◆はじめに

デジタル鹿砦社通信編集担当のKさんは1980年代京都の学生時代、ロックバンドをやっていたという。私も同志社時代の一時期、水谷孝ら「裸のラリーズ」と行動を共にした人間、そんな共通体験から音楽を中心に「OffTime 談義」をするようになった。そんな談義の中で「あの時代の京都と音楽」的なものを「デジ鹿」に書いてみませんかとの提案があって、「そうやねえ」ということで「ロックと革命 in 京都 1964-1970」といった手記風のものを月1本程度、書かせて頂くことになった。今回はその第1弾。

◆長髪、それは青春期の私そのものだった

私は今年75歳、ボブ・ディラン初恋の人スーズの言葉を借りれば、「長い歳月を経て若き日々の感情やその意味、内容を穏やかに振り返ることのできる」年齢になった。

半世紀前、よど号ハイジャック闘争決行を目前にして私は高三以来の数年間、私のアイデンティティそのものだった長髪をばっさり切った。「目立ってはならない」という「よど号赤軍」活動上の理由からだったが、私にはちょっとした決心だった。いま思えば、それは当時の私にとっては新しい領域、新しい次元に一歩踏み入る覚悟、「革命家になる」! その決意表明、と言えばカッコよすぎるがまあそんななものだった。

長髪、それは青春期の私そのもの、「ロックと革命は一体」、そんな感じだった。

ロックと長髪は自我の確立、あるいは自分を知るための自分自身の革命、さらにそこから一歩踏み出して社会革命へ、それが高三以来の私の青春の下した結論であり、1964~70年という「あの時代」の音楽体験、革命体験だったと古希を過ぎたいま思える。

ウクライナ事態を経ていま時代は激動期に入っている。戦後日本の「常識」、「米国についていけばなんとかなる」、その基にある米国中心の覇権国際秩序は音を立てて崩れだしている。この現実を前にして否応なしに日本はどの道を進むのか? その選択、決心が問われている。それは思うに私たちの世代が敗北と未遂に終わった「戦後日本の革命」の継続、完成が問われているということだ。

かつて闘いを共にした同世代にはいまいちど奮起を願い、若い人には新しい日本の未来を託したいと強く思う。そういう意味で私の「ロックと革命 in 京都」、「あの時代」を語ることを単なる追想、青春の思い出懐古にはしたくない。自分自身の革命と社会革命-戦後世代の青春体験が「戦後日本の革命」に役に立つならばというささやかな願いを込めてこのエッセーを書こうと思っている。

私自身について言うならば、自分の原点に立ち返っていまを振り返る、瀬戸内寂聴さん風に言えば、いまいちど恩人達に思いを馳せ「だから私はこの道を歩み続ける責任がある」ことを胸に刻む機会にしたい。

◆「抱きしめたい」から「ならあっちに行ってやる」へ

1947年2月生れの団塊世代第一号の私は、滋賀県下の進学校、膳所高校に通うごく平凡な高校生、いわゆる「受験戦争」が始まった最初の世代だ。高三を間近にして否応なしに進路選択が問われた私は、自分はどの大学、学部を選ぶべきか? 果たして自分は何をやりたいのか、やるべきか? これまでまともに向き合ったことのない人生選択の岐路に立たされて私は少し当惑していた。親や教師の言うままに「優等生」をめざした自分だったけれど、それが実は惰性で自分の頭で何も考えてこなかったことにとても不安を感じていた。

そんな私の高二も16歳も終わる1964年初冬1月頃のこと、受験勉強中の私の耳に突然飛び込んできたラジオからの異様な音楽「ダダダーン……」! が私の脳天を直撃した。 

その曲は「抱きしめたい」、歌っているのはビートルズ、イギリスの港町リヴァプール出身のグループだった。

すぐにそのシングル盤を買った。レコードジャケットにも度肝を抜かれた。丸首襟の揃いのビートルズ・スーツ、ボサボサ髪のマッシュルーム・カット、やけに挑戦的な目、ゾクッときた。自分で作詞作曲した歌を歌う、ロックが自己表現の手段であることも知った。理屈抜きにそれらはひたすらカッコイイ! に尽きた。


◎[参考動画]The Beatles – I Want To Hold Your Hand(英1963年11月、日本1964年2月発売)

 

マッシュルーム・カット高校生

私は散髪屋に行くのをやめた。別に何かに反抗してやろうという意識はなかった。ただ明日も今日と変わりがない「日常の連続」という現実を少し変えてみたかっただけ。夏近くになると前髪が目元に垂れ耳が髪で隠れて女の子のショートカット風のビートルズヘアになった。いまではどうってことのないものだが、当時は女性にのみ許されるヘアスタイルだった。制帽が頭に収まらないので校門前の検査時にちょこんと頭の上に載せたりしていた。

そんな時に事件は起こった。

体育授業で運動場に出た私に向かって体育教師は言った-「女の子の授業はあっちだ」! この言葉になぜか私の反抗心がむらむらとせり上がってきた。「ようし、ならあっちに行ってやる」! 私の何かがはじけた。 

私は体育授業をボイコットしたばかりか必要ないと思った授業は早退するようになった。

 

進学校デビューのビートルズ

余談だが運動会でクラス毎に応援席のバックに大きな背景画を設営することになった。私はダメ元で「ビートルズでいこう」と提案した、ところがなんとみんなも面白いと賛成してくれ私が絵を描くことになった。私が小バカにしていた受験勉強一筋のクラスの面々、彼らにも意外な一面があることを知った。

こうして進学校、受験勉強からのドロップアウト、17歳の革命が始まった。

単に「勉強嫌い」になっただけじゃないかとちょっと不安はあったけれど、なぜか躊躇はなかった。なぜこうなるのか理由は自分でもよくわからない、でもおかしいと思うことにずるずると流されていくことの方がよっぽど怖かった。私の中で微妙な変化が起こり始めていた。

長髪ひとつで世界は変わる! それが私の17歳の革命、その第一歩だった。

「ならあっちに行ってやる」! そんな無謀な決心を「いいんじゃない、若林君はぜんぜん悪くないよ」と言ってくれる女子高生が現れた。

 

高三の終わり頃

◆女子高生OKとの出会い

ある日、友人から彼のガールフレンドが託されたというノートの切れ端に書かれた手紙を受け取った。ビートルズ風の長髪高校生の噂を聞きつけてよこした「文通申し込み」だった。どこにでもある高校生の文通、それがOK(彼女のニックネームの略称)との運命的な出会いのきっかけだった。

OKは1学年下の16歳、県下の別の高校に通う名古屋からの転校生、母親を早くに結核で亡くし、その母親の結核サナトリウムのあった母の出身地でもある私の故郷、草津市に移ってきた女子高生だった。

友人を介しての数回の文通の後、「一度会ってみない?」との仰せがあって彼女の母親の実家が経営する喫茶店で会うことになった。その日の記憶はいまも鮮明だ。

私はOKに会う前に本屋に立ち寄った。公開間近のビートルズ映画“A Hard Day’s Night ”掲載の映画雑誌を買っていこうと思ったからだ。広い店内だったが映画雑誌を探す私はふと視線を感じて顔を上げた。するとレコード売り場にいた女子高生風と目が合った、瞬間バチバチッと視線のショート! でもそれはほんの一瞬、私は映画雑誌を持ってレジへ、彼女は店員との話に戻った。一瞬の視線ショートだったが、長髪男子高校生の出現に「これだ!」と彼女は思っただろうし、私はこの子だとほぼ直感した。

案の定、喫茶店にいたのはその子だった。時は初夏、背中にかかる長い髪、白い夏のワンピース姿はまさに都会育ちの女の子、デートなど初体験、以前の田舎の「真面目な優等生」の私だったらどぎまぎしたことだろう。でも「長髪ひとつで世界は変わる」、異端視の視線に鍛えられていた若林君はうろたえることなく「やあ」と声をかけた。すでに文通で気心は知れてるので映画雑誌のビートルズの話題で盛り上がり、意気投合は一瞬だった。

夏休みには二人でビートルズ映画を京都会館で心ゆくまで観戦、嬌声の絶えない映画館で「ちょっとあの女の子達うるさいよね」と言いながらも「リンゴ、かわいい!」と思わず口にする彼女、理知的なOKの意外なアナザーサイドも新しい発見だった。


◎[参考動画]映画 “A Hard Day’s Night”(1964年)

 

アメデオ・モディリアーニ「子供とジプシー女」。教科書にも掲載されるような画だが、これはOKとの私書箱に貼り付けた記念品

初面談以降、文通は直通便になった。互いの家の玄関にボール紙手製の「私書箱」を設定、私はモディリアーニの絵を貼り付けた。互いの「私書箱」に細い鎖を取り付けてそれが垂れてたら「手紙在中」の印、学校帰りに鎖が垂れてるか確認するのが楽しみになった。

ビートルズのヒット曲“From Me to You”にならって手紙の末尾には「From M.Lenon to George OK」と署名、彼女の署名はその逆。私はジョン・レノン、彼女はジョージ・ハリソンのファンだった。私のには必ずジョン・レノンの横顔イラストを入れた。たわいのないお遊びだが、それは「二人だけの小さな世界」、私とOKのとても大事な儀式だった。

互いの家でレコードを聴いたりしたけれど、いつしか昼夜別なく町を徘徊しながらの路上トークが二人の習慣になった。古い世界を飛び出そうとする二人には家の狭い空間は窮屈だったのかも知れない。

ビートルズの話題が中心だったと思うが、私の大好きな画家、モディリアーニの話にも彼女は乗ってきた。「奥さんのジャンヌさんって素敵だよね」とOK。モディリアーニは貧苦の中でも「自分の絵」を追求、それを描き続け、持病の結核、アルコールとドラッグ漬けの果てに失意のまま早世した画家、画家でもあり妻だったジャンヌ・エビュテルヌさんは最愛の人を亡くした直後、後を追ってアパルトマンの窓から投身自殺を遂げた。ジャンヌさんの父親は敬虔なカトリック教徒、ユダヤ人の男との結婚を認めず墓は別々にされた、そして十数年の歳月を経てペール・ラシェーズ墓地に合葬され、二人はやっと結ばれた。そんな不遇の画家とその波乱に満ちた純愛ドラマの生涯は私たち二人を興奮させた。

ある時、OKが「睡眠薬自殺はやらないほうがいいよ」と私に言った、名古屋の中学時代に自殺未遂を見つかって胃の洗浄をやられたのが死ぬほど苦しかったそうだ。自殺など私には別世界の話、この子は私の知らない世界を知っている人だ、そう思った。
 
そんな感じで路上トークは延々と草津の狭い町を大通りから路地、天井川の堤防へと続き、家の前まで来ても「じゃあまたね」を二人とも言いそびれて、またもと来た道に戻ったりを繰り返した。別に腕を組んだり恋を囁きあっていたわけじゃない、堰を切ってあふれる目覚めた自我がその発散場所を求めていたのだと思う。

そんな二人を「高校生の異性交際?」と怪しむ町の大人たちの視線もあったけれど「僕らの大まじめがわかってたまるか」と上目線で無視した。こんな「抵抗運動」も二人の絆を強めたのかも知れない。


◎[参考動画]The Beatles – From Me To You(1964年)

 

ボーヴォワール『他人の血』(新潮文庫1956年)

◆「特別な同志」になった理由

ある日、「これ読んでみない?」とOKは1冊の文庫本を貸してくれた。

その本は『他人の血』。フランスの実存主義女流作家、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの小説だった。平凡な駄菓子屋の娘が大ブルジョアの息子という出自に悩む労働運動指導者と恋に落ち紆余曲折の末に恋人の指揮する反ナチ・レジスタンス運動に参加、彼女は短い生涯を閉じるという物語だが、私は最後まで読めず途中で放棄した。自分の運命の決定権は自分自身にあるという自己決定権賛美の書だが、フランスの知識人の描く複雑な社会相、人間世界は当時の私にはまったく理解不能の世界だった。

