今回は、ネット上で今ホットな話題となっている、消臭・芳香剤「ファブリーズ」と伊豆諸島の特産品「くさや」を対決させたCMが制作され、地元民から怒りを買っている、という件について書いてみたい。

 

 

◆くさやの臭いを「阿鼻叫喚の地獄」と称する感覚

私は未見だが、このCMは昨年からP&Gのサイトにはアップされていたらしい(現在は削除)。日刊ゲンダイの記事に拠れば、「くさや」だけのボックスと「くさや」と「ファブリーズ」が入ったボックスが用意され、CM出演者がにおいを嗅ぎ分けるという内容。「くさや」の匂いを嗅ぐシーンでは、出演者たちが顔を背けながら「えっ、スゴイ臭い」「何コレ」「くっさいですね」とその強烈な匂いを強調し「あまりの臭さに阿鼻叫喚の地獄と化すラボ内」という強烈なナレーションが流れる。

一方、ファブリーズが置かれたボックスに場面が変わると、「全然臭わない」「こんなに消えるんだ、スゴイ」と今度は全く変わって次々と称賛の声が上がる。「かくしてファブリーズはくさやのにおいに打ち勝つことができた。検証成功。ファブリーズの勝利」と締めくくられるという内容。

 

◆コンプライアンスに抜かりないはずの多国籍企業P&Gがなぜ?

これだけでもトンデモな内容だと分かるのだが、まず私が驚いたのは、これが「P&G」の作品だったことだ。同社は180カ国を超える国々で事業を展開、売上高も8兆円を超える世界最大の日用品メーカー。ファブリーズだけでなく、「アリエール」「パンパース」など数多くのブランドを有し、そのマーケティング力はMBAの授業などでも高く評価されているという。

もちろんコンプライアンスやガバナンスに関しても抜かりのない企業だ。広く様々な国で稼ぐ外資は、特にヘイトや国別の文化伝統への中傷などに敏感であり、企画段階で厳しくチェックされるから通常はこのような作品は作らない。それが今回、評判が良いからと言ってテレビCMも流しはじめたところ人目に止まり、騒動になったようだ。

 

 

◆固有の食文化への無神経な演出に唖然

まず内容的に言えば、くさやという日本古来の食品文化にファブリーズを掛け合わせるというその無神経な演出に唖然とする。たしかにくさやは強烈な匂いを発するが、それはその食品独特のものであり、匂いがあってもそれを作りたい、食したいという人々によって受け継がれてきた。つまり、その伝統を守り続けている人々が存在するのであり、今までファブリーズがCMで訴求してきたタバコ臭や汗の匂いなどとは根本的に異なる物である。

しかもくさやの匂いは、それを食べようと思わない人の前には通常絶対に表れない。要するに、もしブルーチーズやシュールストレミングに掛け合わせたらどうなったか、と考えると分かり易い。当然ながらその産地の生産者や愛好家から猛烈な批判や抗議を受けただろう。くさやの産地である八丈島の八丈町議会議員、岩崎由美氏の発言が全てを物語っている。

「漁師や生産者はもちろん、くさやを好きな人が見たらどう感じるか、ショックで悲しむのが分からないのか、それを考えずに作っているようにしか思えません。(中略)300年以上にわたって守り継いできた伝統食を、こんなくだらない演出で侮辱するのは許せない。地元の貴重な産業にどれだけの影響力を及ぼすか、想像できないのでしょうか。意図はなくても結果としておとしめています」

良識のある人間なら誰でも同じように考えるだろうし、こんなことになるのを予測できないのでは、CM制作者として失格である。また、P&Gは直ちに関係者に謝罪すべきだ。


◎[参考動画]ファブリーズvsくさや CM (チャンネル2 ワクワク2016年11月27日公開)

◆博報堂はなぜ、事前に問題をチェックできなかったのか?

実はこのCMの制作は博報堂だった。正確に言うと、P&Gの日本での窓口であるTBWAが博報堂と組んで受注し、MONSTERという制作会社がCMを制作した。2つ目の驚愕は、博報堂がこんな内容をチェックできなかったという点だ。

通常、CM制作の最終責任者はCD(クリエイティブ・ディレクター)だが、内容に法律的な問題(虚偽、中傷、いわれなき批判等)がないかどうかをチェックするのは営業の仕事だ。時には法務室などにも絵コンテをまわし、法務的側面から内容チェックをすることもある。クリエイティブは自由な発想が命だから様々な突拍子もない案を出してくるのが仕事で、時には無意識に今回のような伝統や生産者を侮辱するような内容を書いてくることがある。それを見つけ、問題になる前に修正するのが営業職に科せられた非常に重要な役目なのだ。

それがこのCMでは、結果的にノーチェックでパスしてしまっている。法務チェックをすれば、生産者に対する中傷や妨害に繋がる微妙な内容だということがすぐ分かったはずなのに、それを省略したのか。いやいや、あのP&Gが相手なのにそれも有り得ない。だとすれば、リスキーな内容であることを承知でP&GがOKしていたということになる。

 

[追記]この問題でP&Gは11月28日、同社製品HP上に上記の謝罪文を掲載した。電通に比べると同社の手際の良さは見事だ

 

◆「うなぎ少女」CMも博報堂だった

そういえば、うなぎを少女に擬人化して気味が悪い、性差別だと騒ぎになった鹿児島県志布志市の「うなぎ少女」CMも博報堂だった。あれももし私が担当営業なら絶対に通さないような、ハイリスクな内容だった。どうも最近、同社(営業)のCMチェック能力が落ちていると感じるのは、私だけだろうか。でも、これに関係する画像を消しまくっているのは手が早い。

そしてさらにもう一点。大手メディア、特にテレビ局はこの問題を全く報道していない。それはもちろん、P&Gが超巨大広告スポンサーであるからだ。電通はかなり叩かれたが、大きなスポンサーは批判できない、という不文律はいまだに健在である。


◎[参考動画]鹿児島県志布志市PR動画 「養って」( Commercial Japan2016年9月26日公開)

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

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出演強要被害を訴える女性の声を伝えるなどAVを「社会問題」として扱った報道が増えている。そんな中、私の脳裏に蘇ってきたのが、10年余り前に「ガチンコ」の輪姦AVが強姦致傷の容疑で立件されて世を騒がせた「バッキー事件」だ。あの事件の「首謀者」とされるバッキー栗山に「冤罪疑惑」があることを、あなたはご存じだろうか――。

