李信恵の「陳述書」は、これまで述べてきましたように、リンチ被害者M君への謝罪もなく、リンチ事件を惹き起こし反差別運動、社会運動に汚点を残したことへの反省もなく、ただ一貫して鹿砦社の出版物や「デジタル鹿砦社通信」の記事で「被害」を受けた、「恐怖」を感じたなどと臆面もなく書いています。これでは読む者には響いてきません。

李信恵「陳述書」5ページ目

同 6ページ目

全6枚の「陳述書」に対して、私はこれに沿って逐一批判しコメントを書き記してきました。果たして私の言っていることは間違っているでしょうか? 

「陳述書」の残りについて私見を述べてみましょう。──

【13】「明らかに事件について何も知らない相手に出す質問状に事実を明らかにするという目的はなく、ただただ、私が『リンチ事件』に関与しているという印象を与えるだけのものとしか思えません。」との記述について

失礼なことを言わないでください。私たちが李信恵に対して、あたかも嫌がらせでやったような発言です。断じてそうではありません。「質問状」は、まず李信恵支持者や周囲でリンチ事件を知り、また隠蔽活動に関与していると思われる人たち、国会議員や「ジャーナリスト」、研究者など社会問題に関心があると思われる人たちを中心に送りました。費用の問題もあるので、さほど多くはありませんが、心ある人の目に止まり、外に向かい報じたり発言してもらいたいという目的もありました。

当初は30人ほどに送りましたが、送った先は第2弾本『反差別と暴力の正体』に名を出しています。本も一緒に送ることで事件を知らなかった人には事件の存在を知ってもらいたいと考えました。第3弾、4弾、5弾と送付先は増えていき、80人ほどになりました。これも第5弾本『真実と暴力の隠蔽』に名を記していますので、ご一覧ください。

「質問状」を送った人の中には、鈴木邦男のように長年交流があり何冊も著書を出版してきた者、安田浩一、池田香代子らのようにイベントに招いた人、北村肇(元『週刊金曜日』発行人)、矢野宏(『新聞うずみ火』編集長)、山田洋一(『人民新聞』編集長)ら日頃交流があり広告も出している媒体の者など広く多岐に渡っています。

親密さがうかがえる辛淑玉(左)と鈴木邦男(右)

こういう時こそ、しっかりした対応をしてくれる人こそ、真の知識人、ジャーナリストだと私なりに思っていましたが、そうではありませんでした。「なぜ逃げるの?」「なぜ黙るの?」と思いましたが、特に長年付き合いがあった鈴木邦男の態度には失望し、断腸の想いで義絶せざるをえませんでした。「のりこえねと」の共同代表の一人として辛淑玉らと親交があり、私よりも著名な辛淑玉のほうを採ったと多くの人たちから言われましたが、遺憾です。

鈴木邦男は、1980年代前半、組織(正確には鈴木が代表の「一水会」を中心とする「統一戦線義勇軍」)内にリンチ殺人、死体遺棄事件があり、これを転機に言論を中心にした闘いに方針転換しました。その頃からの付き合いですが、その主体的反省から、他の軟弱な「知識人」にはない独特の智恵を出してくれるものと期待しましたが、そうではありませんでした。残念です。 

【14】「被告(注:鹿砦社)の取材していた『リンチ事件』と私の反ヘイトスピーチ裁判とは何の関係もありません。」との記述について

いい加減なことを言わないでください。くだんのリンチ事件は、反ヘイト運動、いわゆる「カウンター」運動の中で、李信恵ら5人が、それまで仲間だったM君に対し行ったものですから、大いに関係があると言わざるをえません。

そもそも李信恵ら、つまりリンチ事件に居合わせた5人、また神原、上瀧両 弁護士ら、号令一下、敵と見なした人物に一斉に攻撃をする者らは「ヘイトスピーチ」に反対して行動を起こす中で知り合い、関係性を深めた人物の集まりです。この集団はある時期「ヘイトスピーチ」を法律で規制しようとの運動に熱を入れ「ヘイトスピーチ対策法」が成立しました。この過程でリンチ事件が起き、李信恵も(おそらく一夜明け酔いが覚めた時に)、彼女の仲間ら周囲の者らも慌てふためき、当初は謝罪し和解の方向で行くことだったと思われますが、途中から方向転換を行います。

