◆そもそも「自公政権による、よりましな内閣」などありえるか?

内閣が代わるごとに大手報道機関は、野党党首に新内閣についての感想をもとめる「新鮮味がない」、「この内閣でわが国が直面している問題を解決できるとは到底思えない」、「順送り論功勲章内閣」。いつも野党が批判をすることばの調子には大きな変わりはない。それはそうだろう。主義主張が違うから政党を構成しているわけであって、自民党と公明党の与党を野党が褒めていたら、八百長がばれてしまう。

まず、こういった紋切り型の質問をルーティンワークとして、なんの疑問もなく記事化するマスメディアの思考停止が前提ではあるが、このような意味のない質疑や報道があろうがなかろうが、「自公政権による、よりましな内閣」などありえるだろうか。岸田や石破が入閣すれば、なんらかの望ましい変化が起こるだろうか。わたしはほぼ100%に近く、そんな可能性はないと考える。誰が入閣しようが、自公政権の内閣に期待できる理由があったら、おしえてほしい。

◆野党にだって、期待できる勢力があるか?

そして(またこのようなことを書くと嫌われるのは承知の上である)、野党にだって、期待できる勢力があるだろうか。個々の問題で活躍している議員や、政治家がいることは否定はしない。しかし、立憲民主だか国民民主だか知らないけれども、一度は京都の「ここぞというときに必ず失敗する」前原の口車に乗せられ、あろうことか、小池百合子との合流を模索した連中。そして今日の惨憺たる悪政の基礎(総評解体、国鉄分割民営化、小選挙区制導入、諸規制の撤廃)の基礎を80年代に築いた、小沢一郎にどういうわけか惹かれるひとびと。

山本太郎がつくった新党だって同様だ(繰り返すがこの政党の名称は、あまりに反動的過ぎるので記すことを拒否する)。山本太郎自身が少し前まで、自由党の共同代表として、小沢と同じ船に乗っていたじゃないか。

山本太郎がつくった新党は「消費税の廃止」を公約に掲げた。結構。これについてはまったく異論はない。しかし、報道では一向に消費税率上昇の問題が報じられないじゃないか。あるのは軽減税率(この言葉もごまかしだ。「軽減」されるのではなく8%に据え置かれるだけじゃないか)と、増税の分かりにくさや混乱が取り上げられるのみで、「消費税率10%へ上昇」の根本的な問題は、一向に取り上げられない。

◆権力とマスメディアとの見え見えの構図

なぜだろうか。そこにはあまりにもわかりきった、見え見えの構図がある。新聞協会は(古い話になるが)民主党菅直人政権時代に、「次回の消費税アップの際は、据え置きを」と協会として申し入れをおこない、内諾を得ていた。民主党であろうが自民党であろうが、霞が関であろうが、既に「権力のチェック機能」を失ったマスメディアは、いわば、民間の広報官の役割を果たしてくれている。

「ウムウム、そちの働きぶりを勘案すれば、それも考えんわけにわいかんわのう」
「ありがたきご高配で」
「ハハハ、そちもワルじゃのう」
「なにをおっしゃります。お代官様ほどではござりませぬ」

の現代版を新聞協会と政権はやったわけだ。だから批判しない。なにしているんだ! 新聞社各社は! しかし、しっぺ返しは部数減で明確に表れている。いまのところ大新聞内の記者たちの待遇に変化はないようだ。しかし、急激な部数減は近い将来必ず経営を圧迫する。そのときに一挙に現場労働者の待遇が悪化し、消滅する全国紙も出てくるだろう(その筆頭は産経新聞であろうと予想している)。

◆昔、橋本聖子を叱りつける夢をみたことがある

だいぶ昔に橋本聖子を叱りつける夢をみたことがある。あったこともないし、それほど気にしたこともない橋本聖子。冬季五輪スケートで全種目に出場するだけではものたらず、自転車競技で夏季五輪にも出場、あれが気に入らなかった。選考はフェアーに行われたのだろうけど、自転車競技専門の選手がかわいそうじゃないか、というのが、わたしの直感だった。

夢の中でわたしは橋本聖子をっ叱っていた「力を過信して、力が通じればなんでもしていいと考えるのは間違いだ。それでは政治家とおなじじゃないか」と。

とうとう橋本聖子は入閣してしまった。もっと叱っておくべきだったと反省している。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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「風化」に楔を打ちこむ『NO NUKES voice』21号

波賀宙也は、圧倒は出来ず採点も際どくも、我武者羅に攻めた前進が世界王座獲得に導いた。

波賀宙也が前進強めて蹴って出る。トンサヤームは下がり気味

トンサヤームの転ばす技は冴えていた

S-1トーナメント55kg級は4名が前日計量時に、くじ引きで対戦相手が決まる方式。勝ち上がった馬渡亮太と大田拓真が次回興行で決勝戦が行なわれます。

前日の大阪・旭区民センター大ホールに於いて行なわれた誠至会主催興行で、NJKFウェルター級チャンピオン.中野椋太(誠至会)がチョ・ギョンジェ(韓国)を破り決勝進出を決め、畠山隼人は中野椋太と次回、65kg級決勝戦を争います。

鮮やかな彩りで舞うPPP

アトラクションとして歌のゲスト、川神あいさんが新曲の「愛の漂流船」と、出場選手へのエールとして「栄光の架け橋」を唄われました。

NJKFラウンドガールとして今後一年間の登場が決まった、PPP(トリプルP)の三名が披露されました。

◎NJKF 2019.3rd / 2019年9月23日(月・祝) 後楽園ホール17:00~21:15
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、IBFムエタイ本部

◆第11試合 IBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.波賀宙也(立川KBA/55.3kg)
    vs
2位.トンサヤーム・ギャッソンリット(タイ/55.2kg)
勝者:波賀宙也 / 判定2-1 / 主審:ソムサック・プラサート
副審:チャッチャイ48-49. 竹村49-48. 宮本49-48

ローキックで攻める波賀宙也

組み合っても波賀宙也のヒザ蹴りが優った

トンサヤームがミドルキックやヒザ蹴りは波賀を上回るが勢いはあまり無い。組み合ってのバランスを崩して転ばす技はムエタイらしさを見せるテクニシャンぶりを発揮。

第3ラウンドに入ると押され気味だった波賀が、我武者羅に出始めた。追う波賀に下がり気味のトンサヤームは、組み合ってのヒザ蹴りは波賀が多くなっていくが、トンサヤームの蹴りが、どう採点に表れるかは分かり難い展開。

波賀のローキックや衰えぬヒザ蹴りのしつこさが堪えたか、インターバルではやや曇りがちな表情だったトンサヤーム。

四名の審判構成は主審がタイ人、副審二名が日本人、副審一名がタイ人で採点が割れる結果となり、キックボクシングとして見極めれば確かに波賀の勝利は間違いないところ、タイ人だけの審判構成だったら結果は逆になっていたかもしれない際どさだった。

下がるトンサヤームに追う波賀宙也、ローキックは効果ある蹴りだった

◆第10試合 S-1ジャパントーナメント65kg級初戦3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/64.4kg)
    vs
WMC日本スーパーライト級チャンピオン.栄基(エイワS/64.7kg)
勝者:畠山隼人 / 判定3-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷30-26. 竹村30-26. 宮本29-26

蹴りでの探り合いからパンチの距離に移っていくと畠山のパンチがヒットし、これでリズムを作った畠山。栄基は重い蹴りがあり、時折、ハイキックを繰り出し畠山の勢いを止める。

第3ラウンドには打ち合いが増すと、栄基のパンチもヒットし、相打ちも起こるほど激しくなる。栄基が打たれ気味に陥ったところで畠山の連打で栄基はノックダウンを喫する。畠山が勢い強めて出ると更にパンチで栄基をロープ際まで吹っ飛ばすようにロープダウンに繋げる。栄基は残り少ない時間でも巻き返しに出るが逆転成らず。

栄基の蹴りに合わせて右ストレートを打ち込む畠山隼人

◆第9試合 S-1ジャパントーナメント55kg級3回戦

JKAバンタム級チャンピオン.馬渡亮太(治政館/54.95kg)
vs
WMAF世界スーパーバンタム級チャンピオン.知花デビット(エイワS/54.9kg)
勝者:馬渡亮太 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:多賀谷30-28. 竹村30-28. 宮本30-28

馬渡亮太のハイキックが何度も知花デビットを捕らえた

知花デビットの負傷した額に前蹴りをヒットさせた馬渡亮太、足の裏に血が残る

蹴りの様子見から馬渡が長身で手足の長さを活かしハイキックでリズムを掴む。知花はパンチとローキックで出るが、主導権を手繰り寄せることが出来ない。

馬渡のヒジ打ち、ヒザ蹴りの圧力が増していくと、一瞬のヒジ打ちで知花の額をカットする。

ヒットを増やし、更に負傷箇所を深くしたが、2度のドクターチェックもレフェリーは続行を認め、知花は逆転を狙って打ち合いに出て行く。

第3ラウンドも馬渡の主導権は譲らぬまま進み、知花は打ち合いに出るも負傷箇所への更なる悪化は免れ終了まで攻めて出た。  

流血激しくなった知花デビットを再度ドクターチェックへ導く

打ち合う両者、知花デビットも最後まで諦めなかった

◆第8試合 S-1ジャパントーナメント55kg級3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/54.95kg)
    vs
JKIスーパーバンタム級チャンピオン.岩浪悠弥(橋本/54.9kg)
勝者:大田拓真 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷30-29. 竹村29-28. 和田29-28

