得ないことでもないのよと。このこじつけを固めるために、男性に「青木さんは浪費癖がある」というような嘘の供述まで言わせている。押収した青木さんがつけていた家計簿から「そんなことはない。お金について非常に几帳面な人だ」とみぬき、無罪を主張した裁判官も一人いた。しかし、合議制のため認められなかったことが、その裁判官の退任後明らかになっている。それほど、裁判官らも自分で証拠を精査せず、検察官の言いなりであるのだ。

◆西山美香さんの湖東記念病院事件

もうひとつは、湖東記念病院事件。西山美香さんが看護助手をしていた病院で、呼吸器で生き永らえていた患者さんが死亡した。のちに自然死とわかるのだが、滋賀県警が当夜当直の西山さんと看護師を管が抜けたのに放置した業務上過失致死容疑で厳しく追及、1年後、山本誠刑事が西山さんの担当になり、怒鳴ったり、椅子を蹴ったりし、西山さんを脅した。怖くなった西山さんは「管を抜いた」と自白させられ、殺人罪で逮捕・起訴された。

ここでは大量の自白調書が作成された。というのも、最初厳しかった山本誠刑事が、西山さんが山本のいうように嘘の自白をしたら、急に優しくなったからだ。しかも成績優秀な兄にコンプレックスを持っていた西山さんに「あなたも賢いよ」とほめてくれたので、どんどん恋心を抱いていった。

西山さんも公判で否認に転じたが、やはり自白調書がものをいう。そのため、有罪判決が下され、服役する。その後、再審で西山さんにも無罪判決が下されるのだが、この事件でどうやって西山さんを犯人に仕立てることができたか? 驚く内容だ。

捜査がすすみ、患者が亡くなった当日、やはり呼吸器の管が外れると鳴る警報音(アラーム)が鳴っていなかったことがわかった。すると、警察、検察は「アラームを鳴らさずにどうやって管を外せたか。患者に酸素を送ることを止められたかと必死に考え、呼吸器の技師にレクチャーしてもらったのが、消音ボタンの存在だった。管を抜くとピッとアラームが鳴り出すが、すぐに消音ボタンを押せば、音は止まる。それから60秒(1分)経過するとまた鳴るので、再度ボタンを押す。それを3、4回続ければ(3、4分経過すれば)患者は窒息死するというものだ。そんな機能を使用する必要もないから、病院内の看護師の誰一人知っていなかった。その機能を看護助手の西山さんだけが知っていたって、どんな冗談だよと誰もが思うと思う。

しかし、裁判官らは「ほほう、そういうことなのか」と信用した。というのも、山本刑事が作文した調書のなかの患者が亡くなる際の様子「目がギョロギョロ」「口をはハグハグした」との描写があり、そこにいた西山さんにしか書けない迫真に迫るものがあるからとした。患者は本当にそうだったのか? のちに弁護団はこれはうそだと反論する。患者は既に大脳が壊死しているため「目をギョロギョロ」「口をハグハグ」することは医学的にありえないというのだ。やはりこれは山本の作文だった。

弁護団の井戸弁護士によれば、山本の調書は、このように全編劇画チックなのだという。その例としてこんな作文がある。西山さんに「患者を殺害したときどう思ったか」などと聞いたのだろう。その西山さんの答えが「壁の方には追いやった呼吸器の消音ボタン横の赤色のランプが、チカチカチカチカとせわしなく点滅しているのがわかりました。あれが患者さんの心臓の鼓動を表す最後の灯だったのかもしれません」。おい、山本! チカが4つもついてるぞ。

ドラマでもよくあるが、「すみません、私が殺しました」と言ったのち、犯人は机に伏せて泣きじゃくるのが普通じゃないか。「そうですね、ランプがチカチカチカチカ……」なんて、チカを4回も言うか? 山本の盛りすぎた調書が墓穴を掘ってしまったようだ。

◆無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか?

