前回に引き続き台湾ネタで恐縮だが、予告通り(?)、6月29日から7月2日・3泊4日の訪台レポをお届けする。

◆1日目は、日本料理と、ノスタルジックな街並みや人々に惚れこむ

羽田・台北間の移動に用いた台湾の航空会社「エバー航空」は、サンリオと提携しており、機体も機内もサンリオ三昧。鹿児島上空あたりで他の旅客機や船も見えた。台北松山空港にて「エバー航空」の子会社である「ユニー航空」のプロペラ機に乗り換え、台東空港へ。私は台湾を訪問するのは初めてだが、台北で空港の外に出ることはなかった。その後、バスで「台東富野渡假酒店(HOYA RESORT HOTEL)」に向かい、シングルルームと聞いていたが、ツインのベッドの片方に荷物を置く。夕食は「台東大車輪日本料理店(DCL Japanese Food House)」。店員さんは若い方が多く、日本語も話す。日本料理に台東の食材を用い、台湾流のアレンジが加えられているが、癖がなくおいしい。ただし、店頭ののぼりに書かれたカタカナの縦書き文字を見ると、「サーモンイクラ」の音引き(ー)が漢字の「一」のように横向きになっていたりする……。

台東縣は台湾の東南端に位置し、細長くて海岸線も長い。台湾総面積の10%弱を占める。自然にあふれ、原住民族の人口が3分の1に及ぶ。

南国風の空気、わずかに吹く心地よい風、ノスタルジックな風景、親しみを感じる人々、ゆるい世界……。渋いおじいさんたちが集まり、路上でテレビを観る風景も。わたしはいっぺんに、ここが好きになった。台東縣は台北よりも田舎だと想像していたが、本当に東京からタイムマシンに乗ったようだ。でも、日本、北京、ソウル、平壌、タイ、シンガポールなどの風景とも似たところがある。他は行ったことがないのでわからないが、やはり東アジアや東南アジアの文化はつながっているのだろう。

◆2日目は、ブヌン(布農)部落でコミュニティの文化を守る様子を知る

ブヌン(布農)部落の織物芸術センターにて

翌日は、まず、前回に酒井充子監督インタビューを寄稿させていただいたドキュメンタリー『台湾萬歳』(http://taiwan-banzai.com/)の舞台、台東縣での完成披露試写会・記者会見。この時には、社会派と人の魅力の相乗効果で、作品が深い魅力を湛えていると感じた。昼食は、娜路彎大酒店(Formosan Naruwan Hotel)にて会食。

その後、ブヌン(布農)部落で園内見学とアーチェリー体験。日本語の案内もある。園内にあるのは、手作り体験教室、織物芸術センター、射的場、シイタケの栽培場、部落劇場、キャンプ場、夏のみ営業している温泉プール、竹炭工房など。時間の都合でショーを見逃した。

台湾原住民は総人口の約2%で、2016年現在、狭義では16の民族が政府に認定されている。

「布農(ブヌン)文教基金会」について途中までまとめながら調べ物をしていたら、ネット上に日本語の資料がアップされていたので、こちらをご覧ください(なんと便利な時代だろう)。

「布農(ブヌン)文教基金会」を設立した牧師・白光勝さんにもお会いできた。彼はお金のない場所だと繰り返し語っていたが、支援のシステムをつくって「原住民」を守り、十分な教育が受けられるように子どもたちにもお金を与える。ほかにもいただいた『Asia Echo(アジアエコー)』2002年8月号の資料には山田智美さんによって、「台北から汽車で東回りに約6時間、飛行機なら約40分の台東県延平郷の山間にある小さな村、桃源村に『布農部落』はある。観光宿泊施設と住民の福祉教育の場を兼ねた小さな先住民族文化園である。」と書かれている。また別の資料によれば、ブヌンには、「軍功(たたかいの手柄)を讃える」精神があるそうだ。

「東京に住んでいる」といったら「お金がある」といわれたので「そんなことはない」と答えたが、農村から日本を見ると、まだまだそのように見えるのだと感じた。原住民のコミュニティを訪れることにより、私たちはさまざまなことを感じたり学んだりすることができ、彼らの支援にもつながる。私も次回は宿泊施設なども利用させてもらいながら、ショーや食事、アーティストさんの作品などをゆっくりと楽しみたいと思う。

夕食は米巴奈-原住民山地美食坊(Mibanai)にて原住民料理を満喫。個人的には、一般の台湾料理よりもクセがなく、味つけが和食に近いようにも感じた。スズランの食器が美しく、帰国後に調べたら「烤春筍」というヤングコーンをバラ肉で包んだものなど、味わい深く、特においしかった。

そして「ライトショー」に行くも、雨で開催されず。それでも同行者いわく台湾の方々は夜に集まることを好むそうで、大道芸などの小さなショーをみんなで楽しんでいる。あたかも大家族のよう。若々しい台東縣の知事はカリスマ性があってスピーチがうまく、彼の話にみんな熱心に耳を傾けているように見えた。

宿泊は鹿鳴溫泉酒店。客室の風呂も温泉だといわれたが、駈けこみで大浴場の温泉に入った。ドライのサウナに加えてミストサウナもあり、客室はベッドルームが階段を上がった階にあり、そこはロフトのような感じだ。

◆3日目は、熱気球フェス、漁港の雰囲気、歴史建造物を「体感」

さらに次の日には、お茶の産地として知られる鹿野高台で、「台湾国際熱気球フェスティバル」を見学。2011年より毎年6~8月頃に開催されているそうで、想定外の迫力やデザインのバリエーションがあり、楽しませてもらった。アミ族が多い地域で、スタッフもアミ族が担当していると聞いた。

海鮮中心の東海岸海景渡假飯店(East Coast Sea View Hotel)で昼食をとり、成功漁市では市場が休みの日だったにもかかわらず風情ある佇まいの漁師さんたちとインパクト溢れる魚たちに出会えた。成功漁港では10月になるとカジキ漁がおこなわれる。このカジキの「突きん棒漁」は日本の千葉県出身者らが伝えたものとのこと。わたしは千葉県出身なので、このあたりの風景や人に大きな親しみを感じる理由かもしれないとも考えた。その後、展示室で「突きん棒漁」などについてのレクチャーも受け、広場で実体験をおこなう仲間の姿も撮影。

そして、「成功鎮プチ旅行」として、新港教会歴史建築も見学。ここには、1932年に新港支庁長の菅宮勝太郎によって建てられた木造建築と、46年に医師の高端立と父の篤行が開業した高安診療所と彼らが建て直した新港教会が保存されている。95年に医院が休業した後には、そこも新港教会が買い上げて研修会館(霊修会館)となった。これらを保存し続けようと、現在、「新港教会歴史建築 夢のプロジェクト」が立ち上がり、訪問を受けたり、さまざまな活動を手がけたり、リフォーム経費を募ったりしているのだ。小芝居を観て、牧師さんの話もお聴きした。その後、1人ぷらぷらと、海岸などを散歩し、将棋だか囲碁だか(邪魔したくないのであまり近づけなかった)に興じる人や海の様子、そこを通る人々の様子をながめていた。

夜は、揚げ物が印象的だった三禾聚台菜食堂での夕食、国立成功商業水産高校活動中心・成功鎮での、観た3回とも印象が異なる『台湾萬歳』特別上映。上映では、町中の人々が集まってきたかのごとく盛り上がり、子どもから大人まで笑って楽しむ姿が印象的だった。東海岸海景渡假飯店(East Coast Sea View Hotel)に宿泊。ベッドはなんと天蓋つき! おろさなかったが。

コミュニティと歴史について、「自分の順番を生きる」ということとその不思議などについて、改めて考えさせてくれた1日だった。また、東京暮らしの幸福と不幸についても思い及んだ。

新港教会歴史建築

◆現在、成功鎮では映画とのコラボで割引サービスも実施中

最終日も朝食後、東海岸プチ旅行。まずは、エメラルドグリーンの海や橋を建設する労働者の姿を眺める。次に、日本統治時代の製糖工場である「台東製糖文化創意産業園区」を見学。資料によれば、「製糖工場の文化資産を再利用し工業地の景観を芸術へ置き換え、彫刻工房、手作り創作工房、原社手作り生活感など、芸術と人文の特色を組み合わせた芸術の領域が広がっています。」とのこと。実際、工場とアート、カフェ(茶屋)などが組み合わさっており、ユニークな場所だ。

台東製糖文化創意産業園区

最後に、交差点にバイクで届けてくれた台湾式お弁当を台東空港にて昼食としていただき、台北松山空港に移動。ホテルなどで買い損ねたお菓子などのお土産を購入して帰国。

今回の旅を経て、台湾、台東、成功鎮を体感することができた。案内の方によれば、「お好みでツアーを組むことができるし、これから1~2年で日本からの観光客にもっと対応できるよう準備を進める予定」とのこと。しかも成功鎮では、現在上映中の酒井充子監督ドキュメンタリー『台湾萬歳』のチケット半券か映画パンフレット持参でホテルや飲食店などでのさまざまなサービスが割引となるキャンペーンを実地中だという。わたしも帰国後の日本台湾祭りや上映の際に台東で出会った方々と再会し、改めて関心が高まっている。成功鎮で出会った林哲次先生の幼少期や戦時中に関する文章を日本で書籍化したい(鹿砦社さん、どうです?)とか、台東のガイドブックを制作したいなど、妄想(?)もふくらんでいる。台東にご関心ある方のご質問などあれば、どうぞ。


◎[参考動画]3部作最終章『台湾萬歳』ポレポレ東中野にて公開中ほか全国順次公開予定!(CINRA NET 2017年6月2日公開)

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[撮影・文]
1972年、千葉県生まれ。フリーライター、エディター。『紙の爆弾』『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』などに寄稿。労働や女性などに関する社会運動に携わる。ちなみに、定住に興味がなく旅を愛するが、それぞれの土地の文化には関心がある。小林蓮実Facebook 

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『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

藤原敏男さん(左)とシリモンコン・ルークシリパットさん(右)。両者のチャンピオンベルトはすべて御本人の名前入り、本物です。アマチュアボクシングのメダルはシリモンコンさんの物

名勝負を展開した名チャンピオン同士の戦い。シリモンコン・ルークシリパット(タイ)vs 藤原敏男(黒崎)戦はムエタイの後世に語り継がれる激闘でした。ムエタイ殿堂チャンピオンの名勝負の中に日本人が絡む試合はごくわずかな中でも、ベストファイトはこの試合しかないでしょう。

