NJKFでIBFムエタイ日本タイトル本格始動、吉田凛汰朗が初陣を飾る!

堀田春樹

亜維二は肩脱臼で敗退。一つ上のタイトルは遠のく。
佐藤界聖と高橋幸光が王座決定戦へ駒を進める。
嵐はまたもボディブローで倒される。
健太が126戦目でラストファイト、愛息と手を繋いでテンカウントゴングを聴く。

◎NJKF CHALLENGER 11 / 11月30日(日)後楽園ホール17:10~21:30
主催:(株)オフィス超合筋
認定:ニュージャパンキックボクシング連盟、IBFムエタイ日本(運営部)
放送:U-NEXT

戦績・経歴はプログラムと過去データを参照し、この日の結果を加えています。

◆第9試合 IBFムエタイ日本ライト級初代王座決定戦 5回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/ 63.2kg)
31戦15勝(3KO)10敗6分
        VS
JKIスーパーライト級チャンピオン.切詰大貴(武勇会/1999.1.5高知県出身/ 63.3kg)
10戦8勝(2KO)2敗
勝者:吉田凜汰朗 / 判定2-1
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:宮沢48-47. 多賀谷47-48. 児島49-46

初回、蹴りからパンチ、ヒジ打ちと多彩に攻め合う両者。互角の展開は差は付き難いが、第2ラウンドはパンチの攻勢強めた切詰大貴が優った。第3ラウンド、落ち着きが出て来た吉田凛汰朗。第4ラウンドには冷静な吉田のパンチヒットが増えた。

終了前には切詰をロープ際に追い込み怒涛のパンチラッシュ。主導権を奪った吉田のリズムは続き、切詰は我武者羅に打って出ても巻き返し成らず。第4と5ラウンドはジャッジ三者揃って吉田が制し、スプリットデジションながら吉田が判定勝利し王座獲得となった。

吉田凜汰郎と切詰大貴の一進一退の攻防。後半は吉田凜汰郎が主導権支配した

吉田凛汰朗は「他団体にも自分の階級には強いチャンピオン沢山居るので、ブッ倒してIBFの世界絶対獲ります!」と動画配信インタビューには応え、似た回答になってしまうので改めて聞くことは無かったが、前日計量で3年前に睦雅と引分けていることについて尋ねてみました。「前回と全く違う感じで、睦雅選手は技術的に凄くレベルアップしている選手なので、3年前と違う最近の動画見て作戦練って行かねばなりませんね。睦雅選手とは団体のチャンピオン同士で、また3年前の決着戦としても戦いたいですね。」と話していた。

最初のIBFムエタイ日本チャンピオンと成った吉田凜汰郎

◆第8試合 NJKFバンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン初防衛戦.嵐(=坂本嵐/KING/2005.4.26東京都出身/ 53.4kg)
20戦13勝(6KO)5敗2分
            VS
NJKFバンタム級3位.山川敏弘(京都野口/1990.6.14岡山県出身/ 53.4kg)
24戦11勝(7KO)11敗2分
勝者:山川敏弘 / TKO 3ラウンド 1分59秒
主審:多賀谷敏朗

開始早々、嵐の突進しての牽制飛びヒザ蹴りはヒットせずも山川敏弘も冷静に躱す。前日計量時から挑発を続けた嵐は試合では冷静に様子見。山川も落ち着いて様子を見ながらも、初回終了間際は嵐が圧力掛けてパンチで攻め印象点を残す。

第2ラウンドも嵐の圧力がやや優ったがこのラウンドの終了間際のパンチの交錯でゴング後も打った嵐に対し、割って入った多賀谷レフェリーを突き飛ばした嵐。多賀谷レフェリーが嵐を赤コーナーへ押し込んだが、これは両者を分けてラウンドを終わらせる為の正当な行為。嵐には減点1が課せられた。

第3ラウンドに入ると圧力掛けて来たのは山川。蹴りを中心に接近しヒザ蹴りを加える。更に首相撲に持ち込みヒザ蹴りでボディーを突き刺すと蹲るようにノックダウンした嵐。立ち上がり、パンチで打ち合うもボディーが効いているのか、山川の大きなヒットも無いのに再び崩れ落ちた嵐。そのままほぼノーカウントのレフェリーストップとなって山川敏弘が第16代チャンピオンと成った。

