◆前回のあらすじ

敗戦直後の伊豆大島は、GHQの命令によって日本本土から切り離される可能性があった。そこで島民たちが独立・建国について真剣に議論した時があった。この時に「大島大誓言」と呼ばれる憲法を、島民たちが作成した。彼らの職業は大工や茶屋の店主、教師などであり、法の専門がいない中でこのような大事を成し遂げたのは非常に注目に値する。最終的に伊豆大島は日本政府の統治領域に含まれることになり、独立論は消滅した。

◆今こそ伊豆大島独立論を再考すべき時

ナショナリズムの観点からしか独立・建国はできないのか?

ここまでで、戦後の伊豆大島で本気で新しい国を興そうとした動きがあったことを述べた。この伊豆大島独立論は、今を生きる私たちに何らかの示唆を与えてくれるかもしれない。

琉球諸島では、米軍基地問題に関する日本への不満から独立を模索する動きが出ているが私たちも独立や建国といった手段を考察してもいいはずである。それは原発再稼働や共謀罪の成立によって、「本土」にいる私たちも既に危険な状況にいるからである。

そのためには、今の「国際社会」の在り方を相対化する必要がある。今の主権国家体制にとらわれるままでは、建国は困難である。なぜなら、今日の国家はいわゆる「国民国家」でありナショナリズムによって形成されているからである。ナショナリズムとは「政治的単位と民族的単位は一致すべき」とする政治原理である。この考えに基づくと、琉球諸島は琉球民族・先住民族という理由から独立できる。しかし、原発で苦しむ福島やあるいは安倍に不満を持つ日本各地の日本人が「独立」と主張しても、「政治的単位と民族的単位は一致すべき」とするナショナリズムの観点から容認されない。国連などが支持しないばかりか最悪の場合は「テロリスト集団」と呼ばれる。

さらに主権国家体制は国家間のカルテルである。それぞれの国々が承認して初めて「正式に」国家と認められるのである。したがって、私たちが新しい国を建国して優れた行政機関や経済体制を構築しても、「正式に」国家と承認されなければ「国際社会」から排除される。例えば、台湾は領域・国民・政府を持ち事実上、国家である(それも先進国レベル)にもかかわらず、中国の圧力で「国際社会」で承認されないので国家と見なされない。一方、シリアのアサド政権のように自国民を平気で戦闘機で爆撃するような、ならず者国家であっても、この国家カルテルのおかげでシリアにおける「正当な」国家とみなされるのである。

そもそも他の国家が承認しないと、「正当な」国家と認められないとは非常におかしなことである。国家を構成する最低要素は、領域・国民・政府なのである。過去の歴史を見れば「承認」自体が存在しない事例の方が圧倒的に多い。

謁見を受ける太平天国の王・洪秀全

例えば、清末の中国で15年にわたり存続した革命政権の太平天国は、清朝政府からはもちろん容認されず、周辺の日本・朝鮮も太平天国を正式に国家と認めるようなことはせず、テロリスト集団のように見なしていた。しかし、長江流域を支配し何十万もの人民を従え、キリスト教思想に基づいた半場神権的な統治体制を敷いていたのであり、それはもはや国家であった。

時代は下って、イラクとシリアに跨る領域にカリフ制国家の再建を宣言したイスラーム国(IS)も、残虐行為から嫌悪され国家と見なされることはなかった。しかし、一時期イギリスに等しい領域を支配し、そこの住民を支配し、サラフィー主義=ワッハーブ主義に基づく政治体制を敷いており国家建設の計画書まで作成していた。その実態は国家であったと言える。以上、これらの理由から「承認」がなくても構成要素があれば国家は成り立つのである。

私たちは主権国家体制を徹底的に相対化し、これまでの国家体制とは違うオールタナティブなシステムの構築が必要である。パスポートの不要、移住の自由化、国家による教育禁止、国籍による生活における待遇の禁止、ナショナリズムの禁止など……。今の世界各地の状況を見ても、主権国家体制はほころびを見せ始めている。EUにおける反難民の動き、トランプによるメキシコとの国境での壁建設、破綻国家化したシリアやイラクからの住民の脱出……。

私たちが目指すべきは、抑圧のないアナーキズムな社会である。そのためにも今の日本国家から抜け出し、自分たちで新しい国を興すことを真剣に議論しなければならない時に来ていると言える。(完)

◎かつて存在した伊豆大島独立論 残されたのは”建国”か
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30013
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30022

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

◆丸山穂高議員の発言は「失言」でなく、「本音」である

 

丸山穂高議員のHPより

過日、「日本維新の会」所属の丸山穂高議員が、「北方領土を取り返すには戦争しかない」との趣旨を発信し、「日本維新の会」から除名された。あらまあとしか言いようがないが、丸山議員は「失言」を発したのではなく、本音を発信したとわたしは考える。

そもそも「失言」によっての党籍除名や議員辞職勧告はおかしいのではないか。丸山議員の発言は失言でも、勘違いでもなく、本心がポロリと出たのであり、あの高須クリニックの院長先生も応援しているではないか。

本当の問題はこのような議員を当選させてしまっている、いまの選挙制度、政党の体たらく、さらには有権者の見識のなさではないのか。候補者や議員の本音こそが問題にされるべきではないか。

◆安倍晋三の「本心」をわれわれはもっと検証・議論すべきである

政治家は「失言」により、失脚することが多いが、「失言」よりも「本心」のほうが大切ではないだろうか。安倍晋三を例に挙げれば「さらなる軍備増強を図り、核武装をしたうえでアジア諸国を威嚇し、かつての大東亜共栄圏に匹敵する覇権を日本は握りたい。

そのためには国民の権利を大幅に奪い、緊急事態条項を設け、戒厳令を敷ける法整備を行い、天皇を元首と明記し、政権が使いやすい道具としてその存在を再規定したい」といったところであろうか。

こういった本音に接したら(接しても)安倍自民党に投票する人が多数なのであれば、仕方ない。もう希望などはない。けれども「え! そんなことまで考えてるの?」と多少はいぶかる方々も出ては来るのではないだろうか(極めて根拠の薄い期待であるが)。本来メディアの仕事は政治家の本心を探り出し、報じることであるのではないかと思うが、いかにも機能不全の度が過ぎる。

◆関西ネオリベの起源と拡大──「松下政経塾」から「維新」へ

さて、丸山穂高議員は東京大学後、経産省に勤務し、原子力保安院などを歴任したのちに退官。かの「松下政経塾」の出身者でもある。政界における「松下政経塾」出身者とは、改憲を志向し、時代錯誤な「日本誇大妄想」をいまだに抱き続ける困った人たち(本当は別の表現を使いたいところではあるが……)の集団である。

そして「維新」勢力は、総論自民党の主張とかわりないものの「なにか新しい」と勘違いさせるのに長けた連中である。「維新」の政策と自民党の政策を横に並べてみるがいい。ほとんど変わりはしないことが一目瞭然だ。

かつて橋下徹氏が大阪府知事選挙に出馬した際になにを連呼していたか?「地番沈下した大阪経済を活性化させるために、ヒト・モノ・カネを大阪に集めて……」である。なんのことはない。すでにその機能が失われた、従来の集中都市型の成長神話(高度成長期に時代の発想)を周回遅れで、連呼しているに過ぎない。「ハコもの、イベント」戦略だ。

そこにカジノがプラスされることだけが新しい(たちが悪い)。21世紀になって「万博」を呼んでどうする。黒字の地下鉄を民営化するのはなぜだ。津波が来たら一番最初に被害にあい機能不全が確実な咲州庁舎は災害の時に混乱要因ではないのか……。大阪をめぐる問題は数多いが本質的な問題に迫る言論はまれである。本通信に釜ヶ崎の問題を連続して報告してくださっている尾崎さんの活躍が際立っている。

◆「世襲」自民と「ネオリベ・エリート」維新が「改憲」で繋がるファッショ

 

大阪維新の会の主要役員(大阪維新の会HPより

さて、自民党と「維新」勢力唯一の違いは、自民党に在籍すると世襲議員が優遇される傾向が強いが、「維新」は歴史が浅いので、世襲ではない議員が比較的多いことくらいである。それにしても戦慄すべきは、1984年生まれの丸山議員は東大から経産省とエリートコースを邁進してきたわけだが、霞が関には丸山議員と似たような考えの官僚が、かなり生息しているであろうと推測されることである。

これは根拠のない推測ではない。わたしはある若手の高級官僚が自身の実名Facebookで、被疑者の「殺処分」(死刑以前に殺してしまう)を提案している事実を知り、当該部署の責任者に取材し見解を求めたが、責任者はその重大さに気が付くのに30分近くかかった経験がある。

見ているがいい。わたしは、金輪際望まないが、もし「改憲」がさらに現実味を帯びてきたら、自民党と「維新」は仲良く手をつなぐに違いない。「新自由主義」と「軍国主義」を指向し、アジア蔑視を徹底する点で、自民党も「維新」も何の違いもない。であるのに、いまだに「維新」幻想から覚めない方々が少なくない。本コラムの筆者にもそのような方はいらっしゃる。わたしにはまったく理解のできない感性である。

