TITANS NEOSメインイベンターは試練の木下竜輔、新日本キックの牙城守れず!

堀田春樹

牙城守れない興行がまた発生したが、
注目はチャンピオン初戦の木下竜輔がどんな存在感を示すか。
15歳、西田蓮人はセミプロという現在地から今後を占う成長ぶりを発揮出来るか。
他、NJKFから参戦の庄司理玖斗と翔依斗の兄弟が存在感をアピール出来るか。
といった見どころも木下竜輔は持ち味発揮出来ず判定負け。
庄司理玖斗は優翔の圧力に圧され判定負け。
弟、翔依斗はスピーディーに試合を支配し判定勝利。
西田蓮人もスピーディーに多彩な攻防の末、僅差ながら判定勝利。

◎TITANS NEOS 36 / 5月11日(日)後楽園ホール 17:15~20:54
主催:伊原プロモーション(TITANS事務局) / 認定:新日本キックボクシング協会

この記事での試合順はオープニングファイトから第1としてカウントします(興行プログラムとは異なります)。

前日計量は10日14時より伊原ジムにて、木下竜輔は2回目でパス。他の選手は1回でパス。

◆第16試合 59.0kg契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.木下竜輔(伊原/1996.2.12福岡県出身/
59.15→58.95kg)13戦5勝(3KO)8敗
        vs
NJKFスーパーフェザー級7位.細川裕人(VALLELY/北海道出身23歳/ 58.95 kg)
9戦5勝3敗1分
勝者:細川裕人 / 判定1-2
主審:少白竜
副審:勝本29-30. 宮沢29-30. 中山30-29

木下竜輔がどうノックアウトに結び付けるかが注目の初回、素早いローキックから入る木下。細川裕人はパンチと蹴りで圧力掛けて前進。打ち合えば木下の強打にチャンスはあるが、タイミングが命。打つ体制が悪いと強いパンチを打ち込めない。

接近戦ではヒジ打ち入れるも効果薄く、細川は長身からのヒザ蹴りは距離感よく見映えいいヒット。木下は効いていたらマズいがその様子は無さそうだった。

細川のパンチ、ヒザ蹴りは木下に攻め難い圧力を掛け続けた。時折、木下の強い右ミドルキックがヒット。もっと蹴らないとペースを引き寄せられないが単発で終わってしまう。

細川裕人の圧力が優った展開、左ミドルキックで木下竜輔を追う

第3ラウンドには木下が勝ちに行く前進を見せるも、細川の勢いは衰えず、終盤に木下の右ミドルキックの強いヒットはあっても、もっと続けて蹴りたかったところだった。判定はスプリットデジションで細川裕人が勝利した。

残り時間少ない中、木下竜輔が強い右ミドルキックを放った

◆第15試合 スーパーバンタム級3回戦

ポンパン・エスジム(タイ国出身40歳/ 55.2kg)56戦31勝25敗
      vs
鰤鰤左衛門(CORE/北海道出身43歳/ 55.1kg)42戦10勝27敗5分
勝者:ポンパン・エスジム / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜30-28. 宮沢30-28. 中山30-28

両者、ローキック中心に上下の蹴りとパンチ。ポンパンはヒジ打ち加えるなどベテランの上手い攻め。鰤鰤左衛門も怯まず蹴って出るがポンパンは動じない。互いにダメージ与えるヒットは無い中、バックハンドブローも見せる積極的な鰤鰤左衛門。適材適所の攻めが上手かったポンパンの判定勝利。

鰤鰤左衛門のバックハンドブローとポンパンのミドルキックが交錯

◆第14試合 59.0kg契約3回戦

優翔(team NOVA/神奈川県出身22歳/ 58.75kg)41戦31勝(7KO)10敗
      vs
NJKFフェザー級5位.庄司理玖斗(拳之会/岡山県出身22歳/ 58.8kg)
17戦10勝(5KO)6敗1分
勝者:優翔 / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-27. 少白竜30-27. 中山30-27

初回の蹴りの攻防は優翔が長身の距離感を上手く使ってハイキックも使う。庄司理玖斗は攻めたいが突破口が開けないか、パンチで優翔をコーナーに詰めてもクリンチに逃げられ、優翔の離れた位置からのヒザ蹴りも攻勢を印象付けるヒット。

