無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 京都での冤罪講演で伝えたかったこと

尾﨑美代子

4月24日、京都府部落解放センター4階大ホールで行われた第76期京都人権文化講座「さまざまな冤罪を取材して」に来てくださった皆様、どうもありがとうございました。私の知り合い10人を含めて100人ほどの方が参加されました。とはいえ、私の知り合い以外は部落解放・人権政策確立要求京都府実行委員会に加盟する各団体・企業の皆様で、皆さま、ピシッとしたスーツ姿の方が多く、ちょっと戸惑いました。

今回レジュメ・パワーポイントを作ったり、関係書籍を再読し、改めて「冤罪」は警察、検察により必死のパッチに作られていることに確信をもちました。レジュメに書いた二つの事件より、それを証明してみます。

◆青木恵子さんの東住吉事件

ひとつは、青木恵子さんの東住吉事件。1995年7月22日、大阪市住吉区の住宅で火災が発生。家には青木さん、同居男性、そして青木さんの長女、長男の4人がいたが、風呂に入っていた青木さんの長女が亡くなった。翌日の新聞は「風呂釜の種火が漏れたガソリンに引火した可能性がある」とあったが……。9月10日、青木さんと男性が任意で警察に連行された。

青木さんは火災の原因を知らされると考えていたが、取調べ室でいきなり「お前らがやったんだろ」と刑事に怒鳴られ、あげく男性が長女に性的暴行を行っていた事実をぶつけられた。青木さんはショックと同時に娘を守ってやれなかったことを悔やみ、一刻も早く留置場に帰り、娘のもとへ行きたいと考えた。そう死にたいと。そのため、刑事に言われるがままに、嘘の「自白調書」を書いた。

一方の男性は、長女に性的暴行を行っていたことを事件にしないかわりに、長女にかけていた保険金を欲しさに青木さんと共謀し放火したとの調書を書かされた。それはポリタンクに7リットルのガソリンを移し、車庫に撒いてライターで火をつけたとの内容だった。

裁判で2人は否認に転じた。しかし、自白調書がある。私が30年ほど前に読んだ冤罪の専門書に「日本の刑事司法は未だに自白中心主義だ」と書いていた。30年前に「未だに」と批判されていたのだが、その後も警察、検察はまず自白をとることに必死になる。もちろん自白だけでは有罪にできないが、自白をとったあとは、証拠や証言を捏造、改ざんしたり、嘘の鑑定書まで作って自白を固めるのだ。青木さんの裁判もそのため、1、2審で無期懲役が下され、最高裁で確定し、2人は服役した。

その後青木さん、男性は再審を請求。弁護団、検察側双方が、燃焼実験を行ったが、どちらの実験でも男性が自白した内容とは全く違う結果がでた。自白通り、ガソリン7リットル撒きライターで火をつけたならば、男性が大やけどを負ってしまう。しかし、男性は全く火傷を負っていない。男性の自白は殴る蹴られして強要されたものだった。そして2016年8月、2人に無罪判決が言い渡された。

火災があった青木さんの家
東住吉事件で行われた燃焼実験、弁護側、検察側共に男性の「自白」とは全く違う結果となった

ここでの問題点だが、検察は起訴前に「放火ではない」ことを知っていたのに起訴したことだ。というのも警察は、起訴前に男性の自白通りの燃焼実験を行って、自白は嘘と知っていた。でも検察は2人を起訴した。起訴内容は青木さんらが計画していたマンション購入の初期費用170万円欲しさから、娘を殺して保険金を詐取しようというものだった。しかし、火災が起きたとき、まだマンションのローンの審査は通っていなかった。通ったとしても170万は親から借りられた。なのに、わずか170万円のために、実の娘を殺すだろうか?

これについて、大阪地裁は判決分で、このような「こじつけ」を行った。青木さんが未だに憤っている個所だ。わずか170万円のために、娘を殺すだろうかとの疑問に裁判所は「そのために本件犯行を企てるというのは、いかにも不自然さが否めないし、他からの借り入れ等をも考えれば経済的な逼迫度はそれほどではないともいえる」としつつも、「被告人らが当時決して余裕のある経済状態ではなかったことは確かであり(中略)より楽な暮らしがしたいために、手っ取り早く大金が手に入ることを考えるということも、あながちあり得ない話ではない」。

そう、170万円のためじゃないのよ。1500万円の保険金で楽な暮らしができる、そのために実の可愛い娘を殺せれると考えるような人たちがいるということもあながちあり得ないことでもないのよと。このこじつけを固めるために、男性に「青木さんは浪費癖がある」というような嘘の供述まで言わせている。押収した青木さんがつけていた家計簿から「そんなことはない。お金について非常に几帳面な人だ」とみぬき、無罪を主張した裁判官も一人いた。しかし、合議制のため認められなかったことが、その裁判官の退任後明らかになっている。それほど、裁判官らも自分で証拠を精査せず、検察官の言いなりであるのだ。

◆西山美香さんの湖東記念病院事件

もうひとつは、湖東記念病院事件。西山美香さんが看護助手をしていた病院で、呼吸器で生き永らえていた患者さんが死亡した。のちに自然死とわかるのだが、滋賀県警が当夜当直の西山さんと看護師を管が抜けたのに放置した業務上過失致死容疑で厳しく追及、1年後、山本誠刑事が西山さんの担当になり、怒鳴ったり、椅子を蹴ったりし、西山さんを脅した。怖くなった西山さんは「管を抜いた」と自白させられ、殺人罪で逮捕・起訴された。

ここでは大量の自白調書が作成された。というのも、最初厳しかった山本誠刑事が、西山さんが山本のいうように嘘の自白をしたら、急に優しくなったからだ。しかも成績優秀な兄にコンプレックスを持っていた西山さんに「あなたも賢いよ」とほめてくれたので、どんどん恋心を抱いていった。

西山さんも公判で否認に転じたが、やはり自白調書がものをいう。そのため、有罪判決が下され、服役する。その後、再審で西山さんにも無罪判決が下されるのだが、この事件でどうやって西山さんを犯人に仕立てることができたか? 驚く内容だ。

捜査がすすみ、患者が亡くなった当日、やはり呼吸器の管が外れると鳴る警報音(アラーム)が鳴っていなかったことがわかった。すると、警察、検察は「アラームを鳴らさずにどうやって管を外せたか。患者に酸素を送ることを止められたかと必死に考え、呼吸器の技師にレクチャーしてもらったのが、消音ボタンの存在だった。管を抜くとピッとアラームが鳴り出すが、すぐに消音ボタンを押せば、音は止まる。それから60秒(1分)経過するとまた鳴るので、再度ボタンを押す。それを3、4回続ければ(3、4分経過すれば)患者は窒息死するというものだ。そんな機能を使用する必要もないから、病院内の看護師の誰一人知っていなかった。その機能を看護助手の西山さんだけが知っていたって、どんな冗談だよと誰もが思うと思う。