◆地獄に堕ちた「AV界の寵児」の腑に落ちない裁判結果

バッキー栗山こと栗山龍(当時40)は2000年代初頭、AVメーカー「バッキービジュアルプランニング」(以下、バッキー社)を設立。それ以前の経歴は謎めいていたが、アメックスのブラックカードを2枚所有する大金持ちというフレコミで、会長の自分自身が広告塔となって会社を売り出した。当時、男性週刊誌やスポーツ紙では、同社の作品や企画を紹介した記事がすさまじい頻度で掲載されており、栗山はまさに「AV界の寵児」だった。

しかし2004年になり、同社がウリにしていたガチンコ輪姦AVの撮影中、女優が肛門などに重傷を負う事故が発生。それ以降、水責めや強制的な飲酒など、同社の非人道的な女優の扱いが社会問題になり、ついに警察も本格的捜査に乗り出した。そして強姦致傷罪などで起訴され、「首謀者」とされた栗山は07年12月に東京地裁で懲役18年の判決を受ける。こうしてAV界の寵児は地獄に堕ちた。

ただ、それ以前に栗山と会い、言葉を交わしたことがある私は、裁判の結果が腑に落ちないでいる。

栗山の裁判が行われた東京地裁

◆子供のように澄んだ瞳

私が栗山と会ったのは03~04年頃、週刊誌の仕事で同社の「AVの虎」というシリーズ作品の撮影現場を取材した際のことだ。この作品は当時の人気テレビ番組「マネーの虎」をパクったもので、参加者がプレゼンするAVの企画が面白ければ栗山が金を出し、実際にAVを撮らせるという内容だ。正直、作品の詳細はまったく覚えていないが、この時一度会っただけの栗山の印象は今も記憶に鮮烈だ。

「栗山です。よろしくお願いします」

それは、とてもソフトな声だった。栗山は金髪に日焼け顔、華奢な体をホスト風のスーツに包み、見た目こそいかにも怪しげだが、物腰の柔らかい人物だった。名刺交換した時、屈託のない笑顔と子供のように澄んだ瞳には、不覚にもドキリとさせられた。栗山はなんとも言えない人を惹きつける力を持っていた。

この時、もう1つ印象的だったのが、栗山が制作スタッフに演技指導されながら「バッキー社の会長」を演じていたことだ。栗山はこの日、現場で制作スタッフに「こんな感じでいい?」と聞きながら、札束を鷲掴みにしてカメラをにらみつける“決めポーズ”をつくっていたのだが、何もかもスタッフに任せて言われるままに演技していた。私が裁判の結果が腑に落ちないのは、この時の彼の様子をよく覚えているからである。

というのも、裁判で栗山は、「バッキー社には資金を提供していただけで、作品の制作には何ら関与していない」と無実を訴えていた。マスコミはこの主張を歯牙にもかけなかったが、私には、現場で目撃した栗山の様子からすると、裁判での主張通りにバッキー社において、「金は出すが、口は出さない」タイプのオーナーだったとしても何ら不思議はないと思えるのだ。

ネット上には、今もバッキー作品を販売するサイトが存在

◆真っ二つに割れていた関係者たちの証言

しかも、実は裁判では、関係者たちの証言が真っ二つに割れているのである。共犯者とされた制作スタッフたちは、栗山が「首謀者」だったという趣旨の証言を重ねた一方で、バッキー社の営業や内勤の社員たちは「栗山は月に数回出社するだけで、出社しても仕事の話はしなかった」と全面的に栗山のAV制作への関与を否定しているのだ。

どちらの証言が正しいかは、私も正直、現在把握している情報だけでは断定しかねる。しかし、一般的に複数犯の事件では、罪のなすり合いなどで事実関係が歪みがちだ。また、このような組織ぐるみの事件では、警察や検察は組織の中で少しでも地位が高い人間を罪に問いたがるものである。少なくとも、世間の多くの人が思うほどには、栗山の有罪は絶対的ではないと私は思っている。

実は数年前、私は栗山本人に取材したいと思い、バッキー社の後継会社とされるAVメーカーに連絡し、どこかしらの刑務所で服役しているはずの栗山への仲介を依頼したことがある。その時、電話口の社員は「私自身は当時会社にいなかったので、当時から会社にいた人に話をしてみて、何かわかればお返事します」と丁寧な対応だった。しかし結局、返事をもらえずにそれっきりになっている。

実際、どうだったのだろうか――。AVを「社会問題」として扱った報道が増える中、私はあの日の栗山の笑顔や澄んだ瞳を思い出し、ふと立ち止まって考えている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

 

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10月22日、土曜日。午後2時から行われた出口治明氏(ライフネット生命株式会社代表取締役会長)の講演が東京都立中央図書館にて開催された。知る人ぞ知る知識人である出口氏は、読書家であり、知識人だ。歴史から経済から歴史からその造詣は深く、あまたの著作もある。その出口氏はネットのみで申し込める保険会社を立ち上げたのも見事であるが、これからの日本を憂いて嘆き節になっている点には共感した。

出口氏は「2030年には、労働人口が800万人も減り、あと50年で65才以上が4割を超える」として、人口が増える社会を望んでいる。また、「ドイツ人は年間1500時間の労働でGDPの成長率が昨年1.45%あるが、日本では2000時間も年間働いているのに成長率は0.5%しかない」と指摘した。その上で「働きかたが変わってくる」と指摘している。もう9時にタイムカードを押してひたすらに残業する時代ではない。効率が求められるし、「残業」は罪ですらある。

また出口氏は、成長する要素として、①人から学ぶ、②本から学ぶ、③旅から学ぶことが重要だと指摘した。①は、とにかく誘われたら、人に会うことが大切で、交流会や勉強会には積極的に参加せよと。②は、とにかく古典を読むことが大切で、たとえばアダム・スミスの本は何度も書き直しているから古典として読みやすいと。そして③は、旅とは旅行ということのみではなく、知らない街を歩いたり、博物館に出向いたり、「知識を広げる」ことが大切なのだと説く。

 

観点がとても参考になったのは、日本人が英語が得意になるのには経団連の会長が「TOEFLの点数がない者は企業で面接しない、と言い切ればいい」という論理だ。これには、目から鱗が落ちる思いだった。まあ、講義の中身はチャンスがあればここで小出しにして紹介するが、とりもなおさず教養人の「頭脳」に触れることは重要だ。

「古典を読んで分からなければ、自分がアホだと思いなさい。新著を読んで分からなければ、著者をアホだと思いなさい」という言葉が印象に残った。古典はかくもわかりやすく書かれている。出口氏は古典として「東方見聞録 マルコポーロの旅」やアリストテレスの「ニコマコス倫理学」などもあげられている。ぜひ読んでみたい本だし、また出口氏の講演は聞いてみたい。ただし抽選で当たるのがたいへんなほど盛況だが。

▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして松岡イズム最後の後継者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

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「ヘビー級の体重を維持できなくなってしまった……」

川口雄介選手

9月29日、総合格闘技「BFC」(10月10日 ディファ有明)の対戦カード発表会見で、異例の“しょんぼり”コメントをしたのが無差別級の試合に出る川口雄介。海外強豪相手にやってきたことで戦績は14勝12敗2分とイマイチだが、DEEP初代メガトン級チャンピオンとして、日本の総合格闘技ヘビー級のトップファイターとして戦ってきた有力選手だ。

しかし、36歳という年齢もあり少し前に「あと7試合で引退」を決め、これまで2勝3敗。6試合目が今回の瓜田幸造戦なのだが、会見では「実は引退を決めたのは年齢より体調面なんです」と吐露。

「糖尿で入院したところ体重が90キロをきってしまい、ヘビー級の体重を維持するのが困難になってきたんです。今年1年をなんとか頑張ろうと決意しました」

瓜田幸造選手

対戦相手の瓜田は初代タイガーマスク、佐山聡の愛弟子だが最近はプロレス出場が増え「総合格闘技は5、6年ぶり」というセミリタイヤ選手。川口に対し「とんでもない相手が出てきた。僕のスタミナが持てばいいんですが……」と腰が引けていたのだが、当の川口はそれを見下すどころか「そういっていただいた以上、悔いがないように思いきりいくだけです」と言葉少なめで弱々しくコメント。会見場はしんみりとした空気が漂ってしまった。

総合格闘技は昨年、PRIDEの運営者が新団体「RIZIN」を立ち上げたが、先日9月26日の4度目の興行は、42歳の音レスリング王者・山本美憂や、デビュー2戦目の元大相撲・把瑠都、海外ではすでに引退していたミルコ・クロコップなど、新人もしくは全盛期を過ぎた元スターなど、知名度優先のマッチメイクだったのにもかかわらず、フジテレビが放送したゴールデンタイム3時間の視聴率は前半6.2%で6局中の最下位、後半8.5%で同4位という有様。すっかり人気がなくなった総合格闘技には、川口同様、関係者が肩を落としている。

今ひとつ、総合格闘技が盛り上がらない理由として「スポンサー」の撤退があるように思う。

「格闘技といえばアウトロー系のスポンサー、つまりパチンコ店やバー、アダルトグッズ店やAVメーカーなどがバックアップするのが常識だったのですが、そうした『反社会勢力』が万が一にでも逮捕されたら、会場からは『もう二度と貸せない』というクレームが入るようになったのです。今、反社会勢力だとわかっていて貸すのは、会場としては『ディファ有明』と『新宿フェイス』くらい。したがって〝格闘技好き〟なヤクザは半グレはディファ有明や新宿フェイスに集中して、近隣の居酒屋や飲食店にも嫌がれるのですが(笑)」(格闘技ライター)

いっぽうで裏社会の連中にも言い分はあり、
「不良たちが格闘技で汗をかくことで、犯罪を予防できるという側面がある。実際、格闘技で入れ墨を消す決意をしたり、きちんとした社会人になることを決めた『悪』もいますよ」(暴力団関係者)

果たして、悪い連中がどこまで格闘技で更正できるのかは疑問だが、確かに『ディファ有明』と『新宿フェイス』については、警視庁の組織対策課がナーバスになっているのは事実だ。

「このところ、リングサイドで『○○組のヤクザを見た』なんていう密告電話が警視庁にあいついでいます。まあ総合格闘技選手は数が少ないので、団体同士が引き抜き合戦をやっているのがヒートアップしているのでしょう。もちろん、総合格闘技そのものに罪ありません。ボクシング界はJBCが時間をかけてヤクザやアウトローを懸命に排除にかかりました。今では、年始の優秀選手表彰会にその筋のアウトローが入ってきただけで主催者に追い返されます。そのような『浄化』に総合格闘技もひっかかっているのでしょう」(同)

そして直近の情報によると、もはや反社会勢力が色濃い団体は、歌舞伎町の「新宿フェイス」を使えなくなるという。

「歌舞伎町は小池都政がかなりヤクザの締め出しに力を入れていますから。風俗店も軒並み、摘発されていますし、東京五輪に向けて、さらに摘発は強化されていくでしょう」(都庁詰め記者)

そうなると「残る反社会勢力格闘技団体」がすがるのは、もちろん会場の債権をもち、〝健全な〟プロレス団体である『NOAH』を追い出したヤクザ連中が運営する会社〝x〟だとも言われるが、果たして、総合格闘技は反社会を一掃できるか。見物ではある。

 

(伊東北斗)

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まだ日本の頂点ではない現段階、今後の挑戦が能登龍也の真のチャンピオンロード

NJKF若武者会は、30代~40代の若い世代のNJKF加盟ジム会長で組織される「DUEL」という興行名で昨年の4月から開始し、今回で8回目。ディファ有明は初進出。会場規模もマッチメイクも一層向上してきました。

新日本キックボクシング協会のビクトリージムも年々マッチメイクが向上している「KICK Insist」を開催しています。東日本大震災復興チャリティーイベント として2011年から開催し、11月6日は熊本地震チャリティーとして、15試合中3試合が日本vsタイ国際戦、10試合が他団体かフリージムとの交流戦と、共催ながらビクトリージムならではの興行体制でした。

◎NJKF DUEL.8 /
10月30日(日)ディファ有明16:00~21:00
主催:NJKF若武者会 /
認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

元・WBCムエタイ世界スーパーライト級チャンピオンの大和哲也(大和)は昨年5月に敗れた相手へのリベンジマッチの予定でしたが、怪我で欠場となり、後輩の真吾YAMATOが代打で出場。

1996年1月生まれの20歳で、10戦7勝(3KO)2敗1分の戦績で元ムエタイチャンピオンに挑みましたが、第2ラウンドにゴーンサックにパンチで2度ダウンを奪われ、最後は第4ラウンドに左ハイキック一発で倒される、荷が重い内容でしたが、勇敢に向かった試合でした。

ローキックで攻め立てる波賀宙也

波賀宙也はバランスいい元ムエタイチャンプにローキックでたじろがせる圧倒を見せ判定勝利。日本人選手がかつてやられたパターンで、こんな逆転した展開を見せる時代になったことを実感させられる試合でした。