私はただ「ありがとう」とだけ言って本をOKに返した。
 
これは少なからずショッキングな体験だった。進学校でもない高校に通う年下の女子高生の読む本を読めない自分は何なんだ!? 自意識過剰といえばそれまでだが「進学校の優等生」というものを考えさせられた事件だった。

後で実存主義に関する解説書を読んだりしたが私にはさっぱりわからなかった。主体的な社会参画? 自己決定権? 教科書や受験参考書ではわからない世界があることを思い知らされた。もっと新しい世界を知りたいと切実に思った。それはあくまでいま考えればということで、当時そんなことは恥ずかしくて彼女には話せなかった。

自分の無知、アホウぶりを知らしめてくれたのがOKだった。それこそが彼女が私の「特別な同志」たる最大の所以(ゆえん)だったといまは言える。

こうしてOKは私にとって「特別な同志」になった。そんな彼女に私は恋をした。

ビートルズ「抱きしめたい」に始まる「ならあっちに行ってやる」の17歳の革命は、自分を知るための革命になり、その「同志」を得て革命はさらに一歩前に進んだ。

これが今日に至る私の革命の原点、いまそう思う。(つづく)

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」成員

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

重森陽太は前回7月のヒジ打ちによるTKO負けからの再起と共に、ムエタイ路線を目指した5回戦での泥臭い試合で勝つ。

高橋亨汰は攻めの多彩さで圧勝。NJKFから乗り込んできた吉田凛汰朗に格の差を見せ付けるTKO勝利。重森に続く主力メンバーとして存在感を示した。

新日本キックに於いて、久々のタイトルマッチは瀬戸口勝也の初防衛戦。剛腕で初挑戦の瀬川琉を沈める。

前・日本ミドル級チャンピオンの斗吾がエキシビジョンマッチと引退セレモニー。“有蹴の美”を飾る。

期待の木下竜輔はムエタイのヒジ打ちに散る試練の敗戦。

組み合ってからの重森陽太のヒザ蹴りがヒット

◎TITANS NEOS.31 / 10月23日(日)後楽園ホール17:43~21:07
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第11試合 62.5kg契約 5回戦

重森陽太(伊原稲城/ 62.05kg)
      vs
キヨソンセン・フライスカイジム(タイ/ 62.35kg)
勝者:重森陽太 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名49-48. 宮沢50-48. 仲50-48

※重森陽太はWKBA世界ライト級チャンピオン
※キヨソンセンはWMCインターコンチネンタル・スーパーフェザー級チャンピオン。
過去、日本では梅野源治と1勝1敗。健太に判定勝利。

重森陽太はローキック中心の様子見からミドルキックへ、やや増して距離を計るけん制。静かな流れが続く中、距離を詰めて来たキヨソンセンに前蹴りで突き放しが効果的にヒット。パンチもヒットし、キヨソンセンの右目下頬骨辺りが腫れだす。後半は組み負けない攻防を続け、首相撲からの崩しなどジワジワしつこい圧力で自分の流れを保った重森。

第5ラウンドの残り20秒ほどはムエタイでは有りがちな、打ち合わず流しに入る、あまり好ましくない終わり際ではあったが、泥臭い試合をすると言った重森の拘りは貫いた試合だった。

重森陽太の鋭い前蹴りが何度もキヨソンセンを突き放した

重森陽太が呼び掛け、この日集められる範疇の主力メンバーが揃った

◆第10試合 62.5kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/ 62.4kg)
      vs
NJKFスーパーライト級2位.吉田凛汰朗(VERTEX/ 62.2kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 3R 2:02
主審:桜井一秀

高橋亨汰の左ストレートが効果的に圧力掛けた流れ。吉田凛汰朗は警戒しつつ打ち返して一進一退的流れを保つも、先を読む戦術に長けていた高橋はパンチと蹴りのコンビネーションが優った。第3ラウンドにはカウンターの左ヒジ打ちをアゴにヒットでノックダウンを奪い、吉田は立ち上がれず、カウント中のレフェリーストップとなった。

フェイントから高橋亨汰の左ハイキックが吉田凛汰朗にヒット

左ヒジ打ち直撃から吉田凛汰朗が崩れ落ちる

◆第9試合 日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 56.8kg)
      vs
挑戦者同級1位瀬川琉(伊原/ 57.1kg)
勝者:瀬戸口勝也 / TKO 2R 1:38
主審:椎名利一

序盤は瀬川琉の先手打つパンチと蹴り。瀬戸口勝也は強打を温存して様子見。徐々にタイミングを見極め強打を振るい出す瀬戸口。

第2ラウンドも瀬川が先手を打って蹴りで出るが、瀬戸口が瀬川の動きを読むと強打で追って、ロープ際でボディーから左右フックを振るう連打で瀬川は凌ぎ切れず、脆くもノックダウンを喫し足下おぼづかず、カウント中のレフェリーストップとなった。瀬戸口勝也は初防衛に成功。

様子見から瀬戸口勝也が次第に距離を詰めていく

◆斗吾引退エキシビションマッチ2回戦(2分制)

斗吾(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原)
EX
緑川創(前・WKBA世界スーパーウェルター級チャンピオン/RIKIX)

斗吾はかつて戦った緑川創とエキシビジョンマッチ。緑川のパンチ攻勢に立つ流れを受け止めながら斗吾は踏ん張りを見せた。5年ほど前に左膝の半月板損傷と前十字靭帯を切る怪我が影響してから復帰したものの、完全な回復には至らない為の決断の様子。

引退セレモニーで挨拶を述べた後、テンカウントゴングに送られリングを去った。

エキシビジョンマッチで充実の打ち合い蹴り合いを闘った斗吾

斗吾が会長や選手仲間への感謝と共に、「オカン、妻、有難う!」はインパクトがあった

◆第8試合 58.0kg契約3回戦

木下竜輔(伊原/ 57.7kg)vs ラット・シットムアンチャイ(タイ/ 57.45kg)
勝者:ラット・シットムアンチャイ / TKO 2R 2:30
主審:仲俊光

木下竜輔は新鋭らしさが出た粗削りながら積極的攻勢。しかしラットはベテランムエタイ選手。返しの技が際立ち、狙った右ヒジ打ちを振り下ろすと、鮮やか一発ヒットで木下竜輔の額をカット、ドクターチェックドの勧告を受入れ、レフェリーストップとなった。

決定打ではないがラットの狙ったヒジ打ちが木下竜輔を襲う、最後もこんな形

◆第7試合 58.5kg契約3回戦

ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.45kg)vs 仁琉丸(富山ウルブズスクワッド/ 57.95kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:仲30-28. 桜井30-28. 少白竜30-28

第1ラウンド終盤に右ハイキックでノックダウンを奪ったジョニー。仁琉丸はラウンド終了ゴングに救われ、その後持ち直したが、巻き返しには至らない展開で判定に縺れ込んだ。

◆第6試合 スーパーフライ級3回戦

NJKFバンタム級6位.吏亜夢(ZERO/ 52.1kg)
       vs
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/ 51.7kg)
勝者:吏亜夢 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:宮沢30-28. 仲30-27. 少白竜30-28

NJKF枠が設けられたカード。吏亜夢が徐々に手数と蹴りの的確差が優り勝利を導いた。

◆第5試合 スーパーライト級2回戦

勇生(富山ウルブズスクワッド/ 62.45kg)vs 梅沢遼太郎(白山/ 62.75kg)
引分け 0-0 (19-19. 19-19. 19-19)

◆第4試合 63.5kg契約3回戦

山田青空(GOD SIDE/ 63.55→63.5kg)vs yusei(グレイシーバッハ姫路/ 62.35kg)
勝者:山田青空 / KO 2R 2:53 / 3ノックダウン

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)52.5kg契約3回戦(2分制)

YURIKO SHOBUKAI(尚武会/ 52.3kg)vs MEGUMI KICK SPARK(KICK SPARK/ 52.15kg)
勝者:YURIKO SHOBUKAI / 判定3-0 (29-28. 29-28. 29-28)

◆第2試合 アマチュア女子34.0Kg契約2回戦(90秒制)

西田永愛(伊原/ 33.6kg)vs 野中あいら(HIDE/ 33.5kg)
勝者:西田永愛 / 判定3-0 (20-19. 20-18. 20-19)

◆第1試合 アマチュア43.0kg契約2回戦(90秒制)

西田蓮斗(伊原/ 42.45kg)vs 山下夢歩(LEGEND/ 42.4kg)
勝者:山下夢歩 / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

瀬戸口勝也の勝負に出た右ストレートが瀬川琉のアゴから顔面を突き上げる

《取材戦記》

重森陽太が勝利のリング上で語ったのは「皆さんが求めるようなノックアウトする勝ち方は出来なかったですけど、前回の負けから考えて、自分らしく戦う試合をしようと思いました。僕はこんな泥臭い試合をします。それで皆さんが感動や次の日を頑張れるといった励みに繋がればと思って一生懸命試合しますので応援お願いします!」と原点に返った戦い方をアピール。

控室では「重森は5回戦の選手です。来年はラジャダムナン王座を視野に突き進みます。その為に今回、5回戦をお願いしました。」と熱っぽく語った。

毎度テーマの無いノンタイトル戦では、何に向かって進んでいるのか分からない試合が多いが、今回は明確にラジャダムナン王座を視野に、直々にはタイでの遠征試合も計画していると応えた。

今年5月にBBTV(タイ7ch)チャンピオンと3回戦での引分け。7月に真吾YAMATOとヒジ打ちの積極的打ち合いで敗れる不覚はあったが、今回、日本で実績あるキヨソンセンに5回戦での戦略勝ちしたことで調子を上向きに戻した。

重森陽太は現在、新日本キックボクシング協会のエース格となって、ファンは今後の進路に興味が湧くものでしょう。泥臭い試合をすると言う発言は、元々のヒジ打ち有り首相撲有り5回戦の長丁場での総合力が試される原点に戻ると言う意味があります。

重森陽太が「このメンバーで引き続き新日本キックを盛り上げていきます!」と宣言し、記念撮影に収まった斗吾を含む選手達。ここから進撃蹴人の逆襲というテーマが始まります。

来年の新日本キックボクシング協会興行予定は、2月19日(日)、4月23日(日)、7月9日(日)、10月15日(日)にTITANS NEOS、またはMAGNUMが予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

◆LINE Payが立ち上がらない! このままじゃ夕食が買えない!

2022年10月17日夕方。広島県安芸郡内の介護現場での仕事から帰宅途中のわたしは、広島駅構内の飲食店でテイクアウトを注文しました。

事前にラインで連絡を受けた妻の希望通りの弁当をお店の人に注文。支払いは、いつも通り、電子マネー「LINE Pay(ラインペイ)」で行おうとしました。

ところが、画面がいつまでたっても立ち上がらないのです。何度試しても「正常に起動しませんでした」というものメッセージが出るばかりです。

LINE Payはリアルの銀行のATMと違い、電話の窓口もありません。お店の人に何度も謝りながら試してみました。

まず、筆者のスマホがおかしいのかと思い、立ち上げなおました。しかし、ダメです。

「ここは、電波が悪いのでは?」というお店の人の指摘で、店外にいったん移動して試しました。だが、どうあがいてもうまくいきませんでした。結局、LINE Payでの支払いをあきらめ、クレジットカードで決済しました。

これらのトラブルのおかげで、帰宅が遅くなり、妻に苦言を呈される(笑)など、散々な一日でした。

◆電話の窓口もないLINE Pay

LINE Payには電話の窓口もありません。わかりやすいところに問い合わせ窓口の表示もありません。帰宅後、筆者は、カスタマーサポートをネット検索でようやく発見しました。そこで、夕方のトラブルについて、問い合わせを行いました。すると、翌朝になって以下のような返事をいただきました。

LINEおよび関連サービスをご利用いただきありがとうございます。

LINE Payカスタマーサポートです。

このたびはご不便をおかけし大変申し訳ございません。

2022年10月17日(月)18:00~19:18の間、LINE Payのサービス画面が全般的に表示できない不具合が発生しておりました。

なお、現在は復旧し、正常にご利用いただける状態です。

万が一現在もご利用に問題が発生している場合には、お手数をおかけいたしますが、あらためて問題の詳細をご連絡いただけますと幸いです。

お客さまには大変ご迷惑をおかけしてしまいましたこと、また、ご連絡が遅くなりましたことを重ねて深くお詫び申し上げます。

今後とも、弊社サービスをよろしくお願いいたします。

おりしも、この日は、みずほ銀行のネットバンキングのシステム障害のニュースもまた流れていました。

やはり、現金というものはそうはいっても、ありがたい。そのように痛感しました。

◆給料を電子マネー支払い?!

