ヒットマンは山健組の組長(中田浩司60歳)だった……。これは任侠界を知る者にとって、きわめて衝撃的な事実である。たとえはヘンかもしれないが、トランプ大統領がF35戦闘爆撃機に乗って朝鮮半島上空に侵攻して核ミサイル基地を空爆するとか、安倍総理がみずから作業着を着て災害救助の最前線に立つようなものだ。いや、それだと立派な行為ということになるが……。つまり言いたいことは、山口組抗争の片方の本家(正しくは本家組長の出身母体)の親分がみずから、対立する六代目山口組の本家(正しくは本家組長・若頭の出身母体)の幹部を銃撃したという、前代未聞の事態なのである。

すなわち、8月21日に弘道会傘下の二代目藤島組に所属する加賀谷保組員(51歳)が複数の銃弾を浴びた事件のヒットマンが、中田組長だったことが判明したのだ。それもミニバイクにヘルメットをかぶり、拳銃を撃ち放つという若々しき実行行為である。

考えてもみてほしい。60歳で懲役30年の刑を受けた場合、獄死はほぼ間違いない。かりに懲役20年、80歳で出所できたとしても、もはや引退する歳である。


◎[参考動画]山口組系組員銃撃事件 神戸山口組幹部の男を逮捕(サンテレビ2019年12月4日)

それだけではない。8月の事件に対する報復として、10月10日に山健組本部前で六代目山口組弘道会(竹内照明会長)の丸山俊夫幹部組員(68歳)が、山健組幹部2人を射殺している。このとき、丸山は報道関係者を装ってカメラを持ち、怪しまれずにターゲットに近づいている。しかし本欄でも指摘したとおり、警備陣がそろっている中での犯行であり、もとより帰還を期さない特攻襲撃でもあった。永山則夫(連続射殺犯)規準では、2人以上殺せば死刑である。

さらには11月27日に、元山口組組員(破門中)の朝比奈久徳(52歳)が神戸山口組の古田恵一(二代目古田組)組長をM16自動小銃で射殺している。朝比奈容疑者の銃撃の動機は不明だが、軽機関銃での犯行は重刑になるであろう。


◎[参考動画]山口組系組員銃撃事件 新たに男4人逮捕(サンテレビ 2019年12月9日)

◆高山清司若頭が直参幹部に喝?

10月18日に六代目山口組の高山清司若頭が出所して、幹部たちを集めて「喝を入れた」と報じられ、にわかに抗争激化の様相を呈している。などと実話系週刊誌は見出しを立てているが、幹部たちの直接の証言があるわけではない。山口組は司組長が産経新聞のインタビューに応じた例外を除いて、マスコミや暴力団ライターの取材に応じるのはご法度である。

いまのところ山口組抗争は双方とも抗争は自粛、むしろ水面下の締めつけや復帰工作が進められているのが実情だ。問題なのは、中高年の幹部組員たちがヒットマンになり、絶望的な戦いをくり広げていることであろう。

中田組長にしても、丸山幹部組員にしても、二度と娑婆の空気を吸うことはできない。それを十分に承知のうえで、あえてヒットマンになったのである。

神戸山口組は井上邦雄組長をトップに、当初は3000人近い組員がいたが、六代目山口組の切り崩しにあって、昨年末では2000人ほどに減っていたという。捜査当局の観測によると、六代目山口組高山若頭の出所によって、切り崩し攻勢がさらに拍車がかかっているという。それ自体は30年前の山一抗争を思い出させる構造となっているが、良くも悪しくも六代目山口組の統制力の強さ、弘道会一極支配が高山若頭体制として中央集権化していることだ。神戸山口組から分立した任侠山口組の織田絆誠代表による、六代目復帰と再統合の路線は少なくとも、高山若頭の出所で完全に途絶えた。

ぎゃくにいえば、高山清司若頭が分裂の大きな原因(人事の独占、生活雑貨の強制購入、上納金の高額化)だったのだから、噂される七代目への移行時に大きな組織上の変化が展望される。それは高山若頭が七代目になるのか、あるいは竹内照明若頭補佐(三代目弘道会会長)が襲名するのか。それとも司忍六代目のお気に入りである森健司(司興業会長)が抜擢されるのか。捨て身のヒットマンたちの思いがけない行動が、鼎立する山口組抗争を決定づけるのかもしれない。

【横山茂彦の好評連載】
「反社会勢力」という虚構

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著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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この危ないテーマを、偉大な医師にして国際貢献の烈士を素材に語るべきか。迷ったすえにメモリーとして書くことにした。国際貢献の烈士とは、いうまでもなくペシャワール会の中村哲先生のことである。事件は水争いということで、犯人の身柄も確保されたという。偉大な治水事が不幸な結果となり、また余人に代えがたい先生が亡くなられたことに、哀悼の意を表するものです。

さて、安倍政権は「反社勢力は定義できない」と、みずからの政治的基盤にヤクザや半グレ、圧力・利権団体、あるいはマルチ商法まがいの実業家などがいることを、閣議決定をもって証明した。じつは中村哲先生も、この定義できない「反社」の親族なのである。


◎[参考動画]「信頼関係が一番大切」 中村哲さんが遺した言葉(毎日新聞2019年12月04日)

『日本侠客伝 花と龍』(1969年東映)