互いのパンチと蹴りの交錯が続き、第2ラウンドはやや距離が詰まるとパンチとヒザ蹴りが増える。

第3ラウンドに入って岩浪がパンチの圧力を強めるも、太田もパンチと蹴り、ヒザ蹴りのコンビネーションでややペースを上げて岩浪の手数を減らすと、太田の攻勢的印象が残った。

大田拓真の右ミドルキックが岩浪悠弥にヒット

攻めのリズムが上回っていった大田拓真

シンダムの重心はブレず、ヒザ蹴りのバランスが良かった

◆第7試合 58.0kg契約3回戦

MA日本フェザー級チャンピオン宮崎勇樹(相模原S/58.0kg)
    vs
シンダム・ゲッソンリット(タイ/57.85kg)
勝者:シンダム / 判定0-2 / 主審:宮本和俊
副審:多賀谷29-29. 神谷28-30. 和田28-30

体幹しっかりしたシンダムのバランス良い蹴り、組み合ってもヒザ蹴りが目立ち、パンチで勝負を懸ける宮崎を上回って判定勝利。

◆第6試合 63.0kg契約5回戦

NJKFライト級チャンピオン.鈴木翔也(OGUNI/62.9kg)
    vs
晃希(team S.R.K/62.65kg)
勝者:鈴木翔也 / TKO 5R 1:32 / カウント中のレフェリーストップ
主審:竹村光一

5回戦ならではの総合力が試された展開。晃希にヒジで切られた鈴木翔也のジワジワ巻き返しが活きた計3度のノックダウンを奪った逆転TKO勝利。

後半の鈴木翔也のしぶとさが活きていった

川神あいさんの歌声が響いた後楽園ホールのリング

◆第5試合 57.2kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級チャンピオン.久保田雄太(新興ムエタイ/57.2kg)
    vs
J-NETWORKフェザー級チャンピオン.一仁(真樹AICHI/57.15kg)
勝者:一仁 / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本27-30. 神谷28-30. 竹村28-29

◆第4試合 66.0kg契約3回戦

NJKFライト級1位.野津良太(E.S.G/65.9kg)
    vs
NJKFウェルター級10位.洋輔YAMATO(大和/65.6kg)
勝者:洋輔YAMATO / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:宮本28-29. 多賀谷28-30. 竹村28-30

◆第3試合 60.0kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級3位.梅沢武彦(東京町田金子/59.85kg)
    vs
NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛汰朗(VERTEX/59.7kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:和田30-28. 多賀谷30-27. 竹村29-28

◆第2試合 バンタム級3回戦

雨宮洸太(キング/53.35kg)vs 七海貴哉(G-1 team TAKAGI/53.2kg)
勝者:七海貴哉 / TKO 1R 2:08 / 主審:宮本和俊

◆第1試合 ライト級3回戦

慎也(ZERO/59.9kg)vs 蓮YAMATO(大和/59.9kg)
勝者:蓮YAMATO / TKO 1R 2:06 / 主審:竹村光一

決勝戦で対戦する大田拓真と馬渡亮太

《取材戦記》

新しいテーマが加わったNJKF興行。2005年のWBCのムエタイ進出に加え、IBFも2年前にムエタイ界進出し、タイで立ち上げられた世界タイトル。

S-1トーナメントはタイの大物プロモーターで長年名を馳せるソンチャイ・ラタナスワン氏が掲げるイベントで、今回の日本版が開催。この優勝者はタイでのS-1トーナメント出場やIBFムエタイ世界ランキングにランクされるなど、好待遇が得られるという。近年、いろいろなビッグイベントが立ち上げられてきましたが、いずれも3年後に存続しているか、活性化しているかが注目点でしょう。

キックボクシングとムエタイ界で世界機構は幾つも誕生してきた過去に対し、プロボクシング主要団体がムエタイ界に進出してきた近年、元からあるキックボクシングとムエタイの世界機構より優らなければ意味が無いところで、WBCやIBFブランドだけが一人歩きしている感もある中、数ある世界機構の中に埋もれてしまわないよう願いたいところです。

波賀の防衛戦は期限が9ヶ月で、「来年の6月に初防衛戦を予定しています」と言う伊藤会長(立川KBA)。IBF傘下として、プロボクシングの規定を継承し、指名試合も明確に行なって欲しいところ。強い相手と防衛していかねば王座の価値が上がらないし、波賀宙也には過酷な防衛ロードをこなしてこそ世界の頂点に立つ証となるでしょう。

次回、NJKF興行は11月30日(土)に後楽園ホールで「NJKF 2019.4th(ファイナル)」が開催、S-1 55kg級と65kg級決勝戦が5回戦で行なわれます。

PPP登場、左からKANAさん、岬愛奈さん、星紗弓さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

◆「経産三羽烏」から官邸の危険な親衛隊へ

今井尚哉総理秘書官(総理補佐官兼務)

今回、補佐官になった今井尚哉(61歳・経産省出身)は、総理秘書官兼務である。秘書官の立場から、補佐官という実権のある立場を兼務させたのは、その忠誠ぶりと辣腕を買ってのことである。東大法学部から通産省(当時)とエリートコースを歩んだ今井氏は、エネルギー政策に関する部署を歴任したことから、原発推進の中心的な官僚だった。

福島第一原発事故をうけて、民主党菅政権が脱原発に動くところ、民主党および嘉田由紀子滋賀県知事、橋下徹大阪府知事ら地方公共団体の首長に直談判して説き伏せるなどして、再稼働への道すじをつけた。これらの活動から「経産省に今井ありと評されるようになり、同期入省の日下部聡、嶋田隆とともに「経産三羽烏」と称された。

叔父の今井善衛は、城山三郎の小説『官僚たちの夏』で主人公と対立する官僚「玉木」のモデルとしても知られ、商工官僚を経て通商産業省で事務次官を務めた。また、同じく叔父で公益財団法人日本国際フォーラム代表理事の今井敬は、新日本製鐵の社長を経て経済団体連合会の会長を務めた人物で、現在はほかに一般社団法人日本原子力産業協会理事長の職に就いている。今井氏の父親こそ医師だが、原子力村の一族といえよう。若いころから「サラブレッド」と呼ばれてきたのは、親族に重要閣僚と財界の重鎮がいるからにほかならない。

安倍総理との出会いは2006年、第一次安倍政権のときに内閣府に出向し、総理大臣秘書官となっている。第二次安倍政権でも秘書官となり、今回補佐官を兼務することになった。

上述の今井善衛の妻は山崎種二の娘であり、安倍晋三夫人である安倍昭恵の叔母が山崎種二の三男(山崎誠三)に嫁いでいるため、今井家と安倍家は縁戚に当たる。したがって、お友だちならぬ「親戚人事」でもあるのだ。アベノミックス、一億総活躍社会などは、この人の発案によるといわれている。

安倍首相と今井尚哉総理秘書官(総理補佐官兼務)の閨閥関係

◆平成・令和の「影の総理」?

メディアによる「評判」は以下のとおりだ。

「今井には何より『総理独り占め』のカードがある。首相のアポは思いのまま、入れたい情報は耳打ちし、入れたくない情報は握りつぶす」(FACTA)

「安倍総理の右腕とも言われ、スケジュールを一手に握っていることから、大物政治家も一目置いている。一方で今井氏の機嫌を損ねると、面会を取り次いでもらえないとの悪評も多い」(週刊文春)

「政局対応、官邸広報、国会運営、あらゆる分野の戦略を総理の耳元で囁く。決断するのは総理だが、その影響力は計り知れない」(プレジデントオンライン)

籾井勝人元NHK会長を覚えておいでだろうか。あの「NHKは政権の言うことを尊重する」などと、公共放送を捻じ曲げた人物である。その籾井会長が350億円の土地購入計画を強引に進めようとしたとき、NHKの理事4人が反対した。これに対し、今井氏は籾井氏を官邸内で徹底擁護している。なぜなら、籾井氏をNHK会長に推したのが叔父の今井敬氏だったからだ。今井氏は同じく安倍首相のお気に入りのNHK解説委員である岩田明子氏と共謀し、反対した理事4人を追放したのだ。悪夢のような「籾井時代」の引き伸ばしに一役買ったといわれている。

「影の総理」とは、雁屋哲原作・池上遼一作画の「男組」に登場する政財界の黒幕のことで、児玉誉志夫(ロッキード事件被告)がモデルと言われている。また、キングメーカーという意味で田中角栄をほうふつとさせる。いずれもロッキード疑惑が発覚する時代に「男組」が連載されていたので、実感をもって「影の総理」という言葉の響きが感じられたものだ。

しかし昭和の「影の総理」とちがって、平成・令和の「影の総理」は姿を隠すことなく、前線で辣腕をふるう。

◆「特殊性」を同和地区に誘導する?