◆7月17日「ムエタイの日」、41年ぶりの両雄再会

昨年から始まり、今回で8回目となる、月刊ゴング誌・元編集長の舟木昭太郎(現・株式会社アッパー代表取締役)氏が主催する「キックボクシングを語るトークショー」のひとつ、「ムエタイの日」が7月17日(月・祝)に銀座セントポールズサロンにて開催されました。

参加者には、藤原敏男氏と対戦経験ある二人である佐藤正信氏と増沢潔氏、重量級では猪狩元秀氏、軽量級ではアトム鈴木氏、ミッキー鈴木氏のツインズ、若い世代では土屋ジョー氏、ソムチャーイ高津氏も列席されました。

ムエタイを重視する意味で催されたワイクルーを舞う土屋ジョーさん

◆伝説のムエタイボクサー、シリモンコン・ルークシリパットさん

特別ゲストで来日された伝説のムエタイボクサー、シリモンコン・ルークシリパット氏は、藤原敏男氏との再会を祝し、乾杯の音頭をとり「ムエタイの日」は開幕。
両者は1976年(昭和51年)3月8日にラジャダムナンスタジアムで、ノンタイトルで対戦。当時、シリモンコン氏はルンピニースタジアム・ライト級チャンピオン(ラジャダムナン系同級2位)、藤原敏男氏は全日本ライト級チャンピオンで、激しい攻防の末、僅差でシリモンコン氏が勝利しました。その映像もこの“ムエタイの日イベント”で上映されました。

この試合の採点は後々タイでも話題になり、「どちらが勝っていたか」の意見が盛り上がった大接戦の展開で、「引分けが妥当だったのではないか」という意見も多かった激闘でした。

引分けの少ないムエタイにおいて、珍しく引分けとなった試合は、月間ベストバウトや年間ベストバウトに選ばれる可能性が高いと言われます。それは公式記録の同点とは違う意味で“両者とも勝者”という評価の表れということです。

シリモンコン氏は「もしこの試合結果が、引分けだったとしたら、ムエタイ界において藤原もシリモンコンも、もっと高く評価されていたのではないかな。引分けだったら、この試合が私のベストバウトだったかも知れない」と話されたようです。

シリモンコン氏は現役当時に、プミポン国王からムエタイ国民栄誉賞を直々に授かっており、タイ国のスポーツ殿堂入りをも果たし、藤原敏男氏も1997年頃、ムエタイを世界に広めた功績により、タイ国のスポーツ殿堂入りしています。

シリモンコン氏はこの以前に、ルンピニー系フェザー級王座も奪取している2階級制覇チャンピオンで、藤原敏男氏はこの試合の2年後の1978年3月18日に、ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座を奪取し、外国人初のムエタイ殿堂チャンピオンに上り詰めています。

左から藤原敏男さん、ソムチャーイ高津さん、シリモンコンさん。通訳のソムチャーイ高津さんは藤原さんの愛おしい弟分であり、シリモンコンさんともお友達、羨ましい!

◆1977年元旦の佐藤正信 vs シリモンコン戦

このイベントに参加された中の一人に第8代全日本ウェルター級チャンピオン.佐藤正信氏がいらっしゃいましたが、この二人の再会も興味深い因縁がありました。

藤原敏男戦の翌年の1977年元旦、後楽園ホールでシリモンコン・ルークシリパット(タイ)は、佐藤正信(山田)にノンタイトル戦でKO負けしており、その意外な敗北にファンも関係者も驚いた様子だったと言われます。寒い日本で体調を崩されたことが敗因と言われますが、タイでの制裁は厳しいもので、シリモンコンは王座剥奪の運命を辿ってしまいました。

続く土佐源(山田)戦にも判定負けしたシリモンコンは、これで後に控えていた藤原敏男との再戦は無くなりましたが、後々の引退後来日し、東金ジムでトレーナーを務め、越川豊選手や山崎通明選手を日本チャンピオンまで育てた功績は有名です。

佐藤正信さん、シリモンコンさん、佐藤夫人。佐藤さんへの敬意を表して最初に握手を求めたのはシリモンコンさん

藤原さん(右)は佐藤正信(左)さん、増沢潔(中央)とも対戦した戦友

またトレーナーや通訳、日本選手のタイ遠征やムエタイツアーなどの世話役で、タイと日本の関係者のパイプ役も果たし、両国の多くの関係者から尊敬されているという名誉挽回した話題もあり、シリモンコン氏の人懐っこい性格から、世代を越えて若いファンからの声援も多いようです。

ウェルター級では猪狩元秀さん(右)も現地で現役チャンピオンを倒したことがあります。毎度「荒くれ者多いキック界には珍しい人格・品格・性格No.1の猪狩元秀さん」と主催者の舟木昭太郎さんに紹介され、毎度“ひがむ”藤原さんがいます(笑)

◆藤原敏男氏のような日本人ムエタイ選手はいつ現れるのか?

こんな名勝負が行なわれていたことに当時、地方に住んでいては観れないファンも多かったでしょう。後々語り継がれる“激闘の名勝負”は、名選手同士がぶつかってこそ出来上がる名勝負となります。何十年後かに、このようなイベントが開催されて再会が出来るような感動の試合を、タイの殿堂スタジアムで展開できるか、今後そんな選手が日本で何人現れるかが、日本のキックボクシング系競技の重要な鍵となるでしょう。

ムエタイ選手に於いて、戦うのは対戦相手だけではない、レフェリーとプロモーターと、ギャンブラー(賭け屋)に好印象を与えていかわねばならないプレッシャーとの戦いが多くの名選手を生む土壌が出来上がっているタイ国です。

日本に於いて、国民栄誉賞を受けられるのはメジャー競技のスーパースター級選手でなければ有り得ないことで、日本人選手としては、タイ国のムエタイ殿堂入りを、藤原敏男氏に次ぐ選手が現れることを期待したいものです。

舟木昭太郎さん(中央)のインタビューに応じ、最後は握手する盟友

[撮影・文]堀田春樹
※以上での一部はソムチャーイ高津氏の通訳によるシリモンコン氏のコメントを引用しています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

 

 

  
7月27日、本コラムに「リンダの会『#安寧通信』解析〈1〉 0号執筆陣に見る李信恵絶対擁護の人々」を掲載したら、予想通りであったが、さっそく李信恵がツイッターで反応してきた。しかしながら、例によってその内容には明確な虚偽と悪意が込められているので、この際しっかり反論しておく。まず下記を見て頂こう。

李信恵のツイッターより

昨日の「リンダの会『#安寧通信』解析〈1〉 0号執筆陣に見る李信恵絶対擁護の人々」では、李信恵が在特会元会長と保守速報を訴えたことに何の異議も唱えていない。それどころか、

《繰り返すが編集班はいかなる「差別」も「排除」も肯定する立場にない。断じて「差別」も「排除」も「リンチ」も肯定しない》

と立場を明確にしたうえでさらに、

《『#安寧通信』、vol.0は李信恵が、在特会元会長の桜井誠と保守速報を相手に2014年8月18日に損害賠償を求める裁判を起こしたことを紹介する李自身の「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」から始まる。この文章に書かれている訴えには虚偽はなく、李自身かなりの被害を受け訴訟に踏み切ったことが窺い知れる。相手は狂気の差別集団「在特会」なのだから。》

と李信恵が起こしている裁判へは基本的に理解を示し、批判などは微塵も展開していない。課題として述べているのは李信恵が、

「日本には差別を裁く法律はありません。名誉棄損や侮辱にしても、刑事事件での告発はハードルが非常に高い」

と述べている部分の「日本には差別を裁く法律はありません」である。詳細は27日の本コラムをご覧いただきたい。取材班はこの裁判自体に一切ケチをつけてはいないのであり、「#安寧通信」に登場する顔ぶれと、そこに書かれている内容が「M君リンチ事件」と極めて深い関連を持つので、それを明らかにしようとしているのだ。

しかし、李信恵にとっては「#安寧通信」が鹿砦社に取り上げられたことだけで、気に入らなかったのだろう。おそらくは、もっと汚い言葉で罵りたいのであろうが、
「偏見や私怨のある人たちは、そういうことは見えないんだと思った」

と決めつけている。「偏見や私怨」? 取材班には李信恵に「偏見や私怨」などない。直接会ったこともない、接触したこともない対象にどうして「偏見や私怨」を抱く必要があるのだ。李信恵がここで述べている「そういうこと」とはその前の書き込みから推測するに、「#安寧通信」の文章にはすべてひらがなでルビがふってあることを指しているのだろう。「そういうことは見えないんだ」ではない。見ればわかるが、この連載の目的は「#安寧通信」の称賛や李信恵が起こしている裁判への批判ではなく、あくまで「M君リンチ事件」を読み解くための側面からの解析である。何をどう評論しようと自由じゃないのか。

さらに、断じて容認できない嘘は、

「まあ、撮影禁止の裁判所内での写真、Facebookで友達までの公開の写真をTwitterでアップしちゃうようなリテラシーのない人たちだし。」

である。鹿砦社は裁判所内での写真撮影は行っていない。「M君」が李信恵を訴えた裁判の前回期日に社長松岡が傍聴に出かけた際の写真を撮影してTwitterに掲載した方はいるが、その人は鹿砦社の人間ではない。そして鹿砦社はその写真をリツイートも「いいね」もしていない。また「Facebookで友達までの公開の写真をTwitterでアップ」など鹿砦社はしていない。この2点は完全な虚偽である。

「というわけで猫田と鹿砦社に関しては週明けぐらいに全部まとめて警察に行ってきます。」
  

 

 

そうだ。どうぞご勝手に。週明けと言わず、それほど気になるのであれば110番通報をしたらどうだ。李信恵は「猫田と鹿砦社」とワンセットにしているが、猫田氏の言動と鹿砦社の言動は全く別のものだ。それくらいは理解できないか? 

