NJKF今回のメインイベンターは匡志YAMATO、感動のラストファイトで締め括る!

堀田春樹

ドラマを作った匡志YAMATO、敗れるも完全燃焼のラストファイトを飾った。
大田拓真はムエタイテクニシャンを倒し切れずも危なげない圧勝。
HIRO YAMATOは勝次にスピードで優る若さの勝利。勝次も見せ場を作る。
亜維二が豪快TKOで皆から認められる本物チャンピオンへ存在感見せた。
西田光汰がテクニックで明夢に大差判定勝利で借り返す初防衛。

◎NJKF CHALLENGER.10(2025.4th) / 9月28日(日)後楽園ホール17:15~22:12
主催:オフィス超合金 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟、WBCムエタイ

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています(正式からややズレもあるかもしれません)。

◆第10試合 第7代WBCムエタイ日本スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

4位.匡志YAMATO(=福田匡志/大和/32歳/ 69.75kg) 31戦17勝(9KO)12敗2分
VS
5位.津崎善郎(LAILAPS東京北星/40歳/ 69.7kg)35戦19勝(6KO)14敗2分
勝者:津崎善郎 / 判定1-2
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:多賀谷47-48. 宮沢47-48. 中山48-47

王座決定戦ながら匡志はラストファイトに、かつて熱戦を繰り広げた好敵手、津崎善郎を選んだ。

激しい打ち合いにはならなかったが初回、蹴りから繋ぐパンチの交錯は勝負を一瞬で終わらせるスリリングな展開となった。

一発のヒットで勝負が決まるスリリングな交錯が続いた匡志と津崎善郎

第4ラウンドには津崎善郎のヒジ打ちで匡志の左目尻辺りをカット。最終ラウンドには匡志のヒジ打ちで津崎の鼻をカット。血みどろの好ファイトは僅差で津崎が制した。

新チャンピオンとなった津崎善郎、WBCの新調されたベルトが光る

試合後は新チャンピオン、津崎善郎も加わって匡志YAMATOの引退セレモニーが行われた。大勢の支援者がリングに上がり、賑やかな引退セレモニーとなった。ダメージが重かった場合、引退セレモニーは行なわない可能性があったが、無事に執り行われた模様。

匡志は試合後、「出だしはちょっと悪かったのと、後半は良かったんですけど、けど結構減量が響いたのかなという動きでした。そこも込みの勝負なので結果に文句は無いです。大和ジム会長として4年目で、若い子達が育って来て、これから指導者として、この子達を育てていくのを天秤に掛けた時に、自分は現役を退いて、これから未来ある後輩達に僕の培ってきたものを注いで想いを託そうと決心したので今回引退をしようと決めました。」と語り、応援して頂いた皆さんに対しては、「ここまで匡志YAMATOを応援して支えてくれた皆さん、有難うございました。皆さんの御陰で32戦、ここまで戦って来れたと思います。一人だったらこんなに続けて来れませんでした。これからは皆さんに恩返ししていけるような人生を歩んで行きたいと思うので、これからも匡志YAMATOじゃなくて福田匡志への応援宜しくお願いします。」と動画インタビューと被るところあるかもしれないが、丁寧に語ってくれました。

2021年7月のWBCムエタイ日本スーパーウェルター級王座決定戦で、津崎善郎にTKO勝利して獲得した王座はWBCムエタイ側の意向で返上した形だったという。その経緯で今回も王座決定戦という形で津崎善郎と再戦となった模様。

支援者に囲まれた賑やかな引退セレモニーとなった感無量の匡志YAMATO

◆第9試合 58.0kg契約 5回戦

WBCムエタイ世界フェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身/ 58.0kg)43戦33勝(11KO)8敗2分
VS
ルークニミット・シンクロンシー(元・S-1・Sフェザー級、ライト級覇者/タイ・ロッブリー拳出身38歳/ 57.85kg)
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:児島30-27. 宮沢30-27. 中山29-28

大田拓真は今年6月8日にWBCムエタイ世界フェザー級王座挑戦し、チャンピオンだったアントニオ・オルデン(スペイン)に3ラウンドにノックアウト勝利で王座獲得してからの初戦となった。

ONEなど強豪揃う世界で競う上位のステップに行く為にも、今回の興行ではセミファイナルとなった立場としてもインパクトあるノックアウト勝利を収めたい大田拓真にとっては悔しい展開となった。

ルークニミットは大田に優るスピードは無くても、ベテランムエタイボクサーのしぶとさは発揮された。大田拓真はローキックやボディーブローでノックアウトを繋げそうな圧倒するテクニックを見せながらも倒し切れずに終わった。大田拓真には本来の5回戦で戦わせたい試合だった。

