12月25日、2003年滋賀県近江市(旧湖東町)で、病院で死亡した男性患者に対する殺人罪で服役、その後再審請求裁判で無罪判決を受けた西山美香さん(40)が、国と県を相手取り、損害賠償請求を求める裁判を提訴した。提訴後、弁護士会館で開かれた記者会見で、井戸謙一弁護士より提訴の内容の概略が説明され、その後質疑応答が行われた。その会見内容を2回にわけて紹介する。前編に続き、後編の今回では記者会見での質疑応答を紹介する。なお、質問は複数の記者によるものだが、本稿では各社の名は記さない。(取材・構成=尾崎美代子)

── 国賠を闘おうと決意した理由は?

提訴後、弁護士会館で行われた記者会見

西山さん 再審で無罪判決を受けてからすぐに判断したのではなく、皆さんと協議して決めました。今でも滋賀県警は冤罪をつくるような捜査をしていて、一番偉い本部長が「捜査の違法性はない」とはっきり言えることが、私にとってはおかしくて仕方ない。そんなことで警察官をやっていたら、どんどん冤罪ができていくと思ったからです。それと12月28日は、37年冤罪で闘っておられる滋賀県の日野町事件が起きた日ですが、大阪高裁はまだ再審開始の決定をだしていません。一刻も早く決定をだし、私のように無罪判決を貰えたらと思い、私も闘う決意をしました。そして私たちのために動いてくれる獄友の桜井昌司さん、青木恵子さんらに励まされてきたので、お二人が国賠を闘っているので、私も一緒に闘っていけたらと思ったからです。

── 警察に望むことは?

西山さん 取り調べをしっかりして欲しい。脅迫したり、犯人と決めつけるのではなく、どういういきさつでどうなったかをきちんと話を聞いて捜査してほしい。逮捕したら「こいつは犯人だ」と決めつけないで欲しいということが一番です。

── 滋賀県警が謝罪しないことについては?

西山さん 滋賀県警は間違いをおかしたなら謝るべきです。だからこそ私が国賠をする意味があると思います。国賠することで、裁判所でいろんなことを明らかにしていきたいと思っています。

── 国賠を決断されたのはいつごろか?きっかけは何かを教えてください。

西山さん 日野町事件で、今年(2020年)か年度内に再審開始の決定が出ると思ったが、裁判長が変わったりしてなかなか難しいとなったので、私も裁判をして一緒に闘っていきたいと思うようになりました。秋くらいに決意しました。

── 12月25日に提訴しようと思ったのは?

西山さん 私の再審開始の決定(2017年12月20日)が大阪高裁で出て、喜びが大きかった矢先の12月25日に、検察が特別抗告したのですが、特別抗告されたら、家族がどれだけ苦しいかをわかってもらいたいと思い、25日にしたいと弁護団に言いました。

── 西山さんは、最初は静かに暮らしたいと考えていたそうですが?

西山さん 静かに生活したい、今の生活を大事にしたい思いはあります。でも私が国賠をすることで、勇気づけられる人も沢山いると思います。これまでいろんな手紙をもらいました。障害をもっている方からは「私がもし事件にまきこまれていたら、どうなったかわからない。西山さんのように訴えることはできなかったかもしれない」という手紙をもらいました。ほかに励ましの声も沢山あるので、これは国賠を闘う意義があるのではないかと思い、決断しました。

── 国賠を提訴することを、ご家族にはいつ頃はなされたのですか?

西山さん 両親は、私が(刑務所の)中にいるとき、支援を色々やってくれ、国賠をするものだと思っていたようです。私に「しなさい」と言いましたが、私は(裁判が)長くかかるし、精神的に持つかわからないからできないと言っていたので、両親は最初から国賠するつもりでした。

── 国賠では警察、検察を追求しますが、間違った判決を書いた裁判官にいいたいことは?

西山さん 私の確定審で判決を書いた裁判官は、日野町事件でも悪いことをしています。そういう裁判官をこの世の中からなくしていきたいと思っているので、その点も国賠で強く主張していきたいです。

── この訴訟は賠償請求が目的ですが、さきほどのお話では、お金を目的に訴訟をしようと思ったのではないように聞こえましたが。改めてお金の部分とそうでない部分とどちらのほうが重要とお考えでしょうか?

西山さん お金の問題ではないんです。勝つことが大事なんです。布川事件の桜井さんは国賠で勝ったでしょう。それで勇気づけられた人がいっぱいいるんです。それで裁判所も考えなければいけないと思います。大西裁判長は別の裁判では悪い判決を出しましたが、私の裁判では、真っ白い無罪判決をいただき、その上「説諭」までいただいた。「この事件を教訓に変えていかないといけない」と言ってくださいました。そこを変えるには、裁判をおこさないと変えていけない。滋賀県警はさんざん悪いことをしてきたので、国賠する意義かあると思います。

── 井戸弁護士にお聞きします。供述弱者への取り調べなどが問題になっていると話されていましたが、どういう点を裁判で明らかにしていく予定でしょうか?

井戸弁護士 捜査段階では美香さんの障害は明らかになっていなかった。その点は考慮すべきだが、ただ美香さんが、非常に性格的に弱い、自分の防御能力が弱い、そういう性格の持ち主であることと、しかも取り調べ刑事に対して恋心を抱いていることは、滋賀県警は十二分にわかっていながら、取り調べを続けていた。そういう環境が虚偽自白の温床であるということは、滋賀県警はわからないはずはない。虚偽自白を防がなくてはならないという意識があれば、まず取り調えば、こんなに好都合な環境はない。そこは警察の取り調べに対する意識の持ち方だが、たくさんいる供述弱者の方々は、ある意味警察の追っ手にかかったら、赤子の手をひねるような形で簡単に自白させてしまう。そうであってはならないという問題意識を警察も持たなくてはならないし、社会全体でそうした意識を高めていかなければならない。この訴訟がそういう契機になればと願っています。

大西裁判長の説諭は、全国の刑事司法担当者にボールを投げされたものと思っています。私自身もそのひとりですので、投げ返されたボールをそれぞれの立場で、それぞれの人間がそれをどう発展させるかを考えなくてはならない。私の立場では、この国賠訴訟で問題点を明らかにして、社会に還元していくという作業をすることが、私自身のそのボールの活かし方と思っています。

捜査機関が非を認めて謝罪してくれるのがベストですが、そこまでいかなくても、今度は民事の裁判所がその点をはっきり認定して、「こういう捜査は違法」という判断がでれば、それは今後の全国の捜査に与える影響は非常に大きいと思います。

共に国賠を闘う桜井昌司さん、青木恵子さんが、翌日の美香さんの誕生日を祝って花束を

◎冤罪を生まないために──冤罪被害者・西山美香さんが国と滋賀県を提訴した理由
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=37654
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=37660

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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昨年12月25日、2003年滋賀県近江市(旧湖東町)で、病院で死亡した男性患者に対する殺人罪で服役、その後再審請求裁判で無罪判決を受けた西山美香さん(40)が、国と県を相手取り、損害賠償請求を求める裁判を提訴した。提訴後、弁護士会館で開かれた記者会見で、井戸謙一弁護士より提訴の内容の概略が説明され、その後質疑応答が行われた。その会見内容を2回にわけて紹介する。前編の本稿は以下、井戸弁護士が語る提訴の概略だ。(取材・構成=尾崎美代子)

滋賀県大津裁判所に入る西山美香さん(写真左から2人目)、井戸謙一弁護士ら(写真左先頭)弁護団

◆滋賀県警による違法行為

つい今しがた、西山美香さんは、国と滋賀県を相手に国家賠償請求を提訴し、書類が受理されました。その件でご報告させていただきます。何を問題にしているか、県と国のどういう行為を違法行為としているかについて申し上げます。

滋賀県の公務員である滋賀県警の警察官に対しては、大きくいうと2つの違法を主張しています。被疑者取り調べの違法が1つ目、2つ目は被疑者に有利な証拠の隠蔽です。

被疑者取り調べの違法については、

[1]取り調べを担当した山本誠刑事が、供述弱者である西山美香さんを一種のマインドコントロール下におき、思い通りの供述調書を作成した。

[2]美香さん自身は供述を否認したり、認めたりをくり返していたが、否認調書を作成せず、自白を内容とする供述の調書だけをつくって、裁判所に供述過程の理解を誤らせた。

[3]起訴後は原則として取り調べをしてはいけないのに、自白を維持させる目的で、頻繁に起訴後の取り調べを続けた。

[4]
弁護人を美香さんが信頼するのを妨害する目的で、弁護人に対する誹謗中傷などを美香さんにつげ、美香さんが弁護人を信頼できないようにしたことです。

2つ目の証拠の隠匿の違法については、

[1]平成16年3月2日付けの捜査報告書には、滋賀医大西教授自身が、「亡くなった方が痰詰まりで酸素供給が低下し、死亡した可能性が十分にある」と説明したということが書かれていたのに、これを検察官に送らなかった。それにより、検察官の適正な起訴・不起訴の判断を誤らせた。

[2]西教授が、確定審の1審で、証人として供述するにあたり、西教授に対して、この痰詰まりの可能性を否定するように働きかけた可能性があることです。

◆検察官による違法行為

検察官の違法については、大きく2つあります。

1つ目は、捜査段階での違法であり、具体的には1つ目は、起訴・不起訴を決定する権限を適切に行使しなかったことです。検察官の取り調べにおいて、美香さんの犯人性に疑うにたりる十分な事情があることを把握していながら、起訴の判断をしたということ。2つ目は、滋賀県警がさきほど申し上げたような違法な取り調べを続けていたが、そのことは検察官も十分認識していたのに、これを是正させなかったことです。

