新世代公害の代表格といえば、化学物質による汚染と電磁波による汚染である。両者とも汚染が自覚できるとは限らず、透明な牙が知らないうちに人々の体を蝕んでいく。医学的根拠は迷宮の中。電話会社はそれを逆手にとって、「危険という確証はない」との詭弁をかかげて、大規模な電話ビジネスを展開している。NHKなどのマスコミがそれを全面的にサポートする。が、その裏側では、健康被害が広がっている。

東京都目黒区中央町は、中層ビルと民家が広がる都市部の住宅街である。最寄り駅から都心の渋谷まで5分。利便性が高い静かな街である。その街で楽天モバイルの基地局をめぐる係争が起きている。事業拡大に走る楽天と、生活環境を守りたいある女性のトラブルである。

両者の攻防は、わたしの眼には、かつて海外でエコノミック・アニマルと呼ばれた日系企業と現地住民の対立のように映る。外部から侵入してきて、開発と文明化を口実に資源を収奪する「よそ者」と、被害者意識と憎悪を抱く住民の壁である。日本製品に対する不買運動も起きた。

楽天モバイルとと女性の対立にも同じような構図がある。

 

化学物質過敏症で命を落としたはなちゃん

◆愛猫の死

伊藤香さんは、自宅の一部を改造して「はなちゃんカフェ」を主宰している。「はなちゃんカフェ」とは、化学物質過敏症や電磁波過敏症に悩む人々を救済するための憩いのサロンである。

2017年12月19日、伊藤さんの愛猫、はなちゃんが息を引き取った。化学物質による複合汚染が引き金だった。とりわけ猛毒のイソシアネートがはなちゃんを直撃したようだ。米国では厳しく規制され、日本では野放しになっている化合物である。化学物質過敏症の代表的因子である。

◆化学物質の透明な牙

発端は、2012年10月だった。この日、伊藤さんの自宅には、朝から作業員らが入り、床のフロアマニュアル(保護コーテイング)の剥離作業をはじめた。その数日前から伊藤さんは体調を崩していて、自宅で療養していた。剥離作業で使う化学薬品の匂いが家中に充満していたが、特に気にかけることはなかった。しかし伊藤さんは、剥離剤に含まれている化学物質を大量に吸い込んでいたのである。

午後になって体調の異変を感じた。頭痛や吐き気、それにめまいを感じたので、自宅のはす向かいにある目黒病院で点滴を受けた。しかし、この時も自分の体内で恐ろしいことが起きているという自覚はなかった。

作業員らは、次の日も剥離作業を続けた。しかし、工事はうまくいかなかった。伊藤さんによると、床が浸水するほど大量の剥離剤を使っていたという。

それが伊藤さんの家族全員が化学物質過敏症を発症した原因だった。作業員らも被曝・発病した。はなちゃんは、餌を受け付けなくなった。下痢が続き喀血した。そしてほとんど動かなくなった。水俣病が輪郭を現わしてくる時期、狂った猫が現れたように、化学物質は最初に弱者を襲う。しかし、企業の論理は医学的な根拠が分かるまでは事業を続けるというものだった。それが後日、水俣病の被害を拡大した。

伊藤さんは、25日になってようやくホテルに避難した。東京都や地元の保健所などから、猫の症状に鑑みて、強く避難を勧められたからだ。工事を請け負った業者が、責任を自覚してホテルを手配した。

◆化学物質過敏症から「電磁波過敏症」へ

この事故は、後日、行政機関から消費者庁へ消費者安全法に違反した重大事故として報告された。目黒警察署も作業を行った業者から事情を聴取するなどの対処を取っている。

伊藤さんは、ホテルや賃貸住宅を点々とした。香料など微量の化学物質にも身体が反応するようになっていたために、汚染の度合いが少ない住居を探す必要があったのだ。一旦、化学物質過敏症になると、最初の原因となった化学物質はいうまでもなく、あらゆる化学物質に身体が反応する。これは身体を守るための防御反応で、脳がそんなふうにプログラミングされてしまうからにほかならない。

症状は悪化していった。臭覚過敏、聴覚過敏、光過敏、皮膚過敏、添加物過敏などが現れ、生活に支障をきたしはじめた。勤務していた銀行も退職せざるを得なくなった。

さらに伊藤さんは、電磁波にも身体が反応するようになった。ある時、避難先の住居でスマホを使っていると、急に吐き気に襲われた。とっさにスマホを遠ざけると、吐き気は収まった。窓のすぐ外に携帯基地局が立っていた。

伊藤さんが言う。

「この日を境界に、電磁波にも身体が反応するようになりました。電車にも乗れません。ひどい吐き気に襲われることがあるからです。剥離剤による事故にあうまで、こんな身体になるとは想像もしませんでした。学生のころはよく海を見に湘南海岸へ行っていましたが、今はそれもできません」

ちなみに化学物質過敏症の患者は、「電磁波過敏症」を併発することが多い。

◆KDDIと楽天モバイル

伊藤さんが目黒区中央町の自宅に戻ったのは、事故から4年後の2016年9月1日だった。幸いに事故の賠償金は得られたが、かつての生活は戻ってこなかった。

自宅に戻って2か月後、最初の基地局問題がふりかかってきた。KDDIが伊藤さんの自宅近くのビルに通信基地局を設置する工事を始めたのだ。しかし、伊藤さんが事情を説明したところ、KDDIは工事を中止した。既に機材をビルの上に運び上げていたが、計画を中止した。

この時期に、わたしは初めて伊藤さんを取材した。「はなちゃんカフェ」はすでにオープンしていた。わたしは「はなちゃんカフェ」の片隅で横になっている猫を見た。この時は、すでに「寝たきり」の状態だった。死が近づいていた。わたしは化学物質による複合汚染の恐ろしさを痛感したのである。

その後、2020年11月になって、今度は楽天モバイルが伊藤さんの住居から120メートルの地点に基地局を設置した。伊藤さんがそれに気づいたのは、設置工事が完了してからだった。体調が悪くなり、住居近辺を観察してみると、基地局が立っていた。

 

(上)最初の設置された基地局。2021年11月8日に撮影。(下)基地局が増設された後。2022年3月30日に撮影

楽天に事情を説明した結果、対策を検討することになった。東京都議の齋藤泰宏さんも伊藤さんを支援するかたちで協議に加わった。こうして21年9月19日、伊藤さんと楽天モバイルはある確認合意書を交わした。

合意事項のひとつに楽天モバイルが伊藤さんの自宅に電磁波シールド工事を実施するというものがある。これは電磁波を遮断するための工事である。実際に、楽天は自社で費用を負担してシールド工事を行った。屋根や壁に塗料を塗る工法で、それにより電磁波による被曝量は軽減した。

これにより基地局設置をめぐるトラブルは一応決着した。ただし、合意書には、この件に関しては今後「異議申し立て等を一切行わない」という文書を盛り込んだ。さらに、この件については、「一切口外をしない」という文言も付された。

伊藤さんは、これで問題は解決したと考えて、確認同意書に捺印した。

◆オーナーはモデルガンの販売人

ところが今年の3月になって、伊藤さんは楽天モバイルが既存の基地局の横に、別の基地局の設置工事をしている場面を目撃した。伊藤さんは楽天に抗議したが、楽天が工事を中止することはなかった。電磁波や化学物質からの避難所としての「はなちゃんカファ」の意味がなくなってしまったのである。2階のサロンはほぼ元の汚染状態に戻ってしまった。伊藤さんは、同意書に騙されたと思った。

3月20日、わたしは目黒区中央町の現場を取材した。楽天モバイルの基地局の「台座」となったビルに向かった。1階にオーナーが住んでいるというので話を聞くことにした。オーナーは、モデルガンの販売を本業にしているという。本物の銃器を販売しているわけではないが、わたしはウクライナ戦争の武器商人を連想した。

玄関のインターフォンを押すと、小柄な丸顔の男が現れた。丸い小さな目が、警戒するようにわたしをにらみつけた。わたしは軍服を着て鉄兜をかぶった少年を想像した。

事情を説明した後、わたしは2、3の質問をした。

「楽天からいくら賃料を受け取っているのか?」

「答える必要はない」

「楽天の側が、基地局の設置を打診してきたのか?」

「そうだ」

「電磁波で健康被害が出ているが、それについてどう考えるか」

「電波はどこにでも飛び交っている。基地局からのものだけではない」

「近隣住民に健康被害が出たとき責任を取るのか?」   

「取る必要はない」

オーナーの男性について調べてみると、他にもマンションを経営していることが分かった。楽天モバイルが男性に提供している賃料の額は不明だが、それを推測するデータはある。大阪市浪速区の39階建てビルに楽天が設置を計画した基地局の場合は、月額10万円である。

わたしの元には、基地局設置に関する情報が大量に寄せられる。その9割以上が楽天モバイルについての苦情である。

楽天モは千葉県などで、小学校に5G基地局を設置する戦略に成功している。民家の直近にも、基地局を設置している。住民から抗議された場合は、設置計画を中止することが多いが、強引に工事を断行したケースもある。公営の公園内にも、基地局を設置している。その後ろ盾となっているのが、欧州評議会の1万倍もゆるい電波防護指針である。30年以上も前に総務省が定めてものである。

ベルギーのフレモール環境相は、2019年4月、ブリュッセルで予定されていた5Gの試験的運用を先送りにした。フレモール環境相は、メディアに対して次のようにコメントした。

「ブリュッセル市民はモルモットではない」

目黒区中央町の問題は、電話会社のコンプライアンスとは何かという問題を突き付けているのである。

◆楽天モバイルに対する質問

わたしは楽天モバイルに対して次の質問状を送付したが回答はなかった。

1,貴社と伊藤香氏の間で「確認同意書」(2021年9月19日)を交わした後に、貴社が別の基地局を設置したことについて、見解を教えてください。「確認同意書」を交わした時点で、現状の変更はできないと考えますが。

2,総務省の電波防護指針で、健康被害を防止できると考える根拠を教えてください。

3,近隣住民に健康被害が発生した場合、どのような対策を取るのかを教えてください。

4,貴社と総務省、内閣府の間で何らかの取引関係は存在するでしょうか。存在するようであれば、差支えない範囲で教えてください。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

