年の瀬に想う ──

鹿砦社代表 松岡利康

今年もあと一日となった。本当に一年経つのは速い。このかん倉庫や書庫を整理していく過程で、私たちが本格的に出版の世界に踏み入れる際に、ちょうど縁あって歴史家の小山弘健先生と出会い、「われわれの出版の目的は一、二年で忘れ去られることのない本を作ることである」という、『戦争論』で有名なクラウゼヴィッツの言葉を教えていただいたことを思い出しました。果たして私たちは「一、二年で忘れさられることのない本」をどれほど作って来たであろうか ── 汗顔の極みです。思わぬ“発見”でした。

『紙の爆弾』の定期購読者や会員向けのセット直販のために、これまで出版した本を列挙してみました。その一部が別掲のような本ですが、一冊一冊に想い出があります。自分で言うのも僭越ですが、なかなかいい本もあります。くだんの小山先生の最期の遺作『戦前日本マルクス主義と軍事科学』をあらためて紐解き、今になってこの本の真価を感じました。

いやしくも私たちは本(書籍や雑誌)を出す出版社ですから、本を買ってご支援いただくことが基本です。最近のお薦めは、『3・11の彼方から』、わが国を代表する精神科医・野田正彰先生の2冊の著書『流行精神病の時代』『過ぎし日の映え』(野田先生によれば、先生の「精神医学の総括、辞世の書」ということです)、われわれの世代の絶対的カリスマ・山本義隆さんが寄稿された長大な講演録を収録した『季節2025夏・秋合併号』です。

ともあれ青色吐息ながら2025年を送り新たな2026年を迎えることができることを喜びたい。

鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/