検察官の違法の2つ目の大きなくくりは、再審開始決定に対して違法に特別抗告をしたことです。なぜかというと、特別抗告をするには特別抗告理由が必要です。検察官の主張内容のうち、判例違反の主張は、明らかに不合理でした。

また、事実誤認は、高裁段階までで提出した証拠に基づいて主張しなければいけないのに、それができないから、検察官は最高裁に新たに証拠の取り調べ請求をしたのです。しかし、最高裁が新たに証拠を取り調べる可能性がないから、事実誤認の主張が通る可能性もなかった。

◆警察、検察の違法行為を具体的に明らかにするために

共に国賠を闘う桜井昌司さん、青木恵子さんが、翌日の美香さんの誕生日を祝って花束を

検察官は、最高裁が特別抗告を受け入れ、再審開始決定を取り消す具体的な見通しがないのに、特別抗告をし、これによって美香さんの雪冤を無意味に1年3ケ月遅らせたのです。本訴においては、これらの警察官、検察官の違法行為によって、美香さんが被った損害を算定した金額から、先般受け取った6,000万円弱の刑事補償金を控除した残金として4,306万3,809円を請求するということになります。

美香さんも含めて我々は、再審無罪が確定してから、国賠を提訴するか否か、ずっと検討してきました。最終的に提訴することにしたのは美香さんの決断ですが、我々弁護団としては、再審公判で警察、検察の違法行為を具体的に明らかにするということが十分にはできなかったので、この国賠によってこれを明らかにしたい。具体的な経緯、理由などを可能な限り明らかにすることによって、大西裁判長が「説諭」で言っておられたように、この刑事事件を契機にして、日本の刑事司法を良くしていく、改善していく力になりたいという思いです。

一昨日(2020年12月23日)、袴田事件で最高裁が原決定を取り消しましたが、あのなかで最高裁の裁判官5人が一致して、みそ樽の中からでてきた衣類は、発見の直前に入れられた可能性があるという認識をしました。要するに証拠の捏造です。誰がしたかというと、静岡県警しかありえない。ということは警察という組織は、自分たちがした行為の正当性を取り繕うためには、証拠の捏造までしてしまう、そういう組織であるという認識を最高裁がしたという点が重要です。

そういう体質が日本の警察に色濃く残っているのであれば、今後も冤罪事件は決してなくならない。やはりそれを変えていかなくてはならないので、そのための力に、この国賠訴訟がなることを目指し、それを願って、今後この裁判に取り組んでいきたいと思います。以上です。(後編につづく)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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◆鉄骨の入っていない橋脚の存在が明らかに! 南海電鉄は安全なのか?

12月18日、大阪地裁(森鍵一裁判長)で釜ヶ崎の住民訴訟が行われた。この裁判では、あいりん総合センター(以下、センター)に入っていた西成労働福祉センターとあいりん職安の仮庁舎を建てた南海電鉄高架下の安全性や、南海電鉄の傘下である辰村建設と随意契約したことの是非などを争っている。

大勢の労働者が集まり、昼間野宿者が休息する、毎日数十万人が利用する南海電鉄の耐震性は大丈夫なのか?

南海電鉄高架下、仮庁舎エリアの北側部分は、橋脚に鋼板をまく耐震補強工事が実施されている

高速道路の橋脚が倒壊するなど未曽有の被害を出した1995年阪神淡路大震災のあと、近畿運輸局は各鉄道会社に対して、既存のRC(鉄筋コンクリート)柱に緊急耐震補強措置を取るよう求めた。南海電鉄は、難波駅や今宮戎駅周辺で、橋脚に鋼板を巻き付ける耐震補強工事を実施、今年に入り仮庁舎エリアの北側萩ノ茶屋駅周辺や、南側新今宮駅周辺などでも同様の工事を実施してきた。しかし何故か、この工事が仮庁舎エリアでは行われていなかった。これについて南海電鉄は裁判で「このエリアはRC柱ではなく、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)柱であるため、緊急耐震補強の対象外だ」と反論し、橋脚の中央に鉄骨が入るSRC柱のイラストを証拠提出していた。

しかし、10月9日、住民訴訟の原告の仲間が専門業者に依頼し、センター仮庁舎の北側エントランスの橋脚6本の非破壊検査を行ったところ、「鉄骨反応は確認できない」との調査結果が報告された。

センターの解体・建て替えは「耐震性に問題がある」として始まったが、そのため仮移転した南海電鉄高架下の橋脚に、南海電鉄が「入っている」と豪語した鉄骨が入っていないとは?!高架下の仮庁舎には毎日大勢の労働者が出入りし、昼間段ボールを敷き寝ている人もいるし、職員も大勢働いている。その上を走行する南海電鉄には、1日数十万人もの利用者がいる。センターの耐震性が問題なら、仮庁舎が入る南海電鉄の耐震性も問題にすべきではないのか!

前回の裁判で原告は、「鉄骨反応は確認できない」とした非破壊検査の調査報告を裁判所に証拠提出し、裁判長も被告の大阪府に「事実を明らかにせよ」と要求していた。

そうして迎えた18日の裁判で、南海電鉄が提出してきたのが、80数年前の南海電鉄建設時の図面らしきものだった。そこで大阪府と南海電鉄は「鉄骨が入っている」とした従来の主張をくつがえし、一部の橋脚には鉄骨は入っていないこと、しかし「(せんだん破壊先行型ではなく)曲げ破壊先行型である」と主張を変えてきた。

南海電鉄高架下の西成労働福祉センター仮庁舎北側入口の橋脚2本に鉄骨が入ってないことが明らかになった

◆税金を使って無駄な引き延ばしを行った南海電鉄と大阪府

この結論を引き出すまでに、何回裁判を開廷してきたことか? どれだけのお金(税金)を費やしてきたことか?これまで南海電鉄は、コロコロ主張を変え、裁判を長引かせ、大阪府もきちんと調査、指導できないままできた。裁判で、原告弁護団の武村二三夫弁護士は、被告弁護団に「南海の主張がころころかわっているが、きちんと確認していないではないか」と厳しく非難した。森鍵裁判長も「曲げ破壊先行型だから、大丈夫というわけではなく、その根拠を示しなさい」と要求した。

実は、この裁判の数日前、仮庁舎の問題の橋脚の「破壊検査」(橋脚に穴を開けて中を確認する)が行われていた。大阪府が行ったか、南海電鉄が行ったかはわからない。中に鉄骨が入っていたかどうか、南海電鉄が裁判で提出した証拠のように、鉄筋の中心部に鉄骨が入っていたかどうかも含めて調査結果を明らかにすべきである。

破壊検査で穴を開け中を検査した跡が残る、南海電鉄高架下の橋脚

「大阪府敗訴」のビラ

◆地元のひとたちを大切にするまちづくりを!

11月4日、中日本高速道路は耐震補強工事で、鉄筋が8本不足するなどの施工不良が判明したとして、工事のやり直しとともに、工事を発注した大島産業に賠償請求している。本来大阪府も、南海電鉄に賠償請求を求める立場なのに、これまでまともに調査を要求してなかったどころか、センターを解体したいがために、なんとかごまかし仮移転を強行してきた。センターを早急に解体したい大阪府と、大阪府の税金で賄われる仮庁舎建設費用でガッポリ儲けたい南海電鉄の利害が相互に合致したためたろう。それもこれも大阪維新の会が進める「まちづくり」で、新今宮駅前の一等地をきれいで広大な更地を確保するためだ。

識者、専門家、地元のNPO団体、労働組合、市民団体、町内会らが集まる同会議で、この土地をどう使うか検討されている。しかし、もともとこの町に住む日雇い労働者、生活保護、年金などで生活する人たち、野宿者らの生活を最優先に考えられているのだろうか? インバウンド頼みで一時的に賑わい儲けても、新型コロナの感染拡大などの非常事態に一気に衰退してしまうようなまちづくりでは、もともといた労働者らの暮らしは守れない。釜ケ崎の持つ魅力を最大限に引き出すまちづくりこそが、今、問われているのだ。

◆「一等地」の確保を最優先する開発主義

先日、大阪市立の高校21校を大阪府に移管する条例案が府議会で可決した。移管時期は2022年4月で、これにより1500億円の資産価値をもつ大阪市の学校や土地などが大阪府に無償譲渡されることになる。大阪都構想の住民投票に負けた大阪維新は、その後もこうしてあの手この手で大阪市から金をむしりとろうとしている。JR新今宮駅前の広大な「一等地」を奪おうとする大阪維新の「西成特区構想」もその1つだ。下のチラシにあるイラストを見てほしい。凸凹のセンターを「耐震性に問題がある」として解体・建て替えようとしているが、更に使い勝手を良くするため、L字内に建つ第二住宅まで解体してどかそうとしている。そこは耐震性に問題はないのに、しかも税金を使って。
 
◆釜ケ崎を破壊していく大阪維新の「成長を止めるな」

南海電鉄を挟んでセンターの反対側に出来たインバウンド向けのおしゃれなホテルは早々と閉鎖された

先日、神戸大学准教授の原口剛さんを講師に学習会を行った。テーマは「開発主義の暴力を解体するために~反五輪、反万博、反ジェントリフィケーション」。2002年小泉内閣によって制定された「都市再生特別措置法」により全国で都市再生特区がつくられ、開発されていく。