筆者は5月下旬、参院選広島2022への立候補を見送り、県議選2023に転進することとしました。

◆自民党と補完勢力(国民・芳野連合会長)による2議席独占阻止へ決断

筆者は2021年4月25日執行の参院選広島再選挙に立候補。それ以降も、れいわ新選組の地元の皆様と一緒に活動を継続していました。そして、参院選2022において広島県選挙区で立候補する準備を進めて参りました。とくに西日本大水害2018の被災地を中心に広島県内ほぼ全域を挨拶回りや街宣を続けてきました。さらに、すでに、選挙カーにすぐに使用できるクルマも支持者の方が準備してくださっていました。

しかしながら、現在、コロナ災害やロシアのウクライナ侵略という状況に自民党のみならず、日本維新の会や国民民主党が悪乗りし、改憲や軍拡に前のめりになっています。立憲民主党も泉代表が軍拡容認発言をするなど、雲行きがあやしくなってきました。

また、地元選出の岸田総理は新自由主義脱却という政権発足時の威勢のよい掛け声とは裏腹に、国家公務員労働者の給料カット法案や「稼げる大学法案」など新自由主義的法案を成立させました。我々介護現場労働者の給料改善策もわずかに3%アップと不十分極まりないものになっています。こうした岸田政権の予算に国民民主党が賛成して与党に寝返りました。

さらに、ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰に悪乗りして、自民党はもちろん、維新や国民が原発推進姿勢を再び強めています。

こうしたなか、被爆地である広島県選挙区では、このまま傍観すれば、改憲、原発推進で、新自由主義脱却は不十分な勢力、すなわち自民党と補完勢力による2議席独占になってしまう状況です。すなわち、自民党の高級官僚出身世襲現職と、国民民主党や連合の芳野会長らが推すタレント新人が優勢である一方で、憲法をいかすことや反新自由主義、脱原発などをきちんと進める予定候補が日本共産党の中村たかえさんとれいわ所属の筆者(無所属でれいわ推薦を想定)の二人です。二人で票が割れれば、自民党と補完勢力による独占は確実な情勢です。

こうした状況をみて、筆者は5月20日、日本共産党広島県委員会を表敬訪問。筆者が立候補を見送るとともに、中村予定候補を応援することを伝達。また、中村さんと筆者の間での政策協定の締結や、政治とカネの問題についての政策提言をさせていただきました。

◆さっそく、尾道・三原で中村支援を宣伝

間髪を入れず、翌21日、筆者とれいわ新選組チーム広島とチーム福山は、尾道駅前とイオン三原店前で街宣を行いました。

尾道市、三原市は、県庁マンとして最後の仕事をさせていただいた場所です。また、尾道市は河井事件でお金をもらって辞職した自民党県議、そして、筆者の県庁マン時代に県の介護保険行政に不当な圧力をかけ、また、県費で海外旅行し放題だった国民民主党の県連幹部を務める県議の地元でもあります。国民民主党県議については鹿砦社刊行の『労働貴族』にも登場します。

イオン三原前での街頭演説

筆者はこの日、『自民党、国民民主党、維新がコロナやロシアによるウクライナ侵攻に乗じて緊急事態条項など憲法をかえると言っている。しかし、冷静に考えてほしい。あなたの安全、安心をアップするのに(自国維の)憲法を変えることは役立つのか?』と語りかけました。

そして、憲法は変えずに25条をいかせ、軍拡ではなく粘り強く緊張緩和を、という、という、さとうしゅういち と れいわ新選組 のスタンスを紹介。

その上で『このままでは、市町村合併押し付け、公務員削減で尾道を含む地方を苦しめたり、社会保障のためと称して消費税を増税して大半は社会保障に使わなかった自民党』の高級官僚現職と『県職員の仕事に不当な圧力をかけたり公費で海外旅行しまくりだった尾道選出の電力労組系県議を中心とした改憲・原発推進の広島の国民民主党』に推薦されたタレント新人という、与党と補完勢力による2議席独占になってしまうと危機感をあらわにしました。

その上で、中村たかえさん(日本共産党新人)とさとうしゅういちだけが、ガツン、と憲法を変えないでいかす、岸田さんも相変わらず進める新自由主義に反対、島根原発再稼働NO含む脱原発であるという状況だと指摘。

その上で、広島の2議席のうち最低1議席は、ガツン、と憲法改悪反対、新自由主義脱却、脱原発の人を送り出すため、自分が降りて、中村たかえ 予定候補を支援すると表明しました。


◎[参考動画]さとうしゅういちIN尾道駅前

◆地元の安佐南区では県議選2023への転進歓迎の声

さらに24日には事務所のある地元の広島市安佐南区で街頭演説と、近所の中小企業や神社などへのあいさつ回りを実施しました。街頭では『憲法に緊急事態条項を入れるよりもあなたの暮らしの緊急事態を救う政策が必要だ。』などと訴え『参院選広島で自民の高級官僚世襲現職と補完勢力推薦のタレントによる2議席独占を避けるため、中村たかえさんを推す』と報告しました。

あいさつ回りでは、参院広島選挙区で自民と補完勢力による2議席独占は避けるため自分が降りて県議選2023に回るとお伝えしました。『それがいい。まず広島から変えていこう!』(自営業60代男性)などと激励のお言葉をいただきました。

この安佐南区では、筆者は2011年に河井案里さんと対決した際には4278票をいただいています。また、直近の国政選挙では筆者と政策が同じか近いれいわ、共産、社民の得票合計が県議選の当選ラインを大きく上回っています。また、前回2019県議選は無投票でした。新規参入を渇望する声は強くあります。

この安佐南区は筆者の立候補の際の最有力の選挙区です。他方で、21日にまわった尾道市は、河井事件でカネをもらった自民党県議といわゆる労働貴族の国民民主党県議がおられるところです。三原市は産廃処分場問題が起きているところです。

また、安芸郡は府中町で再選挙2021の筆者の得票率が県内最高であり、筆者が坂町に西日本大水害2018でボランティアに入った経験もあります。安佐北区はお金をもらっていた県議がおられる上に筆者が同じく水害の際にボランティア活動に入った経験もある区です。安佐南区選挙区を軸に、これらの選挙区も候補に、今後、必勝を期して調整していきます。

◆福山では中村さんのポスターと並べてれいわののぼり

筆者やれいわ新選組の地元組織は、県内各地で中村候補への協力体制を整備しています。

福山市では、地元の共産党サイドの方の了承をいただき、中村候補のポスターとれいわ新選組ののぼりを並べて立てさせていただいております。

比例区はれいわ新選組を全力でとりくむとともに、選挙区は自民党と補完勢力による広島の議席独占という最悪の事態を石にかじりついてでも回避したいものです。

今後、共産党さんサイドと調整をしながら、中村候補を押し上げていきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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エスジム主催の単独興行としては連盟定期興行を越えるようなインパクトがあった、川崎駅から徒歩15分程のカルッツ川崎で行なわれた「DUEL.23」。

王座決定戦と王座入れ替わりによる新チャンピオン誕生、引分け防衛と運命が分かれたそれぞれのタイトルマッチが5試合。

メインイベンター山浦俊一はボディーブローで倒せるチャンスを掴みながら、逆にミドルキックをボディーに受けKO負けの悲痛な幕切れ。

◎DUEL.23 風林火山、烈火の如し / 5月21日(土) 神奈川県・カルッツ川崎15:30~20:35
主催:エスジム / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)

◆第15試合 S-1スーパーフェザー級 世界王座決定戦 5回戦

山浦俊一(新興ムエタイ/58.96kg) 
      VS
コンゲンチャイ・エスジム(タイ/58.96kg) 
勝者:コンゲンチャイ・エスジム
主審:少白竜 / KO 4R 1:53 / テンカウント

山浦俊一は2019年9月22日にNJKFスーパーフェザー級タイトル獲得後、2020年12月27日にはWBCムエタイ日本スーパーフェザー級王座獲得。2021年11月7日に初防衛を果たしている。

コンゲンチャイは元・タイ国ルンピニー系バンタム級4位、日本に来て10年というベテランテクニシャン。

初回は様子見も第2ラウンドにはボディブローで攻勢を強めた山浦俊一。早くもスタミナ切れかかったかコンゲンチャイの表情に余裕は無く、お祭り騒ぎだったセコンド陣も真剣なアドバイスに変わっていた。山浦のあっさりKO勝ちも想定出来る展開も、コンゲンチャイのハイキックやミドルキックの重さとヒットは次第にスピードも無くなっていくように見えたが、第3ラウンドまでの公開採点は三者とも29-28でコンゲンチャイ優勢。山浦の脇腹を腫れ上がらせる攻勢が導いた様子。第2ラウンドだけ山浦が取った流れだった。

コンゲンチャイの蹴りが山浦俊一にヒット、来ると分かっていれば耐えられるもの

第4ラウンドには、ボディーを攻められていたコンゲンチャイが、右ではない左ミドルキック一発、山浦のボディーにヒットすると、呼吸のタイミングがズレたか、効いてしまったのは山浦の方で、蹲るようにノックダウン。立ち上がれずKO負けとなった。

「フェイント掛けられました」という左ミドルキックをボディーに受けた山浦はしばらくは苦痛の表情もやがて回復するとしっかり挨拶してリングを降り、周囲の応援者とも普通に会話していたが、脇腹のドス黒い腫れが目立っていた。

フェイント掛けられた蹴りには対処できず、一発で沈んだ山浦俊一

◆第14試合 NJKFスーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.梅沢武彦(東京町田金子/58.96kg)
      VS
同級1位.HIRO YAMATO(大和/58.96kg)
勝者:HIRO YAMATO / 判定0-3
主審:和田良覚
副審:中山48-49. 宮本48-49. 少白竜48-50

両者は2021年2月12日に王座決定戦で対戦し引分け。延長戦で梅澤武彦が勝者扱いで王座に就いて、今回の再戦で梅沢は初防衛成らず。HIROが第10代チャンピオン。

ローキック中心の攻防から首相撲からヒザ蹴りの攻防へ移る。離れた距離から蹴り合い、組み合えばヒザ蹴り。次第に圧していったHIRO。公開採点で不利だった梅沢がパンチで前進を強めるが、HIROもヘロヘロになりながら首相撲からのヒザ蹴りやヒジ打ちの手数で優り、僅差ながら王座奪取に導いた。