すでに母方の伯父が火野葦平であり、その父親が玉井金五郎(玉井組の親分)であることは、ニュース解説などでも触れられている。火野葦平の『花と竜』には、玉井金五郎のほかに吉田の親分(吉田磯吉)も登場し、近代ヤクザ黎明期の若松港が描かれている。じっさいには、戦後に書かれた『革命前後』に玉井金五郎のやや狡すっからい人物像が描かれてあり、後者のほうが実像に近いと評されたものだ(地元の親分衆の話を聴取した溝下秀男工藤會総裁=2008年に逝去)。

◆工藤會との関係

中村先生の親族が「反社」(不定義)というのは、文豪につながる出自を言いたいのではない。先生の従兄に現役の工藤會幹部がいるからだ。四代目工藤會で執行部を務め、現在は常任相談役の玉井金芳玉井組組長がその人だ。三代目(溝下秀男会長)の信任が厚く、そのクレバーな振る舞いから対外的な実務を担っていた。玉井組長は火野葦平の晩年の実子で、玉井一族はいまも若松の港湾団体の要職を占めている。

どうだろう。大伯父がヤクザの大親分で、親族に任侠組織(暴力団)の幹部がいるからといって、中村先生を「反社」につながる暴力団親交者と言えるだろうか。暴対法・暴排条例、そして「反社排除」は、ややもすれば家族関係・親族関係に亀裂を入れ、地域社会を崩壊させかねない勝手なレッテル貼りだったのだ。ほかならぬ安倍政権がそれを証明した。政権が閣議決定した以上、警察庁が仕掛けた社会を歪ませる「反社排除」は是正されるのだろうか。

ちなみに、河伯洞(火野葦平の旧居)の館長も中村先生の従弟である。
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/wakamatsu/file_0043.html

資料館ともども、北九州観光のおりには訪れて欲しい場所だ。資料館の館長は「中村さんの義侠心のルーツが、ここにあることを知ってほしい」と、中村先生に関連した特別展示にあたって語ったという。

話が溝下秀男総裁におよんだので、政治家との関係を記しておこう。溝下総裁が30のときに斯界に入門するか、政治家への道を選ぶか迷ったのは、著書『極道一番搾り』ほかに明かされている。このときに政界に誘ったのは、自民党の田中六助である。田中は大平正芳政権のもとで官房長官、鈴木善幸内閣で通産大臣に就任している。田中の後継者(甥)である武田良太が、この欄で何度か名前の出たヤクザと親交がある現国家公安委員長である。

溝下総裁が生きていたとして72歳だから、政治家の道に進んでいたら90年代から2000年代はヤクザ政治家が暴れまわっていたのかもしれない。その溝下が中村哲の活動を陰ながら支援していたことを記しておきたい。工藤會が匿名ながら児童養護施設(溝下自身が孤児である)などに遊具などを寄付していたことも、書かなければ歴史に埋もれる史実となりそうだ。合掌。


◎[参考動画]【中村哲さん追悼】2003年4月放送 アフガンの現実(筑紫哲也NEWS23)

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安倍政権は12月10日の閣議において「反社会勢力」について「形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化しうるもの」立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。と閣議決定した。


◎[参考動画]「反社会的勢力」定義困難と閣議決定 “桜問題”で(ANNnewsCH 2019年12月10日)

「なっ、何だってぇ?」と、誰もが唖然としたのではないだろうか。暴力団や半グレ、えせ同和、総会屋など、反社会勢力と定義されてきたものが、まるで幻だったかのように政府が定義を変更。いや、社会情勢に応じて変化しうると、曖昧化したのである。

少なくとも、政府において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」という、第1次安倍政権が犯罪対策閣僚会議(2007年6月に)で決定した定義を撤回したのだ。

これによって、金融機関や公共機関、遊技場、賃貸契約など、社会のあらゆる領域で「反社会勢力ではありません」と一筆を入れなければならなかったルールが変更を余儀なくされるはずだ。公安委員会が指定する25の指定暴力団いがいは、もはや「反社会勢力」とは定義できないのだ。各都道府県警においては「反社」という言葉を安易に使えなくなった。声高に謳っていた「反社会勢力の排除」も使えないことになる。

◆政治家はもともとヤクザと同じ職種である

ではなぜ、安倍政権はこのような噴飯物の閣議決定をしなければならなかったのだろうか。

直接的には、立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えたもので、国会議員の質問には「閣議決定」をもって応じなければならないからだが、安倍総理および菅義偉官房長官の一連の答弁、および「桜を見る会」での反社勢力の参加を受けて、事態を糊塗するものにほかならない。

そして、もうひとつ。警察庁がいくら「暴力団排除」「反社勢力の排除」を力説しようとも、政治家および地元警察がヤクザとの蜜月をやめられないからだ。いや、そもそも政治家という職業、つまり政治(警察力によらない紛争の仲裁・利益の配分・地域の諸勢力の取りまとめ・威力をもってする統合)がヤクザの職域とほぼ同じだからである。

さらには、政治家が選挙による以外にその特権(議員職)を得られないかぎり、集票力のある組織に依拠せざるを得ないからなのだ。とくに自民党のように利権と利益配分を本質とする政党にとって、ヤクザとの関係は不可分なのである。地域の実力者、事業に参入する有力企業に、ヤクザが何らかの関係を持とうとするかぎり、絶対にヤクザは排除できないのだ。ここに問題の本質がある。