補佐官兼務となった今井尚哉秘書官は、森友学園の公文書改ざん問題で財務省に改ざんを命じた人物ではないか、と言われている。複数のメディアが今井氏を名指して「疑惑の本丸」あるいは「司令塔」と報道していたものだ。前川喜平元文科事務次官もこう証言している。

「官僚が、これほど危険な行為を、官邸に何の相談も報告もなしに独断で行うはずがない。文書の詳細さを見れば、現場がいかに本件を特例的な措置と捉えていたかがわかる。忖度ではなく、官邸にいる誰かから『やれ』と言われたのだろう」

「私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる。国有地の売買をめぐるような案件で、経済産業省出身の一職員である谷査恵子氏の独断で、財務省を動かすことは、まず不可能。谷氏の上司にあたる今井氏が、財務省に何らかの影響を与えたのでは」(「週刊朝日」2018年3月30日号)

それだけではない。森友学園の報道を抑えるために、卑劣な差別的誘導を行なった可能性があるのだ。

森友問題では、財務省の文書に「本件の特殊性」という文言が登場する。この「特殊性」が総理夫人の関わる案件を示しているのは明白だ。ところが財務省が文書改ざんの事実を認める方針が伝えられた時期から「『特殊性』とは同和のこと」なるツイートが大量に拡散されたのだ。ネトウヨや右派評論家たちも、これを書き立てるようになった。同和地区だから、国有財産が安価に下げ渡されたのだと。しかしこれは、まったくのデマである。

じつはこのデマ拡散に、今井首相秘書官がかかわっているのではないかと言われているのだ。「週刊文春」2018年3月22日号で、官邸担当記者はこう語っている。
「今井氏らは夜回り取材などにも饒舌になって、Aさんの自殺を書き換え問題と関連付けないように記者を誘導していました。他にも『〈特殊性〉は人権問題に配慮してそう書いた』との情報を流布させ、事態の矮小化を図っていました」

引用中のAさんとは、自殺した近畿財務局職員のことである。そして明らかに、部落解放運動のつよい大阪という地を意識して、「人権問題を配慮して」なる誤情報を流したというのだ。昭和の「影の総理」が叩き上げの右翼、あるいは土建屋出身の荒々しさを持っていたのに比べて、平成・令和の「影の総理」の何という卑劣で矮小なことか。サラブレッドとは「お坊ちゃん」という意味でもある。この秘書官兼補佐官が地に落ちるとしたら、このあたりの世間知らずが原因になるかもしれないと指摘しておきたい。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

創業50周年 タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』10月号

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◆センター仮庁舎のどうにも止まらない雨漏りの原因は?

センター仮庁舎のどうにも止まらない雨漏りの原因は?

9月20日、大阪地裁で「公金違法支出損害訴訟」(センター住民訴訟)の第4回目の裁判が開かれた。この裁判は、西成あいりん総合センターの建て替えに伴い建設された南海電鉄高架下の仮庁舎の予算が、適正に運用されているかを争うものだ。

今回、原告は書面にて仮庁舎が安全性が保証されない高架下に建設されたこと、合理的な理由がないにもかかわらず、南海辰村建設と随意契約したことの違法性などを主張した。

7億5,000万円の税金を使って建てたセンター仮庁舎で、開業2ケ月後に雨漏りが発生、それが一向に止まらないことは前回報告した。

その後、天井板を交換したり、天井裏に水受けを設置するなどしたが、雨漏りは止まらず、最後はバケツで受けていた。窓枠にも水滴が垂れ、床には吸水シートが敷かれていた。

建設業で働く人からは「屋根の防水工事が施されてないのでは?」「高架の上に降った雨が、スラブ(床)や梁、柱を伝って溢れるのでは?」などの声が出ている。同じ高架下に作られた1階建てのあいりん職安仮庁舎では雨漏りは確認されていない。センター仮庁舎の雨漏りの原因は何か? 仮庁舎でどんな工事が行われたのか?

南海電鉄は、高架からコンクリートが剥落する危険性などを防ぐためとして、センター仮庁舎のコンクリートの劣化が認められた部分に断面復旧材による補修を行い、コンクリートにクリアガードを塗布したという。

工事の詳細は省くが、この工事はコンクリートの気密性や水密性を確保し、鉄筋腐食の進行は抑制できるが、鉄筋の入った、高架を支えるコンクリート構造物の強度そのものを回復するものではない。

設置から81年経過し老朽化した高架下の柱のコンクリートには、無数の細かいクラック(ひび)があるが、空気や水分はこのクラックを経由して鉄筋に到達しうる。高架上の線路から雨水や空気が、クリアガードに遮断されずにコンクリート構造物に浸透していく。

つまり断面復旧材による補修や、クリアガードによっても、コンクリート構造物の気密性、水密性は確保されず、鉄筋腐食は進行していくことになる。じっさい工事後も、コンクリートの亀裂から、鉄の錆を含んだ茶色い水が出ている。

◆耐震工事のやってないセンター仮庁舎は危険ではないのか?

では、南海高架下の耐震性はどうなっているのか? じつは、センター仮庁舎から南へ200メートルいった萩之茶屋駅南側で最近、高架下の柱に重厚な鋼板を張り付ける耐震補強工事が行われている。

同じ工事は、南海電鉄の難波駅や今宮戎駅周辺でも行われてきた。しかし、そうした工事が、センター仮庁舎では行われていない。仮庁舎を決める際の「まちづくり会議」で、南海電鉄の耐震性に疑問の声があがったが、識者からは「南海に確認したところ、今回仮移転の検討を進めている場所は、耐震化の対象外」と返答されている。

更にデータなどの提示を求めた委員に、府職員が「南海を信用できないのか?」と言う場面もあった。腐食が進行しつつある柱を取り込んで建設されたセンター仮庁舎の耐震性は、果たして大丈夫なのか? 劣化した高架下に建造物を建てるならば「耐震化の対象外」とはいえ、大事をとって耐震補強工事を施すべきではなかったか? それをやらずに、工事を急いだのは、何故か?

◆大阪維新の「西成特区構想」にあわせた「まちづくり」が狙うものは?

高架下の安全性など十分考えずに仮庁舎建設を急いだのは、大阪維新の「西成特区構想」の目玉であるセンター建て替えを、新今宮駅前の再開発計画にあわせて進めたいからだ。そのため兎にも角にも労働者や野宿者をセンター周辺から「どかしたい」。これが大阪維新とともにまちづくりを進める人たちの狙いだ。

そのために、センター建て替えの理由を「耐震性の問題」としてきた人たちが、耐震性に疑問の残る仮庁舎に、4~6年、労働者を押し込めようという。おかしな話ではないか。

センター解体の目的が「耐震性」の問題ではないことは、耐震性に問題ない「第二市営住宅」まで解体することからも明らかだ。元市長の橋下氏は、「あいりん総合センターは、解体後、跡地の北半分を駅前再開発に使いたい」と明言していた。センター解体の目標は、そのために、新今宮駅前の広大な更地を確保すること、しかもなるべく使い勝手の良い台形の更地を確保することだ。まだ使える第二住宅を、税金を使って解体するのは、凸凹を平らにするためだ。

センターをつぶした跡地利用案の一例

◆大阪府は、随意契約した南海辰村建設にも責任を負わせろ!

今裁判で、大阪府は、どんなことがあっても南海電鉄に賠償責任を負わせないという免責条項を盛り込む「高架下区画地一時使用計画書」を作成していたことがわかった。

当初3か所提示された仮庁舎の建設場所を、南海電鉄高架下に決めたのち、大阪府は随意契約で南海辰村建設を相手方に選んだ。その理由を大阪府は「高架下にある特殊性により、安全性を配慮して」と述べていた。「高架下にある特殊性により、安全性を配慮して」というからには、随意契約の相手方・南海辰村建設に安心・安全に責任を負わせることが不可欠であるにもかかわらず、大阪府はそれを免責してしまった。しかも、ここで大阪府と南海が、利益相反の関係であることも明らかになった。これは随意契約を原則として禁止する地方自治法234条2項違反ではないのか。

◆日本の経済を末端で支えてきた人たちが、無残に排除されていいのか?