あるいは東京にお住まいの方や関西以外の方々にはあまりリアリティーがないかもしれないが、大阪市議会の会派別構成を見れば、その尋常ではない様子がご理解いただけよう。大阪市議会の定数は88人。うち「大阪維新の会」が51人、自民党が16人、公明党が15人、共産党が2人、旧民主系が2人、諸派2人だ。国政では与党の自公プラス「維新」で9割以上の議席が占められているのだ。この構成比は大阪府議会も大きく変わりはしない。

府政与党と国政与党が9割の議席を超えれば、「少数意見」などまったく府政には反映されない「異常事態」と本来は大騒ぎにならねばおかしい。政界を引退したと自認する、橋下徹のコメントなどをマスコミは喜んで拾うべきではないのだ。中国や朝鮮は形ばかりの「選挙」を行い、その欺瞞ぶりは誰の目にも明らかであるが、この島国では、一応民主的な選挙を行っても、大阪では極右と国政与党勢力に9割の議席が与えられる。

久しぶりにタバコが吸いたくなった。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

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〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

現在、日本の都市部では、街中の至るところに防犯カメラが設置されている。このような状態を「監視社会化が進んでいる」として、嫌う人は少なくない。

だが、私は正直、監視社会化が進む現在の状況をいちがいに否定できないでいる。過去に様々な殺人事件を取材してきた中、「もしも、あの場所に防犯カメラが設置されていれば、防げたのでは……」と思うような事件がいくつも存在したからだ。
ここで紹介する、16歳の少女が殺害された事件もその1つだ。

24時間営業の店が色々ある現場界隈。地下道は「死角」だったようだ

この非常ボタンは事件当時も存在したが、悲劇を防げなかった

◆事件から19年、犯人はいまだ捕まらず

事件は2000年1月20日、広島市の中心部からそう離れていない、西白島町で起きた。現場は、国道下を通る、地下道であった。

被害者の少女は、この日の深夜、タクシーで自宅近くまで帰り、コンビニで買い物をした後、帰宅しようと午前3時50分頃、地下道を利用したとみられている。そしてこの時、何者かに刃物で刺され、生命を奪われたのだ。

現場の地下道周辺は、少女が買い物をしたコンビニのほか、ファミレスやファーストフードショップが24時間営業している。そんな中、地下道はまさに「死角」になっていたようだ。

事件から今年1月で19年を迎えたが、犯人はいまだ捕まらず、未解決。広島県警はホームページで情報提供を呼びかけ続けている。

事件後、現場の地下道に設置された防犯カメラ

◆事件後、市は11の地下道に防犯カメラを設置

もっとも、そんな事件の現場を訪ねると、今は地下道の数カ所に、存在感のある防犯カメラが設置され、まさに通行人たちを睨みつけているような様相だ。そこで、広島市に問い合わせてみたところ、この事件が起きたのち、この地下道を含む市内の11の地下道に防犯カメラを設置したのだという。

そのおかげか、この事件が起きてから20年近くになるが、広島市内の地下道で新たに重大な事件が起きたという話は聞かない。それはすなわち、防犯カメラが市民の安全に寄与しているということだ。

そして裏返せば、この事件が起きた2000年1月の時点で、現場の地下道に今のように防犯カメラが設置されていれば、16歳の少女は生命を奪われずに済んだかもしれないということだ。

彼女が今も生きていれば、30代半ばという年齢だ。結婚し、子どもにも恵まれ、幸せな家庭を築いていたかもしれない。

殺人事件を色々取材していると、こういうケースにめぐりあうことは少なくない。だから、私は正直、監視社会化を否定できないでいる。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。新刊『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)が発売中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」で前田朗東京造形大学教授への苦言と、この内容で送った手紙に対して、当の前田教授よりご丁寧な返信がありました。公開の形になっていますので、私もこれに対する再私見を公開書簡の形でアップさせていただきます。急いで書き上げましたので誤認や誤読の箇所もあるやもしれませんが、その際はご容赦ください。これが実りある議論になれば幸いです。(松岡)

◆      ◆      ◆       ◆

前田 朗 先生

冠省 長文のお答えをいただき、感謝にたえません。差別問題に対する前田先生のこれまでの取り組みの数々には深く敬意を示すものでございます。
 
ご返答いただいた回答ですが、前田先生は肝心の「リンチ事件裁判」の判決について、大変な誤解をなさっています。先生は、

〈しかし、刑事事件としては、実行犯は一人とされて、判決が確定しました。民事事件としても、同様の結論になったと言えます。「リンチ事件」という言葉が、複数犯によるリンチを指すとすれば、リンチ事件はなかったことになります。李信恵さんについて言えば、共謀はなかったし、不法行為もなかったことが裁判上確定しました〉

と勘違いなさっていますが、刑事事件も民事訴訟も実行犯は2人(単独ではない)との判断が出ています。したがって先生が前提とされる「複数犯によるリンチを指すとすれば」の前提に立っても、「リンチ事件はなかったことになります」は完全なる間違いであり、「複数犯によるリンチを指すとすれば、リンチ事件は刑事・民事であったことが確定しました」でなければなりません。この点、事実関係は非常に重要ですから、強調して、先生の誤解を指摘させていただきます。先生の定義に沿った「リンチ事件」は存在したと刑事・民事(現在上告中)でも判断されている点は、認識を改めていただきますよう、強く要請いたします。

ちなみに、リンチとは「法によらない私的制裁。私刑」(広辞苑第七版)で、複数の者によらなければならないわけではありませんが、M君リンチ事件は、5人で深夜にM君を呼び出し、M君に対する「私刑」ですからリンチです。李信恵氏自身が供述しているように「日本酒にして一升」ほどの酒を飲み酩酊状態で集団暴行を行ったのですから、そこに同座した5人全員に〈連帯責任〉があり、また師走の寒空の下に重傷でのた打ち回っている被害者M君を放置し立ち去ったことを、先生は人間としてどう思われますか? このことだけを見ても、李信恵氏らの言う「人権」が偽物だということが判ります。

リンチ直後に李信恵氏が出した「謝罪文」の1ページ目。のちに撤回。少なくともこの「謝罪文」に立ち返るべきだ。

リンチ直後に出された辛淑玉文書の1ページ目。なぜか、のちにみずから否定する。

また、先生は「共謀はなかったし、不法行為もなかったことが裁判上確定しました」とも仰っています。「裁判上確定したから…」云々で言えば、冤罪で闘っている方々は救われません。裁判官も人間ですから〈誤判〉もあるでしょう。先生もお聴きになりご覧になったであろう、リンチの最中の音声データやリンチ直後の被害者M君の顔写真という動かぬ証拠があるのに「共謀はなかったし、不法行為もなかった」とは子供騙しの物言いです。冤罪とは、罪のない人が権力の策謀で罪を押し付けられることですが、このリンチ事件では逆で、実際にリンチの場にいた5人(その中の1人は格闘技の達人)でM君に暴力を行使し重傷を負わせたことは否定できない事実です。これが裁判所で認められないのは、いわば“逆冤罪”といえるでしょう。『救援』は半世紀にわたり、権力からの弾圧と闘ってきた「救援連絡センター」の機関紙です。その運営委員で、連載を担当されている、前田先生に「冤罪」「誤判」の話を持ち出すのはためらわれますが、「裁判上確定したから…」とのご判断には、首肯しかねます。

また先生は「松岡さんが裁判所の認定を批判するのはもちろん自由ですが、その理屈を李信恵さんに差し向けるのは不適切です」とご注意いただいておりますが、私たち鹿砦社が李信恵氏と係争関係になっているのは、李信恵氏が一方的に、鹿砦社に対して、容認できない汚い言葉での攻撃をツイッターで続けてきたからです。誹謗中傷、罵詈雑言を「差し向け」てきたのは李信恵氏ですよ。先生も『救援』記事以降、ある人から30件ほどの罵詈雑言を受けたとのこと、罵詈雑言メールは他にもあるでしょうから合計すれば多数にわたるでしょう。それらのメールなりツイッターの詳しい内容は分かりませんが、おそらく李信恵氏らにつながる「カウンター」関係者と推察します。同様の罵詈雑言を私たち鹿砦社も受けているのです。

幾度となく述べていますが、李信恵氏とは付き合いもなく(顔を見たのはリンチ裁判での本人尋問の時1回だけです)、よって私怨や私恨もございませんが、「リンチ裁判」の途中から李信恵氏は、鹿砦社や代表の私を攻撃(攻撃というより罵倒に近いでしょう)するツイートを重ねてきました。出版社としての業務にも支障が生じるほどの内容でしたので、代理人を通じ「そのようなことはやめるように」と「通知書」を送りましたが、それでも李信恵氏の鹿砦社罵倒は、やまなかったため、仕方なく提訴した次第です。