HIROのヒジ打ちヒットで梅沢武彦の顔が歪む

念願の王座奪取に表情が歪むHIRO YAMATO

◆第13試合 NJKFライト級王座決定戦 5回戦

2位.岩橋伸太郎(エス/60.85kg)vs3位.TAKUYA(K-CRONY/60.95kg) 
勝者:岩橋伸太郎 / 判定3-0 /
主審:北尻俊介
副審:中山49-48. 宮本49-48. 少白竜49-48

蹴りとパンチの攻防。前半はTAKUYAの手足の長さで見映えいい蹴りで攻勢も、岩橋も凌ぎながらパンチの攻勢を強める。公開採点で劣勢の岩橋が攻勢を強めてくる。第4ラウンドからはスタミナ勝負。パンチで出る岩橋がわずかながら巻き返し、ポイント的には逆転勝利で王座獲得。第11代チャンピオンとなった。

巻き返してきた岩橋伸太郎の右ストレートと相打ちしたTAKUYA

接戦の勝利となったが岩橋伸太郎の手が上がる、TAKUYAは残念そう

◆第12試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ 3回戦

チャンピオン.浅井春香(KICK BOX/55.25kg)
       VS
同級1位.KAEDE(LEGEND/55.45→55.33kg)
引分け 1-0 / 浅井春香が初防衛
主審:宮本和俊
副審:北尻29-29. 和田29-28. 少白竜29-29

両者は2021年6月に王座決定戦で対戦し、浅井が3-0の判定勝ちを収めて王座を獲得。蹴りの勢いとしなやかさはKAEDEでも、浅井春香はパンチと首相撲からのヒザ蹴りの距離の持ち込むとKAEDEのリズムを崩し勢いを止めたことは成功も、主導権を奪ったとまでは言えない地味な展開で終わった。KAEDEも思うように蹴れない焦りがあってか引分けに残念そうな涙の表情だった。

浅井春香が自分の距離を保って右ストレートを打ち込む

運命も分かれたドローの明暗、浅井春香が初防衛

◆第11試合 女子(ミネルヴァ)ピン級タイトルマッチ 3回戦
チャンピオン.Ayaka(健心塾/45.36kg)vs同級6位.藤原乃愛(ROCK ON/45.0kg) 
勝者:藤原乃愛 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:北尻28-30. 和田28-30. 宮本27-30

ハイキックや顔面前蹴りのスピードとしなやかさは藤原乃愛が優る。組み合うとヒザ蹴りの攻防も蹴り負けなかった藤原乃愛。Ayakaはパンチでの前進があるも乃愛のリズムを崩すに至らず。Ayakaは王座陥落。藤原乃愛はデビュー1年で王座獲得で昨年5月のプロデビュー後、6戦5勝1分。

圧力掛けるAyakaを圧倒したのは藤原乃愛のスピードある蹴り

デビュー1年で高校生として王座戴冠した藤原乃愛のマイクアピール

◆第10試合 53.7kg契約3回戦

NJKFバンタム級チャンピオン.志賀将大(エス/53.5kg)
      VS
松岡宏宜(闘神塾/53.6kg)
勝者:志賀将大(赤コーナー) / 判定2-0
主審:少白竜
副審:北尻29-29. 宮本30-28. 中山30-28

◆第9試合 スーパーライト級3回戦

TAaaaCHAN(PCK連闘会/63.5kg)
      VS
NJKFスーパーライト級7位.ナカノ・ルークサラシット(エス/63.15kg) 
勝者:TAaaaCHAN(赤コーナー) / TKO 3R 1:44
主審:和田良覚

ムエタイテクニックで優ったナカノだったが、TAaaaCHANのヒジ打ちで額を切られて二度のドクターチェックとパンチを貰って倒されてしまう脆さが出てしまいカウント中のレフェリーストップとなった。

◆第8試合 61.0kg契約3回戦

NJKFライト級6位.梅津直輝(エス/60.9kg)vsカミシロ(PHOENIX/60.8kg)
勝者:カミシロ(青コーナー) / KO 1R 2:16 / 3ノックダウン
主審:北尻俊介

◆第7試合 フェザー級3回戦

森健太(エス/56.7kg)vs松山和弘(ReBORN経堂/57.0kg)
勝者:松山和弘(青コーナー) / TKO 2R 2:52

第1ラウンド松山和弘のローキックで森健太がノックダウン。第2ラウンドは組んでのヒザ蹴りで盛り返した森健太だったが、またも松山のローキックでノックダウン。何とか立ち上がるも更にローキックを貰ってバランスを崩し、続行は難しいと判断したレフェリーに止められて松山のTKO勝利。

◆第6試合 ウェルター級3回戦

小林亜維二(新興ムエタイ/67.15→66.6kg)vs梅田勇一(BLITZ/66.5kg) 
勝者:梅田勇一(青コーナー) / 判定0-2 (28-29. 29-30. 29-29)

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)50.0kg契約3回戦(2分制)

KAYA(エス/49.9kg)vsアイミー(DANGER/48.3kg) 
引分け 0-1 (28-29. 28-28. 28-28)

第1ラウンド早々にアイミーの右ストレートで正面に立った距離でのKAYAが軽いノックダウン。女子の2ノックダウン制の為、次倒れたら終了というあっけない幕切れの空気が流れる中、KAYAが盛り返し、最後は逆転するかという勢いだったが、引分けに落ち着くも好ファイトとなった。

◆第4試合 スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級6位.佐々木勝海(エス/63.1kg)vs我如古優貴(BEST/63.15kg)
勝者:佐々木勝海(赤コーナー) / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-27)

◆第3試合 スーパーフェザー級3回戦

渡部瞬弥(エス/58.7kg)vs渋谷昴治(東京町田金子/58.2kg)
勝者:渋谷昴治(青コーナー) / TKO 1R 2:03

◆第2試合 フライ級3回戦

高橋大輝(エス/50.4kg)vs明夢(新興ムエタイ/50.25kg)
勝者:高橋大輝(赤コーナー) / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)

◆第1試合 53.0kg契約3回戦

翼スリーツリー(DAIKEN THREE TREE/53.0kg)vs愁斗(Bombo Freely/52.4kg)
勝者:愁斗(青コーナー) / KO 2R 1:27 / 3ノックダウン

《取材戦記》

S-1はタイの伝説大物プロモーター、ソンチャイ・ラタナスワンプロモーター主宰の、2003年頃から活動しているタイトルで、日本でも2019年からS-1ジャパンとして特定の階級でトーナメント戦によるチャンピオンが誕生しています。その後、タイ国でのワールドトーナメントに繋がるステップも、近年はコロナ禍もあって、あまり活発にイベントが行われている様子はありません。またソンチャイ氏自身が高齢で活動も少なく、今後も継承されていくか不透明なことはタイでの評判です。

山浦俊一はボディーブローでコンゲンチャイを苦しめ、「これは倒せるぞ」といった空気が流れる中、「フェイント掛けられました」というコンゲンチャイの左ミドルキックを受けて悶絶KO負け。山浦は「完敗です」と言いつつ、「ボディーブローでコンゲンチャイは効いていただろうと思います」という手応え有りの残念な逆転負け。

コンゲンチャイは日本在住10年で多くの日本人対決もヒジ打ちなどムエタイ技で仕留めた経験有り、重いハイキックやミドルキックで山浦を苦しめたが、次第にややスピードが落ち、スタミナ不足か表情に余裕は無かった。でも勘の鈍りとは違う経験値とは凄いもんである。

この日、五つのタイトルマッチにそれぞれの運命有り。「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」と語った浅井春香は鴇稔之会長からの教訓。元々は名門・目黒ジムからの教訓である。引分けではあったが防衛成功。しかし完全防衛への仕切り直しは必要となるでしょう。

NJKFタイトルに於いてはまだ団体タイトルで国内の中間的存在。この先にWBCムエタイ日本王座などの上位王座が有る上で、女子のミネルヴァ王座も含め、新チャンピオンとなった日本の三名は、これからがチャンピオンロードの始まりである。

NJKF連盟本興行「NJKF 2022.2nd」は6月5日(日)に後楽園ホールで開催予定です。

コロナ禍で防衛戦が行えなかった波賀宙也がペットーン・ゲッソンリット(タイ)を迎えてのIBF世界ジュニアフェザー級王座初防衛戦となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

5月26日、東京地裁で、311子ども甲状腺がん裁判の第1回口頭弁論が行われた。この裁判は、福島原発事故当時、福島県内に居住していた6才から16才だった男女6名が、東電に対し、事故に伴う放射線被ばくにより甲状腺がんを発症したとして、損害賠償を求める裁判だ。

6名はいずれも甲状腺がんの手術を受け、うち4名は再発に伴う手術で甲状腺を全摘、甲状腺がんの発症や、それに伴う手術、薬の服用などで進学・就職などにも大きな被害が生じている。

裁判では、原発事故と、6名の原告の甲状腺がんの因果関係や原告が受けた損害の評価が実質的な争点となる。午後2時からの第1回期日では、5名の弁護士が弁論を行ったのち、原告2さんが意見陳述を行った。

その後の報告集会の冒頭、井戸謙一弁護団長は、「今日の法廷の印象は、5人の弁護団が手分けしてそれぞれの弁論をしましたが、それは前座で、本番は原告の女性の素晴らしい意見陳述でした」と話されたあと、期日の成果を以下のように述べられた。期日前の進行協議では、毎回意見陳述を認めるかどうかが話しあわれていた。被告・東電は、毎回やることに反対し、裁判所も消極的な感じだった。しかし、今日原告の意見陳述を聞いたあと、再びその話題になり、裁判長が被告代理人に意見を求めた。被告代理人は、建前的には大事なのは争点整理で、それを優先すべきと主張していたが、原告の意見陳述を認めるか否かについて反対とは言えず「最終的に裁判所に委ねます」と述べた。