日本最大の日雇い労働者の町・釜ヶ崎は、1970年開催の「日本万博博覧会」に向け、大量の労働力を確保するために、国策で作られてきた。政府は、万博招致が決まった1966年以降、急ピッチで会場の建設・整備工事が進めることとなり、1967年~1969年万博関連の仕事に就く労働者を全国からかき集めてきた。労働者を詰め込めるだけ詰め込むために作られたドヤが、現在も何棟か残っている。

左ホテルの2階の位置の高さに、右ホテルの3階の窓がある

こうして国策で集められた人たちは、その後様々な理由で家族や故郷との離散を余儀なくされ、釜ヶ崎を第二の故郷に選び、生活を続けてきた。高齢化し、生活保護や年金で暮らす人、野宿者、ガードマンや清掃など比較的軽い仕事に就く人などさまざまだ。

日雇い労働者こそ減ったものの、困難は何一つ変わっていない。DVから逃れてきた女性、安宿を求める非正規雇用や派遣労働者、精神疾患を持つなど生きづらさを抱えた人……差別や貧困が拡大する今、釜ヶ崎のような場は、一層必要になってきている。そうした人たちを暴力で「どかして」つくる「まちづくり」とは何かと考えるとき、どこかで聞いたこんな言葉を思い出す。「再開発を決めるのは、いつもどこでも、そこにいない人」。

具体的にそこに住むか住まないではない。まちづくりをいうときに、そうした釜ヶ崎の歴史を踏まえ、誰が主役のまちにすべきかを考えることが重要だ。

「要するに、あっちにできるホテルから、俺たちを見えなくさせたいんやな」。今朝、「センターつぶすな!」のビラを撒いていると、おっちゃんが私にそう言った。JR新今宮駅の向こう側には、星野リゾートの建設が進んでいる。

釜ヶ崎のセンター周辺には、新しい仲間もポツポツ増えている。センター開放行動主催の「秋祭り」は10月27日(日)11時~17時。センター団結小屋周辺で。

星野リゾート建設現場

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。最新刊の『NO NUKES voice』21号(9月11日発売)では「住民や労働者に被ばくを強いる『復興五輪』被害の実態」を寄稿

「風化」に楔を打ちこむ『NO NUKES voice』21号

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体罰。

一見、理がありそうで生徒・児童に何らかの教育的効果が期待できそうな響きを持つ倒錯。

わたしは教育機関におけるあらゆる「体罰」を全面的に否定する。高校・大学の運動部においても同様。わたしがこれまで体験してきた「体罰」は、生徒・児童の不適切行為に対する教師の、やむにやまれぬ選択であったことは一度もない。

逆だ。極めつけは「お前のその目つきはなんじゃ!」と、その筋の人間まがいの言いがかりをつけ、柔道で国体に出場経験のある教師が、生徒を投げるは蹴るは(木製タイルの上で)。その行為をわたしたち間では「殺人フルコース」と呼ばれていた。

◆生徒の鼓膜を破っても無罪放免だった中学教師の「狂乱」

不良なんか一人もいないおおらかな中学だった。だからその教師の「狂乱」が発生すると授業中のほかのクラスにも教師の怒鳴り声と、生徒の悲鳴が拡散する。心ある教師たちは、その悲鳴を聞いて「困った……」表情を隠しはしなかった。鼓膜を破られた生徒もいたがなぜか問題にされなかった。

柔道やボクシング、空手経験者が暴行傷害で検挙されると、通常人の行為よりも重く罰せられると聞いたことがあるが、その教員の過剰な暴力を校長も、他の教師もPTAも問題にはしなかった。彼らの言い分は「熱心な先生だから」。

馬鹿を言え!と言いたかったが、わたし自身もその教員に暴力を食らったことがあり(しかもその理由は極めて陰湿かつ政治的なものだった)中学生の頭脳と語彙では対抗することができなかった。歴史や文化の浅い街「ニュータウン」では、一般的な地域よりも権利意識が希薄であり、保護者連中も総じて教師に傅いていた記憶がある。

そしてこれは経験上の法則であるが、「暴力」教員を放置する学校では、もとは「暴力」を振るわなかった教員の「暴力」が蔓延する。「あの人もやっているから大丈夫なんだ」と思うそうだ。卒業してから20年ほどして暴力に手を染めた教員に感想を聞いた。無責任であるし、言語道断だと思う。

◆2012年「反原発」集会で目の前に現れた「高蔵寺高校分会」の組合旗

2012年東京。大規模な「反原発」集会とデモが行われていた。わたしはそこで腰を抜かしかけた「高蔵寺高校分会」の組合旗を目にしたからだ。そこそこベテランと思われる「高蔵寺高校分会」の旗を持った、おじさんに声をかけた。

「先生は高蔵寺高校の方ですか?」
「そうです。ここにいる3人は分会のメンバーです」
「わたしは高蔵寺高校の卒業生です。わたしが生徒だった頃は、組合に入っていた先生は一人しかいなかった。そしてひどい学校でした」
「開校当初の入学ですか」
「そうです」
「あの頃は酷かったでしょうね。声も出せなかったからね」
「いま、組合の先生は何人ほどいらっしゃるんですか」
「分会には20人近くいますよ」

光陰矢の如し、である。もちろん30年近い時間が経過しているのだから、変化は当然にしても、数万人集まった集会の中で、目の前に忘れようにも忘れられない「授業料を払いながら通う『刑務所』」の組合旗が現れたのは、表現するのが難しい感覚だった。

校長公認で学校ぐるみで生徒への暴力を推奨するのが、わたしが通っていた「授業料を払いながら通う『刑務所』」こと愛知県立高蔵寺高校であった(いまでは当時のような無茶な教育は行われていないと聞く)。

◆「東郷方式」という犯罪的教育ファシズムの嵐

1980年代。愛知県内では新設校で「東郷方式」と呼ばれる、犯罪的教育ファシズムの嵐が吹き荒れていた。愛知県立東郷高校ではじまった、この教育に名を借りた犯罪は、たとえば、学校には文化祭、生徒会、修学旅行、などは一切なし。高校は勝手に「集団行動訓練」と呼んでいたけれども、実質的な「軍事教練」が日々行われる。

毎日2回ある掃除の時間には生徒が、受け持ちの場所に走ってゆき教員に「点呼報告」を行う。

「報告します総員〇名、現在〇名。以上ありません」
「よし」(教員)
「お願いします」

これで掃除が始まるのだ。掃除の終了時には再び点呼報告がある。
「報告します総員〇名、現在〇名。以上ありません」
「よし」(教員)
「ありがとうございました」

いったい、1日に2回の掃除を強要されて、誰に「お願い」したり「ありがとうございました」という必要があるのだ。と、いう疑問をもってそれを発露すると大変なことになる。わたしは愛知県立高蔵寺高校在学中に、市来宏、冨田正二、英語担当の山本某、体育の佐治某など数えきれないほどの教員から個別に、あるいは集団暴行を何度も受けた。

ある時は現代国語の試験に「何でもよいから短歌をかきなさい」という設問に短歌を創作したら「その内容がけしからん」と職員室に呼び出されて暴力を振るわれた。

◆教師の8割以上が「日本教育会」の構成員だった

冨田正二は非常に悪質な音楽の教師であったが、暴力高校の屋台骨を背負っていた感がある。この男には音楽の時間に校歌ばかり歌わせられた。そういうくだらない授業に辟易していたので、3年生で非常勤の音楽の教師が「どんな授業を受けたいか書いてください」と4月の初めにアンケートを配布された際「1年生の授業はつまらなかったので、楽しい授業をお願いします」と書いたら、そのアンケートをどういうわけか冨田が見ていて(!)またしても職員室に呼び出され、顔や腹を殴られた。

また冨田は「日本教育会」という、当時は統一教会との関係も取りざたされた団体のリクルーターだった。「授業料を払いながら通う『刑務所』」に在籍していた当時の教師の8割以上は「日本教育会」の構成員だった。

◆「『申し訳ございませんでした』と学校に詫びろ」と罵声を浴びせる英語教師

愛知県立高蔵寺高校では、受験成績を上げるために、文系志望の比較的成績の良い生徒には、愛知大学と南山大学を受験するように強要が行われていた。わたしを含む学校にまったく好感を持たない生徒は愛知大学・南山大学の受験を拒否したが、そうすると保護者にまで電話を掛けたり、通知書に「どうして愛知・南山を受けようとしないのでしょうか」などと平然と書き込む馬鹿教師もいた。

3年生の時担任であった国語の中村某もその一人だ。中村は地頭が悪く、少しでも議論になると頭の整理がつかなくなり、破綻して現場を逃げ出すか「俺にも家族がある」と情けない言い訳をするどうしようもない教師だった。

だが中村以上に悪質で、特筆すべきは英語担当の山本某と市来宏だ。山本は45分間の授業の間に、毎回最低30回以上わたしを指名し、回答をさせた。わたしのクラスは30数人いたと思う。その中で私だけが毎回30回以上指名されるのだ。45分間に30回以上、多いときは40回以上回答を求められるので、好意的に解釈すれば「個人指導」を受けているようなもの(笑)だが、回答を間違えようものなら「ほらみろ! お前はいつまでも学校に反抗的な態度をとっているから、間違うんだ! 『申し訳ございませんでした』と学校に詫びろ」という罵声をあびせられるのだから、山本の行為はいじめといって過言ではなかったろう。

山本から罵倒された数は記憶できる範囲を大きく超えている。しかも山本は愛知大学・南山大学の受験を拒否する生徒に「受験料は先生が出したる」と授業中に公言し、実際に2万5千円(受験料相当額)を友人に無理やり受け取らせようとしていた。暴力教師の間では「自分の高校の生徒何人を愛知大学・南山大学に合格させたか」が競争のバロメーターになっていたのであろう。何たる貧弱な発想。迷惑な行動だろうか。

