安倍晋三と朴槿恵。この二人には共通点が多い。最大の相似要素は、ご存知のとおり世襲政治家の末裔であることだ。

安倍は農林大臣などを歴任した安倍晋太郎の息子にして、元首相岸信介の孫にあたる。
朴槿恵は元大領領、朴正煕の娘である。軍事独裁政権で民主運動家を散々弾圧したのが朴正煕であった。

両国の歴史上、朴正煕も岸信介も国民から、決して評価の高い最高権力者ではない。しかし残念かつ不幸なことに、両国は「決して評価の高くない」最高権力者よりも、さらに悪質で劣化の激しいその末裔に、再び大統領、首相の地位を与えてしまっている。

◆朴槿恵は自身の能力不足を露骨に口にしながら任期延長を主張

毎日新聞2016年10月26日

朝日新聞2016年10月24日

そして密儀でも交わしたようにこの二人は最高権力者としての任期延長を主張し始めた。

韓国の大統領任期は韓国憲法により、1期5年までで再選は認められていない。朴槿恵は10月24日「1987年に改正された現行憲法について、「韓国政治は大統領選を実施した翌日から再び次期大統領選が始まる政治体制によって、極端な政争と対決構図が日常になってしまった」と指摘。「(任期5年1期という)大統領単任制で政策の連続性が失われ、持続可能な国政課題の推進と結実が難しく、対外的に一貫した外交政策をとることも困難が大きい」と語った。 ※朝日新聞2016年10月24日 

歴代韓国の大統領で、任期半ばにここまで露骨に自身の能力不足を口にした人物は数少ない。

「大統領選を実施した翌日から再び次期大統領選が始まる政治体制」とはよく言い切ったものである。すべての政治活動は権力闘争の一端だ。しかしその中で最も強い権力を手中に収めている人物が、かような発言を行うのは、韓国の憲法が定める規定に問題があるのではなく、朴槿恵自身の政権運営能力が欠如していることを自白しているに過ぎない。

◆来年3月の党大会で党則改正を正式決定する安倍自民

2014年自民党広報

2012年自民党広報

他方、日本の憲法に首相の任期規定はないが、実質的には衆議院議員の投票により選出されるのが首相であるから、現在の議席数を鑑みれば、残念ながら自民党の総裁任期=首相任期ということになる(勿論政権交代の可能性や自民党分裂の可能性がないわけではないが)。現在自民党の総裁任期は党の規定により「2期6年」(1期3年)と定められているが、8月に安倍はそれを「延長したい」と言い始めた。

当初は党内からも異論があった。岸田外相や石破茂らが疑問や異議を唱えていたが、ついに自民党は10月26日、総裁任期について議論する「党・政治制度改革実行本部」の総会を開き、本部長の高村正彦副総裁が示した現行任期の「連続2期6年」を「連続3期9年」に延長する案を了承した。近く総務会にはかり、来年3月の党大会で党則改正を正式決定する、と発表した。 ※毎日新聞2016年10月26日 

◆状況が大きく異なる日韓首脳「任期延長」
──2021年9月まで安倍政権という日本の悪夢

2015年自民党広報

もっとも二人の目指すもの、「任期延長」は同じでも、その足元の状態は大きく異なる。目出度くも日本は大マスコミが政権批判を行わないので、「暴政の牽引車」安倍の支持率が5割以上もあるけれども、朴槿恵の支持率は10月28日現在18%だ。

相次ぐスキャンダル報道により、国民がその実情を知り得るという点で、日本のマスコミは残念ながら韓国の政権批判機能よりも格段に退行している。朴槿恵が浴びせられるスキャンダルやスクープの数に比すれば、安倍に対しての国内報道機関の批判はなんとか弱く、腰が引けていることであろうか。

そして、朴槿恵の思惑は恐らくは成就しないが、安部の模索する自民党総裁の任期延長は実現するだろう。

仮に安倍がこのまま3期目を全うすればその任期は2021年9月までとなる。悪い冗談、いや悪夢はたいがいにしてくれ。

韓国も日本も少子高齢化、経済状態・財政赤字の悪化、資本の寡占化という同様の問題を擁している。経済規模や人口は日本と異なるけれども中国、朝鮮との関係などより深刻な問題に直面する韓国にはそれでも、大きな変化を望む声が日本よりは大きくある。

2016年自民党広報

大学では学生がストライキに立ち上がり、労組が大規模なゼネストを打ったりしている(こういったニュースも日本ではほぼ報じられない。したがって日本にいるとよほど意欲がなければ隣国の実情もマスコミから知ることはできない)。

18%の支持率という死に体大統領と、是が非でも東京オリンピックを首相で迎えたい、改憲主義、好戦主義首相。不幸な時代には頭脳の貧しい指導者が似つかわしいのか。それとも最悪の時代を迎えるにあたって、この二人を最高権力者の座に導いた有権者こそが指弾されるべきなのであろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

元女優の高樹沙耶容疑者が25日、沖縄県石垣市で乾燥大麻を数十グラム所持していたとして、大麻取締法違反の疑いで関東信越厚生局麻薬取締部に現行犯逮捕されたことを、各メディアが大々的に報じ、メディアやネットはもう〝祭り状態〟だ。

 

高樹沙耶『心の楽園に住む』(2004年集英社be文庫)

高樹容疑者と、同罪で逮捕された同居している男2人は、石垣市の高樹容疑者の自宅で大量の乾燥大麻を隠し持っていた疑いも浮上。報道されていない事実として大麻栽培に絡めて高樹は「移住した石垣島でクラブを設営、大麻フリーにしたいという願望があった」と芸能関係者。

「どこかだまされやすい性格の高樹は、アーティストの中西圭三と離婚して、慰謝料をがっぽりもらったとかんちがいされて投資家やプランナーが寄りついて来ましたが、実際の生活はそんなに豊かではありません。金遣いがとにかく荒かった。高樹はバブル時代に湯水のごとく金を使って遊んでいたタイプで高級ブランドの香水や服には目がなかったようです」(同)

高樹容疑者は5年前に石垣島に移住し、リゾート施設を昨年2月にオープン、自宅では男性2人と暮らしていた。そのうちの男性のひとりに、「クラブ計画」をそそのかされたようだ。石垣島で「大型のクラブを作り、観光の目玉にしたい」と地元のツアー会社にも働きかけていたという高樹だが、まったく一枚の企画書も作らずに相手にされなかったとも。

