映画『マミー』上映会とトークショーのお礼

尾﨑美代子

10月11日開催の映画「マミー上映会とトークショー」に集まって下さった皆様、ありがとうございました。お礼が遅くなりました。今朝へとへとでしたが、昼バイトに行き、戻って特急ひかり並みに急がなくてはならない作業をひとつこなし、この時間となりました。遅くなって申し訳ありません。

ここ数日、どうなるか?と胃がきりきりでした。人数のことですね。前日、そして当日の3時間前まで「予約いけますか?」の電話があり、それへの対応。というのも、予約の方に加え、いつものように当日来られる方もおりますので、会場に入れるかどうかと心配でした。前日一応確認したら80人はいけるなとなっていたので、当日はまず椅子を並べてみるところから始まり、どうにか80席作りました。最終的にその後10席位足し、関係者数人は外でたむろうという感じで、90人は見てくださいましたかね。

予約の確認作業におわれ、当日になっても2部の二村監督と眞須美さん長男のトークショーの準備ができないままでしたので、上映中外で準備してました。

トークショーですが、映画館での舞台挨拶と違って、二村監督、長男もおもいっきりいろいろ話してくださいました。

「なぜカレー事件の映画を撮ろうと思ったか?」「(最初はこの事件が冤罪と確信できなかった二村さん)どのような取材からこの事件は冤罪ではないかと思えましたか」等々。次に事件について。長男には事件当日のことなど語っていただきました。

また再審については「青空の会」の坂口さんに説明して頂きました。

そして6月に亡くなった健治さんについて。ここはしおらしく悲しむところですが、なぜか笑いがいっぱいでした。それだけ健治さんがみんなに愛されていた証拠です。でも長男の一人きりの葬儀で、葬儀会社の方に「参列者は何人位ですか」と聞かれ、「僕一人です」と言った時の辛さ。棺を火葬炉に入れ火をつけるボタンを押すまでに11分かかったことなど……ひとりぽっちになった長男を支援者みんなで見守りたい思いを強く致しました。

そして最後、長男の最近の活動(松本麗華さん、広島保険金事件で死刑囚となった父親をもつ大山寛人さんと3人でトークショーなどを行っている)話、二村監督からは10月末より公開が始まる新作「京都ALS嘱託殺人事件」のお話をお聞きしました。いつもと違って長男は、サングラスもマスクもせずにお話しました。その間は写真など取らず、最後にサングラス、マスクを着けて写真を撮る予定でいましたが、私がうっかり忘れてしまいました。昨日一番の失敗、そして後悔です。なので、トークショーの写真はありません。かわりにいろんな方が撮って下さった上映中の写真があります。結果、飛びこみで当日来られた方が20名、一方予約者で来れなくなった方が10名ほどなので、全員来られていましたら、やっぱり会場には入りきれなかったようです。

映画上映の際にはいつもお聞きします。「今日この映画を始めてみる方?」。ナント半分くらいの方が初めてでした。予約を頂いた方の7、8割は、このような冤罪関連の企画は初めての方でした。それも若い方が多かった。「ネイルもきちんとしています、ええ、髪のセットもね」というような女性、「たまにDJやってます」みたいな兄さん、リーゼントをびしっと決めてきたビリーさん……。

みなさん、映画を見ての感想を送ってくださいな。私のメールに送ってくれたら、二村監督と長男にも送ります。どう感じたか、何を考えたか、そしてこの事件は冤罪と思えたかどうか。お知らせくださいね。

終了後の親睦会では、「なぜこんなに集まってくだたのかね?」と話してまいた。冤罪だけではなく、袴田事件、福井事件、そして昨日会場にきてくれた西山美香さん、青木恵子さんの事件のように、警察、検察が嘘をついたり、暴力的、威圧的な態度で嘘の自白を強いることがどんどん明らかになっている昨今、カレー事件も冤罪ではないかと考えて頂き、様々な支援に関わっていただくことをお願いいたします。

まだ少しヘトヘトなので、うまくまとめられませんが、とにかく皆さま、ありがとうございました。

昨日は埼玉、東京、神奈川、名古屋、山梨、徳島、岡山、九州から参加される方がおりました。今度は東京でやりたいねと二村監督と話しております。最新作の公開がおちついた頃になりますが、その際はぜひ関東の皆さま、ご協力をお願い致しますね。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

『紙の爆弾』最新号(11・12月合併号)に栃木の冤罪「今市事件」を寄稿しました

尾﨑美代子

鹿砦社『紙の爆弾』最新号(11・12月合併号)に久々に冤罪事件を寄稿いたしました。今回取り上げたのは栃木県の「今市事件」。事件の焦点を、無期懲役で服役中の勝又拓哉さんが「供述弱者」であった件に絞って書きました。

勝又さんは名前も顔も日本人に見えますが、実は台湾人で、日本人男性と結婚し来日していた実母を頼って、日本に来ました。しかし、義理の父親と折り合いが悪く母らとは別居し、一緒に台湾から来た姉と住んでいたこと、日本語がうまく話せないため学校で虐められ引きこもりになったことから、日本語で話したりコミュニケーションをとる機会が奪われてきました。そんな拓哉さんが、とつぜん女児殺害、遺体遺棄で逮捕され、警察、検察にどんな取り調べを受けたのか、気になっていました。今回の取材では、拓哉さんの義理の弟さん(実母と再婚相手の男性との間にできた弟)の高瀬さんに資料を頂いたり、お話を聞くことができました。

私がなぜこの事件が気になっていたか? 実は、今市事件にかかわる金子達也検事という検事がおります。彼は、宇都宮地検に赴任前、千葉県で拙著「日本の冤罪」に収録している「東金女児殺害事件」を担当していました。このときは被疑者でのちに起訴され、有罪判決を受けたKさん(逮捕時20歳)を取り調べています。Kさんには知的障害があり、裁判になった際、弁護側がモニターに「弁護士」「黙秘」「検察官」など映し出し、本人に意味を問う場面がありました。その際、Kさんはほとんど答えることができませんでした。そのKさんは、「やってないなら黙秘しなさいよ」と厳しくいう弁護人より、毎日長時間顔をあわせ「〇くん」と下の名前で親しげに呼ぶ金子検事に「かねこさん、かねこさん」と懐き、「かねこさん」のいう通りにやってもいない殺害を認める供述をしてしまいます。