◆生徒に散々暴力を振るい、校長にまで出世した市来宏はしらを切る

市来宏は生徒に散々暴力を振るい、校長にまで出世して、退職後は馬を飼い、それが地元のテレビ、新聞で「美談」かのように報じられたが、とんでもない。この男ほど暴力の常習者はいなかっただろう。ちなみに市来宏はその話を『愛馬物語―クラリオンと歩む北の大地』として出版している。

竹刀を短く作り替えた「暴力専門」の棒を常に持ち歩き、少しでも気に入らない生徒の振る舞いがあれば、何の躊躇なく暴力を(しかも道具を使い)振るう。言葉での恫喝は趣味だったようで、こいつにはサディストの気があったのだろう。

数年前に市来に電話をして、「どうしてあなたはあのように暴力を振るったのか? わたしにどうして執拗に嫌がらせをしたのか?」と聞いたところ市来は「そんなことはしていない」と開き直った。ちなみにわたしの成績証明書は改竄されている。当時社会科の「倫理社会」は必須科目だったが、わたしたちの学年は教科書だけ買わされて、一度も「倫理社会」の授業を受けたことがない。にもかかわらず成績証明書には評価がつけられている。

その理由を市来に聞くと「知らない」としらを切る。何をいっているんだ! 学年主任だった市来が知らないところで成績の改竄が行えるわけがないじゃないか。自分に都合の悪いことは「知らない」癖に「あの頃の高蔵寺高校はどこよりも自由だった」と、腰を抜かしそうなことを言う。

電話をかけた当時市来は(現在は知らないが)痴呆だったわけではない。自分に都合の悪い質問は、言葉巧みにかわそうとしていた。わたしたちの学年の国公立大学志望者は、全員防衛大学の受験が強要された。この件は朝日新聞の社会面で報道されたが、その件を市来に聞いても「そんな事実はない」ととぼける。このような人間は本来、教育にかかわってはいけないのだ。(つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◆陰険な言論統制と強烈な官僚統制

派閥順送りの閣僚人事は無能大臣を生み出し、国政の停滞をもたらすに違いない。今井絵里子内閣府政務官や小泉進次郎環境相ら若手の「育成」登用も、政権の人気浮揚効果とともに政局がらみであることで、今回の改造人事の内実は明らかだ。しかし国会答弁で詰まるような大臣がいても、それは無視して必要な法案が通ればよい。政局が水面下で展開しようと、審議と実効性のある施策が実施されればよい。それよりも問題なのは、国民に負託されない実権者たちが、この国の道筋を「勝手に」つくってしまうことではないだろうか。

閣僚のほかに、官邸人事も刷新された。じつは議員たちがなりたがる大臣や政務官よりも、官邸人事のほうが政権にとっては重要なのだ。補佐官、内閣特別顧問といった肩書の総理のスタッフこそが省庁に指示を出し、人事権をもって霞が関を統制・支配しているのだから。いわば安倍総理の代理人として、親衛隊として暗躍しているのが官邸スタッフなのだ。

かつて、北村滋内閣情報官(警察庁出身)はメディアから「日本のアイヒマン」と呼ばれてきた。その北村滋は今回、国家安全保障局長および内閣特別顧問となった。これまでどおり、安倍政権の情報統制や政敵のプライベート情報を調査する「情報将校」としての役割をつよめるのは必至であろう。

ただし、アイヒマンという表現は必ずしも当たっていない。親衛隊将校アドルフ・アイヒマンは、ユダヤ人虐殺を行なった収容所行政や囚人輸送に大きな役割をはたしたが、かれが虐殺を立案したわけではない。戦後、南米で潜伏中を摘発され、裁判にかけられたときに、アンナ・ハーレントが彼のことを、どこにでもいる普通の人物が虐殺に手を染めたと、ファシズムにとりこまれる人間の凡庸さを論評したもので、そもそもアイヒマンは情報将校ではないし、北村滋を内閣情報官に任命したのは民主党・野田政権である。

◆危険な総理補佐官

木原稔総理補佐官

それはさておき、今回この欄で取り上げるのは、北村滋のような理論肌の官僚出身者ではない。もっと強引に辣腕を振るいかねない、危険な総理補佐官である。その人物の名は、木原稔。熊本県第1区選出の衆議院議員だ。

ご記憶にあるだろうか。2015年に自民党「文化芸術懇話会」(文化人と政治家が参加)において、作家の百田尚樹が「沖縄のふたつの新聞(沖縄タイムス・琉球新報)はつぶさなアカン」と発言したことを。この懇話会の代表をつとめたのが、木原稔総理補佐官(衆議院議員)なのである。

ほかにも出席者から、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」との声が上がった懇話会である。内閣官房長官の菅義偉すらも、懇話会での「マスコミを懲らしめる」といった発言について「報じられたことが事実だとすれば、どう考えても非常識だと思う。国民の審判を受けて国会に来た人は、自らの発言に責任を持つべきだ」と会見で述べている。この懇談会での報道圧力発言の責任を問われて、木原が党の青年部長を更迭されたのは言うまでもない。


◎[参考動画]【日いづる国より】木原稔、安倍晋三を支える決意[桜H25/1/18](SakuraSoTV 2013/1/18公開)

同じ2015年の沖縄全戦没者追悼式で、安倍総理に怒号が浴びせられたとき、木原は「主催者は沖縄県である」「たくさんの式典や集会を見ているから分かるが、明らかに動員されていた」「そういったことが式典の異様な雰囲気になった原因ではないか」と、ヤジを飛ばしたのは県の動員による参列者であると示唆している。

主催した県側は「動員などはあり得ない」と反論したが、主催者の一人である県議会議長の喜納昌春に「いくら何でもひどすぎる。ゆゆしき発言で、悲しくなる」「自民党に沖縄のことを何も知らない議員がいることが問題。末期的だ」と批判されたのは記憶に新しい。

青年部長を更迭ののち、木原は三か月で党の文部科学部会長に就任する。問題児ながら40代のはたらき盛り。期待の中堅政治家であることに変わりはなかった。

しかるに2017年には「子どもたちを戦争に送るな」という教育は偏向教育であり、特定のイデオロギーだと主張している。それに関連して、自民党のホームページに学校の教員情報を投稿できるフォームを設置したのも、自民党文部科学部会の会長・木原稔議員だったのだ。そのフォームには「学校教育における政治的中立性についての実態調査」とあった。そして、こう呼びかけていたのだ。

『教育現場の中には「教育の政治的中立はありえない」、あるいは「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です。』

『学校現場における主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがあり、高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております。』

そし木原のツイートがこうだ。

『「子供たちを戦場に送るな」というのは、政治的中立を逸脱している。そんな発言をした「先生方」は自民党に報告してほしい。』と。一時的にとはいえ、自民党のホームページが密告を奨励するサイトと化したのだ。自民党および木原に批判が殺到したのは言うまでもない。


◎[参考動画]【木原稔・稲田朋美】地方に漲る力と絆、伝統と創造の会の役割[桜H26/5/16](SakuraSoTV2014/5/16公開)

ようするに、この男は極右政治家なのである。その意味では、官僚出身の総理補佐官とは違って、国民の負託を受けた独自の活動(行き過ぎ)をおこなう危険性がある。木原稔にはこれらの「前科」があることを確認しておこう。

現在、総理補佐官は官僚出身の今井尚哉と長谷川榮一(経産省)、建設官僚出身の和泉洋人、政治家は薗浦健太郎、秋葉賢也、そして木原稔の6人である。かれらが安倍総理の「分身」として暗躍するとき、官邸主導・一極支配の構造はいやがうえにも強化されるのだ。

国民に負託されていない官僚出身者は言動が慎重だとされるが、この総理補佐官の中には官僚出身でも極めて危険な人物もまぎれている。次回は「影の総理」とまで言われる人物を紹介することにしよう。


◎[参考動画]木原みのる財務副大臣 国政報告 アベノミクスの実績 麻生さんの話も(seikei-jpn2019/2/12公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

創業50周年 タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』10月号絶賛発売中!