理玖斗は前に出てパンチを打ちたい、そんなセコンドからの指示にも対応遅れ気味。優翔の蹴りやパンチヒジを先に打たれてしまう。

終盤、理玖斗はパンチでラッシュするも決定打を与えるに至らず、フルマークで優翔の判定勝利。

長身の優翔が距離を上手く使ってヒザ蹴りも繰り出した
庄司理玖斗も攻勢に転じる前進も見られたが逆転成らず

◆第13試合 77.0kg契約3回戦     

マルコ(伊原/イタリア出身34歳/ 76.3kg)13戦7勝(2KO)3敗3分
      vs
デイトン・ボウイズ(米国/ 74.6kg) Warren(=ウォーレン/米軍截空道)の欠場で代打出場
勝者:マルコ / TKO 2ラウンド 1分34秒 /
主審:宮沢誠

マルコが重いローキックとヒザ蹴りで攻め、デイトン・ボウイズはローキックを防御出来ず、マルコのパンチからローキックにバランス崩す。デイトンはパンチで攻めてもマルコに組まれヒザ蹴りを受けてしまう。

第2ラウンドにはマルコのローキックで嫌がるデイトン。蹴られてバランス崩しスリップ扱いのダウンもあり、マルコのパンチとヒザ蹴り連打、離れてハイキックからパンチ連打でスタンディングダウンを宣せられて、マルコは更にパンチ連打とローキックでデイトンを倒すとノーカウントのレフェリーストップとなった。

マルコのローキックでデイトンは終始劣勢

◆第12試合(セミプロ試合) 52.0kg契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/東京都出身15歳/ 51.45kg)
      vs
烈海王(MIYABI/茨城県出身15歳/ 50.85kg)
勝者:西田蓮斗 / 判定2-0 (20-19. 20-19. 19-19)

4月にタイのプーケットで奪取したというパトンスタジアム・フライ級チャンピオンベルトを掲げて登場の西田蓮人。素早い両者のフットワーク。上下の蹴り、組み付いての競り合い崩し合い。蹴られてもまともにブロックや躱しでまともに貰わないディフェンス。休まない攻防。ジャッジ三者揃うラウンドは無い中、西田蓮人が的確さ優って僅差ながら判定勝利。

15歳同士、西田蓮人と烈海王の攻防はスピーディーに激しく交差した

◆第11試合 70.0kg契約3回戦

ヴェジー・チョル(伊原/愛知県出身38歳/ 69.5kg)7戦3勝2敗2分
      vs
風成(エス/東京都出身27歳/ 69.6kg)5戦2勝(1KO)1敗1分1NC
引分け 1-0
主審:椎名利一
副審:中山29-29. 宮沢30-29. 勝本29-29

初回は風成の蹴りとパンチが次第に圧してヴェジー・チョルをコーナーに詰め優勢だった風成も、第2ラウンドはヴェジー・チョルのパンチの前進で攻勢。蹴りで圧していた風成もウェジーが蹴りで巻き返し互角に持ち込む。

第3ラウンド、一進一退の攻防は続くもヴェジー・チョルのハイキックが軽くヒット、右ストレートもヒットも風成の重い蹴りで互角の展開が続いた。

ウェジーがパンチでアグレッシブに前進。風成も重い蹴りを繰り出した

◆第10試合 50.0kg契約3回戦

林さん(GRABS/北海道出身23歳/ 49.85kg)4戦2勝2敗
      vs
庄司翔依斗(拳之会/岡山県出身17歳/ 48.95kg)2戦2勝(1KO)
勝者:庄司翔依斗 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名28-29. 中山28-29. 勝本27-29(三者、庄司に反則減点1含む)

庄司翔依斗はスピーディーにローキック中心に前進し、林を上回り、組み合っても翔依斗がバランスよく態勢を保つ。距離感掴んで繋ぎ技も上手い翔依斗。第2ラウンドも翔依斗の攻勢が続くもバックハンドブローがヒジ打ちとなって林の後頭部にヒットし、ヒジ打ち禁止の為、翔依斗に減点が課せられた。