ついでに助言しておくと「リテラシーのない人たち」は言葉の使い方が間違いだ。「リテラシー」とは文章、文脈、文意を読み解く力のことであり、ネットに写真を掲載する行為に用いるのは不適切だ。噂によると李信恵は国語の非常勤講師をしている、とのことだが、カタカナ言葉とはいえ教員であるのであれば、正しい言葉遣いを心掛けるべきだ。

「猫田と鹿砦社のライターとか関係者に個人情報をばら撒かれたり、本当に迷惑しているし普段の生活に支障が出てるので。」

繰り返すが猫田氏と鹿砦社は、まったくの別人格である。われわれは偽善者どもの仮面を剥ぐために、時に直撃取材も厭わないが、よほど悪質な公人でない限り、住所や個人情報を公開することはない。例外的に香山リカがツイッターで「どこに送ったのかちょっと書いてみれば……」と書き込みを要求してきた際には送付先を明示したが、あれは本人の要請によるものだ(にもかかわらず、翌日神原元弁護士から「削除要請」のメールが来る不思議な展開だった)。

それ以外にわれわれ(鹿砦社)がどのような「個人情報をばら撒いている」というのだ? はっきりと事例を挙げて指摘していただきたい。もし具体的事例を適示できないのであれば、それこそ李信恵の言う「名誉棄損や侮辱」である。

李信恵のツイッターより

と李信恵は寺澤有に噛みついたあと、

李信恵のツイッターより

上記のように興奮している。が、この中にも嘘がある。「鹿砦社と名乗らずに自宅に電話してきた田所敏夫は」とあるが、田所敏夫は鹿砦社の社員ではない。フリーの物書きだ。「辛淑玉オンニの友人だと最初に云った」は田所に確認したところ事実だ。田所は李信恵に電話取材をするにあたり、自己紹介もかねて辛淑玉の知り合いだと切り出しているがそのどこが問題なのだ。田所は辛淑玉の携帯電話番号を知っていたし、それ故その後に直接辛淑玉本人にも取材をして、辛淑玉が「M君」攻撃に転じたので『辛淑玉さんへの決別状』を本コラムと『反差別と暴力の正体』に著しているではないか。

「おいらに取材するなら、根性入れてやれ。ちゃんとしてたら受けるけど、ちゃんとしてなかったら受けないだけ。」

これも嘘だ。自分に都合が悪ければ李信恵は絶対に取材など受け付けない。「根性を入れてやれ」!? おう、そこまで言うのであれば、われわれもさらに本気で「根性を入れて」やってやろうじゃないか! ちなみにあれこれ鹿砦社に言いがかりをする李信恵は鹿砦社のツイッターアカウントをブロックしている。何かやましいことがあるのか?

李信恵のツイッターより

 

 

「友人のFacebookの写真とか使うなよクソが。」

繰り返すが取材班は李信恵の言う「友人のFacebookの写真」など全く使っていない。

これは明確な虚偽であるだけでなく「クソ」とまで表現している。明白な虚偽を堂々と発信する覚悟はあるのだろうな、李信恵。「鹿砦社はクソ」なのだな。一度書いたものは取り消すことができない。上記に挙げた虚言といい、「クソ」呼ばわりといい、明確な名誉毀損だ。われわれは、名誉毀損だからといって、なにかといえばすぐに公権力、警察力に頼ろうとする輩とは違う。〝違う形〟で反論、反撃する。

鹿砦社社長の松岡は、ここまで言われても、まだニッコリ笑ってはいるが、彼が〝本気〟を出した時の怖さをわれわれは知っている。

松岡が若い頃、好んで使った言葉に、「彼ら反革命がわれわれに鉄を用いるならば、これに対しわれわれは鋼鉄でもって答えるであろう」(トロツキー)というフレーズがあるという。松岡が「鋼鉄」を使う時はいつだろうか。エセリベラル、エセ人権派、エセ反差別主義者の蠢動には「鋼鉄」でもって粉砕しなければならない。

(鹿砦社特別取材班)

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2004年に奈良市で起きた小1女児殺害事件は、犯人の男の異常性が社会を震撼させた。下校中に失踪した少女は、通っていた小学校から遠く離れた町の側溝で見つかったが、歯が数本抜かれた状態だった。さらに犯人から親族の携帯電話に「娘はもらった」「次は妹を狙う」などというメールが届いたが、メールには被害者の画像が添付されていた。

検挙された犯人の小林薫は、毎日新聞の販売員として働いていた男だが、幼女ポルノや女児の下着を多数所持していた小児性愛者で、小さな女の子に対する性犯罪の前科もあったという。

小林は奈良地裁で2006年9月、わいせつ目的で女児を誘拐し、自宅の浴室の湯船で溺死させたとして求刑通り死刑判決を受けたのち、自ら控訴を取り下げて死刑が確定。2013年2月に収容先の大阪拘置所において、44歳で死刑執行されている。

手前が小林の住んでいた部屋。ここで女児は命を奪われた

◆小林が住んでいたマンションは今……

私がそんな事件の関係現場を訪ね歩いたのは、昨年5月のことだった。

最初に訪ねたのは、JR王寺駅から徒歩7、8分の場所にある小林が住んでいたマンションだった。その3階建てのマンションは、小林が働いていた毎日新聞の販売所と隣接していたが、人が住んでいる気配はほとんど感じられなかった。小さな女の子が殺害された現場ということもあって入居者が集まらず、今は空き室が多いのかもしれない。

周囲の様子を見て回ると、マンションの近くには、〈不審者を!! 見たらその場で110番〉と書かれた、のぼり旗がはためいていた。過去に痛ましい殺人事件があった現場を歩いていると、こういう防犯を促すものをよく見かけるが、近所の人たちも2度とあのような悲劇があってはいけないとナーバスになっているのだろう。

小林が住んでいたマンション(奥)の近くには、防犯を促すのぼり旗

◆一体なぜ、こんな場所に……

小林が被害者の遺体を遺棄した平群町菊美台という町の側溝は、小林宅から北に5キロの場所にある。その側溝は、住宅街のかたわらに広がる田んぼ沿いの坂道にあったが、私はその場所を見て、少々違和感を覚えた。側溝は周囲から遮るものが何もなく、小さな女の子の遺体などを遺棄すれば、すぐに見つかってしまうことは明白な場所だったためだ。

小林はなぜ、こんな場所に遺体を遺棄したのか。犯行の発覚を防ぐために遺体は山の中に捨てようとか、埋めてしまおうとかという発想はなかったのだろうか。小林は親族に犯行を誇示するようなメールを送りつけるなど劇場犯的なところがあったから、あるいは遺体もあえて見つかりやすいように捨てたのだろうか・・・。私は色々考えさせられた。

小林は、控訴を取り下げて死刑が確定したが、その後、控訴の取下げは無効だと訴えたり、確定死刑判決には事実誤認があるとして再審請求を行ったりしている。再審請求では、「確定判決では、被害者を湯船に沈めて殺害したように認定されたが、本当は、わいせつ行為をしようと睡眠薬を飲ませて入浴させていたら、気づいた時には被害者が溺死していた」と訴えていたという。しかし、その主張が司法に認められることはなかった。

私は事件当時や裁判中、小林に直接取材する機会に恵まれなかった。もしも、そのような機会があれば、「なぜ、あんな場所に遺体を捨てたのか」ということを聞いてみたかった。

被害女児の遺体が遺棄されていた側溝

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

愚直に直球 タブーなし!最新刊『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

 

 

  
「李信恵さんの裁判を支援する会(リンダの会)」が2014年10月7日に発行した『#安寧通信』vol.0が手元にある。「M君」が集団リンチを受ける2月ほど前に発行された『#安寧通信』。10号までは、誰でも手に取れる場所に置かれていたので入手可能であったが、本来なら街角に置かれていたはずの11号の姿は見つからない。『#安寧通信』自体の発行が休止されたとは考えにくいので、何らかの事情で、一般への公表を控えるようになったのではないか、とも推測される。

「李信恵さんの裁判を支援する会(リンダの会)」が2014年10月7日に発行した『#安寧通信』vol.0の表紙

vol.0はご覧の通り表紙はカラー印刷で、次号以降は白黒の簡易印刷だ。『#安寧通信』は李信恵(リ・シネ)の裁判を支援するために発行されている媒体であるが、同時に詳細にこの冊子を読み解くと「M君リンチ事件」と李信恵、あるいは周辺人物の関連を読み解くことができる。これから数回にわたり『#安寧通信』の解読を試みる。

なお、このような作業を安田浩一などは「運動に分断を持ち込むもの」などと批判するやもしれないが、われわれの目的はあくまでも「M君リンチ事件」の真相や背景解明にある。「結果としてだれが喜ぶか」(安田)などは関係ないことをあらかじめお断りしておく。繰り返すが編集班はいかなる「差別」も「排除」も肯定する立場にない。断じて「差別」も「排除」も「リンチ」も肯定しない。

◆「差別を裁く法律」があれば問題は起きなかったか?

『#安寧通信』、vol.0は李信恵が、在特会元会長の桜井誠と保守速報を相手に2014年8月18日に損害賠償を求める裁判を起こしたことを紹介する李自身の「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」から始まる。この文章に書かれている訴えには虚偽はなく、李自身かなりの被害を受け訴訟に踏み切ったことが窺い知れる。相手は狂気の差別集団「在特会」なのだから。

しかしながら、すでにこの文章の中には李信恵自身の問題ではないにしても、この「運動体」が指向する方向性の危険性の萌芽がある。

「日本には差別を裁く法律はありません。名誉棄損や侮辱にしても、刑事事件での告発はハードルが非常に高い」

李が述べていることは事実だろう。しかし「差別を裁く法律」があれば問題は起きなかったであろうか。そもそも差別とはなんだろう。同様な形で人々に共有され言語や行動で表現されることもあるけれども、もとは個々人の心の中に住処を持つ「こころのありよう」ではないだろうか。どんなに卑劣なことを考えていても表現しなければ相手を傷つけることはない。心の中で悪質極まりない大量殺人を夢想していても、それを発言したり、行為に移さない限り、その人が指弾の対象になることはない。「内心の自由」はどんな犯罪や不幸行為、道徳的に非難される行為であろうが、心の中に留め置いておく限り批判の対象とされることはないし、あってはならない。

◆裁くための概念が曖昧すぎる「ヘイトスピーチ対策法」

よって「差別を裁く法律」などという概念は、それ自他が「表現の自由」どころか「内心の自由」にまで踏み込んで個人の思考や思想を制限する性質を有することを必然的に併せ持つ「規制」や「弾圧」に利用される恐れが高い。ある国が犯した罪を永遠に赦免しないとするのであれば、欧州のように「ナチス禁止法」(俗称)を設け、対象を限定して二度と過ちを犯さないような法律を制定することには意味があるだろうが、「差別」一般を裁く法律では概念が曖昧すぎ、恣意的な乱用がなされる危険性が高い。

 

 

その証拠に、制定されてしまった「ヘイトスピーチ対策法」はすでに現行法の定める範囲を超えた作用を及ぼしている。昨年川崎市で差別者が主催したデモの際、取り囲んだ大勢の反対者との衝突を懸念したのか、現場の警察官は「これ以上は無理だ、これが国民の意思だ」と語った。差別に反対する人の中にはこの警察官の発言に大喜びをした人が大勢いた。そこにこそ「ヘイトスピーチ対策法」の最大の危険が在るのだ。あの光景を目にしながら私は背筋が寒くなった。当該警察官の「これが国民の意思だ」という言葉が、「安倍政権反対デモ」、「戦争反対デモ」、なかんずく「東京オリンピック反対デモ」で発せられたらデモ参加者はどう感じるだろうか。法律などなくとも警察はデモ弾圧の際には散々な暴言をこれまでも発してきたが、それに「お墨付き」を与える法律を作ってしまえば、どんな惨禍が引き起こされるかの想像ができないのだろうか。

◆伊藤健一郎(C.R.A.C.WEST)と伊藤大介(C.R.A.C.)