裁判所も「もう一度考えます」と態度を変えた。被告代理人が反対できなかったのは、原告女性の意見陳述が、彼らの胸にも響いたからだと思う。当時の子どもたちをどう救済していくかで一番大事なのは、原告がどう苦しんできたかを裁判所に理解させる、そのことによって真っ当な判決に導いていくことだ。

先日TBSで報道された「報道特集」について、中身も知らずに「デマだ」とバッシングする輩が大勢いるが、そうではないということを発信して頂きたい。このようにバッシングする社会の風潮を変え、被害者の原告を支援していく社会的風潮をつくっていくということが、この裁判で真っ当な判決を出させる大きな力になると思います。

原告2さんの意見陳述作成を担当した柳原敏夫弁護士から、それまでの経緯が話された。

「彼女は自分から第1回目に陳述すると言ってくれた。そのとき、私が偉そうに彼女に言ったのは、裁判官に届く言葉、あなたにしか言えない言葉を言って下さいとお願いした。人間として扱われなかった治療や手術のことは思い出したくないだろうが、あなたしか言えないのだから。本人も悩んだようだが、連休明け、それまで書いた文章に、本人も思い出したくないアイソトープ治療について2000字を書き足してきました。それが今日のメインテーマでした。書いただけで精魂尽き果てただろうに、今日法廷でもう一度読むのも大変だったろうが、今日は最善の意見陳述をしてくれました。ここには来れませんが、皆さん、彼女に拍手をお願いします」。

その後、前日意見陳述を練習した際の原稿2さんの声が、会場に流れた。「意見陳述要旨」から、その一部を紹介する。

「あの日は中学校の卒業式でした。友達と「これで最後なんだね」と何気ない会話をして、部活の後輩や友達とデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします」

3月16日、放射線量が高かったことを知らない彼女は地震の影響で電車が止まっていたため、歩いて学校に行き、外で友達と話し、歩いて帰ってきた。県民健康調査で甲状腺がんがみつかり、精密検査を受けた。結果は甲状腺がんだったが、医師はそうは言わず「手術が必要です」と説明した。

「手術しないと23才までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません」

病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学、しかし、その大学にも長くは通えなかった。甲状腺がんが再発したためだ。

……………………………………………………………………………………………

「治っていなかったんだ」「しかも肺に転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいのかわかりませんでした。「今度こそあまり長くは生きられないかもしれない」そう思いました。……

「手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療を受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被ばくさせる治療です。

1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。

3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至るところに黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。

病室には、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。

薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。

薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。

医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。

飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるよう指示されます。

すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。

食事はテレビモニターを通じて見せられ、残さず食べられるか確認し、汚染するものが増えないように食べられる分しか入れてもらえません。

その夜中、それまでは何ともなかったのに、急に吐き気が襲ってきました。すごく気持ち悪い。なかなか治らず、焦って、ナースコールを押しましたが、看護師は来てくれません。ここで吐いたらいけないと思い、必死でトイレへ向かいました。吐いたことをナースコールで伝えても吐き気止めが処方されるだけでした。時計は夜中の2時過ぎを回り、よく眠れませんでした。

次の日から、食欲は完全に無くなり、食事ではなく、薬だけ病室に入れてもらうことのほうが多かったです。2日目も1,2回吐いてしまいました。

私はそれまでほとんど吐いたことがなく、吐くのが下手だったため、眼圧がかかり、片方の目の血管が切れ、目が真っ赤になってしまいました。扉越しに、看護師が目の状態を確認し、目薬を処方してもらいました。

病室から出られるまでの間は、気分が悪く、ただただ時間が過ぎるのを待っていました。

病室には、クーラーのような四角い形をした放射能測定装置が、壁の添乗近くにありました。その装置の表面の右下には数値を示す表示窓があり、私が近づくと数値がすごく上がり、離れるとまた数値が下がりました。

こんなふうに3日間過ごし、ついに病室から出られる時がきました。パジャマなど身に着けていたものはすべて鉛のごみ箱に捨て、ロッカーにしまっていた服に着替えて、鉛の扉を開け、看護師と一緒に長い廊下といくつもの扉を通って、外に出ました。……こんなつらい思いをしたのに、治療はうまくいきませんでした。治療効果がでなかったことは、とてもつらく、その時間が無駄になってしまったと感じました。以前は、治るために治療を頑張ろうと思っていましたが、今は「少しでも病気が進行しなければいいな」と思うようになりました。……通院のたび、腫瘍マーカーの「数値があがってないといいな」と思いながら病院に行きます。でも最近は毎回、数値が上がっているので、「何が悪かったのか」「なぜ上がったのか」とやるせない気持ちになります。……自分が病気のせいで、家族にどれだけ心配や迷惑をかけて来たかと思うととても申し訳ない気持ちです。もう自分のせいで家族に悲しい思いはさせたくありません。もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。

……………………………………………………………………………………………

裁判の傍聴希望者は約200名、うち傍聴出来たのは27名、期日後の記者会見でも多くのメディアから質問があったとお聞きした。甲状腺がんなど原発事故の放射能による健康被害に関心が高まっている。被害者に対する支援の輪を、今後さらに広めていかなくてはならない。

311子ども甲状腺がん支援ネットワーク 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

残念な結果がつづくと、急にうそのように連勝を始める今シーズンの阪神タイガース。「強いのか? 弱いのか?」5月25日時点では18勝29敗1分。セリーグ最下位ですから、強いというには無理があります。でも、全然見どころのない「ダメ虎」かといえば、そうでもないのです。成績以上に「勝ち様」の良い試合、残念だけど負けた試合の印象が深いので、借金が11もあるような気はしないんですよね。

そこで今年の阪神タイガース、および実戦日の甲子園球場がどのような雰囲気なのかを探るため、行ってきました!22日対巨人戦です!14時プレーボールの甲子園球場は12時開門です。試合前の球場周辺を一回りしてみましょう。

リニューアル当時はまだ元気のなかった甲子園名物の「ツタ」がかなり成長してきた様子がわかりますね。球場外の一塁側では各選手の写真とともに、感染予防策にかなり気を使っています。

近本は真面目に指示を聞きそうですね。大山も「体調に異変があればすぐ近くの係員にお声掛けを」と。

この2ショット、わざとじゃないでしょうけど、去年の緊急事態中どなたかの家で大騒ぎしてコロナにかかってしまった、藤浪投手と、これまた前回4月6日登板のあとに陽性が判明して登録抹消も、この日久しぶりに先発登板の「コロナ陽性2投手」。偶然にしろこういうポスターを作製できるのも、阪神タイガースの魅力です。

こんな感じで感染予防には本当に細かく配慮されていました。

おっとさらに少し歩くと、喫煙所がありました。そこそこ広いと思われますが「ご利用人数は3人まで」のシールが貼られています。私はタバコを吸いませんが、甲子園は球場内部にも結構喫煙所が設けられているのは、愛煙家にとって嬉しい配慮ですね。

さらに歩を進めてバックスクリーンの裏に回ります。五月晴れ空の爽やかさが伝わるでしょうか?

おっと、この写真では阪神タイガースの旗がはっきり見えません。

そうそう、こんな感じで吠えまくって欲しいところです。今日の巨人戦はどうなることでしょう。

あれっ? 急に青葉に隠れたどこにでもありそうなビルが目に入りました。ひょっとして、ここが噂の鹿砦社本社では? やはり甲子園球場からは本当に近いんですね。

さて、球場の隣には「甲子園歴史館」という立派な建物があります。

入り口を覗いてみると…

入館料、おとな900円!高いぞ!さらにスタジアムツアーは大人2000円!しかしスタジアムツアーでは球場内のふつうは入ることのできない場所に案内されたり、OBが直接説明してくれることもあるそうですから、ファンにとっては安いのかもしれません(私には手が出ませんが)。

びっくりしているとスタジアムツアーに参加する男性が女性係員に引率されて球場に向かってゆきました(これも料金のうちでしょう)。

さて、開門時間近くになり駅周辺の人も増えてきました。

駅の改札口から球場方向に歩いていると、懐かしの声が!「券余ってたら買うよ」すれ違う瞬間絶妙のタイミングでかけてくる小声。懐かしの(?)ダフ屋さんです。

ボロボロのジーンズの兄ちゃんは同じ場所で、自転車のおっちゃんは後ろから声をかけてきました。お姿から拝察するにあまり景気はよさそうではありませんね。

さて、余談はともかく球場の中に入りましょう。今日は一塁側内野席「アイビーシート」での観戦です。

やっぱり甲子園は広いですね。まだ試合開始まで2時間近くありますが、お客さんもそろそろ入り始めています。阪神タイガースの練習はすでに終わっていて、グランドで練習しているのは巨人の選手どもです。この日は両チームともに「復刻版ユニホーム」着用の試合でした。これがいけない。阪神の選手はほぼわかるのですが、ユニホームに名前がないので、巨人の選手を見分けるのが非常に難しいのです。だいたい巨人は強いのですが、最近では顔を知らない選手も多々いるので、ちょっといかがなものかと思いました。試合開始40分前。だんだん観客席が埋まってきましたね。この写真はネット裏最前列からグランド整備が行われている様子を眺めたものです。

「グランド整備をやらせたら世界一」の呼び声高い、甲子園園芸の皆さんが無駄のない動きでグランドを綺麗にならしてゆきます。

朝日放送テレビの解説は関本さん、ラジオは桧山さん。MBSは谷繁さんです。皆さん近くで見ると大柄です。仕事前なので愛想はよくありませんでした。(つづく)

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
仮名のような名前ながら本名とのウワサ。何事も一流になれないものの、なにをやらしても合格点には達する恵まれた場当たり人生もまもなく50年。言語能力に長けており、数か国語と各地の方言を駆使する。趣味は昼寝。

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

齢70代に入り、さして誇るべき実績もない私の人生も末期に入りました。私をよく知る方はご存知ですが、思い返せば人に裏切られたり騙されたりが多かった人生でした。この期に及んでは、もう人に裏切られたくはありません。

ここ数年、ひょんな縁で、私たちが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、巷間「しばき隊リンチ事件」とか呼ばれる事件の被害者M君支援と真相究明に関わってきました。6冊もの本にまとめ世に送り出し、決して多くはありませんが、少なからずの心ある方々に理解を得ています。