首相撲からヒザ蹴り突き刺した山川敏弘の前に崩れ落ちた嵐

山川敏弘は試合後、「今日のタイトルマッチを目標にやって来て、目標クリアしたので次に何をしようかと言うのは今のところ無いんですけど、まあ用意された相手を倒すだけなので防衛戦はしっかり勝ちます。今回は初めて緊張しなかったです。それが逆に不安で大丈夫かなとは思ったんですよ。でも練習どおり動けました。」

嵐の挑発については「そこは狙っていまして、勝手に熱くなってハマってくれてるなと。」と冷静に受け止められたと言う。年齢的にも人生の経験値が活きた山川敏弘はこの日のMVPも獲得した。

嵐を下して新チャンピオンとなった山川敏弘。35歳での戴冠。感謝を述べる

◆第7試合 IBFムエタイ日本ウェルター級王座決定4名トーナメント 3回戦

NJKFウェルター級チャンピオン.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/2006.神奈川県出身/ 66.9→66.8→66.85→66.75→66.65kg)14戦10勝(6KO)3敗1分
          VS
佐藤界聖(聖域スーパーウェルター級Champ/PCK連闘会/2001年宮城県出身/ 66.35kg)
21戦14勝(6KO)6敗1分
勝者:佐藤界聖 / TKO 2ラウンド 36秒
主審:中山宏美

亜維二は減量はキツかったが、リカバリーは万全で初回はパンチと蹴りの攻防で、亜維二が強い蹴りでプレッシャー掛けて攻勢を維持。第2ラウンド開始から間もなく、亜維二が右ストレートを打つと、右腕に何か異変が起きた様子が窺えたが、そのまま続行。

更に接近戦でパンチがやや交錯した後、両者縺れ合って倒れると亜維二が肩を押さえて立ち上がれない様子を見せた。一旦ノックダウン扱いとなったがすぐレフェリーストップとなった。右肩脱臼による負傷。佐藤界聖のTKO勝利となった。亜維二は更に左眉尻をカットしており、打ち合いの中、ヒジ打ちを受けたと見られる。

肩の脱臼で諦めた形の亜維二。残念な敗退だった

◆第6試合 IBFムエタイ日本ウェルター級王座決定4名トーナメント 3回戦

高橋幸光(元・WMC日本スーパーライト級Champ/飯伏プロレス研究所/神奈川県出身36歳/ 66.45kg)75戦44勝(15KO)25敗5分1NC
          VS
井原浩之(IPCCウェルター級Champ/ハーデスワークアウト/広島県出身41歳/ 66.4kg)
61戦28勝31敗2分 
勝者:高橋幸光 / 判定3-0
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:宮沢30-26. 多賀谷30-26. 中山30-26

パンチとローキック中心の攻防は高橋幸光の積極的な攻めでヒットを増し攻勢を維持。井原浩之は慎重な出だしで、やや劣勢な流れも蹴り返して突破口を開こうとするも、高橋の圧力に圧されるまま。高橋は勢い増し、後ろ蹴りも見せた。

第3ラウンドは井原がパンチ中心に攻勢を強めたが高橋は凌いで、終盤にはパンチでタイミング良い連打でノックダウンを奪って終了し、高橋が大差判定勝利を飾った。

高い後ろ蹴りで井原浩之を後退させた高橋幸光。アグレッシブな攻勢を続けた
来年2月8日に王座決定戦で対決する高橋幸光と佐藤界聖

◆第5試合 64.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級1位.健太(=山田健太/E.S.G/1987.6.26群馬県出身/ 63.85kg)
126戦68勝(21KO)50敗8分
          VS
同級3位.佐々木勝海(エス/神奈川県出身27歳/ 63.9kg)14戦10勝(2KO)2敗2分
勝者:佐々木勝海 / 判定0-3
主審:児島真人
副審:宮沢28-29. ランボー27-30. 中山27-30

蹴りの様子見から徐々に距離が詰まるが、先に佐々木勝海の蹴りヒットが目立つ。佐々木は自分の距離を維持し、健太はパンチで距離を詰めても攻勢を導けない。静かな攻防は健太が前に出るもヒットは佐々木の方が多い。攻め切れない両者の攻防は微妙な差だが、ラウンドを支配するポイント的には佐々木勝海が大差と言える判定勝利となった。