李信恵の2頁にわたる「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」に続くのは、ITOKENこと伊藤健一郎(C.R.A.C.WEST)の「差別を扇動する在特会、桜井誠そして保守速報」である。ITOKENこと伊藤健一郎は「M君リンチ事件」後、元鹿砦社社員藤井正美へのメールで「M君リンチ事件」の加害者を擁護し、あたかも「M君」に非があったかの如く「口裏合わせ」を企図する「説明テンプレ」とそれを伝える「声掛けリスト」を作成した人物である。噂によればこの春大学院を修了し学位を修得したとのことだ。伊藤はその文章の中で、

「街頭で繰り広げられているヘイトスピーチは人目を引きやすく一部では報道もされていますが、彼らの活動の中心はインターネットであり、路上の活動は氷山の一角にすぎません。ネットでは『在日』を主なターゲットにした差別的書き込みが多く見られます」

と分析をしている。主語を「M君」に置き換えてみよう。

「街頭で繰り広げられている『カウンター』の活動は人目を引きやすく一部では報道もされていますが、彼らの活動の中心はインターネットであり、路上の活動は氷山の一角にすぎません。ネットでは『M君』を主なターゲットにした攻撃的な書き込みが多く見られます」

ほとんどの部分を直さなくとも文章が合致してしまう。これが何を示すのかは、読者に考えていただこう。ちなみに『#安寧通信』の#(一般的には「いげた」と呼ぶが、ツイッターでは「ハッシュタグ」と呼ばれる)もツイッター上で用いられる符号である。ツイッターを使わない人には意味が分からないだろうし、意味を持たないが、彼らはそれほどにインターネットを重視していることの表れであろう。

次いで登場は、肩書が「旧しばき隊(現在解散)、現反レイシズム行動集団「C.R.A.C.」の伊藤大介による「『#安寧通信』創刊に向けて」である。
内容は取り立てて言及する必要はない、凡庸なものだ。

反レイシズム行動集団「C.R.A.C.」伊藤大介のツイッターより

◆金光敏(コリアNGOセンター)と金明秀(関西学院大学社会学部教授)

そして、金光敏(特定非営利活動法人コリアNGOセンター)の登場だ。『反差別と暴力の正体』で電話取材にあいまいな返答に終始しながら、実は「M君」が李信恵、エル金、凡、伊藤大介、松本英一を訴えた裁判で「被告」側に「M君」との私信を証拠として提供しているのがコリアNGOセンターだ。

金光敏は幾分詩的な文章を寄せている。全文を掲載するのは馬鹿らしいので割愛するが、ナルシシズムにすぎる文章は、金が「M君」に対した暴虐とはずいぶんバランスが悪い。

関西学院大学社会学部教授、金明秀のツイッターより

 

 

さらに金光敏同様、『反差別と暴力の正体』で、在外研究で1年間韓国にいるはずなのに、不思議なことに日本国内にいて電話が繋がった、関西学院大学社会学部教授の金明秀も登場する。「ぼくは、この裁判を最後まで支援します」と金は宣言し文章を結んでいる。ツイッターに「泥酔して」(本人談)上記書き込みを行った金明秀は「M君」を一貫して「支援しない」ようである。(つづく)

(鹿砦社特別取材班)

最新刊『人権と暴力の深層』カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い(紙の爆弾2017年6月号増刊)

AmazonでKindle版販売開始!『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

重版出来!『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

1995年3月に國松孝次警察庁長官が自宅マンション前で何者かに狙撃され、瀕死の重傷を負った事件から22年の月日が流れた。事件はすでに2010年に公訴時効が成立して迷宮入りしているが、その犯人である説が根強い中村泰(ひろし)という80代の老受刑者の存在は有名だ。中村は獄中にいながらメディアの取材を次々にうけ、「長官狙撃事件の犯人は私だ」と訴え続けてきたが、一昨年に直腸ガンの手術を受けていたことは当欄で既報の通りだ。そんな中村がこのたびまた新たな重病に冒されたことがわかった――。

◆震えていた手紙の文字

2002年に名古屋市で銀行の現金輸送車の警備員を狙撃し、現行犯逮捕されたのをきっかけに長官狙撃事件の捜査線上に浮上した中村泰(87)。現在は岐阜刑務所で無期懲役刑に服しているが、東大を中退したインテリでありながら高度な射撃能力を有し、20代の頃には警察官を射殺する事件も起こした特異な経歴の持ち主だ。結局、逮捕も起訴もされなかったが、警察の取り調べに対し、長官狙撃事件の犯行を詳細に自白していたと伝えられている。

私はこの中村と4年以上、手紙のやりとりを続けてきたが、中村が一昨年初めに直腸ガンの手術を受けて以降は手紙をやりとりする回数が少なくなっていた。そんな中村から今年初めに年賀状をもらって以来、約半年ぶりに手紙が届いたのだが――。

パーキンソン症のため、文字が震えていた中村の手紙

手紙の文字が震えていたので、一体なぜかと思いきや、次のように説明されていた(以下、〈〉内は引用)。

〈謹啓 とりあえず最近の体調について申し上げます。

開腹手術によって患部は完全に切除されまして、現在に至るまで再発の兆候は見られないのですが、やはり八〇歳を過ぎてからの大手術の負担は大きいようでして、以後少なからず体力の低下を自覚させられています。

それに加えまして近頃は手首の震戦(ふるえ)が高じてきて神経科の医師による二度の診察ではパーキンソン症と診断されています。回復の見込みは薄いとのことでした。齢が齢だけに諦めるほかなさそうです〉

「Yahoo!ヘルスケア」によると、パーキンソン症(病)とは、手足が震えたり、筋肉がこわばったり、動作が遅くなるなどの症状が徐々に進行する病気で、10数年後には寝たきりになる患者もいるという。有病率は、人口10万人に対し100人程度というから珍しい病気と言えるが、中村は直腸ガンの手術後に闘病生活を送る中、また新たな重病に陥ってしまったわけである。

大丈夫だろうか……。私は最悪の事態まで想像し、少し重たい気持ちになってしまった。

中村のことを長官狙撃事件の犯人であるかのように伝えたフジTV「奇跡体験アンビリバボー」(2017年6月29日放送)のHP

◆元気だった頃と変わらない様子も

だが、手紙を読み進めると、元気だった頃と変わらない中村らしいことも書かれていた。

〈このほどテレビ番組制作会社から「奇跡体験アンビリバボー」なる番組で長官狙撃事件を取り上げる旨、通知を受けました〉

これまでも中村はテレビで自分のことを長官狙撃事件の犯人として取り上げる番組の放送が決まるたび、私に連絡してくれていた。今回も闘病中にも関わらず、義理堅く番組情報を伝えてくれたのだ。

6月末に放送されたこの番組は中村が長官狙撃事件の犯人である可能性を強く示唆する内容だった。そのためか、番組放送以来、ツイッターなどネット上では中村泰のことを長官狙撃事件の犯人であるかのように言う声を多く見かけるようになった

「警察庁長官を撃った犯人は自分」と世の人々に知らしめることを目標に闘病生活を送る中村にとっては、病と闘う活力になったことだろう。取材を通じて中村のことを長官狙撃事件の犯人だと思うようになった私としても、中村が少しでも多くの人に長官狙撃事件の犯人だと認識されることを願っている。

《関連記事》
◎国松警察庁長官狙撃事件発生20年、今年こそ「真犯人」の悲願は叶うか(2015年1月4日)
◎ガンから生還!「国松警察庁長官を撃った男」から届いた決意表明の手紙(2015年10月29日)

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

愚直に直球 タブーなし!『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

AKBなど3文字のローマ字で示される複数女子タレントの集団が、どんどん繁茂し、全国にも広がっているようだ。素人を集めて安いギャラでタレント化する「秋元康」商法全開だ。これははるか昔の「おニャン子クラブ」に始まった、タレントの質の低下と、国民の痴呆化を担う恥ずかしい現象だと感じている。不快である。

それだけでもけったくそ悪いのに、毎年連中はCD購入者やイベント参加者、あるいはファンクラブ加入者など(年により投票資格は若干異なるようだ)により、「総選挙」と銘打った、商法でも一儲けしている。CD購入が投票の条件になるイベントの問題性が指摘されたことをこれまで目にしたことがない。

今年も「総選挙」が行われたようで、それについての記事が京都新聞社会面に掲載されていた。いったいどうして、アイドル連中の商法を、あたかも何か国民的関心があるかのごとく記事にする必要があるのか? 6月21日、京都新聞に電話で聞いてみた。

◆どうしてこんなようなことが報道されるんでしょうか?

京都新聞2017年6月17日ウェブ版

京都新聞 京都新聞読者応答室(以下、京都新聞)でございます。
田所 数日前だったと記憶するんですが、社会面の右側の下のところにAKB総選挙云々という記事を読んだ記憶がありまして、それいつだったかお分かりになりますか。
京都新聞 6月の18日に指原さんが三連覇ということで、6月18日の朝刊28ページ、おっしゃっている右の下の方に掲載がございました。
田所 これ、すみません、私が的外れな質問かもしれなくて恐縮なんですが、どうしてこんなようなことが報道されるんでしょうか?
京都新聞 一応エンタメニュースというようなことでそういった記事を掲載しているということですけれども。
田所 エンタメってなんですか?
京都新聞 エンターテイメントです。
田所 エンターテイメントって何ですか?
京都新聞 そういった芸能のようなニュースなんですけれども
田所 芸能ニュースを社会面で載せるんですか?
京都新聞 そうですね。読者様はこういったものは社会面では載せない方がいいといったご意見でございましょうか。
田所 いえそうではなくて、私には理解ができないのですが。
京都新聞 編集方針というか。
田所 「総選挙」という言葉は法律的に言うと衆議院の選挙にしか使ってはいけない言葉ですよね。だから編集方針云々とかではなくてですね、AKBが総選挙っていうのはそもそも言葉の使い方、それ法律的に問題ないんですか?
京都新聞 そうですね、こちらは共同配信の記事でございまして
田所 いやいや、共同配信だったら何でも載せるわけ?
京都新聞 そういった内容で編集方針で掲載はしているのですけれども。
田所 いや、方針なんかない。共同配信だから載せたとあなた今おっしゃってたでしょ。
京都新聞 いえ、元々の記事は共同配信の記事だと申し上げただけでございまして。
田所 じゃあ共同から配信された内容を何か修正なり解説なりされてますか?
京都新聞 間違いがあれば訂正の記事を掲載しておりますが。
田所 あんな記事を載せることが間違いなんですよ。あんな馬鹿気たことを新聞に堂々と載せて恥ずかしくないという感覚を持ってるということが間違いだと私は思いますよ。
京都新聞 かしこまりました。そういったご意見があったことは担当の方にお伝えさせていただきます。
田所 という言い方は「何も反映されないということ」とまるっきりイコールなんですね。おかしいと思われません? あんな馬鹿なことを、何とかさんが三連覇でなんとかかんとか、どうのこうのというようなことを社会面で。たまに興味ある人はあるかもしれないけど、ありませんよ、読んでる人間は。
京都新聞 かしこまりました。そういったご意見があったことを
田所 だからその言い方やめろって言ったじゃないですか、さっきから。「そういったご意見がありましたのは伝えさせていただきます」ということで、今までそれが一回でも反映されたためしはないんですよ。あなた、だいたい京都新聞の社員の方ですか?
京都新聞 読者応答室の担当をしております。
田所 社員の方ですか?
京都新聞 ……。
田所 私が聞いてるのは、あなたは京都新聞の社員の方ですかとお尋ねしています。
京都新聞 社員ではございません。
田所 社員じゃないんでしょですね、社員の人いないの? 