 

高樹沙耶『マイ・ブルー・ヘヴン』(2003年毎日新聞社)

今年の参院選に出馬するも政策が「医療用大麻の合法化」だったが、これは我田引水で、自分たちが大麻を楽しめるきっかけにすぎないと見られても仕方がない。石垣島の住民も「元女優さんということで観光客が住居を見に来たりしていましたが。私たち島の住民までもが大麻をたしなんでいるのではないかと見られるのがとても嫌ですね」(40代男性)と迷惑の声が多数。石垣島に移住した後、高樹は自身のブログで「大麻草検証委員会」の幹事就任を表明し、島に大麻草を植えたことが発覚、一度は石垣島を追われた。

「参議院選挙に落選してから、高樹は奇行が目立つようになり、明け方の4時ごろに道路をビキニ姿でひとりで疾走していた目撃談もあります。逮捕直前は、かなり大麻にのめりこんでいっていたのではないでしょうか」(同) 

しかし、高樹容疑者は「私のものではありません」と容疑を否定しているという。
「裏社会的にみると、脱法ドラッグが軒並み摘発されて、ドラッグ愛好家たちの大麻に対するニーズが高まって、大麻を売ればすぐに現金になったのは確か。もしも仮に販売まで手がけていたとしたら、かなり悪質だ」(警視庁関係者)

このにわか大麻ブームにのり「大麻を楽しめるクラブ」を隠密にオープンしようとしたとしたら、あまりにも浅はかだ。

ネットでは「大麻の島」などと書き込まれている石垣島だが、実際に、島へのツアーをキャンセルする客も増え始めた。

「じょじょにですが、島へのツアーはキャンセルは出てきましたが、まだ打撃が出るレベルではありません」とJTB関係者。

沖縄県観光協会関係者は「今回の高樹容疑者の事件は石垣島のイメージを悪くしたと思う。観光客数に影響が出なければいいが」と嘆く。また「観光客が減ると思うがやはり今回の事件は痛いか」と「石垣市観光文化課」に聞いてみたが「ニュースで見て残念だと思いましたが、起きてしまったことはしかたがありません」(職員)とのことで声色からがっかり感が漂うのは否めない。

かつて女優としての絶頂期だった80年代に「沙耶のいる透視図」「チ・ン・ピ・ラ」などで摩訶不思議な独特の色香に夢中になったファンや、最近では『相棒』の料亭の女将役での雰囲気ある演技が魅力だったが「大麻クラブ」は絵に書いた餅。もしもクラブを男性がもちかけていて高樹がその気になっていたとしたら組んだ「相棒」が悪かったとしか言い様がない。

(伊東北斗)

ボディブローもダメージを与える有効技

T-98(今村卓也)が10月9日、日本人として初の(外国人として2人目の)現地ラジャダムナンスタジアムで防衛を果たす快挙、更なる証しに挑戦です。

◆タイ国ラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級(154LBS)タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.T-98(今村卓也/クロスポイント吉祥寺)
VS
挑戦者.プーム・アンスクンビット(タイ)

勝者:T-98 / TKO 3R / カウント8でレフェリーストップ

一瞬の隙を突いたヒジ打ちは要注意。やはり上手い現地のランカー

一瞬、危なかったプームのハイキック

ダメージを重ねたT-98の右ローキック

開始からT-98が右ローキックで、圧力かけるように前へ出る展開。足効かせて勝利を導く狙いがあるような流れでした。プームは、ヒジ打ちのタイミングやハイキック、組んで転ばす技はやはり上手で、後半にいくほど厄介さを感じさせます。

T-98のローキックは見た目地味にもコツコツ強く蹴り続け、ボディブローもヒットさせ、ひとつひとつの攻防に絶対劣勢に立たない、ダメージを与えられる打撃は何でも出す圧力を続けました。

力尽きたプームは心折れた表情で立てず

プームが組んでヒザ蹴りで出てきてもT-98は応戦し負けない蹴り合い。コツコツ蹴り続けた右ローキックで、3Rに最後の強烈な一発を食らって限界にきたプームはあっけなく崩れ落ちてしまい、キツさを表情に出してギブアップ状態。レフェリーはカウント途中で止め、T-98のTKO勝利。

T-98は感じていたプレッシャーから開放されたように喜び飛び跳ね、応援に来ていたリングサイドのファンに手を振っていました。

プレッシャーから開放された喜びのT-98

T-98は6月1日に後楽園ホールに於いて、REEBLS興行でのラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級級王座挑戦し、チャンピオン.ナーヴィー・イーグルムエタイ(タイ)に判定勝ちし王座を獲得。日本人5人目となるラジャダムナンスタジアムのチャンピオンとなりました。

今回の防衛戦は前チャンピオンのナーヴィーとのダイレクトマッチが予定されていましたが、直前にプーム・アンスクンビットに変更となりました。

これでT-98は現役ラジャダムナン・スーパーウェルター級チャンピオンとして12月5日の「KNOCK OUT興行」に出場し、長島自演乙雄一郎と対戦することになります。

取材戦記

二大殿堂のラジャダムナンスタジアムに対するルンピニースタジアムでは、過去にムラッド・サリとダミアン・アラモスのフランス人選手2人がスーパーライト級で王座に就いています。

ラジャダムナン王座にタイ人以外の外国人が就いたのは過去、藤原敏男(ライト級)、小笠原仁(スーパーウェルター級)、武田幸三(ウェルター級)、石井宏樹(スーパーライト級)、ジョイシー・イングラムジム(ウェルター級)とT-98で6人目。現地ラジャダムナンスタジアムで防衛に成功したのは、ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)に次ぐ2人目でした。ジョイシーが2度目の防衛を果たした時の相手がナーヴィー・イーグルムエタイで、ジョイシーが王座返上後にナーヴィーが王座決定戦で奪取していました。

ムエタイ二大殿堂王座は、その王座を奪取すれば、その階級で頂点に就いたと証しとなりますが、真のチャンピオンに達したと認められるには、賭け屋(ギャンブラー)と言われる観衆の大声援による支持が証しとされます。