金子検事はその後宇都宮地裁に異動になり、そこで今度は日本語に不慣れな勝又さんを殺人犯に仕立てたのです。

金子はその後、あちこちの検察を回り、最後は福岡高検の刑事部長になりました。が、親睦会で女性に不適切発言を行い、減給処分を受け、その後は自身で依願退職しています。

この金子だけではなく、今市事件には、なんとプレサンス事件で山岸元社長の部下を恫喝・脅迫し、嘘の供述を強い、結果、現在「特別公務員暴行凌辱罪」で訴えられている田渕大輔検事もいました。あともう一人、悪検事がいたと思いますが、忘れました。

なお、弁護側は控訴審から元裁判長の木谷明弁護士(故人)などが加わり、強力な弁護態勢ができ、さらに一審で有罪とされた証拠を悉く弾劾していったのですが、なんと、東京高裁は、「いつ、どこで殺害したか」という一番大事な訴因を変更させ、一審判決を破棄しました。それなら、一審に差し戻すか、無罪を言い渡すべきなのに、再度勝又さんに無期懲役を言い渡しました。

弁護団の落胆ぶりを考えると胸が苦しくなるくらいです。中でも控訴審から加わった弁護人の一人今村核弁護士、私は、多くの冤罪事件で無罪判決を勝ち取ったこの弁護士の書籍を何冊も読ませて頂き尊敬しておりました。いつか、どこかでお会いできるのではと思っておりました。しかし、今村弁護士は、ご病気で一昨年逝去されました。控訴審で有罪判決が出たことがよほどショックで会ったことは、その後開催されたシンポジウムのなかで、司会者に意見を求められ、「何もありません」とボソッと言ったことからも明らかです。シンポに出て「何もありません」とは……。

今市事件、みなさん、知ってください。今回の記事は、自分で言うのも何ですが、わかりやすい内容にまとまってると思います。ぜひ、購入して頂き、読んで下さい。

11日、映画「マミー」上映会のピースクラブでも販売させて頂きます。
宜しくお願い致します。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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『紙の爆弾』11・12月合併号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年10月7日発売

米国の目標は「日本の消費量の半分」病害虫と残留農薬を運ぶ米国産生ジャガイモ輸入 八田純人(農民連食品分析センター所長)
閉幕から一年、底の見えない闇 仕組まれていた万博未払い問題 西谷文和
駐日イラン大使講演 アメリカの戦略的敗北と日本国民の役割
中道分裂と沖縄県知事選で創価学会・公明党は何をしたのか 大山友樹
【対談】小坂浩彰(NGOレインボーブリッヂ)× 木村三浩(一水会代表)
低迷する日本が活路を見出す自主独立の極東地政学
クレジットカードを止めたのは誰か? ICC裁判所長“制裁”の「本当の問題」昼間たかし
国民の存在を無視した改憲「緊急事態条項イメージ案」の欺瞞 足立昌勝
特捜検事が捜査対象女性と交際 法務省が事実隠蔽する理由 小川敏夫
「人手が足りない」のに「仕事がない」理由 労働の貧困化と「人手不足社会」の実態 片岡亮
成年後見制度という宿痾7 突然、行方不明になった妻を返せ!鈴木愼哉
シリーズ 日本の冤罪 栃木・今市事件 尾崎美代子
LGBT問題の現在 性自認という「内心」なりすましという「故意」三浦俊彦
アメリカの戦略シンクタンクが提起した米軍アジア戦略の抜本的転換 佐藤雅彦
原発も太陽光パネルもいらない 東京23区の電力自給自足は可能である 平宮康広

〈連載〉
例の現場
NEWSレスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://kaminobakudan.com/

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殺害事件の「首謀者」とされて ── 服役中のAさんからの手紙

尾﨑美代子

拙著『日本の冤罪』発行以降、大勢の方から「私も冤罪です」という内容の手紙を頂いた。多くは現在服役中の刑務所からだ。その一人Aさんは青木恵子さんに手紙と事件に関連したノートを送ってきた方だ。青木さんは多くの冤罪犠牲者の支援活動をしているが、裁判資料など読むのが大変だということで、私に「読んで」と回ってきた。

ノートには、非常に几帳面な字で事件の概要が書かれていた。ある男性の殺害事件で、Aさんが首謀者として逮捕されたのは事件から数年後だった。ほかに逮捕された数人は口裏をあわせてAさんが首謀者だと供述。彼らの刑は首謀者Aさんの半分以下だ。

ノートには唐突に「遺体を骨と肉にわけ、ある日、家族と行った別荘で、バーベキュー用のコンロでバーベキュー用の炭で火をおこし、その火で焼き、バーベキュー用のトングで骨を粉々にした」というような内容が書かれていた。私は「そんなことできるかよ」と突っ込みながら読み進めたが、さらにその粉々にした骨などを、別荘に行ったのだったら遠い山奥に廃棄すればいいものを、自宅のある都内に持ち帰ったと書いてある。

ちょうど、埼玉愛犬家殺人事件をテーマにした中村明監督の映画「生きし」(https://ikisi-movie.com/)の上映が十三の七芸で始まり、私がトークショーに呼ばれたこともあって、以前読んだ埼玉愛犬家連続殺人事件の本を読み直した。ご存じのように、この事件の犯人は、殺害した遺体をドラム缶で相当強い火力で焼いていた。バーベキュー用のコンロや炭では到底無理だろう、何言ってんだと考えながら、Aさんと手紙のやりとりが続いた。

私が質問し、Aさんが答える形でやりとりは10数通に及んだが、7、8通目でその謎がようやく溶けた。男性がいなくなったのち、男性の周辺にいたAさんらが疑われたが、確固たる証拠がなかった。男性の遺体すら発見されていなかった。しかし、男性は、警察の捜査で、失踪したのち全く行方がつかめないこともわかった。多分殺害されているだろうと考えた警察は、当時周辺にいたAさんらに目をつけ、Aさんらがその数年の間に、何をしたか探る。その間、確かにAさんは家族と別荘に行き、そこでバーベキューをしていた。バーベキュー用のコンロや炭を購入したこと、別荘を借りたことなどは、領収書や家族の供述などで証明できるのだろう。そこで警察はみつかっていない遺体の処分は、その別荘でバーベキューをやったときに実施したというストーリーを組み立てたのだろう。「●年、●月●日、お前は家族と●●に行ったな?」と聞けばAさんも「イエス」と答えるしかない。

しかし、何度もいうが、バーベキュー用コンロと炭で遺体の肉、骨を焼き、トングで粉々にはできないだろう。

Aさんが首謀者として、殺害も遺体の損壊も実行したというほかのB、Cの証言、供述調書がある。しかし、これは裁判には出ていないという。何故か? 信用するに値しないからか?