リンチ被害者M君は、リンチ加害者5人に対し民事訴訟を起こしましたが、この初期、弁護団に加わったのが橋本太地弁護士(大阪弁護士会)でした。ともかく問題のある言動が多く、やがて代理人を辞めていったのですが、その後も問題を起こしています。弁護団から去っても、まともになり本来の弁護士の仕事を懸命にやってくれたら、と蔭ながら応援していたのですが……。一番ショッキングだったのは依頼者と着手金返還を巡りトラブルを起こし「タヒね」(「死ね」という隠語。「死」の上部の「一」を取れば「タヒ」となる)懲戒事件でした。昨年初めのことで、大阪弁護士会は懲戒請求者の主張を認め弁護士として「品位を失うべき非行」として懲戒処分のうち一番軽い「戒告」処分に付したのでした(2021年3月1日付け)。

橋本弁護士は、
「金払わん奴は死ね!」
「弁護士報酬の踏み倒しを撲滅するために何ができるだろうか。」
「弁護士に金払わなくて平気な奴は人殺しと同じだよ。」
「弁護士費用を踏み倒す奴はタヒね!」
「金払う気ないなら法律事務所来るな!」
「金払わない依頼者に殺された弁護士は数知れず。」 (議決書より)

などとSNSで発信し、これに対し依頼者は懲戒を申し立て、昨年3月1日で懲戒処分を受けたのでした。私は、これで心から反省するのであればいいんじゃないか、と思いました。反省しなければ、これ以上の問題を起こしかねないですから。

しかし、橋本弁護士は日本弁護士連合会に処分取消の審査請求を起こし、同会は去る5月17日付けで逆転裁決を下しています。

橋本弁護士と知り合った頃、彼は精神的に病み、生きるの死ぬのと日々ツイートしていました。彼を激励するために、べつに恩着せがましく言うわけではありませんが、高級日本料理店に連れて行ったり北新地のそこそこ高級な飲み屋にも連れて行ったりしました。また、私は2年間、関西大学で非常勤講師を務めさせていただきましたが、そのうち各1回づつ彼にも講義してもらいました。私なりに彼へのエールのつもりでした。彼は1年目の自分の講義(音声)をSNSで発信し依頼の問い合わせが多数あったとのことでした。2年目の講義は映像にし、これもSNSで発信し、1年目より格段に多い問い合わせがあったそうです。

*橋本弁護士のTwitterでは、いまだにこの時の映像を流していますが、そういう経緯があったことを書き添えておきます。少しぐらい感謝してほしいものです。

しかし、彼は、そうした私の気持ちを踏みにじる言動を繰り返しました。ある取材班の一人は悩み血便を下したほどです。

橋本弁護士の処分取消審査請求、弁護士たるものが、そうした下劣な言葉を何度もSNSで発信し依頼者を傷つけた行為は決して許されることではなく、大阪弁護士会の懲戒処分は当然だと思っていました。しかし、日本弁護士連合会がなぜ逆転の裁決を下したのか、市井人としては到底理解できません。本人のためにもよくないと思います。変な理屈付けて、こんな甘いことやってるから弁護士たる者、「三百代言」などとバカにされるんじゃないでしょうか。依頼人(=懲戒請求者)は、次のように悔しさをツイートされています。お気持ちはよく理解できます。

「私はこの懲戒請求した本人です。私の所に日弁連からの議決書はまだ来ていません。それなのに、SNSで弁護士通して、こんなに議決書をシェアして喜ばれると、困ります。それに、着手金も返還してもらっていません。弁護士会は、もっと消費者を保護すべきだと思います。業界の需要が減りますよ。」

むべなるかなです。

ところが、くだんの審査請求の代理人に、かの神原元弁護士の名前があります。これは昨年の時点で情報提供があり知っていましたが、神原弁護士がどういうつもりで橋本弁護士の代理人に就いたのか、あるいは橋本弁護士がなぜ神原弁護士を代理人に選任したのか、非常に裏切られた気持ちです。いやしくも橋本弁護士は、私やリンチ被害者M君らが神原弁護士に立ち塞がれ、彼の手腕によって苦杯と屈辱を舐めてきたことを知っているはずです。

橋本弁護士は、まだ弁護団にいる時、「僕は弁護士として神原のような職業倫理のないやつは許せない」と意気込んでいたのは何だったのか?と思います。と言いつつ、裁判が終わった後で2人して喫茶店に行ったという証言もあり、これは橋本弁護士本人も認めているそうです。そうか、そうであれば合点がいきます。

橋本弁護士にしろ神原弁護士にしろ、彼らの人間性に義憤を覚えます。こうした人間性を持つのが弁護士なのか? こういう弁護士に依頼すれば、仮に「正義が勝つ」ことはあっても、あまり感心しません。

「もう人に騙されたり裏切られたりしないぞ」と肝に命じて来ましたが、藤井正美にはうまいこと社内に入り込まれ3年間雇いました。このかん、勤務時間中にやりたい放題やられました。3年間も気づかなかった馬鹿な社長です。また、藤井につながる「反原連」にも多額の資金を吸い取られ、ちょっと意見するや挙句一方的に絶縁されました(もちろんお金は返ってきません)。

非常にやり切れない気分で、一気に書き連ねてきました。普通は他の人に一読してもらったり1日置いたりして掲載するのですが、今回は執筆即掲載しました。

まあ、人を見る目がないとみずからを恥じるしかありませんが、それでも私は残りのわずかな人生、人を信じたいと思っています。

尚、「裁決書」は2ページですが、このほかに「議決書」が9ページあります。ここでは「裁決書」のみを掲載します。

*朝日新聞5月26日朝刊に記事が出ましたので画像を追加しました。それにしても、SNSでの誹謗中傷が社会問題になり侮辱罪の強化が叫ばれる昨今、弁護士という特権階級だったら許されるのか、「死ね」「タヒね」というようなツイートが「表現の自由」だとする日弁連の頭の中は時代錯誤としか言いようがありません。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

広島県三原市本郷町は、広島県のほぼど真ん中に位置しており、広島空港があることでも知られています。昔は独立した町でしたが平成の大合併で三原市に事実上吸収されました。その本郷町に産業廃棄物処分場建設計画が2018年に持ち上がり、大混乱となっています。

三原市・竹原市の水源地のど真ん中。問題の産廃処分場の概要は以下です。

計画地 広島県三原市本郷町南方字観音平22179番地1 外(宗教法人と業者土地取得済)
関係地域 広島県三原市本郷南方 / 広島県竹原市新庄町
埋立面積 9万7,499平方メートル(マツダスタジアム約10個分)
埋立容量 112万6,000立法メートル (2~10t車両30台/日程度・160立法メートル /日)国道2号から搬入
廃水計画 雨水・浸透水は調整池を経由後、自然流下で椋原川と日名内川に排水する
主な産廃排出場所 県内5割、県外5割(岡山、島根、大阪、京都、岐阜、愛知、静岡)

三原市にとっても竹原市にとっても水源地のど真ん中です。三原側は沼田川へ、竹原側は賀茂川へ流れます。

三原側の沼田川下流には三原市最大の浄水場があります。三原市民の4分の3にあたる3万世帯の水道水となります。また、竹原側の下流域には6つの浄水場があり市民の大半の水道水になっています。下流には井戸水利用者、農業用水利用、漁業、地下水を利用した酒・豆腐・飲料メーカーなどもあります。

◆三原市・竹原市の市民の総意で「ノー」も県はゴーサイン

2018年に計画が持ち上がったあと、三原市でも竹原市でも住民が立ち上がり、産廃処分場建設許可をしないよう、県に求める運動を開始。2018年10月25日には三原市議会本会議で2つの産廃処分場建設反対請願が全会一致で採択され、県に決議文を提出。2019年2月25日には竹原市議会本会議で、全会一致で同様の決議が採択されました。

三原市も竹原市も自民党が非常に強い地域。しかし、自民党員の議員もふくめて全会一致で反対決議が採択されたということの意味はあまりにも大きいのです。

しかし、広島県は許可を出してしまいました。許可を出したのは筆者が最後に勤務した広島県東部厚生環境事務所でした。廃棄物関係の職員は理系の専門の職員で人数も限られています。元同僚が許可を出す立場にあったことに複雑な思いです。とはいえ、基本的に広島県の場合は産業廃棄物処分場許可にあたって、周辺住民の意見を聴くよう義務づける条例はありません。不許可にすれば、今度は業者から訴えられるリスクもあります。そうはいっても、行政の透明性は求められる時代であり、産業廃棄物業者もその恩恵に浴しています。

◆一度は廃棄物持ち込みを禁止する仮処分も、ひっくり返る 裁判の経過

これに対して、広島地裁において、住民が広島県を相手取って、産業廃棄物処分場許可を取り消すよう求める行政訴訟を提起しました。平行して業者に産業廃棄物処分場への廃棄物の持ち込み、すなわち稼働しないよう求める仮処分も申し立てています。

 

仮処分申請は、2021年4月にいったん認められました。しかし、それに対する業者の異議が2022年4月認められてしまいました。もちろん、原告側(債権者側)は抗告しています。こうした中で、行政訴訟の第9回公判が4月19日に行われました。次回は6月26日の予定です。

公判後の報告会で、住民側の山田延廣弁護士(写真中央)が年内に結審する見通しであることを明らかにしました。

また、山田弁護士は「広島県には、長野県のような、産業廃棄物処分場許可にあたって住民の意見を聴取することを義務づける水資源保護条例がなく、産業廃棄物処分場がほぼ野放しの状態だ」と指摘しました。

◆このままでは広島が日本・世界のゴミ箱の恐れ

山田弁護士が紹介した通り、長野県には豊かな水資源の保全に関する条例があります。水資源保護区域の大規模な土地の売買があった場合は市町村の意見を聞くことになります。

https://www.pref.nagano.lg.jp/mizutaiki/kurashi/shizen/mizukankyo/jore/index.html

もし、広島で今回あったようなことが長野で起きればどうなるか? まず、売買の段階で売り主が県に産業廃棄物処分場目的であることを届け出ます。関係する市町村が猛反対しているわけですから、県としても「産業廃棄物処分場目的の売買はダメです」ということになります。