wikipedia「AKB48」項より

◆京都新聞は京都新聞の判断で、この紙面でということで

京都新聞 お電話代わりました。京都新聞社読者応答室長ユンと申します。ご指摘の件ですけれども、AKB総選挙の報道に対して何かあまりこういったものを紙面で扱うことについてご批判があるということですか?
田所 批判ではなくて、なんでこんなこと平気で載せられるのか私にはわからないということです。
京都新聞 何も平気でというか、一応というか、社会的な関心事であるということで編集サイドの方で、世間の関心記事であるというニュース判断をした上で紙面に載せているということです。
田所 京都新聞さんの判断では、「社会の関心事がある」と断定されて載せてらっしゃるということですね。
京都新聞 もちろんいろんな判断があると思いますけれども、何も京都新聞だけではなくて全国紙もAKBの総選挙というのは載せてますのでね。なにも右に倣えということではなくて、あくまでも京都新聞は京都新聞の判断でこの紙面でということで。
田所 あなた今前半でおっしゃったことと後半でおっしゃたことと矛盾してますね。全国紙も載せてるしなんとか、だけれども京都新聞の判断でって言ったでしょ。
京都新聞 ですから全国紙も載せているぐらい世間的な関心事であるということなんですよ。そういう判断でうちも載せているということです。
田所 じゃあ全く意味のない報道でも他の報道機関がたくさん載せたら京都新聞は載せられるわけですね。
京都新聞 それはその時の編集判断があると思いますけどね。

◆ジャーナリストとして違和感はお感じにならない?

田所 その時の編集判断ってこれがそうですよ。ガキのしょうもない芸能人の投票かなんか知らないけど、しかもお金を払って買わなきゃいけない投票権で。これ商売しているわけでしょ。
京都新聞 ええ、実態はそういう裏があるみたいですけど。
田所 裏じゃなくてそういうことで成り立ってるわけでしょ。この総選挙っていうのは、さっき女性の方にも申し上げましたけれども、日本語で使う総選挙っていうのは地方選挙や参議院でも使わなくて衆議院の選挙だけに使いますよね。その言葉をこんな軽率に使っていいんですか、新聞で。
京都新聞 まあこれは、ここの主催団体がそういう名称を使ってるということですよね。
田所 そのことに対する違和感はあなたたちジャーナリストとしてお感じにならない?
京都新聞 それは記者個々にはいろいろとあるんでしょうけれども。
田所 あるんでしょうじゃなくて、あなたにお伺いしてるんです。あなたは違和感ありませんか?
京都新聞 私、個人的にはないことはないですけれどもね。あくまでも個人的な見解ですわ。
田所 やっぱりちょっと変だとは思われるわけですね。
京都新聞 私も年齢的にはこういうあくまでも個人的にはアイドルグループの顔と名前が一致しない世代の人間ですからね、個人的にはそう関心があるというわけではないですけれども、一新聞社に勤めておる者として世間の大きな関心事であるということは十分に認識しています。個人的には。

wikipedia「AKB48」項より

◆AKB総選挙については大きく世間の公約数として必要であると……

田所 そうでしょうか。ユンさんね、率直なご感覚を語っていただけたから、わたくしはより正直にお尋ねできるんですけれどもね、こういった馬鹿げた記事が紙面を占めるということが尋常な事態だとお思いになりますか。
京都新聞 そういって言いますと何をもって、失礼ですが、人それぞれの価値基準とかありますよね、ニュースに対するものとか、新聞もご存知のように硬派系の政治から経済から事件事故から芸能物まで世の中森羅万象の出来事に対して、新聞というのも政治的なよく言われるような右なのか左なのかとか社論がどうのこうのとかありますけれども、そういったものとは別に新聞としてこれはAKBの総選挙の事案については大きく世間の公約数として必要であるという情報、そういうものを判断した上で京都新聞としては載せてると。
田所 今おっしゃったことは、このAKBの総選挙は大きく世間の公約数として必要であるということを元に載せているとそう発言なさいました。これ、撤回なさいませんね。間違いではないですね。
京都新聞 必要であるというか、そういう要望があるとそういうことですよね。そういう情報。
田所 どこにあるんですかそんな要望。どうやって証明するんですか、その要望があるということを。
京都新聞 それを載せる載せないが正しく編集者の判断であるということです。
田所 編集権ですね。だから編集者の方はそこに要望があるというふうに思い込んでいらっしゃるわけですね。
京都新聞 まあそういうことですね。これを載せる以上はそういう判断をしてるということですね。
田所 その前にユンさんはもう一回お伺いいたしますけれども、社会の最大公約数として要請があるとおっしゃいました。これは間違いないですね?
京都新聞 うん、要請があると、こういう情報を新聞で知りたい、今は何も新聞だけじゃなくてテレビとかネットとか情報を知る術はありますけれども、新聞は新聞でこういったことを載せる世間への要請があるという判断で掲載したというふうに。

◆AKB総選挙はCDを買った人だけが投票権を得て、一般的に言うところの商法ですよ

田所 すみません。ユンさんは読者応答室の責任者の方であると伺ったんですが、その方がですね社会部のデスクに代わって代弁できるということは責任もって発言していただけてますね。
京都新聞 これ紙面化なってますよね、6月18日の朝刊に。
田所 紙面化されたものがすべて正しいということではないでしょう。
京都新聞 いえ、ですから紙面化されてる内容の事実に誤りがあるとかでなくて、載せるということは読者へのニーズに応えてるという判断で載せてるということです。そういうことは私どもこれ発行責任として紙面が出来上がったもの、これを逆にこういう扱いが小さいんじゃないかとか、見出しも一段いわゆるベタ見出しというものなんですけれどもね、場合によってはこういう扱いは小さいんじゃないかとかね、そういう考えももちろん成り立つわけで。
田所 そんな意見来てるんですか?
京都新聞 いや、そういう意見もありますよ。
田所 具体的にこの記事についてそういうふうに来てるわけですか。
京都新聞 いえいえ、それは来てませんけれども。
田所 ごまかすことやめてください。私は当該記事だけについて今議論して、そのことについてお尋ねしてるんですから、一般論の話をしてるわけじゃないんですよ。もう一回申し上げますよ。AKB総選挙というのはCDを買った人だけが投票権を得て、これは一般的に言うところの商法ですよ。商売方法ですよ。それについて何の批判もなくて、しかもそこに順番がどうだったかという人のコメントを載せて、その商法に問題があるという認識での新聞の切り口っていうのは全然ないわけです。京都新聞 ここにはないですよね。
田所 あなたたちの頭にそういう切り口はないの? ジャーナリストとして。
京都新聞 ないわけではないですよ。
田所 じゃあなんで書いてくれないのですか。
京都新聞 そういう確かに意見というかそういったものも大切に。
田所 どこにあるんですかこんなもんが。物を買わなければ一票入れられない、しかも入れた結果が大々的にテレビ新聞などで報道される、しかしながらお金を払った人たちだけの意見であるにもかかわらずその仕組みについては誰も説明をしない。独禁法違反じゃないですか、これひょっとしたら。
京都新聞 そういう考えも成り立つかもしれませんけどね。ただAKB総選挙の一票はお金を払った代償であるということも、基本的にもう世の中の方は知っていらっしゃるわけですよね。

wikipedia「AKB48」項より

◆なになに、事実はどうでもいいの?

田所 それはあなたが勝手に思ってるだけで、あの記事を見た人はそんなことわかりませんよ。
京都新聞 そういったことも新聞社としては今の一般的な社会通念でAKB総選挙の裏というのは一般のティーンエイジャーから年配の方までそういうものであるという理解はしているつもりです。
田所 理解じゃなくて、それはあなたたちの傲慢な報道怠慢であって、今の非常な問題発言ですよ。それをね、知ってる前提であれ報道してるというふうに今はっきりあなたはおっしゃったけれども、あなた今何言ったかというとね、若い人間から年寄りまでそういう仕組みわかってるという前提で報じていると言ったんですよ。どれだけ無責任なこと言ったかわかってますか。どうやってそんなことを確信持って言えるんですか。私はたまたま批判的に見てるから知ってるけれども。
京都新聞 知らない人も多くいらっしゃると思います
田所 何言ってるの、あなたみんな知ってるてさっき言ったじゃないですか。
京都新聞 ですから、多くの人は知ってるという私は認識を持ってますよ。
田所 あなた記者やったことありますか?
京都新聞 ありますよ。ですからその辺りは社会的な生活をしていってる中での皮膚感覚みたいなものがありますよね。
田所 あなたは報道機関にいて社会的にある程度の責任を持つ報道を担う会社にいらっしゃる。新聞社ってそういう所でしょ。だから井戸端会議みたいなことのレベルでお話しされたら困るわけですよ。それをさっきからお話伺ってたらそんな話ばっかりじゃないですか。
京都新聞 ですから私、冒頭にも言いましたように、新聞というのは何も社会経済事件事故だけではなくてこういう芸能ニュースまで、広く浅くという言い方もあれですけれども、そういう読者のニーズに一定応えるという、事実がどうのこうのではなくて。
田所 なになに、事実はどうでもいいの?
京都新聞 AKBの総選挙の事実として、これを客観報道しているわけであって、そのAKBの総選挙のからくりについての問題をどうのこうのというのはまた別次元の話なんですよ。
田所 やらないじゃない、あなたたちは。
京都新聞 ええ、そういった記事が載ったかというと記憶にはないですけれどもね。
田所 だからなんでなんですかとお尋ねしてるわけなんですよ。
京都新聞 それは私、今ここでどういうことでそういったものが載ってないのかはわかりませんけども。
田所 何を言っているんですか、あなたは。変だと思いませんか。
京都新聞 ですから失礼ですが、そちらの考え方としては、有料で一票を買ってるようなそういうものをしっかり載せた上で、こういう総選挙を知ってるのかということですよね。