さて、岸田政権は、今年度にも給料を現金払いから電子マネー支払いに変える制度を導入することを検討しています。

9月19日、「電子マネー」による賃金の支払いについて、厚生労働省は、従業員の同意を前提としたうえで「電子マネー」を扱う業者が安全性を担保した場合に認めるとした新たな制度の案を示しています。

労働基準法では賃金は現金で支払うことを原則としています。ただし、過去に起きた強盗事件などの教訓もあって、口座振り込みを労働者の利益のために認めているというのが現状です。今回は、厚生労働省は「利便性を高めるために、今年度に「電子マネー」で行うことを認める」としています。

同省の案では、企業が従業員の同意を得た場合は電子マネーを扱う「資金移動業者」が開設した口座への賃金の支払いを認めるとしています。「同意を得た場合」といいますが、労働組合がこれだけ弱いいま、制度が導入されれば、企業経営者のいう通り、導入されてしまうのは目に見えています。

また、資金移動業者は、安全性を担保するために一定の要件を満たしたうえで、厚生労働大臣から指定を受ける必要があるとしています。

この要件の案には、業者が破産したときに全額または100万円以上が数日以内に支払われるなど速やかに保証されること/不正に引き出される被害があったときに利用者に過失がなければ全額補償されること/少なくとも1か月に1回は手数料の負担なく換金できることなどが含まれています。

しかし、10月17日の夕方に筆者が遭遇したようなアプリの不調で買い物ができなくなる事態が起きる現状が、今年度末までに改善することはまず考えられません。しかも、電話ですぐ対応してもらえる窓口すらないのです。

とてもではありませんが、LINE Payを含めて電子マネーはまだまだ現金と同等の扱いは難しいと感じます。そんな中での給料の現金払いではなく電子マネー払いはちょっと怖すぎます。

また、そもそも、コンビニの店頭での公共料金にしても、家賃などの支払いにしいても、電子マネーではなく現金でしかできない状況があります。

給料は現金支払いを原則とし、実際は強盗対策などもあって、銀行口座に振り込みとする。電子マネーには本人が銀行口座からチャージしたい額だけチャージする。

こうした現状を変更することに生じるリスクやコストを上回る便益は今の段階では見出せません。

◆リスクを上回る便益がないものまで先走る岸田政権

岸田政権は、デジタル化を看板政策の一つにしています。筆者もデジタル化そのものを否定はしません。例えば、筆者も、政治活動や市民運動では、zoomを利用した会議など、デジタルの便益を大いに受けています。そして、いろいろな産業でもデジタル化は必須です。例えば、ロシアのウクライナ侵略などを背景に食料価格が暴騰する中で、食料自給率の向上のためにも、農業でのITの活用は必要でしょう。はっきりいって、IT化が必要な分野では日本はむしろ遅すぎるくらいです。

しかし、給料の電子マネー払いは、現時点では、リスクを上回る便益はないのです。問題は、こうしたリスクを上回る便益がないようなことまで、岸田政権が先走っていることです。筆者は、引き続き、労働者の暮らしを守る立場からこの問題について注目していきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

日本新聞協会は、10月18日、山梨県富士吉田市で第75回「新聞大会」を開催して、ジャーナリズムの責務を果たすことを誓う大会決議を採択した。議決は、「私たちは平和と民主主義を守り、その担い手である人々が安心して暮らせる未来を築くため、ジャーナリズムの責務を果たすことを誓う」などと述べている。(全文は文末)

新聞報道を見る限り、今年の新聞大会でも「押し紙」問題は議論されなかった。

「押し紙」問題がいかに深刻な問題であるかを認識するためには、旧統一教会による高額献金や霊感商法による被害額と「押し紙」による被害額を比較すれば明白になる。試算の詳細は省略するが、35年ペースで比較すると、旧統一教会がもたらした損害の総額は1237億円で、「押し紙」による黒い資金は、32兆6200億円になる。

32兆6200億円のグレーゾーンは尋常ではない。

(注:試算の根拠については、次のURLを参考にされたい。http://www.kokusyo.jp/oshigami/17238/

秘密裡に回収されている「押し紙」。新聞社は、「押し紙」により莫大な不正な販売収入を得てきたが、公権力機関は黙認を続けている

◆新聞ジャーナリズムの衰退を考える唯物論の視点

新聞社が公権力機関に対してジャーナリズム性を発揮できない原因を考えるとき、大別して2つの視点がある。まず第一は、記者個人の職能や記者意識の欠落に求める視点である。この視点に立って新聞を批判する人々にとっては、東京新聞の望月衣塑子記者や朝日新聞の本多勝一記者のような人物が次々と登場すれば、問題は解決するという論理になる。きわめて単純な論理である。従って、それを鵜のみにしてしまう層が意外に多い。実際、ネット上には「東京新聞望月衣塑子記者と歩む会」もある。

これに対してジャーナリズムが機能しない原因を、新聞社経営にかかわる客観的な制度の中に探る視点がある。具体的には次のような着目点である。

〈1〉再販制度により販売店相互の競争を防止して、新聞社経営を安定させている事実。

 

日本新聞協会が中心になってNIE運動(教育に新聞を)を推進している

〈2〉学習指導要領が学校の授業で新聞の使用を奨励している事実。これと連動して、「学校図書館図書整備5か年計画」の下で、新聞配備の予算が5年間で190億円講じられた事実。(『新聞情報』10月19日付け)

〈3〉新聞に対する軽減税率で、新聞社が莫大な額の税金を免除されている事実。

〈4〉「押し紙」を柱としたビジネスモデルで、莫大な利益を得ている事実。

〈1〉から〈4〉は、新聞社が高い利益を得て社員たちの高給を維持する上で欠くことができない制度である。このうち〈4〉の「押し紙」は、既に述べたように35年間で、少なくとも32兆6200億万円の黒い販売収入を生んでいる。諸悪の根源にほかならない。

◆新聞に対する消費税の軽減税率

本稿では、〈3〉についての試算を紹介しよう。軽減税率が8%の場合と10%の場合を、中央紙(朝日、読売、毎日、産経)をモデルとして比較した。

試算の前提は、次のような設定である。新聞の購読料は中央紙の場合、「朝刊・夕刊」のセット版がおおむね4000円で、「朝刊単独」が3000円である。新聞の公称部数を示すABC部数は、両者を区別せずに表示しているので、全紙が「朝刊単独」の3000円という前提で試算してみる。誇張を避けるための措置である。

消費税が10%に引き上げられた直後の2019年12月におけるABC部数は次の通りである。

朝日:5,284,173
毎日:2,304,726
読売:7,901,136
日経:2,236,437
産経:1,348,058

税率が8%の場合、次のような消費税額になる。いずれも月ぎめの数値である。

朝日:12億6820万円
毎日: 5億5313万円
読売:18億9627万円
日経: 5億3674万円
産経: 3億2353万円

これに対して税率が10%の下では次のようになる。

朝日:15億8525万円
毎日: 6億9142万円
読売:23億7034万円
日経: 6億7093万円
産経: 4億 442万円

8%と10%の違いにより生じる差額は次のようになる。()内は、年間の差異である。

朝日:3億1705万円(38億 460万円)
毎日:1億3829万円(16億5948万円)
読売:4億7407万円(56億8884万円)
日経:1億3419万円(16億1028万円)
産経:  8089万円( 9億7068万円)

これらの数字が示すように新聞社は、国会が承認した消費税率の軽減措置により、大きなメリットを得ている。しかも、消費税は(架空)読者から新聞購読料が徴収できない「押し紙」にも課せられるので、販売店にとっては軽減税率のメリットは大きい。

◆国会、公正取引委員会、裁判所

最大の問題は、新聞社経営に影響を及ぼす客観的な諸制度の殺生権を国会や公正取引委員会、それに裁判所(最高裁事務総局)などの公権力機関が握っている実態である。こうした条件の下で、日本新聞協会が、「ジャーナリズムの責務を果たすことを誓う」などと宣言しても、公権力を監視する役割を果たすことはできない。

考え方によっては、こうした「ジャーナリスト宣言」は逆に「新聞幻想」に世論を誘導する。世論誘導には、ジャーナリズムの看板を掲げながらも、肝心な問題には踏み込まない「役者」が必要なのだ。しかし、「空手の寸止め」では意味がない。

新聞衰退の問題を観念論の視点で議論しても、何の効果もない。客観的な制度上の事実の中に新聞衰退の原因を探る視点が必要なのである。

◎参考記事:http://www.kokusyo.jp/oshigami/16016/

【大会議決の全文】

戦後の国際秩序を武力によって大きく揺るがす事態や、選挙期間中に元首相が銃撃されるという暴挙が発生した。平和と民主主義を破壊する行為を、私たちは決して容認できない。

感染症の流行による社会・経済活動への打撃は、物価の上昇と相まって、国民生活に多大な影響を及ぼしている。相次ぐ自然災害に備え、地域の防災、減災の力を高めることも急務である。

報道機関は、正確で信頼される報道と責任ある公正な論評で、課題解決に向けた多様で建設的な議論に寄与しなければならない。私たちは平和と民主主義を守り、その担い手である人々が安心して暮らせる未来を築くため、ジャーナリズムの責務を果たすことを誓う。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

2022年10月14日、筆者の主催でオンラインおしゃべり会「岸田政権と介護 『岸田圧勝』の衆院選1周年に検証する!」を開催させていただきました(要領は宣伝チラシの通り)。

岸田総理は2021年10月14日、衆議院を解散し、事実上衆院選2021がスタート。介護職員給料アップなどの政策もウケたこと、野党が自滅したこともあり、自民党は議席数の上では圧勝しました。それから1周年を記念したイベントでもあります。

ご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。

◆衆院選圧勝で野党批判弱め、再分配投げ捨て?の岸田さん

まず、岸田総理(写真)の地元有権者で介護福祉士・元広島県庁職員のわたしから、以下の提起をさせていただきました。

・衆院選2021で圧勝した岸田さんに対して野党や労働組合も批判を弱めてしまった。その結果、参院選2021も圧勝し、当初の再分配強化路線を投げ捨てているのではないか。

・給料アップは2022年2月から実施もたった3%であり、10月からは国費ではなく介護報酬からすることになり、利用者負担に上乗せされる。これは労働者と利用者の分断につながる。IT導入による人員基準緩和を岸田政権は検討しているが、夜勤など削減の余地ないと思う。

・本来、負担軽減にのみITは活用すべきだ。それなくして人員削減はさらなる介護崩壊になる。

◆危険すぎる2024年介護保険改定案

そして、岸田政権・財務省は以下の2024年へ向けて以下のような介護保険の改悪をしようとしている、とおさらいしました。そして、法案として提出される前に、政府に圧力をかけていく必要がある、と強調しました。

・利用者負担原則2割

※安倍政権の2014年に消費税増税も2015年に2割負担導入→2018年に3割負担も一部導入。保険事故に対して8割しか給付しない。これは保険として意味がなくなる。庶民はサービスを受けるなという意味。