しかし、裁判官らは「ほほう、そういうことなのか」と信用した。というのも、山本刑事が作文した調書のなかの患者が亡くなる際の様子「目がギョロギョロ」「口をはハグハグした」との描写があり、そこにいた西山さんにしか書けない迫真に迫るものがあるからとした。患者は本当にそうだったのか? のちに弁護団はこれはうそだと反論する。患者は既に大脳が壊死しているため「目をギョロギョロ」「口をハグハグ」することは医学的にありえないというのだ。やはりこれは山本の作文だった。

弁護団の井戸弁護士によれば、山本の調書は、このように全編劇画チックなのだという。その例としてこんな作文がある。西山さんに「患者を殺害したときどう思ったか」などと聞いたのだろう。その西山さんの答えが「壁の方には追いやった呼吸器の消音ボタン横の赤色のランプが、チカチカチカチカとせわしなく点滅しているのがわかりました。あれが患者さんの心臓の鼓動を表す最後の灯だったのかもしれません」。おい、山本! チカが4つもついてるぞ。

ドラマでもよくあるが、「すみません、私が殺しました」と言ったのち、犯人は机に伏せて泣きじゃくるのが普通じゃないか。「そうですね、ランプがチカチカチカチカ……」なんて、チカを4回も言うか? 山本の盛りすぎた調書が墓穴を掘ってしまったようだ。

◆無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか?

それにしても、無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 裁判官は、どうして検察の嘘を見抜けないのか? 検察を信用してしまうのか? それについては、レジュメの一番最後で、井戸謙一弁護士の2023年12月24日のお話を引用して説明しています。せっかくレジュメ、パワーポイントを作ったので、集い処はなでも一度お話会をやる予定。また、皆様のお近くでもお話会をやってください。よろしくお願いいたします。

開示させた日野町事件の「引き当て捜査」の写真のネガを精査すると、復路で阪原さんを後ろを向かせ自ら案内させていると偽装していた
高知白バイ事件、バスに乗っていた生徒、教諭、バスの後ろについた校長ら26名が「バスは止まっていた」と証言したが、裁判所は176メートル離れた対向車線から見た同僚警官の「バスは動いていた」を採用した

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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万博会場の隣で建設工事が本格化! 大阪維新が露骨にIRカジノ建設を急ぐ理由 

尾﨑美代子

◆IRカジノ建設のための大阪万博開催

IRカジノの建設工事が4月24日から始まるという。4月13日、大阪・関西万博が始まったばかりというのに。ははは、わかりやすいね。万博が始まったものの、完成していないパビリオンもあるというのに、すぐ近くでカジノの建設工事が始まるというのだ。さすがにカジノ(ばくち場)の建設・整備事業のために税金は使えないだろうということで、道路などのインフラ整備工事を「万博のため」とやってきた。そんなことはもう大阪の人はみんな知っている。

それにしてもあからさま。万博の隣でドッカン、ドッカン工事が始まり、建設資材や作業員を乗せた建設車両が万博のそばを行きかうんやで。

しかも下の地図でもわかるように、夢洲駅からは万博会場よりもカジノ建設現場に行く方が近いやんけ。またこの記事には書かれてないが、夢洲駅から万博会場に向かう道路よりも、カジノ建設現場に向かう道路の方がよほど整備されているのだと。露骨やなあ。

それにしてもここまで露骨にカジノ建設工事を急ぐのは、維新も万博はもう失敗だったと認識しているから。始める前から失敗はわかっていた。だってこの、2025年に「空飛ぶ車」とか「人間洗濯機」とか「機運醸成」とか言う? 「三者凡退」の世界かよ。そんな昭和のおっさんだけがずらりと並んだ開幕式のテープカット、「ちょっとこれはまずいでしょ?」と意見する人もいなかったのか。東京五輪の映画監督を務めた河瀨直美があれだけ批判され、あげく映画もさんざんだったのに、また今回も起用するという時点で、もう万博はどうでもいいんですが感が漂っていたが。ここまで露骨とは驚き。

つまり、維新は、万博を成功させようとかは全然考えていない。自分らの関係する業者が儲かればいいだけ。カジノ建設工事を急ぐのもそのため! 万博コケて、維新もコケてしまったら大変。だったら、今のうちに儲けておこうということ。

夢洲カジノは、もともと富裕層を呼び込むジャンケット業者(富裕層をカジノへ招待し、航空券、ホテル、滞在中の移動や食事などを世話をする職業)が入らない。しかも夢洲カジノに入るのはほとんどはスロット、新今宮駅前にドンキと併設して入るマルハンと一緒やで。そこに高い入場料払っていくか?

◆「今だけ、カネだけ、仲間の業者が儲ければいいだけ」

維新のやることは全て同じ。新今宮駅の北側に建設された星野リゾート、その近くにJR高架下に出来た屋台村、ずっと閑古鳥泣いてたが、すべて撤去された。

その近くに出来た横丁的なビル、毎朝その前を通っているが、表通りに面した2件の店舗、1件は高級和食店みたいな店名の看板を上げていたし、胡蝶蘭も飾られてたが、結局開店前に看板下ろしたし、隣のおされなカフェは開店、若いおされな店員が寒い冬に表で客引きしていたが、もう閉店した。

2019年、大阪城公園内に肝いりで開業した、吉本が外国人観光客目当ての出し物「KEREN」なんか、開業直前に知り合いの知り合いの男性から「吉本のお偉いさんに叱られるから来て!無料券あります」とメールきたで。結局、維新の造園業者にバッサ、バッサと木を伐採させ、「KEREN」を作り、吉本芸人にちょっと儲けさせただけ。 それよりアソコ、今、息してんの??

とにかく、維新のやることは全て同じ。「今だけ、カネだけ、仲間の業者が儲ければいいだけ」。だから、「コケる前に工事行っとけ」ということ!
維新の万博、失敗してもいいが、これ、税金やで。おい。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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4月24日(木)夕刻、尾﨑美代子さんが京都で冤罪テーマの講演を行います!