現地で日本人チャンピオンの手が挙げられる

現地での堂々の防衛で勝者コールを受ける

タイは民族的に身体が小柄で、ボクシング、ムエタイにおいても軽量級が激戦区で、線引きするなら60kgに満たないクラス(スーパーフェザー級)までを指されます。そこで頂点を極めるのは至難の業で、日本人挑戦者も過去7人が挑戦していずれも撥ね返されており、センスや実力があっても獲れなければ無名のまま。その中には梅野源治も江幡ツインズもいます。

60kgを超えると中・重量級であるが故、層が薄いと言われるムエタイ王座ですが、そんな重量級の選手にとって、王座奪取してもより付加価値を付けなければ世間に認めてもらえない厳しさがあります。

T-98がまず目指したのは、「現地で防衛してこそ本物のチャンピオン」と言われる称号で、その第一歩に成功。更には今後、賭け屋の支持を多く受けなければならない難度な道程です。

過去の外国人ラジャダムナンチャンピオン全6人の内、藤原敏男氏は唯一、タイのトップクラスとの現地での激しい試合が賭け屋の支持を多く受けたチャンピオンでした。1977年4月、現地でノンタイトル戦ながら現役チャンピオンに判定勝ちする快挙を果たした後、王座奪取は1978年3月18日の後楽園ホールでしたが、初防衛戦は期間が3ヶ月弱での6月7日、現地ラジャダムナンスタジアム。短い期間で初防衛戦を迎え大声援の中、接戦の判定負けを喫しました。「藤原は勝っていた」という賭け屋の支持も多く、防衛は成りませんでしたが、藤原氏の名声は今も語り継がれるほど、現地のファンも当時のランカーもレフェリーも記憶に残る名選手でした。

藤原敏男氏の知名度には及ばないですが、これに次ぐ実績を残したのが、ブラジルのショイシー・イングラムジム(ジョス・ロドリゲス・メンドーサ)。彼は2013年7月、ラジャダムナン・ウェルター級王座を現地で奪取し、2014年9月、日本で田中秀弥(RIKIX)の挑戦を退け初防衛し、2015年6月、2度目の防衛戦で再び現地でナーヴィー相手に防衛を果たす、現地で獲って現地で防衛する実績を残ました。いずれも技術と駆け引きで優って勝つのは難しいと言われる判定勝ちでした。ノンタイトル戦で緑川創(藤本)も下している、日本でも名を知らしめた選手です。

T-98に懸かる期待は藤原氏とジョイシーの二人を超えること。対戦候補となるジョイシーは現役のトップクラスでいます。前チャンピオン. ナーヴィー・イーグルムエタイも現地での再戦を待っているでしょう。更に日本人同士のラジャダムナンタイトルマッチも計画されているという、日本を含め、外国にも強豪はまだいる重量級です。

チャンピオンベルトという物的証しの上に、一人一人のファンが集まって大群集となるファンの支持力が真のチャンピオンの証しとなり、そこではノンタイトル戦であっても大群衆は注目します。T-98は重量級であっても自身の名声を高める戦いは今後も続き、層が薄いと言われている現状でも、好カードで現地防衛を重ねることが一番価値を残すでしょう。

控室側にある撮影ブースで、応援の旅に付いて来てくれた仲間と記念撮影

《追記》

8月31日(水)、現地でのラジャダムナンスタジアム・ミドル級タイトルマッチで、チャンピオンのコムペットレック・ルークプラバートを4R、ボディブローで倒し、TKO勝利したユセフ・ボーネン(フランス)が、ラジャダムナンスタジアムの外国人7人目のチャンピオンとなっています。

また10月23日(日)、ディファ有明でのREBELS興行で行なわれた、ラジャダムナンスタジアム・ライト級タイトルマッチで、チャンピオンのヨードレックペット・オー・ピティサックを、判定3-0で破った梅野源治(PHOENIX)が、ラジャダムナンスタジアムの外国人8人目のチャンピオンとなっています。

[現地撮影]Mr.Pornchai Udomsomporn (weekly MUAY TU)
[文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

1992年2月に福岡県飯塚市で小1の女児2人が殺害された「飯塚事件」で、一貫して無実を訴えていた死刑囚の久間三千年氏(享年70)に対する死刑が執行されてこの10月28日で8年。足利事件と同じく科警研による黎明期の稚拙なDNA型鑑定が有罪の決め手とされていたことなどから「冤罪処刑」を疑う声が根強く、福岡高裁で現在進行中の再審請求即時抗告審の行方は予断を許さない。久間氏の死刑執行に関与した「責任者」たちはこの事件に関し、どのように考えているのか――。

◆情報公開請求により死刑執行責任者たちを特定

死刑は、法務大臣の命令により執行されるが、執行手続きには他にも多くの者が関わっている。そこで、法務省と福岡矯正管区に対して情報公開請求したところ、責任ある立場で久間氏の死刑執行に関与した者たちが多数特定できた。執行手続きの流れに沿い、紹介しよう。

死刑判決が確定すると、まず「執行の指揮をすべき検察官の属する検察庁の長」が法務大臣に対し、死刑執行に関する上申をする決まりだ。久間氏の場合は上告棄却の約5カ月後の2007年2月7日、福岡高検の佐渡賢一検事長が長勢甚遠法務大臣に対し、死刑執行命令を求める「上申書」を提出している。法務省では、この上申があると、刑事局で参事官や局付検事が裁判の記録などを検証し、死刑執行に問題がないという結論に至れば、死刑執行に必要な文書を起案するのである。

では、久間氏の死刑が執行された際、法務省では具体的にどんな決裁がなされたのか。

まず、上申から1年8カ月余り経った2008年10月24日、刑事局総務課名義で「死刑執行について」と題する文書が起案され、同日中に決裁されていた。開示された文書は久間氏の姓名や生年月日、裁判で認定された犯罪事実以外の部分がほとんど黒塗りされていたが、表紙にはこの文書を決裁した法務省幹部6人(尾﨑道明矯正局長、大塲亮太郎矯正局総務課長、富山聡矯正局成人矯正課長、坂井文雄保護局長、柿澤正夫保護局総務課長、大矢裕保護局総務課恩赦管理官)の押印が確認できた。

また、同じ日に「死刑事件審査結果(執行相当)」という文書が作成され、森英介法務大臣と佐藤剛男(たつお)法務副大臣の2人がサインし、法務省幹部5人(小津博司事務次官、稲田伸夫官房長、中川清明秘書課長、大野恒太郎刑事局長、甲斐行夫刑事局総務課長)が押印していたこともわかった。つまり、判明した限りでも森法務大臣と佐藤法務副大臣に加え、計11人の法務省幹部が久間氏に対する死刑執行が相当だという決裁をしたわけである。