それにしても、無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 裁判官は、どうして検察の嘘を見抜けないのか? 検察を信用してしまうのか? それについては、レジュメの一番最後で、井戸謙一弁護士の2023年12月24日のお話を引用して説明しています。せっかくレジュメ、パワーポイントを作ったので、集い処はなでも一度お話会をやる予定。また、皆様のお近くでもお話会をやってください。よろしくお願いいたします。

開示させた日野町事件の「引き当て捜査」の写真のネガを精査すると、復路で阪原さんを後ろを向かせ自ら案内させていると偽装していた
高知白バイ事件、バスに乗っていた生徒、教諭、バスの後ろについた校長ら26名が「バスは止まっていた」と証言したが、裁判所は176メートル離れた対向車線から見た同僚警官の「バスは動いていた」を採用した

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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万博会場の隣で建設工事が本格化! 大阪維新が露骨にIRカジノ建設を急ぐ理由 

尾﨑美代子

◆IRカジノ建設のための大阪万博開催

IRカジノの建設工事が4月24日から始まるという。4月13日、大阪・関西万博が始まったばかりというのに。ははは、わかりやすいね。万博が始まったものの、完成していないパビリオンもあるというのに、すぐ近くでカジノの建設工事が始まるというのだ。さすがにカジノ(ばくち場)の建設・整備事業のために税金は使えないだろうということで、道路などのインフラ整備工事を「万博のため」とやってきた。そんなことはもう大阪の人はみんな知っている。

それにしてもあからさま。万博の隣でドッカン、ドッカン工事が始まり、建設資材や作業員を乗せた建設車両が万博のそばを行きかうんやで。

しかも下の地図でもわかるように、夢洲駅からは万博会場よりもカジノ建設現場に行く方が近いやんけ。またこの記事には書かれてないが、夢洲駅から万博会場に向かう道路よりも、カジノ建設現場に向かう道路の方がよほど整備されているのだと。露骨やなあ。

それにしてもここまで露骨にカジノ建設工事を急ぐのは、維新も万博はもう失敗だったと認識しているから。始める前から失敗はわかっていた。だってこの、2025年に「空飛ぶ車」とか「人間洗濯機」とか「機運醸成」とか言う? 「三者凡退」の世界かよ。そんな昭和のおっさんだけがずらりと並んだ開幕式のテープカット、「ちょっとこれはまずいでしょ?」と意見する人もいなかったのか。東京五輪の映画監督を務めた河瀨直美があれだけ批判され、あげく映画もさんざんだったのに、また今回も起用するという時点で、もう万博はどうでもいいんですが感が漂っていたが。ここまで露骨とは驚き。

つまり、維新は、万博を成功させようとかは全然考えていない。自分らの関係する業者が儲かればいいだけ。カジノ建設工事を急ぐのもそのため! 万博コケて、維新もコケてしまったら大変。だったら、今のうちに儲けておこうということ。

夢洲カジノは、もともと富裕層を呼び込むジャンケット業者(富裕層をカジノへ招待し、航空券、ホテル、滞在中の移動や食事などを世話をする職業)が入らない。しかも夢洲カジノに入るのはほとんどはスロット、新今宮駅前にドンキと併設して入るマルハンと一緒やで。そこに高い入場料払っていくか?

◆「今だけ、カネだけ、仲間の業者が儲ければいいだけ」

維新のやることは全て同じ。新今宮駅の北側に建設された星野リゾート、その近くにJR高架下に出来た屋台村、ずっと閑古鳥泣いてたが、すべて撤去された。

その近くに出来た横丁的なビル、毎朝その前を通っているが、表通りに面した2件の店舗、1件は高級和食店みたいな店名の看板を上げていたし、胡蝶蘭も飾られてたが、結局開店前に看板下ろしたし、隣のおされなカフェは開店、若いおされな店員が寒い冬に表で客引きしていたが、もう閉店した。

2019年、大阪城公園内に肝いりで開業した、吉本が外国人観光客目当ての出し物「KEREN」なんか、開業直前に知り合いの知り合いの男性から「吉本のお偉いさんに叱られるから来て!無料券あります」とメールきたで。結局、維新の造園業者にバッサ、バッサと木を伐採させ、「KEREN」を作り、吉本芸人にちょっと儲けさせただけ。 それよりアソコ、今、息してんの??

