8月9日、大国町「ピースクラブ」で、ドキュメンタリー映画「ふるさと津島」の上映会と浪江町津島から兵庫に移住した菅野みずえさんのお話会を行った。以下、菅野さんのお話を全3回の短期連載で紹介する。今回が最終回。(取材・構成=尾崎美代子)

お話をする菅野みずえさん。テーブルの花束は、三木の自宅の畑から菅野さんが摘んできた。右側は本稿筆者の尾崎美代子さん

◆そんなものを日本中にばらまいていいわけがない

最初、映画「ふるさと 津島」を見て、皆さんが違和感持たなかったこと、これだけ原発に反対する皆さんが集まってもなお、気づかなかったというところに、私は原発事故の酷さと惨さを思います。

コロナウイルスにマスクするなら、同じ様に被ばくした土地に行ってもマスクしないといけないんです。触ってはいけないから手袋をする、そしてそれを捨ててくるんです。中で使ったものを持って帰ってはいけないことになっている。それほど汚染された場所だと、国が暗に認めているところで、防護しないということは何なんだと、私は思います。

最近飯舘村が「事故から10年経ったんだから、帰りたい人は、除染せずに帰ってもいいんじゃないか」などと言い始め、飯舘村が言っているということで、国まで除染しないと言い出しています。とんでもないことです。「ばらまいたものは仕方ないから、諦めてよ」というのはないと思うし、みんなで痛み分けしようと、8000ベクレル以下の土を持ってきて、高速道路の基礎に埋めようなんて話はとんでもないことです。いつ地震でひっくり返り、隆起して出てくるかもしれない。そんなものを日本中にばらまいていいわけがないと思っています。

自分の故郷が二度と帰れないところになるという理不尽さは、皆、一人一人持っています。原発は東にあり、津島では「東夕立」は来ることはなかった。だから8割の放射性物質は海へ落ちて、残りの2割が地上30メートルで大きな爆発を起こした。広島、長崎の何十倍の爆発です。そうしたらその膨大な熱量が冷たいところに一気に風が流れ込んだ。そこが津島だと思っています。

帰還困難区域特定拠点解除のための除染

そうしますと、皆さん、今、私たちの住んでいる関西の原発は、黄砂が吹いてくる根元にある。黄砂が吹く時期、原発事故が起きていたらどうします? 放射性物質が黄砂にまといついてやってくるのです。各ご家庭のものほしの隅々まで。そこも住めなくなるのではないですか? 8割が関西に流れるのだから。愛媛の伊方原発で台風のとき何かあったらどうなるか? 玄海原発で何かあったらどうする? あれだけ火山活動が活発な火山の近くの川内原発で目詰まりしたらどうするの? でも門司当たりにまだ原発作ろうとかいう。もう狂っているとしか思えません。事故を起こした国が造る原発は安全なんだそうです。私たちは本当にがんばって原発をとめていかないと、この先なんの未来もつくれないと思っています。

今日参加されたみなさんを見ておりますと、毎日時間がおありのような方が多い(笑)。だったら、今日も明日もあさっても、コロナはあっても原発に反対できます。街頭で反対運動などするのが不安だと思う方々は、市役所や府庁へいって、「おかしいんじゃないか? 避難計画はどうなっているの? うちの自治会に避難してくる人は、福井の京都府のどういう人たちなんだ?」ということを知って、そこの自治体の人たちと交流する、そういうことも大事ではないかと思っています。

◆ハローワークで募集されている「きれいな人の役に立つ仕事」

町中を走る除染土を運ぶ車両

私たちの地域では国の「避難計画」で、「この114号線では避難できないから拡幅してくれ」と要求が出ているなかで、原発事故がおきました。そしてあの雪道の中を逃げました。今は、放射性廃棄物を運ぶために道が広くなっています。ものすごく頑丈な道に変わろうとしています。小繋の峠というところがありました。そこを超えるとすごい車酔いするような峠、雪があるときなど福島で一晩泊まってくるというようなところでした。それが今、直線道路になろうとしている。原発があり、事故が起こったから、1日に放射性廃棄物を10トントラック2800台で運んでいます。2800台分のものを大熊町と二葉町で受け入れる能力があるからです。

家の前の、以前はのんびり通っていた道を、突如2800台のすべてではないが、少なくとも1400台のトラックが通る。15分計って58台とか通る。とんでもない汚染物がまだまだあるということです。今は風評被害をなくすためということで、福島市など町中にあった放射性廃棄物を山の中に隠して見えなくしています。そういう仕事をだれがするかというと、ハローワークで関西などにも募集がかかっています。息子が仕事を探しにいったら「きれいな人の役に立つ仕事」とあり、仙台事務所と書いてあったそうです。

浪江町の人口も増えていますが、それは還って来た人より、除染や廃炉作業の人たちです、なぜかというと、原発の仕事は地域優先なので、その自治体周辺に住民票のない人は雇わないことになっているからです。そのため、近隣自治体に簡単な宿舎を造って、そこに住民票を移して仕事をするわけです。浪江町も1000人超しました。役場で「元の住民は何人くらい?」と聞くと200~300人といってました。ほかは除染や原発に従事している人たちです。除染作業の人たちは簡単なマスク1枚です。私たちは除染労働をしてくれる、誰かの被ばくとひきかえに故郷を手に入れようとしている。そのことは本当にありなのかなと、本来は住民自身が考えなければならないことだと思っています。

原発事故は本当にあってはならないものです。原発そのものがあってはならないものと思っています。

上映会とお話会の最後に「山の歌」を歌う「アカリトバリ」。アカリさんは福島県出身。

◆日本中、どこでも明日、避難と被曝は生活の傍にある

原発事故は今は福島の人の事、関東以北の人の事ようにとらえられますが、明日は関西に済む皆さんの事。日本中に原発のあるのですから、何処でも明日避難と被ばくは生活の傍にある秘かな危機のはずです。

そのことに原発を許した世代のわたしたちが、頑張って行かなければならないことだと、思っています。

どうぞご一緒に、出来ることをできる力で頑張って行きましょう。(終わり)


◎[参考動画]福島ミエルカプロジェクト:自宅は帰還困難区域になり、関西へ避難した菅野みずえさん(FoEJapan 2020/03/10)

菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈1〉津島の風土と映画への違和感
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈2〉私は原発を許した世代です
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈3〉避難と被曝は生活の傍にある

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『NO NUKES voice』Vol.25

『NO NUKES voice』Vol.25
紙の爆弾2020年10月号増刊
2020年9月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 ニューノーマル 脱原発はどうなるか
————————————————————————————————–
[グラビア]〈コロナと原発〉大阪、福島、鹿児島

[報告]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
 二つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
    コロナ収束まで原発を動かすな!

[座談会]天野恵一さん×鎌田 慧さん×横田朔子さん×吉野信次さん×柳田 真さん
    コロナ時代の大衆運動、反原発運動

[講演]井戸謙一さん(弁護士/「関電の原発マネー不正還流を告発する会」代理人)
    原発を巡るせめぎ合いの現段階

[講演]木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
    危険すぎる老朽原発

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
    反原発自治体議員・市民連盟関西ブロック第四回総会報告

[報告]片岡 健さん(ジャーナリスト)
    金品受領問題が浮き彫りにした関西電力と検察のただならぬ関係

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
「当たり前」が手に入らない福島県農民連

[報告]島 明美さん(個人被ばく線量計データ利用の検証と市民環境を考える協議会代表)
    当事者から見る「宮崎・早野論文」撤回の実相

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
   消える校舎と消せない記憶 浪江町立五校、解体前最後の見学会

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
    《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈9〉
    「原発事故被害者」とは誰のことか

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
    多量の放射性物質を拡散する再処理工場の許可
    それより核のゴミをどうするかの議論を開始せよ

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
    具体的なことと全体的なことの二つを

[報告]板坂 剛さん(作家/舞踊家)
    恐怖と不安は蜜の味

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
    山田悦子の語る世界〈9〉普遍性の刹那──原発問題とコロナ禍の関わり

[読者投稿]大今 歩さん(農業/高校講師) 
    マンハッタン計画と人為的二酸化炭素地球温暖化説

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
    コロナ下でも萎縮しない、コロナ対策もして活動する
《北海道》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《石川・北陸電力》多名賀哲也さん(命のネットワーク代表)
《福島・東電》郷田みほさん(市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会=しゃがの会)
《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《浜岡・中部電力》沖 基幸さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08H6NL5FX/

8月9日、大国町「ピースクラブ」で、ドキュメンタリー映画「ふるさと津島」の上映会と浪江町津島から兵庫に移住した菅野みずえさんのお話会を行った。以下、菅野さんのお話を全3回の短期連載で紹介する。今回は第2回。(取材・構成=尾崎美代子)

お話をする菅野みずえさん。テーブルの花束は、三木の自宅の畑から菅野さんが摘んできた

◆毎日東電がセシウムという肥料を与えてくれるから、花が咲き実が成る

あの映画見たら「わあ、きれいな緑」と思われるかもしれない。事故前はあんな緑で覆われてはなかったんです。家の前はどこも開いていた。西側に阿武隈山系から降りてくる「やませ」を防ぐ防風林はありましたがね。原野になるのがはぜ早いのか? それは放射性物質がまき散らかされたからです。セシウムというのは放射性カリウムです。カリウムは何かというと、花を咲かせるとか緑を濃くするものです。私は避難の家の畑で何か作るとき、実の成るものには骨粉などを与えます。これを東電が毎日やってくれるということです。そしたら緑は濃くなり花も咲く。津島の我が家で、事故前まではキュウイは剪定しないと実が成らなかったが、事故後10年近く剪定してないがキュウイがたわわに実っています。毎日東電が肥料を与えてくれるから、花が咲き実が成るのです。

福島県は南相馬に猪専用の焼却場を造っています。それを急いだのは、猪が凄いセシウムだらけだからです。埋める訳にもいかない。猟友会に駆除を頼み、檻を設置している。これまでは冷凍するしかなかったが、県の冷凍庫が一杯になって、ほかのものが入れなくなった。それで焼却場を造った。大変なことです。燃やしても放射能が濃縮された灰が残る、それをどうするかです。

今年のお盆に津島地区を訪問した。事故から9年過ぎた菅野さんの家(写真提供=Eiji.Etouさん)

◆国や東電が「処理水」と呼ぶ汚染水

汚染水も国や東電は「処理水」といって、タンクを置く場所がない写真ばかり見せる。すると善良な人たちは「場所がないなら仕方ないだろう。毎日増えるんだから流すのもしょうがない」と思ってしまう。でもあの一杯になったタンクの後ろの山は東電が新しい原発造ろうと買い占めた山です。そこを整地して、もっとコンパクトなタンクになるような技術でやればいいのに、それを一切言わない。だからそういう写真が出ると、いつも私は「土地はあるよ」と書き込むようにしています(笑)。