NJKFフライ級王座はパンチでダウン奪った能登が形成逆転、大田のヒジ、ヒザのムエタイ技での優勢は一気に空気が変わり、後半も能登のパンチが活き僅差ながら判定勝利で第10代チャンピオンとなりました。

《主要4試合》

◆64.5kg契約 5回戦

NJKFスーパーライト級2位.真吾YAMATO(大和)
    VS
ゴーンサック・シップンミー(タイ)=元ルンピニー系フェザー級、スーパーフェザー級チャンピオン
勝者:ゴーンサック / TKO 4R 0:48 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審 山根正美

◆56.0kg契約 5回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA) 

ゴーンサックの左ミドルキックは重かった

左ハイキックで倒された真吾

    VS
クワンペット・ソー・スワンパッディー(タイ)=元ルンピニー系バンタム級チャンピオン
勝者:波賀宙也 / 判定3-0
主審 多賀谷敏朗 / 副審 西村50-47. 竹村50-47. 山根50-47

◆NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

1位.大田拓真(新興ムエタイ)vs2位.能登龍也(VALLELY) 
勝者:能登龍也 / 判定0-2
主審 松田利彦 / 副審 西村48-48. 多賀谷48-49. 山根47-48

◆NJKF女子(ミネルヴァ)アトム級(102LBS)王座決定戦3回戦 

佐藤怜南(team AKATSUKI)
    VS
C-CHAN(T-GYM)
引分け 三者三様(公式記録) / 主審 多賀谷敏朗
副審 竹村30-29(9-10). 西村28-29(9-10). 山根29-29(9-10)
延長戦0-3(三者とも9-10)による“勝者扱い”でC-CHANが新チャンピオン

◎KICK Insist6
11月6日(日) ディファ有明16:00~20:45
主催:ビクトリージム、治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

C-CHANがデビュー1年でチャンピオンへ

やっぱり厚かったムエタイの壁、瀧澤博人は念願の“現役”ムエタイチャンピオンとの対戦も、内容的に大差を付けられる完敗。蹴りもパンチも単発では崩せないが、次に繋げさせないカオタムの距離とバランス。ラウンドが進むにつれ、瀧澤のパターンが読まれると組まれてヒザ蹴りのカオタムのペースに巻き込まれる経験値の差がありました。これで奮起するのが瀧澤博人、次の国内防衛戦を通過点として、またムエタイ第一線級戦士に向かっていくでしょう。

山田航暉は元・タイ東北スラナリースタジアム・ミニフライ級チャンピオンのラチャシーに、ローキックで勝機を掴み、2度目のダウンになるローキック後、崩れ行くところを顔面にキック、そのままノーカウントのレフェリーストップ勝ち。

石原將伍は元・タイ国ムエスポーツ協会ランカーのゴーンポンレックに強打が通じず、戦法読まれて攻め倦む判定負け。

大田原友亮はムエタイ技の基礎が出来ている選手ですが、キックボクシングのリズムが噛み合わず凡戦が多くまたも引分け。

日本ヘビー級チャンピオン初戦の柴田春樹は、総合格闘家の酒井リョウとキックの試合には成り難いリズムが狂った展開でも、ダウンと酒井の反則減点で大差判定勝利。

《主要5試合》

蹴る威力が増し、元ムエタイ地方チャンピオンを圧倒した山田航暉

◆55.6kg契約 5回戦

日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/55.55kg)
VS
タイ国ラジャダムナン系スーパーバンタム級チャンピオン
カオタム・ルークプラパーツ(タイ/55.1kg)
勝者:カオタム・ルークプラパーツ / 判定0-3
主審:椎名利一 / 副審:桜井48-50. 少白竜47-50. 仲47-50

パンチの距離を狂わされた石原將伍

◆51.5kg契約 5回戦

WMC日本スーパーフライ級チャンピオン.山田航暉(キングムエ/51.3kg)
VS
ラチャシー・ギャットアノン(タイ/50.9kg)
勝者:山田航暉 / TKO 3R 1:28 / 主審:仲俊光

◆59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級1位.石原將伍(ビクトリー/58.9kg)
VS
ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン(タイ/58.3kg)
勝者:ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン / 判定0-3
主審:少白竜 / 副審:桜井47-49. 仲47-49. 椎名47-49

アトム山田と大田原友亮はドロー

◆58.0kg契約3回戦

ユウ・ウォーワンチャイ(=大田原友亮/ウォーワンチャイ/57.65kg)
VS
JKIフェザー級1位.アトム山田(武勇会/57.7kg)
引分け 0-1 (29-30. 29-29. 29-29)

◆ヘビー級3回戦

日本ヘビー級チャンピオン.柴田春樹(ビクトリー/92.65kg)
VS
酒井リョウ(バラエストラ松戸)
勝者:柴田春樹 / 判定3-0 (三者とも30-26)

◆取材戦記

蹴り合いは少なかったが、立ち技の経験値で勝利を導いた柴田春樹

NJKF興行では女子の試合は「ミネルヴァ」と表現しています。ローマ神話の女神に名称を由来すると言われおり、カッコいい名称ですが、一般の方が見た場合、何の試合か分かるでしょうか。最近、NJKF関係者に「ミネルヴァと書いてください」と言われたこともありました。しかしそこは「女子キック」と表現しなければ一般の方には分からないでしょう。

今回のDUELでは各選手のウェイトが発表されませんでしたが、全選手リミット内であったようです。ウェイト競技たるもの、計量記録も大事な試合の内と思います。前日公開計量のある興行では、選手の調整具合がしっかり読めてくることあるので、こういう機会は増やして欲しいと思います。

次回NJKF興行は11月27日(日)後楽園ホールでの「NJKF 2016.7th」に於いてWBCムエタイ・タイトルマッチ5試合が主要試合として行なわれます。

新日本キックボクシング協会の藤本ジム主催興行は12月11日(日)に後楽園ホールに於いて「SOUL IN THE RING.16」が行なわれます。

過去の敗戦を糧に強くなった瀧澤博人、更なる奮起に期待

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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角には中日新聞、その横にクリーニング屋、八百屋、ココストア、藤山台センター(市場)などが並んでいたのが当初の町並みだったのではないだろうか。なにせもう45年程前の姿なので、その記憶は定かではない。ココストアの位置する商店街界隈の近くには、また別の小さな商店街があり、小ぶりながらおもちゃ屋や書店、散髪屋も並んでいた。さらにスーパーマーケット、「松坂屋ストア」はいつも買い物客でにぎわっていた。