とにかく、維新のやることは全て同じ。「今だけ、カネだけ、仲間の業者が儲ければいいだけ」。だから、「コケる前に工事行っとけ」ということ!
維新の万博、失敗してもいいが、これ、税金やで。おい。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

4月24日(木)夕刻、尾﨑美代子さんが京都で冤罪テーマの講演を行います!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

「福井女子中学生殺人事件」再審結審 再審無罪を前に自信を取り戻していく冤罪犠牲者の前川さん 尾﨑美代子

39年前に福井で起こった「福井女子中学生殺人事件」の再審が、3月6日結審した。判決は7月18日、午後4時より、名古屋高裁金沢支部で言い渡される。 

事件の詳細は『紙の爆弾』(鹿砦社)2月号に寄稿しているので、ぜひ読んで欲しい。亡くなった桜井昌司さんから「前川(冤罪犠牲者の前川彰司さん)の事件も書いてや」と頼まれてたが、資料を読み始め、何度も諦めていた。関係者が余りに多く、その関係も複雑だからだった。

読み始めあきらめ、読み始めあきらめていたところ、まもなく再審開始の可否がでるとのことで慌てて読み始めた。そして昨年12月、再審開始の決定。決定書を見ると、それまでの資料になかった内容が書かれていた。

弁護団長の吉村弁護士も会見で「想定外でした」と話していた内容、そこには「夜のヒットスタジオ」「アン・ルイス」「吉川晃司」の文字が……。再審請求審で初めて明らかにされた証拠だった。一体、何があったのか? 詳細を知りたい方はぜひ「紙の爆弾」を読んで欲しい。  

この事件、全体をみると、福井県のいわゆる地方都市で、地元警察が、地元のワル、不良、ヤクザになった若者を、うまくあやつり協力者に仕立てていくような構図がみてとれる。

先日、北海道旭川市で女性2人が被害女性を深夜、川の橋の欄干に座らせ、川に落とし殺害した事件で、片方の被告に懲役25年が求刑された。この事件では、もう一人の女性が、事件を捜索する旭川中央署の刑事と不倫関係にあったことが報じられた。もともと互いに出入りしてた地元のスナックで仲良くなったようだ。その容疑者がどんな女性だったかは良くわからないが、刑事を後ろ盾にすることで、一層怖いものなしの強気になれたことは容易に想像できる。

福井の事件で登場する大勢の関係者もまだ若く、社会的経験も少ない。そして不良、ヤクザなど脛に傷持つ者ばかりだ。その弱みに刑事がつけこみ、事件を解決しようと、あらぬストーリーを作っていったのだ。

女子中学生は、実際極めて凄惨な方法で殺害されていた。不良グループと付き合っていたことからリンチと思われた。だが捜査は難航し、犯人逮捕に至らず、捜査機関は焦る。

そんなとき、別の覚醒剤で逮捕され取調べられていたヤクザの斎藤(仮名)が、刑事に「犯人しらないか」と聞かれる。犯人は斎藤周辺のワル仲間とみているのだろう。捜査機関は、犯人を教えたら、あるいはヒントをくれたら、刑を軽くするみたいにほのめかす。斎藤は知人に「犯人知らんか?」と手紙を書く。そう、斎藤も犯人を知らないのだ。しかし、斎藤は自分の刑を軽くしたくて、「犯人は後輩の前川だ」と刑事に告げる。