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「福井女子中学生殺人事件」再審結審 再審無罪を前に自信を取り戻していく冤罪犠牲者の前川さん 尾﨑美代子

39年前に福井で起こった「福井女子中学生殺人事件」の再審が、3月6日結審した。判決は7月18日、午後4時より、名古屋高裁金沢支部で言い渡される。 

事件の詳細は『紙の爆弾』(鹿砦社)2月号に寄稿しているので、ぜひ読んで欲しい。亡くなった桜井昌司さんから「前川(冤罪犠牲者の前川彰司さん)の事件も書いてや」と頼まれてたが、資料を読み始め、何度も諦めていた。関係者が余りに多く、その関係も複雑だからだった。

読み始めあきらめ、読み始めあきらめていたところ、まもなく再審開始の可否がでるとのことで慌てて読み始めた。そして昨年12月、再審開始の決定。決定書を見ると、それまでの資料になかった内容が書かれていた。

弁護団長の吉村弁護士も会見で「想定外でした」と話していた内容、そこには「夜のヒットスタジオ」「アン・ルイス」「吉川晃司」の文字が……。再審請求審で初めて明らかにされた証拠だった。一体、何があったのか? 詳細を知りたい方はぜひ「紙の爆弾」を読んで欲しい。  

この事件、全体をみると、福井県のいわゆる地方都市で、地元警察が、地元のワル、不良、ヤクザになった若者を、うまくあやつり協力者に仕立てていくような構図がみてとれる。

先日、北海道旭川市で女性2人が被害女性を深夜、川の橋の欄干に座らせ、川に落とし殺害した事件で、片方の被告に懲役25年が求刑された。この事件では、もう一人の女性が、事件を捜索する旭川中央署の刑事と不倫関係にあったことが報じられた。もともと互いに出入りしてた地元のスナックで仲良くなったようだ。その容疑者がどんな女性だったかは良くわからないが、刑事を後ろ盾にすることで、一層怖いものなしの強気になれたことは容易に想像できる。

福井の事件で登場する大勢の関係者もまだ若く、社会的経験も少ない。そして不良、ヤクザなど脛に傷持つ者ばかりだ。その弱みに刑事がつけこみ、事件を解決しようと、あらぬストーリーを作っていったのだ。

女子中学生は、実際極めて凄惨な方法で殺害されていた。不良グループと付き合っていたことからリンチと思われた。だが捜査は難航し、犯人逮捕に至らず、捜査機関は焦る。

そんなとき、別の覚醒剤で逮捕され取調べられていたヤクザの斎藤(仮名)が、刑事に「犯人しらないか」と聞かれる。犯人は斎藤周辺のワル仲間とみているのだろう。捜査機関は、犯人を教えたら、あるいはヒントをくれたら、刑を軽くするみたいにほのめかす。斎藤は知人に「犯人知らんか?」と手紙を書く。そう、斎藤も犯人を知らないのだ。しかし、斎藤は自分の刑を軽くしたくて、「犯人は後輩の前川だ」と刑事に告げる。

さらに、車で前川を犯行現場に送った人間、斎藤をゲーセンに送った人間、犯行後困った前川を斎藤がいるゲーセンに連れてきた人間、その際前川の服に血がついてるのを見た人間、ひと晩前川を匿った人間など、次々と関係者を登場させる。しかし、うそのストーリーだから、斎藤の話はコロコロ変わる。

ここまで読んで、「刑事もばかだね。斎藤のいうことが違っていたら、諦めればいいやん」と思う人もいるだろう。違う、違う。刑事が斎藤らワルたちを利用しようとしているのだ。

刑事は、斎藤が刑務所に送られる際「おい、何か土産を置いてけや」とか、「まだ知ってることがあるんじゃないか」とか、斎藤やその周辺の人間を使って、自分たちのストーリーを作ろうと必死なのだ。「関係者」を担わされた若者も、みな、脛に傷があるため、刑事の言いなりにストーリーを合わせてしまう。  

しかし、彼らも成人になり家庭を持つようになると、「なんと馬鹿なことしたのか」と反省し、本当のことを言うようになる。前川さんを犯人とする証言をした男性は、刑事にウソの証言を強いられ、代わりの自分の覚せい剤事件をチャラにしてもらったと再審の場で証言した。前に嘘の証言した夜は、刑事に食事やスナックを奢られ、あげく結婚祝いに5000円包まれた祝儀袋を貰ったと証言。刑事の名前がばっちり書かれた祝儀袋を証拠提出した。本当に酷い話だ。

以前私も支援した石川県の盛一国賠という裁判があった。この盛一君も若い時、刑事に目をつけられ「S」にされた。どんなに覚せい剤をやっても絶対捕まらない。その代り、刑事に言われるがままに、薬をやっている知人や先輩を逮捕させるような工作を刑事としていく。そんななか亡くなった知人もいた。

盛一君も成人し、家庭をもち、「馬鹿なことをした」と猛省し、刑事らとの関係をきっぱり絶った。そして、そんな刑事と不倫で付き合う女性友達に「あんな連中とつきあわんほうがいい」と忠告する。

しかし、この女性は、盛一君のその言葉を刑事に伝える。そのため、盛一君がやってもいない覚せい剤事件で逮捕される。「これ以上余計なこと言うな」という脅しだ。その証拠に盛一が連れていかれた取調室に、以前盛一君が良く飲食をともにした刑事が顔を出し、盛一君に一言「バーカ」と言って消えたという。

多くの冤罪を作っているのは、警察、検察、そして裁判所だ。もちろん刑事という後ろ盾が出来て強気になって、犯罪を犯した人たちも悪い。しかし、北海道の事件も、盛一君の事件も、そして前川さんの事件で関係者とされた人たちも、勝手なストーリーの「駒」に使われ、最後はポイと捨てられた。本当に酷いやつらだ。

前川さんには昨日の朝電話した。桜井さんに紹介され、初めて連絡してから2年半。その間何度か電話で話したり、うちの店にも来てくれたり。最初はボソリ、ボソリとひとこと、ふたこと話すだけだった前川さんだが、その声は、再審開始が決まって以降、どんどん自信を取り戻しているような気がする。

《酒井隆史さん釜ヶ崎トークショーのご案内》

3月30日(日)、酒井隆史さんのトークショーを行います。釜ヶ崎の問題にも取り組んでおられる酒井さんには、2019年「はな」でお話をして頂いたのが最後なのでとても久しぶりです。なお、そのお話は冊子「ジェントリフィケーションへの抵抗を解体しようとする者たち」にまとめており、非常に多くの方々に読んで頂きました。

今回はちょっと大上段に構えたテーマになっていますが、様々な問題をその場で質問したり、議論出来るような形にしたいと思いますので、40人ほど限定、要予約でお願い致します。

メール、携帯、そしてメッセンジャーでも受け付けております。宜しくお願い致します!!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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釜ヶ崎地域合同労組委員長が「日本維新の会」交野支部幹事長を選挙妨害の疑いで提訴 裁判は2月27日13時30分~ 大阪地裁808号法廷です! 尾﨑美代子