その調書をAさんは私に読んで欲しいという。私は裁判資料を読むのは好きだから、というか、供述調書や裁判の証言記録を読むと「おいおい、本当かよ」と思える箇所がよくあるし、それが彼の無実を晴らすことにつながればと思って読むからだ。

実はAさんのノートを丹念に読んでみたら、男性が殺害された日、その時刻に、Aさんは殺害現場にはいれなかったのではないかと思える箇所があり、そこには直接証拠も存在するではないか。それをAさんに手紙で示した。Aさんは「そうなんですよ。何度言っても誰にも信じてもらえないんですよ」と書いてきた。そりゃそうだ。Aさんは首謀者とされたのだから。

そしてAさんは、その殺害現場でAさんが中心となり、男性を殺害したという生生しい場面を、ほかのB、Cが供述した調書を、私に読んで欲しいという。調書自体やコピーを私に送ることは無理(違法?)なので、調書を丸々ノートに書き写し送るという。それはすでに上に申請し許可が下りたという。そしてA4ノート一冊分に関係者の調書を書き写したものが送られてきた。

関係者Bによれば、殺害した際、もう怖くて怖くて何があったか、頭が真っ白で覚えてないといいながら、そのあと、非常に詳細にAさんがどうやって殺害したかを述べている。Aさんがどのように遺体を損壊したかなど極めて詳細に書かれている。「あなた、頭真っ白じゃなかった?」。しかも初めての殺害、さらに「なぜ男性を殺すに至ったかについて、うっすら金銭関係とは思うが、怖くてAさんに聞けなかった」といいながら、男性の足を持ったりしてAの殺害行為に加担している……。

B、Cが述べる殺人鬼Aさんはものすごい凶暴な人と書かれている。しかし、私にはそう思えない。何人もの冤罪を訴える人と手紙のやりとりをしているが、文章にはその人の特性が表れてくる。中には多少ずうずうしい方もいる。自分をよく思われたいと、盛ったであろう内容を書いてくる人もいる。もちろんだから彼らを信じないのではないが。

Aさんで気づいた点がある。私が出した手紙には、私の店の住所の郵便番号(557-0002)が書いてあった(ちなみに手紙は読みやすいようにパソコンで書く)が、Aさんの返信には私の郵便番号が書いてなかった。「なぜ書かないのかな?」と不思議に思っていたところ、ある時の手紙の最後に「尾崎さん、すみません、尾崎さんの住所の郵便番号を教えてくれませんか? ちょっと読めなくて看守の人に見せても読めないと言われましたので」と書き、「本当にすみません」と詫びているのだ。まあ、私の字が下手くそだったということだが、「読めません」とずっと言えないような人だったのだ。私が怒ってしまうと思ったからなのか、それはわかりかねるが、「僕もあまり字が綺麗なほうではないので……」とめっちゃ綺麗な字で書いてきた。A4ノート一冊に毎日コツコツコツコツと調書を書き写したAさんの思いを、私も必死に受け止めたい。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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「花田郵便局強盗事件」再審請求審で、「犯人」とされたナイジェリア人男性に有利な証拠が出てきた

尾﨑美代子

25年前の2001年に起きた「花田郵便局強盗事件」(兵庫県姫路市)で、「犯人」とされたナイジェリア人の男性Aさんの第二次再審請求審(非公開)で、Aさんが犯人でない可能性を示す証拠が出てきた。

事件の概要はこうだ。地元の特定郵便局に午後4時過ぎ、目出し帽に雨合羽姿の黒人男性2人が強盗に入り約2000万円を強奪、日産シルビアで逃走した。地元にはナイジェリア人など黒人が多く住み、地元の工場などで働いていた。Aさんもその一人。強盗に入ったのはAさんも知っているBとCだったが、なぜAさんが疑われたか? 実は捜査中の警官が、目撃者の通報を受け、Aさんの倉庫内にシルビアがあるのを確認したからだ。警官が倉庫に行った際、倉庫の扉には鍵がかかっていて入れなかった。鍵で開けることができるのはAさんだけ、だからAさんが犯人だとされ、Aさんは警察に連行された。Aさんは犯行を否認したが、翌朝逮捕された。そのニュースを知り驚いたのはCと共に強盗に入ったBだ。「強盗は自分とCがやったのに、Aさんが逮捕されるなんて」と弁護士と共に出頭し、「強盗をやったのは僕とCだ」と自供し逮捕された。しかし、警察はCを探しきれず、Aさんを犯人だとした。

さっき書いたが、警察がAさんを逮捕したのは、倉庫には中央に大扉があり、そこは内側から南京錠がかけられ開けれなかった。その脇に小さな扉があるが、そこには外側から鍵がかけられ、やはり入れなかった。そして鍵を持つのはAさんだけだから、Aさんが犯人と決めつけられた。しかし、今回再審請求審で新たに証拠開示されたのは、扉に鍵などついていない、事件当時の倉庫の写真だ。

Aさんは、倉庫には昼間鍵はかけてなくて誰でも入れたと供述した。Aさんはナイジェリア人仲間のBらと午前中は倉庫近くの工場で働き、午後からは倉庫内で中古車などを扱う貿易の仕事をしていた。Aさんは、日本人女性と結婚し子供ももうけ、更に当時日本の永住権も取得していた。また以前地元で黒人による痴漢事件があった際、仲間が次々と取り調べられることを危惧し、地元の警察と協力し、犯人を逮捕したこともある。そのため、事件当日も地元警察から問い合わされるほど信頼されていた。いわばナイジェリア人仲間にとって何でも相談できる「兄貴的存在」だった。