今、津島も大熊も双葉も、年間50ミリシーベルトの蓄積被ばくがある帰還困難区域です。そこを除染して住めるようにするということで、我が家もそのエリアに入りました。なぜ除染で家がなくなるかというと、家などそこにあるもの全てが放射性廃棄物だからです。だから今だったら公費で壊すが、それ以降は自費で、放射性廃棄物としての取り扱いをしないといけないという。こういう時だけ「放射性廃棄物だ」としっかり言うのですね、大事なことですが。解体は放射性廃棄物としての取り扱いだけで余分に1戸あたり750万~1000万円掛かる。そんな金のかかることを、子どもや孫に残すわけにはいかないので、皆さん一生懸命取り壊しています。我が家も母屋を除いて全部取り壊すことになって、先日打ち合わせに行ってきました。役場の職員と1時間くらい、家の中にいて、0.5マイクロの被ばくでした。今は葉っぱの表面について、それが毎日落ちてくるから高い。それまでのものは地面に落ちている。それが風で舞い上がる。やっぱり防護はしてほしいと思います。

津島の自宅。いつも菅野みずえさんが車を置いていた場所(写真提供=Eiji.Etouさん)

◆白血病の話

先ほどの白血病の話ですが、なぜかなと思いますが、あの時、そこでは果樹栽培の木を全部高圧洗浄器で洗ったんです。おっちゃんが上で水をかけ、母ちゃんが下で脚立を支えていた。1人でやって、何人も脚立から落ちて骨折したので危険なんです。それでも線量が下がらず、柿木の皮を全部剥いだそうです。そいういう作業をした人たちが、私は病気になっているのではないかと、勝手に思っています。たくさんの病人が出ています。一時期、福島でアフラックの宣伝がなくなったと聞きました。あまりにもペイしない話だからと。

私は2011年2月に東電の説明会を聞きました。東電は「いかなる災害にも耐えうる」と言い、「7人に1人がガンになる時代なので、原発で癌になるわけではありません。それは誤解です」と言っていました。事故が起きて避難している間には5人に1人が癌でした。私が甲状腺癌をした2016年頃は、3人に1人が癌でした。たかだか7年で統計学的、あるいは疫学的に「7人に1人の癌」が「3人に1人」になるだろうか? そう思うと私は、放射性物質というのは、そんなに能天気に笑っていれば大丈夫のものではない気がしています。

通り門を入ろうとするけれど、蜘蛛の巣と草ばかり

◆私は原発を許した世代

私は原発を許した世代です。被害者となって避難して思います。放射性物質は県境で「おっと」と言って、越えないものではないのです。去年は富士山麓の自然のキノコは食べられなかった。今年は長野のコシアブラから放射性物質が出ました。それだけ風に乗って広まったということです。だから私は、自主避難の人は相応性がないというのは、嘘だと思います。どこから避難したかは問題ではない。原発事故があったから、身を守るために、避難した。それは子供を守った偉大な話として浪曲になりそうな話ですよ。それが今では非難の対象になる。おかしな話です。

今、コロナの時代に原発はすぐさま止めるべきだという新たな裁判をやっています。福井県の石地優さんという男性がなぜ原告になろうと思ったか話しています。コロナで輸入できなくなったら、日本の食の自給率が問題になる。自分たち百姓が立ち上がらなければ、日本の食は守れない。外国から入ってこなくなったら、日本の人たちは何を食べるんだ。そういうことを考え、すぐさま原発は止めるべきだと立ち上がったそうです。7人が原告になりました。すぐさま止めてもらわないといけないので、2回くらいの裁判で結審してほしいと思っています。

次回審尋は9月14日にあります。私は、避難所はどういうところか、密にならない避難所はありえないし、避難そのものもができないではないかと訴えます。国はコロナ禍で原発事故が起きたら、換気しないで屋内退避すると主張しています。コロナウイルスよりも実は放射性物質の方が怖いんだと、暗に認めたということです。コロナウイルスが蔓延するなか、大きな事故は起きないかもしれないが、地震や台風が複合して起こらないとは言えない時代です。危ないものは元から絶たないとダメだと思います。経済活動というなら、原発を止めるべきと思います。原発事故が起こることが最大の経済危機だと思います。今だからこそ、「原発は止めないと」と頑張らなければと思います。特に避難者である私は、そのことがよくわかっていますので、これは何としても頑張らなければと考えています。

だから津島の上映会と聞いたら、もれなく私がついていくようにします(笑)。だってこれだけ見て違和感持たない人が増え、「津島の人たちは可哀そう」で終わったら困るんです。これが一人歩きしたらどうなるかと不安です。私たちは、ただ家を奪われただけではなく、撒き散らされたものが危なくて逃げている、還れないんです。それは危ないものだからです。それは防護してもらわないと困る話です。被ばくという点でおかしいと、100年後の人たちに伝えるなら、津島が何に汚されたか、何に追われて私たちは避難したかを伝えなくてはならないと思っています。(つづく)


◎[参考動画]DVD 「ふるさと津島」ダイジェスト映像(Media Laboノダグラ 2020/06/30)

菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈1〉津島の風土と映画への違和感
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈2〉私は原発を許した世代です
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈3〉避難と被曝は生活の傍にある

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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総力特集 ニューノーマル 脱原発はどうなるか
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[グラビア]〈コロナと原発〉大阪、福島、鹿児島

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 二つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
    コロナ収束まで原発を動かすな!

[座談会]天野恵一さん×鎌田 慧さん×横田朔子さん×吉野信次さん×柳田 真さん
    コロナ時代の大衆運動、反原発運動

[講演]井戸謙一さん(弁護士/「関電の原発マネー不正還流を告発する会」代理人)
    原発を巡るせめぎ合いの現段階

[講演]木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
    危険すぎる老朽原発

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
    反原発自治体議員・市民連盟関西ブロック第四回総会報告

[報告]片岡 健さん(ジャーナリスト)
    金品受領問題が浮き彫りにした関西電力と検察のただならぬ関係

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
「当たり前」が手に入らない福島県農民連

[報告]島 明美さん(個人被ばく線量計データ利用の検証と市民環境を考える協議会代表)
    当事者から見る「宮崎・早野論文」撤回の実相

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
   消える校舎と消せない記憶 浪江町立五校、解体前最後の見学会

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
    《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈9〉
    「原発事故被害者」とは誰のことか

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
    多量の放射性物質を拡散する再処理工場の許可
    それより核のゴミをどうするかの議論を開始せよ

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
    具体的なことと全体的なことの二つを

[報告]板坂 剛さん(作家/舞踊家)
    恐怖と不安は蜜の味

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
    山田悦子の語る世界〈9〉普遍性の刹那──原発問題とコロナ禍の関わり

[読者投稿]大今 歩さん(農業/高校講師) 
    マンハッタン計画と人為的二酸化炭素地球温暖化説

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
    コロナ下でも萎縮しない、コロナ対策もして活動する
《北海道》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《石川・北陸電力》多名賀哲也さん(命のネットワーク代表)
《福島・東電》郷田みほさん(市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会=しゃがの会)
《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《浜岡・中部電力》沖 基幸さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
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8月9日、大国町「ピースクラブ」で、ドキュメンタリー映画「ふるさと津島」の上映会と浪江町津島から兵庫に移住した菅野みずえさんのお話会を行った。以下、菅野さんのお話を全3回の短期連載で紹介する。(取材・構成=尾崎美代子)

◆浪江町津島の風土

私が住んでいた浪江町津島では、少し前までは13人から18人とかの家族がざらに一緒に暮らしてました。夫の母親は子供を11人産んだと言ってました。いつも腹が膨らんで、乳が張っていたと。津島は非常に寒いところで、私が一番寒いと感じたときはマイナス19度でした。普通は夏至になると「ああ暑い夏がくる」と思うけど、私たちは夏至がくると「ああもうすぐ冬だ」思う。季節感がすごく違っているかもしれません。

そういうところだから、子供が風邪をひくと助からないことがあった。だから沢山子どもを産むしかないと母は言ってました。11人目を産んだ時、これが最後と思い、死んでしまった一番最初の子の名前を付けたといってました。それが私の夫(の昭雄)です。母は、生きられなかった子供と同じ名前つけて生きてもらおうと思ったと言ってました。だから夫は2人分の人生を生きなくてはならないのですが、何故か家に住めなくて避難しているわけです。

お話をする菅野みずえさん。テーブルの花束は、三木の自宅の畑から菅野さんが摘んできた。右側は本稿筆者の尾崎美代子さん

◆映画への違和感

そこが非常に理不尽な思いをもっているところですが、皆さん、今日の映画を見て何か感じませんでしたか? 違和感ありませんでしたか?(会場しーん)

私はこの映画見たとき「なんじゃこりゃ」と思いました。しかもこれを裁判資料にすると聞いて「やめてくれ」と思ったんです。私は津島の家に帰るとき、国の出先機関に連絡し、何人でどの車で入ると言って許可とります。入る前スクリーニングで、防護服と線量計をうけとり、頭に白い不織布のキャップを被り、マスクして二重手袋します。汗をかくので布手袋はめて、その上に薄いゴム手袋はめて、何か触るときにはもう1枚厚手の手袋をはめる。家に上がるとき汚染を持ち込むので、ビニールの足キャップを履いて上がる。

でも映画では誰もそんな格好していなかった。帰還困難区域でものを食べてはいけないと法律で決まっているのに、映画の中では食べてましたよね。周囲で大きな音がしていたのは、除染が始まり、家を壊しているからです。家に降り積もった放射性物質が巻き上がっている。映画では、そんな中、窓を開けてご飯を食べている。「なんじゃこりゃ」と思いました。

またガイガーカウンター持っている人は1人もいませんでした。最初に出てきたはるえちゃんだけが蓄線量計をもっていました。国から貸与され、おおむね2時間いて何マイクロ被爆したと記録して、自分の被ばく記録として持つのです。それは帰還困難区域に線引きされてからです。それまでは線量はもっと高かったのに、そういうことはなかった。その間に映画にでてくる人は「家に帰っていた」「寝泊りしていた」と言ってましたよね。どれくらい被ばくしているかもわからない状態です。当時は余震が続いていたので、屋根がずれたりして、非常にかびて、動物被害が多くなっています。でも避難は被ばくするから。でも映画では誰もそれを言わなかった。不思議でたまりません。