釜ヶ崎から「日本維新の会」の選挙妨害に対する裁判が始まります。

原告は釜ヶ崎地域合同労組委員長の稲垣浩さん、被告は日本維新の会・交野支部幹事長の高石康氏です。稲垣さんは、2023年3月31日告示、4月9日投票日の大阪市議会議員選挙(西成区、定数3)に出馬しました。

その際、自身の顔写真と氏名を印刷したポスターを掲示板に貼り選挙活動を行いました。すると4月4日午後3時20分、当時のTwitter(現Ⅹ)のアカウント名「やっぱり満里奈様」というユーザーが、稲垣さんのポスターの写真に「ヨゴレ稲垣」と書いた記事を投稿しました。

これを見つけた稲垣さんは、8月28日、Ⅹ社を被告として東京地裁に発信者情報開示命令を申し立てたところ、稲垣さんの申し立てを認める決定がでました。Ⅹ社は決定に従って、人物を特定するためⅩ社に登録されたアカウントの電話番号を開示。稲垣さんの代理人がその番号について照会をかけたところ、日本維新の会のと判明しました。そのため、稲垣さんは高石氏を被告として選挙妨害で損害賠償請求裁判を提訴いたしました。

「ヨゴレ」とは物理的に何かで汚れているということを意味するだけでなく、釜ヶ崎で野宿している人や労働者を汚れている、劣った者とする差別的な表現です。ちなみに、釜ヶ崎などを警らする西成警察署の警察官は、道路などで泥酔して寝ている労働者や野宿者を見つけると、「センター西側に450(ヨゴレ)が2人」などと報告する隠語として使われているという情報もあります。

この高石氏、身長190センチでスキンヘッド、強面の風体、私も選挙を手伝った際、何度か見ています。大阪ではかなりな「有名人」? 維新関係者からは「入道さん」などと親しみを込めて呼ばれているようです。過去に橋下徹氏の後援会青年部長だったとのこと、橋下氏が市長選に出馬した2014年、同じく市長選に出馬したマック赤坂氏が橋下氏の会見場に、公開討論をやろうと入っていった際、マック氏を羽交い絞めにして会場外に引きずり出したことでも有名です。

選挙の際には松井、吉村などのボディーガードとして動いています。2023年6月には「文春」で、維新の女性府議に強烈なパワハラを行ったことが暴かれていました。

さてこの間、さまざまな選挙の場で、ネットをどう使うかなどSNSの運用について、多くの問題が噴出しています。そんななかで、高石氏の「ヨゴレ稲垣」の投稿がどういう意味をもつかを考えてみます。稲垣氏の出馬した西成区は定員3名で、維新の会の議員も立候補していました。そうした状況下、高石氏が、稲垣氏を侮蔑するSNS活動を行ったことは、稲垣氏を落選させ、維新の会の立候補者を当選させることが目的であることはいうまでもありません。

この間、東京知事選や兵庫県知事選で、元検事の郷原弁護士らが、特定の候補者を当選させさないための、いわゆる「落選運動」を展開しています。これは公職選挙法142条で認められていますが、そこでは「当選をさせないために活動に使用する文書図画を頒布する者」は、チラシなどに電子メールアドレス等を正しく表示することが義務づけられています。しかし、高石氏の「ヨゴレ稲垣」の投稿などに、高石氏のメールアドレスなどは表示されていません。これ一つみても、違法であることは明らかです。

稲垣氏は今回の提訴について、以下のように訴えています。

「ツイッター(現Ⅹ)上の投稿は稲垣を貶めるだけではなく、政治家としての資質、人格を誹謗中傷することであることも明らかです。被告(維新の会)による選挙妨害に対して損害賠償を求める裁判です」

この高石氏は、9年前の大阪市議会補欠選挙に稲垣氏が出馬した際、西成区役所近くで演説をしようと準備を始めた稲垣氏に「橋下徹が来るので立ち去るように」と妨害しました。「こっちが先に来ているだろう」と、妨害をはねのけ演説を終えましたが、その後、選挙カーに戻ろうとすると、うしろから維新の別の運動員が稲垣さんに「ヨゴレ」「ヨゴレ」と何度も言っていました。維新関係者はずっとこんな感じなのでしょうね。

ぜひ、この裁判に、ご注目とご支援をお願いいたします。

【裁判の日程】2月27日(木)午後1時30分~ 大阪地裁808号法廷

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)
尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)

冤罪犠牲者の青木恵子さん、大阪高裁にホンダに対する損害賠償請求の再審を申し立て 尾﨑美代子

東住吉事件の冤罪犠牲者青木恵子さんが、1月24日午前中、大阪高裁に自動車メーカー本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)に対する損害賠償請求の再審を申し立てました(民事での再審申し立ては大変珍しいとのこと)。

◎[参考動画]【独自】火災で女児死亡の冤罪事件 無期懲役で一時服役の母親が賠償求め自動車メーカーに「再審」申し立て(関西テレビ2025/01/24)

30年前自宅で発生した火災事故で娘を失った青木さん。しかも青木さんと同居男性が保険金目当てで娘を焼死させたとして逮捕、起訴され、無期懲役が確定し服役した。

その後、再審で火災は当時青木さん宅にあったホンダの車からガソリンが漏れ、それが車庫に隣接する風呂場の種火に引火し、火災を引き起こしたことがわかり、青木さんらに無罪判決が下された。

青木さんはその後、ホンダに損害賠償を求める国賠訴訟も訴えていた。しかし、こちらは、不法行為から20年経過すると損害賠償を求める権利が失われるとする「排斥期間」が経過したからとの理由で認められなかった。

いやいや、警察、検察、裁判所は誤って青木さんを犯人にして、獄中につないでいた。和歌山刑務所に服役していた青木さんは、亡くなった娘に対する損害賠償の請求権をもっておらず、裁判したくても訴えられなかったのだ!裁判できなくさせていたのは、警察、検察、裁判所だろう。

そんななか、青木さんの刑事裁判弁護団に関わっていたお1人の弁護士の方が、昨年7月に判決が下された旧優生保護法の国賠訴訟で「排斥期間の適用は容認できない」との判決が出たことを報道で知った。「排斥期間」は1989年に最高裁がこれを決めて以降多くの裁判で適用されてきた。青木さんのホンダ国賠もそうだった。

「排斥期間」の適用を容認できない」との情報を知った弁護士は、これは青木さんにも適用出来るのではと考え、今回の申し立てに至った。

青木さんから「カンテレで5時20分に短いニュースで出るらしいから見れたら見てね」と連絡がきたので、お客様と見ていた。それから10数分したら、青木さん本人が店に入ってきた。みんなで「おめでとう!」と言いました。今日は青木さんの誕生日でもあります。

