辺野古キャンプシュワブ

沖縄に向けられる視線から、基地問題を除外することは難しい。2020年には海兵隊の主力をグアムに移す、とするロードマップはまだ破棄されたわけではないのだから、基地の縮小・撤去は当然にしても、新たな基地建設はロードマップに矛盾するし、何よりも「もう基地は要らない」と何度も選挙で示された沖縄の民意と相いれない。知事選などの選挙はともかく、小選挙区制が導入された国政選挙の選挙区で野党が議席を得るのは容易ではないがここ数回の国政選挙、沖縄では比例での復活当選はあっても、自民党は選挙区では1議席も獲得できていない。

◆「基地は要らない」が沖縄の民意

繰り返すまでもなく、沖縄の民意は「基地は要らない」である。しかし現実はなかなか動かない。政府は選挙結果など横目に見ることすらせず、ひたすら米国の意向を「忖度」し、時に米国が基地を引き上げようと持ち掛けたら「とどまってくれ」と懇願したことさえあるほどに、「自主的な従属」姿勢に拘泥している。第二次対戦で「鬼畜米英」と罵(ののしり)、「1億玉砕」とまで狂気に満ちて敵に回した米国に、どうしてここまでへつらえるようになるのであろうか。誠に主体性なき、不思議な心象をこの国の政府や多数の国民は有していると言わざるを得ない。

辺野古キャンプシュワブゲート前

◆ゲート前に座り込む人たち──お握りを勧める行為に「優しさ」以外のどのような感情があるのか?

しかし、そんな観念論はともかく、沖縄の基地建設現場には現実がある。工事が再開された辺野古キャンプシュワブゲート前には基地建設に反対する人々が毎日集い、工事車両の基地への資材搬入に座り込みで抵抗したり、海上ではカヌーやカヤックで工事に対する抗議が連日行われている。3月14日現地を訪れた際には抗議の座り込みが983日に達していた。ゲート前にはテントが張られ、読書する人や歓談する人の姿が見られたが、いざ工事車両接近となれば、皆がゲート前に座り込む。

3月14日現地を訪れた際には抗議の座り込みが983日に達していた

米国人の若者(学生)と思われる集団がキャンプシュワブゲート入口近くにやって来た

海兵隊員たち

われわれが現地を訪れたのは昼過ぎで、座り込みをしている方々も昼食を採っている時間だった。「お握りありますよ、食べますか」と勧めていただいたが、直前に昼食は済ませていたのでご厚意は辞退した。

右翼たちはこのような「助け合い」行為の上げ足を取り、現地では「日当をもらった人間が妨害をしている」などと吹聴するが、実態はこのような「助け合い」が行われているのであり、なんら批判されるような行為ではない。初対面の人間にも空腹を心配してお握りを勧める行為に「優しさ」以外のどのような感情があるだろうか。

◆迷彩服を着た屈強な海兵隊員たち

しばらくゲート周辺を観察していると。米国人の若者(学生)と思われる集団がキャンプシュワブゲート入口近くにやって来た。彼らは米国流の「平和学習」をしに来たのだろうか。残念ながら話を聞くチャンスがなかったが不思議な光景であった。

さらに立ち並ぶゲート向かいのテントを取材していると私にぶつかりそうになりながら、一人の海兵隊員が重たい荷物を背負い駆け抜けていった。おそらく訓練であろうが、自動小銃こそ持たないものの、迷彩服を着た屈強な兵士にぶつかられそうになるだけで、ひやっとする。

少し間をおいて今度は2人の兵士が息をあげながら近づいていた。テントの中にいた人たちからは「なんでこんなところでこれ見よがしに訓練をするんだ!」、「帰れ!」の声が飛ぶ。この「訓練」は取りようによっては米軍によるある種の「挑発行為」とも感じられる。基地建設反対行動をしている人がいる場所を、わざわざ選んで兵士を走り抜かせる必要があるのか。基地内には膨大な敷地があるのだ。なぜ彼らはテント前を走り抜けねばならないのか。

なぜ彼らはテント前を走り抜けねばならないのか

◆沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さんに聞く

沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さん

沖縄平和運動センター事務局長で山城博治さん逮捕後に、現場での指揮を執る一人大城悟さんに伺った。

―― 新たな埋め立てを政府は、県への認可をせずに強行しようとしています。
大城 もうね。三権分立とか法治国家とか無茶苦茶ですね。
―― まだあの地域の漁業権は放棄されていませんね。
大城 そうです。もう法律や裁判所を信じる気持ちが無くなってきています。先の最高判断もそうですが、やりたい放題ですね。山城さんの逮捕勾留もそうです。私たちはここで頑張ります。

 

◆沖縄の日常の一断面

ゲート前を去って、数キロ離れた公道の脇に米軍車両が2両駐車されているのが目についた。辺野古の建設現場から遠くないので何らかの監視をしているのだろうか。せっかくだから兵士に話を聞こうと近づいた。