◆1日の間に慌ただしく進められた死刑執行手続き

久間氏に対する死刑執行が相当だという決裁がなされると、同日中に早くも死刑執行命令書が作成されていた。それは次のような内容だった。

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福岡高等検察庁検事長 栃木庄太郎

平成19年2月7日上申に係る久間3千年に対する死刑執行の件は、裁判言渡しのとおり執行せよ。

平成20年10月24日 法務大臣 森英介

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法務省が開示した文書によると、福岡高検の栃木庄太郎検事長はこの死刑執行命令書を作成当日に受領したとされているが、これにはさすがに違和感がある。1日のうちに起案から決裁をすべて済ませ、死刑執行命令書を作成し、さらにそれを法務省がある東京・霞が関から福岡まで運ぶのは時間的に無理だと思えるからだ。法務省の担当者たちは、各文書に記載された決裁の日付よりずいぶん前に実質的な決裁を済ませていたことは間違いない。

しかしともかく刑事訴訟法では、法務大臣の命令があったときから5日以内に死刑は執行されなければならないと定められている。関係文書によると、久間氏の場合も3日後の10月27日、福岡高検の担当検察官により「死刑執行指揮書」が作成され、翌28日に福岡拘置所で死刑が執行されている。こうして久間氏は再審請求を準備していた中、絞首刑に処され、生命を奪われたのだ。

今も現職の衆議院議員として活動する森英介氏の事務所のHP

◆死刑執行の責任者たちに取材を申し入れた

私は、執行手続きに関与した責任者たちのうち、とくに責任が重い立場にあった3人に取材を申し入れた。

まず、森英介氏。2008年9月に法務大臣に就任し、その翌月に早くも久間氏に対する死刑執行命令を発した森氏は、現在も現職の衆議院議員だ。私は森氏に対し、電話とファックスで取材を申し入れたが、担当秘書から次のような回答があった。

「森に確認したところ、とくにお答えすることがないと申しております」

公式ホームページによると、森氏の座右の銘は「人生の最も苦しい、いやな、辛い損な場面を真っ先に微笑をもって担当せよ」とのことだが、森氏の態度はこれに反するように思えた。

一方、死刑執行を相当だと決裁した11人の法務省の幹部の中からは2人に取材を申し入れた。

トヨタのHPに監査役として紹介されている小津博司氏

まず、法務省の事務方ではトップの事務次官だった小津博司氏。1974年に検事任官し、最終的に法務・検察の最高位である検事総長に上り詰めたエリートだ。退官後は弁護士に転じ、現在はトヨタ自動車や三井物産の監査役を務めている。私が昨年6月、この小津氏に手紙で取材を申し入れたところ、次のような返事の手紙が届いた。

〈6月16日付のお手紙拝受いたしました。小生に対する取材のお申し込みですが、退官後、このような取材は全くお受けしておりません。この度のお申し出もお受けすることはできませんので、悪しからずご了解いただき、今後の連絡もお控えいただきますよう、お願いいたします。用件のみにて失礼いたします。〉

言葉は丁寧だが、強い拒絶の意思が感じ取れる文章だ。

法務省のHPで検事を志す若者にメッセージを送った大野恒太郎氏

当時の法務省幹部の中から取材対象者に選んだもう1人は、死刑執行に必要な文書を起案した刑事局の局長だった大野恒太郎氏。小津氏の退官後に検事総長を務め、今年の9月に勇退。執筆時点で勇退後の進路は不明だが、天下りするなら「選び放題」なのは間違いない。

私が大野氏に手紙で取材を申し入れたのは、大野氏がまだ検事総長の地位にあった昨年6月のこと。ほどなくして最高検企画調査課の検察事務官から電話で次のような返事があった。

「今回の取材申し入れに関しては、大変恐縮なんですが、お断りさせて頂きたいということです」

私はこの検察事務官に対し、大野氏がいかなる理由で取材を断るのか尋ねたが、「とくに賜っておりません」とのこと。取材を断られたのは予想通りだが、大野氏はもちろん、周辺の検察職員たちも飯塚事件関係の話題にはナーバスになっている雰囲気が窺えた。

このように久間氏の死刑執行に責任ある立場で関与した者たちから木で鼻をくくったような対応で取材を拒否され、私は改めて思った。奪われた生命は取り戻せないが、一日も早く久間氏の雪冤、名誉回復が果たされて欲しい、と――。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

<追記>
久間氏の死刑執行に関与しながら、私の取材に応じた検察幹部も実は2人いるのだが、その詳細は、2月に発売された私の編著「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(鹿砦社)で報告している。また、同書では、本稿で紹介したものをはじめ、久間氏に対する死刑執行の過程で作成された文書を多数公開している。

ジャニーズの「Hey!Say!JUMP」の伊野尾慧が今年の1月に人気セクシー女優の明日花とシンガポールの高級ホテルで密会デートしていたのが週刊誌にスクープされ、伊野尾ファンから「伊野尾が明日花に振り回されているのではないか」と心配の声があがっている。

 

Hey! Say! JUMP OTAKARA写真館(ジャニーズ研究会)

なぜか。明日花は07年にデビューしたベテランセクシー女優で、主演作が100本以上ながらいまだに売り上げでトップ10に名前を連ねる人気ぶり。ダルビッシュとの14年に温泉デートが報じられたことで知られる。大物喰いの肉食女優と知られる明日花がまた「釣り上げたか」と業界からの声。

「明日花は感情に起伏が激しくて、インタビューや撮影ではノリノリなときと、ふさぎこんでまったくしゃべらないタイミングとの落差が激しい。酔っ払って撮影場に来て『今日ははりっていこう!』とスタッフを激励した直後、楽屋からでてこなくなったりと、ものすごく感情のブレが激しい」(AVライター)

ネットでも「キララって誰? と思って調べたら絶望した」「ダルビッシュのお古じゃん」などと書き込みがあいついでいる。
 
「奇行も重なれば一種の武勇伝みたいになる。撮影中に唐突に『(気分がのらないから)と帰ったのも、絶頂期に『海外でロケしたい』と言って膨大な旅行予算が組まれたが『気が変わった』として国内ロケに切り替えたりしたのも、こうなると奇行すらも『大物のレジェンド』という気がしてきたとスタッフたちが話をしていました」(同)