麻生太郎副総理、甘利明(労働大臣・経産大臣・自民税制調査会長などを歴任)、田中和徳復興大臣、武田涼太子国家安委員長、竹本直一科学技術担当大臣、下村博文元文部科学大臣。これらは直近で思い浮かぶ、ヤクザ系の人脈と親交のある(人的な交流や政治資金を受け取った)政治家たちだ。そしてわが安倍晋三は、工藤會系の準構成員と推定される土建会社の社長と選挙妨害を談合し、謝礼をケチって火炎瓶を自宅に投げられるチョンボを犯した疑惑がある。菅義偉官房直管はまさに、桜を見る会で全身刺青の半グレと記念撮影するありさまだ。

◆崩れ去った警察庁官僚の思惑

暴対法および暴排条例、そして反社会勢力という言葉は、警察庁のキャリア官僚たちの利権拡大の思惑から発したものだった。東西冷戦下での左右対立、暴力団の全国的抗争のなかで、28万人という巨大な組織に膨張した警察は、必要がなくなったこの時代に生き延びようとしている。予算の削減と戦い、退職者の天下り先・再就職先を確保するためにも、指定暴力団の存在は不可欠だった。左翼勢力が衰退する中でも、公安関連予算を確保するために微罪逮捕などの取り締まりを継続しているのも、巨大組織の延命のためにほかならない。

しかるに、ヤクザも左翼もみずから弾圧してきた結果、先細りで思ったようにならない。そこで「反社会勢力」なる新語を創って、警察の全国動員体制(応援派遣)を発動してきた(工藤會警備の小倉派遣・辺野古警備など)のだ。だがその思惑も、政治家の「反社は定義できない」なる閣議決定によって、宙に浮くことになってしまった。永田町と桜田門の水面下の抗争こそ、これからの見ものと言うべきである。

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国会が閉幕し、安倍総理の「桜を見る会」疑惑は逃げ切った感があるものの、本質的に「お友だち」「上級国民」「反社との結託」「官邸による官僚統制=忖度」という政権を成り立たせている構造があるかぎり、政権の腐敗はくり返し暴露されるであろう。

◆自らが出席した会議で決まった「反社会的勢力の定義」を「一義的に定まっているわけではない」と言い放った菅義偉官房長官の厚顔

本連載「『反社会勢力』という虚構」をお読みになっている方には、別に愕くようなことではないかもしれないが、じつに安倍政権らしさも明るみに出た。安倍政権が支援者や仲間うち(本来の目的は功績があった人たち)を招待した「桜を見る会」に、反社会勢力とおぼしき人々が参加していたという一件だ。

しかも、その疑惑を指摘された菅義偉官房長官は、しれっとした表情でこう言い放ったのだ。

いわく「『反社会的勢力』は様々な場面で使われ、定義は一義的に定まっているわけではないと承知しています」

「えっ……?」

この「反社会的勢力」の「定義」は、じつは安倍政権において定められたものなのだ。第1次安倍政権下の2007年6月、「犯罪対策閣僚会議」が決定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」のなかで「反社会的勢力」は、以下のように定義されている。

「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」

ちなみに菅義偉官房長官は、当時総務大臣としてこの閣僚会議に参加している。みずから出席した会議で「定義」した反社会的勢力が、「定義は一義的に定まっているわけではないと承知している」と言うのだ。もはやこの人の言葉はまともに聴いても仕方がないというべきであろう。


◎[参考動画]反社会的勢力入っていた/菅官房長官 定例会見 【2019年11月26日午後】(テレ東NEWS)

「やや日刊桜を見る会新聞」と題する怪文書

[写真A]

ではなぜ、こんな無定見きわまりない答弁に追い込まれたのであろうか。[写真A]「やや日刊桜を見る会新聞」など、ネットで流布しているものだ。「週刊新潮」(12月12日号)によると、有名な反グレAの企業舎弟と言われる人物だという。犯罪歴は住宅ローン名目で金融機関から4600万円の詐欺で逮捕、知人の頭をビール瓶で殴る暴行罪で逮捕、牛を殺して「畜場法違反」で逮捕と多彩である。代紋を持って一家を構えたヤクザではないものの、それゆえに組織的な歯止めがきかない「準暴力団」としての野放図で危険な人物というべきであろう。

菅官房長官が「出席は把握していなかったが、結果的には入ったのだろう」と定例会見で述べている以上、菅氏自身がその正体を知っているのは明らかだ。というよりも、見た目で危なさが分かったはずではないか。ヤクザも反グレも「わたしたちは危険です」と堅気に知らせるためにこそ、派手な服を着たり茶髪に染めたりするのだ。そういう人物とツーショットに納まるとは、いかにも警戒心がなさすぎる。いや、そもそも近づいてくる人間を排除しないのが自民党政治なのである。そして安倍総理だ。

◆自民党政治は反社との結託で成立している

[写真B]はテロップのとおり、奈良県高取町の新澤良文町会議員(52歳)である。そしてその新澤氏が[写真C]上段において、派手なジェスチュアでスリーショットを喜んでいるのは、言うまでもなくわが安倍総理だ。新澤氏は五代目山口組山健組系の臥龍会に所属していた、れっきとした元暴力団組員である。週刊誌の取材によると、新澤氏は率直にその事実をみとめ、こう語ったという

[写真B]

[写真C]

