朝日新聞はリンチ事件に対して明確に態度を示せ! 広島・広陵高校のリンチ事件について思う

鹿砦社代表 松岡利康

ここ甲子園(松岡自宅、事務所所在)では夏の高校野球が開催中で賑わっています。今、甲子園は日本の中心と言っても過言ではありません。私は毎朝甲子園球場の周りを散歩して出社していますが、全国から応援や観戦に来られている人たちを見ると、こちらも何か嬉しいです。

今年は、例えば松坂大輔クラスのビッグスターがいないこともあるのか、一番話題になっているのが広島・広陵高校野球部内におけるリンチ(私刑)事件です。当初出て来た1件のみならず複数に渡るようです。今後のメディアの取材に期待します。

ところで、この高校野球の主催者はどこか? 日本高野連と朝日新聞です。このリンチ事件に対して、朝日新聞は頑ななほど沈黙しています。大会が終わったら、特集でも組むためにネタを仕込んでいるのでしょうか──不可解です。

広陵高校のリンチ事件は、すでに同校OBの元プロ野球選手・金本知憲(広島カープ→阪神タイガース。阪神では監督も経験)の時代からあることを、金本自身が著書で明らかにしています。

《ある日、ぼくはふだん以上にはげしい「説教」を受けた。気がつくと、ぼくは正座をしたまま、一瞬気をうしなっていた。二、三人がかりで、なぐられ、けられたのだ》

《先輩のだれかが、スパイクをはいたまま、ぼくの太ももをふみつけた。スパイクには金属製のつめがついている。そのつめがぼくの太ももの肉をえぐり、血が出た》(金本著『心が折れても、あきらめるな』2009年)

金本については他にも差別されたりイジメられていたようです。おそらく金本が在日であるからだと推認されます。

なのに、これまで放置されてきました。金本が先の著書で明らかにした時点で何らかの方策を取るべきでした、

高野連は果たして知らなかったのか? 朝日は知らなかったのか? 高野連、朝日とも主催者ですから厳しく対処すべきです。また、朝日と競合する他の大手各紙はどうか? この際、徹底して膿を出すべきだし、場合によっては、来年1年ぐらい中止してでも、解体的に出直すべきでしょう。古くは怪童・尾崎行雄、池永正明、太田幸司以来の高校野球ファンである私としては、本件に対しては地元・甲子園で大変怒っています。朝日よ、しっかりしろ!

さて、リンチ事件と言えば、私(たち)が長年一所懸命に取り組んだ、「カウンター大学院生リンチ事件」、事件が起きた場所に因んで「北新地リンチ事件」と呼ぶ人もいますが、「俗称「しばき隊リンチ事件」を思い出さざるをえません。加害者は、「反差別」を金看板にそのジャンヌ・ダルクのようにメディアが崇める李信恵、主要暴行犯・エル金こと金良平ら5名で、当時、某国立大学博士課程在学中のМ君に対し壮絶なリンチ(私刑)を加えました。М君が体に忍ばせていたICレコーダーの録音や事件直後に撮った写真が明らかになり、加害者らも降参するかと思いきや、「デマ」「でっち上げ」「街角の小さな喧嘩」「リンチはなかった」などと開き直りました(現在でもそうです)。人間としていかがものでしょうか?

この事件は発生から1年余り隠蔽され世間には知らされませんでした。朝日はじめメディアは知っていたはずです。М君は朝日の記者にも相談していますから。私たちがこれを知ったのは事件から1年余り経ってからでした。それほど隠蔽工作は徹底して行われました。隠蔽工作の証拠も明らかになっています。

私たちは被害者の大学院生から相談があって以来彼を全力で支援しました。また、裁判闘争を裏付けるために徹底して取材し、多くの資料を入手したり多くのことが判りました。それはこれまでに6冊の出版物として世に問いました(まだ書くことは残っていますが)。

しかし、小出版社たる私たちの力では、広く社会に知らしめることはできませんでした。残念です。

いま、しばき隊(もしくはこの界隈の輩)が各所で暴れ、その傍若無人な様が出て来て、心ある方々から批判され、関連して皮肉にも10年余り前の大学院生М君に対するリンチ事件も語られています。私たちがまとめた6冊のムック本、これらに収めきれなかったことは私のFBや「デジタル鹿砦社通信」をご覧になり、今につながる問題であることを感じ取っていただきたいと熱望いたします。

M君は、その後、何とか博士課程は修了したものの、失意のうちに研究者の途を諦め普通の市井人(給与所得者)として働いています。さらにはリンチのPTSDに苦しみながら生きています。リンチ事件によって人生を狂わされたと断じることができます。胸が詰まります。

このように、暴力は、受けた人の人生を狂わせます。広陵高校野球部でのリンチの被害者も、思い描いた広陵での野球生活を断念し転校を強いられたりしています。おそらくリンチを受けたことは悪夢として忘れられない傷跡を残していることは容易に察することができます。

このМ君リンチ事件でも、被害者М君が朝日新聞(他のメディアにも)などに必死に訴えたにも関わらず、彼ら記者連中は、まさに若い研究者の卵を弄ぶばかりで冷ややかな態度を取り、加害者らの隠蔽工作に加担したと断言いたします。М君や私たちの度々の記者会見要請にも応じませんでした。逆に加害者らを持ち上げ、記者会見は開くわ、賛美記事はどしどし掲載するわ、呆れてものが言えませんが、このこともМ君を苦しめました。彼ら大手メディアであることの変なプライドがあるのか、私たちの取材にも応じませんでした。

高校野球の主催者で日本を代表するマスメディアの朝日新聞は、今こそ<暴力>の問題について、社を挙げて徹底して取り組むことを強く願ってやみません。でないのなら、甲子園に出場した高校がこれまで犯してきた過ちを黙認した加害者として糾弾されても致し方ないでしょう。

【追記】古い話ですが、私は学生時代(1971年)、日本共産党=民青(みんせい)のゲバルト部隊(「ゲバ民」と言います)に襲われ病院送りにされました。また、身近の先輩らで、ゲバ民や敵対党派に襲われ亡くなったり傷ついた人は少なくありません。〈暴力〉の問題については、みずからも襲撃されて傷ついた体験から、その被害者の心身にわたる後遺症がどれほどのものか、機会を見て記述したいと思っています。

※別掲画像は8月17日の甲子園球場(撮影者:松岡)

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。