重要なのは五輪、万博などメガイベントのために土地の開発があるのではなく、まずは土地の確保が先行的に行われていることだ。2020東京五輪や2025大阪万博ほか様々なメガイベントは、そうした開発を正当化・加速させるために強行されていく。

大阪維新の会は、新今宮駅前のきれいな台形の「一等地」を何が何でも手にいれたいがために、センター周辺の野宿者を立ち退かせようとした。しかし大阪府が提訴した土地明渡断交仮処分は、12月1日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)によって却下され、その後大阪府・吉村知事は期限までに異議申し立て出来ず、決定は確定した(本訴は係争中、次回裁判は、来年2月9日午後14時30分より、大阪地裁202号法廷)。住民訴訟でも、大阪府と南海電鉄は嘘をつきとおすことができない事態に追い込まれている。決して気を抜かず、今後も闘っていこう!大阪維新のなりふり構わぬ、「成長を止めるな」という開発主義を解体するために!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

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2012年6月、福島の原発事故後、初めて再稼働の是非を審議していた福井県おおい町議会で、議長(当時)が取材陣にコメントを求められた際、ふざけて「一言だけ……『あ』。」と答えたことがあった。議長はその後不謹慎だったと辞任したが、全国から注目される原発再稼働が、こんな人たちに決められているのかと驚いたことを覚えている。


◎[参考動画]一言だけ「あ」とコメントのおおい町議長辞任へ(ANN 2012年6月13日)

再稼働を決める原発立地の町議会、しかしそこには必死で止めようと闘う議員もいる。そのお一人、美浜町の松下照幸議員に、議会について、原発の立地する美浜町の今、そしてこれからについてお話を伺った。(聞き手・構成=尾崎美代子)

◆もんじゅの下請企業の元職員が議長を務める美浜町議会

美浜町議員の松下照幸さん

── 老朽原発の美浜3号機の再稼働にむけて美浜町議会はどう動いたのでしょうか?

松下 美浜町議会は議員が14名います。議長は元もんじゅの下請企業の職員、あと関電OBが一人、土木関係の仕事をしていた議員などがいます。みな行政とつながっています。2年前、僕が3期目の1年頃などは、僕が発言するとすごいヤジが飛びました。その後私の存在が認められたのか、ヤジは飛んでいません。

12月4日に大阪地裁判決がでましたが、12月3日に僕は一般質問で老朽原発である美浜3号機の再稼働には反対と訴えました。地域の人から「松下さん、よかったね。判決が出てからだと後追いと思われるが、出る前にやったので値打があるね」といわれました。各家庭にケーブルテレビが入っていて、議会の様子が放映されます。これが大きい。僕らも一般質問に力をいれて、何日もかけて原稿をつくります。

一般質問への返答は、敦賀に常駐する規制委員会の人と相談して書いているのではないかと推測していますよ。あとややこしい質問の返答は、関電と相談していると思いますね。12月議会は6人やって、僕と河本(猛)議員は1時間びっしり、時間オーバーするくらいやりました。議長もいつもは止めるんですが、今回は少しだけやらせてくれましたね。

雪降る中、再稼働反対を訴えて、美浜町役場前に集まった人びと(写真提供=橋田秀美さん)

◆行政とつながる業者・関係者たちが「再稼働推進」を請願する

── 再稼働推進の請願を出したのはどういう人たちですかね?

松下 原発利権や行政発注工事とつながる業者、観光協会や商工会、区長関係からの請願書を推進側は2本にまとめて出しました。反対側は10本ほどだしました。僕は中嶌哲演さん(小浜市の明通寺住職)、木原壯林さん(若狭の原発を考える会)、全国の議員連盟234人の方の請願、そして美浜3号機の件で規制委を訴えた名古屋地裁での裁判のものが1本。それらを紹介議員として請願ごとに説明しました。

共通点として老朽原発を動かすなということ、あとは関電のコンプライアンス、ガバナンス問題などです。規制委は原発を安全に動かす仕組みをつくるといいますが、名古屋地裁の裁判の内容をみると、かなり手抜きをしていることがわかります。基準地震動も過小評価しているし、圧力容器のデータの問題でも関電のいいなりで、基本となる原データの公開を頑なに拒んでいる。それを認めたうえで再稼働を容認しているわけで、今後大阪地裁の判決が名古屋の裁判にも影響していくと思います。規制委は安全を保証する組織ではなく、福島の事故前の原子力安全保安院とよく似た事態に陥っていると思います。

同上(写真提供=橋田秀美さん)

◆原発があることの不安と、なくなることへの不安

── 町全体は、不安だが再稼働するしかないという感じですか?

松下 いや、ぼくが町を回っている感じでは、原発があることの不安と、なくなることへの不安とが半々だと思うね。ただ、町民の皆さんも大阪地裁の判決には驚いたようですね。判決後、全員協議会で関電と規制委の説明会がありました。本当はそれ抜きに、9日の原子力発電特別委員会で採決の予定でしたが、前日に説明会があり、大阪地裁の被告・規制庁が、議員全員に判決の不当性を訴えていました。判決は本意ではないと。

僕らは、規制委が判断した内容には問題があるし、自分たちが決めたガイドを守らなかったから問題だと判決はいっているので、なぜそれをやらなかったのか?と質問しました。規制委員会は、平均値やバラつきについては検討しなかったが、その他の要因の部分はきちんと検討している。地裁判決はそれをみていないという答弁でした。

── しかし判決の効力は最終的な結論が出るまで発揮されませんね。

松下 彼らは裁判の正当性や是非が問題ではなく、再稼働を続けることが最大の関心ごとだと思う。そのために控訴する。だけど上訴しても、動かすことに関して一定の理由があれば差し止めも可能という判決が、伊方原発の最高裁判決で示されている。彼らは、上訴すれば何年かけても再稼働できるというのを狙っているが、こちら側にも別の方策があるということです。最高裁判決は覆すことができないから。こういう問題があるから、基準地震動の見直しやデータのばらつきの問題を見直さないと、大きな地震がきたときに破壊されてしまうと理論的にやっていく裁判になるといいですね。

12月9日美浜町議会原発特別委員会で、再稼働を求める請願2件が採択され、反対を求める請願10件が否決された。関電原子力事業本部へ向かうため、美浜駅に集まった人たち(写真提供=河本猛美浜町議)

◆「原発には先がない」と知っている地元企業関係者

── あと、使用済み燃料の置き場を県外へ作る問題も決まっておらず、そう簡単には再稼働はできないでしょうね。関電の原発マネー不正還流事件については町の人の反応は?

松下 美浜町は、「あれは高浜の問題で美浜は関係ない」と宣伝しています。美浜原発とつながる地域の大手土木会社が、森山元助役に月50万か払っていたそうです。町は「美浜は関係ないから調査もしない」と言うが、問題ないなら、調べて問題ないというのが筋だが、最初からやらないということは、やっぱり臭いものに蓋をしたいということの状況証拠になりますね。あと美浜には、森山さんのような、関電と直接交渉するようなボスはいなかった。

── 再稼働しないとなると、困る人は多いでしょうか?

松下 困る会社もあるが、ただ田舎は仕事がなくなってもクッションがあってね。僕ら団塊の世代も原発で働いていたが、仕事がなくなって会社が倒産しても、大きな問題にはならなかった。定検短縮などで単価がどんどん切り下げられてきた。ある末端の経営者が僕を探し出し「非常に厳しい」という内部告発をしてくれました。関電の秋山会長の頃ですが、そのあたりから単価が切り下げられ、地元企業もなかなか利益をだせない、そういう状況なのでみんな「原発は先がない」と知っていた。再稼働できなくて、相当ひどい反発があるかといえば、それはない。銀行も調査していますが、そんなに影響はないというようだったようです。マスコミは一部の「困った。困った」という業者は取り上げるが、それ以外は取り上げない。原発に入る業者は設備関係ですが、違う仕事を取りにいくなどしているようですね。

── 私は原発の再稼働には反対ですが、地元の人は困るだろうなと思っていましたが?

松下 もうみんな原発に先はないなと思っていますよ。昔と金のまわり方が違う、どんどん単価を下げている。定検短縮で入れる業者も絞られていく。昔はいい加減な会社も入れたが、被ばくしてなんぼの仕事なので、単純作業が多いからね。

── 私の住む釜ヶ崎から原発の仕事に行った人がいるはずですが、ほとんど聞かない。厳しい緘口令が敷かれているからですかね?

松下 僕らが町で原発の学習会をやったとき、原発の仕事をする知り合いが来てくれた。話のあと、彼が前に出て「自分たちはこういう風にして問題を隠した」と具体的な話をしてくれた。その後、彼は仕事を貰えなくなったからでしょうか、町から出ていきました。これは都会の人が考えているより、相当厳しいですよ。

── 今日はどうもありがとうございました。

美浜町議会は、12月9日、原子力発電所特別委員会で再稼働を求める区長会や推進団体らの請願2件を賛成6、反対1で採決、15日の本会議でも採決された。しかし町には「原発に先はない」と思う人たちが増えていることも事実。一部の人たちの利権のためだけに、末端の被ばく労働者に犠牲を強いて、危険な老朽原発を動かすことは許されない!!