「入れ墨も入っており、逮捕歴があるのも間違いありません。抜けたのは30歳のころ。組が代替わりして、冷や飯を食わされるようになったのがきっかけです。これはキチンと言わせていただきたいんですが、いまはカタギとして真面目にやっています」

立派な態度ではないか。すでに組織を離脱してから20年近くが経っているばかりか、FBを見るかぎり地元での熱心な議員活動も感じられる。過去記事(日本タイムス)によれば、警察関係者は新澤氏のことを「今も山健組の幹部と交流があります。服役は3回あり、殺人未遂で7年、暴行では1年入っています。全身入れ墨、左小指が欠損しています」という。絶縁されたわけではないようなので、現役の組員と親交があることも想像に難くない。これをもって、安倍総理と新澤議員の親交をとがめだてようとは思わない。むしろ反社の「定義は一義的に定まっているわけではない」ことを安倍政権において、正々堂々と閣議決定して言動の一貫性を保つべきではないか。

われわれ国民は「行政文書たる参加者名簿は破棄し、サーバーに残っている電子データは一般職員が使えないから、行政文書ではない」などという子供じみた屁理屈と同様に、「反社は定義がない」などと、薄っぺらな言い訳に辟易しているのだ。そして安倍総理や菅官房長官に反社につけ入られる「スキ」があるのではない。理念や政策によらない、人脈(誰でもよい)と金脈(利権配分)で成り立っている自民党政治がそもそも、反社といわれる人々と分かちがたい関係にあるからだ。

何度でも確認しよう。自民党政治は本質的に反社勢力との結託で成立してきたし、これからもそれは変わらない。伝統的な代紋の代わりに、一般企業を装ったり業界団体名を名乗ったりと形を変えても、基本的に利権誘導党派であるかぎり反社的な人物と結びついてしまうのだ。

そして独自の権益で反社を追い落とし、みずからがその利権を独占しようとする警察庁官僚がその関係を排撃するにつれて、反社の資金と集票力に依拠する自民党政治は股裂きに遭うのだ。

◎【横山茂彦の不定期連載】「反社会勢力」という虚構 

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「いい人だけ付き合ってるだけじゃあ選挙落ちちゃうんですよね」たびたび引用させていただいているが、2016年1月に安倍政権の社会保障・税一体改革担当大臣を辞任したさいの、甘利明の辞任会見での発言である。

甘利はURへの口利きのあっせん利得として、事務所(秘書)が建設会社から1200万円を受け取っていた責任をとって辞任した。この「いい人だけ」の裏側に「悪い人と付き合う」が含意され、そこにはパーティー券の購入や資金援助、ブラックな人脈との付き合いが政治家の本質だと暗喩されているのは言うまでもない。

田中和徳復興大臣

◆安倍政権閣僚と暴力団

この「悪い人との付き合い」が政治家の必要条件であることを、今回の安倍改造内閣でも田中和徳復興大臣(70歳)の例が証明している。本欄でも既報だが、再録しておこう。

「(田中和徳復興大臣の)平成18年に開催した政治資金パーティーで、指定暴力団稲川会系組長が取締役を務める企業にパーティー券を販売し、40万円を受領していたことが21日、産経新聞の調べで分かった。パー券販売は財務副大臣在任中で、暴力団側から政治家側への直接の資金提供が判明するのは極めて異例。暴力団排除条例が全国の自治体で制定されるなど『暴排』の動きが加速する中、国会議員と暴力団側の関係が発覚した。政治資金収支報告書や関係者によると、パー券を購入していたのは東京都品川区に本社を構える企業。設立は昭和62年で、法人登記では『日用品雑貨の販売』『金銭貸付業』などとなっている。捜査関係者によると、同社は暴力団のフロント企業として認定されているという。稲川会系組長は、設立当初は代表取締役を務めていたが、平成4年からは取締役に就任。同社が長年にわたって暴力団の影響下にあり、資金源となっていたことがうかがえる」(「産経新聞」2011年10月22日ウェブ配信)。

武田良太国家公安委員会委員長

田中復興大臣だけではない。暴力団を指定し、取り締まる国家公安委員会のトップに就任したのが、暴力団との交際を報じられている武田良太(51歳)である。これも既報だが、再録しておこう。

「2010年11月に公表された、武田氏の政治資金管理団体「武田良太政経研究会」の収支報告書によると、09年4月に開かれた政治資金パーティー代として、東京都のA社が50万円を献金している。また、11年11月公表の収支報告書では、A社の実質的な代表であるI氏が10年4月の政治資金パーティー代として70万円を支払っている。実は、このI氏、警察当局が指定暴力団山口組系の組員ではないかと当局からマークされ、裁判で素性が明かされた人物だった」(「週刊朝日」2019.9.13ウェブ配信)

もうひとり、竹本直一科学技術担当大臣(78歳)である。ひとつの内閣に3人も暴力団の密接交際者がいるようでは、自民党政治家の本質が「暴力団準構成員」であると指摘されても不思議ではないだろう。

山口組幹部だった男性と竹本直一氏(2018年8月撮影)

「閣僚名簿で『グレーな交友』を疑われたのが、科学技術担当相に起用された衆院当選8回の竹本直一氏(78)。SNSに、18年8月、花火を見物している竹本氏と記念写真に一緒に写っている角刈りの男性の姿がある。指定暴力団山口組系組幹部だったⅩ氏である。同年3月に、竹本氏の後援会が開催した新年賀詞交歓会のパーティーで、X氏と岸田氏が親しそうに写真に納まっている写真が、写真週刊誌『フライデー』にも掲載された。