安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

順送り人事ゆえに、およそ職務に不適格な高齢閣僚、暴力団との関係が深い反社閣僚、あるいは小泉進次郎の「転向」にみられる政局含みと。ここまで第4次安倍改造内閣の閣僚たちを紹介してきた。ものごとには、いろどりというものがある。今回はその、いろどりを色事で飾ってくれた閣僚たちの物語だ。

◆菅原一秀経産大臣の「愛人」遍歴

菅原一秀経産大臣

週刊誌で「愛人を練馬区議にした」と騒がれているのが、菅原一秀経産大臣である。菅原一秀氏といえば「保育園落ちた。日本死ね」というブログ問題の国会質疑で「匿名だよ、匿名」とヤジを飛ばしたことで名を知られる。経済産業副大臣時代には「政治経済事情視察」として国会を休み、当時の「愛人」とハワイ旅行に出かけていたことが「週刊文春」に暴露された。

菅原氏はバツイチなので、この「愛人」という呼称がふさわしいかどうかはさておき、今回新たに元秘書との関係が「週刊新潮」に暴かれたのだ。「不倫」の尻ぬぐいに、その元秘書を政治家にしたというのが記事のインパクトだ。その秘書は14年間ものあいだ菅原の政策秘書を務めた50代の女性で、昨年の補欠選挙でみごとに当選。今年の統一地方選挙でも上位当選をはたした。と、ここまで書けば本人を特定出来るのがネット社会の怖さである。

「週刊新潮」の記事では、菅原大臣の事務所での暴虐さも暴かれている。秘書たちは朝6時の街頭演説から、夜の11時までブラック勤務を強制されているという。

クルマの運転でも、ちょっとでもミスをすれば怒鳴られる。「このハゲー!」で政界を去った(選挙で落選)豊田真由子元議員の言動が暴露されたとき、「つぎは菅原だ」と囁かれたのが、これらの秘書に対する言動だったという。

2007年には秘書に党支部へのカンパ(毎月15万円)を強要したとも報じられた(菅原氏はカンパの強制性のみを否定)。高校時代(早稲田実業)に甲子園に出場と選挙公報に書いたものの、じっさいには補欠としてスタンドから観戦していた虚偽記載。

女性への言動の酷さは、何度も週刊誌を騒がせたものだ。前述のハワイ行きの愛人に「女は25歳以下がいい。25歳以上は女じゃない」「子どもを産んだら女じゃない」などモラル・ハラスメントしたと2016年6月に週刊文春が報じている。ということは、区議になった元美人秘書は30代から政策秘書(キャリアと能力が必須)を務めていたのだから、女としては扱ってもらえなかったことになる。

2016年には、舛添要一辞職後の東京都知事選挙に立候補が噂された民進党蓮舫代表代行が「五輪に反対で、『日本人に帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた』と自らのブログに書いている。そのような方を選ぶ都民はいない」と発言するが、後日「蓮舫氏のブログではなく、ネットで流れていた情報だった」と釈明している。あまりにも言動が軽く酷すぎる経産大臣が、国会質問で野党の標的になるのは必至だろう。

◆今井絵理子内閣政務官 あぶない男性遍歴の肉食系女子が政務官に

もうひとり、順送り人事のなかでは小泉進次郎環境相とともに、若手の起用となったのが今井絵理子内閣政務官(参院当選1回・35歳)である。沖縄アクターズスクールの出身で、アイドルグループSPEEDの元メンバー。離婚した175R(イナゴライダー)のSHOGOとの間に一子があるシングルマザーで、2009年には「ベストマザー賞」を受けている。

『週刊新潮』2017年8月3日号

ところが、ベストマザーは政治家転身後に不倫を犯す。2017年7月に「週刊新潮」自民党神戸市議員の橋本健氏との不倫疑惑を報じたのだ。今井氏は疑惑を否定しているが、橋本氏が「おおむね事実」と認め、「私が積極的に交際を迫ろうとした」「私自身の婚姻関係は破綻しているが、認識の甘さで軽率な行為をとってしまったと反省している」とコメントした。

橋本氏は妻子持ちであり、メディアは「略奪不倫」と報じたものだ。息子に聴覚障害があることから、SPEEDの復活をのぞむ声や政治家としての活躍を期待されたものの、愛人とホテルに3泊するという下半身交際をしていたのである。今井氏はホテルに宿泊したことは認めつつ、「深夜まで一緒に(講演)原稿を書いていた」と言い訳をしたという。ちなみに、橋本氏はその後、政務活動費の架空請求が明らかになり、神戸地検に詐欺罪で起訴された。2018年10月に懲役1年6月執行猶予4年の有罪判決が確定している。

だが、今井氏の「不都合な男性関係」はこれが初めてではない。参院選挙の出馬表明直後に一つ屋根の下で同居する事実婚男性がいることが週刊誌に報じられていたのだ。報道を受けて本人も「将来を見据えて交際している男性がいます」と同居男性の存在を認めていた。交際相手は沖縄の同級生で初恋の相手だという。実母とひとり息子と4人で一軒家で暮らしていたのだから、事実婚といっていいいだろう。事実婚相手は今井の所有する車を運転するなど、その姿は家族同然だった。今井の自宅近くにある児童デイサービスで送迎車の運転などして働いていたという

ここまでならば、シングルマザーを支えるかつての初恋相手という美しい話なのだが、それだけで終わらなかった。なんと、今井の事実婚相手に逮捕歴があったのだ。報道によると「彼は1年前に風営法と児童福祉法違反で那覇署に逮捕されている。未成年と知りながら中学生を雇い、客の男性にみだらな行為をさせていた。沖縄にいられなくなり、今井が東京に呼び寄せて仕事先まで紹介したらしい」という。そして事実婚相手は、自民党からの出馬が決まると身辺整理のために「捨てられた」のである。ここまで見てくると、恋多きオンナというよりも肉食系女子といった印象がつよい。

裏では「順送り、お友だち人事」と酷評される今回の改造内閣のおもてむきの評価は「育成内閣」だそうだ。しかし、今井氏起用に限っていえば、安倍総理は育成する素材を見誤っているというべきであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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タケナカシゲル『誰も書けなかったヤクザのタブー』

自動車の「運転席に座ったとたんに性格が一変」するひとがいる。これは昔から言われ続けていることだ。加えて最近マスコミが「あおり運転」キャンペーンに、嬉々として取り組んでいるので、自動車を運転しないかた、あるいはそういった場面と遭遇したことのないかたには、「あおり運転」が喫緊の課題のように思われるかもしれない。がそんなことはない。

◆30年前から頻発していた「嫌がらせ運転」

「あおり運転」などという言葉はなかったけれども、同様の脅迫的運転はわたしが経験した限りでも30年前から、頻発していたし、悪質さはいまの比ではなかった。今日最初から誰かを狙って「あおり運転」をしてやろう、と準備しているひとはおそらく、極めて少数(あるいはいないかもしれない)だろう。

だが、30年前にはある種、運転を職業とする人の中で、無線で連絡を取り合いながら、自家車(主として女性が運転してる)を前後から挟み撃ちにして、嫌がらせをする行為が頻発していた(関西では、例えば国道176号線の山間部が有名だった)。本通信読者には身に覚えのあるかたはいないだろうが、176号線では事故には至らずも、猛烈な前後からの嫌がらせ運転(いま「あおり運転」と言われる行為)が、毎日のように行われていた。

あんなものは、自動車に乗ったら「変身するように、自分の力が何倍にもなるんだ」と思い込んでいる、お馬鹿さんの行為に過ぎず、したがって、今日でも同様の場面(すなわち「あおり運転」)にわたしが被害者として、遭遇することも珍しくはない。地方都市に住んでいると、公共交通機関があまり便利ではないので、自家用車の利用者が増える傾向にある。山手線の内側や大阪環状線の中とは利便性に、天と地ほど差があるのだ。

◆「おとなしい市民」と思われやすいハイブリッド車の運転者

わたしの住む住宅街は、公共交通機関の便はよくない。だから買い物や通院では自家用車を利用する。わたしの所有している自家用車は、日本一有名な自動車製造販売会社が生産した、いわゆる「ハイブリッド」車だ。こういった車種を購入するひとや運転者は「おとなしい市民」と見なされやすい。実際現在所有している車種は同じ名前の、2代目であるが、この車に乗り出してから、あわや交通事故になろうかと思われる危険運転に、何回遭遇したことだろうか。

自動車を頻繁に運転する方には、お分かりいただけるだろうが、運転者は、自分の周りを走っている車の「車種」で、自分の運転態度を決める傾向がある。わたしが所有している「おとなしい市民」が多数利用している、と思われる車種には、たとえばBMWやメルセデスベンツ、国産の大型車が、強引に接触すれすれで割り込んできたり、広い道にでようと待っていると、わたしの前に2台待っている車があるにもかかわらず、やかましくクラクションを鳴らしてくる。

あまりの失礼さに、わたしがサングラスをかけて車を降り、クラクションをやかましく鳴らしたBMWの運転席の窓をノックすると、ご婦人が急に顔色を変え「どうしよう!?」と焦っている。それでもわたしはノックを続ける。ようやくご婦人が窓を開ける。

「わたしが動けないのに、クラクション鳴らされてもしょうがないじゃありませんか。やかましいですよ」

「急いでいたものですから……すみません」

「急いでいたって、わたしの車は動けないでしょ。あなたは、『どうせおとなしい運転者だ』とおもって、気軽にクラークション鳴らしたのでしょうけど、わたしのような人間が運転していることもあるんですよ」

「すみません! 二度と鳴らしません」

毎日車を運転するわけでもないのに、平均すると、月に一回はこのような場面に遭遇する。

◆「あおられる方」の運転態度に問題があるケース

それから、文字通りの「あおり運転」には、「あおる方」だけではなく、「あおられる方」の運転態度に問題があるケースが少なくない。どなたが採った統計だったか忘れたが、大阪では赤から青信号に変わって、0.4秒経っても信号待ちしている先頭の車のブレーキランプが消えないと、後続車がクラークションを鳴らす、という(本当に科学的かどうかわからないが)調査結果をむかし耳にしたことがある。

たしかに、大阪中心部の運転は荒いし、せっかちな人が多い。逆にわたしの居住地では、赤信号が青にかわって、5秒くらい発進しない車がざらにみられるし、こちらが右折しようとしているのに、前方から直進してくる自動車が、交差点内で、停止して右折を譲ってくれることしばしばだ。親切といえば親切ではあるが、交通法規上は、「直進優先」が原則だから、このように交差点で直進しようと思い、信号が青だと確認していても、前の自動車が急停止することがある、実はこれは非常に危険な行為で、この近辺ではこのような運転による事故も多い。が全国的な問題ではないから、報道されるほどのことではない。

つまるところ「あおり運転」は、マスコミがこぞって問題にしなければならないような重大問題ではない。消費税の引き上げ、年金の引き下げ、原発事故による健康被害や汚染水問題。それらに比べればはるかに社会性の低い問題だ。社会性の低い問題を過剰に報道し、社会性の高い問題を報じない。これもある種の道義的罪ではないか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◆人生懸けた取組み!