◆映画の中で防護服を着ないのは、100年後の子孫に見られたら嫌だという気持ちがあったかもしれない

また最初、津島に入ってきたのは、(映画でいうような)動物ではなく、泥棒です。泥棒がものを盗んであけっぱなしで出た入口から動物が入ったんです。

映画にでていた佐々木さんは、ここで「20ミリシーベルトになっていいのか」と言ってましたが、そこで一晩寝て20ミリではなく、多分20マイクロシーベルトの被ばくだと思います。赤宇木の仮設住宅の近くのおっちゃんが「運転しにくい」というので、私が皆を乗せて自宅の見回りに行きました。4年もたつのに、おっちゃんの家で1時間当たり40マイクロシーベルトありました。

私が止めたのに、おっちゃんが外を見回ったら、積算線量が2時間で140マイクロ超えました。私が100ちょっと。スクリーニングの職員 彼らは仕事がなくなった東電の職員で、給料は復興予算から出ます。東電が黒字になるのは当然と思います。「140なんてたいしたことないですよ。原発構内はね……」と言いだしたら、おっちゃんが「なにおー」と殴りかかろうとした。私が必死でとめて車に乗せて、今度は私が「ここ(津島)は原発構内と同じか!元はゼロだったんだ」と怒り出してしまい、おっちゃんに止められた(笑)。そんなことがありました。

映画のなかで彼らが防護服を着ないのは、100年後の子孫に見られたら嫌だという気持ちがあったかもしれない。だけど現実に起こっていることを正確に伝えるなら、私は防護服を着て、自分の身を自分で守って欲しかったと思います。この記録は住民がいかに被ばくについて、国から何も知らされてないかの証だと思います。レントゲン室でまんま(ご飯)食う人はいないです。それを見て「なにをやってるの?」と私は思いました。それくらい被ばくについて、私たちは教えられてない。「年だから、ちょっとくらい大丈夫」ということでしょうか。

前に東大の先生が飯館村の松川第二仮設住宅にきて「皆さん、松茸食べれないのはストレスでしょう。ストレスはないほうがいいから、ちょっとくらい食べてストレス解消したほうがいい」といったそうです。そこで管理人をやっていた私の友達が「私たちにストレス溜まるのは、こんな生活させられているからだ。そんな汚れた松茸食って、何年もここに留め置かれるストレスが解消できると思っているのか?頭いい人が何故そんなこというのか?」と怒ったそうです。菅野村長に辞めさせられそうになりましたが、頑張って最後まで管理人をつとめました。

そんなものなんです、私たちに施された教育というのは。ちょっとくらい食っても構わない、ちょっとくらい家に泊まっても構わない……と。それは被ばくのことを全く無視しているのです。

津島地区、菅野さんの自宅近くの放射線モニタリングポスト(写真提供=Eiji.Etouさん)

◆近所で5人が白血病になり、今年までに全員が亡くなりました

名前はいいませんが、福島の小さな町で、私が知っているだけで、近所で5人が白血病になり、そのうちの私の友人が一番最初に亡くなり、今年までに全員が亡くなりました。5人という数は私が知っている人だけです。それまで白血病なんてきいたこともなかった。

映画で出ていたTOKIOの「DASH村」で世話していた三瓶明雄さんも白血病で亡くなりました。彼はしょっちゅうDASH村に通ってました。我が家から2キロくらいの線量が高い所。この前も城島君が笑って福島の桃を食べ「旨い!」と宣伝していました。それは美味しいと思う。でも「あなたは大丈夫?」と私はテレビに向かって言ってました。彼らは本当に素朴で、今でも町の人たちと交流してくれる。明雄さんに何度も見舞いに通ってました。でも、彼らは守られているのかなあと、若いだけに心配です。そういう状態があの映像です。

国や東電の代理人が、こんな事実を見逃すわけはないんです。これを証拠資料としてだしたときに「帰還困難区域はあんなに普通に家に出入りしてる、だったら自主避難なんて笑止千万だということだ」と言い出しかねない。そうして裁判資料は他へ流用されます。そんなふうに使われては堪らない。

映画に出てきた石井ひろみさんはうちの隣の家の人です。彼女が公民館に勤めていた時にチェルノブイリの事故があり、いわきの教会の依頼で子供たちを公民館活動のなかで受け入れました。だから被ばくがどういうものかわかっている。彼女は防護服を着るべきだとか、映像を裁判資料にしていいのかと訴えてくれてますが、全体のものにはなっていません。彼女は「私はいやだった。みずえちゃん怒ると思ったから、みずえちゃんに知らせたくないと思ってたら、みずえちゃんの名前がエンドロールがあってさ」と言ってました。私は彼女に「映画見たとき愕然とした」と言いました。だから私はこの映画の上映会があるとしたら、もれなく付いて回ろうと思っていると言いました。

「おらっちの故郷はこんな風に人の入れるとこでねえ」と話しながら。ドアノブ開けて入るシーンでは「イヤ、そこ触ってはだめ」と思わず思ってしまう。コロナウイルスと一緒ですよ。(つづく)


◎[参考動画]ふるさと津島を映像で残す会予告編(Media Laboノダグラ 2020/01/19)

菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈1〉津島の風土と映画への違和感
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈2〉私は原発を許した世代です
菅野みずえさんが語る映画「ふるさと津島」〈3〉避難と被曝は生活の傍にある

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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総力特集 ニューノーマル 脱原発はどうなるか
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[グラビア]〈コロナと原発〉大阪、福島、鹿児島

[報告]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
 二つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
    コロナ収束まで原発を動かすな!

[座談会]天野恵一さん×鎌田 慧さん×横田朔子さん×吉野信次さん×柳田 真さん
    コロナ時代の大衆運動、反原発運動

[講演]井戸謙一さん(弁護士/「関電の原発マネー不正還流を告発する会」代理人)
    原発を巡るせめぎ合いの現段階

[講演]木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
    危険すぎる老朽原発

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
    反原発自治体議員・市民連盟関西ブロック第四回総会報告

[報告]片岡 健さん(ジャーナリスト)
    金品受領問題が浮き彫りにした関西電力と検察のただならぬ関係

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
「当たり前」が手に入らない福島県農民連

[報告]島 明美さん(個人被ばく線量計データ利用の検証と市民環境を考える協議会代表)
    当事者から見る「宮崎・早野論文」撤回の実相

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
   消える校舎と消せない記憶 浪江町立五校、解体前最後の見学会

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
    《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈9〉
    「原発事故被害者」とは誰のことか

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
    多量の放射性物質を拡散する再処理工場の許可
    それより核のゴミをどうするかの議論を開始せよ

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
    具体的なことと全体的なことの二つを

[報告]板坂 剛さん(作家/舞踊家)
    恐怖と不安は蜜の味

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
    山田悦子の語る世界〈9〉普遍性の刹那──原発問題とコロナ禍の関わり

[読者投稿]大今 歩さん(農業/高校講師) 
    マンハッタン計画と人為的二酸化炭素地球温暖化説

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
    コロナ下でも萎縮しない、コロナ対策もして活動する
《北海道》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《石川・北陸電力》多名賀哲也さん(命のネットワーク代表)
《福島・東電》郷田みほさん(市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会=しゃがの会)
《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《浜岡・中部電力》沖 基幸さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08H6NL5FX/

9月6日大阪市内うつぼ公園にて「9・6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」が開催された。5月17日の予定から延期されたが、その間1036もの市民団体、労組、個人有志の賛同を集め、1600人もの結集を得ることができた。以下、主だった登壇者の発言の要旨を紹介する。

2020年9月6日大阪市内うつぼ公園で行われた「9・6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」

まず、主催者挨拶をされたのは福井県小浜市明通寺の中嶌哲演さん。

主催者挨拶をされた福井県小浜市明通寺の中嶌哲演さん

「高浜1号機が稼働開始以来40年、美浜3号機が44年の老朽原発であるに留まらず、こんにちまでそれだけの様々な歴史、すなわち「モノ言えば唇寒し」といった原発フアシズム、国内植民地化の負の歴史をも刻み込まれてきた。福島事故以後、関電の4基は廃炉、残る7基のうちの3基が老朽原発としての延命措置が今まさに本集会の眼目となっています。国会に上程されながら2年余りをも棚ざらしになっている〈原発ゼロ法案〉、原発核燃料サイクル推進国策に固執している政府や規制委、老朽炉の延命・差し止めを求める名古屋市民の闘い、多数の市民による関電原発マネー不正還流の告発と、それを未だに受理しない大阪地検の現状など、立法行政司法の三権内部の、安倍政権の崩壊をめぐって動揺を余儀なくされていくことでしょう。その三権を揺さぶり、福島の惨禍を繰り返させぬ、あとからくる者のためにも、まずは老朽炉の廃炉、そして原発ゼロの社会を目指す広大な世論と運動の全身を本日の大集会から始めようではありませんか」。

続いて実行委員会の木原壮林さん。

「今、脱原発・反原発の運動にとって大きな追い風が吹き、山は動き始めている。一方で、コロナウイルスが止まることをしらず、数か月内に収束するとは考えられない。それでも関電は美浜3号、高浜1号の来年1月、3月の再稼働を画策し、その準備作業をコロナなどないかのように進めている。私たちの運動が委縮すれば政府や関電の意のままの政策がまかり通ることになる。コロナを口実に民主主義が破壊されかねない。現在コロナの蔓延により運動も様々な制約を受けているが、その制約以上の行動を地域、職場で勇気をもって展開し、老朽原発を廃炉に追い込もう。老朽原発再稼働を阻止し、それを突破口に原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しよう」

「関電の原発マネー不正還流を告発する会」の末田一秀さん、「老朽原発40年廃炉名古屋訴訟市民の会」の草地妙子さんに続いて、「福井原発訴訟・滋賀」弁護団長の井戸謙一さん。

「福井原発訴訟・滋賀」弁護団長の井戸謙一さん

「新しい安全神話が跋扈している。放射能安全神話では年100ミリシーベルトまでは健康被害は起こらない、事故を起こしてもたいしたことないから原発の運転を受け入れろという。その神話を貫徹させるために200人以上の子供が甲状腺がんになっても被ばくとは関係ないと絶対認めようとしない。将来甲状腺癌になるという不安を持つ子ども、健康不安に怯えている大人たちも沢山いる。そういう中で原発を以前のように推進しようとしている。もう一つ絶対忘れてならないのは、福島で深刻な事故が起きたが、それは実はラッキーで、本当は東日本が壊滅するくらいの酷い事態もあり得た。今後原発の運転を続けるということは、そういう事態が起きても受け入れろということ。一体それを超えるどんな利益があるのか?私たちはそういう選択は断固拒否する。今後は全国で闘われている裁判をテコに、再稼働を許さないという運動を盛り上げていきましょう」。 