◎[参考動画] 原発廃炉後の美浜町の未来を見つめて 松下照幸さんのお話を聞く会(CNIC 2013年12月13日)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『NO NUKES voice』Vol.26《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

『NO NUKES voice』Vol.26
紙の爆弾2021年1月号増刊
2020年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

————————————————————————————————–
総力特集 2021年・大震災から10年
今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

————————————————————————————————–
《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
樋口英明さん(元裁判官)
水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
[司会]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)

[インタビュー]なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
被ばく労働の実態を掘り起こす

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
どの言葉を使うかから洗脳が始まってる件。「ALPS処理水」編

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発災害の実相を何も語り継がない  「伝承館」という空疎な空間

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈10〉 避難者の多様性を確認する(前編)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈20〉五輪翼賛プロパガンダの正体と終焉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
東電福島第一原発の汚染水「海洋放出」に反対する

[報告]松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志
ふたたび、さらば反原連! 反原連の「活動休止」について

[対談]富岡幸一郎さん(鎌倉文学館館長)×板坂剛さん(作家・舞踊家)
《対談》三島死後五〇年、核と大衆の今

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が放射能汚染水の海洋投棄と原発の解体、
再処理工場の稼働と放射性廃棄物の地層処分に反対する理由

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述家)
中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
やがてかなしき政権交代

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
誑かされる大地・北海道
人類の大地を「糞垂れ島」畜生道に変えてしまった“穢れ倭人”は地獄に堕ちろ!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈10〉人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
原発反対行動が復活! コロナ下でも全国で努力!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
《伊方原発》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《高浜・美浜》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《規制委・環境省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京電力》佐々木敏彦さん(環境ネット福寿草)
《東海第二》小張佐恵子さん(彫刻家、いばらき未来会議、福島応援プロジェクト茨城事務局長)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表)
《福島第一》片岡輝美さん(これ以上海を汚すな!市民会議)
《地層処分》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関西電力》老朽原発うごかすな!実行委員会

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

12月4日、大阪地裁の森鍵一裁判長は、関西電力の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について「規制委の判断には不合理な点がある。審査すべき点をしておらず違法だ」として、国に設置許可の取り消しを命じる判決をくだした。

大阪地裁前の様子(写真提供/松尾和子さん)

この裁判は、2012年福井県など11府県の住民127人が、規制委が大飯原発3、4号機について、新規性基準に適合するとした判断に誤りがあるとして、設置許可の取り消すよう求めた行政訴訟である。

2011年東日本大震災にともなう福島第一原発事故の教訓から、原子力規制委員会は2013年、原発の過酷事故、地震、津波、テロなどへの対策により強い新規性基準をつくったが、これにもとづく設置変更許可を取り消す司法判断は初めてのことである。ただし、原発が即座に停止する仮処分の決定と違い、取り消しの効力は判決確定まで生じない。

◆争点化された原発の耐震性判断基準

裁判の主な争点は、関電が算定した原発の耐震性を判断する目安となる「基準地震動」(想定される地震の最大規模の揺れを数値化したもの)が妥当かどうか、これをもとに原発の設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかであった。

英語のバナーを持つアイリーンさんと右端の背の高い弁護士が、私らの住民訴訟の武村二三夫弁護士。しかもこの画期的判決を下した森鍵裁判長は、住民訴訟の裁判長(写真提供/松尾和子さん)

関電は、規制委の審査ガイドによって明示された算定方法にそって、審査前700ガルとしていた基準地震動を856ガルに引き上げ、安全対策工事を行ってきた。その後の2017年5月、規制委は大飯原発3、4号機が新規制基準を満たすとして設置許可を出していた。

これに対して原告側は、関電や国が想定した揺れは、過去に国内外で発生した地震規模の平均値で決めていたものであり、平均値を上回る揺れが考慮されていないと主張。審査ガイドには、基準地震動を定めるにあたって、(過去の地震を参考にした)経験式から導かれる数値は「平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するぱらつき(不確かさ)も考慮されている必要がある」と規定しているが、実際の審査ではこの「ぱらつき」は考慮されておらず、基準地震動は過小評価されて設定されていたとの主張である。

さらに大飯原発の敷地内の断層の長さなどを踏まえると、基準地震動は少なくとも1150ガルであるため、「合理性を欠く規制委の設置許可は取り消すべきだ」と主張していた。

大阪地裁前の様子(写真提供/松尾和子さん)

対して国側は「基準地震動は科学的な知見をふまえ、余裕をもって策定されている。数値は妥当で原発の安全性は担保されている」などと反論していた。

判決で森鍵裁判長は、関西電力は過去に起きた地震の平均値を用いて将来、起こりうる地震の規模を想定したが新しい規制基準は平均値を超える規模の地震が発生しうることを想定しなければならないとしており、「最大規模の地震の揺れである基準地震動を設定する際には数値を上乗せすべきかどうかを検討する必要があった」と指摘、規制委に対して「地震規模の数値を上乗せするは必要があるかどうか検討していない。看破しがたい過誤、欠落がある」と述べ、原発の設置許可を取り消した。

◆「国は自らつくったルールを無視したと、裁判所が指摘した意義は極めて大きい」(武村弁護士)

裁判後の記者会見で原告弁護団の武村二三夫弁護士は「国は自らつくったルールを無視したと、裁判所が指摘した意義は極めて大きい」と語った。画期的なこの判決は、今後全国の原発に適用されなければならないだろう。

判決後、原告団は声明で「原子力規制委員会はこの判決を踏まえて、すべての原発および原子力施設等について、地震規模(地震モーメント及びマグニチュード)の見直しを行うべきである」とし、とりわけ来年1月に再稼働が目論まれている老朽原発・美浜3号炉の耐震性について、「敷地のほぼ直下にあるC断層が現行でも993ガルをもたらすが、『ばらつき』の標準偏差を考慮しただけで1330ガルに跳ね上がる。老朽化に伴う諸問題を抱えながら、このような危険性が放置されてよいはずはない」と、再稼働を中止し、耐震性の見直しを行うべきであると訴えている。

地裁判決後の報告集会(写真提供/Takamichi Negishiさん)

◆明日12月9日福井県美浜町に到着するリレーデモ最終日行動にご参加を!

福井県に入り、のどかな若狭町を歩くリレーデモ隊(写真提供/橋田秀美さん)

11月23日、大阪市内を出発したリレーデモは、沿道で「老朽原発を動かすな」と訴え続けながら進み、明日9日福井県美浜町に到着する。午後13時美浜駅に集合し、市内をデモ行進したあと、美浜町役場前でアピール行動と町議会へ「老朽原発再稼働を認めるな」と申し入れを行う予定だ。老朽原発の再稼働を許さない闘いに注目していこう!

★リレーデモ最終日 12/9(水)の行動予定
13:00 美浜駅前集合 → 美浜町内デモ行進
→ 美浜町役場まえでアピール行動および美浜町長議会へ申入れ → 美浜町内デモ行進
→ 関西電力 原子力事業本部 包囲 抗議行動 16:00 現地解散 
のぼり、旗、パネル、鳴り物など持ってご参加ください

★リレーデモへご支援のお願い
郵便振替からのご入金
加入者名 : 老朽原発うごかすな!実行委員会
口座記号・番号:00990-4-334563
通信欄に「老朽原発うごかすな!行動へのカンパ」とお書きください

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.26 《総力特集》2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を

『NO NUKES voice』Vol.26
紙の爆弾2021年1月号増刊
2020年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 2021年・大震災から10年
今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

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《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
樋口英明さん(元裁判官)
水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
[司会]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)

[インタビュー]なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
被ばく労働の実態を掘り起こす

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
どの言葉を使うかから洗脳が始まってる件。「ALPS処理水」編

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発災害の実相を何も語り継がない  「伝承館」という空疎な空間

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
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[報告]松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志
ふたたび、さらば反原連! 反原連の「活動休止」について

[対談]富岡幸一郎さん(鎌倉文学館館長)×板坂剛さん(作家・舞踊家)
《対談》三島死後五〇年、核と大衆の今

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が放射能汚染水の海洋投棄と原発の解体、
再処理工場の稼働と放射性廃棄物の地層処分に反対する理由

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述家)
中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
やがてかなしき政権交代

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
誑かされる大地・北海道
人類の大地を「糞垂れ島」畜生道に変えてしまった“穢れ倭人”は地獄に堕ちろ!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
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[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
原発反対行動が復活! コロナ下でも全国で努力!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
《伊方原発》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《高浜・美浜》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《規制委・環境省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京電力》佐々木敏彦さん(環境ネット福寿草)
《東海第二》小張佐恵子さん(彫刻家、いばらき未来会議、福島応援プロジェクト茨城事務局長)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表)
《福島第一》片岡輝美さん(これ以上海を汚すな!市民会議)
《地層処分》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
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《関西電力》老朽原発うごかすな!実行委員会

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関西電力は、運転開始から40年足った老朽原発3基について、来年1月美浜3号機、3月には高浜1号機の再稼働を目論み、準備を進めている。

福島県浪江町から兵庫に移住した菅野みずえさん(写真提供=EijiEtohさん)

3基については、すでに原子力規制委委員会の安全審査で最長で20年の延長運転が認められており、焦点は地元同意に移っている。

高浜町では、11月12日町議会の臨時本会議で、高浜原発1、2号機の再稼働を求める請願を賛成多数で採択したが、「立地地域の振興や原発の安全管理の徹底を求める」意見書を議決し、経産省などに提出、25日議会全員協議会で高浜原発1、2号機の再稼働について同意すると表明、野瀬豊町長に伝えられた。

