中国レポート② 遼寧省広佑寺 宗教が禁止されているというのは事実か?

黒薮哲哉

日本で定着している中国に関する情報には、誤ったものがかなり含まれている。たとえば宗教が禁止されているという情報である。社会主義の国では唯物論哲学が主流なので、その対極にある観念論哲学の典型である宗教が禁止されているという机上の論理が広がった結果ではないかと思うが、これは事実ではない。

昨年(2024年)の9月、筆者は中国遼寧省の広佑寺を訪れた。広佑寺は、漢代に建立された名刹(めいさつ)で、明の時代に仏教の聖地として繁栄した。

何層にも重なった屋根をもつ木像建築物で、奈良市にある大仏殿に形状が類似しているが、規模は遥かに大きかった。澄んだ空を背に聳えた建物に近づくと、暗褐色の恐竜に呑み込まれるような威圧感を感じた。

入場は無料。だれでも境内を散策することができる。バックグランド・ミュージックのようにお経が絶え間なく流れていた。本堂の床に跪いて祈りを捧げている人もいる。線香の煙も漂っていた。

日本の寺院でも目にする光景であるが、ひとつだけ違いがあった。立て看板が設置されていて、そこに「未成年の宗教活動(祈りなど)を禁止する」と書かれていた。つまり宗教を信仰するかどうかは、成人した後に、自分の頭で考えなさいとアドバイスしているのである。宗教2世の悲劇が問題になっている日本や韓国ではありえない対策である。「宗教を禁止している」というのは事実ではなく、成人してから決めるように奨励しているだけなのである。

情報の信憑性は、やはり現地へ足を運ばなければ確認できない。それが唯一の事実を確認する方法なのである。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年3月14日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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