老朽原発の地元、福井県高浜町の東山幸弘さん、美浜町町議の松下照幸さんからはメッセージが届けられた。

東山さん「大阪集会と連帯した現地の行動として、私たちはただいま、工事中の高浜原発ゲートと福井県駅前広場でスタンディングの連帯行動を行っている。今、関電の原発は、廃炉となった4基を除き、老朽原発3基と再稼働を許した4基に1兆円を超す膨大な金をかけ、死亡事故を含む労災事故を多発させながら、しゃにむに突き進んでいる。今動いている高浜4号、大飯4号も定検のため10月~11月初めに停止する。関電は全機停止を避けるため、大飯3号の定検を早め7月20日から開始したが、工事を急いだため先月28日労災事故を起こした。再稼働には地元了解が必要だが、昨年の関電の不祥事で信頼関係は地に落ち、若狭住民は怒っている。こんないい加減な会社が、ただでさえも危険な老朽原発の運転・管理をすることは許されない。すべての原発が廃炉するまでがんばりましょう」。

松下照幸さん「美浜では2基の廃炉がきまり、3号機が来年1月の再稼働を目指している。施設の老朽化に加え、関電経営陣のコンプライアンス、ガバナンスの欠如が大きな問題となった。それでも規制委から『安全上問題なし』と判断が下された。一番心配なのは、集会テーマにある原発の老朽化です。2基の廃炉が決まり、定検がなくなり、美浜町の固定資産税が減少する。40年運転のためのテロ対策工事があって、ここ数年税収は安定したが、10年後の税収不足が見えてくる。40年を超えて今なお(原発の)地域振興が叫ばれるが、地域振興は公金をもらう方便で、土建政治が幅をきかせてきた。原発という資金源が細ると、たちまち町の運営が行き詰まる。その入り口にたって七転八倒しながら私は地区のにぎわい作りに頑張っている。福島の事故以降、町の雰囲気は大きく変わり、私を見る目も変わってきた。今は地域の中の数名で政策提案をつくるチームを作り、地域に政策提案をすべく頑張っています。当地においでの際には、ぜひ声をかけてください」。

最後に茨城県から「東海第二原発の再稼働を止める会」の披田信一郎さんが発言された。

2020年9月6日大阪市内うつぼ公園で行われた「9・6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」

実行委のカンパ訴えのあと、アメーバデモ、リレーデモなどを通じて聞いた若狭の人たちの声を「若狭の原発を考える会」の木戸恵子さんが紹介した。

「月2回4日間かけて、若狭の集落から集落を巡って原発反対のチラシを配り、アメーバデモを6年間続けてきた。また高浜原発から関西方面に向かう200キロリレーデモなどを繰り返し行い、原発立地や周辺自治体の方々の生の声を多数聞いてきた。配布したチラシは55万枚に及び、直接お話を伺った方々は2000人以上、多くの方が原発反対の自らの意見を披露された。
 8割以上の方が『原発いらん!ご苦労さん』と声をかけてくださった。チラシの受け取りを拒否したり、再稼働賛成という方はごくまれだった。特に『老朽原発の再稼働は絶対ダメ』の声が圧倒的だった。今後はこれを糧に老朽原発再稼働を阻止して、原発全廃を勝ち取るための、工夫を凝らした多様な行動を全国の皆さんと連帯して展開していきたい」。

2020年9月6日大阪市内うつぼ公園で行われた「9・6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」

2020年9月6日大阪市内うつぼ公園で行われた「9・6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」

次に「原発賠償関西訴訟原告団」副代表の佐藤勝十志(かつとし)さん。

「福島原発が事故を起こしたときたくさんの偽りがあった。3月12日爆発を起こした時、テレビやラジオは『福島原発は危機的状況だが爆発はしない。放射能は拡散されない。被ばくすることはない』と繰り返した。それを信じて避難する必要はないと考えて人はたくさんいた。しかし現実はどうだったか。3月11日時点で大熊町、双葉町、浪江町の住民の一部は、原発が危機的状況だからと、国が手配したバスで避難させられた。そのひとたちにも『1日、2日で帰れる』と嘘をついていた。そのため入れ歯まで置いてきて、とうとうそのまま福島に帰れず、昨年78歳で亡くなった人もいる。今抱えている嘘はトリチウム汚染水の問題、太平洋の海水で薄めて海に流すといっている。こんなことを認めたら、私たちの安全な生活は守れない。私たちの裁判でも訴えて闘ってまいります」

全国各地から集まった皆さん、関西の市民団体、労働組合の報告に続き、最後は「老朽原発再稼働を阻止し、それを突破口にして、原発全廃を勝ち取り、人の命と尊厳が大切にされる社会を展望したいと考える」との力強い決議(案)を採択し、集会を終えた。


◎[参考動画]老朽原発うごさすな!大集会inおおさか (たぬき御膳さん 2020.09.06配信)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

9月11日発売開始『NO NUKES voice』Vol.25

『NO NUKES voice』Vol.25
紙の爆弾2020年10月号増刊
2020年9月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 ニューノーマル 脱原発はどうなるか
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 二つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
    コロナ収束まで原発を動かすな!

[座談会]天野恵一さん×鎌田 慧さん×横田朔子さん×吉野信次さん×柳田 真さん
    コロナ時代の大衆運動、反原発運動

[講演]井戸謙一さん(弁護士/「関電の原発マネー不正還流を告発する会」代理人)
    原発を巡るせめぎ合いの現段階

[講演]木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
    危険すぎる老朽原発

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
    反原発自治体議員・市民連盟関西ブロック第四回総会報告

[報告]片岡 健さん(ジャーナリスト)
    金品受領問題が浮き彫りにした関西電力と検察のただならぬ関係

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
「当たり前」が手に入らない福島県農民連

[報告]島 明美さん(個人被ばく線量計データ利用の検証と市民環境を考える協議会代表)
    当事者から見る「宮崎・早野論文」撤回の実相

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
   消える校舎と消せない記憶 浪江町立五校、解体前最後の見学会

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
    《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈9〉
    「原発事故被害者」とは誰のことか

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
    多量の放射性物質を拡散する再処理工場の許可
    それより核のゴミをどうするかの議論を開始せよ

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
    具体的なことと全体的なことの二つを

[報告]板坂 剛さん(作家/舞踊家)
    恐怖と不安は蜜の味

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
    山田悦子の語る世界〈9〉普遍性の刹那──原発問題とコロナ禍の関わり

[読者投稿]大今 歩さん(農業/高校講師) 
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[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
    コロナ下でも萎縮しない、コロナ対策もして活動する
《北海道》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《石川・北陸電力》多名賀哲也さん(命のネットワーク代表)
《福島・東電》郷田みほさん(市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会=しゃがの会)
《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《浜岡・中部電力》沖 基幸さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08H6NL5FX/

本日9月11日、『NO NUKES voice』25号が発売となります。新型コロナウイルスが収束しないため、24号同様、脱・反原発の集会、講演会、現場の報告は少ない一方、汚染水処理問題、六ケ所村の再処理工場開始、老朽原発再稼働の策動などを進める政府に対抗する重要な提言などを多数寄稿いただきました。

◆3・11とコロナ禍を経験した私たちは、今後何をすべきか?
 小出裕章さんの書下ろし長編論考「2つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織」

巻頭の小出裕章さんの報告「2つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織」では、新型コロナウイルスが蔓延し始めるなか、東京五輪の延期をしぶしぶ決断した政府が、その後のコロナの感染拡大を封じ込めれずに、今、私たちは放射能汚染とコロナウイルス汚染の2つの緊急事態宣言下に置かれていると解説する。

2つの間には、とりわけ社会的弱者に犠牲を強いること、さらにこの混乱に乗じ、権力の手先となって弱者、犠牲者を追い込める民間勢力の「自粛警察」が跋扈する危険性を共通項にして、警鐘を鳴らしている。安倍首相(当時)が、優雅に愛犬を抱いて紅茶を飲み、読書する「自粛」生活を披露したが、多くの人たちにはそんな優雅なことができる職場も住居もない。得体のしれないコロナに狼狽(うろた)えるしかなかった。十分に補償されない限り、危険を承知で働かざるとえなかった人も多い。これは事故後、福島第一原発から大量に放出された放射能を前にして、多くの人々が戸惑いや恐怖とともに感じた感覚と似ている。

しかしコロナウイルスの正体が徐々にではあるが解明されてきた今、3・11以降、あらゆる生活の過程で放射能を強要されている私たちは、新型コロナウイルス(COVID-19)という新たなウイルスと対面し、今後何をすべきかを考える必要がある。

「多様な他者の存在をお互いに大切にする社会の建設を目指すべきであり、そのためには、他者の痛みに共感できる子供を育てる必要がある」と小出さんは最後を締めくっている。コロナを体験した私たちが、今後どのような社会を構築していくべきか、本紙ご購入の上、ぜひ考えていただきたい。

今回、12000字超もの書下ろし長編論考「二つの緊急事態宣言とこの国の政治権力組織」を執筆してくださった小出裕章さん

◆7月9日大阪府高槻市「反原発自治体議員・市民連盟、関西ブロック第4回総会」から
 井戸謙一さんと木原壮林さんの講演録

反原発自治体議員・市民連盟関西ブロック第四回総会で講演を行った井戸謙一さん(上)と木原壮林さん(下)

多くの集会、講演会などが中止・延期されるなか、7月9日大阪府高槻市で開催された「反原発自治体議員・市民連盟、関西ブロック第4回総会」において行われた2つの記念講演、井戸謙一さん(弁護士・「関電の原発マネー不正還流を告発える会」代理人)の「原発をめぐるせめぎあいの現段階」、木原壮林さん(「若狭の原発を考える会」)の「危険すぎる老朽原発」の書きおこしを掲載した。

いずれのテーマも、今、反原発を闘うすべての人たちが、現場で闘う際、貴重な武器となるものだ。低線量被ばくや老朽原発の危険性などの、専門的で難解な内容も、非常にかみ砕いてわかりやすい解説である。ぜひ、様々な闘いの現場で参考にしていただきたい。井戸氏の「被ばくをめぐる5つの問題」の1つに提起された「不溶性微粒子問題」は、脱被ばく子供裁判を闘う過程で、各専門家の先生方のご尽力で解明されたもので、内部被ばくから引き起こされるさまざまな健康被害を研究する要となるものだ。

木原氏からは、老朽原発とは具体的にどんな原発かについて、例えば運転中の原発で国内初の死亡事故を起こした2004年8月の美浜原発3号機の配管破裂事故について、具体的に配管がどう腐食し事故に至ったかが詳細に説明された。そして、このような危険極まりない老朽原発の再稼働の阻止を突破口に、原発のない人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しようと訴えられた。

◆喫緊の課題「コロナが収束するまで原発を止めろ!」が意味すること
 水戸喜世子さんが語る「ニューノーマル下で実現すべき脱原発社会」

 