とにかく酒豪で、酔っての奇行は数知れず。酔ってくるとシャンパンやワインをらっぱ飲み。同時に酔うとすごいセックスをするというので、スタッフたちも「酒臭い現場入りを容認していた」とも。どうせなら、酔ってどうなるかをドキュメントで追った作品が残っているほど。

「明日花は『明日花キララが人生で一番酔っぱらって乱れた夜』という作品で『酔っ払うとどんだけでも食べれるよね。帰りにラーメン屋行こうか』などと言いつつシャンパンやワインをラッパのみした上で、自ら脱ぎ出して下着姿に。やがて監督に「え、私とやりたいんですか」「(私と)やる?」と誘惑。監督が男優を朝の4時に呼ぶと、ものすごい激しい腰使いの騎乗位で男優に襲いかかるのです。このときはイベント終わりのだまし撮影で、ガチで素顔の明日花の“乱れた普段顔”が見れたのだが、本当に酒が入るとセックスをせがむ体質なのが露呈された」(同)

酔った勢いで迫られ、明日花の凄腕テクで伊野尾が「完落ち」したのかは不明だが、かなり男を「狂わせる」セクシーさとテクをもった明日花。シンガポールでのいちゃつきが報道された直後、ジャニーズ事務所では、メリー喜多川副社長が「あんたはもう、仕事場と家を往復するだけにしなさい」と伊野尾に激怒したとされる。

「どちらにせよ、この件については『触れるべからず』みたいな雰囲気がある。結局、伊野尾の“一晩だけの火遊び”の代償は高くつき、ジャニーズ事務所が明日花サイドに口止めしたとみるのが妥当でしょう」(芸能関係者)

確かに、ジャニーズ事務所は交際を否定し、明日花キララは9月27日にツイッターで「誌面にも出ている通りお相手の男性とはお話ししていただけで、交際の事実も一切ないです」としたが、何かの圧力からか、後にコメントが削除された。

有吉弘行と夏目三久が交際、妊娠の報道も業界の圧力でいつしか世間から「なかったこと」にされつつあるが、それなりに圧力がかかった明日花と伊野尾の逢瀬の裏には、セクシー女優の肉欲に落ちた男性アイドルという構図が透けて見える。

(伊東北斗)

島根県立大学1年生の平岡都さん(当時19)が2009年10月26日、アルバイト先から帰宅途中に行方不明になり、バラバラ遺体で見つかった事件から7年が過ぎた。社会を震撼させた事件は今も未解決だが、犯人は一体どんな人物なのか。現場を訪ね、事件の真相に思いを馳せた。

◆「犯人は土地勘あり」と示す遺体遺棄現場

平岡さんの遺体が見つかったのは広島県北広島町の臥龍山の山中だった。平岡さんが行方不明になって10日後の11月6日、キノコ狩りに来ていた男性が崖下で人間の頭部を発見し、警察に通報。警察の捜査で周辺から胴体、左足の一部などバラバラになった遺体が見つかり、DNA型鑑定で平岡さんの遺体と特定された。このように遺体の発見状況が凄惨だったため、この事件は猟奇的な性癖を持つ人物による犯行ではないかと報道され、社会を震撼させたのだ。

私が現地を訪ね、まず最初に感じたのは、犯人は遺体遺棄現場に土地勘があった可能性が高いのではないかということだ。というのも、平岡さんが生前最後に目撃されたアルバイト先のショッピングセンター「ゆめタウン浜田」から臥龍山の遺体遺棄現場までは最短ルートを通っても40キロ以上ある。しかも国道191号から臥龍山の登山道に入る地点には道案内の標識が出ているが、遺体遺棄現場までたどり着くにはクネクネした登山道をけっこう登らねばならない。平岡さんが殺害された時間や場所は不明だが、土地勘のない人物が訪ねそうな場所には到底思えなかったのだ。

臥龍山の車が走れる道の最も高い場所にある転回場。この周辺の崖下で遺体が見つかった

◆遺体がバラバラゆえに猟奇的事件と報道されたが・・・

私がもう1つ疑問に感じたのは、この事件が本当に猟奇的な事件なのか、ということだ。というのも、バラバラになった遺体が見つかった臥龍山の現場は草木が生い茂り、いかにも多くの野生動物が生息していそうな雰囲気だった。要するに、遺体をバラバラにしたのは犯人ではなく、野生動物の可能性もあるのではないかと思えたのである。

私は過去、この事件と同じように山中に若い女性の遺体が遺棄された殺人事件を取材したことがあるが、その事件で女性の遺体はそのままの状態で遺棄されたにも関わらず、短期間で頭部と胴体が分断され、バラバラの状態で発見されていた。マスコミは殺人事件をセンセーショナルに報道したがるが、遺体の悲惨な状況だけを根拠にこの事件を猟奇的な人物による犯行だと決めつけると、社会をミスリードする危険もあるように思えた。

この事件は警察庁の捜査特別報奨金制度の対象事件となっており、警察に提供した情報が事件解決につながれば、最大で300万円の支払いを受けられる。気になる情報を持ちながら、「猟奇的な殺人事件」と関係ない情報に思えて警察に通報できないでいる人がいれば、臆せずに警察に情報提供してみるべきだろう。

遺体遺棄現場近くの転回場には、警察が情報を求める看板

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「SMAP」解散の報を受けて、タレントたちがさまざなな感想を寄せている。

 

SMAPアーカイブス コンサート編(ジャニーズ研究会)

「大物がその話題に触れると大きくメディアに扱われるが、松本人志が『ワイドナショー』(フジテレビ)で、『まあ〈世界で一つだけの花〉になぞらえるわけではないけど、ドライフラワーや押し花になるよりもいっそ散ったほうがいいというのは理解できる』と解散に一定の理解を示した後、中居と連絡を取り『できることがあったら何でもするよ』と告げたのを明かしたのは、さまざまな裏読みと憶測を呼んでいます」(芸能関係者)

その「裏読み」とは、「さんざんぱら〝メンバーどうしがギクシャクしていて雰囲気が悪く、いまや観客を入れることもできなくなり、出演したくない人が増えている……〟と囁かれている『SMAP×SMAP』の最後の回(12月26日放映)で、SMAPがゲストに料理をふるまう『BISTRO SMAP』のコーナーゲストについて。これに松本人志が出演する可能性がこの擁護発言ででてきた…」というフジテレビ関係者の指摘だ。