・ケアプラン有料化

・要介護1と2訪問サービス・通所サービスの総合事業への移管

そして、そもそも、総合事業=サービス提供者の多様化=という大義名分はあるが少数の先進事例を除き、ほとんど実現していない。高邁なボランティア精神をお持ちの方がおられるのは素晴らしいことだが、全体には当てはまらない。結局単なる切り捨てになり、これらは結局介護の社会化を崩壊させる、と指摘しました。

大昔、介護=女性、とくに嫁の任務というジェンダーバイアスがありました。1990年代、樋口恵子さんらフェミニストらが中心となって介護の社会化を求め、それを体制側がうまく利用してつくったのが介護保険だったと指摘。だが、女性を中心とする介護労働者の犠牲の上にあるという問題がある、と指摘。

さらに、今度の改悪案でサービスも受けられなくなり、ヤングケアラー爆増法案になりかねないと危機感をあらわにしました。そして、コロナのもとで、負担がかかっているなかで、さらに負担がかかり、ご家族も「詰み」になってしまう、と指摘しました。

総合事業とは2015年の介護保険改定で導入され、2017年4月から全自治体でスタートし、要支援のサービスを介護保険からまず切り離しました。

多様なサービスを受けられるようにするというのが大義名分です。たしかに、世田谷区など、確かに総合事業の先進事例もあるにはあります。実際は多くの自治体でそうなっていません。それだけの力量のある自治体もないのが実情です。財源も人も減らされる中で難しいのです。

2024年の介護保険改定へ向けて財政審議会は要介護1と2の訪問介護や通所サービスも総合事業へ切り離そうとしています。しかし、要介護1と2の人ならではの介護する側も気を遣う面があるのです。また、人工透析などで訪問介護をたくさん利用せざるを得ない人もいます。地方自治体の財源や人員の充実もないままの介護保険からの切り離しは大惨事を招きかねません。

◆「子どもの味方」のつもりのシルバー民主主義批判がヤングケアラーを爆増させる笑劇

財務省や事実上の財務省政治部隊の維新が追い風として利用しているのがシルバー民主主義への批判です。このシルバー民主主義批判についても筆者は取り上げました。

そもそも、現状の日本が本当の意味でのシルバー民主主義なのでしょうか? なぜ、先進国でもずば抜けて多くの割合の高齢者が仕事をしているのか? その多くが年金不足を背景に仕事をしているのか? 筆者の同僚の介護職員でも結構、高齢者、それも後期高齢者もおられる。また、「チューブでぐるぐる巻きの高齢者が財政を圧迫している」論もあり、今でも健在です。

しかし、実はそんな人など、ほとんど筆者の勤務先の介護施設でもいません。食事が困難になったら看取りへ向かっていくのが普通です。しかし、「高齢者がみんなチューブでぐるぐる巻き」という誤解を悪用して、高齢者たたきを維新などはしてきた。高齢者予算を削って子どもを応援するふりをしているが、介護社会化崩壊でヤングケアラー爆増という笑劇になりかねないと斬りました。

そもそも介護保険料を取って事実上増税をし、消費税は社会保障のためと称して増税なのになぜ、こんな状況なのか? そして、そもそも、昔はヘルパーも公務員(東京特別区)や公社(広島市)だったのになぜ、今はこんな惨状なのか? そもそも公費の使われ方がおかしいのではないか? 当面は積極財政をしつつ、超大金持ち・超大手企業への課税再強化が必要ではないか?となどと、提起しました。

◆介護破壊・分断への危機感 参加者からのご意見

東京都のデイサービスや居宅介護支援事業所を経営する男性からは、「介護保険の2割負担や要介護1.2の介護保険の切り離しが強行されれば訪問サービスや通所サービスが崩壊してしまう」、と危機感をあらわにされました。

広島県東部の男性からは、「所得制限で児童手当を切られた人からは、5万円給付の多くが高齢者向けというニュースを見て、高齢者を憎んでしまうかもしれない。実際には高齢者も負担を増やされているのにも関わらずだ。まさに、政府は人々を分断しようとしているがそういう政府の思惑に乗ってはいけないと思う。」と感想。

千葉県の女性は、「要介護3の母親を在宅で介護しています。認知症はないとのことですが、デイサービス(通所介護)やショートステイを利用しています。現在でも、働かずに母親を介護しており、家計は苦しい状況です。」「現状でも、デイサービスやショートステイの費用は高すぎると感じる。」と訴えます。「もし、この負担増が強行されたら?」との質問に対して、「考えたくない。」とおっしゃいました。

◆介護サービスの質に現状でも不安の声

また、ショートステイに母親を預けているが、母親から、「ショートステイの職員からきつい言葉をかけられた。」と電話をもらうとのこと。「給料が低くて、人も少なく大変なのだろうけど、これでは安心して預けられない。」と不安を述べられました。

これに対してわたしからは「正直、きつい声掛けをする職員も見ていて少なくない。肝を冷やすこともままある。」と現場職員として報告。

この女性は、「介護サービスを利用する人の家族同士のネットワークがほしい。そういう団体を紹介してほしいが、ケアマネに聞いても『ない』と言われる。どうなっているのだ?」とおっしゃいます。

◆金儲けの原理に介護を置くこと自体が無理

これに対して、わたしは、「ケアマネも精一杯の状況だ。全部が全部とは言わないが、グループ企業のサービスを受けさせることが精いっぱいで、利用者や家族にとって何がいいかということは忘れさせられている。わたしが目撃した同僚のケアマネの中でも利用者や家族のことを考えているケアマネは経営者に嫌がらせをされて、中にはお坊さんに転職した例も見ている。」と回想。

「そもそも、今の仕組みでは、経営者もそうせざるを得ないというのはある。経営者、ケアマネ、そして利用者・ご家族が国や経団連によってバラバラされているともいえる。」

「金儲けの原理に介護を置くことに無理がある。ケアマネを金儲けの原理の仕組みに置いたままにするのではなく、例えば公務員にすべきではないのか?」などと提起しました。

◆分断食い止めるため、再度原理原則の共有化を

広島県の病院職員の男性からは「介護の社会化と言われていたが、実際はサービス化にしかなっていない。また、介護利用者・家族、介護経営者、介護労働者でもあまり統一した方向性が共有されず分断されているのではないか?」との提起をいただきました。

わたしからは「今回の岸田政権・財務省による改悪案を止めさせることはもちろん大事。だが、間違った選択をずっと(日本は)してきた。その結果、分断が進んできた。その間違ったところへ戻って検証すべきではないのか? 介護保険そのものがどんどん改悪されてきたと同時に、そもそも、消費税増税を社会保障に全額使うという約束も守られていないし、さらに戻れば、介護保険料を取ってサービスを減らされるとはどういうことかということだ。昔は訪問介護を公務員や公社でやっていた。それが介護保険導入で民間になったが、本当にそれでよかったのか? そういうことも含めて介護の社会化の原理原則に立って検証すべきだ。また、介護の社会化がなぜ必要か、きちんと共有化していくことが大事ではないか。」と応じました。

また、大阪府の社民党員の男性からは、「分断されないように労働組合に入ろう、という呼びかけも街宣でしている。」と分断を防ぐための労働組合の役割についての提起もいただきました。

◆都道府県から国に声を!リアルでもネット署名の宣伝を

今後については、わたしから、「まず、緊急に都道府県議会や都道府県知事に、今回の岸田政権による介護壊し案をやめさせるよう、国に声を上げてもらう要望活動も大事ではないか? 切羽詰まった皆様の声を都道府県に上げよう。市町村だとなかなか国にモノ申すのは難しいが都道府県なら市町村よりは国にモノ申しやすい。」

「例えば、介護をする家族を応援する条例をつくっている県もある。そういう所に対しては今回の介護保険改悪の政府の目論見が貴県の政策を台無しにしてしまう、という説得の仕方もしていくべきだとおもう。県民の命を守る立場に立つよう求めていこう。」との提起させていただきました。

その上で、当面の取り組みとして、公益社団法人 認知症の人と家族の会様が取り組んでおられるネット署名に協力して、世論を高めていくことを呼びかけました。
そして、街宣などでも、この署名への協力を呼び掛けるチラシをつくって配ることなども提起させていただきました。今後、ご協力をよろしくお願いいたします。

キャンペーン・介護保険:負担が2倍で使えない!~原則自己負担2割化、ケアプラン作成の有料化、要介護1と2の保険外しなど負担増に反対します~ ・ Change.org https://chng.it/fCfk6kZFQj

〈要望項目〉

・介護保険の自己負担を原則2割負担にしないこと

・要介護1・2の訪問介護・通所介護を地域支援事業に移行しないこと

・ケアマネジメントの利用者負担導入(ケアプラン作成の有料化)をしないこと

・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院の多床室(相部屋)室料負担を新設しないこと

また毎週金曜日の以下の時間は当面、この介護保険改悪をやめさせるとともに、社会化という本来のあるべき姿にしていくということを課題の中心としておしゃべり会をさせていただきます。

よろしくお願いいたします。
20時~
ミーティングID: 411 718 3285
パスコード: 5N6b38

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

終刊のお知らせだった記事の後半ですが、新たな創刊(『情況』第6期)のお知らせとなりました。68年に創刊し、「新左翼の老舗雑誌」と呼ばれてきた『情況』が、来年1月に第6期を創刊することを、謹んでお知らせいたします。これまで同様のご支援、ご愛読をいただければ幸甚です。

 

『情況』2022年夏号

本稿の前半では、中核派と共産同首都圏委員会の「米帝の戦争論」批判を紹介してきた(『情況』7月発売号の拙稿を抄録)。

ウクライナ戦争はロシアの侵略戦争であって、アメリカ・NATOは参戦していない。したがって、共産同首都圏委の「帝国主義間戦争」論は、ゼレンスキー政権が傀儡政権でなければ成り立たないと批判したのだった。

戦争と革命という、一般の読者から見れば浮世離れした議論かもしれないが、新左翼の論争とはこういうものだと。覗き見をしたい方はどうぞお読みください。

◆首都圏委員会の論旨改竄(論文不正)

この「侵略戦争論」と「帝国主義間戦争論」は現在、新左翼・反戦市民運動をおおきく二つにわけている。ところが、相手を名指しで批判(論争)しているのは革マル派(中核派の小ブル平和論の傾向を批判)、革共同再建協議会(いわゆる関西中核派=中核派のウクライナ人民の主体性無視・帝国主義万能論を批判)だけであり、論争らしいものにはなっていない。

『情況』は左派系論壇誌として、この論争・議論のとぼしい路線的分岐という運動状況に、一石を投じるものとして「特集解説 プーチンのウクライナ侵略戦争をどう考えるか? 真っ二つに割れた日本の新左翼・反戦運動」を、15頁にわたって掲載したのだった。

とくに帝国主義間戦争論を前面に掲げた、共産同首都圏委員会(「radical chic」44号)には、前回抄録紹介したとおり、全面的な批判を行なった。

ここまで批判しつくされたら、さすがに反論は出来ないであろうという読者の評判だった。だが腐っても、組織ではなく理論に拠って立つブント系党派である以上、沈黙することはないであろう。と思っていたところ、反論らしきものが出た。わたしの解説に対する正面からの批判ではなかったが、「radical chic」(46号・以下引用は号数で記す)に、「早川礼二」の筆名で「『情況休刊号』のコラムを読む」という文章が公表されたのだった。その意気やよし。

まず笑わせてもらったのは、本文15頁・1万8000字にわたる「特集解説」(二部構成で、目次付き)を、「コラム」と称していることだ。解説の筆者も「文責・編集部横山茂彦、編集協力・岩田吾郎」と明記しているにもかかわらず、早川は「コラム筆者」としているのだ。