一方、美浜町は、12月9日に原子力安全特別委員会を開き、11月30日開会の議会本会議の最終日(12月15日)に、美浜3号機の再稼動への同意を強行しようとしている。

この12月9日に向け、大阪市内から美浜町まで200キロのリレーデモを行い、沿道の住民たちに「危険な老朽原発動かすな」と訴えるとともに、ルート途中の自治体に申し入れを行っていく予定である。

11月23日、大阪市内の関西電力本社ビル前でリレーデモの出発式を兼ねた集会が開催され、約550人が参集、市民団体、労働組合、全国各地で闘う仲間、そして福島県浪江町から兵庫県に避難する菅野みずえさんからアピールがなされた。

その中から今回は、福井県地元からかけつけたお二人の発言をご紹介したい。

◆中嶌哲演さん(「原発に反対する福井県民会議」)

中嶌哲演さん(筆者撮影)

私は若狭と関西周辺の肩を結ぶ立場から、あまり皆さんが触れられていない2つの問題点に絞ってお話します。

1つは実質的に3基の老朽炉を止めていく上での問題です。昨年私は9月末から12日間断食抗議をしましたが、2つの目的をもっていました。1つは高浜1、2号機に2160億円、美浜3号機に1650円の巨費を投じて安全対策工事を強行していました。私はその工事の中止を求めました。当時工事の進捗率19%ないし20%に過ぎませんでした。一方、廃炉費用は高浜で450億円、美浜で490億円見込んでいますから、工事を中止して残った予算を廃炉の準備費用にまわすべきと訴えました。残念ながら工事は、コロナの影響のある今年のような様子を見せていませんでした。

コロナを通じて皆さんどうでしたか? 国民の命を守ること、そのために経済活動を控えなくてはいけなくなった、しかしそれによって生じる損失は、国の責任で補填するとなった。あれやこれやではなく、両方をむすびつけてやっていく、そういうことが国民の意識に浸透してきた。原発政策も同じではないですか? 原発を止めることによって、まず国民の命と安全を守る。しかしそれによって原子力ムラや地元の経済界が「経済が止めるのでは」と不安を抱える。しかしそうではないということを、昨年の断食の2つめの目的に掲げました。それは国会に上程されている「原発セロ法案」です。それを実質的に審議していけば、老朽炉を廃炉にすることなど実質的に審議していくなかで、様々な問題も十分解決できるという確信があったので、私は断食をやりました。当時すでに2000~3000人の人が高浜、美浜で働いていました。私が抗議の断食をやることが、彼らの生活の糧を奪うのではないかというジレンマを持ったわけですが、「ゼロ法案」の問題があるから私は確信をもって断食をしました。

2つめは、どんなに無茶なことでも横車を押して原子力ムラと行政はゴリ押しをしていました。地元高浜、美浜など立地自治体の議会の承認を得れば大丈夫ということでしゃにむになってやってきた。しかしその土俵の外におかれてきたのが私たち小浜市民や若狭町の自治体、嶺北の自治体です。知事には発言権はありますが。よもや関西の皆さんは全く土俵の外、単なる観客にすぎない。そういう土俵の外に除外された私たちが団結して迫っていく必要があると考えています。最後に私がずっと詠み続けてきた坂村真民の「あとから来る者のために」という詩を読み上げます。

あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ

あとからくる者のために
しんみんよ お前は詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海を きれいにしておくのだ

ああ あとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ

山本雅彦さん(筆者撮影)

◆山本雅彦さん(「原発住民運動福井・嶺南センター/事務局長」)

報道されているように、美浜原発で関電の社員らがコロナに感染するという事態になっています。もし稼働している最中に運転員や機械などの保守にあたっている労働者の方がかかったら、原発は本当に安全に運転できるのか?もうこんな危険な綱渡りの運転はやめるべきではないか、そのことをまずお伝えしたいと思います

40年超えの老朽原発の危険性は皆さんが指摘するとおりです。しかし地元美浜・高浜町議会では、請願を採択するという形で同意しようとしています。まだ同意はしていません。これからもまだ止めることができます。

これまでの経過では、高浜町の商工会議所、自民党高浜支部が推進の請願をだし、これを採択するという形で再稼働を進めようとしています。高浜町議会に原子力政策委員会があり、ここで委員長を務めている元高浜町職員の松岡さんという方がいます。

山崎さんの話の途中「この関電です」のあとに。関電本社ビルに向かって「老朽原発うごかすな!」と訴える参加者(写真提供=EijiEtohさん)

彼は「私は再稼働の是非の議論はしたくない。高浜町に住む多くの人たちがどう思っているか、大方の人は賛成はしていない。また、私は継続審議をしたいといったが、関電の元社員である井上(井上順也)や小幡(小幡憲仁)議員らが『どうしても再稼働する。そしてその意見書をもって国にいき、経済的支援をしてもらうということで進められているのだから、絶対再稼働しないと困る』という圧力をかけてきたそうです。

松岡委員長は『それだったらあなたたちが意見書をつくればいい。私はやらない』と返事をしたそうです。その結果、高浜町の職員や関電の元社員の議員など少数の人たちによって意見書がまとめられ、再稼働の採択がなされたのです。こうしたことが、この間皆さんが抗議や要請行動をしてくださるなかでわかったことです。

皆さん、高浜町や美浜町の町民でさえ再稼働を認めていない、危険な原発は運転しないでと願っている。これに対して再稼働をしゃにむに進めようとしているのが、目の前の関西電力です!!

意見書を見ますと、高浜町の皆さんも本当に悩んでいるのがわかります。最後に再稼働をするにあたって、高浜町民が国民から非難されることがないようにということが書いてある。

再稼働に多くの国民が反対している。高浜町民の多くも止めて欲しいと願っている。賛成すれば国民に批判されるとわかっている。そういう再稼働は本当に止めにしなければいけません!皆さん、ともに頑張りましょう!

★リレーデモ最終日 12/9(水)の行動予定★
13:00 美浜駅前集合 → 美浜町内デモ行進
→ 美浜町役場まえでアピール行動および美浜町長議会へ申入れ → 美浜町内デモ行進
→ 関西電力 原子力事業本部 包囲 抗議行動 16:00 現地解散 
のぼり、旗、パネル、鳴り物など持ってご参加ください

★リレーデモへご支援のお願い★
郵便振替からのご入金
加入者名 : 老朽原発うごかすな!実行委員会
口座記号・番号:00990-4-334563
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新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

NO NUKES voice Vol.25

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◆大阪府敗訴!! ──ホームレスの占有を認めて勝たせた初の事例!!

日雇い労働者の町・釜ヶ崎(大阪市西成区)の「あいりん総合センター」(以下、センター)の建て替え問題を巡って大きな動きがあった。建て替え工事を進めるため、周辺の野宿者を強制立ち退きさせようとした大阪府の仮処分の訴え(土地明渡断交仮処分命令申立事件)が、12月1日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)で却下されたのだ。弁護団(武村二三夫、遠藤比呂通、牧野幸子)の遠藤弁護士によれば「ホームレスの占有を認めて勝たせた事例は初めてのこと」だそうだ。

◆「耐震性に問題がある」と始まった建て替えだが……

昨年センター閉鎖後も、上で営業を続けていた「医療センター」は、11月末閉鎖され、昨日フェンスで囲われた

2019年4月24日、強制的に閉鎖されたセンターの周辺には、それ以降も多くの野宿者が生活していた。閉鎖されたセンターは、閉鎖後も上で営業を続けていた「医療センター」が移転したのち解体をはじめ、2025年新センターを完成する予定だという。

大阪府は4月22日野宿者らに対して「立ち退き訴訟」の本裁判を提訴したが、これが長引いた場合、解体や業者の入札などに遅れが生じるためと、一気に仮処分を断行し、強制立ち退きしようと目論んできた。仮処分裁判は10月末までに2度の審尋(非公開)を終え、裁判所は11月以降決定を下すとしていた。そこで出された決定が「債権者(大阪府)の申し立てを却下する」であった。敗訴した大阪府(債権者)の主張について、大阪地裁がどう判断したか見てみよう。

大阪府はセンター建て替えの最大の理由を「耐震性に問題がある」としてきた。これに対して決定文は「本件建物の耐震性に問題があるとの指摘は平成20年(2008年)になされたところ、それにもかかわらず債権者(大阪府)及び大阪市は本件建物について、その後10年以上も補修を重ねながら利用を維持してきたこと、令和2年12月に終了予定であるとはいえ、同建物内において本件医療施設が稼働している状態にあること、本件建物の建て替えなどにあたって、本件建物の耐震性を喫緊の課題であると認識していたとはうかがわれない」と大阪府の主張を否定した。

◆「西成特区構想」を進めるまちづくり会議

確かに、耐震診断を行った2008年から13年も経過しているが、大阪府が「一刻も早く建て替えを」などと動いた形跡はない。じつは耐震診断後、建て替えだけでなく、耐震補強工事案も出ていたが、「建て替えを」に一挙に変わったのは、2012年、当時大阪市長だった大阪維新の橋下徹氏が「西成特区構想」を打ち出してからだ。大阪維新の西成特区構想を進める形でセンターをどうするかが話し合われてきたことは、解体後の跡地をなるべく広い、使い勝手の良い跡地にするため、耐震性に問題のない第二市営住宅まで解体・建替えすることからも明らかだ。