椅子に座って黙っている兵士に、「ここでの任務はなんですか」と聞くと視線だけをこちらに向け、口は開かない。

「ここは日本の敷地なので条約や法律には詳しくないが、あなたたちが物騒な格好で、こうやって監視のようなことをしているのが不思議なのだが」と聞くと、もう1両止められていた車両の中の兵士が無線連絡を取り始めた。

頬を緑色に塗っている白人兵士にも尋ねた。「ここでに任務は何ですか」、すると車両から出てきたほかの兵士が「うるさい!立ち去れ」という。相手は兵隊なので、恐怖心もありそれ以上の質問は諦めた。こんな光景も沖縄の日常の一断面なのだろう。

 

(鹿砦社沖縄取材班)

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嘉手納基地のすぐ横に4階建ての建物「道の駅かでな」がある。道の駅は各地で特産品を取り扱う場所としてドライブ旅行をする人にとっては、地域の独自性を楽しむのに人気の場所である。「道の駅かでな」はそういった意味を持ちながら、米軍基地を眺め降ろせる場所として、特別な場所であり、また視点を変えれば、現在沖縄の1断面が凝縮されている場所だとも言えよう。

◆4階展望スペースから嘉手納基地を眺める

1階は建物の外で食べる軽食の販売と土産店がある。ここでは沖縄土産として知られている御菓子やキーホルダーなど一般の土産物店と陳列物はそう変りないが、米軍を意識したTシャツやグッズも販売されている。琉球語でいう「チャンプルー」(まぜこぜ)状態だ。

2階には食堂があり、この食堂の入り口にはあまた有名人のサイン色紙が飾られている。食堂に入ったことはないが、訪れた人によるとこの食堂は概ね好評を得ている。3階には嘉手納町学習展示室があり、基地を中心とした嘉手納町の現状や基地にまつわる事件事故、戦闘機の離発着音を航空機、トラックの発する騒音との聞き比べなど、押しつけがましい理屈ではなく、事実を羅列することによって嘉手納基地の弊害が学べるようになっている。

そして4階は展望スペースである。ここからは、嘉手納基地を離発着する全ての米軍機を直接見ることできる。観光客だけでなく、日本テレビ、フジテレビのカメラクルーは常駐しており、折々国際的な事件に際し嘉手納基地に飛来する米軍機、または嘉手納基地から飛び立つ米軍機を観察し、米軍行動の意図を探る1つの要素としている。休憩用の机と椅子があるのだが1つの机には「報道・関係者専用」と書かれた紙が貼られている。近年中国からの旅行者も多いようで中国語で同様の内容も書かれている。

この日嘉手納基地に目立った動きはなかったが、ご覧の通りF16や、各種輸送機が駐機している様子は伺えた。またヘリコプターの離着陸は頻繁にあった。待機しているテレビ局のスタッフによると、「朝鮮半島や中国情勢が動いた時にグアムなどから飛来する軍用機が増えますね。その機種を観察すると米軍の作戦規模や意図を推測することができます」ということだった。

◆基地より観光

おそらくは米軍飛行場の内部がもっとも見渡しやすい場所としての「道の駅かでな」は騒々しく語らずとも、そこに立ち寄る旅行者に(一定の感性があれば)米軍基地の暴力性を訴える場所として機能している。

しかし前述のとおり、1階土産物屋では米軍グッズも取り扱っている。沖縄県はかつて「米軍がなければ、経済的に立ち行かない」という論法で抑え込まれていた時期があった。だが現在、沖縄県が基地経済に依存する割合はあまり知られていないが5%にまで下がっている。沖縄を訪れる観光客数は2015年度793万人に達し前年比10.7%プラスで、とくに海外からの訪問者は69.4%増と際立った増加を見せている。観光業の総収入は6000億円で、このまま成長すれば近く1兆円産業になるとの見方もある。あながち外れてはいないだろう。

過去沖縄への観光客が激減した時期が何回かあった。それは第一次湾岸戦争と第二次湾岸戦争のときで、観光業に従事する人の自宅待機や解雇も相次いだという。つまり観光にとって米軍基地の存在は迷惑以外の何物でもないことが証明されたわけだ。

沖縄に米国の基地を見に来る人が全くいないわけではないだろうが、観光客の多くは豊かな自然や文化にふれることを楽しみにやってくる。そこへ立ちはだかる米軍基地は経済的な面からも「邪魔者」になりさがった。そのことを「道の駅かでな」は存在で示している。土産店で売られる米軍関連グッズの売り上げもおそらく施設全体の収入からすれば5%もいかないだろう。沖縄の日常のある種の凝縮がここにある。

 

(鹿砦社沖縄取材班)

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