つまり、自分たちが全面的な批判にさらされたのを何とか覆い隠し、コラムで扱われた程度のことにしたい、のであろう。その心情には、こころから同情する。

だが、論文作法としては、他者の記事や論文を引用するのであれば、タイトルと筆者を明記しなければならない。これをしないので困るのは、読者が容易に出典を引けないからだ。早川が雑誌情況の「コラム」と一般名称にしてしまっているので、読者は『情況』の30本前後ある記事の中からタイトルをもとには探し出せない。そもそも当該の論攷は「解説」であって、いわば雑誌の論説記事である。コラム(囲み記事)ではないのだ。原稿用紙換算45枚、大仰な目次まで付いたコラムなど、どこの雑誌にあるというのだろうか。まぁでも、これはどうでもいいだろう。

問題なのは、批判する相手の論旨を「改ざん」していることだ。他者の文章を引用する場合は、それが部分的なものであっても、絶対に論旨を改ざんしてはならない。これは論文だけでなく、文章を書く上での大原則である。

論旨の改ざんは論点をずらし、議論を成り立たなくする。それはもはや議論ではなく、論争をスポイルする不正な作為である。

蛇足ながら、他者を批判するときに、論証をともなわない批判は、単なる誹謗中傷となる。素人の文章にありがちな傾向である。

それでは、早川礼二による「特集解説」の論旨改ざん、みずからの文章の改ざんを具体的に見てゆこう。

◆核になるフレーズの削除で、180度逆の結論に

早川礼二は云う。

「コラム筆者は『米軍が直接参戦していない以上、首都圏委の言う「帝間戦争論」は成り立たない』とし、『反帝民族解放闘争の独自性を承認するのは、国際共産主義者の基本的責務である』と批判する」

「第一の疑問は、コラム筆者がウクライナ戦争で米軍が果たしている役割については触れようとしないことだ。米帝・NATOによるロシア封じ込め、米帝と結託したゼレンスキー政権の軍事的挑発に触れることが『プーチンの開戦責任を免罪することになる』という。」

早川の愕くべき論旨改ざんは「米帝が直接参戦していない以上」の前にある、わたしのフレーズ「ゼレンスキー政権が米帝の傀儡でなければ」を意識的に削ったことだ。このことで、わたしの主張の結論は180度ちがってくる。

首都圏委を批判するわたしの問いの冒頭は「それでは問うが、この戦争が帝国主義間戦争であれば、ゼレンスキー政権は米帝の傀儡政権・買弁ブルジョアジーとして、打倒対象になるのではないか?」なのである。

つまりここからは、ゼレンスキー政権が傀儡政権であれば、帝国主義間戦争は成立する、という結論がみちびかれる。それが誤った認識であれ、論としてはいちおう成立する。早川は論旨の改ざんに手を染めることで、みごとに180度違う結論を偽造したのだ。

わたしは帝国主義間戦争論が成り立たないと批判しているのではなく、ゼレンスキー政権の階級的な性格を明らかにせよ、傀儡政権として打倒対象なのか否か、と指摘していたのだ。

早川はこの質問には答えられないまま、「ロシア帝国主義による明らかな侵略戦争」であることを前面に主張しつつも、「かつ米帝・NATOによる帝国主義間戦争」だと、さらに言いつのる。くり返すが、ゼレンスキー政権が米帝・NATOの傀儡でなければ、代理戦争としての帝国主義間戦争論が成立しないのは言うまでもない。

いっぽうで「ロシアの侵略戦争」ならばなぜ、ウクライナ人民の救国戦争(民族解放闘争)を評価できないのか。「この戦争の基本性格はウクライナを舞台とした欧米とロシアによる帝国主義間戦争」(44号)としていた早川は、ウクライナ人民の救国戦争への連帯には、けっして心がおよばないのである。

およそ革命党派のしめすべき指針は、打倒対象と連帯するべき味方を明確にすることだ。ゼレンスキー政権を支持するウクライナ人民、ロシア帝国主義の侵略と戦うウクライナ人民への連帯を承認・支持できないがゆえに、早川の帝間戦争論は砂上の楼閣のごとく崩壊するのだ。

いま、全世界でウクライナ避難民が抗露戦争への支援を訴え、あるいはロシア連邦からの政治難民(ブリヤート人など)が「プーチンストップ!」を訴えている。抽象的な「世界の被抑圧人民・プロレタリアートと連帯」(46号・早川)などという抽象的な空スローガンではなく、具体的な指針を示すべきなのだ。現にロシア帝国主義と戦っているウクライナ人民との連帯、かれら彼女らがもとめる軍事をふくむ支援なのだと。

「あらゆる〈戦争国家〉に反対する」(44号・早川)も市民運動の理念としてはいいだろう。だが、首都圏委は革命党派なのである。そもそも民族解放戦争の大義、社会主義革命戦争の大義を語れなくなった党派に、共産主義者同盟の名を語る資格があるのか。この党史をめぐる議論に乗って来れない首都圏委には、稿をあらためてブント史論争として、議論のステージを準備したいものだ。

◆論旨の改ざんは、論争の回避である

さて、上記の引用中で早川は、もうひとつ大きな改ざんを行なっている。

「(横山の主張は=引用者注)ゼレンスキー政権の軍事的挑発に触れることが『プーチンの開戦責任を免罪することになる』という」(46号・早川)。

「触れる」? そうではなかったはずだ。44号論文から再度引用しよう。

「米帝・NATOの東方拡大によるロシアの軍事的封じ込め政策、多額の軍事支援とテコ入れにより二〇一五年の『ミンスク合意』を無視してウクライナ東部のロシア系居住区域への軍事的圧迫と攻勢を強めたゼレンスキー政権の強硬策がロシアを挑発し、今日の事態を招いた直接的な原因」だと。

ハッキリと、ゼレンスキー政権の強硬策が「直接的な原因」だと述べているではないか。「要因(factor)」などではなく「直接的な原因(direct cause)」だ。

「直接的な原因」とした以上、プーチンのウクライナ侵攻は「結果」にすぎないことになる。これが「プーチンの開戦責任の免罪」でなくて何なのか。

開戦の責任をプーチンにではなく、ゼレンスキーにもとめていた早川は、「直接的な原因」を「触れる」と言い換えることで、自分の論旨を改ざんしたのだ。

まともに論争をしようと思えば、自分の前言撤回も厭うべきではない。そこに相互批判による議論の深化があるからだ。論軸をずらさずに、誠実に議論することで新しい理論的地平も切り拓けるのだ。今回の早川の改ざんは、論争を回避する恥ずべき行為だと指摘しておこう。

◆太平洋戦争の原因は「ABCD包囲網」か?

かつて日本帝国主義は、中国戦争における援蒋ルート(蒋介石政権への欧米の支援=4ルート)を封じるために、フランスが宗主国だったインドシナに進駐した(仏印進駐・1940~1941年)。これに対して、アメリカ・イギリス・オランダが政治経済にわたる包囲網を敷いたのだった。この三国と中国をあわせて、日本に対するABCD包囲陣と呼ばれたものだ。

とりわけアメリカの対日石油禁輸が、日本経済を苦しめた。追いつめられた日本は、真珠湾攻撃をもって開戦に踏み切ったのである。これを歴史修正主義者は「アメリカが日本を戦争に追い込んだ」とする。まさに共産同首都圏委の主張(米帝・ゼレンスキー原因論)は、旧日本帝国主義を弁護するネトウヨなど、歴史修正主義者のものと同じ論理構成だと言えるだろう。

だが、ABCD包囲網をつくり出したのは、ほかならぬ日本帝国主義の中国侵略、傀儡国家(満州国)の建国にある。ウクライナにおいても、ロシアによる2014年のクリミア併合以降、欧米のウクライナ支援ロシア包囲陣が生じたのは、ほとんど日中戦争と同じ政治構造である。

1994年のブタペスト合意でのウクライナの核放棄(世界で三番目の核保有国だった)、ロシア・アメリカ・イギリスをふくむ周辺諸国の安全保障が、もっぱらロシアによって反故にされたこと。すなわち、兵士に肩章をはずさせたロシア軍による、クリミア・ドンバスへの軍事的圧迫が、ウクライナ人民をして、マイダン革命をはじめとする反ロシア運動の爆発となって顕われ、欧米の支援が「東方拡大」のひとつとして顕在化したのである。ロシアによるクリミア併合・東部・南部諸州併合は、日帝の満州国建国と比して認識されるべきものだ。

このような流れの中では、首都圏委が金科玉条のごとく持ち出す「ミンスク合意」(二次にわたる)は、ロシア軍が介入した内戦停止のための休戦協定にすぎないのである。何度ミンスク合意がくり返されても、ロシア帝国主義のウクライナ侵略は終わらない。なぜならば、ロシアはウクライナそのものを併合・併呑しようとしているからだ(プーチン演説)。

◆改ざんだけでなく、誤記満載の「反論」

共産同首都圏委員会は、わたしへの「反論」の中で、いくつかの論点を新たに提示している。ひとつは、わたしが主張した反帝民族解放闘争への疑義である。

中井和夫(ウクライナ史)の『ウクライナ・ナショナリズム』(版元は岩波書店ではなく東京大学出版会)から引用して、民族自決への疑問をこう呈している。

「中井も『国家の急増』が国際社会に与えてきている負荷・コストの大きさ」に触れ「民族自決」を「民族自治」にかえていくことと「他(ママ→多)民族の平和的統合の政治システムとしての連邦制の可能性」を論じている。(46号・早川)

そうではない。この「民族自治」と「連邦制」こそが、ソ連邦時代の「民族の牢獄」を形づくってきたものなのだ。中井和夫がいみじくも「帝国の復活を現代考えることは無理である」とする前提を見落として、早川が「民族自治」に着目することこそ、プーチンの帝国のもとにウクライナ人民をはじめとする諸民族を封じ込める発想。すなわち民族解放闘争の否定にほかならない。

レーニンの「分離の自由をふくむ連邦」を継承しながらも、スターリン憲法およびそれを継承したロシア連邦憲法は、分離の手続きの不備によって、事実上独立をゆるさずに、諸民族の自治に封じ込めてきたのだ。プーチンのクリミア併合以降は、領土割譲禁止条項によって、分離そのものが違法となったではないか。

ソ連邦の崩壊後のなだれ打った旧ソ連邦内国家の独立は、米・NATOの東方拡大だけではなく、東欧人民の反ロシア革命(民族独立革命および人民民主主義革命)だった。首都圏委が暗に主張する帝国主義の陰謀ではなく、これが人民による民族自決の体現にほかならない。

その反ロシア革命の動因は、膨大なエネルギー資源をもとにした軍事大国による圧迫への抵抗であり、世界最大の核兵器保有国による覇権支配への人民の恐怖と大衆的反発である。つまりロシアの帝国主義支配への民族的な抵抗なのである。したがって、21世紀のいまも帝国主義と民族植民地問題として、20世紀型の戦争と革命が継続しているといえよう。いや、プーチンにおいては18世紀型の帝国なのである。

70年代なかばのベトナム・インドシナ三国の反帝民族解放戦争の勝利、社会主義革命戦争とウクライナ戦争を比較して、早川は自信のなさそうな書き方でこう提起する。

「端的に言って、米ソ冷戦体制の下、帝国主義の植民地支配からの独立をめざしたベトナム人民の民族解放闘争と、グローバル資本主義が全世界を蓋い(ママ)、〈戦争機械〉と結託した帝国主義諸国の利害が複雑に絡み合いつつ、国境を越えて介入し他国の支配階級と結びついて暗躍し、権益拡大のために他国を容赦なく戦場化する時代のウクライナ戦争を、同列に論じることはできないのではないか。」(46号・早川)。

長いセンテンスで現代世界の複雑さを強調したからといって、何ら説得力があるというものではない。ベトナム戦争とウクライナ戦争の違いを、早川は上記の文章以上に論証することができないはずだ。

なぜならば、ベトナム・インドシナにおけるフランスの植民地支配、のちにはアメリカの介入を、現在のウクライナ戦争におけるロシアに置き換えれば、まったく同じ政治構造だからだ。ソ連のアフガニスタン侵攻、アメリカのイラク侵攻もまったく同じ、帝国主義の覇権主義的侵略戦争である。