青木さん「お金の問題じゃないの。ホンダにはメグちゃん(娘さん)にひとこと謝罪して欲しい」。

この願いを叶えてやるために、皆さんもこの裁判にご注目を!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
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大阪・関西万博開催まで三か月を切り、維新は「機運」を「醸成」しろと言うが…… 尾﨑美代子

◆年末の紅白でも全く取り上げられなかった国家プロジェクト

4月13日の万博開催まで三か月を切ったが全く盛り上がらない。先日関東在住の方とZOOM会議を行った際「万博っていつからですか?」と聞かれた。今日は京都在住の方からも同じことを聞かれた。国家プロジェクトなのに、年末の紅白でも全く取り上げられなかった。

なんというか、この状態、全校生徒からシカトされている、超いじめ状態にあっているようなもの。虐めは虐められる側にも問題があるという人がいるが、私は確実に虐める側に問題があると思う。

しかし万博に関しては、このご時世に万博やろうとブチ挙げた維新の会に大いに問題があると考える。チケットは全く売れてない。企業が買った(買わされた)分が、そのうち大安売りで出てくるだろう。

維新のやることは全てそうだ。大阪城公園の樹木をバッサバッサと切り倒して作られた劇場「KEREN」が開演するとき、ある人から「吉本のお偉いさんに怒られるのでチケット、ただで貰って」とメールがきたね。

新今宮駅北側に星野リゾートが開業したと同時に高架下に造られた「新今宮屋台村」、当初は営業していたが今は閉まったまま。地元で有名なホルモン屋を立ち退かせてまで作った割にはどうなってるんだ。ていうか、カラ家賃、今誰が払ってるんだ。

◆40億円近くかけた「機運醸成キャンペーン」の愚

万博が全く盛り上がらないなか、焦った連中が始めたのが40億円近くかけた「機運醸成(きうんじょうせい)キャンペーン」。昭和どころか、大正、明治なおっさんらがひねり出したこのネーミング。「三者凡退」の世界だな。若い連中で「おっさん、あっすみません。部長、こんなネーミング、ダメダメですよ」という人がいなかったのか?それが一番怖い。こんなネーミングで機運が醸成するかよ! 

「今回はだめだけど、70年万博は良かったね」という声もあるが、そうだろうか。私の住む釜ヶ崎は、先の70年大阪万博開催のため、労働者を大量に集めるために作られた地域だ。釜ヶ崎の研究を続ける原口剛さん(神戸大准教授)によれば、70年万博の工事では、尻無川水門事故で11名が生き埋め死亡、会場造成工事で17人が死亡、開幕後の地下鉄天神橋筋六丁目の建設工事で、ガス爆発で79名死亡、420名重軽傷の犠牲を出すなど、多くの労働者が犠牲になっている。

◆「カジノで儲けて福祉に回す」

工事が遅れに遅れ、開演時に完成してるパビリオンはわずか3ケ国だという。今後突貫工事が必至だろうが、そんな工事現場でさらに犠牲者は増えるだろう。わずか184日間(4月13日~10月13日)の万博のために、多くの労働者が犠牲になり、私たち府民・市民が赤字を背負う羽目になる万博にはやる意味があるのか? しかも、万博開催のために、昨年12月1日、釜ヶ崎のセンター周辺に野宿する人たちがいきなり強制排除された。釜ヶ崎からこそ万博に反対していかなくてはならない。なのに、仲間と作った万博反対のチラシを、釜ヶ崎の越冬闘争の現場で多くのちに読んでもらおうとまいたら、「(公園の)外でまけ」とどやされたそうだ。なぜ?

万博開催の目的は、そのあとに予定するIR・カジノをやるためだ。カジノ(ばくち場)建設のために道路や鉄道を整備の整備費用に税金を使ったら、さすがにまずいと考えた維新は、まずはその前の万博のために道路や鉄道を整備しましたと口実につかった。

元市長の松井は「カジノで儲けて福祉に回す」とのたまった。「父ちゃん、ボートで取ったら、お前らに美味しいモノ食わせてやっからよ」の世界だ。「父ちゃん、住ノ江(ボート)行くのやめて、今日の夕飯のコメ買って」と父ちゃんの足元に縋りつくところだろうよ。

吉村、松井よ! 生活保護のおっちゃんらが月末頼りにしていた激安スーパー玉出のひと玉19円のうどんもなくなったんだぞ。万博、IR・カジノにつぎ込む金は、いますぐ生活に困窮した人たちの生活費用に回せ!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)
尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年2月号

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能登地震から一年……。福島の事故からずっと 「おめでとう」が言えない正月が続いている 尾﨑美代子

能登半島地震から1月1日で1年、多くの報道番組が輪島や珠洲市から中継を行った。とくに珠洲市は過去に原発の建設を住民らが反対して中止に追い込んだ町。ここに原発があったならば、どうなっていたのだろう。

◆珠洲市制50周年記念冊子にも記されていない「珠洲原発」という「黒歴史」

私はその珠洲市を去年、5月に訪れた。石川県では、井戸弁護士が裁判長時代に運転差し止めの判決を下した志賀原発については知っていたが、正直、珠洲原発は名前を知っている程度だった。何度もいうが、もし珠洲原発があったならば、福島の原発事故以上の大惨事になっていただろう。

そんな思いから、珠洲原発建設を止めさせた闘いを知りたくて、地元で長く原発反対運動に関わってきた北野進さんを訪ねたのだった。北野さんのお話で驚いたのは、29年間原発建設反対運動で地元住民が二分され、結果、珠洲原発は建設凍結(解凍する術がないから実質中止)に追い込まれたにも拘わらず、建設を進める行政側が全く反省しようとしていなかったことだった。それは北野進さん著書「珠洲原発・阻止への歩み」の「はじめに」に書かれている以下の内容だ。

珠洲市の寺家と高谷に建設が予定されていた珠洲原発は、2003年12月5日、関西電力、中部電力、北陸電力の3社が市長に計画の凍結を伝えたことで幕を閉じた。計画の浮上から29年、それ以前の水面下の動きを含めると35年以上の長い闘いだった。
実はその翌年2004年、珠洲市は市制50周年を迎えた。そこで50周年を記念して「珠洲市勢要覧2004」という冊子が発行されたが、そのなかで珠洲原発についての記載が一切なかったというのだ。珠洲市にとって珠洲原発問題は、俗にいう「黒歴史」だったのだろうか。北野氏はこれに対して「長年にわたる原発誘致一辺倒の行政も許しがたいが、これは(歴史からの抹消)は市民に対する二重の意味での重大な背信行為である」と書いている。

