NHKから国民を守る党の立花孝志党首が3月27日に静岡県庁で記者会見し、森友学園前理事長の籠池泰典氏(詐欺罪などで懲役5年の有罪判決、控訴中)に公認候補としての立候補を要請した。籠池被告は応じる方針だという。立花氏は籠池氏を候補者に選んだ理由を「票が取れる人だから」と言明した。

籠池氏が政界に出馬する以上、みずから引き受けさせられた補助金不正受給事件での有罪はともかくとして、そこに至らせた安倍総理と昭恵夫人および麻生太郎財務大臣の「不正指示」を明るみに出そうというものにほかならない。その手先となったパワハラ官僚こと佐川宣寿元国税長官(現いわき応援大使)の罪業も明らかにするものとなるはずだ。たとえ、その人物が教育勅語を幼児たちに暗唱させるという、とんでもない教育観の持ち主であっても、トカゲのシッポ切りのごとく、蜜月の関係を振り払って監獄送りにする薄情な総理への批判として、国民の多くは支持するのではないか。というのも、政界およびリベラルな論者、そして保守層の中から、安倍晋三を訴追すべきという機運が生じているからだ。

◆現実性をおびてきた安倍晋三逮捕

すでに昨年11月には桜を見る会問題で、斎藤貴男氏(ジャーナリスト)や神田香織(講談師)など47名による、公職選挙法違反・政治資金規正法違反での告発が行なわれている。そして赤木氏の遺書が明らかになり、その遺書に対して「新たな事実はない」「再調査を行うつもりはない」と開き直る安倍総理。遺族(赤木氏の妻)の「自殺の原因は、安倍総理の発言を佐川理財局長(=当時)が忖度した」という主張に対しては、赤木氏が遺書に書いたわけではない、と切り捨てる安倍総理。そして野党議員の追求をかわす総理のかたわらで、ニヤニヤしながら笑みを見せている麻生財務相。憤死した死者に鞭打つかのような冷酷さに、国民の怒りは頂点に達しているといえよう。

決裁文書の改ざんについて「局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました」と具体的に記され「すべて、佐川理財局長の指示です」(赤木氏の遺書)が、ほかならぬ安倍総理の「わたしと家内が(森友学園不正売却に)関わっていたら、すぐに総理大臣も議員も辞めますよ」なる感情的な発言に起因することを、ここに至っても頬かむりしようというのだ。

こうした安倍首相の態度に対して、赤木さんの妻は23日に2度目となるコメントを発表した。そのなかで「怒りに震える」と感情をあらわにしている。

「今日、安倍首相や麻生大臣の答弁を報道などで聞きました。すごく残念で、悲しく、また、怒りに震えています。夫の遺志が完全にないがしろにされていることが許せません。もし夫が生きていたら、悔しくて泣いていると思います」

「再調査をしないとのことですが、何を言われても何度も再調査の実施を訴えたいと思います。財務省の中の人が再調査をしても同じ結論になるので、是非、第三者委員会を立ち上げて欲しいと思います。このままうやむやにされるとすれば、夫の遺志が全く果たされないことになります」

赤木さんの妻は27日、第三者委員会による事実関係の再調査を求めて、インターネットサイトを使った署名活動を始めた。

財務省という国の最高行政機関が、ひとりの男の気ままな言動を忖度することで、完全にゆがめられてきたのである。いまや国民の多数の声を結集し、第三者委員会による全貌の解明を求めようではないか。いや、事件の全貌解明にとどまらず、安倍総理と麻生大臣の訴追まで国民的な運動を展開するのでなければならない。

本欄の3月25日付「検察VS官邸? 安倍政権肝いりの夫婦議員・河井克行と河井案里の両議員秘書の起訴は、三権分立を確証するか? 健全な司法のために期待される検察の『叛乱』」で明らかにしたとおり、安倍総理はみずからに迫る訴追の危機に対して、検察幹部人事に介入することでわが身を護ろうとしている。その思惑の一端はすでに、元法相河井克行・案里夫妻が取り調べを受けることで、破綻をきたしつつある。安倍総理の逃げ込みを許すな。

◆国民に禁じた花見宴会を、高級レストランで

そして国民の怒りは安倍総理の木で鼻をくくる態度のみならず、森友学園事件の当事者ともいえる昭恵夫人へのものにもなっている。

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、政府および自治体がイベントや花見の自粛を国民に求めている状況下、昭恵夫人はレストランで多人数の花見に興じていたというのだ(「週刊ポスト」)。総理夫人が花見に興じているいっぽうで、国民には外出の自粛を強要し、花見ができる公園を封鎖する政府に、なぜ従わなければならないのだろうか。

そればかりではない。赤木氏が自殺した2018年3月7日の2日後の9日昼過ぎには、自殺の事実がマスコミで大きく報じられたにもかかわらず、その夜に昭恵夫人はなんと銀座でパーティに参加していたというのである。パーティーには神田うの、中田英寿(元サッカー日本代表)、別所哲也(俳優)らが参加し、神田うののインスタグラムには、にこやかにポーズをとっている昭恵夫人の姿が写っていたという。みずからの言動で自殺した報道がなされているときにパーティに興ずるとは、何という冷血漢であろうか。

閣議で「公人ではない」と議決された昭恵夫人を証人喚問に引きずり出し、安倍総理にかかる疑惑のいっさいとともに、奈落の底に突き落とすべき時が来た。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、最近の編集の仕事に『政治の現象学 あるいはアジテーターの遍歴史』(長崎浩著、世界書院)など。近著に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『男組の時代』(明月堂書店)など。

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