しかしまちづくり会議において、センター解体後の広大な空き地の南側に「新労働施設」(西成労働福祉センターとあいりん職安)を新設することは決まったものの、跡地全体をどうするかの具体例は示されていない。それについて決定文は「おおまかな方針(利用イメージ案)は示されたものの、その内容は、概略的なものにとどまっており、同施設自体の規模や機能といった基本的な計画さえもいまだ定まっていないこと、本件敷地全体については、利用イメージ案が示されているにすぎず、個々具体的な利用計画に関しては,未だまちづくり会議において検討の基礎とされる案が行政機関からも示されていない段階にある」として、「債権者がその遅れを懸念する本件建物の建て替え計画について、それ自体が将来にわたる不確定要素を多く含むものといわざるをえない」と批判的に捉えている。

さらに大阪府は、建て替え計画が遅れることで、大阪府とまちづくり会議に参加する委員との信頼関係が損なわれると主張していたが、決定文は「会議の経過やその内容等によると、そもそも、まちづくり会議の参加団体などと債権者の間の信頼関係なるものは、きわめて抽象的かつ主観的なものにすぎないといわざるをえない」「これまでも会議を開催するたびに、スケジュールが度々変更されていること、まちづくり会議の委員の中には、本件建物の解体工事に伴う野宿生活者の排除について懸念を示す者もいたこと」などから「本訴訟の帰趨によって再びスケジュールが変更されても、大阪府とまちづくり会議の委員らとの信頼関係に悪影響がおよぶとは考え難い」として、大阪府の主張を退けている。

広大な跡地を確保するため、耐震性に問題ない第二市営住宅(右)まで解体され、隣(左)に新設中だ

◆センターより耐震性に問題がある南海電鉄高架下の仮庁舎

非破壊検査で鉄骨が入っていないことがわかった南海電鉄高架下の仮庁舎の橋脚。大勢の労働者が出入りする

「耐震性に問題がある」として、センターの建て替えと仮移転先を南海電鉄高架下に決めたのはまちづくり会議の場であり、反対したのは稲垣浩(釜ケ崎地域合同労組委員長)委員たった一人だった。

7億5千万円の血税をつぎこんで造った仮庁舎の建設費用を巡っては、住民訴訟が提訴され、なぜ入札ではなく、南海電鉄傘下の南海辰村組に随意契約したか、操業から80年以上経つ南海電鉄高架下が安全であるかなどを争っている。後者の南海電鉄高架下の安全性について、先日大事件が発覚した。原告の一人が、専門業者に依頼し、高架下に入る西成労働福祉センター仮庁舎の橋脚6本の非破壊検査を行ってもらったところ、南海辰村組と大阪府が「入っている」と何度も主張した鉄骨が入っていないことが判明した。住民訴訟の弁護団(武村二三夫、遠藤比呂通、牧野幸子)は、調査結果を大阪地裁に証拠提出し、裁判長は大阪府に事実を明らかにするよう求めている。

次回裁判は12月18日。南海電鉄はこれまで「仮庁舎の入る場所は耐震補強工事をしなくていい場所だ、何故ならRC柱(鉄筋コンクリート造り)ではなくSRC柱(鉄筋鉄骨コンクリート造り)だからだ」と主張し、裁判所にイラストまで証拠提出していたが、あれは嘘の証拠だったのか?仮庁舎を使用する労働者や職員の命だけではなく、上を走行する南海電車を利用する1日何十万人もの利用者の命がかかっているのだぞ!

◆「死ぬのは嫌だ」

先日、センター裏で野宿していた男性が亡くなった。時々弁当を届けていた男性だ。痩せてがりがり、最後は米粒どころか飲み物も受け付けなくなっていた。先週、救急隊員と役所の職員らに「救急車に乗って病院に行こう」と2時間近く説得されたが「病院にはいかない」と頑なに断っていた。

救急隊員が帰ったあと、職員に「どうしたらいいか?」と尋ねると「意識がなくなったら(交通事故のように)救急車を呼べる」と聞き、翌日朝と昼に声をかけた。しかし男性は、やせ細った身体を震わせ「嫌だ」と拒否した。施設や病院、あるいは行政の世話になることを拒否しているようだ。職員に「このままだと死ぬよ」と言われ「死ぬのは嫌だ」と答えていたという。死ぬのは嫌だが、それと同じくらい病院に行くのも嫌だと野宿を続けた男性。野宿がいいか悪いかの問題だけではない。冷たいコンクリに直接敷いた布団の上で、自分の吐しゃ物にまみれた頭を震わせ「嫌だ」と振り絞るように上げた男性の声が忘れられない。(※この詳細は尾崎美代子のFacebookを参照ください)

搬送された病院で死亡が確認された野宿の男性が住んでいた場所。コンクリートに布団を直に敷いた寝床でも、男性は「離れたくない」と訴えていた

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』12月号

NO NUKES voice Vol.25

1995年に起きた「東住吉事件」の冤罪被害者青木恵子さんは、2018年再審で無罪を勝ち取って以降、全国の刑務所で服役中の犠牲者に手紙をかいたり、面会に行ったりしている。そうした活動が認められ、今回多田謡子反権力人権賞を受賞した。一方、娘を焼死させた火災は、車のガソリン漏れが原因だとしてメーカーのホンダに約5200万円の損害賠償を求めていた裁判は、控訴が棄却された。(聞き手=尾崎美代子)

── 今回の多田謡子反人権大賞受賞は、青木さんの様々な冤罪被害者への支援活動が評価されたと聞きしましたが、そうした活動を行うきっかけは?

青木恵子さんの自宅マンションで

青木 私自身、大阪拘置所、和歌山刑務所に服役中、知らない人からも支援され、そのおかげもあって無罪になれたけど、その人たちに何かを返すことはできない。また私自身が中にいて一番嬉しかったことは手紙を貰えたことなので、特別何かできるわけではないが、それくらい出来るだろうと始めました。常にレターセット持って、時間があればどこでも立ったままでも書いています。書いたら、すぐポストにいれます。

── どのくらいの方に書いています。

青木 国民救援会が支援している人が中心ですね。全員には無理ですが。例えばその人が裁判で負けたときは、「外の集会でみんながマイクもってこう話した、私はこう話した」と報告します。本人は聞けないからね。そして「負けずに闘いましょう。真実は一つだから」と書きます。私もそうでしたが、負けたとき支援者が泣いたり、怒ったりしてくれることを知ると、自分の悲しみとか消えていく気がします。また面会に行くときは1ケ月前から、刑務所に「面会させろ」とアピールするためもあり、行く前日まで毎日出します。

── 毎日? 何を書くのです?

青木 皆さんに聞かれます、「なに書くの?」と。事件のこととか聞かない。私の行動を書くの。「おはよう」や「こんにちは」から始まり、「今日は〇へ行きます」「どこの集会で話します」「今日は家でゆっくりしています」とかね。あと「あと〇日であえますね」と必ず書きますね。

例えば「今、寒いでしょう」と書く時でも、(刑務所を知っている)わたしらはその寒さというのは、いろんな言葉を言わなくてもわかるの。支援者だったら「炬燵あるの?」「暖房は?」と考えるでしょうが、私たちは何もないのをしっているから、「今年は寒いね。辛いよね。風ひかないようにね」でわかるんです。あと絵葉書だと外の景色もわかるし、切手は絶対可愛いのを貼る。切手だけでも「うわ!今こんな切手なんだ」とわかるでしょう。私がその喜びを知っているからね。

── 以前、中でケーキのパンフレットを貰ってうれしかったと話していましたね。

再審無罪を勝ち取った湖東記念病院事件の西山美香さんから送られた時計と大好きなぬいぐるみ

青木 そう。支援の方に「ケーキ食べたいわ」と書いたら、クリスマス用のケーキの申込用紙のパンフレットを送って貰いました。「食べられないのに可哀そう」と皆さん、思うでしょう?そうではない。食べられなくても目で食べるの。「今年はこんなケーキなんだ。来年は絶対外で食べるぞ」という思いになる。来年こそ、来年こそとね。

そういう活動が、じつは私も楽しいんです。人に何かをやってあげているのではなくて、手紙を書くことで私も吐き出している。私は一人だから、下手したら1日誰とも話さないから、手紙書いていたら、しゃべっている感じになるからね。面会も、私が励ましに行くというより、こっちもすごく元気になっている感じです。平野さんの弁護士が決まったときは、私まで嬉しかった。

── 平野義幸さんは徳島刑務所に入っている方ですよね。桜井さんにお聞きしました。放火殺人で無期懲役、再審を闘いたいが、弁護士も支援者もいないと。(注*2003年1月16日京都市内で起きた火災で女性が焼死した件で、同年7月31日殺人・現住建造物等放火罪で逮捕、起訴され、無期懲役が確定、現在徳島刑務所に服役中)

青木 そう。それで今回桜井さんの協力もあり、桜井さんの知り合いの弁護士さんがやってくれることが決まりました。徳島までの送り迎えは私が車でするという条件です。あとは弁護士費用の問題。ならば私が立て替えますとなりました。皆さん「すごい」というけど、私がちょっとのお金をだすことで、やってくれる弁護士がいた。私がそのお金をだせない環境だったら、「出せなくてごめんね」で終わってしまうが、出せないお金ではなかった。ならば金をだすことで1人の人が救われるのだったらと思ったんです。私は生活困ったら働けばいいが、中に入っている人は働いて稼ぐことも出来ない。自分にそのお金あるのに「人のためには出せない」というのは、私にはできない。でもそれで彼の再審無罪がかちとれ、冤罪被害者を救えたとなったら、お金じゃないでしょう?それで私が立て替えました。本人は中から必死で弁護士探しの手紙を書いていたから、これからはそれをやらなくて済む。一歩前進ですよね。これから再審に向けて弁護士がいろいろやってくれる。待たなければならない期間はあるが、これまでと比べどれだけ気が楽か。桜井さんと話していますが、これで平野さんの再審がうまく進み無罪になったら、一人の冤罪被害者を助けられたことになる。自分たちでそんなことしたことないから、してもらってばかりだったから。すでに支援者や弁護士がついて闘っている人もしんどいが、支援も弁護士もいない冤罪被害者がいるということは分かっていたが、実際目の前にいて関わったのは、平野さんが初めてだから。平野さんに初めて面会した時、「大切な人を亡くした気持ちは、青木さんならわかるでしょう」と言われ、娘のことと重なって思わず涙がでました。誰も信じなくとも、私だけは平野さんのことを信じると決めました。

── 確かにそうですね。青木さんは、そういう活動費用をつくるためにチラシのポスティングと集金のバイトをしているんですね?