先生の文章では、この経緯をご存知ないように拝察いたしましたので、重要なプロセス故、事実関係とこの推移をご説明させていただきました。私たちがあたかも李信恵氏だけにこだわって「批判」を続けているように誤解なさっているようですが、そうではありません。また先生は以下のように述べられています。

〈『救援』記事に対して、松岡さんとは全く逆の立場から、私を非難してきた人物が数名います。中には私を「敵」として非難し、「おまえのような馬鹿はもう相手にしない」と罵倒する絶縁メールを30回も送りつけてきた人物がいます。返事は出していません。この種の人物に返事を出しても時間の無駄です。ただ、ここで紹介したのは、この人物と松岡さんには一つ共通点があるからです。それは「敵/味方」関係で物事を考えていることです〉

 

李信恵氏らの代理人である神原元弁護士による鹿砦社と支援者らに対するツイートの一例

このご指摘はまったく失当です。私並びに特別取材班は、「正義の味方」と「敵」を峻別しようなどと微塵も考えていません。ただ実直に「リンチ事件」についてどう考えるか?を事件に直接ではないものの、「隠蔽」や「二次加害」で関わった可能性のある方々(そのほとんどは「可能性」ではなく濃淡はありますが、実際に手を染めておられました)に「これでも『リンチ事件』がなかったというのですか?」「あなたは隠蔽に加担して心が痛まないのですか?」と尋ねているにすぎません。

また、事件の加害者と、組織的隠蔽に加担した者は、程度に差がありこそすれ人道上の〈罪〉や〈連帯責任〉がある、と私は考えます。ですから「事件隠蔽」に関わって素知らぬ顔をしている人々を私たちは、まったく信用することができません。この点では事件の加害者、その代理人である神原元弁護士をはじめとする、隠蔽加担者。あるいは被害者に対する二次加害加担者を批判するのは当然ではないでしょうか。「敵/味方」関係で物事を考えているとのご指摘は的を射ていません。私たちは「事実に忠実か、そうでないか」で人物の評価を行っています。誤解なさいませぬように。

次いで、先生はこうも述べておられます。

〈私はもともと「敵/味方」関係で考えていません。上記のように、反差別と反ヘイトの研究と活動の仲間たちですから、その行動に疑問があると指摘しましたが、敵対関係ではありません。「敵」がいるとすれば、それは差別する権力、差別させる権力、差別を利用する権力です〉

このご意見には大賛成です。ですから、権力が恣意的な運用を図るきっかけを与えた、「ヘイトスピーチ対策法」を私たちは、まったく評価しません。ここは、先生のお立場と全面的に異なる点です。が、この問題は冷静に先生と議論させていただく機会があれば、実のある議論が展開できるのではないかと存じます。

しかし、以下のご指摘はまったく承服しかねます。

〈松岡さんがあくまでも自説に固執して、従来と同じ発言を繰り返し、李信恵さんを非難し、関係者を非難し続けることは、今や不適切なことと言わざるをえません。李信恵さんは、在特会や保守速報による異様なヘイト攻撃に立ち向かい、闘い続けました。在日朝鮮人というマイノリティが猛烈な差別を受け、同時に女性差別を受けながら、ついには裁判所に「複合差別」認定させました。このことの積極的意義を私たちは認め、李信恵さんの闘いに敬意を表すべきではないでしょうか〉

李信恵氏が裁判所に「複合差別」を認めさせたことを評価なさるのであれば、同じ大阪地裁で記者会見を申し入れるも一切無視され(記者会見を開かせてもらえず)大阪司法記者クラブにより、完全に「事件」をなきものにされた、「リンチ被害者」M君への“複合重層差別”を先生は度外視なさるのでしょうか?この事件を論じるにあたり、まず先生は基礎的事象について正しく理解されていません(刑事・民事とも「リンチ」は認定されていることなど)。したがって先生のご見解は事実をお知りになれば大きく、根本的に変化するのが自然であろうと思慮いたします。先生は、お送りしたリンチ関連本5冊をどれほど深く読まれているのでしょうか? 深く読まれたので『救援』での2度の論評を書かれたものと推察しておりましたが……。「複合差別」との闘いが大変であるとすれば“複合重層差別”との闘いがさらに困難で、厳しいものかはご想像に難くないはずです。

 

リンチの現場にいた伊藤大介氏の恫喝メール。とても、「反差別」や「人権」を語る者の言葉ではない。

話は前後しますが、私は「自説に固執」などしていません。誤りがあれば潔く認めます。これも幾度となく公言していますが、私は自分にも他人にも「私たちは正しいのか?」と常に問い返してきました。この問題への私たちの関わりが、これだけ激しいリンチを受け、さらにはかつての仲間らから村八分(これは差別ですよね?)された被害者を前にして人間として見て見ぬ振りはできませんでした。支援を始めてからも、しばらくは半信半疑のところはありましたが、取材や調査を重ね、リンチがあったのは事実で、被害者への正当な補償もなされておらず、逆にネット上でセカンド・リンチを受ける理不尽に不条理を覚えました。ネットでの誹謗中傷は私たちにも及び過熱化する兆しがありましたので、M君は、先頭に立ってネット・リンチを行っていた野間易通氏を名誉毀損で提訴し、また鹿砦社も李信恵氏を提訴し、どちらも野間氏、李信恵氏の不法行為が認められ勝訴しています。

また私は、李信恵氏らがいったんM君に渡した「謝罪文」に立ち返り真摯に謝罪するのであれば和解に向けて汗を流すことも厭わないとも何度も述べています。なのに、開き直っているのは李信恵氏らではないでしょうか? 李信恵氏の代理人の一人、神原元弁護士は「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」などと私たちを罵っています。私たちは素朴かつ愚直に被害者支援と真相究明に関わったにすぎず、トンデモない物言いです。

ちなみに、私は40数年前の学生時代にノンセクトの学生運動に関わったことはありますが、そんな私以外には、M君は勿論、社内、取材班、支援会に左翼運動の経験者は誰もいません。

ところで、昨年公開されてから何度かコメントしましたが、先生の「出版記念会」に名がありましたので、5月27日付け「デジタル鹿砦社通信」で、あらためて採り挙げた師岡康子弁護士が金展克氏に宛てて送ったメール、俗にいう「師岡メール」について、先生はどう思われるか、ぜひご意見を伺いたく存じます。師岡弁護士には以前に取材の電話を差し上げたところ、けんもほろろに切られましたが、被害者の人権もなにもあったものではありません。こんなメールを送る人がいくら「マイノリティの人権」だとか言っても私は信用しません。

先生のご主張には、『救援』での論評から「豹変」したと感じることが少なからずございました。たびたび引用させていただきますが、『救援』では李信恵氏に対し、
「反差別・反ヘイトの闘いと本件(注:リンチ事件)においてC(注:李信恵氏)を擁護することはできない」
「しかし、仲間だからと言って暴力を容認することは、反差別・反ヘイト運動の自壊につながりかねない。本書が指摘するように、今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向きあうべきである」
と述べられ、さらに「被告C(李信恵氏)」の人格については、
「長時間に及ぶ一方的な暴力の現場に居ながら、暴力を止めることも立ち去ることもせず、それどころか『顔面は、赤く腫れ上がり、出血していた』原告(引用者注:M君のこと)に対して『まあ、殺されるなら入ったらいいんちゃう』と恫喝したのがCである。唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なうものである」
と断罪されました。さらに上瀧浩子弁護士らに対しては、
「被告らの弁護人には知り合いが多い。かねてより敬愛してきた弁護士たちであるが、彼らはいったい何のために何をやってきたのか。(中略)あまりに情けないという自覚を有しているだろうか。差別と暴力に反対し、人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか」
と述べられています。今でも至言だと思っています。

言いたいことが山とあり、脈絡のない手紙となりましたが、何卒ご容赦ください。
先生のますますのご活躍をお祈り申し上げ擱筆いたします。      早々

[参照記事]
松岡利康【カウンター大学院生リンチ事件】前田朗教授の豹変(=コペルニクス的転換)に苦言を呈する!(2019年5月23日デジタル鹿砦社通信)
前田朗東京造形大学教授「鹿砦社・松岡利康さんへの返信」(2019年5月26日前田朗Blog)
鹿砦社特別取材班【カウンター大学院生リンチ事件】カウンター/しばき隊の理論的支柱・師岡康子弁護士による犯罪的言動を批判する! 前田朗教授に良心があるのなら、師岡のような輩と一緒に行動してはいけない!(2019年5月27日デジタル鹿砦社通信)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

先日、本通信で鹿砦社代表の松岡が、前田朗教授批判を展開した。前田教授の「豹変(コペルニクス的転換)」(松岡評)には驚かされた。一部の方からは「言い過ぎだ」との指摘も受けた。さほどリンチ事件の真相(深層)を知らない方ならそうかもしれない。

 

しかし、3年余りリンチ事件を徹底取材し5冊もの本にまとめ上げ、前田教授による『救援』紙上での2度にわたる厳しい、リンチと、この加害者、隠蔽に走る輩への批判(特に上瀧浩子弁護士らに対して)を知る者にとっては大ショックだったので、松岡の論評には、われわれも同感だし、リンチ被害者M君も同感だと言っていた。