「Ⅹ氏は長く幹部である組の顧問を最近までやっていたようだ。昔から、資金力豊富だと有名だった。『岸田氏や竹本氏との写真は、箔(はく)をつけるために撮ったのでしょうね』(捜査関係者)そして、宏池会所属のある議員はこう話す。
『(フライデーに写真が出た時から)竹本氏は相手が暴力団関係者であることがわかっていたはず。岸田会長も、あの報道には激怒していましたよ。なぜ、竹本氏はSNSの写真を削除させなかったのか? こんなわきの甘さでは、大臣が長く務まるとは思えないですね』」(「週刊朝日」2019.9.13)

たまたま暴力団関係者と知り合ったり、政治献金を受けていたわけではない。政治家という職業が誰とでも会合して握手し、選挙で政治家生命を鬻(ひさ)ぐおんであれば、密接交際をする本性を持っているからだ。安倍総理自身が「ケチって火炎瓶」事件(工藤會系の業者に選挙妨害を依頼するも、返礼金を渋って自宅と事務所に火炎瓶を投げられる)を生起させたのも、選挙という「再就職」システムがあるかぎり、何度もくり返されることであろう。

◆かつて政治家はヤクザと同義だった

戦前にさかのぼれば、ヤクザが政治家になるのは普通だった。憲政会の吉田磯吉は火野葦平の『花と竜』に登場する磯吉大親分であり、そのライバルで下関籠寅組の大親分が、立憲政友会の保良浅之助である。もっとも、吉田磯吉の生業は港湾忍足の元締めであり、保良浅之助の籠寅組は土木建築業と芸能興行であった。

吉田磯吉の門下に富永亀吉という親分があり、その系列の中から大嶋秀吉が頭の港湾労働者の元締めとなった。その大嶋組の傘下に、山口春吉の山口組が結成されたのである。のちの広域暴力団山口組の誕生である。

三代目山口組として、中興の祖となった田岡一雄親分の昭和20年代、山口組はまだ30人ぐらいの組織だったという(『狼侠』笠岡和雄、サイゾー刊)。神戸の本多仁介(本多会)と関東の藤田卯一郎(松葉会)の兄弟盃のとき、政財界からの列席者のなかに自民党党人派の総領・大野伴睦の姿があったという。その大野伴睦と自由党で行動をともにした中井一夫は、戦前からの代議士で神戸市長、弁護士でもあった。

中井がマスコミの注目を浴びるのは、四代目山口組と一和会の五年にわたる史上最大の抗争中、神戸ユニバーシアードのさいに「休戦協定」を結ばせた時のことだ。ヤクザと政権中枢が限りなく接近・一体化したのは、竹下登の皇民党による「褒め殺し」事件の時だった。稲川会二代目の石井進が京都の会津小鉄の三神忠を通じて皇民党総裁稲本虎翁総裁と会合し、竹下が田中角栄に謝罪することで話をつけたのである。

その機縁から週に一度、金丸信自民党副総裁と竹下登総理、石井進の三人の会合が持たれ、自民党内では「裏閣議」と呼ばれたものだ。会合の警護役は、若き小沢一郎だったという(『巨影』石井悠子、サイゾー刊)。皇民党事件のときに奔走して調停を計れなかった浜田幸一は、稲川初代(稲川聖城)時代の石井進の弟分である。

◆町内会や自治会を基礎とする自民党政治は、「反社会勢力」と手を切れない

自民党の政治家で、ヤクザと無関係に選挙をコンプリートできている者は、ほとんど皆無だろうとわたしは思う。なぜならば自民党政治の基礎単位が町内会や自治会(町内会と同義)に、地方議員が根を持っているからだ。町内会はそのまま神輿会や神社の崇敬会に重なり、そこには地域社会に根を下ろしたヤクザが介在しているからだ。ヤクザがそこに潜り込んでいるのではない。地域をとりまとめる人物は、本人がヤクザであるかヤクザと親交を結んでいるからだ。それを無理やり「反社会勢力」と手を切れと言ってみても、地域の共同体を破壊することにほかならないのだ。いや、すでに地域社会は拡散し、共同体は崩壊しつつあるのかもしれない。ヤクザ組織の末端が半グレ化し、統制の効かない犯罪組織化しつつある。


◎[参考動画]参院選:弾ける「バンザイ」集:与党編(テレ東NEWS 2019/07/21公開)

[関連記事]
◎「反社会勢力」という虚構〈1〉警察がヤクザを潰滅できない本当の理由(2019年10月9日)
◎「反社会勢力」という虚構〈2〉ヤクザは正業を持っている(2019年11月4日)
◎続々湧き出す第4次改造安倍政権の新閣僚スキャンダル 政治家と暴力団の切っても切れない関係(2019年9月21日)
◎高齢・無能・暴力団だけではない 改造内閣の「不倫閣僚」たち(2019年9月24日)
◎安倍官邸親衛隊の最右翼、木原稔議員が総理補佐官に就任した政治的意味(2019年9月25日)

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暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が成立したのは1991年のことだった(施行は翌年)。露天商系のヤクザ(テキヤ)が反対デモをするなど、その違憲性が問われたものだ。その後2回の改正をへて、以下のような禁止事項が整備された。執行については、これらに基づいて公安委員会から「禁止命令」が出される。なお、組事務所の移転訴訟などを、地元の住民に代わって暴力団追放センターなどが代行できる訴訟制度の改正も行われた。