「子ども脱被ばく裁判」共同代表の水戸喜世子さん

上記の高槻の講演会で久々に水戸喜世子さんに久々にお会いした。早速気になっていた5月18日、水戸さんら福井県など4府県6人で原告となり「新型コロナウイルスが収束するまで、関電の若狭の原発7基を止めろ」という仮処分の申し立ての話に及んだ。すると水戸さんは「記者会見にはどこ(のメディア)も書いてくれないのよ」と悔しそうにこぼされた。そういえば、その時点で本紙でも取り上げる予定はなかった。私は急遽、編集部に話し、水戸さんに取材インタビューすることが決まった。

確かに収束の見通しのたたないコロナ禍で、原発事故だけではなく台風、豪雨などが起きた場合の避難は喫緊の課題のはずだ。しかし大手メディアは申し合わせたように、この裁判を無視していた。「パチンコ屋に営業自粛を迫るのであれば、被害がけた違いに大きい原発の営業自粛をなぜ求め合いか」? 水戸さんはそう裁判を起こすきっかけを話し始め、私たちがまたもや「原発安全神話」の催眠術にはまり込んでいるとしか思えないと。

コロナ下で原発事故が起きた場合の、実行力のある避難計画は、国からも各自治体からも出されていない。そもそもコロナ禍で「3蜜を避け」「換気せよ」ということと、放射能防護のための「気密にせよ」は、相反するものである。つまり感染防止と災害避難は両立しない。これを契機に危険な原発は、今後どんなウイルスが発生しても止めるべきとの世論を広めなくてはならない。

水戸さんは「人間が環境との付き合い方を変えない限り、ウイルスが変幻自在に姿を変えて付きまとってくる予感がしまう」として、「脱原発を『ニューノーマル』とすることができたらドイツのように、新型コロナウイルスとの戦いにも勝てるに違いないと確信します」と締めくくられた。

今紙のテーマとなった「ニューノーマル」(新たな常態)とは、世界経済がリーマンショックから立ち直っても、もとの姿に戻れないとの見解から生まれた言葉で、構造的な変化が避けられない状態を示している。安倍から菅に代わろうとする政府は、来春の東京オリンピック開催を危ぶむ声が高まるなか、福島第一原発の汚染水問題で全世界を騙したように、コロナに対しても「アンダーコントロール」すると宣言した。しかし、3・11後の放射能と、今のコロナを経験した私たちは、汚染水もコロナも人間が自由に「アンダーコントロール」出来ないと知っている。元の姿に戻ることはできないならば、私たちが意識的に変わっていくしかないのだ。

水戸喜世子さんたちは「新型コロナウイルスが終息するまで、関西電力の若狭の原発7基の運転を止めろ」という仮処分を大阪地裁に申し立てた。7月21日には第1回審尋が開かれ、次回の審尋は9月14日午前11時より大阪地裁で開かれる。当日は申立人の一人で福島からの避難者が避難の実際を法廷で陳述する予定だ(2020年7月21日大阪にて/写真=鈴木裕之さん)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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    コロナ収束まで原発を動かすな!

[座談会]天野恵一さん×鎌田 慧さん×横田朔子さん×吉野信次さん×柳田 真さん
    コロナ時代の大衆運動、反原発運動

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[報告]板坂 剛さん(作家/舞踊家)
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《北海道》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
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《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京》柳田 真さん(たんぽぽ舎、とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《浜岡・中部電力》沖 基幸さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
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◆大阪維新の「都構想」実現のための、野宿者強制排除を許すな!

西成の「あいりん総合センター」(以下、センター)周辺に野宿する人たちや支援者の団結小屋などが立ち退き(強制排除)の危機に追い込まれている。

8月5日、大阪府は、センター周辺の野宿者27名に「土地明け渡し」の仮処分を求め、大阪地裁に提訴した。それに先立つ4月22日、センター周辺の敷地は府の「公有地」であると主張し、22名に立ち退きを求めて提訴したばかりだ(本裁判の被告22名に5名追加した27名が仮処分断行の被告となった)。立て続けの提訴は何を意味するのか?

梅雨が長かったため、徐々にではなく一気に日焼けし、ヤケド状態になった野宿者の足(センター北側で)

現在閉鎖されているセンターは、閉鎖後も3階で営業する「医療センター」が移転したのちに解体を始め、2025年に新センターが完成する予定となっている。しかし4月22日提訴の「立ち退き訴訟」の本裁判が長引いた場合、取り壊しや建て替え工事の業者の入札などに遅れが生じるため、一気に仮処分を断行し、強制排除しようというのだ。(立ち退き訴訟第1回口頭弁論は9月1日、明け渡し断行の仮処分の審尋は9月4日に予定。但し、後者は非公開)。

提訴を受け大阪地裁は、2月5日、府の職員や西成警察とともにセンターを訪れ、裁判で訴えるなどと説明せず、通常の生活相談を装い、つまり騙して野宿者の名前を聞き出し「債務者」を特定していった。なんとも卑劣なやり方だ。しかも時間は午後0時45分から1時37分の短い間、昼間、仕事などで現場にいなかった人も多いのに。裁判という形式を整えるだけの杜撰なやり方だ。

◆大阪府の「強制排除」を後押しする釜ヶ崎の「まちづくり会議」

大阪府は、なぜこのような乱暴で拙速な手段で野宿者排除を進めるのか?

新型コロナウイルス対策では「アマガッパ松井」「イソジン吉村」と揶揄され、すべてが後手後手、無策・失策を連発し続ける吉村知事、松井市長だが、それもそのはず、彼らの頭にはコロナウイルスから住民を守る考えはみじんもなく、あるのは大阪都構想の実現と2025大阪万博の成功だけだ。そのため、都構想に深くリンクする「西成特区構想」を何が何でも成し遂げなくてはならない。

周知のように、センターは、昨年3月31日閉鎖予定だったが、労働者、野宿者、支援者らの反対で叶わず、4月24日の強制排除まで自主管理が続けられた。そのためセンター建て替えのスケジュールも大幅に遅れていた。

仮処分断行の訴状に書かれているように、今回の野宿者強制排除は、2016年7月26日第5回「あいりん地域まちづくり会議」で、センター建て替えが正式に決まったことから始まっているが、委員である西成特区構想有識者7名からは、昨年6月3日「早期の不法占拠解消の重要性」を主張する意見書も提出されている。

「再チャレンジできるまちづくり」などと綺麗事を並べるが、彼らの「まちづくり」とは、橋下元市長の「(再開発のために、釜ヶ崎の)労働者には遠慮してもらう」発言と同様、日雇い労働者、野宿者などの排除が前提ではないのか。

※[参考]note原口剛・神戸大学准教授「釜ヶ崎におけるジェントリフィケーションと強制立ち退きについての問題提起」

◆「全ての人に」の特別定額給付金からも排除された野宿者

強制排除までに野宿者を減らそうと「生活保護を受けるように」と説得にくる職員。「物件見に行こうか」と誘う職員も

新型コロナウイルス対策として、全ての人に一律10万円を支給する「特別定額給付金」の申請が概ね8月末でしめ切られた。当初から懸念されたように、釜ヶ崎でも一部給付されない人たちがでている。

「簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計へ支援を行う」として始まったこの制度は、当初より「住民登録」が前提とされていた。しかし様々な理由で、住民票を持たない、持てない人もいることから、私たちは「住民票を持たない人にも給付するように」と大阪市と松井市長に再三要望書を提出してきた(ちなみに6月17日提出した大阪市への要望書の回答が8月31日午後17時25分、釜合労組合事務所のFAXに届いた)。

5月26日放映のMBSの情報番組「ミント」で、釜ケ崎の野宿者と給付金問題を取り上げられた際、人権問題に詳しい南和行弁護士(大阪弁護士会)がこうコメントした。

「給付金について、ホームレスの人だから受け取る権利がないというのは間違いです。ホームレスの人にも受け取る権利がある。住民票のあるなしは、(給付金給付の)権利のあるなしの問題ではなく、どのように受け取るかの手続きの問題でしかない。
 それについて、この住民登録があるないだけで、権利があるなしかのように取り扱うのは間違いで、総務省は形式的な答弁だけではなく、どのように今回の給付金だけではなく、(様々な)補償などをいき渡らせていくかという、抜本的な問題をつきつけられていると思う。
 2007年大阪市の(住民票)強制削除の問題[注]が、今になっても影を落としているということは、この13年間何もホームレス対策をしてこなかったことのあらわれでもあります」。

※[注]2007年大阪市(住民票)強制削除問題=ドヤ(簡易宿泊所)などで住民票が取れない日雇い労働者に対して、大阪市が解放会館などに住民票を置くことを推奨しておきながら、2007年に2088人の住民票を一方的に削除した事件。

南弁護士のコメントで、住民票の有無は給付金給付の条件ではないことがはっきりしたが、総務省はその後も「住民登録」の条件を外すことはなかった。

◆野宿者にだけ「住民登録」を義務づけられるのは、何故だ!

総務省は、全国の市民団体などから寄せられた要望に対して、住民票がなかった人、失踪届けが出され戸籍から抹消されていた人らに対して、住民登録を行い、給付金申請にこぎつける方策を提示してきた。しかし、そこから漏れる人たちも少なくはなかった。

約1時間炎天下で待たせた野宿者らに「住民票がなければ申請書は受け付けない」と言う大阪市役所の中谷係長

8月18日、そうした様々な事情で住民票のない人たちが、釜ヶ崎地区内にある西成区健康福祉センター分会に給付金の申請に行った。分会の職員らは野宿者らを中に入れず、「申請は市役所に行け」と突き返した。

しかし申請にきた人の中には、今日明日の飯代に困り、電車賃すらない人もいる。そのため私たちは「釜ヶ崎の地区内で相談窓口を設けて欲しい」と再三要求してきたのだ。

炎天下で待ち続けること約1時間、ようやく大阪市役所の担当者らがやってきた。係長の中谷氏が、住民票を作るなどして申請を行う方法を一通り説明した。その後「それでも様々な事情で住民登録できない人が申請にきた。受け付けて欲しい」と要望したところ、中谷氏は「受け付けは行わない」ときっぱりこれを拒否した。

もちろん、このまま黙って引き下がるわけにはいかない。何度もいうが、住民票の有無は、給付金を受け取るための条件ではない。これまで総務省は、住民登録の有無は、給付金の「二重払い防止」のためと説明してきた。しかし、同じように住民票を移せないDV被害者らには、住民票なしで給付した例もある。その際、いったん加害者側にも給付され二重給付となるが、それについては「やむを得ない」としている。

様々な理由で、実家や家族と疎遠になったり、連絡出来ない、したくない野宿者とて同じではないか? 同じ方法を野宿者に適応しないのは何故だ!?