藤川さんは巣鴨に数日滞在した後、京都の娘さんのところへ行き、巣鴨に戻って来られてからタイへ帰られたが、またまた話題を振り撒いて行ってくれた数日間だった。

滞在目的は昨年と同様だが、テーラワーダ仏教普及に務める関係者との交流と、御自身が仏陀に惚れ込んだ想いを、私のような頭の悪い騙され易い人物?に広める活動の一環であるが、日本人各々が抱える社会問題の悩みに救いの手を差し伸べてやろうという藤川さんの残りの人生を懸けた真面目な取組みがあるのも事実であった。

巣鴨駅前付近を歩く藤川さん

巣鴨の街を歩く藤川さん

◆朝の早くから成田空港へ

6月9日(1995年)は朝早くから起きるも、眠たくて行くのやめようかと思う。しかし飯食わせに行かねば。「俺ってお金無いのに何しに行くんだろ!」と思う。

日暮里から京成電車に乗って成田空港に7時過ぎに1時間以上早く着いた。バングラディッシュ航空便で朝8時10分着と言っても到着ロビーに出てくるのは30分ぐらい後だろうとのんびり待ってたら、出てきました一際目立つ黄色い悪魔が。いや、やっぱり茶色かった。ワット・タムケーウからネイトさんとバンコクに向かわれてから4ヶ月半ぶりの再会。そんな懐かしさを持って藤川さんに近づいていくと、先に女子大学生風の美女二人が藤川さんに近づいて挨拶した。

はあ? 比丘に美女? しかしそれは出家前の藤川さんならありそうな、タイ人水商売風ではない清楚な美女。やがて藤川さんは私に気付き、「おお、お前、顔つき変わったなあ、雰囲気が前と違う、やっぱり成長したんやなあ!」と余計なお世辞から来た。

「そんな訳ないでしょ、髪は伸びたし俺は相変わらず三畳間暮らしの借金抱えた貧乏人に戻りましたよ!」とは応え、改めて「こちらの女性は?」と聞くと、以前、俗人時代にタイで会ったことがあって、昨年泊まった巣鴨のアジア文化会館のロビーのソファーに座っていたら、ここの泰日経済技術振興協会のタイ語学科に通う女子大生姉妹と偶然再会し、こんなタイの坊主の格好している驚きから話が弾んだらしい。

そしてこの縁を逃がすまいと思ったか、「今年も同じアジア文化会館に泊まるから迎えに来てくれへんか!?」と連絡していたようだ。去年は町田さんが待っていたし、「何だ、こんな段取りがあるなら俺、来なくてもよかったじゃないか、2年連続して!」と文句言うと、「まあええやろが、何人かに声掛けとけば誰か来るやろ!」相変わらず勝手な言い分である。

この女子大生姉妹も藤川さんのオモロイ話に惹かれ、食事を捧げに行ってやらねばと思ったのだろう。でも今に分かるだろう、引っ張り回される鬱陶しさを。

とにかく先に朝食をと思ったら、この姉妹、お金持ちなのか、ベンツで迎えに来て居られた。

「食事は朝昼兼用で一回でええよ!」という藤川さん。高速を走り、都内に入ってから営業しているお店を見つけどこかのレストランに入った。店内の「何だこの組み合わせは!」というような視線。親子でも兄妹でも恋人にも見えない我々4名である。食事を捧げる儀式は姉妹に任せてみた。慣れないなりにも藤川さんが広げたパープラケーン(寄進用黄色い布)の上に興味津々に食事のトレーを載せてタンブン。姉妹とオモロイ存在の藤川さんとは相性がいいようだ。

アジア文化会館前から裸足になっての出発前

◆巣鴨で剃髪

この翌日のこと、「今日は満月の前日やさかい頭剃らなイカンのやが、お前剃れるか?」と言う藤川さん。

「どこで剃るんですか? そんな場所無いでしょ、床屋でやってくれるんじゃないですか?」と言うと「ホンナラそこでええわ、行こ!」とこの巣鴨の通りにある床屋さんに入った。すると小奇麗なオバサンがやって来たところで、「ワシ、タイで坊主やっとるんやけど、戒律で女性に触れること出来んのや、男の人に頼めるけ?」

“なんか怪しいオッサン”と思ったかどうか分からないが、嫌な顔はせず、男性店員さんが出て来てくれた。店長風の気品あるオジサン。バリカンで刈った後、シェービングクリームを頭に塗って、眉毛も含めてカミソリで剃り始めた。“速い上手い”である。少々、滲む程度の出血はあったが、メンソレータムをちょいと塗ってくれて終了。ここは藤川さんが自腹で払った。

「ワシらタイの坊主は頭に虫食われるし、ワシは小さい吹き出物傷はあるから切れるのは当然や、でもあの床屋のオッサン上手いわ、剃り味がワシらと全く違う、“ジョリジョリ”やなく“スススーッ”と滑るような剃り味やった。気持ち良かったあ、さすがプロやな!」。毎月タイの寺に来て欲しそうな顔である。

床屋さんで気持ち良さそうに剃髪する藤川さん

巣鴨でサイバーツを受ける藤川さん

◆巣鴨で托鉢

更にその翌朝6時半頃、アジア文化会館に向かうと、藤川さんは托鉢に向かう準備をしていた。これは予定したものだが、これを撮影させて貰う。藤川さんの托鉢を撮影するのは2回目だな、これが日本でのことになるとは。

巣鴨の早朝の街を托鉢して、サイバーツ(寄進)に出会う確率は1パーセント未満だろう。巣鴨住民が見れば、「また頭のおかしいオッサンがおかしいことやってる」としか思わないかもしれない。

でもそんな他人の目など気にする藤川さんではない。そんな托鉢を待ち構える“ヤラセメンバー”は揃っていた。裸足になってアジア文化会館を出て、巣鴨駅周辺まで歩き、戻って来るコース。成田空港まで出迎えた女子大生姉妹の妹さんの方とその友達、そしてもう一人、タイ仏教に関心を持ち、すでにタイで一度出家経験があるオジサンが道端でサイバーツを待ち構えた。最後に私もカメラを置いてサイバーツ。

藤川さんの歩く姿はワット・タムケーウ周辺を托鉢する姿と変わらなかった。やや俯き気味でも足下気にすることなくやや早足で進む。私は道路にガラス片など危険なものが落ちていないか気になった。日本の道路は舗装はキレイだが、細かいガラス片や洗濯挟みの砕けた破片やホッチキスの針など落ちている可能性がある。

タイの道路は汚れがあったり、舗装は徹底されていなくても散乱物は少ない。それはペッブリーでの托鉢で、毎朝掃き掃除しているオジサンや手伝っている子供をよく見かけていた。托鉢する比丘の為、習慣化した配慮があるのだろう。幸い、巣鴨の道もキレイだった。

サイバーツを受ける、通行人から見れば異様な光景

道はキレイだった巣鴨の道

もう少し東南アジア系の外国人が喜んで寄って来ないかなとわずかな期待を掛けたが、このメンバー以外にサイバーツする人はいなかった。これが新大久保だったらまた違った状況になっていたかもしれない。

サイバーツされた食材は、しっかりしたお弁当風の包み。アジア文化会館ロビーに帰って皆を集めて朝食に着いた藤川さん。お得意の説法(雑談)をしながら食事を進めた。その辺が楽しめる会話ではある。

私は帰国直後の4月下旬に、得度式を撮影してくれた春原俊樹さんには電話して帰って来たことを報告し、得度式のフィルムを頂く為に、都内のタイ料理屋で再会していた。そこで、

「春原さん、6月に藤川さんが日本に来ますが、会いますか? 無理しないでね、利用されるだけだから!」と言ったが、「行く行く、オモロイから!」と再会にノリノリであった。

そしてこの托鉢した日の御昼前、昨年と同じ巣鴨駅前で待ち合わることになっていた。私の出家反省会となって、また私のこと笑って盛り上がるのだろう。私は「藤川ジジィを懲らしめる会!」を(冗談だが)立ち上げてやろうかと思うところだった。