大田拓真のボディーブロー、一発で倒せる可能性もあったが、ルークニミットはしぶとかった

◆第8試合 WBCムエタイ日本ライト級タイトルマッチ 5回戦

第7代選手権者初防衛戦.HIRO YAMATO(大和/2000.6.25愛知県出身/ 60.95kg)
36戦20勝(7KO)13敗3分
VS
挑戦者同級8位.勝次(=高橋勝治/ TEAM TEPPEN/WKBA世界SL級覇者/1987.3.1兵庫県出身/ 61.15kg)82戦48勝(20KO)24敗10分
勝者:HIRO YAMATO / 判定2-0
主審:宮沢誠
副審:多賀谷48-47. ランボー47-47. 中山49-46

負けが込んでもチャレンジ出来るリング。連敗中の勝次は再浮上を狙いたいが、若いHIRO YAMATOが立ち塞がった。勝次にも勝機は充分にあった。ベテランの戦略は侮れない。その動きは初回早々に起こった。開始後距離を詰めた両者。勝次が右ストレートで軽いヒットだったがノックダウンを奪った。

このポイントを守り切れば勝利は有り得る話だが、ラウンドマストシステムで行なわれているこの日のWBCムエタイでは、ノックアウトか終始圧倒しなければ逃げ切りは難しい。

やはりHIROのパワー、スピードは徐々に優り、首相撲に持ち込んでのヒザ蹴りは勝次にとって反撃もままならず、不利な体勢の時間は勿体無かった。勝次のパンチも攻勢を維持出来ればいいが、HIROの圧力に圧されていった。判定は僅差の2-0でHIROが初防衛に成功した。

HIRO YAMATOのローキック、スピード手数でHIROがかつての名チャンピオン勝次を抑えた
藤原敏男氏と並ぶHIRO YAMATO、歳の差52歳。偉大さで追い付けるか

◆第7試合 スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/63.25kg) 30戦14勝(3KO)10敗6分
VS
TENKAICHIスーパーライト級チャンピオン.剣夜(SHINE沖縄/沖縄県出身36歳/ 63.1kg)
23戦9勝(5KO)13敗1分
勝者:吉田凜汰朗 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:多賀谷30-26. ランボー30-26. 中山30-26

初回、吉田凛汰朗が剣夜の右ミドルキックに合わせて右ストレートでノックダウンを奪うが軽いヒットで、その後も先手打つ吉田のパンチと蹴りは剣夜を圧倒。諦めない剣夜もミドルキックで攻めるが、第3ラウンドには吉田のヒジ打ちで剣夜の左瞼辺りがカット。終了間際には吉田の怒涛のラッシュも耐える流血の剣夜だった。

吉田凛汰朗の攻めの上手さが発揮、剣夜は忍耐の勝負となった

◆第6試合 スーパーライト級3回戦

JKイノベーション・スーパーライト級チャンピオン.切詰大貴(武勇会/高知県出身26歳/ 63.4kg)9戦8勝(2KO)1敗
       VS
SB日本ライト級2位.基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/ 2001.12.24兵庫県出身/ 63.4kg) 25戦15勝(2KO)9敗1分
勝者:切詰大貴 / 判定2-1
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:多賀谷27-30. 宮沢29-28. 児島29-28

ポッシブルKが欠場で基山幹太出場。
両者アグレッシブにパンチと蹴りの攻防が続く。打ち合いはスリリングながら強烈なヒットは無く、差が出難い互角の展開の中、極端な2-1判定で切詰大貴が勝利となった。

◆第5試合 NJKFウェルター級タイトルマッチ 5回戦

認定王者.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/2006.神奈川県出身/ 66.95→66.8→66.78→66.68kg)13戦10勝(6KO)2敗1分
VS
挑戦者同級1位.宗方888(KING/ 66.4kg)14戦5勝(3KO)7敗2分
勝者:亜維二 / TKO 1ラウンド 1分37秒
主審:中山宏美

計量で躓いた亜維二。調整に狂いが出たか、減量がキツくなったか。しかし試合までにはしっかりリカバリー出来、開始早々にローキック牽制、宗方も蹴り返すとそこへ亜維二が左フックヒット、グラつく宗方。打ち合いに出た宗方に亜維二も迎え撃ち、左フックヒット。亜維二はノックダウン取ったと思ったか、後ろを向いてしまうが、更に蹴りからパンチ連打し、右ストレートでノックダウンを奪う。

亜維二が圧倒した強打の連続、大舞台への一歩となったか。宗方は為す術が無かった

立ち上がった宗方にヒザ蹴りからミドルキックでロープ際に追い込み、右ストレートから連打で倒したところでレフェリーストップ。テクニカルノックアウト勝利に繋げた。ノックダウンを奪った際、ニュートラルコーナーに行かず、ロープに上って応援団側にアピールするなどは冷静さが欠けるところは気を付けなければならないだろう。

亜維二は昨年6月に王座挑戦試合がチャンピオンの青木洋輔の欠場で、認定チャンピオンと成った。この在り方は任意団体都合で起こり得るもの。亜維二はタイトルマッチで勝たなければ真のチャンピオンとは言えない立場は理解しており、怒涛のTKO勝利で「これで皆、チャンピオンとして認めてくれたかな!」と安堵した様子。