「Aさんは犯人でない」と自首したBは、実は、そう親しくないCにしつこく誘われ、強盗に関わってしまっていた。しかもCは「そんな大金は取らない。行員らを暴行しない」とBを説得したのに、郵便局から出てきた際には大金を持っていた。怖くなったBは、どうしたら良いか困り、「兄貴的存在」であるAに相談しようと倉庫に行った。しかし、Aが不在だったため、倉庫内に金などを置いたまま逃げていた。

不可解なことが一つある。倉庫にかけつけた警官がかけつけた際、倉庫には鍵がかけられ閉まって入れないはずだった。なのに何故警官は倉庫内のシルビアを確認できたのか。

警官・赤井はこう証言している。シルビアが倉庫に入るのを見たという桂という一般男性に案内され倉庫に到着。しかし鍵がかかって入れない。隙間から覗くとシルビアが見えた。中に犯人が潜んでいるはずだ、と考えた赤井。「誰かおるか? でてこい!警官だ」と声をかけた。ここで「はい、犯人ですが、なにか?」と出てくる犯人がいるだろうか? もちろん返事はない。警察の情報では、犯人は複数の黒人、拳銃を所持しているようだ。ならば早く検挙しないと第二の犯行がおきるかもしれない。赤井はそう考え、本署に連絡。「中にいるようなので確認したい」と申し出ると本署が同意したという。見ると扉の横の少し高い位置に窓がある。「あそこから入れるのではないか」と赤井は、もう一人の警官と桂に手伝ってもらい中に入り、シルビアを確認。では、赤井は外から鍵のかかっている大扉をどうやって開けて外に出れたか。赤井の証人尋問調書にはこう書かれている。
「大扉の内側には南京錠で鍵がされておりましたけれど、この南京錠自体に、それを開ける鍵が付いておりましたので、すぐに開きました」と。そして倉庫の外に出た赤井は、本部の捜査員が来るのを待っていたと。

その高い位置にある小さな窓がこれだ。先日Aさん、青木恵子さんと現地へ行って確認してきた。窓のある位置の半分は2階へ荷物を運ぶエレベーターが付いており開かない。窓のもう半分には鉄格子が組み込まれていて、入れない。どうやって入ったのだ、赤井は。

現在、倉庫の入口の大扉は綺麗に改造されていた
でも大扉の横の小さな窓は昔のまま。ここから入ることは出来ない

はっきり言おう。赤井は扉脇の小さな窓から入ったのではない。開いていた扉から入ったのだ。令状も取らずに扉を開けて入るのは違法行為だ。でも凶悪犯が中にいるはずだからと、「交通規制係」の赤井は、複数の強盗犯がいると考える倉庫に果敢に一人で突入した。もちろん、それも違法だが、赤井はいうだろう。「第二の事件が起きてもいいのか」と。

しかし、今回その扉に鍵がついてない証拠が出てきた。この証拠が、Aさんを無罪に導いてくれたらと祈るばかりだ。

注・ややこしい事件ですが(冤罪はどれも警察、検察が無理矢理犯人にするため作ったストーリーなのでややこしいし、辻褄があわないですが)私の解説はいかがでしたか? わかりやすかったとか、わかりにくかったとかお聞かせ下さい。

《関連記事》
◎花田郵便局強盗事件 ── 黒人のナイジェリア人を蔑視し、冤罪事件を作った姫路警察(2026年4月28日)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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再審法改正問題 ── 事件の被害者遺族も苦しめる検察の証拠隠し

尾﨑美代子

7月17日、再審制度の見直しを盛り込んだ刑事訴訟法の改正案が参議院で可決した。感想の声は様々あるが、私の感想は、袴田秀子さんと同じ、「がっかり」だ。

長年この問題に取り組んできた方々のご尽力には頭が下がる思いだ。しかし、運動が盛り上がりを見せるなか、突然法制審が出張ってきたとき、「冤罪をさんざん作ってきたお前らに、再審法を考えようなどという資格はないぞ。ひっこめ!」とひっこめさせる圧倒的な力があったならば、と考えると残念で仕方ない。娑婆にいる我々は「5年目に必ず良い方向へ変えてやろう」と考え、再度自分を奮い立たせるしかないが、刑務所の中で「自分たちが救われるように、再審法が変わるのでは」と吉報を待っていた冤罪被害者はどれだけ愕然とされたことか、それを考えると、娑婆にいる私らの落胆などは彼らの悔し涙の一粒にも満たないだろう。

法案が可決した2日前、福井事件の前川彰司さんが国会に参考人として呼ばれていた。出席してガツンと自身の主張をぶつける気満々だったが、前日に出席をやめたそうだ。鴨志田弁護士のxによれば、前川さんは前日関係者に17日に政府案が可決されると聞き、ならば自分が出向いて証言する必要はないではないかと思い、関係者に「いかない」と告げたそうだ。それを知って私も何度か電話したがつながらなかった。一方、その国会には、前川さんが犯人とされた福井事件の被害者のお姉さん・大橋広子さんが参考人として出席、「前川さんも私も被害者」と述べたという。

被害者の遺族の中には、一旦犯人が決まったのに、彼らが再審を訴え、さらに無罪となったら、再び犯人を捜さなければならない。いや、日本の警察、検察は自分たちが犯人としたて、裁判で有罪にした人が、再審で無罪となっても、いちから犯人探しをすることはまずない。ということは、遺族は、家族が誰によって何のために殺害されたか、その理由がわからないままになってしまう。新たな地獄だ。

警察、検察が嘘の証拠などで犯人に仕立てた人物が、実はそうでなかったならば、裁判などで証明された犯人の「動機」は嘘になる。自分の家族はそのような「動機」で殺害されたのかと考える、その動機が嘘だったならば、これもまた遺族にとって地獄だ。 

私が冤罪と確信する事件を例に考えてみよう。2008年千葉県東金市でおきた女児殺害事件だ。東金市のある病院の駐車場で遊んでいた女児が突然行方不明になり、20数分後、別の場所で遺体で発見された。女児の母親はこの病院の看護師で、当時夜勤明けで仮眠をとっていた。女児の祖父はその病院の院長、つまりシングルマザーの母親は父が経営する病院で働いていた。複数の病院職員が昼12時に駐車場で遊ぶ女児をみていた。「院長先生のお孫さん」だから、見間違える訳はない。