第一次大戦以降、列強の利害は複雑に絡み合い、第二次大戦以降も、そして現在も、米ロをはじめとする帝国主義は「国境を越えて介入し他国の支配階級と結びついて暗躍し、権益拡大のために他国を容赦なく戦場化」(早川)しているのではないのか。

そして帝国主義の侵略が、ほかならぬ人民大衆の闘いと民族自決の奔流に強要された、悪あがきであることに着目できないからこそ、早川は現代世界の複雑さだけを、論証抜きで強調したくなるのだ。そこには大衆叛乱への信頼や共感は、ひとかけらもない。

それにしても、上記の引用における誤記・版元の誤り(別掲文献の版元名も間違えている)をみると、早川の論旨改ざんは意識的なものではなく、文章そのものを正確に判読できていない可能性もある。首都圏委においては、この頼りない主筆に代わり、組織的な討議を経た文章で、改ざんの釈明および誤記・版元間違いを訂正してもらいたものだ。

◆ウクライナ戦争はロシアの敗北でしか決着しない

いま求められている戦争の停止、もしくは終了がどのように展望できるのか。降伏の勧めや無防備都市の提案は、そのままロシアへの隷属・大量処刑を意味する。だが現実的ではないにせよ、すくなくとも具体的である。

もっとも具体的なのは、ゼレンスキー政権とウクライナ人民が、侵略者ロシアを国境の外に追い払うことである。いまそれは、第三次大戦の危機をはらみながらも、実現に向かっている。

ところが、あらゆる〈戦争国家〉に反対し、ゼレンスキー政権と闘うウクライナ人民(どこにいるのか?)に連帯するべきだと、首都圏委は呼び掛けるのだ。

ロシアの侵略に反対し、米帝・NATO・ゼレンスキー政権の戦争政策に反対する、世界プロレタリアートと連帯せよという。このきわめて原則的な反戦運動の呼びかけはしかし、現実に有効な階級闘争ではない。かれらの頭の中に創造された、死んだ抽象にすぎないからだ。

そして、現実のウクライナ戦争をになっている人民を無視するばかりか、ウクライナ人民の戦争支援の要求(兵器の供給)に反対しているのだ。このままでは、プーチンの侵略戦争の代弁者となり、ウクライナ人民の反帝救国戦争の敵対物に転落するしかないと指摘しておこう。

なお、1月創刊の『情況』第6期においても、ウクライナ戦争論争を他の論者を招いて掲載する予定である。われわれの「解説」の評価(賛意)や、早川礼二の民族解放闘争への不理解を指摘する声も上がっている。乞うご期待。(了)

◎『情況』第5期終刊と鹿砦社への謝辞 ── 第6期創刊にご期待ください
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44351
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44456

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

去る10月23日、秋晴れの日曜の午後、労働者の街・大阪釜ヶ崎で、先頃出所した重信房子さんやホリエモンこと堀江貴文氏も獄中で聴き感動した女性デュオPaix²(ぺぺ)のやさしい歌声が響きました。

Paix²は20数年間、マネージャーが運転するワゴン車「ぺぺ号」に音響機材を積み、全国の矯正施設(刑務所、少年院など)を回り獄内で収容者を前にライブ(彼女ら言うところの「プリズン・コンサート」)を行ってきました。その数505回! 驚異的な数です。全国の刑務所は北は網走から南は沖縄まですべて踏破、少年院もほぼ踏破しているとのことです。そうしたことで以前は「受刑者のアイドル」とか言われました。

「はなママ」こと尾崎美代子さんの発声で始まりました

Paix²登場!

また、今回もそうでしたが、音響機器のセッティングも自分らで行い、終われば後片付け、撤収も3人で行います。現在はコロナ禍で休止しているとのことですが、仮に今やめても驚異的な数です。客観的に見ても歴史に残る快挙だと言わざるをえません。

ということで、去る10月12日には、「安全で安心なまちづくりの推進に尽力した功績」で内閣総理大臣表彰を受けました。これには、総理大臣の名のある表彰ということで異論もありますが、それはそれとして長年のPaix²の労苦をせめて顕彰させようという刑務所関係者、法務省の職員のみなさん方の善意のプッシュが大き力となっています。

Manamiさん(左)とMegumiさん(右)

私がPaix²を知ったのは15年ほど前になります。例の出版弾圧で勾留され保釈になり、裁判闘争を闘い、ようやく事業回復しつつあった中で、ある雑誌社から送られてきた実話誌(『実話Gon!ナックルズ』だったと記憶します)に掲載された漫画を偶々見たことから連絡し、東京・新宿の喫茶店で会ったのが最初となります。自分自身が実際に逮捕、勾留されたことでリアリティを感じ胸を打たれた次第です。この漫画は今も切り取って保存しています。

その後、西宮で今回の規模のライブを行い、その後、小さなライブを10回以上やっていますし、縁あって非常勤講師を務めさせていただいた関西大学の講義でミニライブをやったり、忘年会・新年会や記念イベントなどでも歌っていただいたりしました。

プリズン・コンサート300回、500回を達成した折には記念本も出版いたしました。せめてもの贈り物です。

今回は久しぶりの生ライブということで非常に緊張し、失敗したらもう釜ではやれないな、という、私なりの強い想いで取り組みました。スケジュールや選曲も私のほうで行わせていただきました。特に現在、ウクライナ戦争のさなか、反戦歌も2曲歌っていただきました。一つは忌野清志郎版『花はどこへ行った』(私たちが若い頃はPPMことPeter Poul & Maryらでヒットしました)、もう一つは寺山修司作詞でシューベルツが歌った『戦争は知らない』です。Paix²という名は元々「Paix」は「平和」という意味で、この二乗で「Paix²」ということですから、この名に恥じないように今こそ反戦歌を歌って欲しいという願いからです。

受刑者の家族からの手紙で感動を誘い、『元気だせよ』で一気に盛り上がり、2曲の反戦歌、そしてアンコール曲『いいじゃんか』で会場の熱気は最高潮に達し、この日のライブは終了したのでした。

満員の会場!

定番『元気だせよ』で大盛り上がり!

この後、Paix²から抽選で観客の皆様方にプレゼントがありました。けっこう数があり、この日のライブに対する彼女らの想いを感じました。

当日のライブは午後3時きっかりに始まり5時に終了、その後、懇親会で思う存分語り合い大阪・釜ヶ崎の夜は暮れていったのです。

今回は釜ヶ崎で小さな食堂を経営する「はなママ」こと尾崎美代子さんがライブの案内を公にするや一気に予約が殺到し早目に申し込みを打ち切らざるをえませんでした。参加したかったのにできなかった皆様方、申し訳ございませんでした。早晩、またライブの企画を検討しようと思っていますので、次の機会にはぜひご参加ください。

車いすの方が心からの花束贈呈

ウクライナ戦争が一刻も早く終わることを祈り、カオリンズも加わり会場と一体化して『戦争は知らない』を合唱

Paix²、カオリンズ、尾崎さんらと初老の爺さん

(松岡利康)

◎Paix²(ぺぺ)オフィシャルウェブサイト https://paix2.com/
◎Paix²(ぺぺ)関連記事 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=77

『塀の中のジャンヌ・ダルク――Paix²プリズン・コンサート五〇〇回への軌跡』

amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846313581/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000626

『逢えたらいいな――プリズン・コンサート300回達成への道のり』(DVD付き特別記念限定版)

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000285

筆者の元職場である広島県の人事委員会は10月4日、県職員の月給を0.21%、期末・勤勉手当(ボーナス)を0.10カ月分それぞれ引き上げるよう湯崎英彦知事と県議会の中本隆志議長に勧告しました。 

右が広島県庁=知事・湯崎英彦さん、左の低い建物が広島県議会=議長・中本隆志さん(筆者撮影)

◆公務員がモノを言えぬことの代償措置としての人事委員会勧告

人事院/人事委員会勧告は公務員が労働基本権を制限されていることの代償措置です。

公務員労働者にも警察、消防、刑務、海保、防衛などの労働者を除き、団結権はあります。たとえば、わたしが現役の公務員時代に入っていた「自治労」、祖母が高校教師時代に支部で婦人部長をしていた「日教組」が代表例ですし、皇室労働者にも「宮内庁職員組合」があります。しかし、いずれも団体交渉権、争議権はありません。

また、公務員は国家公務員法・地方公務員法に基づき政治活動が、公職選挙法に基づき選挙活動が制限されています。これにより、公務員労働者は世論に叩かれても反撃しにくいわけです。

こうしたことの代わりに、国家公務員については人事院が、地方公務員については人事委員会がそれぞれ、民間の給料を調べて勧告を出すことになっています。

実際は国の人事院が調べて夏に人事院勧告を出し、それを国が地方自治体の首長に送り、基本的に地方自治体の人事委員会もそれに沿った形の勧告を出す流れになっています。

◆人事委員会勧告を無視、乱脈県政の付け回しで給料カット 自民系前広島知事

しかし、現実には広島県知事、特に(もちろん、広島は超ウルトラ保守王国ですので)自民党参院議員ご出身の故・藤田雄山前知事は00年代、人事院勧告を破りまくって賃金をカットしてきた時代もあります。

これは、藤田前知事がご出身の慶応義塾大学の先輩の自民党大物県議に忖度して、もう重厚長大産業が頭打ちだというのに山を削って工業団地をつくったり、海を埋め立てたりする、という類の投資効果の薄い公共事業を県単独でして財政危機になったという背景があります。その付けを反撃ができない職員に回しただけでした。公務員バッシングと言えば大阪維新の会が有名ですが、広島県では自民党がとうの昔にやっていたことです。

◆復興財源を「公務員給料カット」で賄う「痛恨の敗着」 旧民主党政権

暴挙は広島の自民党だけではありません。民主党政権(2009-2012)は、東日本大震災のあと、公務員給料を削って復興財源にあてました。民主党は公務員労働組合の推薦を得ながら公務員労働者を裏切った形です。すでに、長年の行革で人員が減らされた上に災害対応でてんやわんやだったのです。さらに給料引き下げで追い打ちをかけました。安倍晋三さんが政権を奪還することで、この公務員給料カットは廃止されました。安倍さんは安倍さんで官僚に忖度させるという問題ありまくりの総理でしたが、公務員労働者の給料だけは守ってくれました。このことは民主党政権の崩壊、その後の国政選挙での立憲民主党苦戦にもつながっています。あの時こそ、積極財政で復興財源をねん出すべきでした。それこそ、復興すれば、財政出動した分の投資効果があるわけですから。「公務員給与カット」は「痛恨の敗着」でした。

◆コロナ下で対照的な菅・岸田両総理

なお、人事委員会勧告をそのまま遵守することがよいとは限らぬ場合があります。コロナ災害で民間の給料がイレギュラーに下がった2020年。この時は、人事院勧告は引き下げ勧告でした。しかし、菅政権は、公務員の給料は据え置きました。これは当時の民間の給料低下がイレギュラーだったこと、そして公務員もコロナ対応で大変だったことに菅さんも配慮したのでしょう。コロナ感染爆発も背景に、支持率低迷の菅さんでしたが、このあたりは、そうはいっても自民党とはいえ、それなりには苦労した地方の中流家庭出身の感覚ではあったのでしょう。

しかし、岸田さんは、一転して勧告通りの引き下げに転じ、維新はもちろん、立憲、国民など組合推薦の政党も賛同。反対はれいわ、共産だけでした。

人事院勧告だからといって、このイレギュラーな民間給料乱高下があるときに公務員までそれに従わせるとどうなるか?公務員の給料を逆に基準としている民間企業も多くあります。そういうところの給料引き下げにつながる。まして、岸田さんは給料の引き上げによる経済底上げを政策の一丁目一番地にしておられたはずであり、残念です。