【禁止事項】(だいたいわかると思いますので、読み飛ばしてください)
・口止め料を要求する行為
・寄付金や賛助金等を要求する行為
・下請参入等を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して「みかじめ料」を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して用心棒代等を要求する行為
・利息制限法に違反する高金利の債権を取り立てる行為
・不当な方法で債権を取り立てる行為
・借金の免除や借金返済の猶予を要求する行為
・貸付け及び手形の割引を不当に要求する行為
・信用取引を不当に要求する行為
・株式の買取り等を不当に要求する行為
・預貯金の受入れを不当に要求する行為
・地上げをする行為
・土地家屋の明渡し料等を不当に要求する行為
・宅建業者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・宅建業者以外の者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・建設業者に対して建設工事を不当に要求する行為
・集会施設の利用を不当に要求する行為
・交通事故等の示談に介入し、金品等を要求する行為
・商品の欠陥等を口実に損害賠償等を要求する行為
・役所に対して自己に有利な行政処分を要求する行為
・役所に対して他人に不利な行政処分を要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の入札に参加させることを要求する行為
・国等に対して他人を公共工事等の入札に参加させないことを要求する行為
・人に対して公共工事等の入札に参加しないこと又は一定の価格で入札することを要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の契約の相手方とすること又は他人を相手方としないことを要求する行為
・国等に対して公共工事等の契約の相手方に対する指導等を要求する行為

ようするに「不当な方法」で「要求」をしてはいけない。というのが法の趣旨である。構成要件が不当というのだから、従来法で対処できるではないかというのが、当時の任侠団体(ヤクザ組織)の言い分だった。


◎[参考動画]1992年2月テレビ朝日「朝まで生テレビ! 激論! 暴力団はなぜなくならないか!?」 (前半)(2019/4/25公開)

しかしすでに、この頃からヤクザは「不当な強要」や「用心棒代」から「正業」に移行しつつあった。その先鞭が五代目山口組の若頭宅見勝である。宅見は愛人(西城秀樹の姉)に高級焼き肉店をやらせ、みずからは土建会社を経営するなど、経済ヤクザへの道を拓いていた。

ヤクザが組の名刺とともに、企業の名刺を持つようになったのは、暴対法の成立が契機だった。六代目山口組(司忍組長)の弘道会が力を得たのも、中部セントレア空港建設の莫大な利権を独占したからである。一説には地下室のプール一杯に、札束が敷き詰められているなどという情報もあったほどだ。

公共事業や民間事業の建設利権とは、正規の予算外に設けられている「地元対策費」をヤクザが業者を取りまとめることで、そこから予算を吸収する方法。そして同じく正規の予算内で配分した業者への仕事の割り当てを差配し、業者からリベートを受け取る方法がある。さらにヤクザ自身が業者となり、共同事業体の仕事を請け負う。その場合はゼネコンの配下にフロント企業、あるいは企業舎弟を持っていることになる。あとでみる暴排条例は、建設利権などからのヤクザ排除を狙ったものである。

実際に取材したわたしが知るかぎり、飲食系の風俗店を直接経営するのは基本中の基本で、コンパニオンの派遣業、フィリピンでの胡蝶蘭の生産・輸入・販売、不動産業、建設業、移動パン屋、和菓子屋、タクシー会社、ジムの経営、風俗店への仕出し弁当(服役中の組員の奥さんが従事)、個人では彫り師や接骨師など、じつに多彩なものだった。Vシネマの製作、芸能プロダクションの経営などもシノギとしては大きい。このうち、コンパニオン派遣業は当時の労働大臣の認可事業なので、不認可を突かれた若手の組長が逮捕されたのを知っている。ようするに、90年代のヤクザは警察の取り締まりに、業態を変えることで対応していたのである。


◎[参考動画]「暴力団対策法」に反対する共同声明

◆暴排条例の無理押し

ところが、2010年代になると警察不祥事が連続し、とくにヤクザと警察の癒着が顕在化した。博多の中州カジノバー事件(捜査情報を漏洩)では、ヤクザ(工藤會系)から月額100万円を受け取っていた警察官が10人以上も芋づる式に逮捕・事情聴取される事態となった。このときの公判資料には「小指のない刑事」という記載がある。つまり警察官でありながら、断指するような稼業人(ヤクザ)がいたことになる。

警察刷新会議の発足と並行して、自治体レベルでの暴力団排除条例が画策された。この暴排条例は、市民に「ヤクザと付き合うな」という法律であって、市民を取締りの対象にしている。自治体レベルでの決議・施行となったのは、国会では違憲論争に発展すると読んでのことである。このあたりの警察官僚の姑息さは、ある意味で見事だ。

ヤクザと「密接交際した」市民への処罰はじっさいには「企業名の公表」「注意」だけだが、たとえば出版社が現役の組長の本を出版した場合には、印税や原稿料が利益供与ということになる。利益供与の疑いがある出版社には、銀行協会を介して「融資の見直し」という圧力が加えられるのだ。竹書房が「実話ドキュメント」(恵文社発行・2018年5月に紙媒体は廃刊)の販売から撤退したのは、これが大きな理由である。わたしも「血別」(太田守正・神戸山口組太田興業)という本をつくったが、著者の太田さんが現役復帰してしまったので、同書の文庫化はできなかった。引退した親分しか本を出せない時代になったのである。