この事件で逮捕されたのは、近所に住む男性Kさん(当時21歳)だった。Kさんには知的障害があり、当時は仕事を辞め、家にいることが多かった。Kさんを犯人とした検察のストーリーはこうだ。女児をみつけたKさんは女児と友達になりたくて、女児を抱きかかえ、店が立ち並ぶ商店街を白昼堂々病院から300メートル離れた自宅に連れて帰った。

Kさんと女児はしばらくアニメの話などして遊んでいたが、女児が帰りたがり、ぐずついて、そのうちKさんを泣きながら「ばか、ばか、ばか」と罵倒した。Kさんは思わずカッとなり、「暴走モード」になり、女児を風呂の水につけて溺死させ、衣類を脱がせ、ゴミ袋にいれ、マンションの窓から捨て、遺体は裸のまま抱きかかえ、別の場所に遺棄した、というものだ。

衣類の入ったごみ袋が捨てられた場所が、Kさんのマンションの下の駐車場だったことから疑われたようだ。

しかし、この「犯行」がわずか20数分で行われるだろうか? Kさんのように知的障害のある子どもは、運動能力が普通の子供より乏しいことを関係者が証言している。事件前勤務していた布団のリース会社の関係者も「普通3枚の布団を運べるところ、彼は1枚しか運べなかった」と証言していた。20数分では到底不可能な「犯行」を、検察はどうやって出来たことにしたのか? そこには恐ろしいカラクリがあった。前述したように、昼12時に女児を見たとの複数の関係者の供述があったが、その供述をないものにして、その前の11時40分の目撃供述のみを採用したのである。11時40分から1時20数分、つまり40分あればこの「犯行」は実現できるとしたのだ。

Kさんが女児に性的暴行を加えたとの証拠はなかった。ではKさんの殺害動機を何だったか? 帰りたくてなかなか帰してくれないKさんに対して、女児が「ばか!ばか!ばか!」と罵倒したからとなっている。女児の母親は考えたはずだ。まず最初に、あの子は見ず知らずの大人の男性に着いていくだろうか? あの子は初めて会った大人に、「ばか!ばか!ばか!」などというだろうか?私はあの子をそんな風に育てただろうか?このような母親の苦悩は、真犯人が逮捕され、本当の動機が判明するまで続くのだろう。

裁判でKさんには、懲役15年の判決がくだされ、上告も棄却され、刑が確定。この事件については、ジャーナリスト三宅勝久さんが「司法が凶器に変わる時」で裁判の内容を詳細を書いている。私も三宅さんの協力をえながら「日本の冤罪」で取り上げた。 一方、支援団体などの存在が不明のため、その後どうなっているかはわからない。kさんは既に服役を終え、お母さんのもとに戻っているのだろう。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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湖東記念病院事件の国賠控訴棄却 西山国賠を通じ、「供述弱者」について考えていこう!

尾﨑美代子

6月25日、大阪高裁・長谷部幸弥裁判長は、湖東記念病院事件の国賠訴訟の控訴審で、原告の控訴を棄却する判決を言い渡した。

この裁判、一審の大津地裁は県(滋賀県警)の違法は認めたが、国(検察官)の違法は認めなかったため、西山美香さん弁護団側が大阪高裁に控訴していた。

殺人罪で逮捕された西山美香さんは、取調べを担当した滋賀県警山本誠刑事に「恋心」を抱き、というより、接見禁止でひとりぽっちになった美香さんは、山本しか信用できる人がいなくなった。山本は美香さんに「弁護人など信用できない」というようなことまで言っていた。美香さんは初めての逮捕、山本のいうことを認めたら急に優しくなり、優秀な兄たちと比較されていた美香さんは「君だってがんばってるよ」などと優しく言われ、ぐんぐん山本の言いなりになっていった。

山本の取り調べで、美香さんがどうやって患者を殺害できたかの話になった。患者の人工呼吸器の管を抜けば危険を知らせるアラームがなる。でも病院内でその音を聞いた者はいなかった。では、アラーム音を鳴らさず、どうやって呼吸器を外したままにできるか?警察は捜査中に、呼吸器の専門家に、アラームを鳴らさずに管を外し、酸素を送らない方法を聞き、消音維持機能ボタンがあることをレクチャーされた。呼吸器にあるそのボタンを押すと、管が外れても60秒間アラーム音は消せる。60秒後に再び鳴るので、その前にボタンを押せば音はきえる。美香さんはボタンを押したのち、胸の中で「1,2,3……」と数え、60秒後前に再びボタンを押し、その動作を3,4回、つまり3,4分酸素を送ることをやめたら、患者さんの目がきょろきょろ、口がばくばくして息絶えたと供述した。なお、そのボタンの操作方法は先輩の看護師たちがやるのを見て知ったと供述していた。

しかし、その後の捜査で、当時病院内の看護師の中で、その操作方法を知っていた看護師がひとりもいないことが判明した。警察の取調べのあとには検察官の取調べがある。美香さんを取り調べた検察官・早川検事は、その事実を知り、警察が作成した員面調書には虚偽があり、これでは裁判は勝てないと思ったのだろう。

そのため早川検事が作成した検面調書は、美香さんが何故消音維持機能ボタンのやり方を知っていたか、知ったかに新たな内容に書き換えた。先輩看護師から教えてもらったのではなく、犯行時ぐうぜんそのボタンを押したら、アラームが止まったので、「あらま、このボタンなに?」と思いながら、なぜか60秒くらいする前にもう一度押したらまた音がとまった。そのとき美香さんが「ああ、これを押せばだいたい60秒位、音はとまるんだな」と知り、その行為を3,4回やって、患者を死なせた……と。

この書き換えを早川検事は、自分が誘導したのではなく、美香さん自身がそう供述したと裁判で証言した。井戸弁護士がいうには、警察の取調べから検察の取り調べに移る頃、美香さんはまだ山本誠刑事のコントロール下にあった。山本は検察へ行く美香さんに「警察で言ったことと同じことをいえよ」と念を押したはずだ。だから美香さんは早川検事の前で警察で言ったことと同じことを述べたにちがいない。でも検察では、警察で取られた供述とは違う内容の供述がでてきている。これは早川がむりやり「こうではないのか?」と
美香さんを誘導した可能性がある。いや、それしか考えられない。それは検察(国)の責任となるのではないか? 違うか?