ココストアはその後一時、店の名前が変わったような記憶もある。どうして「こんなに小さい店が市場やスーパーの隙間でやっていけるのか」と幼心に疑問だった記憶はあるが、あれが今日どの町にも見かける「コンビニエンスストア」の日本における第1号店だったとは、想像する由もなかった。当たり前だけれども当時は「コンビニエンスストア」なる名称もなかったし、概念もなかったのだか至極当然ではある。

愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン内に位置するこの店舗の前を、幼少時代には親に手を引かれ毎日のように通っていた。市場や八百屋、スーパーマーケット店内の姿は覚えているのに、この店に入った記憶はない。その後、成人して夜遅くにタバコを切らすと、品揃えがよかったのと、遅くまで開いているから便利でしばしばお世話になった。大学から休みに帰省すると、この店の前で深夜、悪友たちと顔を合わせたことも何度かあった。

ココストアのテレビCM

今日の「コンビニ時代」の先駆けがあの場所から産声を挙げていたのは、先日同店舗が閉店となったニュースに接して初めて知った。周りにあった市場や他の店舗は、大規模ショッピングモール(サンマルシェ)の影響を受けてか、早々に店を閉めたが、あの商店街でもコンビニだけは45年間健在だったのだ。

ココストアのテレビCM

団地内に現在、全部で幾つのコンビニが今あるのかは解らないが、かつて生鮮食料品を中心に地域では一番の売り上げを誇っていた「松坂屋ストア」すらが撤退した後、団地の姿は大きく変わっている。春日井市の統計によれば現在高蔵寺ニュータウンに住所を置いている人の数は4万人を超えるとされているが、往時同所に居住していた人間にとってこの数は甚だ疑わしい。

ココストアのテレビCM

◎[参考動画]国内コンビニ“1号店”閉店(2016年11月17日CBCテレビ)

私がこのニュータウンで生活した初期は、まだ新しい団地の建設も進む勃興期で人口は毎年増加し、団地には子供の声が響き、小学校も1学年3~5クラスはあった。山を切り開いたニュータウンには当初、歴史も文化も人々の営みの積み重ねもなかったけれども、夏には大公園や各小学校で盆踊りが開催され、小学校では子供会毎に球技を競う大会が盛んだった。当時人口は3万だと聞いていた。しかし私の居住していた地域では早くも1980年頃に子供の数が減り始め、子供会は80年代後半に解散をしてしまった。私が一時在籍した藤山台東小学校は廃校になる年の卒業生がわずか2名だったそうだ。

ココストアのテレビCM

ニュータウンの中心部は旧住宅公団(現在のUR)が維持管理する賃貸の団地が主たる建物を占めるが、中には分譲され個人が保有しているものもある。本来はここが人口密集地帯のはずだが、団地の窓を見渡すと空き家が目立つ。目視しただけでも2~3割は空室のように見える。ニュータウンの周辺には一戸建て住宅や工場などが広がっている。

数年前、久方ぶりに同ニュータウンを訪れた時、中心部には昼間だというのにほとんど人の姿が見当たらなかった。子供の声ももちろん聞こえない。前述の通りが一時通っていた藤山台東小学校は廃校となり、どうやら3つの小学校が統合されたようだ。賑やかだった藤山台の中心地、松坂屋ストアの跡地には介護関係の事務所が入っている。小中学校の給食を調理し、配達をしていた「給食センター」も取り壊されていた。

その時は、以前このコラムで言及したが、何とも表現しにくい気分になった。そして「日本初のコンビニ」閉店のニュースは、どこかでこの街の宿命と結びついているのではないか、との邪推を喚起させる。今日私(たち)は避けがたく日々コンビニを利用する。便利なようだけれども並んでいる商品はどこも同じだし、店員さんと仲良くなることはあっても「きょうはこのサバがいいよ」とか「しゃあない、特別にまけとくわ」といった会話はない。コンビニ内は常に無機的である。

無機的住居空間の総合体として計画され、今やセピヤ色の空気が漂うニュータウンでのコンビニ閉店劇には、ひねくれ者のの私は「強制の宿命」と「寂しさ」を感じる。私はあの「寂しさ」に耐えきれず、同地を後にした。でもまだそこで暮らしている旧友がいる。長く連絡を取っていないことに気が付いた。あいつら今でも元気だろうか。


◎[参考動画]ココストアのテレビCM コジコジ(さくらももこ 1998年)


◎[参考動画]ココストアのテレビCM


◎[参考動画]日本最初のコンビニ:ココストア藤山台店

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

重版出来!『ヘイトと暴力の連鎖』!

 

『NO NUKES voice』第9号 特集〈いのちの闘い〉

ソウル市庁前広場のメインステージからの写真。奥まで人がびっしりと密集している

車道を埋め尽くす市民。ピンク色の服と帽子を身に着けているのはサービス業に携わる女性労働者達

事の発端はパククネ(朴槿恵)大統領の「親友」とされるチェスンシル(崔順実)氏にまつわる国政介入疑惑だった。JTBCという韓国の放送局が、大統領の演説草稿などの機密資料がチェスンシル氏に渡っていたことを報道。翌日、パククネ大統領は資料提供を認めて公式に謝罪した。

◆チェスンシルゲートと財閥支配への憤り

その後の調査やマスコミの報道で、その恐るべき実態が次々と露わになった。チェスンシル氏や前首席秘書官らは逮捕・起訴されている他、チェスンシル氏の娘の名門大学への裏口入学疑惑や、姪のスポーツ選手育成センターの資金横領疑惑での逮捕など、逮捕者が相次いでいる。一連の騒動は、アメリカのリチャード・ニクソン大統領が辞任するきっかけとなった「ウォーターゲート事件」にちなみ「チェスンシルゲート事件」と韓国国内では呼ばれている。

駅構内に貼られた風刺画。パククネがチェスンシルの操り人形になって動かされている

さらに特筆すべきは、チェ母娘がドイツに設立したスポーツコンサルティング会社に、韓国最大の企業のひとつであるサムスンが不正に資金提供したとして、サムスン電子など9か所に家宅捜索が入ったことだ。韓国の人々の怒りと疑念の矛先は、私人が国政に介入したというスキャンダルであるにとどまらず、韓国社会における財閥支配の実態にまで及んでいる。

日本同様、韓国社会も失業や就職難、非正規労働者の増加、過剰競争に苦しめられている。全体の失業率は今年の10月の時点で3.4% 、若者に限って言えば、およそ10人に1人は失業しているような有様だ。また、非正規労働者の数は、全労働者の半数に及ぶ。多くの若者にとって、韓国の未来は明るくない。こうした韓国社会の行き詰まりが、チェスンシルゲート事件をきっかけに人々を街頭に向かわせたのだ。