◆大多数の国民が「AKB総選挙」に関心を持ってるという根拠を示してください

田所 少なくとも「総選挙」という言葉は衆議院の選挙を想起させるものであるということはご想像いただけますね。日本国籍を持ってる者が選挙権を行使する時に参議院ではなくて衆議院の選挙が行われて、それ投票する行為が総選挙でしょ。
京都新聞 総選挙と言えば、社会通念上はそうだったんですけれども、これも新聞というのは先ほども言ってますように森羅万象の事象を報道してるわけであってですね、
田所 大袈裟な言い方やめなさい。森羅万象まで、そんな自分ら万能だと思ったらおこがましいにも程がある。
京都新聞 ええ、森羅万象という言い方があれでしたら、先程来言ってますように政治経済から事件事故、スポーツからこういう芸能まで幅広いジャンル分野を網羅しているということなんですよ。それでその芸能ニュースの中で総選挙だけがこれ見出しでもAKB総選挙というのが何年前から始まったかも知りませんけれども、これも大きな社会現象のわけですよね。
田所 誰がそう評価するんですか。誰が。これが大きな社会現象と評価しているわけですか。
京都新聞 それは普通市民ですよね。
田所 普通って誰ですか。
京都新聞 ですから不特定多数の。
田所 それをどのように測定なさるんですか。あなたたちが勝手にそう決めつけてるだけでしょう。
京都新聞 そう言われてしまえばそうかもしれませんけれどもね。緻密な世論調査をしてるわけでも何でもないんですけどもね。
田所 でしょ、どこに根拠があるんですか。大多数の人間が、大多数の国民がそれに関心を持ってるという根拠を示してください。共謀罪と一緒なんですか?
京都新聞 根拠と言われてもそれこそ新聞社の感覚ですよね。
田所 感覚なんですね。正直な言葉出たな。感覚なんですね。
京都新聞 感覚というか、それがニュースセンスというような言い換えでよければそういうような言い換えもいたしますけどもね。
田所 要するに京都新聞はその程度だということですね。
京都新聞 その程度とそういう判断されるのなら、もうその程度と判断されてしまうのはちょっと心外と言えば心外ですけれども、そうお取りになられるんならもうそうお取りになってもらわなければなりませんね。

◆AKBに興味持つような人間の大半は新聞なんか読んでいませんよ。

田所 ユンさんだって変だと思ってるってさっきおっしゃってたでしょう。
京都新聞 ですからそれはあくまでも個人的に若いアイドルのところには付いていけない面があると言うことですけれども、新聞社の人間として世の中のいろんな動きや情報とかその中でAKBの総選挙というのは世間一般の大きな関心のあるイベントであるという認識はしてますけどもね。
田所 私からしたら全く理解できません。
京都新聞 ですから世の中いろんな考えの方がいるでしょう。
田所 いろんな考えがいるから、あんなもの記事にして押し付けないでくださいということなんですよ。
京都新聞 別に押し付けてるというわけではなくて、こちらとしては必要な情報にあるということで紙面に載せてると。
田所 押し付けてますよ、こちらは月に三千いくらってちゃんと新聞代払ってるのですよ。芸能ニュースのためにじゃなくて。
京都新聞 はい、それはわかっております。
田所 どこにその社会性があるわけですか?
京都新聞 それで言いますと、紙面でも読者の方の趣味や嗜好や必要な情報ページ、本当にいろんな関心をお持ちで。
田所 はっきり言うけれども、AKBに興味持つような人間の大半は新聞なんか読んでいませんよ。
京都新聞 一面そういったところも事実だと思います、正直。それは一定認めるところあります。
田所 だってユンさんだってAKB興味ないから知らんでしょうが。
京都新聞 はっきり言って個人的には知りません。
田所 私もそうですけどね。でも新聞は読みはるでしょ。京都新聞だけじゃなくて競合他社の新聞も読みはるでしょ。読む時に政治面とか国際面とか社会面とか読みはりますよね。一生懸命AKBの記事読みますか?
京都新聞 これは読みたくない記事は読まなくてもいいわけなんですよ。
田所 だから読む価値のない記事を載せてくれるなと言っているのです。あなたと同意しながら。
京都新聞 読みたくない記事を載せるなと言っても。
田所 新聞読者の中のどこに要請があるのよ。要請があるというあなたはその根拠を示せないでしょう、私に対して。社会的に要請があるとか誰でも知ってるとか。
京都新聞 それは京都新聞社の編集として一定の不特定多数の読者のニーズがあるという判断のもとにこういうものを載せているということなんですよ。
田所 判断の根拠はなんですか?
京都新聞 それは先ほど言いましたようにニュース価値判断ですよね。今の社会情勢。
田所 全然答えになってない。根拠というのは。
京都新聞 新聞の掲載価値があるということですよね。
田所 掲載価値があるという根拠になるのは何らかの調査によるものなのか、あるいはそう言った要請によるものなのか、あるいはそういうリクエストがあるのか、そういう具体的な何かがあるからそういうふうに判断するわけでしょ。何があるんですか、そういう根拠が。
京都新聞 これ、記事というのは載せるにあたって全て世論調査に基づいて載せる載せないという判断をしてるわけでも何でもないので。
田所 そんなこと聞いてません。もちろんそうです。当たり前。社会面の事件とか事故とかそれこそ編集権があるところで、新聞社の方が采配振るって一番力振るうところでしょ。私そういうこといちいち言ってるのと違いますよ。あまりにも低次元じゃないですかと聞いてるわけです。
京都新聞 あまりにも低次元と、そちらさんはそういう見方をされるかもしれませんけれども、読者の中にはこの情報を求めているという判断で弊社は紙面化してるということなんです。
田所 そういう判断の根拠は何? 根拠を聞かせてくれと。
京都新聞 ですから社会的要請があるという確信を持ってるということですよ。
田所 何をもって確信を持ってるんですか。何か根拠を示してもらわなかったら「あなたたちが勝手に思い込んでいる」という言葉以外で何も置き換えられないですよ。妄想と言ってもいいですよ。確信持ってるというだけなら。
京都新聞 いえ、確信です。妄想では決してないです。

◆なら一回、載せなかったらいいんじゃないですか

田所 確信持ってるわけね。
京都新聞 仮にこの記事を載せないということになれば、どうして載ってないのかという問い合わせが殺到すると思いますよ。
田所 殺到するか? あなた今はっきりそう言ったね。殺到すると思いますって。
京都新聞 まあまあ、殺到するというのはちょっとオーバーかもしれませんけども、なんで載せないのかという問い合わせは絶対来ると思いますよ。
田所 誰から来るのですか?
京都新聞 ですから関心をお持ちの方から来るとは思いますよ。
田所 それはあなたの推測でしょ。
京都新聞 ええ推測です。
田所 なら一回、載せなかったらいいんじゃないですか。
京都新聞 それはちょっとできないと思いますね。おそらく、次回いつあるのか知りませんけれども。
田所 情けない新聞社ですね本当に。何が大切なんですか、新聞社とか世の中にとって。
京都新聞 新聞というのは再三言ってるように、いろんな情報が載ってるわけですよね。そちら様一方でAKBの総選挙が不必要な情報であると、人によってはスポーツ面だけあったらいいとか、テレビラジオの欄だけがあったらいいとか、極論すればそういう読者の方もいらっしゃるわけで。
田所 ちょっと聞いてください、私がクライアント、あなたは私たちがお金を払ってる対象ですからそこを勘違いしないでほしいんだけど、広告だったら別に文句言いませんよ。広告は広告収入として京都新聞にお金が入るわけでしょ。記事で何でそんなもん書くかということなの。もっと他に書くことがあるのではないですかということなんですよ。
京都新聞 まああるでしょうね。
田所 あるでしょうねって言われたら
京都新聞 テレビや新聞の情報が世の中で起きてる必要な情報全て載ってるかと言えば、そういうことは決してないと思いますよ。
田所 わかってます、わかってます。万能を求めてるわけじゃないですよ。不要な情報を、しかも悪徳商法がらみでひょっとしたら犯罪になるかもしれないことを諸手を挙げて書くというのことはいかがなものかということを聞いているわけですよ。
京都新聞 先程来言っているようにAKB選挙っていうのは基本的にそちらも指摘されているように、お金でレコードやCDを買った人に投票権があると。それは私もわかっていますし、何度も言うように世間の人はわかっているという前提で。
田所 その前提、間違っています。あなたがそう思ってるだけで知りませんよ、年配の人はそんなこと。
京都新聞 そういった方もいらっしゃるかもわかりません。
田所 あなた何度も多数と言うからそれを正してるんですよ。どこのおじいちゃんおばあちゃんがCD買いに行って、時々珍しい人は買うかもわからないけど、そんなことするんですか。あなた勝手に決めつけたらだめですよ、なんの根拠もないのに。
京都新聞 一定の根拠は持ってますよ。一定の根拠というか、ですからそういう世の中の動きをそれを何も私だけじゃなくて不特定多数の人はそういう感覚を持ってるとそういうふうに判断しますけれどもね。
田所 そういう感覚って、どういう感覚ですか。
京都新聞 ですからAKBに一定関心があるという感覚ですよ。
田所 違います。あんたが言ってたのは選挙に関してお金を払って投票権を買うというのを年寄りだって知ってるとさっき言っていた。
京都新聞 はい、そういうもの知らないかもしれませんけど、からくりも浸透してると思いますよ。