ところで、先に紹介した6月7日の関西での集会に先立ち東京でも4月6日に前田教授の『ヘイト・スピーチ法研究原論』(版元は、われわれの世代には馴染み深い三一書房)の「出版記念会」が開かれている。

ここで、いまや「カウンター」/「しばき隊」の“宣伝部長”となった感のある香山リカ氏に加え「師岡康子」の名が出ている。岩波新書『ヘイト・スピチートとはなにか』の著者にして弁護士である師岡康子である。

師岡康子が何をやったか?「ヘイトスピーチ対策法」成立のためであれば「リンチ被害者」をも「犯罪者」扱いした人間を再度断罪せねばならない。口先では「人権」を騙りながら、その実、首尾一貫反人権的な師岡に対しては徹底的に糾弾しなければならない。

本稿ではあえて師岡に敬称付さない。師岡の行為は弁護士以前に、人間として失格であり、われわれは一切の敬意を抱けないからだ。師岡の人となりが、余すことなく明らかになったのは、リンチ事件直後の2014年12月22日(リンチ事件が発生したのは同年12月17日深夜)、金展克氏が師岡から受け取った「メール」を自主的に公開されたことによる。下記に師岡から金展克氏への「メール」を再掲する。

 

さらなる言論弾圧法を画策する師岡康子弁護士

俗に「師岡メール」といわれ存在が噂されながら公開されたのは、われわれがリンチ事件の取材を開始して3年余り後、リンチ本第5弾『真実と暴力の隠蔽』出版後だったので、これまでのリンチ関連本には収録されていない。噂はあったが、取材班は、「やはりないだろう」と諦めていた矢先で、超A級資料であり、なんでもう少し早く公開されなかったのか、と今でも悔やむ。

金展克氏にも事情があったのだろうが、これが、たとえば第1弾か2弾目あたりで公開されていたら、また違った展開になっていただろう。それぐらい貴重な資料なのである。みなさん方にあっては、まず虚心に一読されたい。

◆「ヘイトスピーチ対策法」成立しか頭になかった師岡

師岡が、目の前の「ヘイトスピーチ対策法」成立に向け、並々ならぬ意欲を燃やしていたことはわかる。それはメールを受け取った金展克氏も同様であり、事件後しばらくは「リンチ被害者M君」もそうであった。

しかし、われわれの見解はまったく違う。目に見える現象を法律で取り締まっても、人間の心は変えられない。それどころか理念法とはいえ「表現規制」を盛り込んだ同法は、必ずや権力によって〈弾圧〉に利用されるだろう、とわれわれは考えていた。例えば「凶器準備集合罪」は暴力団を取り締まるために作られたが、実際には新左翼運動を取り締まるために使われている。

同法成立後、現に差別表現を批判する意図で差別表現を引用した人が、アカウント凍結に遭うなどの被害は、既に顕在化している。一般市民や街頭活動で差別言辞は問題にされるが、同法によっても、日本国や政治家の差別的政策や、他国蔑視が改められることはない。「北朝鮮の人権問題を考える週間」。毎年人権週間に合わせて、政府が展開する国家的「差別事業」である。「ヘイトスピーチ対策法」成立に熱心であった方々から、この国を挙げての「朝鮮民主主義人民共和国」への差別に対して、強い批判の声を聞いたことがない。

西田昌司議員(自民党)と有田芳生議員(民進党=当時)

末端で「言葉狩り」をいくらやったって、本質的な差別はなくならないどころか、ますます陰湿化、巧妙化するだけではないか。それは犯罪を摘発する法の施行と類似する。なにより「ヘイトスピーチ対策法」は、最終段階で有田芳生議員と、確信的アジア蔑視主義者、自民党の西田昌司議員との握手で成立した点を、少しくらい政治や社会に興味のある人間であれば問題視しなければならない。そうではないのか、前田教授、師岡康子!

西田はこれでもか、これでもかと、国会で「差別意識丸出し」の質問を繰り返してきた議員だ。右翼方面から「西田砲」などと持ち上げられてもいる。そういう人物が、一朝一夕に「差別に反対」する考えに変わることがあると、師岡らは考えたのか? そうであれば軽率の極みとの批判からは逃れられない。

師岡は「メール」の中で「在日コリアンへの差別は、戦後日本の体制の根幹の一部であり」と述べている。そうであろうか? 在日コリアンへの差別は戦中や戦前、もっと言えば朝鮮民族への蔑視や差別は1900年頃からこの国には、明確に存在していた。誰もが知る1910年の「日韓併合」に至るまでも当時の日本政府は様々な謀略を巡らし、大韓帝国内に「親日派」を育成することに力を割いている。

「戦後日本の体制の根幹の一部」というのは、歴史認識が浅すぎないか。このような歴史的な短史眼が、今日的社会に対してどのように対応すべきかへの具体策の誤りへと繋がっているとも考えられよう。

言わずもがなであるが、われわれはあらゆる差別に「原則的に反対」である。日本のアジア差別も、WASPのヒスパニックへの差別も、スリランカ仏教徒のムスリムへの差別も、イスラム諸国での女性差別も。そして世界にはわれわれの知り得ない数々の価値観と、それにより引き起こされる差別があろうことも心しておかなければならないと考える。

◆被害者を加害者にすり替える、犯罪的示唆

さて、師岡は「メール」の中で怖ろしい内容をいくつも発している。

・「その人(取材班注:M君)は、今怒りで自分のやろうとしていることの客観的な意味が見えないかもしれませんが、これからずっと一生、反レイシズム運動の破壊者、運動の中心を担ってきた人たちを権力に売った人、法制化のチャンスをつぶした人という重い批判を背負い続けることになります

師岡は事件のかなり詳しい情報を聞いていて、このように発言しているのだ。集団暴行傷害(集団リンチ)被害者に対して「運動の邪魔だから泣き寝入りしろ」と金展克氏を通じて、恫喝を発している。

・「反レイシズム運動にも関わることができなくなるでしょう

明らかに刑法に抵触する、違法行為、集団暴行傷害(集団リンチ)被害にあっても「泣き寝入りしろ」などという「反レイシズム運動」とは一体何なんだ!? そんな運動に被害者が復帰したいと思うとでも師岡は考えていたのか。弁護士でありながら犯罪行為を正当化し、被害者に「泣き寝入りを迫る」態度は大日本帝国がアジア侵略で犯した暴虐の数々に匹敵する。

・「告訴を勧める人がいるなら、同様に扱われるでしょう

被害者に寄り添うものも同罪だと師岡は断じている。

・「真剣にヘイト・スピーチ反対運動をやってきた人なら、そのような重い十字架を背負おうことは、人生を狂わせてしまうことになるのではないでしょうか

ここに至り「真剣にヘイト・スピーチ反対運動をやってきた人」は一般的な遵法意識がない「カルト」であることを師岡は表明しているが、自身が「カルト」の牽引者であるとの意識はどうやらないようだ。「そのような重い十字架を背負おうことは、人生を狂わせてしまうことになるのではないでしょうか」とは恫喝にしても、ずいぶんドスの利いた表現だ。よほどの〈悪意〉がなければこのような表現まで用いることはできないであろう。師岡にとって「ヘイトスピーチ対策法」の前では、「集団リンチ」事件が起ころうが、内部粛清があろうが関係なし。「自分のやろうとしていることの客観的な意味が見えない」ファナティックな心情に陥っていたことが証明される。

・「展克さんは『犯罪ですよ』と言いました。でも、形式的に犯罪に当たることは山ほどあります。実際その人がやったという、エル金さんのうわさを流したことは、『虚偽の風説を流布し・・人の信用を毀損し、三年以下の懲役または50万円以下の罰金』となる信用棄損にあたります

風説の流布は「しばき隊」の得意とするところだ。鹿砦社も数えきれないほどの風説の流布被害にあっているが、そうか。片っ端から訴えて「三年以下の懲役」を食らってもらえばよい。そういうことだな!? 「形式的に犯罪に当たることは山ほどあります」から「集団リンチ」が免責されるのであれば、われわれが(決してそのような愚かなことに手を染めはしないが)、風説の流布に手を染めた人物に同様の行為に及んでも、師岡は鹿砦社の行為を正当化するのに間違いはないな?弁護士としてその判断に自信が持てるのだな!?

