堀田春樹
昨年の王座奪取も豪快だった政斗が激しい攻防を制して初防衛も引退へ。
◎KICK Insist.24 / 9月15日(月・祝)新宿フェース(開場17:00 / 開始17:30)
主催:(株)VICTORY SPIRITS、ビクトリージム
認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
第8試合 ジャパンキック協会ウェルター級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン初防衛戦.政斗(=黒澤政斗/治政館/1992.7.17東京都出身/ 66.6kg)
35戦19勝(5KO)13敗3分
VS
挑戦者同級2位.細見直生(KICK BOX/ 66.55kg)5戦4勝(1KO)1敗
勝者:政斗 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:勝本48-46. 西村48-46. 中山48-45
初回、様子見から先手を打つ細見直生の右ストレートで政斗がマットに手を付いた。すぐに立ち上がったところへ細見が攻め込もうとしたが、すでにノックダウン扱いで、レフェリーが割って入った。政斗にダメージは無さそうで、政斗は組んでのヒザ蹴り加えた落ち着いた試合運びに移っていった。

第2ラウンド以降も激しさ増していく蹴りとパンチの攻防の中、政斗の首相撲からのヒザ蹴りとヒジ打ちも加わりしつこく攻め込んでいく。細見直生も手数で劣らず攻め込むが、政斗の圧力に打つ手が無くなっていく。両者のパンチとヒジ打ちの激しい攻防は顔面が斬れる流血に移っていく中、。焦る細見は必死の形相に変わっていった。


最終ラウンドまで政斗の主導権支配は変わらず、初回のノックダウン以後は全て奪った政斗が判定勝利で初防衛に成功した。

リング上、細田昌志リングアナウンサーのインタビューが始まり、初回にノックダウン奪われ、劣勢のスタートとなったことについては、
「ちょっと泥臭い試合になったんですけど、絶対やり返すと最後まで諦めないで頑張って立ち続けて勝てました。」
第3ラウンド以降、ミドルキックが当たり始め、ペースを取り戻したことについては、
「ミドルは練習どおりの技が使えて嬉しかったです。やっとペースが自分の方に流れて来たので、維持すれば勝てると思ったので頑張りました。」
細見直生選手の印象については、
「やっぱりパンチは注意していたんですけど、一発いいの貰っちゃって倒れたんですけど、そんなダメージは無かったので、この後やり返そうという気持ちでいっぱいでした。」
最終第5ラウンドを迎えた時の心境は、
「今日で現役最後なんですけど、最後の3分間と思って戦いました。最後という意識を持って今迄練習に励んで来ました。初防衛戦して引退しようと思っていました。なので夢を叶えて凄く嬉しいです。」
感謝を伝えたい師範と婚約者を迎え、飯塚健師範には、
「15歳でキックボクシングを始めてチャランポランばかりだった僕をずっと最後まで見捨てないでここまで導いてくださって本当に有難うございました。ここまで僕を育ててくれた師範がチャンピオンです。」と飯塚健師範の腰にチャンピオンベルトを巻いた。
婚約者には、
「10月に結婚式決まってるけど、もう一回想いを伝えたくて、ここでプロポーズです。今迄現役中、良い時も悪い時もずっと傍で支えてくれて本当に有難うございました。これからは俺が支えてあげられるように頑張るから、これからも宜しくお願いします。結婚しよう、愛してるよ!」と公開プロポーズでメインイベントを締め括った。
師範の飯塚健氏はかつて新妻聡(目黒)と対戦した元・日本ライト1位。自分は目黒ジムの選手に結構負けているんで、細見直生選手は鴇稔之さんのKICKBOXジムで目黒直系だし、今回は何とか弟子が勝って雪辱したい気持ちもありました。そんな想いも叶えてくれて嬉しいです。」という感無量だった様子。
治政館ジムの長江政人会長は「政斗は怪我が多いので一旦辞めて、もしかしたら、またやりたくなったら戻って来る選択もあるかもしれませんね。」と引退を労いつつ、先行きは分らないがそんな期待も語っていた。
◆第7試合 65.0kg契約3回戦
ペップンミー・ビクトリージム(元・タイ国ムエサヤーム・イサーン地方フライ級2位/タイ/ 64.6kg)
VS
コムキョウ・シット・ボーチョーウォー(元・タイ国ムエサヤーム・中部地方スーパーフェザー級Champ/タイ/ 65.0kg)
勝者:ペップンミー・ビクトリージム / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-29. 西村30-29. 中山30-28
ムエタイテクニシャンらしい攻防が続く両者。日本人との対戦も多いコムキョウ。しなやかな蹴りが目立ったコムキョウ。ペップンミーも前進して蹴り込み、採点は見極めが難しい中、やはりジャッジ三者が揃ったラウンドは無い僅差だった。
◆第6試合 ライト級3回戦
ジャパンキック協会ライト級1位.興之介(治政館/1988.12.17東京都出身/ 61.23kg)
25戦12勝(4KO)12敗1分
VS
YUGA(エイワスポーツ/1999.11.19神奈川県出身/ 61.0kg)3戦3勝(1KO)
勝者:YUGA / KO 2ラウンド 1分56秒 /
主審:西村洋
初回、距離取った蹴りからパンチの牽制からYUGAの左フックか、スリップ気味に興之介を崩した。そこからYUGAがリズムを掴んだ様子。
第2ラウンドもYUGAが左フックで最初のノックダウンを奪った後、更に左ハイキックがヒットすると再びノックダウンした興之介。飛び蹴りを見せるなど攻め返す力は残っていたが、今度はYUGAの右ハイキックが興之介の側頭部を捕えると興之介は倒れ込み、3ノックダウンでYUGAのノックアウト勝利となった。