第3ラウンドも翔依斗の圧倒する攻勢は変わらずも、翔依斗は初回から後ろ蹴りを計2度、バックハンドブローを計3度試みたが、ノックダウンを奪うに至らず判定勝利。

庄司翔依斗はスピーディーに攻め優った中、後ろ蹴りも見せた

◆第9試合 ヘビー級2回戦

小澤和樹(シュアリング/千葉県出身36歳/ 95.0kg)32戦15勝(5KO)16敗1分
      vs
直也(横須賀太賀/神奈川県出身28歳/ 114.6kg)1戦1敗
勝者:小澤和樹 / TKO 1ラウンド 57秒 /
主審:宮沢誠

接近戦でパンチの攻防。直也が小澤和樹をロープ際に詰めたところで小澤の右ヒジ打ちが直也の左眉辺りをヒット。もう少々攻防は続いた後、傷を見たレフェリーがドクターチェックに移り、ストップ勧告を受けレフェリーストップとなった。

◆第8試合 ライト級2回戦

山本龍平(拳粋会宮越道場/埼玉県出身19歳/ 60.6kg)3戦1勝(1KO)2敗
      vs
勝鬼(横須賀太賀/神奈川県出身19歳/ 58.95kg)1戦1敗
勝者:山本龍平 / KO 2ラウンド 16秒 /
主審:勝本剛司

初回から山本龍平の蹴りとパンチの圧倒する展開。勝鬼は山本のハイキックをブロックしながらも俯いて躱す劣勢。俯いてしまっては相手が見えず、逆に危険な状態。でも倒されないのは山本の決定打が足りないのか。それでも山本のヒザ蹴り猛攻からハイキック、パンチで追うと勝鬼は倒れずもスタンディングダウンを宣せられた。第2ラウンド早々には山本の左ミドルキックが勝鬼のボディーにヒットすると、今度はあっけなくノックダウンし、そのまま立てずテンカウントを数えられた。

山本龍平が勝鬼を終始圧倒して追い込んでいった

◆第7試合 女子ミネルヴァ・ペーパー級(95LBS)3回戦(2分制)

ペーパー級1位.上真(ROAD MMA/1985.10.16石川県出身/42.75kg)18戦6勝11敗1分
        vs
ロウ・イツブン(NEXT LEVEL渋谷/中国出身29歳/ 43.0kg)7戦2勝4敗1分
引分け 0-1 (29-30. 29-29. 29-29)

蹴り合いと組み合っての崩しや距離に応じたヒザ蹴り、前蹴り多彩に競り合った。初回は上真がやや優勢。第2ラウンドはロウ・イツブンがやや盛り返したか。そのまま決定打が無いまま終了。

◆第6試合 女子ミネルヴァ・アトム級(102LBS)3回戦(2分制)

ピン級1位.杉田風夏(谷山ジム小田原道場/神奈川県出身28歳/ 46.05kg)
5戦4勝(1KO)1敗
      vs
KANA(Bonbo Freely/茨城県出身42歳/ 45.8kg)3戦2勝1敗
勝者:杉田風夏 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

互いのアグレッシブな攻防ではあったが、杉田風夏が前蹴りで距離感を維持し、蹴りからパンチの攻めが攻勢を維持しフルマークの判定勝利。

◆第5試合 女子ミネルヴァ 54.0kg契約3回戦(2分制)

MIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/千葉県出身18歳/ 53.9kg)7戦1勝5敗1分
       vs
ゼイナ・クランティッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ出身36歳/ 53.05kg)1戦1分
引分け 1-0 (29-28. 28-28. 28-28)

初回にMIOが右ストレートか、ノックダウンを奪うもゼイナも積極的なパンチの攻めを見せた。蹴り合っても互角を保ち、パンチ打ち合いで顔を背ける中島はやや劣勢の印象。盛り返した流れのゼイナだったが引分けとなった。

◆第4試合 女子アマチュア49.0kg契約2回戦(2分制)

中島瑠花(X-PLOSION/大阪府出身14歳/ 48.65kg)
        vs
ダマリス・ジョレット(2008.4.27スペイン出身/ 48.85kg)
勝者:中島瑠花 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