このような条例が全国にできつつあるのに、広島だけなければどうなるか? 現に今回の三原市本郷の産業廃棄物処分場が稼働すれば広島だけでなく、岡山や島根などの周辺県はもちろん、大阪や京都、岐阜、静岡、愛知など遠方の産業廃棄物が大挙して押し寄せてきます。それこそ、広島が日本のゴミ箱になってしまいます。

わたしが住んでいる広島市でも安佐南区上安の産業廃棄物処分場で問題が起きています。周辺住民の調査では汚れた水が流出しています。そしてさらなる拡大が計画されています。そして、ここは外資系に買収されています。

◎参考;エクイスグループ、日本で廃棄物処理事業を開始。今後3年間における投資見込み額は最大で550億円 https://www.kyodo.co.jp/pr/2021-06-10_3617278/

日本はそもそも、産廃の基準がいまや韓国や中国よりも緩いとも言われています。たしかに、日本では「管理型処分場」「遮蔽型処分場」の基準は厳しい。曲者は「安定型処分場」です。安定型というと、いかにも安心のように思えます。いわゆる安定五品目の廃プラスチック類,金属くず,ガラス陶磁器くず,ゴムくず,がれき類などのみが捨てられる、だからコンクリートもシートもなしで埋め立てられる、というわけです。だが、実際にはその中にそれ以外のものが混じってもきちんと、検査されるわけではないのです。さらにその中でも、広島の産業廃棄物行政は大甘なのです。

こんな状態では、それこそ、広島は世界のゴミ箱になりかません。安定型処分場の新規許可をしないよう法改正するとともに、広島県でも長野県同様の条例の制定を強く求めます。

ストップ本郷処分場【広島県三原市】 https://mihara-sanpai.com/

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

産経新聞社が新聞販売店に搬入する産経新聞の部数が、今年3月に100万部を下回った。1990年代には、約200万部を誇っていたから、当時と比較すると半減したことになる。かつて「読売1000万部」、朝日「800万部」、毎日「400万部」、産経「200万部」などと言われたが、各紙とも大幅に部数を減らしている。新聞の凋落傾向に歯止めはかかっていない。

コンビニなどで販売される即売紙を含む新聞の総発行部数は、3月の時点で次のようになっている。()内は、前年同月差である。

朝日新聞:4,315,001(-440,805)
毎日新聞:1,950,836(-58,720)
読売新聞:6,873,837(-281,146)
日経新聞:1,731,974(-148,367)
産経新聞:1,038,717(-177,871)

旧ソ連のプラウダが消えて後、新聞の世界ランキングの1位と2位は、読売新聞と朝日新聞が占めてきた。しかし、現在の世界ラングを見ると、USAツデーやニューヨークタイムスがトップ争いを演じている。これはひとつにはコロナウィルスの感染拡大を背景に、電子版が台頭したことに加え、国際語としての英語の優位性が、それに拍車をかけた結果にほかならない。英語の電子媒体は、すでに地球規模の市場を獲得している。

その結果、「紙」と「部数」の呪縛を排除できない新聞社は没落の一途を辿っている。公表部数そのものが全くのデタラメではないかという評価が広がっている。

◆新聞セールス団が新聞購読料を負担

日本ABC協会が定期的に発表しているABC部数は、新聞の発行部数を示す公式データである。このABC部数の中に大量の残紙(配達されずに廃棄される「押し紙」や「積み紙」)が含まれていることが、周知の事実になり始めている。ABC部数と実配(売)部数の間にある大きな乖離が、社会問題としての様相を帯びてきた。

最近、ABC部数をかさ上げする新たな手口が明らかになった。それはニセの新聞購読契約書を作成して、それに整合させるかたちで、販売店の帳簿類の処理をして、「新しい読者」をABC部数に計上する手口である。

今年4月、わたしは元新聞セールス団の幹部から、ニセの新聞購読契約書を作成する手口が読み取れる内部資料を入手した。このセールス団は、2012年ごろから岡山県倉敷市にある朝日新聞倉敷販売(株)で新聞拡販活動を展開した。しかし、報酬の支払い額やニセの購読契約書などをめぐって朝日新聞倉敷販売と係争になった。

わたしが入手したのは、この事件の裁判資料である。

裁判そのものはセールス団幹部の敗訴だったが、裁判の中で、図らずもABC部数にグレーゾーンが生じるひとつの原因が露呈した。それはニセの新聞購読契約を作成して新規読者として計上する方法だった。しかも、帳簿上の整合性を保つために、ニセの読者の購読料をセールス団の側が負担していた。

実際、判決は次のようにこの手口を認定している。

「両者の間で協議がされた結果、原告(注:セールス団)と被告(注:朝日新聞倉敷販売)は、原告が偽造された契約書に関する新聞購読料を負担し、被告に対し、これを分割して支払う旨の合意をした」

実際、朝日新聞倉敷販売(株)は、セールス団の支払い負担を軽減するために、入店料(新聞拡販の成功報酬)を先払いしていた。金の流れは、「朝日新聞倉敷販売→セールス団→朝日新聞倉敷販売」となり、法的な汚点を排除した上で、新聞の公称部数を増やしていた。

 

倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化

◆倉敷市の朝日新聞のABC部数

ニセの購読契約書の枚数について元幹部は、

「朝日は、515枚あったことを認めている」

と、話している。現在、わたしは偽造枚数について調査中である。現時点では枚数を確定できないが、ABC部数に疑惑があることは、次のデータを見れば明らかになる。

倉敷市における朝日新聞のABC部数の変化を示すデータである。期間は2011年10月から2021年10月の約10年。

半年で1000部から3000部ぐらいの変動が観察できる箇所が複数ある。常識的に考えて、倉敷市の朝日新聞の読者が半年で、1000人単位、あるいは3000人単位で変動することなどあり得ない。これは、ABC部数そのものが信用できないデータであることを示している。

筆者は、同じような手口を、他系統の新聞社の元セールス団員からも聞いたことがある。次のような手口である。

戸別訪問で、「タダでいいので新聞を配達させてください」と、話を持ち掛ける。承諾を得ると、実際に新聞を届ける。購読料は、セールス団が負担する。無料で新聞を配達し続けていると、数カ月後に公式に新聞購読契約を結んでくれることが多い。その際に成功報酬が手に入る。このケースでもABC部数は増えていることになる。

以上、紹介したように新聞社と販売店の間だけではなく、販売店と新聞セースル団の間でも、ABC部数をかさ上げするための裏工作が行われているケースがあるのだ。販売店がセールス団に対して「押し紙」をする構図がある。

◆巨大のメディアの汚点とメディアコントロール

海外では、出版物の水増し表示に対しては厳正な措置が下される。たとえば米国テキサス州の『ダラス・モーニングニュース』は、1980年代の半ばに、ライバル紙から発行部数の水増しを告発されたことがある。2004年になって同社は、事実関係を認めた。日曜版を11.9%、日刊紙を5.1%水増ししていたことを確認した上で、広告主に2300万ドルを払い戻したのである。

しかし、日本ではABC部数の水増しが、堂々と横行している。裁判所や警察もこの件に関しては黙認してきた。巨大メディアの汚点を握ることで、メディアコントロールが可能になるからではないだろうか。大半の新聞研究者もABC部数の闇にはタッチしない。

USAツデーやニューヨークタイムスの躍進に象徴される電子メディアへの移行の中で、日本の新聞社は、近い将来に行き場を失う可能性が高い。地球規模で日本の新聞社を見ると、「ならず者」の集まりにしか映らないのである。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

ウクライナ戦争を分析するなどと言うと、戦争好きな元左翼が愉しんでいるように受け取られかねないが、第三次世界大戦を惹起するかもしれない重大事のゆくえは、ひとえにその戦況にかかっているのだ。

すでにプーチンはくり返し、NATOに対して核兵器使用の可能性を口にしているが、新型弾道弾サルマトの実験を行ない「(ロシアは)他国にない兵器を保有しており、必要な時に使う」と強調した。これまでの通常兵器の戦闘で、追い詰められていると見るべきであろう。

戦争が他の手段をもってする政治の延長である(クラウゼヴィッツ)とはいえ、その帰趨は兵器が決する。近代戦争においては兵士の多寡ではなく、兵器の能力によるものだ。

第一次大戦においては戦車と塹壕、毒ガス、飛行機。第二次大戦では巨砲をそなえた戦艦よりも空母が主力艦の位置を占め、ロケット、ジェットエンジン、そして核爆弾と、軍事兵器の「進化」は人類をおびやかすようになった。

核兵器使用の可能性を見据えつつ、ロシアとウクライナの今後の戦況を占おう。

ウクライナ戦争では、ウクライナの数字上の戦力が対ロシア比で10分の1とされてきた。これだけを見れば、侵攻後の数日で決着がつくはずだった。

【兵員数・国防予算】
       現役   予備役   予算
ロシア    90万人  200万人  7兆円
ウクライナ  19万人   90万人  6800億円
※アメリカ85兆円・中国28兆円・日本5兆円

【陸上兵器】 戦車   戦闘車両 火砲
ロシア   13,127輌  13,680台 4,990門
ウクライナ  1,990輌   1,212台 1,298門

【航空兵器】 戦闘機  爆撃機  戦闘ヘリ
ロシア    770機  691機   399機
ウクライナ   69機   45機    35機
※国際軍事年鑑などを参考に概算。

もっとも、軍事ジャーナリストの田岡俊次によれば、ロシア軍の兵員は実際にはもっと少ないという。

「ロシア陸軍はソ連解体時に140万人だったが現在28万人(陸上自衛隊の2倍)で、空挺(くうてい)軍4万5千人、海軍歩兵3万5千人を加えても地上兵力は36万人だ。東シベリアと極東700万平方キロを担当する東部軍管区の総人員は8万人(自衛隊の3分の1)にすぎず、一部はウクライナに投入されている。ロシアは徴兵制で1年の兵役を終えた予備兵を名目上200万人持つが、就職している社会人を召集するのは余程の場合で、シリア人などの傭兵(ようへい)で補充中だ。」(AERA 2022年5月2-9日合併号)