・「凛さんがやった生活保護の事件でも

と軽々しく書いているが、師岡も指摘している通り、これは明らかな運動潰しを画策する公安事件であり「凛さんがやった」のではなく「凛さんがでっちあげられた」と書くのが妥当だ。

・「なかでも共産党系の人たちなどは、ヘイト・スピーチを『犯罪』とすると、運動内部の敵対関係にある人たちが、相手をつぶすために、悪用する危険性があると主張しています」

ここでの「共産党系」の人たちの主張は正しいし、立法以前の2014年にすでに「リンチ事件隠蔽」という実例が出来てしまっている。そして「ヘイトスピーチ対策法」があろうが、なかろうが、師岡のようにこの運動にかかわった人間の多くは「自分と意見の違う人間を過剰に攻撃する」習性をもとより身に付けていた。あるいはそういった性格の人間が、運動のヘゲモニーを握ったことが“不幸中の不幸”であったのだ。師岡はもとより、金展克氏、そしてM君までが「ヘイトスピーチ対策法」の危険性と誤謬に気が付くことができなかったのであるから。

・「その人がやろうとしていることは、客観的には、運動内部の敵対する相手(この場合エル金)を現行法の『犯罪』規制を使ってつぶすことです

こういうとんでもないことを、しらふで書ける弁護士が岩波新書から本を出版するのだから、油断も隙もあったものではない。何を言っているのだ! 顔面骨折、数十発顔を殴るけるされた被害者が、どうして被害届を出すことが批判の対象になるのだ。

・「そのような人たちが主張する法規制は、真のレイシスト規制ではなく、運動内部の敵をつぶすためにその人たちが使うのではないか、との批判に反論できなくなります」

言い回しがややこしいが。その通りである。ここでの「その人たち」には師岡も含まれるし、師岡はレイシスト規制以前に、「極めて深刻な人権蹂躙」を重ねて主張していることに、まったく気がついていない。

「その人が被った不利益、エル金の被った不利益、その人が告訴することによってもたらされるあまりにも甚大でとりかえしの非常に困難な運動上の不利益(略)告訴という方法は絶対に取るべきではないと思います

師岡はM君だけでなく、エル金も本心ではどうなってもいいと考えていることを吐露している。何よりも「運動の利益」至上主義。そのためには個人は犠牲になっても泣き寝入りをしろ」これが師岡の本心だ。

その後もあれこれ御託を並べているが、はっきりしているのは、師岡が「ヘイトスピーチ対策法」成立のためには、周辺の人間がどのように傷つこうが、一切お構いなし、と考えていたことだ。

こういう輩の暗躍によって成立した言論弾圧法(ヘイトスピーチ対策法)は、皮肉にも師岡に向かっても「矢」となって飛んでゆく可能性がある。それを受け止める覚悟があるからこそ、ここまでの暴論を展開できたのであろうから、充分心して自らが身磨いた鏃が突き刺さる日を待たれよ。

さらに師岡は、同法の強化、もしくはもっと厳しい新法の成立を公言している。

「カウンター」/「しばき隊」の理論的支柱とされる師岡の心は倒錯している。人間としてここまで酷い吐露には眩暈さえ感じる。

師岡らは、『ヘイト・スピーチ法研究原論』にまとめ上げた前田朗教授を「ヘイトスピーチ対策法」の強化、あるいはもっと厳しい内容の新法の成立に向けて抱き込みを図っていることは明らかだ。

前田教授よ! 上記の「師岡メール」を読んで、どう思われますか? まさに名文中の名文である、『救援』での2つの論評、そしてそこで溢れ出た怒りに立ち返っていただきたい。「反ヘイト」運動も、このリンチ事件を隠蔽するのではなく、社会的に公開し主体的反省をしない限り間違った方向に行くであろう。これを止揚するのがリンチ事件に対する真正面からの取り組みだし、これから逃げることは歴史を逆に戻すことに他ならない。

(鹿砦社特別取材班)

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

小室圭さんがフォーダム大学のロースクールで学位を取得し、来年度からの弁護士基礎コース(英語で受講)に備えて、夏休みを返上して講座を受けることになった。夏休みを大学で過ごすことで、母親の借金問題を「先送りした」と批判的に報じられている。


◎[参考動画]小室圭さん 卒業式は欠席 夏休みも日本に戻らず?(ANNnewsCH 2019/5/21公開)

テレビのワイド番組は、アメリカ留学事情と併せて、覗き見的に小室氏の動向を報じているが、大半の視点は借金問題でのバッシングである。皇室の子女に「ふさわしからぬお相手」というわけだが、視聴者は必ずしもそうではない。眞子内親王と小室氏の結婚を支持するというアンケート結果が出ているのだ。

テレビ朝日のモーニングショーの街頭アンケートでは、100人中で「応援できない」は、わずか19人だった。「応援できる」が42人、金銭問題の解決が条件で39人である。じつに80%の人々が二人の結婚を応援しているのだ。言うまでもなく、恋愛・結婚は個人の意思によるものだという、近代的な人権感覚による自由恋愛を支持するからであろう。昨年の秋篠宮の「納采の儀」の延期、上太皇后による不快感という報道にもかかわらず、自由恋愛を認めよという「世論」が圧倒的なのである。

本欄でも触れたとおり、秋からの女性宮家の創出、女性天皇および女系天皇の可否をめぐる議論に、小室氏問題は大きな比重を占めてくる。すなわち、天皇家に皇統以外の男子の血が入ることを、たとえば安倍総理は蛇蝎のごとく嫌っている。その象徴として、小室氏のような母親に借金がある男が皇族になってもいいのか。というロジックが浮き彫りになるのだ。ただし、議論の前提として女系女性天皇(元明女帝の娘である元正天皇)女系男性天皇(元正の弟の文武天皇)が皇統に存在することは、あらためて指摘しておきたい。

◆自由恋愛の禁止は、憲法違反である

象徴天皇制の矛盾として、対米関係で指摘されているのが憲法9条との安保バーター論がある。現人神から人間天皇となり軍備を持たない代わりに、安保条約で「日本を属国化」したというものだ。沖縄の現実を考えるごとに、この象徴天皇制が日米安保とリンクしているのは明白となってくる。国家の暴力装置を米軍にたよる、わが国は半植民地なのである。もうひとつ、人間天皇自体の矛盾である。人間でありながら、あらかじめ一般国民とは分離された、特権的な身分を持った存在なのである。であるがゆえに、基本的人権があるのかどうか、よくわからない存在なのだといえよう。憲法上はどう考えたらいいのだろうか。憲法学者の横田耕一九大名誉教授は、こう語っている。

「根本的に、皇族に人権を認めるかについては議論がありますが、私は認めるという立場です。よって皇族女子の結婚は自由でいいと考えます」

「結婚は、あくまでもご本人たちの自由意思によります。お相手の小室圭さんについて色々言われているからといって、お二人の結婚に何らかの制約をすることは憲法違反となるのです」

「象徴天皇制において『象徴』とされるのはあくまで天皇だけで、皇族はそれに含まないというのが私の考えです。眞子さまの結婚に関しても、皇族という概念を持ち出す必要はなく、あくまで個人のこととして扱われると思います」(以上「女性自身」5月3日)。

横田氏の立場は、天皇(国民の総意としての象徴)いがいの皇族には、基本的人権が適用されるべきというものだ。おそらく国民レベルの意識では、天皇もふくめて基本的人権はあるべきだというものではないか。2016年8月8日の平成天皇の「お言葉」つまり、退位の自由を国民に訴えたのを、国民は厚意的に受け容れたことが、その証左である。

かりに眞子内親王と小室氏の結婚に、一億円の一時金(税金)が支障になるのなら、それを放棄すれば国民は納得するのだろうか。元皇族の品位を保つのがその目的なのだから、おそらく放棄しなくとも国民の多数は納得するはずだ。筆者のように天皇制に反対する立場であっても、この婚姻で象徴天皇制の矛盾が露呈し、あるいは皇族の減少で政治と天皇家の分離に向けた議論が始まるのを期待したい。その意味では、小室氏と眞子内親王の婚儀は、ぜひとも自由恋愛の立場から貫かれるべきだと思う。いまの若者たちが恋愛で傷付くのを忌避するように、恋愛というものが美しいロマンばかりではなく、政治(制度)や社会(差別など)の制約と戦い、勝ち取られるものだということを、ぜひとも眞子内親王と小室圭氏には実践していただきたいものだ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

山田悦子、弓削達ほか編著『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』

最後のフィニッシュで再びヒザ蹴り猛攻を掛ける石川直樹

ファンが見極める技量審査場所とも言えるジャパンキックボクシング協会プレ旗揚げ興行の見せ場。MA日本キックボクシング連盟、NKB、フリーのジムとの交流戦、日本vsタイ国際戦で盛り上げました。

もう交流戦なくして新鮮な好カードは成り立たない時代になってきました。それほど一つの団体だけでは鎖国的で、置かれたレベルが分かり難くなり、切磋琢磨するレベルの高い試合は臨めないということでしょう。また、分裂細分化によって特定の団体と交流し易くなったという声もあり、「分裂する傾向を上手く利用した方が話が纏まり易く好都合」と言えるのも時代は変わったものです。

ヒザ蹴り猛攻に入った石川直樹

そんなこの団体での次の時代を担う者、石川直樹、瀧澤博人に続く、馬渡亮太と皆川裕哉には期待が掛かるところです。

「ジャパンキック協会は僕が盛り上げていきます」

ほぼ同じコメントを残し、エース格を自覚する瀧澤博人と馬渡亮太。また石川直樹と皆川裕哉も同じ気持ちでしょう。石川直樹は8月4日の旗揚げ本興行でもメインイベントを務めたい意向を示し、更に前・日本フェザー級チャンピオンの石原将伍も居るこの新団体でのメインイベント争いも勃発しそうなところです。