暴排条例は日常生活にもおよんでいる。組員が喫茶店に入ってコーヒーをオーダーして、店がそれに応じたら「利益供与」なのである。ヤクザが「反社会勢力です」と断らないでゴルフ場の会員になっても「詐欺罪」、身分(ヤクザであること)を隠して銀行口座を開いたり、クルマを購入しても「詐欺罪」となるのだ。銀行口座が使えないのだから、ヤクザは水光熱費の口座引き落としもできない。ヤクザの子供は、カードも使えないことになる。前回の記事で「実話時代」が廃刊に追い込まれたのも、暴排条例を盾にした暴排運動の「成果」にほかならない。

そのいっぽうで、最終的にヤクザ組織を解体できないのは、政治家が選挙運動の裏側で大きく「反社会勢力」に関わっているからだ。


◎[参考動画]指定暴力団 再指定に向けた意見聴取 山口組側は欠席 聴取行われず(サンテレビ2019/4/4公開)

◆政治家のホンネ「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」

たとえば2016年に、甘利明経済再生担当相の秘書が千葉県の建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉を巡り、口利きを依頼され現金を受け取った騒動を思い起こしてほしい。甘利氏は記者会見で、この建設会社側から2013年11月に大臣室で50万円、2014年2月に神奈川県大和市の地元事務所で50万円の計100万円を受け取ったことを認めている。秘書も建設会社側から受け取った500万円のうち、200万円しか政治資金収支報告書に記載せず、残り300万円を私的に使っていたという。その責任をとって辞任するときの弁が「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」これこそが、小選挙区を生きる政治家のホンネなのである。


◎[参考動画]甘利明経済再生担当相が会見「閣僚の職を辞する」(THE PAGE 2016/1/29公開)

今回は暴対法・暴排条例のおさらいから入り、ややおとなしいレポートになってしまった。次回からは、いよいよディープなヤクザ情報をお伝えしよう。※このテーマは随時掲載します。

◎[カテゴリーリンク]横山茂彦「反社会勢力」という虚構 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=76

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆音が鳴った

10月18日、六代目山口組若頭の高山清司が府中刑務所を出所する。組長の司忍以上に組織統制の要と言われる高山の出所を前に、4度目の「音が鳴った(銃撃が起きた)」。

すなわち、10月10日に山健組本部前で、六代目山口組の中核組織・弘道会(竹内照明会長)の丸山俊夫幹部組員(68歳)が、山健組幹部2人を弾いた(射殺した)のである。


◎[参考動画]神戸で組員2人射殺 逮捕の男は報道関係者を装う(FNN 2019年10月11日公開)

周知のとおり、弘道会は高山若頭、司忍組長の出身母体だ。この事件をうけて、兵庫県警は11日に六代目山口組総本部事務所と神戸山口組事務所など同県内計11カ所の組事務所について、暴力団対策法に基づく使用制限の仮命令を出した。

9月29日にも、埼玉県飯能において銃撃事件が発生したことが週刊誌で大きく報じられている。撃たれたのは任侠山口組の幹部の弟(堅気の塗装業者)だった。任侠山口組(織田絆誠代表)への攻撃であれば、六代目山口組の組員による犯行との見方がつよい。

それに先立つ8月21日には、六代目山口組の弘道会の兵庫県神戸市熊内町にある関連施設で、やはり発砲事件が発生している。弘道会傘下の二代目藤島組に所属する加賀谷保組員(51)が、複数の銃弾を浴びたのである。撃たれた加賀谷組員は、腕を切断せざるをえなかったという。

さらにさかのぼる4月18日に神戸市内の路上で、神戸山口組の中核組織である山健組の與(あたえ)則和若頭が、弘道会系の組員に刺されている。

8月の事件は4月の事件の“返し”として、山健組が神戸にある弘道会の拠点を襲撃した可能性があり、そうであれば10月10日の事件は、高山若頭の出所を前にした、弘道会の血の報復とみるべきであろう。8月21日の事件は、ほかならぬ高山若頭の住居で行なわれたのだから――。

ここまで読まれて、ヤクザマニアでなければ何が何だかわからないのではないだろうか。いったいどことどこが戦い、山口組はそもそもどうなっているのか(苦笑)。


◎[参考動画]六代目山口組総本部など「抗争状態」判断で使用制限(FNN 2019年10月12日公開)

◆3つの山口組

そこそこに知っている方も、ここでおさらいだ。山口組が分裂したのは2015年8月のことである。

六代目司忍組長・高山清司執行部体制に不満を抱いていた直参グループが、井上邦雄(山健組)を組長に、神戸山口組を旗揚げしたのだった。六代目に対する批判は、弘道会による役職の独占および上納金(月額100万円)、そして生活物資の買い取り(本家からの購入強要)であった。暴対法、暴排条例でシノギが厳しくなった中で、カネに執着する本家への反発である。五代目渡辺芳則組長は、組織拡大路線のもと、上納金を低く抑えていたではないか、と。

ところが、井上組長の神戸山口組もまた、直参組織を上納金で縛るという実態が明らかになったとして、織田絆誠(金禎紀)を首班とする任侠山口組がたもとを分かったのが2017年の4月である。こうして山口組は3鼎立することになったのだ。