◆広島県内で顕著な公務員叩きの悪影響

公務員を叩いて、数を削減した結果は、コロナや災害時に支障をきたしています。広島の場合は、前出の故・藤田雄山知事(任期1993-2009)が総務省のレールに乗って市町村を86から23に減らしました。それと同時に県は市町村に権限を委譲したということで、市町村は合併したということでそれぞれ、公務員を削減しました。そのつけがいま、回ってきています。

そもそも、公務員が多い方が、若い人が公務員という形で毎年、地域に入ってきます。それが地域に元気をもたらします。地元にお金を落とすという点、そして若い人、特に女性の方が公務員という形で一定程度地域にとどまったり、東京など都会からやってきたりすることで、地域の気風がアップデートされる面は実感します。

逆に言えば、筆者がかつて県庁職員として担当した地域でも、公務員が減らされた影響でさびれた感があります。広島県を含めて日本の大部分の地域では、東京のようにグローバルな企業が若い人を引き付けるわけでもありません。公務員削減はまさに、地域にとり、自爆行為なのです。

あるいは、正規公務員をへらしたぶん、結局、非正規公務員を増やしたり、外部委託を増やしたりすることに追い込まれています。前者については、人の差別、使い捨てという問題が大きくなっています。後者については、経営者の利益の分、結局割高になるし、県外法人に委託すれば県外にお金が流出する問題もあります。平川理恵・教育長の官製談合疑惑は、教育長が故郷である京都のご友人に県費で仕事をつくってあげたのではないか?というものです。この問題も「県費をわざわざ県外に流出させたのではないか?」という視点からも批判できます。

◆政治家による現場公務員叩きは反則技だ

いずれにせよ、現場公務員が労働基本権や選挙運動、政治活動を制限されてモノを言えないことに便乗して政治家が公務員バッシングをすること自体、反則技です。

一般市民が公務員バッシングをしたくなる気持ちは、筆者も民間の介護労働者に転じて以降、よくわかっているつもりです。現実問題として、広島県庁職員だったときよりも介護福祉士として働いている今の方が圧倒的に労働はきついし給料は低い。松井一郎さんら、大阪維新の会の皆様などに言われなくても「公務員より低すぎる労働条件の労働者」がたくさんいることくらい、筆者はよくわかっています。

他人に目を転じれば、農業など食料を生産する皆様は原材料価格の高騰で苦しんでおられます。こうしたことは枚挙にいとまがありません。

しかし、政治家は、そうした状況に悪乗りして票集めに悪用するのではなく、きちんと公務員の給料の決まり方を説明すべきです。また、災害時の危機管理も含めて現状の行政を回していく上でどの程度の公務員が必要なのか? 地域経済にとってどうなのか? 丁寧に説明していくのが政治家(大臣や首長、議員)の役目でしょう。不当なバッシングから現場公務員を守るべきところは守るべきです。

その上で、給料や労働条件が低すぎる方を正規公務員並みに引き上げていく政策を打つべきではないでしょうか? 民間の介護や保育の労働者も、もちろん、現場の非正規公務員も、農家の方も、公務員並みの暮らしができるようにすべきです。給料アップや農業でいえば所得保障・価格保障などを図っていくべきなのです。

人事委員会勧告を受けて、正規公務員に適切な給料を出すとともに、人手が足りない部署には公務員を正規で補充していく。そのことを筆者は強く知事の湯崎さん、議長の中本さんに強く求めます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

第2部メインイベントは7戦目の佐々木勝海と対戦の、ちさとkissMeはこの日、最も戦歴が長い35戦目だったが、佐々木勝海が的確さで優った判定勝利。

第1部メインイベントの喜多村美紀も手数で圧し切り、練習の成果を見せた判定勝利。関西でのテツジムで鍛えた力を発揮し、更に王座を目指す。

◎DUEL.25 / 10月16日(日)GENスポーツパレス 18:00~20:23
主催:VALLELY / 認定:NJKF
(※以下の戦歴はこの日を含む数値です)

《第2部》 19:15~20:23

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級6位.佐々木勝海(エス/62.8kg)7戦6勝1敗(1KO)
        VS
ちさとkiss Me(安曇野キックの会/ 62.95kg)35戦6勝26敗3分(2KO)
勝者:佐々木勝海 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:井川30-29. 君塚30-28. 中山30-28

佐々木勝海は積極的なパンチとハイキック、ヒザ蹴りで優勢を保ったが、接近戦に持ち込むちさとのしぶとさ発揮の動きを止めるには至らず攻め難さも感じられた。ヒジ打ちが当たればもっと効果的に優勢を保ったりTKOに繋げたであろう、やや勿体無い展開であった。

カウンターのヒジ打ち狙った佐々木勝海、ヒットせず

ちさとの前進にカウンターでのヒザ蹴りは効果的だった佐々木勝海

ラウンドガールの未来さんに導かれてカメラ側へ

◆第3試合 56.8kg契約3回戦

島人祖根(キング/ 56.65kg)3戦2勝(1KO)1敗
        VS
松長晴基(G-1 team TAKAGI/ 56.75kg)2戦2敗
勝者:島人祖根 / TKO 2R 0:16 / カウント中のレフェリーストップ
主審:竹村光一

島人祖根が第1ラウンド終了20秒前辺りで右ストレート気味にノックダウンを奪い、第2ラウンド早々も右ストレートでノックダウンを奪うと、ダメージ深い松長晴基をレフェリーがほぼノーカウント止める結末となった。

島人祖根の強く的確なヒットが目立った右ストレート

◆第2試合 60.2kg契約3回戦

Ryu(クローバー/ 59.95kg)2戦2勝(1KO)
        VS
須貝孔喜(VALLELY/ 60.0kg)1戦1敗
勝者:Ryu / 判定2-0 (29-29. 30-28. 30-27)

サウスポーで追うRyu、左右の大振りフックが何度かヒット。これが攻勢を維持し、デビュー戦の須貝孔喜も下がりつつも勢い有る返しの蹴りで反撃するもRyuの圧力を止められず、Ryuの判定勝利。

Ryuの大振りながら左右フックが何度もヒット

◆第1試合 65.0kg契約3回戦

今野龍汰(笹羅/ 64.55kg)2戦1敗1分
        VS
上杉恭平(VALLELY/ 64.9kg)1戦1分
引分け1-0 (28-28. 29-28. 28-28)

第1ラウンド早々に左フックでノックダウンを奪った今野龍汰だが、デビュー戦の上杉が徐々に盛り返した流れの引分け。打ち合いで上杉が攻勢も、終盤には今野のパンチもヒットする勝負を捨てない両者の意地が見られた。

《第1部》 18:00~19:05

◆第5試合 女子キック(ミネルヴァ)ライトフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ライトフライ級4位.喜多村美紀(テツ/48.75kg)27戦12勝11敗4分
        VS
同級8位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/48.75kg)8戦3勝5敗
勝者:喜多村美紀 / 判定3-0
主審:井川恵
副審:竹村30-29. 中山30-28. 君塚30-28

互いのパンチと蹴りの衰えぬ攻防の中、喜多村美紀は不用意に紗耶香のパンチを貰う場面が見られるも、逆に圧力を掛けて出て打ち返すヒットが優った判定勝利。

ジワジワと圧力掛けて出る喜多村美紀が徐々に紗耶香を下がらせた

◆第4試合 女子キック(ミネルヴァ)ピン級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級2位.撫子(GRABS/44.55kg)8戦5勝(1KO)2敗1分
        VS
ねこ太(とらの子レスリングクラブ/45.1kg)7戦2勝5敗
勝者:撫子 / TKO 1R 1:38           

偶然のバッティングで負傷した、ねこ太は試合続行不可能と成り、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。負傷裁定は採用されないルールの為、撫子のTKO勝利となった。

毎度アグレッシブな展開が定評の撫子も今回は不完全燃焼

◆第3試合 女子キック(ミネルヴァ)ピン級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級6位.斎藤千種(白山/ 45.36kg)5戦2勝(1KO)3敗
        VS
世莉JSK(治政館/ 45.15kg)5戦2勝3敗
勝者:世莉JSK / 反則 2R 0:17

斎藤千種の左ストレート貰って世莉がバランス崩した感じでマットにヒザ着いたところへ斎藤の顔面ヒザ蹴りが入るも、流れの中の範疇とみなされ、ダメージ深く脳震盪でフラつく世莉JSKは試合続行不可能。当初、斎藤千種のTKO勝利が宣言されたが、後日、斎藤千種の反則打と変更。世莉JSKの反則勝ちとなった。

斎藤千種が反則打となってしまったヒザ蹴りの瞬間

◆第2試合 女子キック(ミネルヴァ)54.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーバンタム級8位.和乃(新興ムエタイ/ 53.25kg)13戦2勝11敗
        VS
同級9位.MARIA(PCK大崎/TeamRing/ 54.3kg)4戦4勝
勝者:MARIA / 判定0-3 (28-30. 27-30. 28-30)

和乃は長身を活かせない展開で、距離を詰めるMARIAのパンチを貰ってしまう。接近戦ではやや和乃のヒザ蹴りが有効ながら、MARIAが終始攻めて出たパンチと蹴りで内容的には大差と言える判定勝利。

◆第1試合 女子キック(ミネルヴァ)45.0kg契約3回戦(2分制)

AIKO(AX/ 44.9kg)9戦2勝6敗1分
    VS
莉都(矢場町BASE/ 44.7kg)3戦3敗
勝者:AIKO / 判定3-0 (30-27. 30-26. 30-26)

第2ラウンドにAIKOがパンチ連打でノックダウンを奪い、攻勢を維持して判定勝利。

主導権奪ったAIKOの攻勢が続いた中でのハイキック

《取材戦記》

女子第3試合の斎藤千種vs世莉JSK戦は当初、斎藤千種のTKO勝利という発表でしたが、20日に訂正があった模様(21日午前にリリース発表有り)。協議の結果、倒れた相手へのヒザ蹴りが反則打と変更された様子で、斎藤千種の反則打により失格負け。世莉JSKの反則勝ちとなりました。

私も試合その場では「反則打では?」と頭を過りました。レフェリーという最高権限者が「流れの中」と判断したならそれも正しい範疇でしょう。でもその場でノックダウンとしてカウントするか、レフェリーストップすべきでもあったでしょうし、迷ったなら中断して審議も必要だったでしょう。とにかくやや審議に時間が掛かっても、極力迅速にリング上で正式裁定を下すべきと思います。

王座挑戦をアピールする喜多村美紀

ガルーダ・テツ会長は、岡山で開設したテツジムから2013年に大阪進出した際のテツジムにも付いてきた喜多村美紀を指導してきた経緯を振り返り、「最高ですね。巣立ってくれてると。大阪での川久保一生代表の指導の下、しっかり頑張ってくれている。いい指導受けて更に良くなったと思います。」と語った。

喜多村美紀はテツジムの今年2月の東京進出までは仕事の事情で付いて来れなかったが、現在は大阪でチャンピオン目指し頑張っているという。そして「チャンピオンの真美選手とは1勝1敗で、1位の佐藤“魔王”応紀選手とは過去に勝っているので、次はもっと面白い試合するので、挑戦権を頂ければと思います。」と語った。実現すれば2度目の王座挑戦となります。

佐々木勝海はリング上で「ちょっとしょっぱい試合してしまって情けないんですけど、精進しますので応援に来てくださると嬉しいです。」とマイクで語り、そのしょっぱい試合とは「相手はジワジワ来る感じだったので、蹴りが当たり難かったです。僕の詰め不足が反省点です。ヒジ有り試合は2回目だったので、当たっても切れる感触が無かったので練習が足りなかったかと思います。」とリングを下りてから語ってくれた。

佐々木はエスジムのイケメンファイターと言われる新鋭からランキング上位進出してきたチャンピオン候補。ヒジ打ちを学べる環境にあるジムで、この日のちさと戦でもっと効果的にヒジ打ちを出せそうな距離感があったので、今後の試合で見せて欲しいところです。