ジャパンキックボクシング協会代表は長江国政氏(本名・長江國正)が就任しましたが、足の怪我による車椅子での移動でリング上での御挨拶はありません。8月4日の旗揚げ本興行にて行なわれることでしょう。

◎KICK-Origin / 2019年5月12日(日)後楽園ホール17:00~21:10
主催:治政館ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

ヒザ蹴りでロープの外へ吹っ飛ばした石川直樹

◆第12試合 52.5kg契約 5回戦

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/52.3kg)
   VS
儀部快斗(エクシンディコンJAPAN/52.4kg)
勝者:石川直樹 / TKO 5R 2:23 / 主審:仲俊光

第1ラウンド、ローキックで先手を打った儀部快斗。石川は表情に表れないが、このまま攻め続ければ儀部が主導権を握りそうな勢いだが、石川も組みついてのヒザ蹴りを狙い、これが儀部へのプレッシャーとなっていく。

第2ラウンド以降も石川のヒザ蹴りが厄介そうで、儀部は蹴る見映えはいいものの、ローキックを更に効かせていく積極さは無く、突破口を開こうと時折バックハンドブローをみせるようになる。

石川はヒザ蹴りの圧力を掛け続け、徐々にタイミングを掴むもまだ圧倒まで至らず、第4ラウンドまでは三者三様の採点だった。39-38.39-39.39-40(後の公式記録より)。

第5ラウンドには組み合った状態からヒザ蹴りが入って儀部快斗が怯むと一気に攻勢に転じ、組み付いてのヒザ蹴りラッシュを掛けた石川がノックダウンを奪った上、更にヒザ蹴り猛攻を続け、動きが止まった防戦一方の儀部快斗をレフェリーが止めるTKO勝利に導いた。観る側のストレス発散となるような劇的ノックアウトで設立興行のメインイベンターの大役を果たしました。

パンチからヒザ蹴りヒットでKOへ繋ぐ馬渡亮太

◆第11試合 チェンマイスタジアム・バンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.馬渡亮太(治政館/53.35kg)
   VS
挑戦者同級1位.ペットモンコン・ソー・ジンンジャルンカンチャン(タイ/52.75kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 5R 0:45 / 主審:椎名利一

第1ラウンド、ムエタイ特有のリズムで探る静かな様子見。蹴り中心から馬渡が圧力掛け始め、ペットモンコンは強い蹴りを返すがロープ際に下がり気味。馬渡のリズムが優っていくと組み合う展開多くなり、パンチからヒジ、ヒザ蹴りへ繋ぐ。ペットモンコンは馬渡の前進を止められない。

第4ラウンドまでは馬渡が優っていたと見えたとおり、40-37、40-38、40-38の採点(後の公式記録より)。

第5ラウンドには一瞬の隙をついて出た馬渡の猛攻。ペットモンコンのハイキックをかわしてパンチで攻めると後退したペットモンコンのボディーにヒザ蹴りを突き刺し、ノックダウンを奪う。ペットモンコンは苦しそうな表情で立ち上がるも、そのダメージを深いと見たレフェリーはテンカウントを数えた。

技でジワジワ圧倒、馬渡亮太の右ハイキックがヒット

ノックダウンへ繋いだ馬渡亮太、崩れ落ちたペットモンコン

ニシャオの額が陥没

◆第10試合 フェザー級3回戦

瀧澤博人(元・日本バンタム級C/ビクトリー/57.15kg)
   VS
ニシャオ・ソー・ジンジャルンカンチャン(タイ/56.8kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 3R 2:21 / 主審:松田利彦 

第1ラウンド、長身の瀧澤が距離感を上手く掴み、ローキック、接近するとパンチ、ヒジで距離をとって迎え撃つ。

第3ラウンドにはニシャオが右ストレートを打って出たところに瀧澤は右ヒジ打ちカウンターさせ、ニシャオの額にヒットすると、すぐそこが窪んだ跡が見えた。

瀧澤のアピールと共にレフェリーが気付きドクターチェックされ、試合続行不可能が勧告されるとレフェリーが受入れ試合終了となった。

右ヒジ打ちカウンター、ニシャオの額が凹む

長身の瀧澤博人がニシャオに覆い被さるように攻める

タイ選手との対戦は2戦目、ペットワンチャイのハイキックを受ける皆川裕哉

◆第9試合 58.0kg契約3回戦

JKAフェザー級1位.皆川裕哉(KICK BOX/57.85kg)
   VS
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイ(タイ/57.75kg)
勝者:ペットワンチャイ / 判定1-2 / 主審:少白竜
副審: 椎名30-29. 仲29-30. 松田29-30

皆川の蹴りからタイミングを見計らった右ストレートが軽いがヒット。スピーディーな蹴り合いにテクニシャンのペットワンチャイも勢い衰えない余裕の応戦。

皆川は打ち負けてはいないがペットワンチャイは蹴りの的確さと崩し技で優ったか。判定は1-2だが、第1ラウンドは三者とも10-10の後、三者共通のポイント差は無く、内容的には互角か皆川がやや優った印象は受けた。

左ストレートをカウンター気味に打つ皆川裕哉

◆第8試合 63.0kg契約3回戦

JKAライト級5位.興之介(治政館/62.95kg)vs MA日本ライト級2位.翼(菅原/62.9kg)
勝者:興之介 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-28. 少白竜30-29. 松田30-28

◆第7試合 54.0kg契約3回戦

JKAバンタム級3位.幸太(ビクトリー/53.85kg)
   VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/53.8kg)
勝者:海老原竜二 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:桜井28-29. 少白竜28-29. 松田29-30

◆第6試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級2位.櫓木淳平(ビクトリー/56.9kg)
   VS
JKAフェザー級3位.渡辺航己(JMN/56.85kg)
勝者:渡辺航己 / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:桜井28-30. 少白竜28-30. 仲28-30

◆第5試合 バンタム級3回戦

JKAバンタム級5位.田中亮平(市原/53.3kg)
   VS
JKAバンタム級6位.翼(ビクトリー/53.4kg)
勝者:翼 / TKO 3R 1:07 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:松田利彦

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

JKAライト級4位.林瑞紀(治政館/62.8kg)vs HARUKA(JMN/63.1→63.0kg)
勝者:林瑞紀 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-27. 松田30-26. 仲30-27

◆第3試合 ウェルター級3回戦

モトヤスック(治政館/66.4kg)vs山本大地(誠真/66.5kg)
勝者:モトヤスック / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-28. 松田30-28. 少白竜30-29

◆第2試合 フェザー級2回戦

又吉淳哉(市原/57.0kg)vs花塚ノリオ(E.D.O/56.6kg)
勝者:又吉淳哉 / 判定3-0 (20-17. 20-17. 20-18)

◆第1試合 59.0kg契約2回戦

都築憲一郎(エムトーン/59.05→59.0kg)vs井上昇吾(白山/58.6kg)
勝者:都築憲一郎 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)

《取材戦記》

ラウンドインターバル中に流れる曲はパートタイムラバー。この曲はマーシャルアーツ日本キックボクシング連盟の初期(日豊企画・石川勝将代表)時代のラウンドインターバル中に流された曲で、その頃、運営スタッフだった足立聖一(現タイムキーパー)さんがこの日、復活させました。インターバルでは気持ちが落ち着くリズムの、かなり有名ないい曲ですが、この曲であのMA日本キック初期を思い出す人が何人居たでしょうか。

元々、治政館ジムは20年以上の興行実績があり、興行運営は慣れたもの。タイトルの在り方、ルールの曖昧さなど、どこの団体でも見られる綻び部分を、この団体だけは確立して欲しい。そんな願いは1996年の日本系復興時に持ったものですが、ジャパンキックボクシング協会への期待も高まる船出したばかりの団体です。

ジャパンキックボクシング協会次回興行は8月4日に後楽園ホールで旗揚げ本興行が行なわれます。ダブルやトリプルメインイベントといった意味でなく、トリを務めるメインイベンターは誰か気になるところです。

新団体での復活をヒジ打ちでの完勝で飾った瀧澤博人

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

G20に参加するトランプ米大統領が、大相撲の千秋楽を観戦する。それ自体はスポーツ好きであれば何の違和感も感じさせないが、おどろくべき準備が進められているという。観戦にあわせて急遽「アメリカ合衆国大統領杯」あるいは「トランプ杯」がでっち上げられ、正面升席を数百単位で「占拠」するというのだ。

これまでにトランプ大統領が相撲好きだという報道は、管見のかぎり聞いたことがない。視聴率の高い千秋楽を狙って、あるいは「国技(法的根拠はない)」である相撲に親しむパフォーマンスをもって、親日ぶりをアピールする。これは神事(相撲)の政治利用ではないのか。とって付けたような親日家ぶりに不快な感情を抱く日本人は少なくないはずだ。