それでもウクライナ軍の2倍の兵員である。兵器は性能はともかく、実数に近いであろう。いずれも10倍以上である。戦わずして、勝敗は見えていたはずだ。

少なくともプーチンは、FSB(連邦保安局)の情報をもとに、こう考えたことだろう。ロシアが大軍を動かしただけで、ウクライナは戦わずしてその軍門に下ると。精鋭部隊を派遣せずとも、訓練名目で動員した新兵でこと足りると。
だが、実際にはそうならなかった。

◆ロシア軍の甚大な損害

イギリス国防省の分析によると、ロシア軍は当初動かした20万の兵力の3分の1を失い、キーウ攻略を断念しなければならなかった。

戦死者は、じつに約1万5000人に上るとの分析を明らかにした。1351人が死亡したとするロシア側の発表を大きく上回る。

前線では数人のロシア軍の将軍が、通信状態の悪さから携帯電話を使うことでその位置を把握されて戦死した。第二段とされた東部戦線でも計画通りの侵出はできず、一部では国境線まで押し返されている。

イギリスのウォレス国防相は、ロシア軍の装甲車両も2000台超が破壊されたか、ウクライナ軍に奪われたと述べている。内訳は戦車が少なくとも530両、歩兵戦闘車が560台など。ヘリと戦闘機は計100機以上を失ったとしている。

損害は正規軍だけではない。士気が低い徴兵兵士に代わって投入された、いわゆる傭兵にも、多数の死者が出ていると報じられている。

すなわち、ウクライナ戦争のファクトチェックを続けている英調査報道機関「ベリングキャット」(クリスト・グロゼフ取締役)は、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がウクライナに派遣した傭兵8000人のうち、37.5%にあたる3000人が戦死したと考えられると語った(4月21日付、英デーリー・メール)。

◆戦車戦の実態

プーチンの盟友であるベラルーシのルカシェンコ大統領は「自国内で領土や家族、子供のために戦う国民を打ち負かすのは不可能だ」「(ロシアの軍事作戦が)これほど長期になるとは思っていなかった」と語っている。

つまり、ロシア軍がこれほど弱いとは思っていなかった、と云っているのだ。

第二段とされた東部戦線でも計画通りの侵出はできず、一部では国境線まで押し返されている。

とりわけ、ロシアの外貨獲得の目玉商品である戦車の脆弱性が明らかになり、北部戦線ではジャベリンの餌食になったことは、この通信でも解説してきたところだ。

◎[関連記事]「破綻しつつあるプーチンの戦争 ── だが、停戦交渉は軍事作戦の一環にすぎない」2022年4月3日

分厚い装甲と機動力をもった戦車は、軍事侵攻においては圧倒的な力を発揮する。都市制圧では歩兵を護り、敵の機関銃の弾丸を跳ね返す。

だが、精度の高い対戦車兵器には、その上部装甲は弱い。20世紀後半には対戦車ヘリ(空対地攻撃ミサイル装填)の登場で、その歴史的役割は終わったとすら云われたものだ。

その後、装甲がチタンやセラミックによる軽量化のいっぽうで、劣化ウラン(密度が高い重金属)、炸裂システムなどが使われるようになり、その弱点は補われたかに思われたが、今回のウクライナ戦争では歩兵が携行できる対戦車ミサイル(ジャベリン)の餌食になった。

この対戦車ミサイルを破壊するには、歩兵の白兵戦・狙撃をもってしか戦術的には対応できない。戦車はミサイルに弱く、しかしミサイルを抱えた歩兵は、敵の歩兵で狙撃するしかない。しかしその歩兵たちは、ミサイルなしに戦車の装甲を破壊することはできない。

※戦車<歩兵の対戦車ミサイル<歩兵の狙撃<戦車=三すくみのループ。したがって、最前線の兵器の運用が勝敗の帰趨を決める、平野での戦車戦の要諦である。

◆エクスカリバーの脅威

この三すくみのループを破るのが、遠距離から撃てる榴弾砲である。近距離で戦車が撃ち合う徹甲弾とはちがい、いま、東部戦線で威力を発揮しているのが、155ミリ榴弾砲(M777)に装填される砲弾エクスカリバー(M982)である。このエクスカリバーは、衛星利用測位システム(GPS)を用いて標的を正確に狙えるもので、単なる砲弾ではない。

アメリカ陸軍習得支援センター(USAASC)によれば、「エクスカリバーの砲弾は、妨害電波に耐える内蔵GPS受信機を搭載しており、慣性ナビゲーションシステムを改良している。これにより飛行中の正確な誘導が可能になり、射程距離に関係なく、ミス・ディスタンス(標的と実際の着弾点の間の距離)は2メートル以内に抑えられ、劇的に正確性が向上している」という。

さらに、ロシアの152ミリ砲が射程距離20キロ以内であるのに対して、エクスカリバーは40キロと長距離を狙える。通常弾でも30キロを狙える。東京駅から撃ったとして、横浜駅にいる戦車をピンポイントで狙えることになる。

ロシア軍がハリコフを放棄して撤退したのは、エクスカリバーの射程圏外への脱出にほかならない。しかもヘリコプターで空輸できるほど軽く(4トン未満)、ロシア軍の榴弾砲(7トン以上)が機動力を発揮できないのとは対照的だ。

榴弾砲はもともと、敵陣近くまで進出した偵察砲兵の指示で砲撃する。最前線で索敵する偵察砲兵はしかし、上述したとおり敵の歩兵に狙撃されやすい。

そこで問題になってくるのは、敵兵がどこにいて、どういう援護を受けているか。敵の動きを把握する必要がある。最前線の攻防が情報戦になってくるのだ。

緒戦でその必要を満たしたのは、ドローン兵器だった。ロシアのミサイル巡洋艦モスクワの撃沈はネプチューンの直撃とされているが、ドローン(バイラクタルTB2)が先行して撃沈に関与したことが明らかになっている(ロシア軍部に近いSNSのアカウント・Reverse Side of the Meda)。今後もそれは変わらないだろう。

◎[関連記事]「日本政府がウクライナにドローンを供与 ── 戦争を止めるために、何をすれば良いのか?」2022年4月23日 

◆NATO供与の兵器がロシア軍を壊滅させる?

4月26日、ドイツ南西部のラムシュタイン米空軍基地で、ウクライナへの軍事支援強化に向けたアメリカ主催の国際会議が開かれた。これまで兵器供与に慎重だったドイツを含め、西側諸国が一致してウクライナが強く求める大型兵器の供与を本格化させる方針となった。

じつは日本も、この会議に参加している。ここに、ウクライナ戦争を梃子にした日本政府の軍拡への布石、流れがつくられることも見ておかなければならない。NATO軍以上の兵器を供与できるはずはないのだから、医療関連の支援に徹すべきであろう。

それはともかく、ドイツのランブレヒト独国防相は、自走対空砲ゲパルトを50輌、ウクライナに提供すると表明した。ドイツはこれまで、直接の供与を対戦車ミサイルなど比較的小型の兵器に限っていたが、大きく方針転換したことになる。

このゲパルトは、レオパルドⅠ(60~70年代の主力戦車)の車体に35ミリ機関砲を二門搭載した対空戦車である。対空戦車の長所はミサイル攻撃に強いことだ。


◎[参考動画]Germany to supply Ukraine with anti-aircraft tanks

レーザー測距機付きKuバンド捜索レーダー(距離15km)とSバンドの追尾レーダー(距離15km)で機関砲が掃射されるシステムだ。戦車の天敵である攻撃ヘリコプターの射程外(15km以上)からのミサイル攻撃には、スティンガーで対抗する。

ウクライナ東部で今後、予想される戦闘は平野での戦車戦である。

アメリカが榴弾砲(155ミリ)を供与したのは、戦車群を叩くとともに、ロシアのロケット砲陣地や榴弾砲を無力化するのが狙いである。だが、砲門の数で上まわるロシア軍を撃破するには、攻撃の精度の高さがもとめられる。双方ともにドローンを飛ばして敵陣形をさぐり、無駄弾を撃たないほうが勝利を得るはずだ。


◎[参考動画]Report: Germany to deliver ‘Gepard’ anti-aircraft tanks to Ukraine | DW News

◆注目されるアメリカの新兵器

近代戦を決定づけるのは、敵の主力戦闘力をピンポイントで叩ける航空戦力だが、ロシア・ウクライナ両軍ともに制空権を確保できていない。これは半面で地対空ミサイル、対空砲が航空兵力を上まわっているからだ。

ロシア軍が「ウクライナ軍の軍事施設を攻撃した」と喧伝しながらも、じっさいには民間施設や住宅が被弾しているのは、爆撃機があまりにも遠くからミサイルを発射しているからだ。爆撃機の動静は監視衛星で把握されているし、標的に近づけば地対空ミサイルの餌食になる。したがって離陸した段階で動きを母くされるので、目標の上空に達することなく、ほぼ無差別爆撃となってしまっているのだ。野戦においても同じ構造となるであろう。やたらにミサイルを撃つが、当たらない無駄弾が続出するはずだ。

そこで、的確にヒットする無人機の登場となる。上述した戦車と榴弾砲が応酬する、野戦の均衡を崩す。しかもそれは、ロシア軍にはない兵器だ。

NATO諸国が対空ミサイルのスイッチブレードを供与されたのにつづき、アメリカが新兵器のフェニックス・ゴーストの供与を決めた。このフェニックス・ゴーストはロシアのクリミア併合を機に開発された無人自爆飛行体である。

スイッチブレードと同様、弾頭はタングステン炸裂弾だが、スイッチブレードが航続時間15分(300型)~40分(600型)なのに対して、フェニックス・呉ストは6時間という航続力がある。

一部には戦闘機から発射されることで、長時間を稼げるという観測もあるが、垂直離陸方式ではないかとも考えられている。ようするに、軍事評論家も実体を知らない新兵器なのである。ビデオカメラと赤外線センサーで標的を捉えるので、夜間攻撃に向いている。英米の軍事情報スポークスマンにそれば、ウクライナが戦略的な総反攻を準備しているという。