メインステージ広場に入りきれず、路上に出た参加者にも集会の様子を伝えられるようクレーンで吊るされたスクリーン

ソウル市庁駅の構内でもミニ集会が行われていた

 
◆1503団体126万人超の11月12日集会

そして、11月12日、ソウル市内は同市の発表で126万人以上もの群衆に埋め尽くされた。毎年この時期には韓国最大の労組ナショナルセンターである民主労総(民主労働組合総連盟)の集会が行われていて、昨年の11月には光化門前でデモに参加したぺク・ナムギという名前の農民が警察によって放たれた高圧放水を受けて殺されている(2016年9月25日に死亡)が、この日の集会は1503の団体で取り組まれ、歴代最大規模だという。

まず、集会にあらゆる階層や世代が集まっていることに驚く。老人たちが険しい顔つきで座り込んでいるかと思えば、中学生や高校生と思しき若者達も繁華街に遊びに行くような恰好でシュプレヒコールを挙げていた。また、韓国の活動家に話を聞いたところ、この日のために地方からソウルに現地入りし、一泊してから集会に参加している人々も大勢いたらしい。

集会やデモの迫力にも圧倒された。ソウル市内にはメインステージの広場の他にも、数か所に巨大スクリーンとクレーンでつるされたスピーカーが配置されて集会の同時中継が行われていて、集会は集会参加者の発言やシュプレヒコールのみならず、歌や踊り、ウェーブ、映像などを交えて進行していく。演説に猛々しい音楽をかぶせたり、短いシュプレヒコールを何度も力強く繰り返す様からは、民衆の怒りと統一感がひしひしと伝わってくる。

昨年警察の高圧放水を受け、今年の9月に死亡した農民、ぺク・ナムギの追悼壇

◆参加者の多さに困惑する警察

時間が経つにつれて参加者はどんどん多くなっていき、足の踏み場もないほどになった。夕方に集会が終了した後は、大統領官邸の青瓦台に向かってデモ行進を行ったが、あまりにも参加者が多いため、出発にかなりの時間を要した。日も暮れて暗くなってくると、紙コップにアイスの棒のようなものを刺したキャンドルを持って歩く人々が増えてきた(なかにはちゃっかり商売としてキャンドルを売る露店もあった)。各所で自然発生的にシュプレヒコールや歌が歌われていて、ソウル中心部一帯は一層解放区の相を呈していく。もちろん、車道も人で一杯になっていた。

青瓦台付近に迫る市民。先頭には、警察の車両と遮蔽壁に阻まれるも、さらに青瓦台に近づこうとする若者や労働者が

夜になり、デモ隊が青瓦台の付近まで迫ると、警察が配置した大量の警備車両と遮蔽壁に阻まれたが、最前線では主に若者たちが壁をよじ登って何度も突破を試みる。集会からしてそうだったが、警察官や機動隊員の姿が数人しか見られないのが印象に残っている。

先述したように、これだけデモ参加者が多いと、さすがに警察も困惑していて、容易には手出しできないようだった。日付が変わっても、参加者の多くは帰ろうとせず、韓国では著名なバンドによる支援ライブや、各所でミニ集会が行われていた。

◆19日にも韓国全土で100万以上が結集

その後もパククネ退陣を求める抗議行動は連日全国各地で取り組まれている。今週の19日には再び大規模な抗議集会が呼びかけられ、韓国全土で100万以上が結集した。なかには日本のセンター試験にあたる修学能力を終えてデモにやって来た高校生たちも大勢いたという。

民主労総は「パククネが辞任しなければゼネストを決行する」と宣言しているが、パククネは一切応じようとはしていない。この先もまだまだ攻防が続きそうだ。

深夜になってもキャンドルを手に路上を占拠し続ける市民

(井田 敬)

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

『ヘイトと暴力の連鎖』

「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

前号では、10月中旬頃に安倍首相が直々に電通社長に注意を与えたことを書いた。電通が独占受注しているオリンピック業務への影響を懸念しているからだが、安倍の心配をよそに、事態はさらに悪化の一途を辿っている。

ウェブ版週刊現代2016年11月17日

◆呪縛が解け始めているメディア

何よりも、労働局が遂に強制捜査に踏み切ったことは、電通経営陣に相当な衝撃を与えたはずだ。前回の10月14日に実施された調査とは異なり、今回は捜査令状と強制力を伴う捜査であり、これで書類送検は決定的になったからだ。僅か一ヶ月足らずで捜査に切り替えたのも、当局が立件できる自信があるからだろう。

少し前まで電通については腫れ物に触るようだったメディアも、徐々に呪縛が解け始めている。先週号の週刊現代(2016年11月26日号)は『逮捕におびえる天下の電通「屈辱の強制捜査」全内実』の記事で、労基法の122条2項を根拠(違法状態を知っていて是正しなかった事業主は処罰される)に、石井社長の逮捕もあり得ると書いている。

ちょっと前なら「電通の社長を逮捕」など、絶対にあり得なかった記事で、僅か数ヶ月前と隔世の感がある。とはいえ気を吐いているのはもっぱら活字メディアだけで、電波(テレビ・ラジオ)は相変わらず第一報は流しても、番組内のコーナーなどで取り上げたりはしていない。NGワードがありすぎて、コメンテーターが発言できないからだろう。

産経新聞2016年11月14日

◆事件の影響は次の決算に反映される

また現状では、一連の事件の影響はまだ数字となって現れてはいない。11月14日に発表された1~9月期の電通の業績は17%増となっている。不正請求の記者会見が9月24日だったのと、新入社員過労死の労災認定による騒ぎが巻き起こったのは10月以降だから、その影響が反映されるのは次の決算発表においてだろう。

だがこの決算で目を引いたのは、「リオデジャネイロ五輪や東京五輪関連のスポンサー収入が利益を押し上げた」という発表部分だ。私は再三に渡って五輪関係のスポンサー収入の巨大さを指摘しているが、今期の電通はまさしくその数字の恩恵に浴していると言っていいだろう。逆に言えば、もしその独占が崩れれば、相当な痛手となるということだ。

そこで、この一連の事件で電通の社長が逮捕されたり、会社が刑事訴追を受けた場合に、電通の官庁関連業務が停止となる可能性がクローズアップされてくる。それが直結するのが、電通が独占している五輪関連業務だ。これだけ「ブラック企業」としての悪評が確立し、さらに刑事訴追まで受けるような企業が税金を使った業務をするなど、国民の理解を得にくくなるのは当然だ。だが細かく考えると、労基法違反を根拠とするペナルティ条項を設けている官庁や公益法人は殆どないと考えられ、どの法律を根拠に業務停止とするのかが問われることになる。