判決要旨には、いくら美香さんが山本刑事に恋心をもったといっても、まさか自分が殺害事件をおこしたなんてことを認めるようなことを言うわけがないと、何度も強調している。美香さんは、山本刑事にいわれるがままに「管を抜いた」を認めたが、まさかそれが「殺害した」になるとは思っていなかったのだ。

 自分が殺害をやってないから、管を抜くことが殺害に結び付くとは考えてもいないのだ。それこそが、やっていない証拠なのに。桜井昌司さんが裁判長に(事件があった日時について)「なぜ、あなたはそんなに特別な日を覚えてないのですか?」と聞かれ、「いや、僕にとって特別な日ではないです。普通の日です」と答えている。実際殺害をやっていたら、「その日」の日時は鮮明に覚えているだろう。でもやっていないから、桜井さんにとっては普通の日なのだ。美香さんも同じ。管を抜いて殺害していたら、管を抜いたイコール殺害に結び付くが、やっていないから、むりやり言わせられた管を抜いたが殺害となるとは思っていないのだ。

井戸弁護士が、まだ続くこの裁判では、ぜひ「供述弱者」について知って欲しいと訴えられた。「供述弱者」は美香さんの裁判で新たに作られた言葉だ。しかし、これまでも大勢の供述弱者が犠牲になってきたことだろう。千葉県東金市でおきた「女児殺害事件」では、知的障害を持つ男性が、担当検事に「金子さん、金子さん」と非常に懐き、言われるがままに罪を認めた。「やってないならやってないと言えよ」と厳しく忠告する弁護士より、毎日顔を合わす優しい検事にコロリと騙された。先日検察が有罪立証を断念し、再審無罪が確実となった「日野町事件」の阪原弘さん(故人)も、のちに「境界線級の知的発達遅滞」があったと鑑定された。伊賀弁護士によれば「『わからない』と言えない。そのため(刑事に何か言われたら)『わかる、そうや』と言ってしまう」という。今市事件の勝又拓哉さん、花田郵便局事件のジュリアスも、台湾人、ナイジェリア人ということで、警察、検察のいうことがどこまで理解できていたかは不明だ。彼らも供述弱者といえよう。先日神戸で逮捕され、長期的に不当な取り調べを受け、不起訴後摂食障害を起こし餓死した16歳の少女もそうだろう。美香さんの裁判を通じて、供述弱者にどう対応していけばいいか、考えていこう。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

再審無罪が確実となった「日野町事件」 どんな冤罪事件だったのか

尾﨑美代子

8年前に再審開始が決定していた「日野町事件」、これまで有罪主張を続けてきた検察が、6月19日の三者協議で有罪立証を断念したため、再審無罪が確実となりました。

拙著「日本の冤罪」にも寄稿していますが、日野町事件がどんな事件だったか、ザクッとですが、書いておきますね。

取材でお会いした弁護団長・伊賀興一弁護士(上記youtube動画画像:右)は、開口一番こういわれました。「この事件はいつどこで、どんな事件だったか、事件性の中身が未だに明らかにされてないんだよね」。私は目が点になりました。どういうこと?

酒屋の女性店主が失踪したのは1984年12月28日ですが、殺害(事件)があったのが何日かは不明です。というのも、店主はその日店を出て行き帰宅していませんが、そんなことが度々あるのかどうかは知りませんが、翌日別の従業員が店を開け、営業をしています。その際、店の外に開くのをまっていた客がいたといいます。つまり鍵は閉まっていたのです。同居していた親戚の女性は奥の部屋で寝たきりで、何がおきたのかわからずじまいでした。

さすがに数日して戻らない店主を心配し、警察に届けられますが、店主の遺体と手提げ金庫が別々の場所で発見されたのは、年が明けてのこと。店主が金目当ての強盗に殺害されたとして滋賀県警の捜査が始まります。

阪原弘(ひろむ)さんの逮捕は3年後です。酒店の常連客だった阪原さんは警察で入れ歯の金具が不具合をおこすほどの暴行を受けます。一旦帰宅した弘さんは家族にこう告げます。「殴られても蹴られても我慢したが『娘の嫁ぎ先に行ってガタガタにしてやるぞ』と言われ、我慢できんかった」と。そう、弘さんはまもなく嫁ぐ娘のことを一番に心配したのです。翌日警察に向かう弘さんに家族は「やってないのにやったといったらあかん」と言いましたが、弘さんは警察に暴行受け無理矢理自白させられ逮捕されてしまいます。

冤罪を多数作っている滋賀県警の書いた杜撰なストーリーはこうです。酒代に困っていた弘さんが、売り上げの帳面をつけていた店主の背後から首を絞めて殺害した…と。しかし、弘さんの家族は当時みな働いており預貯金もかなりあり、金に困っていませんでしたし、のちに盗まれた金庫は酒屋の売上が入った金庫ではなく、奥の部屋にあった通帳や証書などが入った金庫であることが判明しています。余りに杜撰。

 しかし、警察は弘さんが殺害後、遺体をまず宅地造成地に捨て、再び店に戻り約時間店内を物色、朝方金庫を山中に持っていき捨てたというものでした。なお、その際、店のカギはかけていなかったというのです(なのに、翌日店の開店を待つ客が外にたむろっていた)。

弘さんは当日知り合いの家で飲み、そのままその家で寝ていたというアリバイがありました。しかし、警察はアリバイを証明するその家の人をどう脅したかはしりませんが、彼らに「そんなことはなかった」と証言させます。

長くなるので途中経過を省きます。

裁判で無罪を主張した弘さんに、無期懲役の判決が下されます。弘さんは再審を闘いはじめますが、道半ば、獄中で病に倒れ、亡くなってしまいます。今回開始が決定した再審は、弘さんの遺族が請求したものです。

再審請求審のなかで明らかになった警察・検察の嘘はやまほどありますが、最大の嘘は、弘さんが「引き当て捜査」(容疑者が自ら遺体など遺棄した現場に捜査員を連れていくこと)で撮影した写真に真っ赤な嘘があったことです。どういうことか? 遺体遺棄現場の近くで車を止め、そこで弘さんを降ろし、弘さんを先頭にして遺棄現場に向かう「往路」の写真があります。遺棄現場では人形を使い、「遺体をここにこうして遺棄した」という写真があります。そしてその現場から車のある場所に戻る「復路」の写真があります。普通、遺棄現場を案内するなら、「往路」だけの写真でいいはずですが、なぜか「復路」の写真も多数あったことから。「これは変だ」と思った弁護団が写真のネガを証拠提出させました。ネガといっても今の若い人はわからないでしょうね。昔はカメラにネガフィルムを入れて写真をとります。それは撮った順番になります。遺棄現場に行く時の写真、遺体を遺棄した写真、戻るときの写真という具合です。