政治家が何ごとかすれば、かならず政治利用になるという意味では、単にスポーツや神事の政治利用それ自体が非難されるべきではないかもしれない。しかし今回の「トランプ杯」はあまりにもご都合主義であり、メッキが剥がれるような厭らしさがある。


◎[参考動画]トランプ大統領来日時 大相撲で賞の授与検討(ANNnewsCH 2019/04/12公開)

◆大相撲ファンに溶け込んでいたシラク大統領

たとえば、来日回数がじつに46回。縄文土器を愛し、麦焼酎を飲み、芭蕉の句や万葉集を諳んじたフランス大統領ジャック・シラクならば、その在職中(7年間)に「フランス共和国大統領杯」が設けられたのもうなづける。シラクは在東京大使館員に特別任務として、毎日の取組結果(中入り後)をエリゼ宮の執務室にファックスさせていたという。1999年にフランスを訪問した小渕総理から、貴乃花が明治神宮に奉納した綱と軍配を贈られ「これほど嬉しいプレゼントは初めてのことだ」と語ったのも有名な話だ。その綱と軍配はしばらく、エリゼ宮の会議室を飾ったという。

来日時に大相撲を観戦するときも、わずかな側近をつれて一般の升席に座り、気づいた日本人も大統領一行が退席するさいに「シラク」コールを上げるなど、大相撲ファンに溶け込んでいた。その意味では、シラクの大相撲観戦とフランス共和国大統領杯は彼の個人的な嗜好の反映であって、政治的なパフォーマンスは従属的なものだったといえよう。

パリに日本文化会館がつくられたのもシラク時代だったし、興福寺展(1996年)や百済観音像特別展(1997年)には時間を割いて鑑賞し、専門的な質問をしたという。単に親日家というよりも、日本通であるシラクにわれわれは驚かされることのほうが多かった。大統領に就任する前の1994年夏には、夫人とともに日本に一か月滞在し、奥の細道の史跡をたどったという。ベルナルド夫人も日本通で、貴乃花ファンのシラクと曙ファンの夫人は、しばしば火花を散らしたと伝わっている。

◆升席に椅子を持ち込む?

しかるに今回のトランプ大統領の観戦は、安倍総理夫妻とのセットで、その親密ぶりを政治的にアピールしようというものなのだ。しかも300席以上が一般に売られないまま、千秋楽のチケットは完売している。ということは、正面席にポッカリと空席のまま、その中央に安倍総理夫妻とトランプ大統領夫妻が、関係筋によると椅子を持ち込んでの観戦になるという。升席に椅子である。神事(取組)が行われている土俵を、椅子席に観るというのだ。もはや観戦のマナーもあったものではない。せっかく貴賓席があるというのに、テレビに映りやすい升席を占拠したとしか言いようがないではないか。

◆みじめな属国のすがた

ここに至って、わが国の国体の正体があらわになったというべきであろう。白井聡が「国体論」で云うとおり、敗戦後にわが国は天皇制の存続と引き換えに、憲法9条を与えられ、アメリカの属国に組み入れられたのだ。

令和最初の国賓として、アメリカ大統領が天皇に迎えられ、しかも「国技」の場に土足(比喩)で礼儀も何もなく踏み込んでくるのだ。その大統領のしもべよろしく、わが安倍晋三は、その無礼きわまりない観戦方法を歓迎するのだ。

そこに政治的な理念はひとかけらもない。口ばかりとはいえ、核兵器の廃絶を世界に呼びかけ、ノーベル平和賞を受けたバラク・オバマ前大統領の功績を消し去り、ヘイトと軍拡、そして中国との貿易戦争を煽り立てるトランプを、まったく同じ位相で歓迎する無定見に、われわれはあきれ返るしかない。

ようするに、アメリカ大統領なら誰でもいい、相手が何を云おうと同じなのだ。みじめな属国のすがたを見るとき、われわれは思いがけず「自主独立」という言葉を記憶の向こうからすくい上げたくなる。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

◆リンチ事件に対して的確に論評した前田朗教授

著名な法学者の前田朗東京造形大学教授は、ミニコミながら創刊50年を迎えた『救援』(月刊。救援連絡センター発行)紙に、2度にわたり「カウンター大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」「十三ベース事件」)に対して、研究者としての良心から(と思ったのは私たちの勘違いか?)怒りをもって言及されています。

「反差別運動における暴力」(『救援』580号。2017年8月10日発行)の公表は衝撃的でした。おそらく、そこで厳しく叱責されている李信恵氏や上瀧浩子弁護士らにとっても、別の意味で衝撃的だったと思われます。前田教授は、李信恵氏らの、いわゆる「反ヘイト裁判」で意見書も提出されているといいますから。

前田教授には、リンチ関連本3冊(この時点では4弾目、5弾目は未刊)を送り意見を仰いだところでの論評の公表でした。

ここで前田教授は、私たちの営為とこの事件について、次のように評価されていました。いささか長くなりますが引用しておきます。

「本書(引用者注:前田教授は3冊をまとめて「本書」と表現している)のモチーフは単純明快である。反差別運動内部において暴力事件が発生した。反省と謝罪が必要であるにもかかわらず実行犯は反省していない。周辺の人物が事件の容認・隠蔽に加担している。被害者Mは孤独な闘いを強いられてきた。このような不正義を許してはならない」

「本書の問題提起は正当である。ヘイトスピーチは、差別、暴力、差別の煽動である。反差別と反ヘイトの思想と運動は差別にも暴力にも反対しなければならない。市民による実力行使が許されるのは、正当防衛や緊急避難などの正当化事由のある場合に限られる」

「C(引用者注:李信恵氏)が重要な反ヘイト裁判の闘いを懸命に続けていることは高く評価すべきだし、支援するべきだが、同時に本件においてはCも非難に値する」

「反差別・反ヘイトの闘いと本件においてCを擁護することはできない」

「しかし、仲間だからと言って暴力を容認することは、反差別・反ヘイト運動の自壊につながりかねない。本書が指摘するように、今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向きあうべきである」

まさに至言です。「リンチはなかった」という戯言は論外として、リンチ現場にいた5人は連帯責任として真摯に反省し被害者に謝罪すべきということは言うまでもありません。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)

さらに続いて同論考の「2」(589号。2018年5月10日発行)においても厳しく述べられています。――

「被告C」の人格については、
「長時間に及ぶ一方的な暴力の現場に居ながら、暴力を止めることも幸去ることもせず、それどころか『顔面は、赤く腫れ上がり、出血していた』原告(引用者注:M君のこと)に対して『まあ、殺されるなら入ったらいいんちゃう』と恫喝したのがCである。唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なうものである」

と断罪し、さらには、

「被告らの弁護人には知り合いが多い。かねてより敬愛してきた弁護士たちであるが、彼らはいったい何のために何をやってきたのか。(中略)あまりに情けないという自覚を有しているだろうか。差別と暴力に反対し、人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか」

と怒りが溢れる物言いです。全文は別途画像をお読みください。 

『救援』(589号。2018年5月10日発行)

◆私たちはなぜ前田教授に失望したのか?

ところが……
前田教授は先頃『ヘイト・スピーチ法研究原論』(三一書房刊)を上梓され、私のもとにも送っていただきました。A5判、上製、450ページ余りにもなる分厚い本で、本体価格も4600円という高価です。

『救援』紙に上記のような論評をされたので期待を持って紐解くと、期待に反し、リンチ事件については1行も記述されていませんでした。残念です。

なぜなら、このリンチ事件についての反省と教訓こそが反ヘイト・スピーチ運動を止揚する要だからです。いくら立派なことを述べても、身近に起きたリンチ事件という恥ずべき行為に対して真正面から取り組まない限り、虚妄であり空論でしかないでしょう。

また、前田教授が『救援』紙で強く叱責された方々に「感謝」を述べるに至っては、『救援』で述べられたことは一体何だったのか、と遺憾に思いました。

『ヘイト・スピーチ法研究原論』あとがき

さらに、6月7日の集会の案内(別紙参照)が出回っています。私のところにも回ってきました。一瞥して驚きました。すでにお送りしているリンチ関連本5冊を読まれたのならば、前田教授が豹変(コペルニクス的転換とさえ申し上げます)されたのか、と感じざるをえません。リンチ関連本5冊をつぶさに読まれたならば、リンチ関連本でも断罪した人物が中心的に関わっている集会にホイホイと出るということは常人にはできないことです。そうではないでしょうか?

