第4次安倍改造内閣の閣僚が酷すぎる。誰が大臣になっても政治は変わらないというのは一つの真理だが、失政の多くは閣僚個人を通じて行われるものであって、そのツケはすべて国民が背負い込むことになる。どれくらい酷い政治家ばかりなのか。紹介をかねて、その言動をあばいていこう。

◆竹本直一特命担当大臣(78歳)──このIT大臣はパソコン使えるのか?

竹本直一内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)

元サイバーセキュリティ担当大臣で「PCを使ったことがない」「オリンピック憲章は知らない」「パラピック(パラリンピックのこと)」と国民を驚かせたのは桜田義孝(五輪担当)だが、所信表明に近い改造後の発言は、その大臣の資質を自己暴露するものだ。今回、IT政策担当大臣に抜擢されたのは、竹本直一氏(78歳)である。78歳と高齢なのは、内閣が派閥均衡(ただし主流派のみで、石破派など反主流派は排除)と順送りの起用の結果だ。竹本氏も政務官や副大臣を歴任し、今回晴れて大臣就任となったわけだ。IT担当相のほか、科学技術政策担当、宇宙政策担当、クールジャパン戦略担当、知財戦略担当の特命担当大臣として初入閣である。

ところが、いやある意味で当然というべきか、早々からトンデモ事態が明かになって物議をかもしている。なんと、自らのホームページがロックされ閲覧できない状態になっているのだ。ご本人は「なぜロックされているのか、原因はわからない」という。その後、竹本氏は自身の公式ツイッターで、「ドメインを管理している会社からロックがかけられた状態になっており、復旧作業を進めている」などと説明している。

そしてもうひとつ、記者会見で突然「行政手続きのデジタル化と書面に押印する日本古来のハンコ文化の両立を目指す」と言い始めたのだ。役所をはじめとする事務手続きでハンコが必要となる煩雑さに関して、これまでにも議論が沸き起こっていたが、デジタル化を推進するはずの大臣がこんなことを言いはじめたのだ。ハンコ文化は中国・朝鮮から渡ってきたもので、それを「日本古来の」と言いなすのも見識が問われるというものだ。そして問題なのは、竹本氏がハンコ議連の会長であることだ。これは業界の利害をのみ突き出した、利益誘導ではないのか。いや、そもそも桜田元大臣といい、竹本大臣といい、高齢でとてもITに向いていない人材を、最先端技術の要職に登用しなければならないところに、安倍政権の末期的な姿がある。

◆北村誠吾地方創生・規制改革担当大臣──職務をわかっていない老害大臣

北村誠吾地方創生・規制改革担当大臣(同氏HPより)

30年以上にわたって、地元住民(建設地の地権者)が反対している石木ダム(長崎県川棚町)について「誰かが犠牲にならなければならない」と、強制収容を匂わせた大臣もいる。大規模ダムなどという昭和の遺物に執着する、まさに老害といういうしかない。

その人物は72歳という高齢で地方創生・規制改革担当大臣に就任した、北村誠吾氏である。ちなみに、地元住民は治水対策としては水道管の漏水など、生活に直結したものを優先してほしいと訴える。

9月7日にはダムに反対する集会に150人ほどが集まり、「土地の強制収用はさせない」とする宣言文を採択した。宣言文は9日に県知事あてに提出する予定。参加者は集会後、のぼりなどを掲げて市街を練り歩き「ダムは要らない。皆で止めよう」と声を上げた。北村氏は就任会見では「大臣の仕事については、これから勉強していきたい」と、準備ができていないところを自己暴露したが、官邸への呼び出しが当日にならないとわからない組閣の常とはいえ、あまりにも安易な順送り起用とはいえないだろうか。

◆衛藤晟一一億総活躍担当大臣──日本会議と現政権の直接の窓口役

衛藤晟一一億総活躍担当大臣(同氏HPより)