ラストファイトとなった健太。佐々木勝海と完全燃焼の戦いを終えた

試合後、その場で健太の引退セレモニーが行われ、二人の愛息と手を繋いでテンカウントゴングを聴き、現役を去った。

親子でテンカウントゴングを聴いた健太

◆第4試合 女子フライ級ノンタイトル3回戦

S-1女子世界フライ級覇者.真美(Team ImmortaL/1990.2.19神奈川県出身/ 50.75kg)
26戦18勝(6KO)8敗
        VS
ジョン・アヨン(韓国出身17歳/ 50.3kg)14戦12勝(4KO)1敗1NC
勝者:ジョン・アヨン / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:宮沢27-30. 児島27-30. 中山27-30

開始からジョン・アヨンの首相撲に捕まる真美。これで主導権支配したジョン・アヨン。蹴っても組み合ってもジョンが圧して来た。セコンドの「首相撲に付き合うな!」の声。若干は真美の蹴りで巻き返しを狙うが、ジョンをたじろがせるには至らない。ラストラウンドも激しく打ち合うもジョンの勢い止められず終了。真美もS-1世界チャンピオンの意地で踏ん張ったがフルマークの大差判定負け。

多彩な技持つジョン・アヨンにリズム狂わされた真美だが、懸命に戦った

◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦

NJKFスーパーバンタム級6位.王清志(新興ムエタイ/神奈川県出身30歳/ 55.15kg)
26戦10勝(3KO)15敗1分
        VS
祖根亮磨(大和/1997.5.8 沖縄県出身/55.0kg)10戦4勝(4KO)5敗1分
勝者:祖根亮磨 / TKO 2ラウンド 1分43秒
主審:児島真人

第2ラウンドに両者打ち合いになった中。祖根亮磨がパンチ軽いヒットながらノックダウンを奪う。立ち上がった王清志だが、続行しかけて足がフラ付くとレフェリーがストップし、祖根亮磨のTKO勝利となった。

◆第2試合 58.8kg契約3回戦

工藤叶雅(VALLELY/埼玉県出身19歳/ 58.25kg)2戦1勝1敗
        VS
陽平(TAKEDA/ 埼玉県出身16歳/58.4kg)2戦1勝1敗
勝者:工藤叶雅 / 三者三様 延長2-1
主審:宮沢誠
副審:多賀谷28-29(9-10). ランボー29-29(10-9). 児島29-28(10-9)

この試合は勝敗決定のCHALLENGERルール。引分けから延長戦を行なって勝利者は工藤叶雅となった。

◆第1試合 フライ級3回戦

トマト・バーテックス(VERTEX/徳島県出身24歳/ 50.45kg)8戦1勝5敗2分
       VS
竹田奏音(TAKEDA/埼玉県出身16歳/ 49.9kg)2戦2勝
勝者:竹田奏音 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:多賀谷27-30. ランボー27-30. 児島27-30

《取材戦記》

亜維二は前回9月28日に続いて計量一回でパスとならず、リミットまで時間が掛かりました。減量がキツくなったのは確かでしょう。でも王座決定戦を制してから転級は考えると言っていましたが、準決勝の今回は肩を脱臼してのTKO負けしてしまいました。これはもしかして減量が影響しているのか。身体から抜け切った水分が正常に戻るまで2~3日掛かると言われます。それは頭部を打たれた際の脳へのダメージが大きいと言われ、脱臼の影響あるかは不明だが、何か気になる負傷でした。その亜維二は打倒・大田拓真が目標という。階級が違うので戦うことは無いだろうが、存在感や実績での団体エース格への挑戦である。

嵐はチャンピオンに成ってからやって来る試練にぶち当たった感じである。前回6月8日も星拓海にボディーを攻められてKO負けを喫しました。国内に多くあるタイトルは一つ獲っただけでは日本チャンピオンとは言えず、ここからがチャンピオンロードの始まり。本当の試練が始まる。まだまだ戦わねばならない、リベンジしたい相手がいる中、今後の再起戦に期待である。

IBFムエタイはWBC同様にプロボクシング主要認定団体のムエタイ部門で、2017年にタイで発祥した世界タイトルです。2019年には波賀宙也が世界ジュニアフェザー級王座獲得しています。今回から始まったIBFムエタイの日本タイトル戦。WBCムエタイとどう使い分けていくのか。負けが込んでいる選手がいきなり挑戦するようなこと無いよう、NJKFを中心に今後どのように権威を上げて行くのか見届けたいところです。

NJKF 2026年のスタートは2月8日に後楽園ホールに於いて開催されます。興行タイトルが「NJKF CHALLENGER.12」となるかは不明ですが、IBFムエタイ日本ウェルター級王座決定戦が確定しています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」