前回も書いていますが、NJKF 2022.4thは11月13日(日)後楽園ホールで開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

わたしが編集長を務めていた雑誌『情況』が休刊しました。この場をかりて、読者の皆様のご支援に感謝いたします。同時に、広告スポンサー(表3定期広告)として支援いただいた鹿砦社、および松岡利康社長のご厚情に感謝するものです。ありがとうございました。こころざしの一端を等しくする鹿砦社のご支援は、いつも勇気を与えてくれる心の支えでした。

 

『情況』2022年夏号

なお、情況誌第6期が若い編集者を中心に準備されています。時期はまだ未定ですが、近い将来に新しいコンセプトを背負った第6期創刊が達成されるものと熱望しています。そのさいは、変わらぬご支援をお願いいたします。

さて、総合雑誌の冬の時代といわれて久しい、紙媒体構造不況の昨今。しかし専門的雑誌は、いまも書店の棚を飾っています。

ということは、21世紀の読者がもとめているのが総合雑誌ではなく、シングルイッシュー(個別課題的)に細分化されたニーズであるのだと思われます。

その意味では、ロシア革命100年、68年特集、連合赤軍特集といった、社会運動に特化した特集が好評を博し、このかんの情況誌も増刷という栄誉に預ったものです(増刷による在庫過多という経営的な判断は別としても)。

いっぽう、情況誌(というよりも左派系紙媒体)に思いを寄せてくれる研究者や論者、たとえば五木寛之さんなども「少部数でも、クオリティ雑誌をめざすという手があるのではないですか」と、ご助言くださったものです。

クオリティ雑誌といえば、高級商品の広告を背景にしたお金持ち相手の趣味系の雑誌や男性ファッション誌などしか思い浮かべられませんが、フランスの新聞でいえば「リベラシオン」(大衆左派系雑誌)に対する「ルモンド」のイメージでしょうか。人文系では岩波の「思想」や「現代思想」「ユリイカ」(青土社)あたりが情況誌の競合誌となりますが、学術雑誌(紀要)よりもオピニオン誌系をめざしてきた者にとっては、やはり左右の言論を縦断した論壇ステージに固執したくなるものです。

新しい編集部がどんなものを目指すのか、われわれ旧編集部は決定には口を出さず、アドバイスも控え目に、しかし助力は惜しまないという構えです。

さて、結局いろいろと模索してきた中で、新左翼運動の総括や政治革命、戦争への左派の態度など、おのずと情況誌にもとめられるものがあります。ちょうど50年を迎える「早稲田解放闘争」「川口君事件」つまり内ゲバ問題なども、他誌では扱えない困難なテーマで、本来ならこの時期に編集作業に入っていてもおかしくないはずでした。このあたりは、残された宿題として若い人を主体に考えていきたいものです。

もうひとつ、第5期の終刊にあたって心残りなのは、ウクライナ戦争です。いよいよロシアが占領地を併合し、侵略の「目的」を達しようとしている情勢の中で、早期終結を提言するべきだが、ウクライナ人民にとっては、停戦は「緊急避難」(ミンスク合意の焼き直し)にすぎないはずです。その意味ではロシアが併合を「勝利」として、停戦に応じたからからといって、プーチンの戦争犯罪が許されるわけではない。

また、ウクライナ戦争は台湾有事のひな型でもあり、日本にとっても重大なテーマと言えましょう。そこで、情況誌第5期休刊号において、新左翼・反戦市民運動の混乱(大分裂=帝国主義間戦争か侵略戦争か)について、解説記事をまとめて掲載しました。その核心部分を紹介することで、本通信の読者の皆さまにも問題意識を共有いただければ幸甚です。

なお、新左翼特有の激しい批判、難解な左翼用語まじりですが、ご照覧いただければと思います。筆者敬白

◆休刊号掲載のウクライナ論争

まずは記事の抄録です。中核派批判から始まり、筆者も過去に関係のあったブント系の分派(共産同首都圏委員会)の批判につづきます。

『情況』2022年夏号 21p-22p

 

『情況』2022年夏号 23p

【以下、記事の抄録】

中核派はこのように主張する。

「ウクライナ戦争は、『プーチンの戦争』でも『ロシア対ウクライナの戦争』でもなく、本質的にも実態的にも『米帝の戦争』であり、北大西洋条約機構(NATO)諸国や日帝も含む帝国主義の延命をかけた旧スターリン主義・ロシアに対する戦争であることが、ますます明らかになっている」(「前進」第3242号、5月2日「革共同の春季アピール」)と。

アメリカとNATO、そして日本までがウクライナ戦争に参戦し、ロシアに戦争を仕掛けているというのだ。事実はちがう。日本は北方開発と漁業でロシアと協商しているし、アメリカは武器支援にこそ積極的だが、軍隊を送り込んでいるわけではない。中核派は政治的な深読みである「米帝の戦争」を強調するあまり、プーチンの犯罪(開戦責任)を免罪してしまっているのだ。

中核派の「アメリカ帝国主義の戦争」を的確に批判しているのが『未来』(第342号、革共同再建協議会)である。革共同再建協議会はこう断じる。

「彼らは、今回のロシアの侵略戦争を米帝バイデンの世界戦争戦略が根本原因で、『米帝・バイデンとロシア・プーチンの代理戦争』と言い、さらには『米帝主導の戦争だ』とまで言う。そこには米帝の巨大さへの屈服はあっても、ロシア・プーチンの侵略戦争への批判は一切ない」と。

「プーチン・ロシアからの解放を求めて闘うウクライナ人民の主体を全く無視している。彼らの『代理戦争』の論理は、帝国主義とスターリン主義の争闘戦の前に、労働者階級や被抑圧民族は無力だという帝国主義と同じ立場、同じ目線であるということだ。ロシア・ウクライナ関係、ウクライナ内部にも存在する民族抑圧・分断支配に接近し、マルクスのアイルランド問題への肉迫、レーニンの『帝国主義と民族植民地問題』を導きの糸に解決していこうとする姿勢はない」と、厳しく批判する。

まがりなりにも「帝国主義間戦争」と言い切っているのは、共産同首都圏委員会である。だが米帝とゼレンスキー政権の強硬策が直接的な原因だとして、これまたプーチンの開戦責任を免罪するのだ。云うところを聴こう。

「この戦争の基本性格はウクライナを舞台とした欧米とロシアによる帝国主義間戦争であり、米帝・NATOの東方拡大によるロシアの軍事的封じ込め政策、多額の軍事支援とテコ入れにより2015年の『ミンスク合意』を無視してウクライナ東部のロシア系住民居住区域への軍事的圧迫と攻勢を強めたゼレンスキー政権の強硬策がロシアを挑発し、今日の事熊を招いた直接的な原因」(「radical chic」第44号、早川礼二)であると。

それでは問うが、この戦争が帝国主義間戦争であれば、ゼレンスキー政権は米帝の傀儡政権・買弁ブルジョアジーとして、打倒対象になるのではないのか? ベトナム・インドシナ戦争におけるグエン・バン・チュー政権、ロン・ノル政権と同じなのか。旧日本帝国主義の中国侵略戦争における、汪兆銘政権と同じなのだろうか。

「ゼレンスキー政権の民族排外主義、ブルジョア権威主義独裁に頑強に抵抗しつつ、ロシアの帝国主義的侵略に立ち向かうウクライナの人々に連帯する。ブルジョア国家と労働者人民を峻別することは我々の原則であり、自国も含めたあらゆる〈戦争国家〉に抗う労働者人民の国際連帯こそが求められている。」(前出)と云うのだから、わが首都圏委においては、戦争国家のゼレンスキー政権打倒がスローガンになるようだ。

だが今回の戦争の本質は、ロシア帝国主義の侵略戦争とウクライナの民族解放戦争である。抑圧された民族の解放闘争が民族主義的で、ときとして排外主義的になるのは、あまりにも当為ではないか。中朝人民における日帝支配の歴史的記憶が、いまだに民族排外主義的な抗日意識をもたらすのを、知らないわけではあるまい。ウクライナ人民のロシア(旧ソビエト政権)支配に対する歴史的な憤懣も同じである。

第一次大戦と第二次大戦も、帝国主義間戦争でありながら、植民地従属国(セルビア=ユーゴ・東欧諸国・フィンランド・中国・インド・東南アジア諸国など)の民族解放戦争という側面を持っていた。

それは支援国が帝国主義国(第二次大戦におけるアメリカの中国支援など)であるとかは、まったく関係がない。反帝民族解放闘争の独自性を承認・支持するのは、国際共産主義者の基本的責務である。

侵略戦争に対する民族解放・独立戦争はすなわち、プロレタリアートにとって祖国防衛戦争となる。それは侵略者に隷属することが、プロレタリアにとっては二重の隷属になるからにほかならない。だから民族ブルジョアジーとの共同闘争が、人民戦争戦術として必要とされるのだ。したがって首都圏委のように「ブルジョア国家と労働者人民を峻別する」ことは必要ないのだ。中国における抗日救国戦争(国共合作)がその典型である。

「民族生命の存亡の危機に当たって、我等は祖国の危亡を回復救助するために平和統一・団結禦侮(ぎょぶ=敵国からのあなどりを防ぐ)の基礎の上に、中国国民党と了解を得て共に国難に赴く」(中国共産党「国共合作に関する宣言」)。

わが首都圏委によれば、マイダン革命も米帝の画策ということになる。そこにはウクライナ人民が民族主義者に騙され、米帝の関与によって政変が起きたとする陰謀史観が横たわっている。世界の大衆動乱はすべて、CIAやダーク・ステートの陰謀であると──。

人間が陰謀史観に支配される理由は、自分たちには想像も出来ない事態を前にしたときに、安心できる説明を求めるからだ。自分たちの経験をこえた事態への恐怖にほかならない。シュタージの一員としてベルリンの壁崩壊に直面して以来、プーチンに憑りついた恐怖心は民衆叛乱への怖れなのである。おなじ恐怖心が首都圏委にもあるのだろうか。

オレンジ革命とマイダン革命に、国務省のヌーランドをはじめとするネオコン、NED(全米民主主義協会)などの支援や画策があったのは事実だが、数千・数万人の大衆行動が米帝の画策だけで実現するとは、およそ大衆的実力闘争を体験したことがない人の云うことだ。おそらく実力闘争で負傷したことも、逮捕・投獄された経験もないだろう。

陰謀史観をひもとけば、ジェイコブ・シフらのユダヤ資本がボルシェヴィキに資金提供したからといって、ロシア革命がユダヤ資本に画策されたと見做せないのと同じである。われわれは大衆の行動力こそ、歴史の流れを決めると考えるが、いまの首都圏委はそうではないようだ。

記事の抄録は以上です。ここからさらに、ブント(新左翼)史に引きつけて、革命の現実から出発してきた共産主義運動の軌跡、ロシアと中国を官僚制国家独占資本を経済的基礎とする覇権主義的帝国主義であると理論展開する。

ここまでボコボコに批判すれば、およそ反論は難しいであろう。この記事を読んだ市民運動家や元活動家の感想はそういうものだった。

しかし、他党派の批判など気にしない中核派(大衆運動が頼み)とちがい、ブント系(組織が脆弱なので理論だけが頼り)において、批判への沈黙は党派の死である。どんな反論をしてくるのか楽しみにしていたところ、それはもの凄いものだった。

なんと、首都圏委員会は相互の論旨を「改ざん」してきたのである。わたしの言い分を部分的に引用することで歪曲し、自分たちの主張も核心部(わたしの批判の核心部)を隠すことで、みごとに(いや、臆面もなく)論軸をずらしているのだ。つまり論文不正を行なったのである。あまりの愕きに、おもわず笑い出してしまったものだ。(愕きと爆笑の後編につづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

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『一九七〇年 端境期の時代』

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