改造政権はポンコツであるとともに、トンデモ極右政権でもある。一億総活躍担当相として入閣した衛藤晟一氏(71歳)がその最右翼といわれている。1947年生まれで、学生時代は三派全学連・全共闘の時代とかさなる。衛藤氏は大分大学で「九州学生自治会連絡協議会」(のちに全国組織)を結成し、打倒全学連運動の先頭に立ったという。生長の家の活動家でもあった。大分市議、県議をへて衆議院議員(現在は参議院)と、官僚出身ではなくベタに党人派としてのキャリアを積んできたわけだが、その極右思想は一貫している。日本会議国会議員懇談会の幹事長をつとめ、日本会議と現政権の直接の窓口役となっている。

「日本会議の生みの親」とも呼ばれる村上正邦元参議院幹事長はインタビューでこう発言している。

「もし安倍さんが日本会議の言い分を尊重しようとしているなら、衛藤晟一を大臣にしているはずですよ。だけど、入閣させてないということは、そういうことですよ。日本会議の象徴は、稲田(朋美・防衛相)じゃない。稲田だとみんな言うが、衛藤ですよ」(「週刊ポスト」2016年9月2日号/小学館)。自衛隊の国防軍化、原発賛成、死刑制度賛成、夫婦別姓反対、女系天皇反対と、極右政治家としての基本政策はもちろん、婚外子の差別を是正する「婚外子の相続分規定改正案」に、自民党の党議拘束に反して賛成票を投じなかった筋金入りの超保守なのである。

◆お友だち起用の萩生田光一文科大臣──安倍氏・加計氏と3人でバーベキュー

衛藤氏よりもさらに極右で、しかも安倍総理にベッタリの役どころを演じると思われるのが、文部科学大臣に就任した萩生田光一氏だ。萩生氏の議員会館事務所には、なんと教育勅語が掲げられているという。

文科相としての起用には伏線がある。それは2013年には自民党の「教科書検定の在り方特別部会」の主査に就任していることだ。同部会は「自虐史観に立つなど、多くの教科書に問題となる記述がある」と教科書会社の社長や編集責任者を呼び出し、南京事件や慰安婦問題、竹島などの領土問題、原発稼働の是非などに関する教科書の記述について聞き取りをおこない、圧力をかけたこともある。

2007年には、日本会議の設立10周年大会にメッセージを送り、「行き過ぎたジェンダーフリー教育、過激な性教育」対策では日本会議の識者の先生方の後押しもいただき、党内でも問題を喚起し、ジェンダーの暴走をくい止め、正しい男女共同参画社会へと路線を変更する事ができました」などと自慢げに報告している。それよりも萩生田氏の最大の問題点は、安倍総理の「お友だち利権」であろう。

第一次安倍政権いらい、安倍総理は仲間内を大事にして、いわば上級国民ともいうべき階層を代表する政治運営に奔走してきた。大企業の法人税の軽減による「経済の活性化」という、およそ消費重視の内需拡大の経済発展ではなく、一部の資本家と上層社会が儲かる仕組みをつくってきた。

羽生田氏と安倍・家計

そしてもうひとつが、お友だち優遇の行動である。羽生田氏は選挙に落ちた「浪人時代」に、加計学園系の千葉科学大学の客員教授に就任しているが、2017年に内閣官房副長官として「教授就任前に加計氏とは付き合いはなかった」と国会答弁している。ところが、2013年ごろの写真として安倍氏・加計氏と3人でバーベキューをしている写真が暴露されたのだ。そこから「嘘つき政治家」と称されるようになったのだ。平気で嘘をつくような人物を、お友だちだからといって教育にたずさわる文部科学大臣にしてもいいのか。

反安倍から官邸での結婚報告と、安倍政権へのすり寄りに転じた小泉進次郎の環境相就任。元SPEEDの今井絵里子が当選一回ながら内閣府政務官に就任するなど、話題に事欠かない第4次改造安倍内閣。長くなりそうなので、この記事は続編を期待してほしい。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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