◆失敗を反省しない日本

珠洲市だけではない。日本はいたるところで反省することがない。

鹿砦社の反原発誌「季節」の最新号で特集したが、日本の原発立地自治体で作る避難計画は、どこでも「絵に描いた餅」状態だ。何度地震おきても、いつまでたっても寒い体育館で段ボール敷いての避難生活を余儀なくされている。食料が足りない、水がでない。何よりトイレが足りない。トイレを我慢するために水分を採らず体調を悪くさせる。関連死が増える…何度も同じことを繰り返す。

イタリアでは、1980年、2700人以上が犠牲になったイリピニア地震の反省から災害対策を担う国の機関「市民保護局」が設立された。それにより「ベッド、トイレ、キッチン」が地震発災から24時間以内に設営される。日常的にプロをも含めたボランティアが訓練を受けている。2700人が犠牲になった地震を反省するイタリアに比べ、何万人が犠牲になろうが、何も反省していない日本という国。

同じ昨年7月に花蓮で大きな地震がおきた台湾も、過去の地震の反省から地震対策を充実させている。地震発災から1時間で市や自治体がグループを立ち上げ、情報収集を開始、2時間後にはテントが設置され、3時間後には被災者を受け入れ、4時間後には設備が整うという。「どの避難所でも安全、衛生的、プライバシー、食事の確保が出来ており、生活に困らないレベルが確保されている」という。

しかも、倒壊の危険性が高いと判断された建物は、3ケ月後には解体・撤去作業が終了し、現地で工事関係者の姿をみることはなくなるという。それに比べ、能登半島はどうだ? 昨日見た番組では、解体が進まず、そのままの建物が見えた。もう、1年だぞ。

台湾は地震対策だけではない。再審法もどんどん変えている。ある事件で無実の人を逮捕してしまったことがきっかけだ。その人を実況見分に連れていった際、その人が飛び降り自殺してしまった。その後、真犯人が逮捕された。無実の人を死に追いやったことを猛反省し、台湾ではその後再審法がどんどん変えられていった。

話を戻すと、日本はすべてが遅れているのは、失敗を反省しないからだ。しかもそれを謝罪することもない。言い訳ばかりだ。奥能登の復興が遅れているのは、奥能登は交通の便が悪く、建設機材や重機、そして作業員を送るのも大変だ……と。それこそ、重機と人材は夢洲から奥能登へもってけ!私は万博、カジノには断固反対だが、賛成の人も賛成の議員も、万博は1年延期で、重機と人材はすべて能登の復興へ回せくらい言えないのか?

福島の事故からずっとこっち、「おめでとう」が言えない正月が続いている。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年冬号

裁判で何が裁かれ、何が裁かれなかったか? 尾﨑美代子

ここ数日、ちょっと驚く裁判の記事が目につく。大阪高検の検事正だった男性が、検事時代、酔いつぶれた部下の女性検事に性加害を与えた件で逮捕・起訴されたが、当初加害を認め謝罪していたものの、弁護人を変えて一転無罪を主張した件、無罪を主張する会見で発言する弁護士は見たことがあると思ったら、以前取材した冤罪事件の主任弁護士だった。その事件で実際取材したのは別の若手弁護士だったが、数日後、なんとその若手弁護士が、別の性加害事件の控訴審を担当し、大阪高裁で逆転無罪判決をとったというのだ。この事件では、無罪判決を出した裁判長への抗議行動にまで発展している。

「何が真実なのか?」とどんよりしていたが、ふと以前買って読めずにいた『殺人者はいかに誕生したか』を読み始め、あるヒントを得た。私は拙著『日本の冤罪』の「はじめに」でも書いているが、もともと凶悪事件に関心をもっている。凶悪事件を起こした人だって、もともと凶悪犯に生まれたわけではない。オギャーと生まれたときには、誰でもごく普通の子供だった。それがのちに凶悪な事件の犯人となっていく。そのあいだに何があったのかが気になるのだ。

長谷川博一著『殺人者はいかに誕生したか』(新潮文庫)

「殺人者はいかに誕生したか」の著者は臨床心理士の長谷川博一さん。そのなかで、こんな一文をみつけた。

「裁判が真実を明らかにする場ではないことは、私の知る複数の弁護士から重ねて聞かされているところです。裁判は、検察と弁護人の闘い、駆け引きの場にすぎません。裁判所は『真実解明がその使命ではない』という事実を、社会が誤解しないよう公言してもらいたいと思います」。

長谷川さんは、多くの凶悪事件の犯人たちに面談や文通を続け、彼らがなぜ凶悪事件を起こすに至ったかについて、裁判では明らかにされていない、いわゆる「心の闇」と解明していく。そこからは幼少期の壮絶な家庭環境や学校での虐めなどがうかびあがってくる。池田小学校殺傷事件の宅間死刑囚や、秋葉原無差別殺傷事件の加藤死刑囚については幼少期の家庭環境、家族関係に問題があったことは少しは知っていた。

しかし、秋田連続児童殺害事件の畠山鈴香さんのことはあまり知らなかった。彼女は自身の娘と近所に住む男児の二人を殺害したとして逮捕・起訴され、無期懲役が下された。彼女について印象に残っているのは、家をとりまくメディアにきつい口調、目つきで怒鳴っている姿だった。黒い服装を好み、ぼさぼさ気味の長髪を一つに束ね、全体的にその姿は暗いイメージだった。

長谷川さんは面談を通じて、彼女について「意図的に嘘をつかない。かえって自分に不利な言動をとる。相手の意向にあわせる、いわゆる迎合性が強い。相手の示唆を信じ込む被暗示性が強い。自尊心が低い。他人の心を知ろうとする傾向が乏しいなどの特徴があった」と分析している。

さらに彼女は、精神鑑定で解離性健忘が認定されている。これはもともと彼女が持つパニックに陥りやすいという特性の中でおきたものだという。そこには、彼女が幼少期に実の父親から受けたDVや、学校での虐めなどによるトラウマが複雑に絡み合って、心を防衛するための乖離をおこしやすい状態にあったという。健忘というのは、その記憶をもつことが、本人にとって重大な心理的危機を招くときに生じるという。

鈴香さんのトラウマは小学生時の給食時間にはじまった。当時は(今も?)給食を絶対残さず食べされることに熱心な教師がいた。曰く「食べ物を粗末にしたらいけない」「食べれない子もいる」「作った人への感謝を忘れず」等々理由をつけて、全部食べ終えるまで机に縛り付けるようなしつけをする教師だ。