私たちは諦めず、次の闘いを準備している。ご注目とご支援をお願いしたい。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

◆横浜「馬車道駅」周辺──再開発とホームレス

「駅構内で新聞紙や段ボール、私物等を置いて居座ることは、駅をご利用されるお客さまへのご迷惑となるのでおやめください」。このような張り紙が、横浜市みなとみらい線「馬車道駅」構内に野宿する人たちの周辺に貼られたという。

駅周辺には昨今、地下2階、地上32階の超高層の横浜市役所新庁舎が移転したり、タワーマンションが開業したりし、急速に再開発が進んでいるとのこと。そうしたなか「駅にいるホームレスをすぐに追い出してほしい」「ホームレスがいるだけで不安」などの苦情が、6月頃から相次いでよせられていたという。

横浜といえば、82年~83年にかけて地下街、公園などで連続しておきた野宿者襲撃殺人事件が思い起こされる。当時は野宿者、ホームレスではなく「浮浪者」とよばれていた。逮捕された少年たちは、警察の取り調べに「浮浪者のせいで横浜が汚くなる」「横浜をきれいにするためごみを掃除した」などと供述したという。

彼らが、野宿者を「働かない怠け者」から「汚い」「社会のごみ」、更に「虐めていい人」と考え、襲撃のターゲットにしたのは、決して彼ら独自の判断ではないはずだ。彼らを取り巻く大人社会に溢れる「野宿者は社会のゴミ」とみる強烈な差別と偏見を、少年たちが敏感に感じ取り、襲撃行為に及んだのであろう。

◆大阪・釜ヶ崎でも進む弱者排除の動き

「野宿者は社会のゴミ」「町を綺麗にしたい」。こうした誤った見方をする傾向は、大阪維新の「西成特区構想」が進む釜ヶ崎でも確実に進行している。橋下徹元市長の「西成をえこひいきする」発言から始まった西成特区構想は、一方で「(再開発のために、釜ヶ崎の)労働者には遠慮してもらう」との発言でわかるように、この町に長く住む日雇い働者らを排除することを目的としている。そのため真っ先に狙われたのが、長年労働者の唯一の寄り所になっていた「あいりん総合センター」(以下センター)の解体だ。「耐震性に問題がある」として昨年3月末に閉鎖予定だったが、多くの労働者、支援者らの反対で閉鎖されず、その後労働者、支援者らで始めた自主管理は、4月24日、大阪府警と府・市の職員らが暴力的に排除するまで続けられた。

センター東側にも野宿する多数の人が……

西成特区構想は、労働者の寄り場を解体し、労働者・野宿者を暴力的に排除し、そこに出来た広大な跡地を使って新たな「まちづくり」をしようというものだ。

しかし、それは誰のためのまちづくりなのか? 昨今全国で流行する「まちづくり」は誰が主導するかが問題になると、釜ヶ崎に長く関わる島和博氏(大阪市立大人権問題研究センター)は語る。「『まちづくり運動』というとき、市民の『まちづくり運動』なんてありえません。誰が主導権を持って『まちづくり』を行うのかを考えないと、センター撤去で『みんなにとっていいまちづくりをやろうね』とやると、『西成特区構想』みたいなロジックに巻き込まれてしまう」(2019年1月5日シンポジウム「日本一人情のある街、釜ヶ崎が消える?!」)

パレード後、警官(後ろで手を組む作業着姿の男性)指揮のもと、配給物資を待つ労働者

前述したように、釜ヶ崎で進む「まちづくり」は、この町の主人公・日雇い労働者らを排除して進んでいることは明らかだ。時には強制排除など権力による暴力で、時には「町をキレイにしよう」という庶民の「善意」の掛け声で。

後者の一例が、西成特区構想ー「まちづくり」運動と軌を一にして、2014年から始まった「あいりんクリーンロードキャンペーン」である。同年「まちづくり会議」に参画を表明した大阪府警・西成警察署が、監視カメラ増設、官民連携による不法投棄の摘発、露店の摘発、覚せい剤事犯の摘発強化などを含む「5ケ円計画」の一環で始めたものだ。

警察主導のパレードは、町内会や「まちづくり会議」に参加する市民団体、NPOなどが一緒になり、「街をきれいにしよう」と地区内のごみを拾いながら歩き回る。最後に戻った三角公園では、パレードに参加した労働者にペットボトルのお茶の、下着やタオルなど日常用品が配られる。そのため多くの労働者、生活保護する受給者らも多く参加する。私は何度かその場面を直接見ているが、3人づつ並んで労働者を、若い警官が棒で区切って「よし、次の9人(3人3列)!」と号令をかける。間違って飛び出す労働者に「9人いうたやろ!」と怒鳴りつける。生活保護費も年々削られ、下着などなかなか買えなくなった労働者は、怒鳴られながらもじっと耐えるのだ。
 

釜ケ崎の中に出来たおしゃれなホテルが周囲の雰囲気をガラリと変えた。ロビーには若者たちが……

◆「街をきれいに!」と、野宿者を排除するジェントリフィケーション

ドヤのゴミ置き場が不十分だったり、外から車でゴミ捨てにくる人たちがあとをたたなかったり、ゴミ問題は労働者だけの責任ではなかった

「町をきれいにしよう」。異議を唱えようもない、きわめて一般的なスローガン。でもそれを、同じ地域に住み、かつては同じ飯場に寝泊まりし、一緒に働いたかもしれぬ労働者らに叫ばれるとき、道端でうずくまる野宿者らはどんな思いがするであろうか?

「叫びの都市 寄せ場、釜ヶ崎、流動的下層労働者」(洛北出版)の著者・原口剛氏(神戸大学准教授)は「反ジェントリフィケーション情報センター」の記事で以下のように解説する。

「ある地域がジェントリファイされ『安全で、清潔で、明るい』空間がつくりだされるとき、単に空間だけではなく、人びとの感性も変容する。つまり、資本によって組織された空間からの影響を受け、(資本の立場から見て)『安全で、清潔で、明るい』という感性を内面化してしまう。こうした感性の変容を下地に、地域の再開発を推し進める運動は組織される。釜ヶ崎におけるその例の一つは、『あいりんクリーンロードキャンペーン』という事業であろう。この事業は警察と推進協議会によって主催されており、地元住民、ボランティア、関係団体などが多数参加しているが、参加者は熱心に地区内のゴミを拾っている。おそらく、その根底にあるのは街をキレイにしたいという人びとの『善意』なのであろう。こうした『善意』が動員されつつ、地域全体が消費空間への志向性を高め、不快とされるふるまいは規律、排除されることによってジェントリフィケーションは推し進められていく」。

◆彼らがいかに野宿者を人間扱いしていないか

センターで休む野宿者を、大勢で取り囲み、退去を促す府と市と西成区役所職員(7月31日、稲垣氏撮影の動画より)

釜ヶ崎のセンター周辺の野宿者に対して、大阪府が「立ち退きせよ」と訴えた裁判が9月から始まろうとしている。2月5日、大阪地裁の執行官が、府や市の職員、西成警察を引き連れやってきて、野宿者から氏名などを聞き出し、今回23名を訴えてきた。聞き取りは、訴えるという目的も伝えない姑息なやり方で、しかもわずか1時間たらずで終わったという。野宿者の生死も含め、将来を決めかねない判断にわずか1時間たらず……彼らがいかに野宿者を人間扱いしていないかがわかる。

7月31日午前、市、府、西成区役所職員6人が再び野宿者の調査に来たという。現場に偶然居合わせ、その様子を撮影した釜ケ崎地域合同労組の稲垣氏によれば、府職員が「ここ危ないよ。どいて」と大袈裟に怒鳴って回り、それを受けた区役所職員が「今なら生活保護受けれます」と勧誘していたという。裁判前に一人でも多くの野宿者を減らしたいためだ。

最後に、釜ヶ崎同様、野宿者を強制排除して進められ、先日開業した渋谷「ミヤシタパーク」について、釜ヶ崎の「まちづくり会議」の委員を務める白波瀬達也(桃谷大学准教授)氏がこうつぶやいていた。「新今宮駅周辺も賑わい創出が議論されているけど、この記事のような帰結にならぬよう留意しなければならない。賑わいが悪いわけではない。誰にとっての賑わいなのか、その質が問われている。社会的排除を生まないと都市政策、まちづくりが展開されるべき」。

何を呑気なことを呟いているのだ。あなたも理事を勧める「まちづくり会議」で、センター周辺の野宿者が強制排除されようとしているではないか。足元で火事が起こっているのに「火事を起こさないように気をつけよう」などと言ってないで、一緒に消火活動をやってくれ。「野宿者排除を許すな」と一緒に声をあげてくれ!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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◆大阪維新は、センターからの野宿者追い出しをやめろ!

7月6日、昨年閉鎖されたセンター前に組合のバスを置く釜ヶ崎地域合同労組や、北西角に団結テントを設置する仲間に、「土地明け渡し請求事件」の訴状などが届いた。「出ていけ!」と訴えるのは大阪府だ。コロナ災いが続く中、センターから野宿者を追い出したいのは、都構想とリンクする西成特区構想を前に進めたいがためだ。

西成あいりん総合センンター(以下センター)は、昨年3月31日閉鎖予定だったが、当日大勢の労働者、支援者が「シャッター閉めるな」と声をあげたため閉鎖できなかった。翌日から始まった自主管理活動には、全国から支援の声・物資・カンパなどが届けられた。4月24日、国と大阪府は警察がタッグを組み、センター内の労働者らを暴力的に排除したが、それ以降も大勢の野宿者がセンター周辺や釜合労のバスで寝泊まりし、炊き出しや寄り合いなどの支援活動も続けられている。

そんな中、今年2月5日、大阪地裁の執行官は、大阪府、市の職員、警察とともにセンターを訪れ、野宿者に土地と荷物などを「執行官に引き渡せ」という「仮処分決定書」を手渡し、野宿する路上に「告示書」を打ち付けていった。

大阪府はこの申し立てを、昨年12月26日に大阪地裁に行っているが、その3日前の23日には、センター解体後にできる広大な跡地をどうするかを検討する「まちづくり会議」で、センターに入っていた2つの労働施設、「あいりん職安」と「西成労働福祉センター」(現在、隣接する南海電鉄高架下に仮移転中)を、跡地の南側に移転することが決まったばかりである。国道に面し、使い勝手や立地条件の良い北側の広大な跡地には、観光バスの駐車場やタクシー乗り場や外国人向けの屋台村を作るなどの案が出たという。

そもそもセンターは1970年、「あいりん地区の日雇い労働者の就労斡旋と福祉の向上」を目的に設置されたものだ。中には2つの労働施設の他に、水飲み場、足洗い場、シャワー室、洗濯場、娯楽室など最低限のライフラインが備わっていたうえ、地区内では毎日どこかで炊き出しが行われていることから、職や住処を失った人も、ここに来れば、どうにか生きていくことができた。しかし新たにつくられようとしている「まち」には、そうした労働者の居場所はない。

数日前から夜遅く、店近くで野宿を始めた60代男女。10万円が給付されたらドヤに入る予定だが、訳あって生活保護は受けたくない

◆大阪維新行政・だまし討ちの手口

釜ヶ崎を追い出された労働者はどこへいけばいいというのか! 長引くコロナ禍のもと、苦境に立たされている若者や非正規雇用労働者を助けることも重要だが、そのためにもともと釜ヶ崎にいる野宿者やおっちゃんらを切り捨てる、あるいはそれに加担することにな るのであれば、元も子もないだろう。

訴状には稲垣浩氏ほか21名(計22名)の氏名が漢字かカタカナで書かれているが、これは昨年11月、大阪府や大阪市の職員らが、福祉相談を装って名前を聞き出したものだという。しかしその際、本人には何に使うかなどの説明はなかったという。自分が訴えられるなら、名前を明らかにすることに躊躇した人もいるはずだ。自分の名前が書かれた「告示書」が目の前に釘で打ちつけられ、怖くなり他の地に移動した野宿者もいる。だまし討ちのあまりに酷いやり方だ!