実は同番組は関西テレビとフジテレビの共同制作。吉本興業に近いがジャニーズ事務所との〝微妙な距離感や空気〟をつかんでいない関西テレビと、ジャニーズ事務所に気を遣いすぎるフジテレビでの意見の食い違いも見られる。

「要は、関西テレビとしては松本を推薦したいが、フジテレビが難色を示しているというわけです。松本が仮に中居に気を遣って、『SMAP』の元マネージャーの飯島三智氏を擁護でもしようものなら、フジテレビは大打撃を喰らう。まあまずそんな放送事故みたいなことはないと思いますが、松本の発言はほかの二流タレントとはちがい、簡単に編集できない。気を病むところでしょう」(放送作家)という見方もある。

長く続いてきた「国民的人気番組」の幕引きをはかるには、松本がうってつけだが、「炎上発言」の危険も避けられないというわけだ。

「じつは、2014年3月で終了した『森田一義アワー笑っていいとも!』(フジテレビ)の『テレフォンショッキング』の最後のゲストは北野武で〝大団円〟を迎えました。『笑っていいとも!』は32年続いた〝お化け番組〟で、最後のゲストは明石家さんまか北野武かスタッフが悩む程度(さんまは、特別番組『笑っていいとも! グランドフィナーレ』で北野武の紹介を受けて『テレフォンショッキング』の〝おまけ〟ゲストとして登場)キャスティングは苦しみませんでした。だが、『SMAP×SMAP』も96年から21年続いており、やっているグループがこれが最後のメンバーでの出演となるかと思うとそうそう簡単にキャスティングできないし、ゲストが重い雰囲気に耐えられる胆力も備えていなければならないのでスタッフは頭を悩ませているようです」(関西テレビ関係者)

最終回のゲスト候補として明石家さんまや「爆笑問題」の太田光もあがったが、スケジュールが合わないようだ。

「どちらにして明石家さんまは毎年、正月に放映される定番の『さんタク』で木村拓哉と昵懇でこのところ木村よりの発言が目立ち、ほかのメンバーのことを思うとフェアではない。太田は、解散のときにラジオで『ある意味このことはジャニーズ事務所の恥ずかしい部分として記録されちゃうんじゃないかなっていう気はする。もちろんジャニーさんなんかは一生懸命やったんだろうけどさ、フォローしきれなかったっていう罪は大きいかなと思う』とだいたんにもジャニーズ事務所批判発言を展開、ネットを炎上させた〝前科〟があり危険だ。北野武はいまひとつ『SMAP』と交流がないので案にもあがらない。消去法的に松本に落ち着くのだろうな」《同》

吉本興業に「松本人志が最後の『SMAP×SMAP』のゲストだという話が出ているが」と聞いてみたが「すみませんがお答えできせん」とのこと。

フジテレビに『SMAP×SMAP』の最後のゲストは決まったかどうか問い合わせると「まだ調整中です」(番組広報)という答えが返ってきた。

「そもそも、あのメンバーどうしがお互いに視線を合わせないというギクシャクとした関係で 『BISTRO SMAP』自体が成り立つかどうか。ゲストのキャスティングに苦しむく らいなら、コーナー自体をやめて過去の映像を流して時間を稼ぐ可能性もある」(同)

「いっそのこと、ジャニーズ事務所の利となるが〝KinKi Kids〟でいいんじゃないの? だってあと番組は彼等がやるので〝バトンタッチ〟という意味あいもできるし、フジテレビとしてはつぎに繋がるじゃないですか」(芸能プロダクション関係者)という声も。それでも、この8月29日のゲストで呼ばれた平井堅や金メダリストの柔道男子90キロ級のベイカー茉秋が「出演できて幸せ」と周囲に自慢しているように、国民的長寿人気番組であるのはまちがいない。腐っても鯛、なのだ。はたして『SMAP×SMAP』の最終回で、中居が叫ぶ「オーダー」の声を聞くゲストはだれなのか。注目したい。

(伊東北斗)

電通のイメージ悪化が止まらない。9月末の不正請求事件から新入社員自殺の労災認定、そして労働局による全社一斉強制調査がほぼ一週間おきに発生し、日頃電通に関する報道を極力控えるメディアも、さすがに手の施しようもなく報じている。

NHK2016年10月20日

◆「電通タブー」の呪縛が解けて本格追及の兆し?

テレビメディアは基本的には第一報しか報じていないが、ここに来て雑誌メディアは週刊文春、AERA、フライデー、週刊朝日が記事を掲載した。また、ネットでは特に新入社員自殺事件が猛烈な勢いで拡散している。10月18日には、昨年8月に三田労基署が電通に対し是正勧告を出していたこと、さらに20日には、3年前にも男性社員が死亡して労災認定されていたとNHKが報じ、いよいよメディアも長年の呪縛が解けて本格追及に乗り出して来た感がある。

東京新聞2016年10月21日

東京新聞2016年10月21日

◆電通社長の公式謝罪なき社内緊急メール

そんな中、10月17日に電通は残業時間の上限を70時間から65時間へと引き下げ、24日からは社員の退社を促すため、22時に全館消灯すると発表した。また、石井社長が全社員に対しメールで緊急メッセージを発していたことも明らかになった。「社の経営の一翼を担う責務を負っている者として慚愧(ざんき)に堪えない」とし、「今私たちには具体的な行動を起こすことが求められている」などと記していたという。

これらの動きの中で私が非常に不自然に感じるのが、亡くなった高橋まつりさんの遺族に対し、いまだに電通が正式な謝罪を発表していないことだ。各メディアの取材に対し、「ご遺族との間で協議を継続中ですので、個別のご質問についてはお答えいたしかねます」と広報部は判を押したような返答しているが、死亡から既に1年近くも経っているのに、一体何をいまだに「協議」しているというのか。そもそも多くの場合、労災認定されても遺族は記者会見など開かない。電通に対する不信感、または対立点があるからこそ、遺族は批判や嘲笑覚悟で記者会見したのだ。

産経新聞2016年10月22日

産経新聞2016年10月22日

◆12月25日夜、社内で飲み会の予定あり?