振り返る人もいる異様な姿

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

反社会勢力、すなわち暴力団と政治家の関係は、集票とカネ(利権)という政治の根幹にかかわるゆえに、本質的に切れないものである。

第4次安倍第2次改造内閣(首相官邸HPより)

「いい人だけ付き合ってるだけじゃあ選挙落ちちゃうんですよね」
これはたびたび引用することになるが、2016年1月に辞任した甘利明社会保障・税一体改革担当大臣の辞任会見での発言である。URへの口利きのあっせん利得として、事務所(秘書)が建設会社から1200万円を受け取っていた責任をとって、辞任した一件だ。この「いい人だけ」の裏側には「悪い人と付き合う」が含意され、そこにはパーティ券の購入や資金援助、ブラックな人脈との付き合いが政治家の本質だと暗喩されている。

それがただの暗喩ではないことを、今回の改造内閣はわれわれに明示している。すでに派閥均衡(ただし反主流派は除外)の順送り人事であるがゆえに、70歳をこえた老害政治家や、とうてい大臣の任にたえない新閣僚を本欄で紹介してきた。9月18日の記事参照

◆経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく

今回は単に能力がないだけではなく、暴力団と密接な付き合いがある新閣僚を紹介することにしよう。しかし、それを単なるスキャンダルとして突き出すつもりはない。反社会勢力というレッテルも暴力団という概念も、警察官僚が作り出した法律用語にすぎず、かならずしも実態を反映していないからだ。

たとえば警察官のなかに圧倒的に性犯罪が多いのは、抑圧された階級組織に特有の病理である。だからといって警察官が全員性犯罪者とはいえないし、警察組織を犯罪組織とみなすこともできない。ヤクザ(任侠)組織も同様に、犯罪を是認している組織は存在しない。建前だけとはいえ、任侠道はまっとうな人の道を説いている。ヤクザに暴力事犯が多いのはケンカのプロという側面からある意味当然だが、それはカタギ(一般市民)に迷惑をかけてはいけないという組織の規律に担保されている。そして経済のグレーな部分を担う経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく。それは政治家とヤクザの関係の本質なのである。

だが大臣となった以上、警察官僚が決めつける反社会勢力との密接交際は許されないことになる。いわば本質と建前のあいだで、政治家は集票力とカネを大臣職と引き換えに返上するシステムになっているのだ。したがって本来はスキャンダルではないはずのものが、閣僚になることでマスコミの標的にされることになる。甘利氏が言うとおり、政治家は矛盾した存在なのだ。そんな新閣僚が、今回の改造内閣でも浮上してきた。

◆田中和徳復興大臣 よく調べてみると、無能だった

「産経新聞」2011年10月22日ウェブ配信から引用しよう。復興大臣に就任した田中和徳氏(70歳)である。※引用の肩書は当時。

田中和徳復興大臣

【自民党の田中和徳(かずのり)元財務副大臣(62)の政治団体が、平成18年に開催した政治資金パーティーで、指定暴力団稲川会系組長が取締役を務める企業にパーティー券を販売し、40万円を受領していたことが21日、産経新聞の調べで分かった。パー券販売は財務副大臣在任中で、暴力団側から政治家側への直接の資金提供が判明するのは極めて異例。暴力団排除条例が全国の自治体で制定されるなど「暴排」の動きが加速する中、国会議員と暴力団側の関係が発覚した。政治資金収支報告書や関係者によると、パー券を購入していたのは東京都品川区に本社を構える企業。設立は昭和62年で、法人登記では「日用品雑貨の販売」「金銭貸付業」などとなっている。捜査関係者によると、同社は暴力団のフロント企業として認定されているという。稲川会系組長は、設立当初は代表取締役を務めていたが、平成4年からは取締役に就任。同社が長年にわたって暴力団の影響下にあり、資金源となっていたことがうかがえる。】(2011年10月22日付け産経新聞

すでに8年前の件でもあり、本来ならば問題視すべきではないことかもしれない。しかし暴力団との結びつきを暴露されるということは、ある意味で無能の証明でもある。そしてこの人物が大臣不適格なのは、あまりにも職務に不勉強であるからだ。9月12日に、田中復興大臣は福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事と会談している。

ところが、この会談では官僚のペーパーを棒読みするばかりだった。記者会見でも避難者の住宅問題などには何も答えられなかった。取材者や県職員からは資質を疑問視する声が上がったという。

「民の声新聞」発行人の鈴木博喜氏は、退出する田中大臣に「自主避難者追い出し訴訟議案」(国家公務人宿舎に入居している避難者5世帯が被告になる)について「福島県が福島県民を訴えるなんて事が良いと思いますか?」と尋ねたが、「いや、これはちょっと私も……」と、しどろもどろの返答なのである。鈴木氏の記事から引用させていただく。

【事務方が「新幹線の時間がありますから」と制する中、筆者は「大臣の所管する話ですよ」、「勉強不足ですよ」と続けた。田中大臣は小さな声で「勉強不足って言われても……」とつぶやきながら会見場を後にした。】(2019年9月13日付け民の声新聞)

勉強不足だと思えば、その場で詳しく聞けばよいだけの話だ。質問の要旨をメモにとって、事務方に調べさせればよいのだ。それすらもできない大臣は、必要ないのではないか。

◆武田良太国家公安委員会委員長 さすがに暴力団からカネをもらったのはマズいだろう

武田良太国家公安委員会

つぎに「朝日新聞」(2019年9月13日付け週刊朝日)から引用しよう。
【2010年11月に公表された、武田氏の政治資金管理団体「武田良太政経研究会」の収支報告書によると、09年4月に開かれた政治資金パーティー代として、東京都のA社が50万円を献金している。また、11年11月公表の収支報告書では、A社の実質的な代表であるI氏が10年4月の政治資金パーティー代として70万円を支払っている。実は、このI氏、警察当局が指定暴力団山口組系の組員ではないかと当局からマークされ、裁判で素性が明かされた人物だった。
 08年12月、東京地裁で開かれた刑事事件の法廷。上場会社E社の創業者のH氏が、暴力団関係者に脅迫され、金銭を要求された恐喝未遂事件の裁判で、被害者として証言に立ったが、本誌が入手した裁判資料によると、I氏についての以下のような記述があった。
弁護士 E社はA社と業務提携なさいましたよね?
H氏   はい
弁護士 Iさんが元暴力団の構成員だというのもご存じですよね?
H氏   知りませんでした。はじめは
弁護士 知った後、あなたはどういう対応を取りましたか?
H氏   契約の解除に動きました
 ここで出てくる、「Iさん」こそ、武田氏に多額の献金をした人物と同一なのだ。】

政治家と暴力団の蜜月は、集票とカネ(利権)にかかわる本質的なものだと、わたしは冒頭で定義した。しかし、大臣は国政の責任を負う存在である。ましてや、警察機構を統括する国家公安委員長が、過去のこととはいえ暴力団から政治資金パーティーの代金を受け取っていたのである。

武田氏は13日の記者会見で「個別の報道には答えを差し控えたいが、政治資金は法令に基づき適切に処理されている」と説明した。もはや論評は不要であろう。警察庁を所轄する大臣が、適切に処理されていれば暴力団から献金を受けても良いと明言したのだ。

◆組長と仲良く写真を撮っていた竹本直一IT担当大臣 

最後は本欄ですでに、ハンコ文化を大切にする新IT担当大臣として紹介した竹本直一氏(78歳)である。同じく「朝日新聞」からだ。

山口組幹部だった男性と竹本直一氏(2018年8月撮影)

【閣僚名簿で「グレーな交友」を疑われたのが、科学技術担当相に起用された衆院当選8回の竹本直一氏(78)。SNSに、18年8月、花火を見物している竹本氏と記念写真に一緒に写っている角刈りの男性の姿がある。指定暴力団山口組系組幹部だったX氏である。同年3月に、竹本氏の後援会が開催した新年賀詞交歓会のパーティーで、X氏と岸田氏が親しそうに写真に納まっている写真が、写真週刊誌「フライデー」にも掲載された。
「X氏は長く幹部である組の顧問を最近までやっていたようだ。昔から、資金力豊富だと有名だった。岸田氏や竹本氏との写真は、箔(はく)をつけるために撮ったのでしょうね」(捜査関係者)そして、宏池会所属のある議員はこう話す。
「(フライデーに写真が出た時から)竹本氏は相手が暴力団関係者であることがわかっていたはず。岸田会長も、あの報道には激怒していましたよ。なぜ、竹本氏はSNSの写真を削除させなかったのか? こんなわきの甘さでは、大臣が長く務まるとは思えないですね」(2019年9月13日 週刊朝日)】

よくわかった。この人(IT政策担当大臣)はハンコをこよなく愛しているが、パソコンはたぶん自分で使えないのだろう。ホームページが「なぜかロックされている」のは既報のとおり、SNSも自分で管理できないから暴力団組長との記念写真を削除できなかったのであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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タケナカシゲル『誰も書けなかったヤクザのタブー』

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