NHK2016年11月17日

◆他代理店への五輪業務移管は相当困難

また、実際問題として今まで全ての業務を遂行してきた電通を業務停止にすることは、法律的には有り得ても、実行面では相当な困難が伴う。先ず、いきなり全ての業務をとって変われるマンパワーが日本国内に存在しない。もちろん博報堂やADKにもスポーツ事業の専門家はいるが、オリンピックは他の業務と兼業できるようなレベルではなく、専業にして出向させなければならない。その人数も数十人単位が必要だ。

そして業務内容も、これからいよいよオリンピック実施に向けた様々なプロモーションやイベントが開始される時期に差し掛かっている。量的には、少なくとも現在スポンサーになっている42社に加えてさらに数十社のプロモーションを同時進行で動かしていかなくてはならない。こうした作業を途中だけ手伝って、業務停止期間終了後にまた元に(電通に)戻すなど、過去には全く例がないことだ。つまり、もし本当に電通が業務停止になったら、スポンサー契約を他の代理店に切り替えて業務を全部任せるか、業務ごとに(業務停止中のCM制作、その他広告制作、イベント等)細かく委託し、時間的に間に合わない作業だけを他代理店にやらせ、電通の謹慎空けを待つしか方法はない。

◆この先にまだ何が出てくるのか分からない

以上のように、現実的な視点で考えれば、このタイミングでの電通の業務停止や、それに伴う他代理店への業務移管は相当困難であることが分かる。しかし、だからといって、国の行政機関が強制捜査まで実施し書類送検した「ブラック企業」に、世界的な採点である五輪を任せて良いのかという「道義的責任追及論」が台頭することは避けられない。もし五輪業務が電通の一社独占でなく複数の代理店が絡んでいれば、電通が業務から外される可能性は十分にあった。電通が抜けても、他社がその穴埋めを出来るからだ。

しかも、現時点でも電通のブランドイメージは完全に失墜しているのに、この先にまだ何が出てくるのか分からない状況だ。労働局による捜査結果の発表はこれからだし、ネット業務の不正請求の最終報告もまだだ。つまり、これから先数ヶ月に渡って、電通にとって更なるネガティブ情報が出る恐れはあっても、信頼回復の目途は全く立っていないのだ。

◆労働局による書類送検で始まる電通事件第2章

以前私は、電通はコンシューマーを直接相手にしていないから、なかなか痛手を受けないと書いた。しかしこれには逆の作用もあって、コンシューマーを相手にしていないから企業としての謝罪姿勢が届きにくく、その取組みも見えにくいという側面がある。一般的な企業なら、不祥事を起こしたら謝罪広告を打つとか、店頭で配るパンフにお詫びを入れるという手段があるが、電通にはそれがない。つまり、イメージ回復のための、起死回生の一手などないということだ。

いま現在、上記のような電通の業務停止可能性について論じた記事はサンデー毎日(2016年11月27日号)しかない。全国紙4紙は揃って五輪スポンサーになっており、五輪盛り上げムードに水を指すようなこの話題にはなるべく触れたくないだろう。しかし、労働局による書類送検が行われた時点で世論の関心は一斉にこの問題に集まる。そこからがこの電通事件第2章の開幕となるのだ。


◎[参考動画]元博報堂・本間龍氏がスクープ証言!(Movie IWJ 2016/11/12公開)

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

事実の衝撃!『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

 

『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」

 

商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!

 

 

 
11月17日に発売された『反差別と暴力の正体』は、猛烈な反響を呼んでいる。アマゾンへは3度納品したがそれも既に売り切れた。21日更に230冊納品し、鹿砦社の在庫も底をつき、残りは書店に並んでいるものだけだ。

発売前に『反差別と暴力の正体』の告知をした途端にアマゾンへは予約が殺到したようだ。また反響も凄まじい。主としてTwitter上であるが、評価9割、非評価1割といったところだろうか。鹿砦社はかねてより「左派系」出版社との認識をお持ちの方が多いようだ。「左派系」かどうかはともかく、鹿砦社が何事にも“批判的”な視点を持ち、付和雷同ではない“本音”の言論を目指していることは間違いない。

当然、このようなご時世であるから、政治や世界を論評すれば、必然的に「反体制的」な視点にならざるを得ない。最低、最悪の政権下での暮らしを余儀なく押し付けられている私たちは、当たり前だが〈権力〉を撃つ。

同時に「反差別」「反権力」「マイノリティー擁護」といった、耳ざわりの良いフレーズを謳い文句に、その実真逆の行動を取る連中が、政権や権力中枢同様に危険であることも歴史が証明するところだ。この国が何度も繰り返してきた〈下からのファシズム〉だ。よって鹿砦社は「M君リンチ事件」を放置はできなかったのだ。

こんな表現を本当は使いたくはないが、鹿砦社は出版界のマイノリティーだ。「M君リンチ事件」はメジャーマスコミに早期から知れ渡っていたが、どの報道機関・出版社もこの事件を報じることなく、放置・傍観していた。しばき隊は言う、「マイノリティーの権利を守れ!」と。守ってもらおうではないか。出版界のマイノリティー鹿砦社を!(もちろん冗談だ)。

Twitterではなく長文のメールで感想を寄せてくれた方がいた。その中で以下の記述があった。

〈「しばき隊」犯罪の隠蔽工作を貫徹しようと思ったら、証拠物件の破壊は第一段階ですが、犯行暴露の意志をもつ人々を、切り崩そうとしたり、抹殺することだってやりかねないと思います。なにしろ既成左翼や既成の社会正義団体や名前の売れた既成の「社会正義市場の文化人・大学人」などの「左翼ぶりっこ」稼業を脅かす問題なのですから。

鹿砦社スタッフに対する「事故とみせかけた暴行や殺傷」の試みすら、奴らは行なう可能性があると考えて、「街を歩くときはクルマに気をつける」とか「駅では後ろから押される恐れがあるのでプラットホームでは中央付近に居るようにする」などの基本的な身辺防衛に努めたほうがいいと思います。
神経質のように思えるでしょうが、革命的警戒心は必要です。

激動の時代は、偽善の仮面が剥がれる、文字どおり「試練の時代」です。
そういう時代には「誠実に怒り、誠実に闘う」ことが、パワーになると私は信じています〉

この方のアドバイスは些か過剰と思われる読者もいるかもしれないが、あながち失当ではない。表面上『反差別と暴力の正体』で質問状を送った人たち全員に本書を贈っているが全員が「沈黙」している。しかし、今回質問状は送っていないが、取材担当の寺澤有が取材を申し込みながら断った人物がいた。