青木 そうです。先日集金のバイトのミーティングで、チラシ配り1枚3.5円という、これまでよりちょっと高い仕事があったので、「私やります」と言いました。5千枚くらいまき、集金の分を足すと5万円くらいになったので、それを徳島に行く高速費用にあてます。

── 再審が始まるとよいですね。一方で、ホンダ裁判の控訴審は棄却されてしまい残念な結果となりましたが。

恵さんの遺影の隣に、青木さんのお母様、お父様の遺影

青木 一審の時は判決がわかりにくかったが、今回は負けたとはっきり分かった。その瞬間「なんだコイツ」と裁判官を見ました。私の最終陳述のとき、その裁判官は身を乗り出して聞いていたのに。向こうは20年の間に提訴できたでしょうというわけです。でも有罪で入っているとき提訴しても、裁判所は「有罪だから権利はない」と棄却するでしょう。それは裁判所が私を有罪にし続けたから、裁判所の責任でしょうと、裁判官を睨んで言いました。ホンダにも睨んで「ホンダさんに尋ねたいです。ガソリンが漏れないといわれるなら、どうか教えてください。火災の原因はなんですか? 自宅のガレージに車を止めていただけです、車は動いてないのですよ。車に原因がないなら、どこからガソリンが漏れたのでしょうか? 車しかありえませんよね? 違いますか? 再審の裁判所の判断も間違っているということですか?私が犯人だといわれるのですか? 裁判所にもお聞きしたいです。娘の無念を晴らすことも諦めて、泣き寝入りしたらよいのですか? 裁判は真実を追及して明らかにする場ではなく、大手メーカーの言い分に従って、真実を歪めてまでも逃げる道を選ぶのでしょうか?このようなおかしな判決が通るなら、正義も真実もなく、この裁判自体にも意味がなく、憤りしか感じません」と言いました。判決が出たあとも裁判官に向かって「私の意見陳述いっこも(ひとつも)聞いてなかったんですね。裁判官やめてちょうだい」と法廷出ていくまで言い続けました。桜井さんも裁判中に傍聴席から「おかしいだろ? 20年入っていたのに。裁判官やめたほうがいいよ」と怒鳴ってくれました。

── ホンダ裁判は上告して闘うということですね。それにしても桜井さんと青木さんは最強のコンビ、これからも大勢の冤罪被害者を救う活動を続けてください。私も微力ながら手伝わせていただきます。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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原発なき社会を求めて NO NUKES voice Vol.25

「西成のいろいろ問題あるところに、僕と橋下さん二人揃って課題一つ一つを解決してきた。新今宮駅の周辺はガラッと景色は変わります。労働センターの建て替えも決まった。あれは難しかった。関係者がいっぱいいたから。でも僕と橋下が直接会議に出て意見をまとめ決まりました。(略)あのへんは無茶苦茶大阪の拠点に変わっていきます。問題あるところに真正面に向き合ってこなかったのが、10年前の府と市でした。(府市)ひとつにまとめて機能を強化して、ありとあらゆる問題に対峙すればよくなるという見本がこの西成なんです。」

2度目の住民投票で負けた大阪維新の松井一郎市長が、一年前の3月28日、西成区役所前で行った演説の一部だ。大阪維新の党是でありながら、2度も否決された「大阪都構想」だが、これと深くリンクする「西成特区構想」はいまだ進行中で、あいりん総合センター(以下センター)周辺の野宿者に対する強制立ち退きが一刻一刻と迫っている。

閉鎖された「あいりん総合センター」北側、野宿者の生活がある

同上

◆橋下の「西成をえこひいきする」から始まった西成特区構想

「西成特区構想」は、2012年橋下徹氏が市長就任直後、「西成をえこひいきする」「西成が変われば大阪が変わる」として始まった。学習院大学教授で経済学が専門の鈴木亘氏が、特別顧問となりプロジェクトチームを発足、2014年9月から始まった「まちづくり検討会議」では委員に選ばれた地元の労働組合、NPO団体、市民団体、町内会などを中心に討議が進められ、その後有識者や委員たちだけの非公開の「会議」で、センター建て替えが決められた。

問題は、建て替え後のセンターに、これまで労働者や野宿者が使えた様々な施設・設備などがない上に、野宿者が昼間ゆったり横になれるスペースがないことだ。解体後に残った広大な跡地には、屋台村や観光バス、タクシーの駐車場などを作るとの案も出たという。橋下氏が「(再開発のために、労働者には)がまんしてもらう」と公言した通りの西成特区構想、誰が「えこひいき」され、だれが排除されるのかは明らかだ。

◆「西成特区構想」で排除された労働者、野宿者

建て替えのためのセンター閉鎖が、冒頭の松井市長の演説の2日後に予定されていた。しかし3月31日、センター閉鎖は「センター閉めるな」と訴える大勢の労働者や支援者らの力でかなわず、強制排除される4月24日まで自主管理が続けられた。

2度も否決された「都構想」を、先行的に実施しようと企まれたのが西成徳構想であることは松井氏の演説からも明らかだ。

確かにそれまで釜ケ崎では、大阪市が民生・福祉、大阪府が労働と分けられ、不景気で野宿者が増えた際には「福祉(市)の問題だ」「いや、労働(府)の問題だ」とやりあう場面もあった。しかしこうした貧困問題や野宿問題は、府と市がともに国にかけあい解決すべき問題であり、労働者や野宿者を排除し、センターを解体し、残った土地で大儲けしようという「西成特区構想」で解決する話ではないはずだ。

◆南海電鉄の耐震偽装事件で明らかになった「西成特区構想」

センターの建て替えに反対する住民訴訟では、センターとあいりん職安の仮庁舎が、安全性が保証されない南海電鉄高架下に建設されたこと、合理的な理由がないにもかかわらず、南海辰村建設と随意契約したことの違法性などを争っている。

原告が、センター仮庁舎の北側の6本の柱を非破壊検査(電磁波レーダー法)で検査してもらった結果、南海が「入っている」と言っていた鉄骨が入っていないことが判明した。未曽有の被害を出した1995年阪神淡路大震災のあと、近畿運輸局はすべての鉄道会社に対して、既存のRC(鉄筋コンクリート)柱に緊急耐震補強措置を取るよう求めてきた。

南海電鉄もその対象だが、おおむね5年とされた実施期間を25年以上経過したここ数年、ようやく「鋼板巻き立て工法」による耐震補強工事を実施してきた。しかしほかで行われた耐震補強工事が、仮庁舎周辺では行われていない。これについて南海電鉄は裁判で「このエリアはRC柱ではなく、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)柱であるため、緊急耐震補強の対象外だ」と反論し、「鉄骨が入っている」と示すイラストを証拠提出していた。

しかし今回の調査で鉄骨が入っていないことが判明した。中央自動車道の耐震補強工事で鉄筋が8本不足する手抜き工事が発覚し、国会で森ゆうこ議員が「第二の耐震偽装事件」と告発した。南海の件も同様だ! センターの建て替えはそもそも「耐震性に問題がある」として始まったのに、毎日数十万人の利用者がおり、その高架下の仮庁舎には大勢の労働者が出入りし、職員が働く仮庁舎があるのだ。南海電鉄は次回裁判で「事実」を明らかにすべきだ。

南海電鉄高架下仮庁舎には毎日多くの労働者が集まる。上を走る電車は大丈夫なのか?