では一体、何を揉めているのか。どのメディアも報じていないが、実は今回の件で、電通に初動対応のまずさがあったという。高橋さんに近しい方の情報では、当初電通は高橋さんの自殺は過労ではなく、恋愛問題のこじれが原因だとの社内調査結果をまとめ、今もその見方を崩していないというのだ。そのため、通常は亡くなった社員遺族に支払っている見舞金も出さなかったのだという。つまり電通はあくまで過労死を認めなかったため遺族と強く対立し、納得できない遺族側は弁護士を立て、独自調査結果も踏まえて労災認定を申請したのだ。

高橋さんの労災が異例の早さで認められた背景には、彼女が遺したツイートが大きな役割を果たしたと思われる。そこには過酷な残業によって消耗し、精神的に追い込まれていく様子がはっきりと見て取れる。そのような中に、確かに恋愛相手について書かれていると思われるものもいくつかある。電通側としては、それらのツイートや社内情報を根拠にして過労死を否定しているのだろう。さらに、自殺がクリスマスの日であったことも、恋愛のもつれの理由にしていたらしい。

しかし、恋愛を伺わせるツイートは、残業の多さ、仕事の過酷さを嘆くツイートに対し、実に僅かしかない。また、12月25日夜には社内での飲み会が予定されていたという情報もある。今の時代に、クリスマスの夜に新入社員を強制参加させて宴会を行う企業があるというのも実に驚愕するが、そうした会の司会進行や宴会芸を立案するのも新入社員の役目であり、高橋さんはそういう社内宴会を嫌っていたという。積もりつもった精神的・肉体的疲労と苦悩が、強制的な出席を求められる場から逃れるために爆発してしまった、と考える方が自然ではないだろうか。

結果的に、当初電通は高橋さんの自死を過労によるものとは認めず、遺族と揉めたことによって労災申請され認定されてしまい、しかもその過酷な労働実態が主にネットを介して非常な勢いで拡散、遂に労働局の強制調査まで招いたのだから、初動が完全に誤っていたとしかいいようがない事態に陥っている。

◆「コンプライアンスの徹底」を説く資格があるか?

電通は多くの企業広報に対し、「企業コンプライアンス徹底の仕方」や「事故や事件などの危機に際しての広報戦略」をパッケージにして売り込んでいる。その中では、危機に瀕した企業広報で最も大切なのはきちんと情報を開示すること、そして責任が明確な場合は責任者(社長)が一刻も早く謙虚な態度で謝罪することが何より重要、と教えているはずだ。それなのに、自社社員の自殺と労働局の強制調査に対し電通はいまだに謝罪会見も開かず、HPなどにも公式発表もしていない。これだけ社会で問題になっているのに、説明責任すら果たしていないのだ。得意先には「情報開示の徹底、すみやかな謝罪」が何より大切だといっておきながら、自社は全くその逆の姿勢を示している。これだけ社会問題化して電通のブランドイメージがズタズタになっても、なおも自分たちだけは特別だと思っているのなら、もはやコミュニケーションを語る資格など全くないと言うべきだろう。


◎[参考動画]「電通」過労死・・・過去にも 本社勤務の30歳男性(ANNnewsCH16/10/21)

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

TBSで来年の1月からスタート予定、日曜夜9時枠の木村拓哉主演の医療ドラマ『Get Ready!!(仮題)』は、いまだにヒロイン選びが難航しているという。一説には木村側から要望が出ていた綾瀬はるか、満島ひかりといった人気女優からは難色を示されているともいわれる。当然ながらSMAP解散騒動の影響と見られる。

 

SMAPアーカイブス イベント編(ジャニーズ研究会)

「もともとキムタク主演ドラマは、SMAPのマネージャーだった飯島三智さんによる要求が山ほど出るもので、それに合わせなきゃいけない“厄介モノ”だったんですが、視聴率が高かったときにはみんな我慢して出ていた。でも、いまやキムタクはSMAP内の裏切り者みたいに言われて人気も低下、喜んで受けたい人気女優は少なくなって当然でしょう」(テレビ関係者)

ある情報によると、共演相手探しは、国外にも目が向けられ、木村がPRキャラクターをつとめている縁で、台湾の人気女優もリストアップされているという話だ。聞けば、2010年のドラマ『月の恋人』で共演したリン・チーリンの所属事務所ほか、複数の芸能プロを通じての話があるそうだが、台湾女優起用だとストーリーの大幅修正も必要になるので、ドラマ制作サイドはあまり乗り気ではないともいわれる。

「飯島さんがいなくなっているのに、木村側がストーリーにいちゃもんをつけるのは変わっていないようだとも聞きます。木村演じるドクターが病院を汚れた問題を粛清していくプロットや、自閉症だが天才医という変わり種の医者の物語もプロットがあがりましたが、どれも木村サイドが蹴ったようです。ドラマのタイトルが『ドクター×ドクター』とか『その男、医師・平幸太郎』とか変化したのも木村側の都合と聞きます」(同)

情報筋によると、木村は典型的な正義感の強い医師という役柄には難色を示し、93年に織田裕二がワル医者ぶりを演じた『振り返れば奴がいる』(フジテレビ)を参考にした話をしているという。

「その話が事実なら、これまでの『キレイごとばかり言うキャラ』を脱したいということかもしれないですね。やたらと優等生ぶっているところが嫌われている感じもありますからね。ただ、腹黒い役をやっても、それはそれでSMAP解散騒動に重ねて見られそう。いずれにせよ相手役がハッキリしないことには進みにくい話だとは思います。最悪、AKB48のメンバーとか無名の新人女優を起用なんてこともありえるかも」

このあたりTBSに質問してみたが、「まだ番組内容は発表しておりません」という回答でしかなかった。

現在、医学関係者がドラマのネタ出しのために集まって脚本を練っているが、もしかして医者にかかりたいのは、スタッフ一同かもしれない。

(伊東北斗)

12月5日開催のキックボクシング新イベント「KNOCK OUT」の対戦カードの2試合追加が9月30日の記者会見で発表されました。

リング上に描かれたKNOCK OUTロゴマーク

◆契約ウェイト未定5回戦

宮本啓介(橋本) vs 工藤政英(新宿レフティー)

森井洋介(ゴールデングローブ) vs ヨードワンディー・ニッティサムイ(タイ)

◆9月14日に発表された契約ウェイト未定5回戦2試合

T-98(今村卓也/クロスポイント吉祥寺) vs 長島☆自演乙☆雄一郎

大月晴明 vs スターボーイ・クワイトーンジム(タイ)