この法律については表現の自由を高らかに謳う出版人の立場からの意見があります。しかし、ここでは、あえてコメントはしませんが、李信恵らはこの法律を何がなんでも成立させようと、M君リンチ事件を隠蔽する活動に努めたと言えるでしょう。

私たちは“いかなる差別にも原則的に反対する”がゆえに、〈嘘と誇張〉を多用し事件を無かったものにしようとする李信恵らの蠢動を取材し、出版化したのであり、李信恵は「陳述書」で自身の内面について事実を曲解し縷々述べているものの、私たちが出版化した内容について、誤りがあるとの事実の摘示は行えてはいません。前述の岸政彦や木下ちがやの例と同様、李信恵が述べる物言いはいずれも事実ではありません。

【15】「被告(注:鹿砦社)の私(注:李信恵)に対する強い悪意を感じ、非常に恐ろしいと感じています。」との記述について

笑止千万です。言うに事欠いていい加減なことを言わないでください。これも何度となく言っていますが、私たちには李信恵に対して私怨や遺恨など全くありませんし、「強い悪意」などもありません。

鹿砦社、またこの代表の私がM君リンチ問題に関わっているのは、まずは彼に対する同情で、次には、この国の社会運動や反差別運動にとって、このリンチ問題をどう解決するかが問われ、真摯に反省し将来に禍根がないようにすべしということ、この点で、極めて公共性、公益目的があることなどです。

私も、40年余り出版活動をやって来て、個人に対する「悪意」や、私怨、遺恨で本を作ることなどありません。私なりに矜持があります。私は65歳を過ぎたら、以前からまとめたいと思っていたテーマをやりたいと予定していましたが、偶々このリンチ事件に出会い、放っておけなくて関わることにした次第です。全く失礼千万なことを言う前に、リンチ被害者M君に対して真摯に謝罪しろ、と言いたいです。

【16】「口では言い表せないほどの恐怖と苦痛を感じました。」との記述について

集団リンチで激しい暴行を受けた被害者M君が言う台詞です。M君がリンチの最中どれほど「口では言い表せないほどの恐怖と苦痛を感じ」たか、李信恵さん、理解できますか? 同じ台詞をあなたが言っても深刻には伝わってきません。

【17】M君が李信恵を訴えた訴訟の判決について

話が前後しますが、李信恵は、リンチ被害者M君が彼女を訴えた民事訴訟について「平成30年3月19日、大阪地方裁判所は、私は暴行もしていないし、共謀もなかったと判断しました」と、まるで鬼の首でも取ったかのように記述していますので、この判決に対して簡単にコメントしておきます。

私に言わせれば、この部分は誤判です。最近、冤罪問題がクローズアップされ、私たちも積極的に関心を持ち月刊『紙の爆弾』でもほぼ毎号採り上げていますが、裁判所が判断したからと言って、それが絶対に真実であるとは限りません。「真実はお天道様は知っているぞ」と言いたいですが、裁判所もリンチがあったことまでは否定せず、だからこそ直接手を下した2人には刑事、民事共に罰金、賠償金を課しているわけでしょう。 

少なくとも、李信恵はリンチの現場に同座し、泥酔し「まぁ殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」との“名台詞”を吐いています。リンチの最中、M君は、この“名台詞”をどのような気持ちで聞いたのでしょうか、絶句します。表向きには「人権」という言葉で欺き、裏ではリンチを是認する李信恵の人格を象徴する言葉です。この“名台詞”、まともな人間が言う言葉でしょうか!? 

何度も言いますが、李信恵さん、あなたは、リンチの口火を切り、暴行が続く中でも止めもせず、リンチが終わるや救急車を呼びもせず、すぐ近くのタクシー営業所で車に乗せることもせず、師走の寒空の下に瀕死の重傷を負ったM君を放置し立ち去っていますよね? 加えて、「まぁ殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」との“名台詞”――ここに至り、李信恵さん、あなたに人権や良心の欠片もない、と断言します。

みなさん方も、また裁判所も、李信恵の田舎芝居に騙されてはいけません。最も「恐怖と苦痛」を身をもって感じたのはリンチ被害者M君であることを第一義に考えるべきです。そうではないでしょうか?

李信恵「陳述書」への批判は、ひとまずこれで終了します。この連載は続きます。(本文中敬称略)

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