彼女は担任にそれをやられた。彼女の場合、好き嫌いが激しいというのではなく、人前で食べることができないのだ。業を煮やした担任が「手を出して」といい、彼女の手のひらに給食を入れていく、汁物まで……。「全部食べて」という担任の前で、手のひらに顔を埋めるようにして食べようとする彼女……その姿を見て同級生は「犬みたい」「汚い」「ばい菌」とはやし立てる。

彼女のこうした行為の背景に父親の暴力があった。最初は平手、それから拳骨に。
「こういうときは、ただ時間が過ぎるのを待つしかありません。修羅場の中をなにもしないで待つことの耐え難さ。心は苦痛から逃れるために『感じない』ようにし、そして『抵抗しない』という防護策が選ばれることになるのです」

そんな家庭での食事は最も「気を使わなくてはならない」空間だった。ささいなことで父親が暴れるので、父親を怒らせないことに全神経を集中させるため、食べ物の味もわからず、口にいれたものを思うように呑み込めない。飢えを癒すため、誰もいない時にお菓子などを食べていたという。

彼女の娘が亡くなった時、警察は事故死と公表したが、それに納得できない彼女は、警察に再捜査を懇願し、自分でチラシを作り、犯人を捜して欲しいと訴えていた。自分で殺したなら「事故死」のままにしておけばいいのに。橋の欄干に座らせたのちの記憶が彼女にはないのだ。その原因について、事件から18年の今年、ノンフィクションライターの小野一光さんが取材し、当時彼女が抗うつ剤や睡眠導入剤などを大量に摂取するオーバードーズを繰り返していたことを明らかにしている。そのため、一時的に意識が乖離することがあったようだ。

残虐な事件が起き、尊い命が奪われたのち、罪を償うということは、二度と同じような犯罪が起きないよう、何をすればよいかを考えていくことが必要だ。しかし、臨床心理士・長谷川さんもいうように、畠山鈴香さんの裁判では、その任務はしっかり果たせなかったようだ。本当に残念だ。

裁判で何が裁かれ、何が裁かれなかったかを、じっくり見ていく必要があるのではないか(などと評論家風に〆てしまい、超恥ずかしいが…)。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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ドンファン事件に「無罪」判決! 「疑わしきは罰せず」が貫徹された判決だった! 尾﨑美代子

◆確かにセンセーショナルな事件だった!

紀州のドンファンとよばれた男性が覚醒剤中毒て死亡した件で、逮捕された元妻の女性の裁判員裁判で、女性に無罪判決がでた。孫ほど歳下の女性との結婚で話題になったうえ、最後は覚せい剤で死亡したということで、メディアはさんざん騒いできた。

これが有罪ならば、「やっぱりね。あの女、怪しかったもんね」と騒ぎ続けただろう。しかし、結果は無罪。何故かそれ以降、メディアは全体トーンダウンしたと思うが、そう思うのは私だけか? 結構深堀りする番組もあるが、羽鳥慎一モーニングショーなんか「はい、あの事件で無罪判決がでました」と事実に触れた程度、「〇〇動物園のカピバラのお風呂に、昨日ゆずがプレゼントされました」と似たような扱いだった。

確かにセンセーショナルな事件だった。裁判は長期に渡り、28人もの証人が証言した。中には覚醒剤の売人もいた。男は「職業」を聞かれ、「(覚せい剤の)売人」と答えたという。

そんなことあんのか? 無職か、別の職業をあげ、その後「被告を知ってるか?」と問われ、「以前覚醒剤の売人をやっていた頃、その女性と接触したことがあります」と答えるのが普通ではないか? 男性の姿は衝立などで遮られ、顔など分からない方法で行われたのだろうが、それにしても法廷で「売人です」と堂々と証言し、証人の顔をみることができた裁判員らは、さぞかし驚いただろう?

◆「疑わしきは罰せず」が貫徹された判決だった!

この判決、「疑わしきは罰せず」という、刑事裁判の基本中の基本をズバリと見せてくれただけでも見ていてスカッとした。基本中の基本とはいえ、あまりに守られていない鉄則だったからね。

でも、ここで花開いたのだぞ。福島恵子裁判長がバシッと「ほら見ろよ」と出してくれたんだぞ。モーニングショーの羽鳥さん、玉川さんなんかにコメントさせてよ。玉川さんはしゃべりたいことがやまほどあったはず。しかし、それすらしなかった。局でよほどこの件に関しては何気なくスルーしようと決まっていたと思うほど。 

◆TVメディアは男性中心過ぎないか?

これまでいろんな冤罪事件をみているが、とりわけ女性が犯人とされた場合、男性中心のメディアは、こんな扱いだということがよくわかったね。のちに事件ではなかったことが判明した青木恵子さんの東住吉事件、西山美香さんの湖東記念病院事件もそうだった。「同居男性が娘に性的虐待!被告女性との三角関係か?」「警察官に恋した被告女性とは?」とおもしろおかしく書き立ててたね。そこじゃないやろ! 

それはさておき、判決後、裁判員の一人だった20代の男性が、被告の女性は裁判に非常に真摯に向き合っていたと思うとか、メディアで言われる内容と実際の裁判はまったく違っていたとか話していた。私もその通りだと思う。

今回の彼女にしても、たまたまおじいさんほど年上のお金持ちの男性に好かれ、「お金もらえるなら」と結婚に応じた。遺産相続、完全犯罪など怪しい検索履歴が話題となったが、それがどうしたといいたい。

◆福島恵子裁判長もカッコよかった!

しかも、今どきの若い女性は日々のニュースなど見ていて、警察が消去した検索履歴でも復活させることができることを知っていただろう。私が宝くじで当選したら、まずは「億ション」とか「海外旅行」とか検索するだろう。そのうち、調子こいて「高齢者の婚活」とか、さらに調子こいて「全身美容整形」とか検索するだろう。

彼女が何かよからぬことを企み、それらを検索していたとしても、それを実行にうつせてはいないことが今回分かったのだ。致死量の大量の覚せい剤をドンファンに飲ませることができなかったのだ。そこが重要。

「うちの旦那、憎たらしいな」「不慮の事故で死ねばいいな」と毎日毎日思っていても、それを実行にうつしてなければ、ある意味、問題ないのだ。女性は、一生、旦那を殺したいほど憎んで終わるんだな、とある意味辛くなるが……。

福島恵子裁判長もカッコよかった。裁判官らがあの黒い服の下を着ているかは知らないが、あの福島恵子裁判長は、(テレビで見る限り)正直ごく普通のカジュアルな服だった。それは例えば、私が玉出スーパーに大根をを買いに行くときのような服装だった。そんな福島裁判長が、きっぱりと「疑わしきは罰せず」をやってくれたのだ。弁護団がいうように「グレーをいくら重ねても黒にはならないのだ」。

◆腐った検察どもは、なんでもやりかねない!