初回興行出場の4名、左からT-98、梅野源治、森井洋介、長島☆自演乙☆雄一郎

メインイベント出場予定の梅野源治選手については、10月23日(日)のREBELS興行に於いて行なわれるタイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦試合の結果を以って発表予定です。

RIKIX代表、小野寺力氏

キックスロード社長、花澤勇佑氏

メインイベント出場の大役を担う梅野源治選手

司会進行とテレビ実況担当の村田晴郎氏

ヨードワンディー・ニッティサムイ選手は6月25日、ローキックで梅野源治選手を苦しめた選手で、スターボーイ・クワイトーンジム選手は3月12日に、梅野源治選手からヒジ打ちでダウンを奪い、それぞれのNO KICK NO LIFE興行で引分けた選手で、梅野源治との絡みで実力が測れるのも、ファンが興味を持ち易い理想的な傾向でしょう。

ヒジ打ち有りルールの試合で今後、地上波テレビで放送されることに、「これで地上波に乗るのかな」という不安もあるという声があり、一般視聴者から見れば今迄と違った(ヒジ打ちの無い競技を見慣れている感覚)危険な見方をされる懸念について、小野寺力氏は「大流血になってもドクターとレフェリーが判断して試合が止められることや、UFCでもヒジ打ちの出血でも全然止めないですし、プロボクシングにおいてもパンチで顔面が切れることがあるので、そこまで心配する事案ではなく、格闘技としてある程度の出血は仕方ないところと思います。」といった回答をされました。

梅野選手も、「ヒジ有りがメジャーになり難いという懸念と、今後大きい舞台でのヒジ有り試合を驚く人もいましたが、ムエタイはヒジ打ち有りだから面白いと言う人も多く、僕もヒジ有りのムエタイの面白さというのは、どうにかして伝えたいなというのは以前から思っていたので、今回KNOCK OUTが始まるということで凄いチャンスと思うので、とにかく自分が激しい試合をしてムエタイの面白さを伝えられたらなと思います。」という内容の回答。

そしてまず梅野選手の、10月23日のラジャダムナン王座挑戦に関して「トレーナーや仲間たちがサポートしてくれて、目標にしていたラジャダムナンタイトルに挑むことができるので、10月23日はしっかり結果を残して、チャンピオンベルト巻いて12月5日に『ムエタイは本当に凄いんだぞ』という試合をしたいと思います。第1回大会ということでメインイベントを務めさせて頂けるということで、みんなの期待に応えられるような激しい試合をしてKNOCK OUTの名前どおり、ノックアウトでキッチリメインの大役を果たしたいと思います。」と抱負を語りました。

宮本啓介 vs 工藤政英戦は、8月のREBELS興行に於いての3回戦で、持ち味を出し切った引分けで、小野寺氏がその場で、両方のジムとプロモーターに交渉して、すぐ決定に至った経緯がありました。この辺は正に若い世代のジム・プロモーターの交渉で弊害が無く、纏まりが早いところです。

森井洋介選手も9月14日の発表会見試合で高橋一眞(真門)を豪快にKOして、初回興行出場を希望し、願い叶って強いタイ人のヨードワンディーと対戦が決定。

また会見に参加していたT-98(タクヤ)選手も、6月に後楽園ホールでラジャダムナンスタジアム王座を奪取した時のチャンピオン、ナーヴィー・イーグルムエタイと10月9日に、ダイレクトマッチで初防衛戦が予定されていましたが、挑戦者がプーム・アンスクンビットに変更となった模様。記者会見時点で「6月に奪取して防衛戦のことだけを考えてきたので、現役ラジャダムナンチャンピオンとして12月5日の出場を約束します。」と宣言していました。

9日のラジャダムナンスタジアムでの結果は、初回から右ローキックで徐々に圧力かけていたT-98(タクヤ)が3Rに右ローキックでプームが崩れるように倒れTKO勝利、日本人として初の現地での防衛に成功。外国人としては昨年の、ウェルター級チャンピオン.ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)に次ぐ快挙となります。
これでT-98は晴れてラジャダムナン・スーパーウェルター級現役チャンピオンとして「KNOCK OUT興行」に出場することになりました。

10月9日、ラジャダムナンスタジアムで日本人初の防衛を果たしたT-98選手

取材戦記

追加カード発表会見ながら興味を引いたのは、ヒジ打ちに関する世間の意識と時代の流れでした。

昭和40年代にTBSで毎週月曜夜7時から放送されていたキックボクシングはヒジ打ちも頭突きも投げもありました。後楽園ホールでは、昔は後方の固定テレビカメラで南側と東側からだけの撮影で、ハンディカメラが使われるようになったのは昭和50年代に入ってからだったと思いますが、ヒジ打ちがあること自体、当時は放送が懸念される事案では無かったと思います。

現在のような解像力良く鮮明に映すカメラやハイビジョン大型画面とデジタル放送がある上、ラウンド外ではハンディカメラがリング内に入ってまで撮影し、ドクターチェックされる顔面アップまでカメラが追っていることもあり、ヒジ打ちで切れた顔面を捉える機会は多いに有り得ることで、「地上波に乗るのか」という心配が出るのも仕方ないかもしれません。

とはいえ、そこは放送の仕方、映像の捕え方で守れるように思います。ヒジ打ちが懸念材料になることに意外な印象を受けるのは年配者だけかもしれませんが、ヒジ打ちで眼球破裂という事態が起こりうる危険はあります。しかし、キックボクシングやムエタイは元から危険な競技で、ヒジ打ちは必要な技術であることは50年経っても変わらないと思います。キックとムエタイの技の多彩さと躍動感をテレビで伝えられたら喜ばしいことでしょう。

9月30日の記者会見第二弾は(株)ブシロードが入る住友中野坂上ビルの“2階”の予定が、前日に“6階”に変更発表されました。これは取材陣が増えて広いスペースに変更かと思いましたが、取材陣はいつもと変わらない格闘技専門サイト記者中心の10人未満のスペースでした。

マスコミの数というのも今後、どれほど一般誌やスポーツ新聞が関わってくるかも興味を引くところ。これから始まるKNOCK OUT、決して楽観的には見ていられない問題も起こるかもしれませんが、まずは第1回目の「KNOCK OUT」に期待したいと思います。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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