その総反攻には、ロシア本国への攻撃も含まれるであろう。補給路と兵站システムを叩くのも防衛である。

ここ数日、ウクライナと接するロシア西部で弾薬庫や石油関連施設などの爆発が相次いでいる。ウクライナ側は公式には認めていないが、ポドリャク大統領府長官顧問は、自国の攻撃であることを示唆したという。ロシア軍の補給線に打撃を与えるため、無人機(ドローン)などで攻撃を強化しているとみられる。

米シンクタンク「戦争研究所」も、無人機かミサイルでウクライナ軍がロシア西部ベルゴロド、ボロネジ両州で補給拠点を攻撃したと分析し、今後、越境攻撃が拡大すると予測している。ロシアが撃墜したと主張するトルコ製攻撃型無人機の画像も、インターネット上で出回っているという(共同電をもとに編集)。

いま、アメリカとイギリスの軍事顧問団がポーランドほかで、ウクライナ兵に新型兵器の扱いを修得させているともいう。これをもって、さらなる戦争の激化をもたらすNATOの暴走と批評するのは簡単だ。しかし、いまのところここにしかプーチンの暴走を止める術はないのである。


◎[参考動画]英国のNLAW対戦車ミサイルがロシアの戦車を破壊

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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重森陽太は戦略読まれて決定打の無い引分け。

リカルド・ブラボは打ち合いのスリリングな展開からボディーブローで圧倒勝利。

髙橋亨汰は鮮やかハイキックでノックダウン奪うも圧倒には至らず判定勝利に落ち着く。

新鋭の木下竜輔がベテランのジョニー・オリベイラを一発で倒す衝撃TKO勝利。

瀬川琉は大木一真に判定勝利ながらテクニックで圧倒、王座挑戦を訴えるまでに成長。

◎TITANS NEOS.30 / 5月15日(日)後楽園ホール17:45~20:05
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第9試合 62.5kg契約3回戦

WKBA世界ライト級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/ 62.15kg)
      VS
テーパプット・シッオーブン(タイ/ 61.65kg)
引分け 0-1
主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲29-29. 中山28-30

テーパプットは元・タイ国BBTV(タイ7ch)スーパーフェザー級チャンピオン。

テーパプットは2017年9月24日に健太(E.S.G)に軽いノックダウンを奪われての僅差判定負けしたが、同年11月26日には宮越慶二郎(拳粋会)にヒジ打ちでTKO勝利し、いずれもテクニシャンぶりを発揮した選手。

首相撲から足払いでテーパプットを引っくり返した重森陽太

初回、離れた距離から蹴りや組み合う探り合いは大きな展開を見せることなく、重森陽太は攻め難そうな中、いつもの重くてしなやかな蹴りが出ない。ムエタイ主体の戦いになれば地味にはなるが、高度な駆け引きの戦いでの3回戦では時間が足りない展開であった。

ローキックはカバーされても効果的に何度もヒットさせた重森陽太

地味な展開も油断ならない緊張が走る中のドロー

◆第8試合 70.0kg契約3回戦(両陣営ともウェイト了承)

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/アルゼンチン/ 71.15kg)
     VS
カンボジア・ウェルター級1位.ソン・ツアーラ(カンボジア/来日時刻順延により未計量)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO 2R 2:32
主審:宮沢誠

ソン・ツアーラはリカルド・ブラボに引けを取らない頑丈な体格で、ハードパンチャーでもあるムエタイテクニシャン。

ソン・ツアーラの積極的な打ち合いには倒されるかの緊張が走った

打ち合いではリカルド・ブラボが下がる場面もあったが、圧されながらもヒジ打ちでソン・ツアーラの左瞼を切り、最後は左ボディーブロー一発、呼吸のタイミングで効いてしまったかソン・ツアーラは顔をしかめて倒れると、カウント中にレフェリーストップとなった。

最後はボディーブローで仕留めたリカルド・ブラボ

手応えあったリカルド・ブラボは雄叫びを上げる

◆第7試合 62.5kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/ 62.45kg)
      VS
大和ムエタイ・スーパーライト級チャンピオン.古村匡平(FURUMURA/ 62.3kg)
勝者:髙橋亨汰 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 仲30-28. 中山30-28

初回はサウスポーの高橋亨汰がローキックからミドルキック、左ストレートのテンポがいい。第2ラウンドにはタイミングいい左ハイキックでノックダウンを奪った高橋亨汰。それでも下がらない古村は巻き返しの予兆をさせながら、高橋の顔面前蹴り、リズミカルなハイキックが主導権を譲らず最終ラウンドまで戦い抜いた。

高橋亨汰のハイキックが古村匡平に鮮やかにヒット

終盤の高橋亨汰のハイキック、顔面前蹴りと共にインパクトを与えた

◆第6試合 59.0kg契約3回戦

ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.65kg)vs木下竜輔(伊原/ 58.65kg)
勝者:木下竜輔 / TKO 1R 2:32
右ストレートでノックダウン後、カウント中のレフェリーストップ
主審:仲俊光

ローキック中心に距離を取った流れからコーナーに詰まりつつあったジョニー・オリベイラを右ストレート一発でノックダウンを奪った木下竜輔。ジョニーは吹っ飛ぶように顔面から倒れ込むとビクとも動かない失神でほぼノーカウントのレフェリーストップとなった。

担架で運ばれたジョニー・オリベイラだが、意識はある状態で、興行終了後はしっかり歩いて帰るほど心配は無い様子だった。

木下竜輔の右ストレートがジョニー・オリベイラにヒット、一発で仕留めた

組み合っての攻防は瀬川琉が効果的にヒジ、ヒザ蹴りヒットで攻勢を保つ

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

瀬川琉(伊原稲城/ 57.85kg)
      VS
TENKAICHIフェザー級3位.大木一真(ワイルドシーサー那覇/ 57.4kg)
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-27. 宮沢30-28. 桜井30-27

蹴りと組み合ってもテクニックの上手さを見せた瀬川琉。我武者羅に出る大木一真も次第に険しい表情となるが、採点は大差で瀬川琉圧勝の流れだった。

◆第4試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

和乃(新興ムエタイ/ 52.25kg)vs山口遥花(仰拳塾/ 48.3kg)
勝者:山口遥花 / 判定0-3
主審:仲俊光
副審:椎名28-30. 宮沢27-30. 桜井27-30

長身の和乃にパンチでラッシュする山口遥花。コーナーに詰められての劣勢の流れは変わらずも諦めなかった和乃は蹴り返して出るも山口遥花の大差は揺るがず。

◆第3試合 女子45.0kg契約3回戦(2分制)

島田美咲(SQUARE-UP/ 44.0kg)vs莉都(矢場町BASE/ 44.05kg)
勝者:島田美咲 / TKO 3R 0:52
主審:中山宏美

島田美咲のパンチで莉都が鼻血を流すも蹴りで応戦。島田が右ストレート多発させ、ドクターチェックで鼻骨骨折の疑いによりレフェリーストップとなった。

◆第2試合 アマチュア女子35.0kg契約2回戦(90秒制)

西田永愛(伊原)vs加藤愛菜(GET OVER)
勝者:西田永愛 / TKO 2R 1:13
主審:椎名利一

◆第1試合 アマチュア43.0kg契約2回戦(90秒制)

西田蓮斗(伊原)vs中野愛斗(MIYABI)
勝者:西田蓮斗 / 判定2-0
主審:椎名利一
副審:中山19-19. 桜井20-19. 仲20-19

《取材戦記》

「本日のMVP賞!」成るものは無いが、敢えて選ぶならリカルド・ブラボか木下竜輔か。衝撃度で言えば、昨年4月デビューで4戦目の木下竜輔だろうか。2004年デビューで、ディフェンスに定評ある58戦目のジョニー・オリベイラを一発で倒したインパクトは大きい。

重森陽太が御丁寧に試合を振り返って頂いたが、「対策していたことが早い段階で読まれた感じです。それでテーパプットは守りに入り、お互いに警戒しながら続いてしまいました。ムエタイなのでそんな流れは起こり得ることですけど、更なる動きが起こせるところで終わってしまう3回戦では勝機を掴むのは難しい。組み合っての攻防は見た目は悪かったかもしれないけど組み負けないように応戦しました。」

簡潔に纏めさせて頂いたが、アグレッシブな選手との戦いは明確なヒットでノックアウトの醍醐味があるが、ムエタイテクニシャンとの戦いは短い時間でのノックアウトと主導権を奪って圧勝に結び付けるには難しいことだろう。競技性の展開の違いを感じる試合だった。

ソン・ツアーラは来日が遅れ、入国時もPCR検査等で時間を費やすことになった様子。計量は大幅に遅れて間に合わずも、ウェルター級リミットから大幅な増加も無く、70.0kg契約リミットにも達していないと言われる。リカルド・ブラボはマイクアピールで自らのウェイトオーバーを謝罪したが、ソン・ツアーラ陣営は難なく許したという。

そのソン・ツアーラはカンボジア国籍ながら、ムエタイの経験豊富でパンチのパワーもあるテクニシャン。リカルド・ブラボを下がらせる勢いがあった。今後も日本で重量級戦線の活躍を観たい選手である。

新日本キックボクシング協会もここ数年、紆余曲折あって選手の顔触れも大きく変わった現在です。江幡ツインズはRIZINなどのビッグイベントに舵を切り、勝次(=高橋勝治)は5月28日の「NO KICK NO LIFE」に出場予定。

重森陽太はリカルド・ブラボと高橋亨汰と三人で、今後の新日本キックボクシング協会を支えるエース格を宣言。成長著しい瀬川琉も王座挑戦を希望する宣言をしてトップクラスに進出してきた様子が伺えます。木下竜輔はまだ4戦目ながら壮絶ノックアウトで存在感アップ。他団体等との交流戦となるであろう今後も、老舗の低迷からの立ち上がりを支えていく存在である。

小野瀬邦英氏がSQUARE-UPジムから出場の島田美咲のセコンドとして来場。前日計量にも姿を見せていたが、試合中も昔ながらのドスの効いた声がよく響いていた。1990年10月の小野瀬氏自身のデビュー戦は伊原プロモーション興行だったという(当時は日本キックボクシング連盟加盟)。32年前は確かにその体制だったことが懐かしく思う。

新日本キックボクシング協会次回興行は7月24日(日)に後楽園ホールに於いてMAGNUM.55が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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