◆第5試合 女子ミネルヴァ・ピン級3回戦(2分制)
アトム級1位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/ 45.7→45.36kg)32戦10勝19敗3分
VS
ペーパー級1位.上真(ROAD MMA/1985.10.16石川県出身/ 44.8kg)19戦6勝11敗2分
引分け 0-1
主審:中山宏美
副審:椎名29-29. 勝本29-30. 西村29-29
初回早々からの蹴りやパンチや組み合う攻防は上真がやや圧力掛ける前進。祥子はやや下がり出遅れた印象も、第2ラウンド以降も手数減らない両者の攻防は祥子のミドルキックが目立った。ジャッジ三者が揃ったのは上真に付けた初回のみ。僅差の攻防は引分けとなった。

◆第4試合 62.0kg契約3回戦
ジャパンキック協会ライト級4位.古河拓実(KICKBOX/ 61.8kg)8戦7勝(4KO)1敗
VS
ソムプラユン・ヒロキ(=緑川広樹/DANGER/ 63.0→62.7kg計量失格 減点1)
10戦2勝8敗
勝者:古河拓実 / KO 2ラウンド 1分34秒 /
主審:椎名利一
ローキックからパンチの様子見の両者。次第に古河拓実のパンチでソムブラユン・ヒロキがバランスを崩し、ヒザ蹴りを貰ってしまう展開に移った。
第2ラウンドも蹴り合いは古河拓実が優る展開。更に古河拓実の左ストレートから連打、ヒジ打ちからヒザ蹴り連打でノックダウンを奪った。更にヒザ蹴り連打で2度目のノックダウン。飛び気味のヒザ蹴りから右ストレートで3ノックダウンとなって古河拓実がノックアウト勝利となった。ソムブラユン・ヒロキは計量失格の様子から体調も気力も精彩無い感じに見えた。

◆第3試合 フェザー級3回戦
ジャパンキック協会フェザー級5位.海士(ビクトリー/ 57.0kg)6戦4勝2敗
VS
鈴木ゲン(拳心館/ 56.8kg)15戦6勝(4KO)8敗1分
勝者:海士 / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-27. 中山30-27. 西村30-27
パンチと蹴りの攻防はスピードある海士が優る展開。スピード劣る鈴木ゲンはバランス悪く出遅れる。打たれ蹴られ劣勢になっても大きなダメージは無いのか、鈴木ゲンの倒れないしぶとさと蹴り返す頑張りはいつもどおりだった。倒しに行けない海士の方がパワー不足と感じるも全てのラウンドを海士が制したジャッジ三者が揃う大差判定勝利となった。

◆第2試合 66.0kg契約3回戦
三澤悠太郎(市原/ 64.55kg)2戦1勝(1KO)1分
VS
TYLER(エイワスポーツ/ 65.3kg)1戦1敗
勝者:三澤悠太郎 / KO 1ラウンド 1分54秒 /
主審:西村洋
蹴りの攻防から三澤悠太郎が右ストレートでTYLERからノックダウンを奪うと、倒す距離感を掴んだ三澤悠太郎が立て続けにパンチ連打で3ノックダウンを奪ってノックアウト勝利となった。打ち返す展開も見せたTYLERだったが、距離感が悪かった。

◆プロ第1試合 フェザー級3回戦
BANKI(竹森万輝/治政館/2008.2.15埼玉県出身/ 56.8kg)2戦2勝(1KO)
VS
ゲンキ・ノーナクシン(ノーナクシン/ 57.0kg)6戦2勝4敗
勝者:BANKI / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)
テクニシャンの攻防を見せる初回の両者。デビュー戦で魅せた右ハイキックも鮮やかに繰り出すBANKI。今回は簡単にはヒットさせないゲンキのディフェンスが強かった為、やや苦戦の流れもあったBANKI。展開に大きな差は無かったが、BANKIのハイキック、グローブの上からでも蹴りがやや優る攻勢でBANKIがデビュー後2連勝を飾った。

アマチュア3試合は割愛します。
《取材戦記》
今回のタイトルマッチが注目のカードだったKICK Insist.24“ジャパンキック協会ウェルター級タイトルマッチ”と謳っていますが、願わくば純粋に“日本ウェルター級タイトルマッチ”と謳いたいところでしょう。ここが分裂を繰り返して来た多くの団体の宿命です。
昨年3月24日、大地フォージャーを壮絶なノックアウトで王座奪取した政斗だったが、今回の初防衛戦は判定ながら、ノックダウン喫してからジワジワと巻き返しの激闘を制した。
長年のキャリアが活かされた政斗の底力。細見直生はまだ5戦目で政斗攻略法が出来上がっていなかっただろう。次の王座に臨むのは細見直生が再度挑むか、前チャンピオン、大地フォージャーが復活するか。ここはまだ予測するのは早いかな。
今回のセミファイナルに出場したタイ選手に「元・タイ国ムエサヤーム・パーカン」という経歴がありました。ムエサヤームというのは、専門誌のムエサヤームを冠にした各地方のムエタイ有識者による組織ごとの王座で、パーカンはPark・klang(パーク・クラーン)が正しく、パークは方向、クラーンは中央部で、タイの中部地方を指します。パーク・イサーンは東北部。パーク・ヌア(北部)、パーク・ターイ(南部)、パーク・タワンオーク(東部)などがあり、地方の若手選手達の登竜門的な王座でもあるようです。
ジャパンキックボクシング協会次回興行は11月23日(日)に後楽園ホールに於いて開催されます。睦雅と瀧澤博人のビッグマッチが見込まれています。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」