さらに、車で前川を犯行現場に送った人間、斎藤をゲーセンに送った人間、犯行後困った前川を斎藤がいるゲーセンに連れてきた人間、その際前川の服に血がついてるのを見た人間、ひと晩前川を匿った人間など、次々と関係者を登場させる。しかし、うそのストーリーだから、斎藤の話はコロコロ変わる。

ここまで読んで、「刑事もばかだね。斎藤のいうことが違っていたら、諦めればいいやん」と思う人もいるだろう。違う、違う。刑事が斎藤らワルたちを利用しようとしているのだ。

刑事は、斎藤が刑務所に送られる際「おい、何か土産を置いてけや」とか、「まだ知ってることがあるんじゃないか」とか、斎藤やその周辺の人間を使って、自分たちのストーリーを作ろうと必死なのだ。「関係者」を担わされた若者も、みな、脛に傷があるため、刑事の言いなりにストーリーを合わせてしまう。  

しかし、彼らも成人になり家庭を持つようになると、「なんと馬鹿なことしたのか」と反省し、本当のことを言うようになる。前川さんを犯人とする証言をした男性は、刑事にウソの証言を強いられ、代わりの自分の覚せい剤事件をチャラにしてもらったと再審の場で証言した。前に嘘の証言した夜は、刑事に食事やスナックを奢られ、あげく結婚祝いに5000円包まれた祝儀袋を貰ったと証言。刑事の名前がばっちり書かれた祝儀袋を証拠提出した。本当に酷い話だ。

以前私も支援した石川県の盛一国賠という裁判があった。この盛一君も若い時、刑事に目をつけられ「S」にされた。どんなに覚せい剤をやっても絶対捕まらない。その代り、刑事に言われるがままに、薬をやっている知人や先輩を逮捕させるような工作を刑事としていく。そんななか亡くなった知人もいた。

盛一君も成人し、家庭をもち、「馬鹿なことをした」と猛省し、刑事らとの関係をきっぱり絶った。そして、そんな刑事と不倫で付き合う女性友達に「あんな連中とつきあわんほうがいい」と忠告する。

しかし、この女性は、盛一君のその言葉を刑事に伝える。そのため、盛一君がやってもいない覚せい剤事件で逮捕される。「これ以上余計なこと言うな」という脅しだ。その証拠に盛一が連れていかれた取調室に、以前盛一君が良く飲食をともにした刑事が顔を出し、盛一君に一言「バーカ」と言って消えたという。

多くの冤罪を作っているのは、警察、検察、そして裁判所だ。もちろん刑事という後ろ盾が出来て強気になって、犯罪を犯した人たちも悪い。しかし、北海道の事件も、盛一君の事件も、そして前川さんの事件で関係者とされた人たちも、勝手なストーリーの「駒」に使われ、最後はポイと捨てられた。本当に酷いやつらだ。

前川さんには昨日の朝電話した。桜井さんに紹介され、初めて連絡してから2年半。その間何度か電話で話したり、うちの店にも来てくれたり。最初はボソリ、ボソリとひとこと、ふたこと話すだけだった前川さんだが、その声は、再審開始が決まって以降、どんどん自信を取り戻しているような気がする。

《酒井隆史さん釜ヶ崎トークショーのご案内》

3月30日(日)、酒井隆史さんのトークショーを行います。釜ヶ崎の問題にも取り組んでおられる酒井さんには、2019年「はな」でお話をして頂いたのが最後なのでとても久しぶりです。なお、そのお話は冊子「ジェントリフィケーションへの抵抗を解体しようとする者たち」にまとめており、非常に多くの方々に読んで頂きました。

今回はちょっと大上段に構えたテーマになっていますが、様々な問題をその場で質問したり、議論出来るような形にしたいと思いますので、40人ほど限定、要予約でお願い致します。

メール、携帯、そしてメッセンジャーでも受け付けております。宜しくお願い致します!!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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