阪神高速道路神戸線(神戸市東灘区深江本町)(1995年3月3日発行「アサヒグラフ」)。このあと近畿運輸局よりRC構造柱への耐震補強工事が要請されていた

◆勝手に作った「悪者」バッシングに始まり、利権を奪おうとする「西成特区構想」

2度も否決された「都構想」では、「二重行政」「既得権益」などが「悪者」としてやりだまにあげられた。二重行政などはどこにでもある話で、きちんと討議して解消すれば済む話だ。

西成特区構想も同様に「ゴミの不法投棄」「生活保護者の増大」などがやりだまにあげられた。まちづくり会議の座長を務めた鈴木氏はインタビューで「改革が始める前は、猛烈に荒れており、そこらへんで堂々と覚せい剤を打っている売人がいたり、不法投棄ゴミが散乱していたりと、それは荒んだ町でした。ゴミと酒と立小便の異臭が立ち込めていたのです」とこの町と町の住民をこけ落とした。

しかし労働者がずぼらでゴミが散乱しているのではない。三角公園や阪堺電車沿いには、明らかに地域外から持ち込まれたゴミも多かったし、そもそもゴミ置き場を置いたら片付く話だ。生活保護者が増えることの何が悪いのだろうか。1970年日本万博の建設工事のために、「国策」で全国から集めた単身労働者が、高齢化し生活保護を受けるようになっただけで、悪いことでは決してない。「生活保護バッシング」が凄まじいほかの地域に比べ、この地域では皆が堂々と生活できる。障害がある人、罪を犯して服役してきた人も同様に、堂々と生活できる、こんな人情味のある町はほかにないだろう。それをわざわざ潰し、一部の人が儲けようというのが、大阪維新の「西成特区構想」だ。

7億5千万円もの血税をつぎ込んだ仮庁舎は、柱に鉄骨が入ってないだけではなく、開業2ケ月で天井から雨漏りする手抜き・欠陥工事も判明している。しかも同規模の仮庁舎建設費用と比較しても、べらぼうに高い。差額はどこへ流れたのだ。これが橋下氏のいう「大阪市の金と権限をむしりとる」都構想とリンクする西成徳構想の実態だ。

大阪市を解体し、大阪市の金と権限を奪おうとした「都構想」に反対した皆さん、どうかこの人情味あふれる釜ヶ崎を守る闘いにご注目ください。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

最新刊!『紙の爆弾』12月号!

原発なき社会を求めて NO NUKES voice Vol.25

◆南海電鉄の柱に「鉄骨は入ってない」?

昨年始まった「センターつぶすな」の住民訴訟(公金違法支出損害賠償等請求事件)は、南海電鉄高架下に建設されたあいりん職安と西成労働福祉センター仮庁舎の建設費用が、適正化どうかを争うものだ。

南海電鉄高架下の橋脚の非破壊検査を行う業者

原告はこれまで、
①操業から80年以上経つ南海電鉄高架下に建設された仮庁舎の安全性は保障されているか、
②工事が「入札」ではなく、合理的な理由がないまま、南海電鉄の子会社の辰村建設と「随意契約」したことに違法性はないかと主張し争ってきた。

そんな中10月9日(金)、住民訴訟を闘う仲間が業者に依頼し、南海電鉄高架下に造られた西成労働福祉センター仮庁舎北側入り口の柱(橋脚)6本の非破壊検査を行なってもらった。

センターとあいりん職安には毎日大勢の労働者が出入りしているし、上を走る南海電鉄も、新今宮駅の利用者が1日10万人近くいるなど、関西圏の重要な交通機関となっている。

仮庁舎建設工事中の南海電鉄高架下。反対側で毎日稲垣氏が監視行動を行っていた

それを支える橋脚だが、結果は1938年(昭和13年頃)建設の4本の柱と、1968年頃(昭和43年頃)建設の2本の柱の計6本について「鉄筋の反応はあるが、鉄骨の反応はない」と報告された。

2012年大阪維新の橋下徹氏が市長時代に打ち出した「西成特区構想」の目玉「西成あいりん総合センター」の解体・建て替え計画は、そもそも「耐震性に問題がある」から始まったはずだ。

住民訴訟で「操業80年を越える南海電鉄の耐震性は大丈夫か?」と訴えたところ、南海電鉄は「大丈夫だ」と繰り返し、南海電鉄本社を訪れ「安心・安全というならば、(図面など)証明できるものを見せろ」と迫った際には「見せない」と拒否されてきた。

更に西成特区構想を進める「まちづくり会議」で、「データを見せて」と要求した釜ケ崎地域合同労組委員長・稲垣氏に対して大阪府は「南海電鉄を信用できないのか」と、声を荒げて言ったのに……嘘だったのか?

◆「南海電鉄の」のずさんな安全管理
 
訴訟で原告は、25年前に起きた阪神淡路大震災のような大地震がおきた際の、南海電鉄の倒壊の危険性を主張し、当時、高速道路が倒壊するなどの甚大な被害が生じたこと、その後運輸省(当時)が提言した「緊急耐震補強計画」にもとづく耐震補強工事を、南海電鉄高架下の仮庁舎でも実施しなければならなかったと主張した。

橋脚に鋼板をまきつける耐震補強工事を行った南海電鉄新今宮駅と今宮戎駅の間

一方、南海電鉄は、通達後、おおむね5年とされた期間を20年近く過ぎたここ数年、ようやく「鋼板巻き立て工法」による耐震補強工事を実施した。

しかし工事が実施されたのは、難波駅と今宮駅の間や、萩之茶屋駅周辺で、西成労働福祉センターとあいりん職安の仮庁舎では実施されていない。大阪府は「その場所(仮庁舎付近)は耐震補強の対象外である」と反論していたが、本当だろうか?

25年前の通達では「間仕切り壁などが設置され、耐震効果がある場合は対象外」とある。しかし西成労働福祉センターの仮庁舎建設が始まった時点で、この間仕切り壁は撤去されている。センター建て替えに反対し、建設開始当初より、現場近くで連日監視行動を行っていた稲垣氏が、その目ではっきり確認している。

つまり、あいりん職安とセンター仮庁舎は、間仕切り壁が取り外されているにも関わらず、難波駅や萩之茶屋駅のように「鋼板巻き立て工法」での耐震補強工事を行なっていない。

そのため、再度原告が訴え、裁判所が請求した調査委託書の回答で、大阪府は、センターが補強の対象外である理由について「RC柱(鉄筋コンクリート柱)ではなく、SRC柱(鉄骨鉄筋コンクリート柱)であるため」と答え、それを説明する簡単なイラストを提示していた。あのイラストも嘘だったのか?

南海電鉄側から提出された調査委託書への回答書に添付された、非常に簡単なイラスト

◆大阪府がセンター解体を急ぐ理由は何か?

重要な耐震補強工事を実施する時間を省いてまで、工事を急いだのは何故だろうか?

昨年3月31日、閉鎖予定だったセンターは、「センター閉めるな」と訴える多くの労働者や支援者らの力で閉鎖が阻止され、強制的に閉鎖される4月24日まで「自主管理」が続けられた。

閉鎖予定の3月31日、大阪維新とともに西成特区構想を進めようという人たちなどが、センターの外側から、センター内で闘う人たちを見ていた。闘う人たちを指差し、笑っている人、「近所迷惑、煩い」と文句を言う人もいた。またある人は「あんな危険な場所に、釜のおじさんを閉じ込めていいの」と嘆いていた。

彼らは、今回、センターとあいりん職安が仮移転した先の南海電鉄に、耐震補強工事がなされていない可能性が出てきた件をどう考えるのか? 「そんな危険な場所におじさんを閉じ込めていいの?」と、今度も嘆いてくれるのか? 今回の調査結果は、あくまでも「鉄骨の反応はない」に留まるが、南海電鉄と大阪府が「それでも安全」というならば、一刻も早く、その証拠を示すべきだ!

現在、センター周辺に野宿する人たちが、強制立ち退きの危機に見舞われている。理由は「大地震が起きたら危険」と言うものだが、ならば南海電鉄高架下も同様であろう。それなのに大阪府は、立ち退きの本裁判から数か月後断行仮処分裁判にまで訴え、早急に追い出そうと企んでいる。センターを解体したのち、広大に空いた跡地を「再開発」し、「大阪府と大阪市が一緒になって、がっぽり儲けまっせ」と示すためだ。

◆危険な南海電鉄高架下に仮移転したのは、大阪維新の利権のため?

老朽化した上に、耐震補強工事が実施されてない可能性が濃くなってきた南海電鉄高架下に、わざわざ労働者の施設を造った理由は何か? 森友、イソジンのように、大阪維新の利権が絡んでいるのではないか。

実は、西成労働福祉センターの仮庁舎は、新社屋ができるまでの4、5年しか使用しないにもかかわらず、6メートルの杭を打ち込み補強するなどして頑強な構造物になっている。そのため、建設費用か同じ規模の仮庁舎のそれより高い。頑強な構造物にした理由の一つに、使用終了後解体せずに、そのまま別の施設に使われる可能性がある。それは、同じ南海電鉄が難波駅高架下で展開する「なんばEKIKAN」プロジェクトのような商業施設かもしれない。南海電鉄が何で儲けようが勝手だが、その頑強な構造物を作った建設費用は、大阪府民の尊い税金だ! 南海電鉄を儲けさすために、貴重な税金が使われるようなことがあってはならない。

現在の大阪市長・松井氏は、かつて住之江競艇場の電気保守管理や物品販売などの利権を独占してきた株式会社「大通」の代表取締役だった(現在は実弟が代表)。また松井氏がしこたま儲けてきた住之江競技場を経営する「住之江興業株式会社」も、南海電鉄グループの傘下にある。イソジン同様、ここでも自分の利益のためだけに、危険な南海電鉄高架下に、釜ヶ崎の労働者を押し込めようとしたのか?センター周辺の野宿者を1日でも早く追い出したいのか?そうはさせないぞ!!

大阪維新の利権のための「西成特区構想」と「大阪都構想」を、弱いもの苛めの維新政治を、釜ヶ崎から終わらせていこう!

南海電鉄難波駅高架下で展開されるプロジェクト「なんばEKIKAN」。若者をターゲットにしたおしゃれな店舗が集まる

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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月刊『紙の爆弾』2020年11月号【特集】安倍政治という「負の遺産」他

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