wikipedia「AKB48」項より

◆ヨイショ記事ばかり書くんでしょ、共同から流れてきたものを……

田所 わかりました。それはあなたの思い込み。もう切ります。時間がもったいないからね。私はあなたがおっしゃっていただいたことは相当大きな問題をはらんでいるというふうに実感しますので、申し訳ないけどこれは書かせていただきますから。
京都新聞 どちらに何を書こうとされてるんですか?
田所 メディアに書きますよ。あなただってメディアの人間だから覚悟有って喋ってるわけでしょ。京都新聞批判として書かせていただきます。全く根拠ないことを年寄りの人もからくりを知っていて、でAKBの選挙はお金をこういうふうに払ってやるということを誰でも知っててそれで投票してると知ってる前提で書いている。あるいは国民の記事に対する要請があるから書いていると、全く証明の出来ないことをあなたおっしゃった。私全部録音してますから今。いいですか。最後にもし撤回されること訂正されることがあったら今おっしゃってください。
京都新聞 別に撤回とか、紙面にもなってる以上は京都新聞社として。
田所 あなた自分の見解をおっしゃったでしょ。
京都新聞 ですから私の見解のところと、そちらの聞き方も私、ユンとして聞いてる部分と、私にオフィシャルな応答室長として京都新聞社の応答室長として聞いてる所とありましたよね。その辺の線引きがね、私もそちらの質問でどこまでがどうなのかなという所もありましたけども。失礼ですがお名前お尋ねさせて頂いてよろしいでしょうか……。失礼ですが、年齢と大きく居住区をお尋ねしたいんですが。
田所 年齢は185歳で、住んでるのはバチカンです。
京都新聞 ちょっと冗談はおやめになっていただけますか。
田所 あなたの答えが冗談以上に私を馬鹿にしてるからこういう答えになるんですよ。
京都新聞 ちょっとそれせっかくお名前も名乗られて、年齢と居住区、一定参考にさせて頂きたい。こういう声が何歳の男性からってちょっと知りたいんですよ。
田所 なんなら行きますよ。京都新聞の本社に私はユンさん訪ねて。私は逃げも隠れもしないから。あなたのおっしゃったことは当たり前のように話してるけれども、とんでもない内容ですよ。
京都新聞 私は別にそうは思いませんけどね。
田所 だからそう思えないぐらいに気の毒だけどもあなたの頭の中の理解ではそういうふうにしかできないわけよ。だから私にあなた強制してるじゃない。このニュースは国民の大多数が関心を持ってるニュースだから載って当たり前だ。これがまず一つ。
京都新聞 まあ、そんな判断は京都新聞社としてはしてると。
田所 その次、こういう金を払ってやる選挙だということも多くの国民は納得している。この二つ。
京都新聞 納得じゃなくて知っているということです。納得という言い方はしてません。
田所 知ってると言うこと、まあその二つ私に強制したじゃないですか。
京都新聞 強制はしてませんよ。そう言ったことをあなたは知らないんですかというようなことを前提に話してきたわけでは決してないですよ。それはちょっと捻じ曲げてもらうとちょっと困ります。
田所 わかりました。知ってるということに直しましょうか。知っててなおかつその問題性を取り上げる記事を書かないでおいて、ヨイショ記事ばかり書くんでしょ、共同から流れてきたものを。
京都新聞 これご存知のように共同配信ですわね。

◆来年もしこの記事が載ったら、私、京都新聞にあなた訪ねて行きますからね

田所 それを書くだけのことでしょ。そんな醜い抗弁しなくて、あなたたちだってジャーナリストの端くれなんだから少しは社会正義とか、どういうことにプライオリティがあるかとか考えていただいたらいかがなんですか。
京都新聞 わかりました。そのご意見はもっともなんで。
田所 もっともだと思ったらそれを紙面に反映しなさいよ。
京都新聞 はい。編集の方にちゃんと伝えます。
田所 ちゃんと伝えるって、ちゃんと伝えたら伝えたで実現しなさいよ。来年もしこの記事が載ったらユンさん、私、京都新聞にあなた訪ねて行きますからね。ちゃんと伝えるってそういうことでしょうが。
京都新聞 伝えた上でまたどうなるかはここで確約できるものではありませんけどもね。
田所 何を言っているんですか。あなただっておかしいと思ってるて仰せじゃないですか。そんなことをしているから原発再稼働されるし、共謀罪作られるし、政府にやりたい放題されるんじゃないですか。言論機関が弱腰だから。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

愚直に直球 タブーなし!最新刊『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

2005年12月に栃木県今市市(現・日光市)で小1の女の子・吉田有希ちゃんが何者かに連れ去られ、無残な刺殺体となって見つかった「今市事件」。殺人などの罪に問われた被告人の勝又拓哉氏(35)は昨年4月、宇都宮地裁の裁判員裁判で無実を訴えながら無期懲役判決を受けたが、捜査段階の自白以外にめぼしい証拠はなく、冤罪の疑いを指摘する声が少なくない。

かくいう私も裁判員裁判の全公判を傍聴したほか、勝又氏本人をはじめとする関係者、関係現場への取材を重ね、この事件は冤罪だと確信するに至っている。当欄でも今年4月16日、警察が捜査段階に栃木県内のあちこちに貼り出していた情報提供募集のポスターに基づき、勝又氏の自白調書の内容に信ぴょう性など無いに等しいことを記事にした。

そして実を言うと、勝又氏の自白が嘘であることは、「ある現場」に一度でも行けば、一目瞭然なのだ。

◆明らかに嘘だった「わいせつ行為」

東武日光線の樅山駅から車で数分。県道15号線沿いにある2階建ての何の変哲もないアパートが、この事件では大変重要な現場の1つだ。勝又氏は事件当時、このアパートの2階の一室に住んでいたのだが、その自白調書によると、ここに有希ちゃんを連れ込み、わいせつ行為をしたことになっているからだ。

「私は、部屋の中で有希ちゃんを全裸にしたうえで自分も裸になり、デジタルビデオカメラで撮影しながら、有希ちゃんの顔にキスしたり、陰茎を有希ちゃんの尻にこすりつけたり、有希ちゃんに陰茎を握らせてしごかせて射精するなどしました」(自白調書の要旨)

この自白は一見、迫真性のある内容だが、客観的事実をもとに真偽を検証すれば、すぐに嘘だとわかる内容だ。というのも、勝又氏が本当にこれほど濃厚なわいせつ行為をはたらいたなら、有希ちゃんの体には当然、相当量のDNAが付着したはずだ。しかし事件後、有希ちゃんの遺体から勝又氏のDNA型は一切検出されていないのだ。

そして、わいせつ行為をした後のことに話が及ぶと、勝又氏の自白調書の内容はさらにわかりやすく不自然な内容になる。

◆「手足を縛った全裸の被害者を車まで運んだ」という不自然

「私は自宅アパートで有希ちゃんにわいせつ行為をした後、全裸の有希ちゃんの両手足をガムテープで縛って拘束し、ジャンパーをかぶせただけの姿で駐車場に停めていた車まで連れて行きました。そして有希ちゃんを助手席に乗せ、車で茨城県常陸大宮市の山中まで赴き、有希ちゃんを車から降ろしてサバイバルナイフでメッタ刺しにして殺害しました。それから、遺体を林の中に投棄したのです」(自白調書の要旨)

この自白が嘘であることは、現場に行けば一目瞭然だ。

勝又氏が当時暮らしていたのは、アパートの2階の奥の部屋だった。ここに掲載した写真で言うと、向かって左側の部屋である。勝又氏が自分の部屋から、車を停めていた地上の駐車場まで行くには外廊下を通り、さらに外階段で下に降りなければならない。勝又氏が自白内容通り、「両手足をガムテープで縛って拘束し、ジャンパーをかぶせただけの全裸の有希ちゃん」を自分の部屋から車まで連れて行くのは極めて困難であることは自明だろう。

勝又氏が住んでいたアパート。2階の左の部屋から、手足を縛られた全裸の女児を地上まで運べるだろうか?

有希ちゃんが手足を縛られているのであれば、地上の駐車場の車まで連れて行くにはダッコして運んだり、引きずっていくしかないはずだ。小1の女の子ゆえに体重は大したことがないとはいえ、そんなことが可能だろうか。仮に可能だとしても、勝又氏が本当に犯人ならば、いかに有希ちゃんを駐車場の車まで運んだかは重要なことなので詳細に供述するはずだが、勝又氏の自白にはそのあたりのことが一切出てこない。極めて不自然なことである。

その他にも勝又氏の自白調書の内容は、「有希ちゃんを殺害後に車で家に帰る際、手を洗うためにコンビニや公衆トイレに立ち寄った」と供述しながら、そのコンビニや公衆トイレが特定されていないなど不自然な点は枚挙にいとまがない。東京高裁で行われる控訴審の日程は現時点で未定だが、控訴審では公正な審判が下されることを私は強く願っている。

勝又氏が住んでいたアパートの外階段。ここを全裸の女児を連れて降りる犯人がいるだろうか?

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

愚直に直球 タブーなし!『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

センチャイ会長の若い頃(1979年)。全日本キックでトップクラスの酒寄晃と戦う

現在のMuayThaiOpenロゴ

  
Lumpinee Boxing Stadium of Japan設立会見からほぼ2年。初タイトルマッチ開催から1年が経過しました。毎度申すところ、このルンピニージャパン王座を獲得すれば「本場タイ国ルンピニースタジアムランキングに反映される」といった設立時の発表どおりなら、そんな上位王座へ突き進む進展が欲しいところです。

ルンピニージャパン(LBSJ)スーパーライト級王座決定戦は、前田将貴(RIKIX)は初回から橋本悟(橋本)と重いパンチを交錯させ、KO決着を予感させる出だしでした。偶然のバッティングによる両者の負傷はあったものの、前田の勢いは増していきパンチ連打、接近戦でのヒジ落としと攻勢が続き、橋本の負傷箇所の悪化でTKO勝利。勝利後の前田の号泣は、周囲の協力、応援は凄まじいものだったと感じられます。

周囲の練習仲間への感謝を述べた後、そんな仲間によって王座奪取に漕ぎ着けたことで「僕は本当に恵まれています。ありがとうござました」と号泣を堪え感謝を述べました。所属のRIKIX会長の小野寺力氏もそんな協力者の一人で嬉しかったことでしょう。

ムエタイオープン・バンタム級王座は、3ラウンドまでやや宮坂が蹴り勝っているかに見える展開からヒジでカットに成功したユウ・リバイバル(リバイバル)がTKO勝利。「まだまだ弱いですけど、これからも頑張っていくので応援宜しくお願いします」と締め括りました。

ムエタイオープン・ウェルター級王座を3度防衛している喜入衆(フォルティス渋谷)は在日ベテランのノーナクシンの老獪なテクニックの壁に阻まれ惜敗。

貴センチャイはガードが空くところをポンの左ヒジ打ち(と見える)カウンターを貰ってダウン。奪取した王座は多いが惜しい負け方も多いところです。

喜入衆vsK・ノーナクシン。ベテラン、ノーナクシンを倒す期待が掛かった喜入衆だが、牙城を崩せず

◎MuayThaiOpen.39 / 2017年7月9日(日)新宿フェイス16:30~20:50
主催:センチャイムエタイジム / 認定:ルンピニーボクシングスタジアムオブジャパン(LBSJ)
後援:タイ国大使館