“正規”ではあったが“認定”止まりから豪快TKOで皆が認めるチャンピオンへ成長した亜維二

◆第4試合 NJKFフライ級タイトルマッチ 5回戦

第14代選手権者初防衛戦.西田光汰(西田/2001.2.13愛知県出身/ 50.8kg)
14戦9勝(1KO)4敗1分
VS
挑戦者同級2位.明夢(新興ムエタイ/ 50.65kg)15戦5勝(1KO)7敗3分
勝者:西田光汰 / 判定3-0
主審:児島真人
副審:多賀谷49-46. 宮沢49-46. 中山50-47

6月8日予定だった初防衛戦は永井雷智欠場により、明夢とノンタイトル戦へ変更となった西田光汰は僅差判定負けだった。今回も挑戦者1位.永井雷智欠場で挑戦者は明夢となった。

今回は西田光汰が主導権を握った展開。西田のローキック、ボディーブローなど攻め優り、組み合っての圧力がインパクトを与えた。最終ラウンドは明夢も捨て身の前進。巻き返しには至らぬも、せめぎ合って終了。西田光汰が大差判定勝利し前回敗戦の借りを返した。

主導権支配した西田光汰がローキックで攻める、明夢に快勝。今後もライバル関係となるか

◆第3試合 55.0kg契約3回戦

HIROYUKI(=茂木宏幸/元・日本フライ級・バンタム級選手権者/RIKIX/1995.10.2神奈川県出身/ 54.95kg)
62戦42勝(22KO)16敗4分
VS
後藤和範(REALMuayThaiFitness/静岡県出身39歳/ 54.85kg)43戦14勝(4KO)28敗1分
勝者:HIROYUKI / KO 1ラウンド 2分0秒
主審:多賀谷敏朗

圧倒の展開を見せたHIROYUKI。蹴って来る後藤和範の動きが読めたか、左フックからローキック、右ストレートでノックダウン奪い、更に打ち合いの距離に誘い込み、立て続けの3ノックダウンで圧倒のノックアウト勝利となった。7月13日にジャパンキックボクシング協会興行でも初回ノックアウト勝利しており、円熟期を迎えたHIROYUKIの存在感が目立った。

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級6位.匠(KING/東京都出身23歳/ 58.65kg)
12戦8勝(2KO)3敗1分
VS
NJKFスーパーフェザー級7位.細川裕人(VALLELY/北海道出身23歳/ 58.95→58.9kg)
10戦6勝(1KO)3敗1分
勝者:細川裕人 / TKO 2ラウンド 2分26秒
主審:宮沢誠

◆第1試合 フライ級3回戦

植田琥斗(E.S.G/埼玉県出身18歳/ 50.15kg)4戦1勝3敗
VS
竹田奏音(TAKEDA/埼玉県出身16歳/ 50.0kg)1戦1勝(1KO)
勝者:竹田奏音 / KO 2ラウンド 1分25秒

《取材戦記》

存在感あったのは吉田凛汰朗のテクニックで剣夜を圧倒した勝利。豪快に倒して勝った亜維二。勝次をテクニックで優ったHIRO YAMATO。チャンピオンとしてこの地位を譲らない強さ、風格が身に付いた印象だった。来年はメインイベンターとしての登場も有り得るだろう。

武田幸三氏の総評は「ラストの試合はドラマではあったですね。興行的にはいろんな課題も有りつつ、でも人間のドラマをしっかり表現出来て、“THE NJKF”という形を見せました。そろそろ自力が付いて来たので、来年はもっと大きいこと、もうちょっと大きな会場で開催をチャレンジ出来ればと思っています、今回9割ぐらいのチケット売れたんですけど、まだ満員じゃないし、まだまだ皆の力の結集が必要なのかなと、皆の経験値でチャレンジしたいです。」と語り更に、「大田拓真はエースとして最後は倒したかっただろうし、今回はWBCタイトルが主役だったからメインを譲り、そこで大田くんの意地の反応観たかったですね。WBCムエタイはまた大きな発表もしていきます。」と語った。

興行終了後には武田幸三氏のTAKEDAジムの子供たちが後楽園ホールのゴミ集めなど掃除をして帰るという作業をしていた様子。皆が積極的に率先して掃除していた。これはこの子達が、将来に渡って会場を汚さない思想が定着していくだろうと思えました。大人になってからでは身に付き難い道徳心でしょう。

今回はいずれの試合も引分けが無くて良かった。WBCムエタイ戦はラウンドマストシステムで、他の試合によってはややこしい裁定があるのですが、文面が長くなるので今回は割愛します。いずれNJKFルールについては触れたいと思います。

NJKF CHALLENGER 11は11月30日(日)に後楽園ホールで開催予定です。今年の集大成としてメインイベンター争いも楽しみなところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」