弁護団がそれらのネガの番号を調べたところ、順番が全く違っていたことが判明。じつはネガには現場に行く「往路」の写真はほとんどなく戻ってくる「復路」の写真ばかりだったのです。さらに調べると、現場に行く際に撮った写真の何枚かが帰ってくる「復路」に撮られたものであることが判明。つまり車の戻ってくる復路の場所で、弘さんが反対側を向かされ写真を撮られていたのです。それを追及した弁護団に捜査員は「行きに撮り忘れたから帰りに撮った」などと証言したのです。あるいは遺体や金庫を捨てた写真については何度も繰り返して撮っていたのです。」つまり捜査員が弘さんに「こうして捨てた」と演技指導していたのです。余りに酷い滋賀県警、それを後押しする大津地検と大津地裁。

端折りすぎですが、こうして2018年7月11日、大津地裁(今井輝幸裁判長)は再審開始の決定を出しました。それから大阪高裁の決定がでて、最高裁の決定がでて、そして今回検察が有罪立証を断念するまで、一体何年かかってるんだ!! そして8年目に検察はようやく有罪主張を断念したのです。

今回の事件で明らかなように、検察は冤罪犠牲者が無罪であることの証拠を必死で隠し続けます。現在、国会で議論がなされている再審法改正問題で、証拠の全面開示が非常に重要であることは、この事件ひとつ見ても明らかです。

先日より青木恵子さん(東住吉事件冤罪犠牲者)が獄中の仲間に声をかけ、冤罪で苦しむ人たちの訴えを集めています。再審法改正問題の議論のなかで、法制審などにも参考人として呼ばれた青木さんが、当事者の声があまりに軽視されているのではないかと危惧し始めた行動です。私やジャーナリスト片岡健さんなども協力して行ってきました。現在18名の方から切実な訴えの文章が届いています。青木さんは自民党に呼ばれた際知り合った国会議員らに意見書を手渡し、私は福井女子中学生殺害事件で再審無罪を勝ち取った前川彰司さんを通じてこれらの訴えを国会議員に届けています。ある議員からはすぐに青木さんに「国会で取り上げてもよいですか」と連絡がきたそうです。多くの方が証拠の全面開示を訴えています。なんのための改正なのか? 皆さんも一緒に考えてください。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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花田郵便局強盗事件 ── 黒人のナイジェリア人を蔑視し、冤罪事件を作った姫路警察

尾﨑美代子

4月11日、青木恵子さん(冤罪被害者)と姫路の花田郵便局強盗事件の犯人とされたナイジェリア人のジュリアスさん(仮名)に現地案内して貰うため姫路に行ってきた。2人の黒人男性が地元の特定郵便局に強盗に入り2000万強奪した事件だ。強盗に使用した車両日産シルビアが見つかったのが、ジュリアスが経営する会社の倉庫だった。聞けば、その周辺にはナイジェリア人だけでなく、黒人の人が多数住んでいる。地元の人はいろんなところで黒人の人をみていた。ジュリアスの倉庫にシルビアが入っていったのを見た男性が警察に通報し、警察官が倉庫に到着。入口の大扉が閉まっていたが、隙間から見たら中にシルビアがあったので、警官はここに犯人が入ったと思ったという。外から「警察だ、誰かいるか」と声をかけたが返事がない(当然だ)。仕方ないから、大扉の隣にある小さな窓から入ったという。しかし、中に入ったが真暗で何も見えないので、中から大扉の鍵を開け、外に出て、捜査を担当する刑事らを待っていて、その後刑事に引き継ぎ、警察官は帰ったという。

何がいいたいか? 倉庫は所有者のジュリアスしか開けれない。自分たちが来た時大扉は閉まっていた。でも中を覗いたらシルビアが見えたから、ここに犯人がきたはずと考え、横の小さな窓からむりやり入った、と言いたいのだ。倉庫の持ち主のジュリアスはその日の夕方任意同行され、警察署で夜中まで取り調べられ、翌朝方逮捕された。

そのニュースを知り驚いたのは、実際強盗に入ったオモ(通称)だ。オモはジュリアスの知り合いだが、「強盗に入ったもう一人はジュリアスではない、オースティンという男だ」と池田弁護士に伴われ警察に自首した。何故かというと、その地域で、日本人の女性と結婚し家庭をもち、仕事も成功し、日本の永住権も取得したジュリアスは、このあたりの黒人仲間の「兄貴的存在」だったし、自分も含め仲間はいろいろジュリアスに世話になっていたからだ。以前黒人が痴漢した事件があった際、次々と関係ない仲間が取り調べられることを不安に思い、ジュリアスが自ら誰が犯人か調べ解決したことなどもあった。

オモはオースティンにしつこく誘われ仕方なく郵便局強盗に関わった。当日もオモは表で見張り役やればいいと言われてたし、職員に暴力をふるうこともないと言われて、仕方なく関わった。しかし、オースティンは郵便局に入るなりカウンターを飛び越え中の金庫室に入り、2000万もの金を強奪してきた。逃げる際、そんな大金の入ったレジ袋を見せられ、オモはビビッてしまった。そこで「兄貴的存在」のジュリアスの力を借りて返して貰おうと、ジュリアスの倉庫に行った。しかし、ジュリアスはいなかった。しかし、いつものように倉庫は開いていた。そこでとりあえず金や強盗時に使った合羽、目出し帽をそこに置いて逃げた。が、ジュリアスが逮捕されたとしり、慌てて自首したのだった。

この事件を取材する際、警察官が入ったという大扉の横の小さな窓は鉄格子が入って入れないし、鉄格子の入ってない半分の場所には荷物を運ぶエレベーターが置かれているため、窓は開かないと聞いていた。

今日の現地調査でそれを確認した。現在、のちに倉庫を所有した方が改装して立派な入口になったが、隣の小さな窓は以前のままだ。良く見て欲しい。半分は鉄格子が入っている。その隣に映るのは荷物をあげるエレベーターで、そこからは入れないではないか?