検察はもちろんこのままではいないだろう。必ず控訴するだろう。しかし、どうやって大量の覚せい剤を飲ませたか、そこが解明されなければ、有罪にはできないだろう。

あるいはもうひとつ、覚せい剤の売人の一人が「女性に売ったのは氷砂糖」と証言した件だ。和田アキ子まで参戦して、「覚せい剤と氷砂糖は全く違う」とか言ってたらしい。ここで新たな展開として、「氷砂糖を売った」という証人について、控訴審で元締めが出てきて「あいつは売人として嘘をついた。うちの組織は彼を破門にした」などと言い、破門状や下手すりゃ男がけじめをつけた証拠として切断された小指などを証拠提出するかもしれない。

腐った検察どもは、なんでもやりかねないからね。今後も注目していきたい。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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《講演》徳田靖之弁護士・声なき声を聞く〈6〉飯塚事件再審 ── 日本の再審制度を変えていかなければいけない 尾﨑美代子

 

ハンセン病、薬害エイズ被害患者の救済から飯塚事件などの冤罪訴訟まで、常に弱者の立場に立ち、法廷で声なき声を代弁してきた徳田靖之(とくだ・やすゆき)弁護士 ──。「6・5 飯塚事件『不当決定』を許さない」と題された9月14日大阪講演の記録を全6回連載で報告する。(企画・構成=尾﨑美代子)

◆飯塚事件の再審を勝ち取ることの意義

私たちは今、福岡高裁で即日抗告審を闘っています。ここで今、Оさんの初期供述をだせという証拠開示の闘いを挑んでいるわけですが、これまでの闘いで私たちが体験していることからいうと、真犯人を特定しない限り再審の扉は開かないのではないかと思っています。

そういう私たちに、実は、ある刑務所で服役している人から、彼が以前の事件で服役中に、同房になった男から「自分が飯塚事件をやってしまった」という告白を聞いたという情報が寄せられています。これはまだ私たちがその証言の信用性を固めていくということをやっていかなくてはならない。しかし、なかなか固めるということは難しいという、そういうレベルの段階ですが。

ただ、私たちがこの飯塚事件をやっていて確信に近い思いをもっているのは、私たちが一生懸命闘っている過程に、新しい証拠、新しい道がどんどん開いていくわけです。第一次再審請求がだめだったときに、木村さんが現れる、Оさんが現れる、そして第二次再審の壁が塞がれたとき、新たな道が開かれている。つまりこの飯塚事件というのは、時間が経てば経つほど、久間さんが犯人でないという確信を、この事件にかかわる人たちにもたらせている、そんなようになるわけです。

飯塚事件こそ、死刑制度の根幹を改めて問うという、飯塚事件の罪の深さを改めて私たちが考えるときにおいても、この飯塚事件の再審を勝ち取ることは、とても大きな意義があるのではないかと考えています。

◆再審法の規定を変えなくてはならない

その飯塚事件の再審を勝ち取るためにも、何を今一番にやらなければならないと思っているか。それは、再審法の規定を変えなくてはならないということです。日本の再審法は大正11年(1922年)に作られた旧刑事訴訟法の規定がそのまま残されています。戦後、変えられたのはたった一点、検察官には再審請求権がない、この一点だけです。

戦後、刑事訴訟法は改定されましたが、時間がなかったからという理由で、再審規定だけはそのままだった。いずれ改めて検討するという国会での議事録が残されていますが、手つかずのままでした。

それが何をもたらしているかというと、特に2つの大きな害悪をもたらしている。1つは証拠開示規定がないということです。刑事訴訟法は改正されましたので、今は、検察官は手持ちの証拠を開示しなくてはならないとなっている。

しかし、再審事件に関してはこの規定がありません。ですから検察官は、再審請求に関して、本当は真犯人ではないかという証拠があっても出す義務がないんです。捜査というのは、誰が犯人だろうかということで、いろんな証拠を集めていくわけです。その人を犯人にしていくための証拠と、その人が犯人でないという証拠をふりわけていくわけです。その人が犯人だという証拠だけを集めて裁判に提出するというのが捜査のやり方です。だから、彼が犯人でないという証拠は眠っているわけです。再審請求では、その眠っている証拠を出させることがとても大事なわけです。

でも日本の刑事訴訟法には、再審請求のときは証拠開示権が提示されていない。これを何が何でもかえなくてはならない。大崎事件でも狭山事件でも、隠されていた証拠が少しずつ開示されていくなかで、無実が明らかになっていくという経過をたどっています。飯塚事件で新証拠が開示されれば、間違いなく久間さんは無実だと明らかになると確信しています。

もう一つ、日本の再審制度で決定的に問題なのは、再審開始決定がでたあとに、検察官が不服申し立てできることです。このために、袴田さんは何十年も苦労してきた。大崎事件もそうです。何度も再審開始決定がでたが、検察官が即時抗告し、また再審開始が取り消されるということがおこっている。

この2つの問題を早急に改めさせることが急務になっています。まもなく袴田さんの再審無罪判決がでます。これをきっかけに、私たちは全力をあげて、日本の再審制度を変えていかなければいけないと思っていますし、それが変われば飯塚事件は死刑執行という厚い壁をこえて、間違いなく再審開始になるだろうと私たちは確信をしております。

すみません。お話しするたびに怒りが沸いてきまして、とりとめのない話になってしまいましたが、以上で私からのご報告とさせていただきたいと思います。どうぞ、これからも飯塚事件にご支援をお願いしたいと思います。ありがとうございました。(完)

◎徳田靖之弁護士講演会 6月5日飯塚事件「不当決定」を許さない(2024年9月14日 大阪浪速区大国 社会福祉法人ピースクラブにて)

◎《講演》徳田靖之弁護士・声なき声を聞く ── 飯塚事件再審[全6回連載](構成=尾﨑美代子)
〈1〉弁護士として、自ら犯してしまった過ちをいかに一人の人間としてどう償うのか
〈2〉失われていた物証と証拠の改竄
〈3〉無実の人を殺してしまった日本の裁判所
〈4〉死刑判決の理由は、全部間違いだった
〈5〉裁判官は、「エリート」であればあるほど最高裁に「忖度」する
〈6〉日本の再審制度を変えていかなければいけない

▼徳田靖之(とくだ・やすゆき)
弁護士。1944年4月大分県別府市生まれ。東京大学法学部卒。1969年弁護士登録。大分県弁護士会所属。「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟西日本弁護団共同代表、ハンセン病市民学会共同代表、薬害エイズ九州訴訟共同代表。飯塚事件弁護団共同代表

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』