ダマリス・ジョレットはスペインで有望とされるアマチュアの戦歴ある17歳。フライ級でWBCムエタイ・ヨーロッパU-16とスペインU-18の王座を獲得。

ダマリスは蹴りは多彩に積極的に出ていたが、中島瑠花の右ストレートを貰い、パンチで圧されてしまう劣勢。中島はパンチと蹴りのコンビネーションを活かして判定勝利。

◆第3試合 アマチュア55.0kg契約2回戦(2分制)

透士(TRASH/広島県出身14歳/ 54.9kg)vs 本郷皇聖(笹羅/宮城県出身15歳/ 54.4kg)
勝者:透士 / 判定2-0 (19-19. 19-18. 20-19)

◆第2試合 女子アマチュア43.0kg契約2回戦(2分制)

結菜(伊原越谷/埼玉県出身12歳/42.6kg)vs 乃愛(マスター/東京都出身13歳/ 43.25kg)
勝者:乃愛 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 19-20)

◆第1試合 アマチュアオープニングファイト 27.0kg契約2回戦(2分制)

土田紳之介(伊原越谷/埼玉県出身12歳/ 26.6kg)
      vs
虎鉄(POWER OF DREAM/東京都出身10歳/ 27.0kg)
勝者:虎鉄 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 19-20)

《取材戦記》

今や新日本キックボクシング協会エース格となった木下竜輔にとってはプレッシャーの掛かるメインイベンター。ここで負けられない木下だが、細川裕人にとってはチャンス。NJKF色が強い現在の新日本キックボクシング協会の興行。そんなプレッシャーに圧されたか。木下竜輔はジョニー・オリベイラを倒したパンチと蹴りは鳴りを潜めてしまった。

苦戦の展開の末、採点が読み上げられ、ジャッジ一者ずつの支持、細川裕人と木下竜輔の名が呼ばれ、ドローとなる忖度かという雰囲気の中、2-1で細川裕人のスプリットデジション勝ち。木下竜輔にとって厳しい結果ながら妥当な判定だった。
今回は鈍臭い展開になっても勝ちを導かねばならなかった。逆に細川裕人はチャンピオンに勝った経験を足掛かりにNJKFに戻って上位進出となるだろう。

伊原越谷ジム、西田義和会長は木下竜輔について、「全然この前と違っていましたね。昔の悪い癖、パンチだけ。もっと下(脚)蹴ってくれればなと。蹴れるのに蹴らなかった。蹴っていればもっとプレッシャー掛けて前に出れたのに、下がり過ぎです。ポイント取られても仕方無いですね」

木下竜輔は「すみません。仕事出来ていないので言うことは無いです」とチャンピオンとして、メインイベンターとして責任を果たせなかった結果を、言葉少なに反省点を語った。

改善点を克服するなら、ジョニー・オリベイラを倒した勢いを取り戻すこと。元から強打を持ち、強い蹴りも出せることから戦略は陣営が示すだろうが、ここからの復活は可能だろう。

細川裕人陣営、VALLELYジム米田貴志会長は細川について、「結果はチャンピオンに勝ったんですが、内容は0点です……とは言い過ぎですけど、もっともっと前に出ていればなと。でも自信付いたと思うので、また内容も改善点いっぱいありますけど、結果出してくれたのでチャンピオンに向けて進みたいですね」

細川裕人は「勝っても2対1だったので、内容もまだまだです」と控えめながら、「チャンピオンを目指しますか?」との問いには「勿論です!」と意欲的だった。

庄司理玖斗は試合前、「今回、兄弟で出場させて頂いているので、まず弟の翔依斗にしっかり勝って繋げて貰って、3月に弟がデビュー戦のクセに後楽園ホールを盛り上げやがったので、僕もこれが兄だぞという試合やってしっかり倒したいと思います。去年の5月以来、後楽園ホールで勝ってブレイクダンスしてないので、今回は勝って舞いたいと思います」と語っていたが、ちょっとプレッシャーを与えてしまったかな。でもまた試練を乗り越えてNJKFに於いても関西に於いても頑張って貰いたい存在で、木下竜輔同様に改善点を克服していくだろう。

次回の新日本キックボクシング協会興行は、7月27日(日)に後楽園ホールに於いてMAGNUM.62が開催されます。おそらくは木下竜輔の連続出場が予想されます。次なるメインイベンターも育てなければならない下積みが続きます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」