◆メインイベント 67.0kg契約 3回戦

MuayThaiOpenウェルター級チャンピオン.喜入衆(フォルティス渋谷/38歳/66.7kg)
VS
K・ノーナクシン(タイ・サラブリ出身/35歳/66.05kg)
勝者:K・ノーナクシン / 0-2 / 主審:秋谷益朗
副審:大沢29-29. 田中29-30. 桜井29-30

◆セミファイナル バンタム級3回戦

LBSJスーパーフライ級チャンピオン.貴・センチャイジム(センチャイ/32歳/53.4kg)
VS
ポンチャンOZジム(タイ/26歳/53.35kg)
勝者:ポンチャンOZジム / 0-3 / 主審:北尻俊介
副審:秋谷28-30. 田中28-30. 桜井28-30

貴センチャイジムvsポンチャンOZジム。いつも積極性は変わらない貴センチャイだが接近戦でのガードがあまい

前田将貴vs橋本悟。ペースを握った前田将貴の攻勢

橋本悟vs前田将貴。打ち合い激しかった両者、前田の伸びるパンチが橋本悟にヒット

劣勢になった橋本悟へヒジを落とす前田将貴も必死に攻める

◆ルンピニージャパン(LBSJ)スーパーライト級王座決定戦 5回戦

MuayThaiOpenスーパーライト級チャンピオン.橋本悟(橋本/31歳/63.4kg)
VS
前田将貴(RIKIX/27歳/63.35kg)
勝者:前田将貴 / TKO 4R 1:05 / 主審:大沢武史
ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ / 3Rまでの公開28-29. 28-30. 28-30

◆MuayThaiOpenバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.44・ユウ・リバイバル(リバイバル/23歳/53.15kg)
VS
4位.宮坂桂介(ワイルドシーサー群馬/21歳/53.4kg)
勝者:44・ユウ・リバイバル / TKO 5R 1:25 / 主審:桜井一秀
ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ / 3Rまでの公開29-29. 29-29. 29-30

◆70.0kg契約3回戦

エミール・ソーサ(Emile Souza/フランス/31歳/69.8kg)vs 清水武(29歳/69.5kg)
勝者:清水武 / 0-3 / 主審:田中浩明
副審:桜井29-30. 大沢28-29. 北尻29-30

これまでの道程を回想したか 歓喜の前田将貴

小野寺力会長と前田将貴。最高のツーショット

◆ライト級3回戦

笠原淳矢(フォルティス渋谷/39歳/60.9kg)vs コンゲンチャイ・エスジム(タイ/28歳/60.75kg)
勝者:コンゲンチャイ / 0-3 / 主審:秋谷益朗
副審:桜井29-30. 大沢28-30. 田中28-30

◆フェザー級3回戦

NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/36歳/57.05kg)vs 出口優佑(AXSPEAR池袋/34歳/56.6kg)
勝者:NOWAY / 3-0 / 主審:北尻俊介 /
副審:桜井30-28. 秋谷30-27. 田中30-27

◆ルンピニージャパン(LBSJ)U-15. -45kg級3回戦(2分制)

花岡竜(橋本/13歳/43.0kg)vs 石渡悠真(チューティンムエタイ/14歳/44.8kg)
勝者:花岡竜 / 2-0 / 主審:大沢武史
副審:北尻29-28. 秋谷29-28. 田中29-29

◆ルンピニージャパン(LBSJ)U-15. -45kg級3回戦(2分制)

小宮山怜虎(尚武会/13歳/42.8kg)vs 馬場由輝(AXSPEAR池袋/14歳/43.5kg)
勝者:小宮山怜虎 / 3-0 / 主審:桜井一秀
副審:北尻30-28. 秋谷30-28. 大沢30-28

◆スーパーフェザー級3回戦

角谷祐介(NEXTLEVEL渋谷/27歳/58.7kg)vs 飯島直己(OZ/21歳/58.6kg)
勝者:角谷祐介 / 2-0 / 主審:田中浩明
副審:北尻30-28. 桜井29-29. 大沢30-28

宮坂桂介 vs 44・ユウ・リバイバル。ユウ・リバイバルが攻めるが衰えぬ宮坂桂介の前進

宮坂桂介 vs 44・ユウ・リバイバル。一進一退の展開

44・ユウ・リバイバル vs 宮坂桂介。この一撃かは微妙なところ、あと一発交差があってレフェリーが割って入る

◆ルンピニージャパン(LBSJ)U-15. -45kg級3回戦(2分制)

野口優心(京都野口/15歳/44kg)vs 永井天馬(AXPEAR池袋/14歳/44kg)
勝者:永井天馬 / 0-3 / 29-30. 29-30. 28-29

◆ルンピニージャパン(LBSJ)U-15. -40kg級3回戦(2分制)

近藤流玖(橋本/13歳/36kg)vs 吉成士門(エイワスポーツ/12歳/39kg)
勝者:近藤流玖 / 2-0 / 30-29. 29-28. 29-29

《取材戦記》

進展の無いルンピニージャパンですが、Under15に出場している45kg以下の少年たちが将来、このルンピニージャパンを経て本場に挑むなら、その選手とこのシステムに期待したいところです。

王座は獲っても返上の多いチャンピオンの中、3度防衛の喜入衆には褒めたい存在。

この興行プロモーターとなるセンチャイ・トーンクライセーン氏はかつてムエタイランカーとして1980年頃来日、全日本フェザー級チャンピオン.酒寄晃(渡辺)との対戦経験があります。ルンピニージャパンのロゴマークにある写真がその試合です。そんな若い頃は結構二枚目で日本の女性ファンも居たようです。大々的にタイボクサーがモテだしたのはナパ・キャットワンチャイが全国的に有名になりました。遡れば昭和のキックブームの頃にもそんな存在が他にも大勢居ただろうと考えられます。国際結婚に至ったケースも多いですし、そんなエピソードも聞いてみたいところです。

MuayThaiOpenの40回目を迎える興行は11月26日(日)に新宿フェイスにて開催予定です。

MuayThaiOpenの興行用横断幕

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

共謀時審議の中で、散々な無能ぶりを発揮した法相金田勝年が7月13日、2名の死刑を執行した。金田自身が死刑執行を命じたのはこれで3名となる。この島国ではいまだに「復讐権」を国家に委ねる、前近代的な人権感覚が幅を利かしている。

2017年7月13日産経新聞

死刑とは、いかなる理由を付与しようとも「国家による殺人」にほかならない。

主として被害者感情を利用して、または、まったく効果などない「犯罪予防」を理由に「国家による殺人」がまた行われた。しかも西川氏は再審請求中であり、再審請求者への死刑執行は異例中の異例である。

金田はなぜ2017年7月13日に2名の死刑を執行したのか。それは7月11日に「共謀罪」が施行されたことと無関係だろうか。相次ぐ国会審議の中での失態により、内閣改造では法相を更迭されることが確実な金田に、この際最後の一仕事を法務省は押し付けたのか。

理由はどうでもよい。唯一にして最大の問題は、ようやく日弁連も「死刑廃止」に舵をきり、死刑についての議論が高まる機運が生じたことへ、国家意思は「再審請求中の人にも死刑を強行する」ことを国民に見せつけた、そして庶民レベルではまだまだ「死刑廃止」に対する意識の高まりがみられないことである。

「人を殺したのだから殺されて当然」という、当たり前のように聞こえてその実何の思索も行われていない感情論を耳にすることがあるが、「人を殺したら殺されて当然」だろうか。

金田勝年法務大臣

◆「殺人」行為と「死刑」を短絡的に結び付ける大いなる誤解

戦争はどうだ? あらゆる戦争で戦勝国の兵士が敗戦国の兵士や民間人を殺戮したことにより、裁かれ「死刑」になることがあるだろうか。「戦争」だから殺人は免罪されるのか。また、まったくの不幸なめぐりあわせによる交通事故はどうだ。運転手に微塵の殺意がなくとも、意識不明に陥ったりして複数人の犠牲者が出ることがある。それでも加害者は「死刑」に相当するか(判例上このような加害者で死刑になった人はない)。つまり「殺人」という行為と「死刑」を短絡的に結び付けることは大いなる誤解であるということである。

そして、仮に大量殺人の真犯人であっても、その人に死刑を執行することにより、被害者の生命が回復するのか。被害者感情は本当に回復されるのか。殺人でなくとも、加害者に復讐心を抱くことは日常的に起きているのではないか。そのような個人の復讐心の物理的遂行をとどめる為に、近代法は構成されているのではないか。

そうであるので「死刑」制度の存置自体が近代法の精神にはそぐわず、むしろ前近代的な制度であると、近代法を導入した多くの国家は認識し、「死刑」を廃止したのだ。欧州のほぼ全域、そして制度上は廃止されてはいないが、韓国も死刑の執行を行わないことにより、実質的な死刑廃止国となっている。

金田勝年法務大臣

◆特定秘密保護法・共謀罪のすぐ向こうには「死刑」がある

さらにあまり知られていないが、「一人として人を殺さなくとも」「死刑」以外の処罰がない罪がある。「外患誘致罪」だ。外国の軍隊を国内に招き入れたり、外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者を罰するのが「外患誘致罪」だ。この容疑で逮捕された人は、冤罪であっても死刑を覚悟せねばならない。

おかしくないか。日本には米軍が駐留している。日米安保があるとはいえ、条約は法律よりも優位なのか。米軍が日本に駐留しているのが当たり前になっているので、こんな珍説を説く人はいないが、歴代政権は「外患誘致罪」を継続的に実践してきている。さらには集団的自衛権容認により、よりいっそう外国の軍隊がこの島国に上陸する可能性が増した。これは国家的「外患誘致」導入への地ならしではないか。しかし当然のことながら、国家への「死刑」などは制度上存在しない(例外的に、「革命」が起きればそれに相当しよう)。

売り物が無くなったマスコミが安倍政権に背を向けだした。政権へのマスコミの風向きは月刊『文藝春秋』の特集を注視していると解かりやすい。安倍政権批判が全面解禁されたのは今回も6月9日発売の『文藝春秋』7月号「驕れる安倍一強への反旗」が掲載されて以降だ。右派も含め安倍政権叩きが本格化している。

長きにわたった不幸極まりない安倍政権末期にあり、強行された死刑について我々はわすれてはならない。特定秘密保護法・共謀罪のすぐ向こうには「死刑」がある。他人事ではない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

愚直に直球 タブーなし!最新刊『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

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