現在倉庫の入口の大扉は綺麗に改造されていた
でも大扉の横の小さな窓は昔のまま。ここから入ることは出来ない

強盗後、2人がシルビアで逃走したすぐ近くには、ガソリンスタンドがあり、防犯カメラがある。当然警察は当然これを調べたはずだ。実は金を強奪し郵便局を出る際、オースティンは暑かったのか、目出し帽を脱いで郵便局に置いてきたのだった。つまり郵便局を出る際の映像やガソリンスタンドのカメラ映像には、目出し帽を被ったままで運転するオモの姿と助手席に座る坊主頭のオースティンが映っていたはずだ。郵便局のカメラも局内の映像とATMがある入口の映像を交互に録画されていたはずだが、オースティンが入口を出る際の映像は写っていない。というのも、オースティンは顔はわからなくても後ろ姿で彼が坊主頭なのは丸判りなのはすぐわかる。一方、当時ジュリアスはドレッドヘアだった。ドレッドヘアでもどのくらいの長さかと今日聞いたら、腰の当たりまであったそうだ。更に局内に残された目出し帽から毛髪が検出されたが、それはごくごく短い坊主頭の毛髪で、しかもそのDNA型はジュリアスのものでもオモのものでもない、第三者のものだった。

特定郵便局の前
郵便局近くのガソリンスタンドの防犯カメラの映像はいまだに証拠開示されていない

現地調査のあと、姫路駅前のガストでジュリアスに話を聞いた。ほかにも多数の納得いかない点がある。私と青木さんはジュリアスに「これはジュリアスが黒人だから、どうせまともに裁判できない、支援者もつくはずがないと警察が考えたからだ」とつたえた。ジュリアスは「その通りだ」と言った。本当に酷い話だ。現在、再審請求審が審議されている。これは裁判所、検察、弁護団が非公開で審議するもので、そこで再審が開始されるかどうかが決まる。

どうぞ皆さん、今後の展開にご注目を。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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「供述弱者」── 今市事件が冤罪であることが非常に良くわかるひとえんちゃんねる動画

尾﨑美代子

ひとえんちゃんねるの動画、今市事件が冤罪であることが非常に良くわかる内容となっております。

冤罪被害者勝又拓哉さんとはお母さんらと服役中の千葉刑務所で一度お会いしました。その時は本当にお元気そうで、中で勉学に励んでいるとお話されてました。が、動画で弁護団泉澤弁護士が話されてますように、拓哉さんは台湾産まれで、日本で働いていた台湾出身のお母さんを頼って日本に来たため、日本語に不慣れな状況で突然逮捕されました。その取り調べ時の録音録画が法廷で流され、それを見た裁判員が「それを見て犯人と確信した」と一審で有罪となりました。この録音録画については2審で証拠にならないとされるのですが、私が言いたいのは、勝又拓哉さんは逮捕時台湾の方で、日本語も不慣れな、いわゆる「供述弱者」だったということです。この点をもっと強調すべきといつも思ってます。

だから、栃木県警は事件後8年も犯人逮捕に至らなかったこの事件について、「あいつなら落とせそうやな」と勝又さんに目をつけたのです。そして商標法違反という別件逮捕でしょっぴいた……。

西山美香さんの湖東記念病院事件の国賠で、井戸弁護士が強く主張してますが、この「供述弱者」について、日本の司法制度の中でもっと真剣に考えなければ、いつまでも弱い者が冤罪の被害者にされてしまうと危惧致します。朝から長々とすみません。非常にわかりやすい動画です。後編も公開されましたのでぜひご覧ください。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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「法律は国会だけで国会だけが作成できる。」再審法改正問題、今が正念場!!

尾﨑美代子

「法律は国会だけで国会だけが作成できる。」

まさにその通り。3月末自民党の会合に呼ばれた東住吉事件の青木恵子さんと今日店で話しました。青木さんはネットなどを見ないので、青木さんが自民党で意見したこともあって、法制審への批判が強まってるよ、と伝えた。青木さん、「えー、ママはそれは私も(自民党の会合に)行って良かったと思うけど、これからどうなるの? いい方に動くの? 法制審の案で決まったら最悪じゃない?」と。それは青木さんの言う通り。

青木さんの近くに座った、この問題に関心あるお客さんが、「そうだよな。ママ(私)が言うようにあの稲田が法制審案に反対と強く言ってくれてるが、大丈夫かな?まだまだ国民の世論は高まってないだろう」と心配してる。それもわかる。

だが、法律は国会が作るのだ。だから国会議員をこっち側につけないとどうにもならん。今日も青木さんと話したが、刑訴法内の再審法についてはもう70年何も変わってない。以前書いたが、例えば建設労働者を守る法律の中で、高所作業の労働者を守る法律なんか、その都度何回も変わっている。それは高所作業に従事する労働者の転落、死亡事故などを少しでも減らすためだ。

もちろん、法改正が改正にならず、改悪になったケースもある。しかし、今回、再審法改正しなくてはならないよねと世論が動いたのは、毎年のように次々と犯人とされ囚われていた人が、再審で無罪となったからだ。そんななか、私は見れてないが、テレビ番組、映画などでも冤罪が取り上げられるようになった。極めつけは、国が「死刑判決」を出した死刑囚袴田巌さんが無罪となったことだ。オイオイ、警察、検察、それから裁判所は何やってんだ、という話だ。で、超党派の議員たちが、再審法を70年ぶりに改正しましょうと動きたした。

するといきなり法務省管轄の「法制審」が、「いや、再審法のことなら私たち専門家が……」と出張ってきた。しかし、その委員をみたら、誰ひとり、それまで再審法や再審云々言ってなかった人間ばかりやんか? 何故こんなことになった? これ、私の著者「日本の冤罪」の冒頭、桜井昌司さんと対談した中で桜井さんが話してるが、超党派の議連案が通ったら、今再審請求してる多くの人に再審無罪が出るよと言う話。つまり、この70年、警察、検察、裁判所は無実の人を長年犯人として不当に獄中に繋いできたよね、ということがバレてしまう。これに奴らは耐えられなかったんだろうね。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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