伊藤大介氏のFacebookで見つけた有田芳生議員の書き込み

これは「M君リンチ事件」裁判で被告になっている伊藤大介氏のFacebookだ。何度も質問状を送った有田芳生議員が「事実でないことが、さも事実であるように書いてありますね」と、明確に述べている。偶然有田議員の傍には野間易通氏がいたという(ずいぶん懇意だと告白してくれている)。

 

 

有田議員に尋ねる。『反差別と暴力の正体』中、どの部分が「事実」ではないのか。貴殿がFacebookやTwitterで発信するのは、一般人が発信するのと訳が違う。あなたは国会議員、つまり公人中の公人だ。寺澤有の取材要請に応じることなく、なにおかいわんやである。

われわれの取材や分析に「事実ではない」ことがあるのであれば、訂正をしなければならない。誤った解釈や判断でどなたかを傷つけたのであれば訂正をするのにやぶさかではない。であるから有田議員には必ずこの質問には答えていただきたい。万が一具体的な誤りの指摘がない場合は国会議員による「マイノリティー出版社」への、恣意的な「圧力」と判断するしかない。

『反差別と暴力の正体』の中で松岡が述べている通り、やや大袈裟ではあるが「私たちは命をかけて」取材し、本書を世に出した。真っ当な批判や事実誤認の指摘であればもちろん受けて立つ。

しかし、そうでない場合は、われわれにはそれなりの覚悟がある。まだ弾薬庫は空ではない。

(鹿砦社特別取材班)

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)

【内容】

1  辛淑玉さんへの決別状

2  「カウンター」「しばき隊」とは何者か?――
背景と呼称について

3 リンチ犯罪を闇に葬ろうとする市民運動つぶしの
“テロリスト”たちを許してはならない!

4 リンチ事件をめぐる関連人物の反応――
著名人、知識人、ジャーナリストらの沈黙、弁明、醜態

5 M君リンチ事件の経過――
驚嘆すべき大規模な〈隠蔽工作〉と〈裏切り〉の数々

6 二つの民事訴訟(対李信恵らリンチ事件加害者、対野間易通)
提起の経緯と概要

7 合田夏樹脅迫事件 
有田芳生参議院議員が沈黙する理由

8 “見ざる、言わざる、聞かざる”状態に警鐘!――
M君リンチ事件と、「カウンター」-「しばき隊」の暴虐に対する私たちのスタンス

[補項]

ろくでなし子さんアムネスティ講演会中止未遂事件としばき隊ファシズム

「カウンター」-「しばき隊」相関図

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どれほど社会を騒がせた重大事件も少し時間が立てば、すぐに人々の記憶から消えていく。あとから次々に新しい重大事件が起こるためである。最近起きた事件では、あの「宇都宮爆発事件」もすでに忘れ去られた感があるが、事件の現場は今、どうなっているのか。

栗原容疑者が爆死したあたりはブルーシートで囲まれていた

◆連続テロとも思われた大事件だったが……

事件が起きたのは10月23日の昼前だった。宇都宮市中心部にある宇都宮城址公園で、元自衛官の栗原敏勝容疑者(72)が自作の爆発物を爆発させて自殺。近くのコインパーキングでも栗原容疑者の車を含む3台の車が炎上したが、これも栗原容疑者の犯行とみられている。当初、凄まじい爆発音は地元の人たちを「連続テロか」と戦慄させたという。栗原容疑者が爆死した周辺では3人が巻き込まれて重軽傷を負った痛ましい事件だった。

もっとも、これほど社会を騒がせた事件も月が変わり、早くも忘れ去られた感がある。5歳の男児が焼死した明治神宮外苑の火災や、博多駅前の道路陥没事故など次々に新しい重大事件が起こり、人々の関心はそちらに移っていったからだ。おそらく12月になる頃には、これらの事件も当事者や関係者以外の人々の記憶から消えていることだろう。

爆死現場のかたわらにある歴史資料館は何事もなかったのように営業を再開していた

◆日常生活を取り戻していた人々

忘れ去られていく事件のその後を知りたく、私が宇都宮爆発事件の現場を訪ねたのは、事件から1週間余り過ぎた日のことだった。そこでわかったのは、現場界隈の人々が思ったより早く日常生活を取り戻していたことである。

公園で栗原容疑者が爆死したあたりは青いブルーシートに囲まれて立ち入れないようになっていたが、そのかたわらにある歴史資料館はすでに何事もなかったかのように営業を再開。3台の車が炎上したコインパーキングは、事件直後の報道の写真、映像では激しく燃えていたが、早くも地面のアスファルトが修復され、やはり何事もなかったかのように営業が再開されていた。

そんな中、事件の痛ましい傷跡が唯一残っていたのが、コインパーキングの隣にある民家の建物側面の焼け跡だった。しかし私が現場界隈を取材して回っていると、修理業者とみられる人がやってきて、民家の住人らしき人たちと何やら話し込んでいた。おそらく近々、この民家の建物の焼け跡も修復されることだろう。

ふと気づけば、そんな光景を見ながら、私は少しばかりの感動を覚えていた。それはおそらく、人間の強さやたくましさのようなものを見せて頂いたような気がしたからである。

◆宇都宮取材で再認識させられたこと

今から70年余り前、広島では原爆が投下されて3日後、早くも路面電車が焼け野原となった街で運転を再開したという。私は数年前から東北に取材で何度も足を運んだが、わずか5年余り前に震災で壊滅的被害を受けた地域でも今は何事もなかったかのように建物が立ち並び、人々が普通に生活している(すべての地域がそうではないが)。原爆や震災と比べると被害規模は小さいが、宇都宮爆発事件の現場の回復ぶりにも相通ずるものがあるように思えた。

どんな重大事件も少し時間が経てば、すぐに人々の記憶から消えていく。あとから次々に起こる新しい重大事件に人々の関心は移っていく。それをなんとなく悪いことのように思っていた私だが、人が辛いことや悲しいことを忘れるのは前を向いて生きていくためだ。よく考えれば当たり前のそんなことを再認識させられた宇都宮取材だった。

巻き添えになり、重軽傷を負った方々に関しては、現状は不明なので軽々しいことは言えないが、一日も早く以前と変わらぬ日常生活を取り戻して頂きたい。

車が燃えたコインパーキング。隣の民家の壁には焼け跡が残っていたが、地面のアスファルトは修復されていた

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

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