◆労働者の健康など全く考えていない大阪行政のご都合主義

閉鎖前、早朝センターのシャッターが開くと、大勢の人たちが荷物を運び入れ、ゆったり一日中過ごしていた。その数は1日50人から80人。野宿者だけでなく、働けなくなり生活保護を受けるようになった人たちも、大勢センターに集まっていた。「Aはたいがい2階の娯楽室で将棋さしてるで」「Bを探してるんか? アダチ(センター前の酒店)の前に夕方いるで」「次の日曜日、三角公園でプロレスあるで。もちろんタダや」等々、センターはまさに仲間とつながり、情報を交換し合う社交の場だった。

センター閉鎖後、行政はそうしたセンターの代替場所の1つとして、センター南側の萩の森跡地に居場所を作った。運動会で使われる白いテントを数張り置いただけだが、雨の日も真夏でも労働者は集まってきた。その萩の森跡地のテントが最近、「整備のため」と撤去され、近くの萩の森北公園(旧仏現寺公園)に移された。しかし3、4張りあったテントは1張りだけ。未だコロナ禍は収束せず、感染拡大の危険性が叫ばれる中、テントは結構「蜜」な状態だ。行政が、釜ヶ崎の労働者の健康や体のことなど全く考えていない証拠だ。

聞けばこの公園は、1977年、炊き出しや寝泊りしていた労働者が、大阪市に行政代執行で追い出された所だ。それ以降は子供達の遊び場として遊具が設置され、朝鍵が開けられ晩には鍵がかけられていた。それが今回は「居場所に使え」だと。行政の都合で「不法」になったり、「適法」になったり、ご都合主義も甚だしい。

センターの代替場所だった萩の森公園跡地が閉鎖され、新たに作られた代替場所。テントは一張りのみ。結構「密」だ

◆コロナより都構想の大阪維新の給付金対策とは?

コロナ対策の特別定額給付金の支給も大阪が一番遅れている。大阪都構想を進める副首都推進局の職員数80名以上に対して、特別定額給付金を担当する市民局の職員数が18名と非常に少ないことも理由の1つだろうが、市民局がどこにあるかも「非公開」にするなど、吉村知事、松井市長のコロナ対策はあまりにいい加減過ぎるからだ。

現在、様々な団体、個人などが「全ての人に給付金を支給するように」と訴え、交渉を続けている。直近の交渉で大阪市は、NPOやシェルターなどに住民票を移し、申請書を受け取る案で調整中だそうだ。それで給付金が受けれるならば、大いに利用すればいいが、問題なのは、その後そこに居住実態がない場合、再び住民票を削除するということだ。

これはかつて、大阪市が、住民票のない労働者らが各種資格、免状、日雇い労働者被保険者手帳などを取得する際に、釜ヶ崎開放会館や市民団体の住所に住民票を置くことを積極的に勧めておきながら、2007年一方的に2088名の住民票を強制削除したことと同じことではないか?

私が弁当を配り始めた5月頃、センター南側の路上で、開放会館においていた住民票を削除された労働者に実際会った。あれから13年経ち高齢化したため、野宿しながら、銅線、鉄、アルミ缶などを集め、日に千円稼ぐのが精いっぱいとこぼしていた。大阪市はまずは、この2088名の住民票を復活させろ!

2007年、解放会館に置いていた住民票を勝手に削除された男性。銅線、アルミ缶など集め、1日千円稼ぐのがやっと

7月15日の弁当。昨夜出会った男女に渡すことができた

このままでは、給付金がもらえない人が出てくることは必至だ。何度もいうが、おぎゃあと生まれた赤ちゃん、DVで住民票がある場所から避難する人、無戸籍者にも給付金は支給される。住民票がない人に対して、住民票すらまともにとれない酷い生活をしてきたから「自業自得」という人もいるが、じっさいに何らかの罪を犯し刑務所に服役する人も、そして労働者の血税を好き放題むしり取る悪の親玉、安部や麻生にも一律に支給されるのが給付金だ。それなのに、なぜ住民票がないくらいで、給付金支給の権利が奪われなければならないか? すべての人に給付金を渡すため、大阪市は1人1人の野宿者から氏名を聞き出し、戸籍などを確認する作業を必死で行え!

住民票がないとの理由で、給付金が支給されない人が出ることになれば、「全国すべての人々へ」という給付金支給の理念を著しく逸脱する大問題になるだろう。


◎[参考動画]仕事も住民票もないホームレスたちに“10万円”は届くのか…「西成・あいりん地区」で弁当配り見守る女性の活動(2020年5月26日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』2020年8月号【特集第4弾】「新型コロナ危機」と安倍失政 河合夫妻逮捕も“他人のせい”安倍晋三が退陣する日

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

今から26年前の1994年、12月17日午前7時55分、大阪府警本部に一台の乗用車が突入し、運転していた男性が現行犯逮捕された。男性は東警察署で取り調べをうけたのち二度にわたり精神鑑定をうけ、その後大阪府立中宮病院の閉鎖病棟に放り込まれた。

1994年12月17日付け産経新聞

1994年12月18日付け大阪新聞

私がその男性・森山光博さん(現在62歳)を知ったのは、事件から2年後の1996年、大阪市内千日前の派出所に、ホームレスの男性が放火した事件がきっかけだった。放火した男性・冨村順一さんは裁判で、南警察署が倒れたホームレス仲間を放置し見殺しにしたことに抗議し、ガソリンを撒き火をつけ、火中に自ら座りこみ、自殺するつもりだったと証言した。

冨村さんといえば、沖縄県出身の活動家、著述家で、天皇制反対を訴え「東京タワー事件」などを起こした人物だ。私は、彼が難波の高島屋前でシェパード犬2匹を引き連れ、自身の書籍を販売していた時に出会った。冨村さん逮捕を知った私は、彼が懇意にしていた沖縄出身のスナックのママや常連客らと救援会を作り、裁判の支援を始めた。その裁判の過程で知り合った人物が森山さんで、彼は冨村さんに紹介され、大阪府警のスパイ(協力者)として活動していたと話していた。

◆森山さんをスパイに仕立てた府警本部の大山、山下刑事

森山さんは思想的には保守系だったが、当時街頭で宣伝活動をする冨村氏にあこがれ、自らも街頭宣伝したいと考えるようになったという。1989年5月頃から難波駅前で冨村さんの隣で街宣を始めた森山さんは、冨村さんに大阪府警本部の井上を紹介され、後に井上から大山、山下刑事を紹介された。年かさの大山が40代半ば、山下が森山さんと同じ30代半ばだったため、その後の連絡は山下が担当することになった。

2人からたびたび飲食の接待をうけるようになったころ、森山さんは大山に「我々警察が『正義』と思うか、それとも爆弾闘争をも辞さない極左が『正義』と思うか?」と聞かれたり、「勉強しろ」と左翼関連の書物を貸与されるなどした。

その後「勉強のために」と称して反天皇制や三里塚の集会に参加することを勧められた。もちろん彼らの目的は内部の様子を探ることだ。事後の打ち合わせで小さな切手ほどの顔写真を見せられ、「集会でこの人物がいたかどうか?」などと質問されることがあったが、会場で周囲を見回し顔を覚えておくことなど到底無理だった。また集会の受付では必ず名前、住所を記帳し、団体の郵便物が届くようにと指示されるが、そういう集団に住所などを知られる不安を常に感じていた。

またこの頃、失業中だった森山さんは、山下から茨木市にある松下電器の下請け工場を紹介されたが、慣れない作業で長くは続かなかった。その後もときどき飲食など接待され、山下とは関係が続いていった。彼らに受けた接待の中で、一番高額だったのは、山下と行ったキタのピンクサロンであった。

◆協力者を捨て駒のように扱う大阪府警

ある日、森山さんは山下からある集会への参加を頼まれた。「一般に広く参加をよびかけた市民集会だ」と言われたが、実際は会場も狭く、少人数の閉鎖的な集会で、森山さんは「これでは、自分が何者かと疑われるのではないか?」と恐怖を覚え、大山、山下にそのことを電話で抗議した。2人に呼び出され話し合った喫茶店で、森山さんは2人に警察手帳の提示を求めたところ、大山も山下も偽名であったことが判明した。「自分は本名を名乗っているのに、最初から偽名とわかっていたら、協力などしないのに…」。森山さんの不満や不審が次第に募っていった。しかし、2人に「いざというときには、我々が全力で助ける。君は我々警察をしてくれれば良いし、信用できない筈もないだろう」と説き伏せられ、関係が続いた。

ある日、山下に泉南地区のゴルフ場に誘われてプレイしてきた帰り、ある集会への参加を依頼された。しかし、そこはかなり過激な団体だったため、森山さんは断った。その後山下らとのホットラインで使っていた電話に、関係を断ち切る旨の電話を何度かするが、適当にあしらわれることが増えたため、いよいよ関係をやめなければと考えるようになった。

森山さんは、山下の依頼で入会した左翼団体の会費の建て替え分を精算して欲しい旨を簡易書留で送ったところ、山下に呼び出され、金を精算したあと、こう言われた。「もりちゃん、このことは一生胸の内にしもうといてや(しまっておいてや)。口外したらもりちゃん自身に危険が及ばんとも限らへんからな……」。恫喝とも取れる言葉に森山さんは何も言わず、黙って別れた。

