5月22日阪神タイガース対巨人戦観戦報告の続報です。両チームの先発メンバーが発表されました。コロナ前なら、選手の名前がアナウンスされるたびに歓声が上がっていたものですが、球場内でもしきりに感染防止対策で、大声を控えるように告知がなされたり、ボードを掲げた係員が巡回しているので、先発メンバー紹介には拍手が送られる程度です。

が、意外な場面で球場がざわついきました。審判の紹介で「球審白井」とアナウンスが聞こえた瞬間、「おいおい白井かい!」、「え!」とそこここから声が上がりました。

佐々木投手はご存知、完全試合達成後、あやうく2試合連続完全試合に手が届きかけた、いま最も注目の若手投手です。その佐々木投手にちょっと訳の分からない絡み方をしたのが白井審判でした。ネット上には過去、白井審判の怪しい判定や、猛抗議を受ける動画が多数アップされ、注目度は抜群。その白井審判がよりによって球審だというのですから、波乱も含めてますます期待感が高まります。私の座っている席の近くからも「白井!ええ加減な判定したらあかんぞ!」と大きな声が飛びました。

試合開始直前に神妙な表情で審判団と打ち合わせをする白井審判

爽やかな五月晴れ、宿敵巨人との満員甲子園での対戦、そして裁く球審は、最も注目を浴びる審判白井。いよいよプレーボールです。球場内では700円もする生ビールですが試合進行以上に、最高の観戦コンデションにどんどん進みます。甲子園は風が気持ちいいんですよ。

阪神の先発は前回惜しくも完封勝利を逃した伊藤で、1月以上開いての登板です。伊藤投手は制球が安定して、ストレートの伸びもよく不安のない立ち上がりを見せてくれました。

一方、巨人の先発高橋投手は立ち上がりからコントロールが定まらず、小林捕手とのタイミングがとれていないように感じられました。小林捕手が高橋投手に投げ返すボールが左右にそれる場面も何度も見られたことから、阪神タイガースOBのOさんは「今日のね、高橋はいいことないね。うん。まあ、見ての通りコントロールが安定してないし、マウンドで落ち着きがないよね。おん。おん。これは阪神、ゆっくり見て行ったらいいんですよ。おん。今日ははように捕まえることできるますよ。おん。」と早くも阪神攻撃陣のチャンスを予言していました。

満員の甲子園球場

試合はOさんの予想通り、2回に先頭の陽川が四球で出塁。つづく糸原の打席でフルカウントからまたしても四球。長坂は犠打でランナーを2,3塁に進め、打席にはピッチャーの伊藤ですが、巨人の高橋は伊藤にも四球を出してしまい1死満塁です。高橋はもうこのあたりで限界のように感じましたが、巨人ベンチは動きません。つづく近本がセンター前に安打を放ち阪神タイガーが1点先取です。2番の中野が三振に倒れたあと大山がレフト前にタイムリー。この打球を巨人の外野手が下手くそな守備をしている間に2塁ランナーも帰ってきて3点目。高橋投手はここで降板しました。巨人の投手は戸田です。四番の佐藤は痛烈なファースト直撃ゴロを放ち、これが内野安打で一挙4点をあげました。こういう攻撃が見たかった!高橋の調子が悪かったとはいえ、2回に一挙4得点です。

中押し、ダメ押しが欲しいところですが、いまの阪神タイガースにそこまで求めるのは酷というものでしょうか。

この日は攻守に見どころがありました。目立ったのは近本選手ですね。3安打1打点プラス1盗塁。盗塁は完璧なタイミングで近本選手にとっては通算100個目の節目の盗塁でした。守備でもレフト方向に切れていくライナー性のフライをダイビングキャッチ。

その後も伊藤投手はヒットは打たれるものの要所を締めていよいよ最終回を迎えました。結局9回に出塁は許したものの最後は見事に巨人打線を抑えきり、伊藤投手は完封勝利です。

最後まで躍動感あふれるフォームで完封勝利を達成した伊藤投手

同上

同上

巨人相手に甲子園で完封勝利! いやー阪神タイガース強いじゃないですか。強い。たしかにこの日試合だけ見ればそうなんですが、問題は打てない試合が多すぎることなんです。今日は5月29日です。交流戦の真っ最中です。楽天相手に田中将投手から勝ち星を奪うなど、本格的な上昇ムードを期待したいところですが、5月29日時点で借金が11。そして問題なのは完封負けが12試合もあることでしょう。勝試合でも1点差勝利が多く、楽な展開がないのは、やはり打線が繋がっていないことを意味するのでしょうね。投手陣が大崩れすることは少なく、防護率はセリーグトップの2.77。これで最下位なんですから、逆にいえば「撃ちゃあええんよ」というこですね。

結果的には、優勝を狙うのは無理にしても「まだまだ分からんよ」ということでしょう。最高の観戦日和に気持ち良い浜風を受けて、お昼寝なさっている方の姿みられましたが、それくらい気持ちの良い試合でした。

気持ちよい観戦日和にうたたねをなさる観客の姿も

◎[関連リンク]阪神タイガースはどうなってるの?
〈4〉5.22巨人戦観戦報告[前編]

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
仮名のような名前ながら本名とのウワサ。何事も一流になれないものの、なにをやらしても合格点には達する恵まれた場当たり人生もまもなく50年。言語能力に長けており、数か国語と各地の方言を駆使する。趣味は昼寝。

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!