6・7集会案内

実はこの文章、この集会が終わってから明らかにするつもりでしたが、瞬間湯沸かし器のように怒りが込み上げ、悠長に時が過ぎ去るまで待っておれず、本日公開に踏み切った次第です。

趙博氏は、一時はリンチ被害者のM君を庇うかのような振る舞いをしながら突然掌を返しM君や私らを大いに失望させました。M君は趙博氏を信用し貴重な多くの資料を渡しています。これらの資料を入手するためにM君に近づいたのかと思うとスパイ行為と断じます。私に言わせればリンチ事件隠蔽と二次加害のA級戦犯です。(趙博氏の裏切りについてはリンチ本第1弾『ヘイトと暴力の連鎖』P74~79、第4弾『カウンターと暴力の病理』P100~106をご覧ください)

仲岡しゅん弁護士も、一時はM君と昵懇でありながら、彼が当時務めていた法律事務所(この所長のK弁護士は私もかねてより知己があり、数件弁護を依頼したこともありました)にM君が弁護を相談するや独断で断り、これを批判されるや各所でM君や私たちへの誹謗中傷を述べています。(仲岡弁護士については第3弾『人権と暴力の深層』P105~110をご覧ください)

さらに元大阪門真市議の戸田ひさよし氏は、ブログ「凪論」を主宰していたN氏の職場(児童相談所)を突然訪れN氏の業務を妨害しています。N氏は一般市民で下級公務員、こうした業務妨害行為でN氏が職場にいずらくなることが判っているのに平気で行い、これを意気揚々とネットで流しています。

これを受け拡散した「ぱよぱよちーん」こと久保田直己氏はN氏に訴えられ敗訴しています(静岡地裁2019年3月29日判決言渡。久保田代理人は神原元弁護士)。久保田氏は悪名高い「はすみリスト」の作成者として有名ですが、戸田氏や久保田氏の行為は、とても賛同できません。社会には、仮に相手が逆の意見でも、常識的なルールというものがあり、これを踏みにじってはいけません。そう思いませんか?

戸田氏とはかつて(10年余り前)交流がありましたが、こうしたことを平気でやったり、有田芳生参議院議員はじめ「カウンター」/「しばき隊」のメンバーと親密にしていることなどから最近は距離を置いています。

こうした人物が3人も中心的に関わる集会に前田教授が出られるということについては、前田教授にもなんらかの“意図”があるものと察しますが、ご説明いただきたく望みます。

また、前田教授は、リンチ事件隠蔽活動の拠点と化したともいえる「のりこえねっと」の共同代表ですので、ここを改革するとか、他の共同代表の方々にリンチ事件の内容を知らせ議論を惹起するように努めることに、まずは手をつけるべきではないでしょうか。なんのための「共同代表」でしょうか。

前田教授の最新著と、前田教授が講師として参加される6月7日の集会について、私見を申し述べさせていただきました。あまりに失望しましたので、いきおい表現が直截的になりました。

上記のような内容で資料を付け、去る5月21日に前田教授に手紙を出しました。真摯な説明を待ちたいと思います。

手紙の返信を待たずに、あえて公開しました。読者の皆様方は、今後の前田教授が、私の物言いをどう受け止め、どう説明されるのか――留意して待っていただきたいと思います。私たちの「勘違い」であればいいのですが……。

この3年余り、リンチ事件の真相究明と被害者支援の活動で見えた問題の一つとして「知識人」の存在があります。リンチ事件という凄惨な事件が身近で起きたのに、有名無名問わず多くの人たちが、隠蔽に加担したり沈黙したり、うまく逃げたりしたことなどを見ました。

「知識人」とは、こういう時にこそ存在理由があり真価の是非がわかろうというものです。「みんなずるい!」というのが私の率直な感想です。1980年代前半から長年付き合いがあった鈴木邦男氏とは義絶せざるをえませんでした。鈴木氏は、ああ見えても結構計算高い人で、私など小物よりも、辛淑玉、香山リカ、金明秀、安田浩一氏ら「のりこえねっと」に蝟集する著名人を選択したのだと思います。

この「反差別」運動において起きた問題について、常に私は「私の言っていることは間違っているか?」と自らにもみなさん方にも問いかけています。今回は中途半端に済ませることはできません。将来ある一人の大学院生が村八分(これは差別ではないのでしょうか?)にされ正当な謝罪や補償もなされず、マスコミも報じず、事件そのものが隠蔽され、極端に言えば闇に葬られようとしてます。ですから、取材も、私の長い出版人生の中で一番徹底して行いました。それは5冊の本に結実しています。

私は愚鈍・愚直な田舎者ですから、許せないことは許せません。齢を重ねて、少しは丸くなりましたが、それでもやはり生来染み付いた体質は変わりません。

これまでの人生を、人間として出版人として私なりに精一杯闘ってきたという自負ぐらいあります。「反差別チンピラ」(作家・森奈津子氏のしばき隊/カウンター評価)如きには負けません!

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

あえて「戦争で失われた領土は、戦争でしか取りもどせない」という暴論にも、政治の真理があると評価しておこう。元維新の会、衆議院議員の松山穂高の発言である。「戦争で」という発言も、ある意味では正しい。領土交渉で相手国に遅れをとる政治家を、国民はけっして許さない。外交的な方法でおこなう領土交渉では、絶対に何も解決しないからだ。

例外的にあるならば、ヒトラー執政下のドイツがチェコのボヘミア地方をスデーテンとして割譲した、いわばドイツ系住民の民族自決権行使がある。それ以前にも、オーストリア併合がある。現在のロシアによるクリミア併合問題に見られるように、大陸は多民族が混住するがゆえに、民族問題と領土問題が不可分なのである。


◎[参考動画]「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか反対ですか」維新・丸山議員の音声データ(朝日新聞社 2019/5/13公開)

 

丸山穂高議員のHPより

◆平和憲法の否定

しかし、日本の領土問題は島嶼である。領土それ自体が意志を持っているわけではなく、住民の意志であれば北方領土はロシア人のものだ。そこで、ロシアの混乱につけ込んで四島を取りもどしてしまえ、戦争でしかどうにもならないですよね。ということになったわけだ。そしてその言動が、平和憲法にそむく。したがって、国会議員にふさわしくないものであるのは自明だ。

丸山穂高は稚拙なその意図はともかく、戦争という外交手段を扇動することで平和裏にすすめられてきた日露交渉、積み重ねられてきた経済交流を破壊しようとしたのだ。維新の会が即座に除名処分としたのは、至極当然の話である。もしも過去の砲艦外交や領土問題の困難で戦争に言及するのなら、紛争島嶼の共同統治論(過去に本欄で筆者が提言した)を考えてみるべきであった。

除名された丸山議員はしかし、野党の辞職勧告決議案を批判し、徹底抗戦のかまえを見せている。それはそれで、政治家の出処進退はみずから決すると、ある意味では思想信条は譲らない見識というものかもしれない。しかしながら、その丸山議員に不正蓄財の噂があるのだ。

◆通信交通費を政治団体に還流か?

政治家がなかなか議員辞職をしないのは、辞職が失職を意味するからだ。失職するのは、ひとり議員だけではない。3人いる公設秘書、すくなくとも数人はいる私設秘書も、同時に失職するのだ。歳費は年棒だが、支給は月単位である。丸山議員およびそのスタッフは、辞表した翌月から給与がなくなるわけだ。

 

日刊ゲンダイ(2019年5月18日付)より

そしてそれ以上に、丸山議員を執着させているものがあるようだ。日刊ゲンダイが報じるところを紹介しよう。

問題ではないかとされているのは、月額100万円支給される「文書通信交通滞在費」である。日刊ゲンダイ(2019年5月18日付)によれば「丸山議員は15年10月から毎月74万~90万円の幅の文通費を『資金管理団体の繰入(寄付)』として計上。主な内訳は『事務所賃料』『駐車場代・複合機リース費・等』と記載している。ところが、丸山議員の資金管理団体『穂高会』の政治資金収支報告書のうち、現在閲覧可能な15~17年分をどれだけめくっても、『複合機リース費』なる支出は一切、出てこない」というのだ。日刊ゲンダイの云うところをつづけよう。

「報告書に計上されている月々5万円の『事務所賃料』と月々1万6,000円の『駐車場代』を差し引くと、15年10月~17年12月の27カ月間で総額2,016万9,676円の税金の使途が『宙に浮いている』状況である」という。2年3カ月で2,017万円、つまり月額約75万円をプールしているのだ。これを不正蓄財と呼ばずして何であろう。

日刊ゲンダイの調査によると、資金プールには穂高会が利用されているようだ。上記の架空の「複合機のリース料」などとして蓄財されるにつれて、穂高会の繰越金が多くなっている。

「穂高会の収支報告書をチェックすると、新たに不可解な点が浮かび上がった。穂高会の収入が14年末からの3年間で急増しているのだ。15年分の収支報告書を見ると、『前年からの繰越額』には約374万円と記され『翌年への繰越額』には、約1,709万円と記載があった。それが16年末には約2,989万円となり、17年末は約3,701万円に。3年間で10倍近くに膨れ上がっている」というのだ。

◆ツィート(つぶやき)だけではなく、記者会見を

辞職勧告が「この国の言論の自由が危ぶまれる」「言論府が自らの首を絞める行為に等しい」(丸山議員のツィート)というのなら、テレビでもラジオでも、あるいはネットメディアでも「北方領土問題についての意見」を堂々と論じればよい。じっさいに「議員辞職勧告」に対しても「言われたまま黙り込むことはしない」と言うのだから、記者会見を開くべきであろう。そのさいに、歳費の政治資金への流用、および使途不明金についての質問がおよぶのは間違いないと指摘しておこう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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