警察との関係が続いていた突入事件(1994年12月17日)の2年ほど前、会社勤めをしていた頃の森山光博さん

◆26年ぶりの訴え

その後、森山さんが個人的に活動する中で警察に通報される騒ぎがあった。森山さんはそこで刑事に自分は大阪府警のスパイを行なっていたことなどを話した。「口外したらもりちゃん自身に危険が及ぶとも限らへんからな」。山下の言葉が思い出され、不安になった森山さんは、再び府警本部に電話し、身分の保証などを訴えたが、取り合ってもらえなかった。そして森山さんは、一層のこと「事件」を起こし、逮捕され、裁判で全てを明らかにしようと考えるに至った。それが冒頭の「事件」を起こした理由である。

しかし、大阪府警は、事故を起こした森山さんを「精神異常者扱い」し、精神病院へ送り込んだのである。森山さんは、この処遇について、昨年12月、26年ぶりに国と大阪府に対して国家賠償請求と措置入院の無効を求めて提訴した。具体的に何を訴えているか、森山さんにお聞きした。

森山光博さん近影

「大阪府警本部の正面玄関奥に乗用車に乗ったまま進入した私は、建造物侵入と損壊の罪で現行犯逮捕されました。ところが裁判で全てを明らかにしようと考えていた私は、その刑事裁判を受ける権利を否定され精神病院に送られてしまいました。 事件は26年前のことなので、時効などの規定により、国家賠償請求は認められないと承知の上で、少なくとも措置入院(精神病院への強制入院)の処分の無効の確認判決だけは勝ち取りたいと、昨年12月16日に本人訴訟で訴状を大阪地裁に提出し受理されました。
 被告の国と大阪府は、原告の主張する事実関係や、提示した証拠能力を積極的に争う姿勢は示さず、予想通り国家賠償請求権の時効などによる消滅を主張し、措置入院の処分の無効についても、措置は解除されているのだから、たとえその経歴が残っても、訴える理由がないと主張しています。
 裁判の情勢は芳しくありませんが、私が訴えたいのは、警察は一般人を、危険を伴うスパイとして利用するだけ利用し、必要なくなるとすっぱり切り捨てる組織であること、それを主張するために「事件」を起こした私を「精神異常者」として精神病院に送り込み、私の刑事裁判を受ける権利を奪ったことが許せないということです」。

筆者はほかに、石川県警のスパイをさせられた男性が、その後覚せい剤使用の罪をでっちあげられ逮捕された件について、えん罪であると主張して起こした裁判を支援してきた。一市民を捨て駒のように利用して行う警察の違法な捜査などが許せないからだ。引き続き、この裁判の行方に注目していきたい。

◎第2回口頭弁論期日 7月9日(木)午後13時30分~ 大阪地裁806法廷

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』2020年8月号【特集第4弾】「新型コロナ危機」と安倍失政 河合夫妻逮捕も“他人のせい”安倍晋三が退陣する日

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

福島第一原発で増え続ける汚染水の処分問題が大詰めを迎えている。福島第一原発事故で破損した原子炉を冷却することで発生する放射性物質を含む汚染水は、1日約150~170トンで増え続けるため、敷地内の貯蔵タンクも、2022年夏頃には満杯になると予測されている。

経産省は、2013年から汚染水の処分方法について、希釈して濃度を下げて海に放出、水蒸気にして大気に放出、地下深くに埋設などの五つの方法について技術的な検討をはじめていた。今年1月31日、経産省資源エネルギー庁の「多核種除去設備など処理水の取り扱いに関する小委員会」は、海洋放出と大気放出の2案について「前例がある」ことを理由に前向きに進めるとした案をとりまとめ、2月10日「より確実に処分できる」として海洋放出を具体的に提言した報告書を公表した。

◆西尾正道氏が指摘するALPS処理汚染水の危険性

汚染水について経産省は、放射性セシウムや放射性ストロンチウムなど62種類については「多核種除去設備」(ALPS)でほぼ除去され、トリチウムのみが残存するとしてきた。さらに「自然界にも存在し、全国の原発で40年以上排出されているが健康への影響は確認されていない」「トリチウムはエネルギーが低く人体影響はない」と安全性を強調してきた。

しかし、北海道がんセンター名誉院長・西尾正道氏からは、低濃度でも人間のリンパ球に染色体異常をきたすこと、原発の下流域に小児白血病やダウン症、新生児死亡などの増加していること、トリチウム放出量が多い加圧水型原子炉の玄海原発(佐賀県)や泊原発(北海道)の周辺地域で、稼働後白血病やがんでの死亡率が高まったことなどが報告されている。

しかも2018年9月には、処理後に残存するのはトリチウムだけではなく、ストロンチウム90、セシウム137、ヨウ素129などが基準値を超え、保管量の7割に残っていることも明らかにされた。海洋放出する際には二次処理を行い希釈するというが、薄めたとしても、トリチウム始めほかの62核種が、世界規模の環境汚染、そして漁業などへ「実害」をもたらすことは必至である。

◆地元で高まる「海洋放出反対」の声

政府は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国で自粛が続く中、今夏にも処分方法を決定したいがため、4月6、13日、5月11日、6月30日に限られた団体・関係者のみを集めて意見聴取会を強行した。

この中で、福島県漁業協同組合連合会、福島県森林組合連合会、福島県農業協同組合中央会は2案に対して明確に反対を表明し、その他の関係機関や自治体首長からは、もっと多くの県民に説明をして意見を聞くべき、必ず起きる新たな風評被害に対する具体策を提示するべきとの発言が大半を占めた。

処分方法を提言した報告書に対して、福島県内59の市町村議会の中から反対の声があがり、6月25日時点で会津若松、いわき市、喜多方市、相馬、郡山市、三春町など19市町村議会が、国に対する「海洋放出反対」「風評対策要望」などの意見書を可決した(ほかに継続審議が1市)。

また漁業関係者では、全国漁業協同組合連合会が6月23日の通常総会で「海洋放出に断固反対する特別決議」を全会一致で採択、コロナ禍の感染拡大防止の自粛活動が進むなかで、一部の関係者が一方的に議論を進めていることに対して「強い不信と憤りを禁じ得ない」と怒りを表明した。さらに26日福島県漁連も「海洋放出に断固反対する」とする特別決議を全会一致で承認した。

6月23日の福島県議会開会日に、福島県議会にも反対の意見書提出を請願した時のスタンディングの様子(大河原さきさん提供)

◆三春町在住・大河原さきさんに聞く汚染水問題

汚染水の海洋放出について、何が問題かを、福島県三春町在住で「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会・三春」の大河原さきさんにお話を伺った。

── 汚染水問題で福島県内では次々と議会で反対決議などがあがっています。具体的には「海洋放出反対」から「風評対策要望」などと、地域によって温度差などがあるようですが?

三春町議会に提出された汚染水の海洋放出に反対する意見書

大河原 地域の温度差ではなく、町村部は住民の意見を反映しやすく、反対や長期保管を求める意見書となったのは町村議会が多いです。陳情や請願を行った団体は「海洋放出反対」の意見書を求めていたと思いますが、市部の議会は自民党議員が過半数を占めるため、「反対」や「陸上保管」などを引っ込めて、自民党案の「風評対策の拡充要望」を加えるなど、苦渋の駆け引きとなったところもあり、意見書提出が否決されるより、可決されることを選んだ結果です。

── 実際は福島だけではなく、日本全体、そして地球規模で論議される必要があると考えますが?

大河原 その通りです。福島県は原発事故の被害県であり、県民は被ばくや避難を余儀なくされました。また第一次産業でなりたっていた県ですが、農畜産物、海産物の市場価格は下落したままです。福島原発で発電された電力はすべて関東地方に消費されているのに、事故による放射性廃棄物である汚染水処分が、福島県の問題であるかのようにされているのは間違いです。これは原発を推進してきた日本政府が責任を取らなければならない問題です。

また原発稼働が続く限り、今後各地で起こりうる問題として、日本全体で考えなければならないと思います。今回の意見聴取会のように、政府が指名した団体だけではなく、またパブコメのように一方的に意見を書いて送るものでもなく、意見を述べたい人が誰でも述べられる公開の場をつくるべきです。原発事故によって既に大量の放射性物質を海に流してきた日本に対し、国際的な批判もある中で、海外からの意見を聞く場も公開で設けるべきです。

6月23日の福島県議会開会日に、福島県議会にも反対の意見書提出を請願した時のスタンディングの様子(大河原さきさん提供)

── 政府はこのコロナ禍でも意見会を強行するなど、処分方法決定をかなり焦っていると思えますが、何故だとお考えでしょうか?

大河原 国内外で海洋放出に安泰する人々がコロナ禍で動けず、全国的、国際的な問題になる前に、すべての関心がコロナに向いているこの機会に、「海洋放出」という、一番安価で簡単な方法を、急いで決定したかったのだと思います。それに対しては、国連人権理事会の特別報告者も、6月9日に「処理水の海洋放出に関するいかなる決定も、新型コロナウイルスの感染拡大がひと段落するまで控えるよう求める声明を発表して、釘を刺したほどです。

◆「日本政府と東電は、陸上での長期保管の用地確保のための努力をせず、漁業者を犠牲にする形で海洋放出しようとしています」(大河原さん)

── 最後に、汚染水問題で全国の皆さんに訴えたいことをお聞かせください。

大河原 原発事故によって発生した汚染水問題は、福島県の問題でなく日本全体の問題です。日本政府と東電は、陸上での長期保管の用地確保のための努力をせず、漁業者を犠牲にする形で海洋放出しようとしています。

これを食い止めるための1つの方法として、皆さんがお住いの地方自治体議会からも、海洋放出に反対する意見書を国に提出するために、9月議会に陳情や請願をしていただけませんか? 県外からの意見書が沢山出てくることで、福島県だけの問題ではないということが具体的になると思います。

4月20日に国連人権理事会の特別報告者から、汚染水の海洋放出に関する申し入れがありましたが、日本政府からの回答がなく、前述したように、6月9日、特別報告者から生命が出され、政府は6月12日に(あわてて)回答を発表しました。

回答に「7月15日までの書面での意見募集(パブリックコメント)を行っている」と書いてあり、6月15日が締め切りだったのに、経産省のホームページにも6月12日急に1カ月延長したことが掲載されました。「市民の意見を聞いている」とやってる感を見せるためだったようです。ともあれ、全国からの海洋放出反対のパブコメをたくさん経産省に寄せてください。

経産省ウェブサイト「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場 及び 書面による御意見の募集について」
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/index.html

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

『NO NUKES voice』Vol.24
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定価680円(本体618円+税)A5判/148ページ

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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

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