◆2月28日、興業の中止・延期が始まった

世界中が凍り付いた新型コロナウィルス蔓延。日本においては2月26日に安倍首相(当時)が、スポーツや文化に関するイベントの中止や延期を要請しました。プロボクシングはJBC(一般財団法人日本ボクシングコミッション)より、翌日には28日からの3月31日までの興行を中止または延期とし、各プロモーターに通達しました。

クラスターが発生したルンピニースタジアム(画像は2015年撮影)

キックボクシングは統一管轄機関がないため、自粛要請を受け入れない事態もあり、当初は各イベントによって対応が分かれました。中止が長引く中、8月半ばから観衆50パーセント以下の制限と会場入口に消毒剤の設置、主催者とマスコミ関係者は会場に入る際もコロナ抗体簡易検査や検温が実施され、リングサイド関係者はマスクとフェイスシールド着用が義務付けられる処置を決行。これらは昨年末には誰もが想像し得なかった初体験。規制がやや緩い団体もありますが、この体制は延々と続いています。

これで何とか興行再開となったものの、興行収益は激減。その後はクラウドファンディングや、有料生配信という体制も増えていきました。

石毛慎也はコロナで防衛戦出来ずに返上か(写真は2019年11月28日の獲得時)

これで国内は何とか興行は続くものの、困ったのが日本人ムエタイ殿堂チャンピオン。タイでは3月6日のルンピニースタジアムで集団感染が発生し、タイ政府は3月10日以降、スタジアムやジムの閉鎖に踏み切りました。

2019年11月28日に、現地で日本人9人目の殿堂王座、ラジャダムナンスタジアム・ミドル級王座獲得となった石毛慎也(ライラプス東京北星)の場合、戴冠後初の試合をノンタイトル戦ながら3月15日、ラジャダムナンスタジアムにて予定されていましたが突如中止。

5月に予定されていた初防衛戦も開催見込みが無くなり、興行権を持つプロモーター(シェフブンタム氏)がラジャダムナンスタジアムを離れた為、石毛慎也はこのまま王座返上となる見込みという。

タイは実質軍事政権と言われ、こういう緊急事態の際には統制が取れて規制厳しく、その効果で感染者激減に伴い、7月4日にはオムノーイスタジアムで無観客興行が始まり、ラジャダムナンスタジアムも続いて15日から無観客興行が暫く続きましたが、ルンピニースタジアムは集団感染発生地でもあり、延々閉鎖が続いています。
その後も感染者小康状態が続き、平常に戻りつつあったタイでしたが、12月に入ると22日までにサムット・サコーン県の海産物市場で再びコロナウィルス集団感染が起こったため、政府は再び厳戒態勢。高リスク地域を封鎖した模様。

ムエタイ興行も23日から再び中止に陥った様子です。3月の時は厳戒態勢で感染者が激減した効果もあるので今後もその効果が期待されます。

本来のラジャダムナンスタジアム。ギャンブラーが居てこそ盛り上がる

藤本会長の勇姿。勝次は伊原信一氏のもとで藤本ジムを引き継いだ(2016年12月11日)

◆5月5日、キックボクシング創生期からの最古参、藤本勲会長永眠

コロナに関係なく、今年の一番印象深いのは、5月5日に78歳で永眠された藤本ジム会長の藤本勲氏。経歴はすでに何度か掲載しているので省きますが、1966年に日本初のキックボクシングジムとしてスタートした目黒ジムは1998年に藤本勲氏がその伝統を受継ぎ、その後も多くのチャンピオンを誕生させてきましたが、数年前から患った多臓器の病が悪化し、前年12月8日には勇退式を行ない、その後もジムには顔を出す程度でしたが、やがて継続困難となり、2020年(令和2年)1月30日をもって閉鎖されていました。

前身の野口ジムからの、下目黒の聖地を閉鎖することには、その後継者がいなかったことはまた別事情があり、所属していたチャンピオンと主なランカーはそれぞれが選ぶジムに移り試合出場を果たしています。創生期を知る藤本氏、「もっと話を聞いておけばよかった」「また食事にお誘いしたかった」等、我々から見ればやり残したこと多く、その存在感は改めて大きかったと失望感が漂いました。

◆キック界は「打倒!那須川天心」を中心に回っている

キックボクシング界の中心人物、那須川天心(2016年12月5日)

プロボクシングでは井上尚弥が中心、キックボクシング系では那須川天心が中心に回ったのは今年だけではなく、ここ数年続いていますが、格闘技界の構造もかなり変わってきたもので、今に始まったことではないものの、K-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等のビッグマッチを興すイベント興行会社が徐々に増えつつある時代です。

そこで話題の強者が集約されたトーナメント戦で頂点を極めることが定着。その中のひとつに那須川天心に挑戦する為のトーナメントも行われている現状。そういうイベントに呼ばれるが為のアグレッシブな試合と、目立つ発言を起こし話題を集めた選手が出場、注目されるというのが今の時代でしょう。

◆既存の協会、連盟といった団体の存在感

今後、長き歴史を持つ各団体も存続していくことでしょう。しかしここでチャンピオンになってもすぐ返上する選手が多く、 “元チャンピオン”の肩書でも、そこから落ちることなく通用するキックボクシング界。その先に選手が目指すK-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等があると、既存団体はもうすでに日本タイトルとは言えないローカルタイトルに成り下がっている状況でもあります。

さらには分裂を繰り返し乱立するより、フリーになった方がいいというジムが現れるのもこの時代でしょう。その既存の各団体も、今年はコロナウィルス蔓延による活動が制限された年であり変化は少なかったものの、今後コロナが収束に向かうならば、2021年はまた各団体の在り方に変化が見られるかもしれません。本来あるべき姿が協会や連盟という団体。そこに権威が増すことも各団体が今後、目指さなければならない頂点でしょう。

ビッグイベントは音響、照明、ゲストまで豪華に演出される大舞台

◆11月19日、格闘技振興議員連盟が発足 2021年はどうなるか?

2015年にスポーツ庁が設立し、2020年11月19日には超党派で「格闘技(プロレス・総合格闘技等)振興議員連盟」が発足しました。https://sp.njpw.jp/270525名声有るお方からの理想論としても、「統括するコミッションができたらいい」という発言が出て、それは10年前なら夢物語でも、今後何らかの形で進展するかもしれないのが2021年からの10年間かもしれません。

まずコロナウィルス蔓延が収束に向かわねば興行が儘ならず、ジム運営も規制が掛かれば競技そのものが成り立たなくなるので、2021年はただひたすら以前のような興行が行なえることを目指し、選手が安心して練習と戦いの場が与えられることが先決されるでしょう。

有料生配信、実況・解説は自前の選手とマッチメーカーという新たな挑戦(2020年12月12日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他