六代目山口組 10300人 
神戸山口組   2700人
任侠山口組   460人

もともと、六代目山口組が発足したとき(2005年)に、それまで主流派だった山健組(渡辺五代目の出身母体)は人事で不満を抱いていた。弘道会による執行部人事の独占である。実力派の後藤忠政(後藤組組長)が除籍になったのを機に、13人の直参組長たちが謀反の談合を開いたところ、各個呼び出されて除籍処分になったのが、2015年分裂の遠因である。この除籍の顛末は、談合自体が弘道会の謀略だったという(『血別』太田守正、サイゾー刊)。

◆本格的な抗争は起きない

それはともかく、ヤクザジャーナリズムが騒ぎ立てるほど、本格的な大抗争が再燃するとは思えない。少なくとも組織としての山口組三派は、抗争を禁じる措置をとっているからだ。民法上の使用者責任が組長におよぶ、というのが一番の決め手である。

事件によって挙げられるのは、もちろん組長だけではない。銃撃したヒットマンも、よほどの覚悟がなければ出頭することはできないだろう。むかしなら新聞や実話誌で派手に報じられて、十数年の懲役を受けながらも任侠界に名をとどろかすという一幕だが、いまはそうではないのだ。

ヤクザなら相手を殺せば長期刑(30年か無期)、無期になれば堅気にならないかぎり、仮釈放は認められない(2000年に思想犯の除外を検察庁が更生保護委員会に指示)。見かけだけ堅気になったとしても、組に復帰すれば収監される。無期懲役の仮釈放は、刑期満了ではないからだ。かりに懲役30年になったとして、25歳の若きヒットマンは55歳でやっと出所ということになる。

人生100年時代とはいえ、人生の盛りの大半を獄中の労役で過ごすのである。ちょっと落ち着いて考えれば、捕まりたくないはずだ。そんなわけだから、9月の事件では、ターゲットを誤爆するというチョンボを犯している。しかるに10月10日の事件(2名殺害)は、斯道界のみならず警備当局、市民社会を震撼させるものだった。それがヤクザの犯行ではなく、マフィア的な犯行だからだ。

◆日本任侠道のマフィア化のきざし

当日は山健組の定例会が開かれている場所で、丸山容疑者は取材の実話誌記者たちとともに、記者を装ってカメラバッグの中に拳銃をしのばせていたというのだ。警察官の職務質問にも「実話誌の記者です」と答え、じっさいにカメラで撮影もしている。そして定例会が終わったとき、山健組の組員たちに誰何された段階で、2名射殺という襲撃を成し遂げたのだ。厳重警備を敷いていた警備当局に、その場で逮捕されたのは言うまでもない。

丸山容疑者はしたがって逮捕覚悟、あるいは死を覚悟のヒットマンだったことになる。2名殺せば、ヤクザでなくとも死刑(永山則夫規準)である。家族の将来を組織に託して、抗争事件でヤクザのレジェンドになる。それは確実な殺害と引きかえにヒットマンの犠牲を強いる、マフィア的な犯行である。

末端が禁じられている麻薬や詐欺事犯に手をそめ、捜査当局の締め付けのなか危険なシノギで生き延びる。そして抗争もまた、マフィア化しているというべきであろう。

ワールドカップラグビーの荒々しいプレイが、ある意味で「怖いもの見たさ」の求心力を持っているように、ヤクザ抗争は黒く熱い日本文化でもある。だから抗争事件は恐怖とともに、一般市民にも「のぞき見たい」刺激をあたえる。そうであれば、できれば親分同士が、どつき合いで決着(太田守正)をつけて欲しいものだ。そのときは、かならず取材に馳せ参じる所存だ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆コンビニ店頭から排除され、終わりをつげる暴力&エロ雑誌

 

最終号となった『実話時代』2019年9月号(2019年7月29日三和出版発行)

もう発売は7月末のことになるが、任侠界の専門雑誌である『実話時代』が廃刊した。そのキャッチは「昭和・平成・令和――激動の時代を駆け抜け本誌完結」「侠熱の三十五年忘れえぬ男たちへ捧ぐ」とあり、記事は「名侠剛侠一代絵巻」「渡世の気魄――本誌が照射したヤクザ三十五年物語」などだ。

往時は公称20万部をほこり、風俗広告に頼らない実話雑誌として斯道界に君臨してきた。ヤクザ公認の「業界誌」あるいは「広報誌」として、抗争なき時代の象徴ともいえる雑誌だったが、近年は福岡県で「悪書指定」を受けるなど、警察庁および暴力団追放運動の販売規制に苦しんできた。

コンビニから排除され、置いてくれる小さな駅前書店が開発計画で廃業するなど、おもに販路の問題から廃刊に追い込まれたというのが、関係者の言うところだ。組織による買い取りや定期購読の努力も行われたが、一般のヤクザファンが気軽に買えない環境では、存続は難しかったというべきであろう。

継承式や事始め(12月13日)を招待されるように取材し、抗争事件を扱わない癒着関係が批判されてきたが、最終号(完結号)にみられるように、ヤクザの序列、貫目にしたがった掲載、役職名の正確さは「癒着関係」があって初めて可能なもので、その意味でも役割の大きな雑誌だったといえよう。

コンビニでは、成人雑誌も置かれなくなった。一説には40億円といわれる売り上げが宙に浮き、リストラと転業を余儀なくされる版元も少なくない。暴力とエロの時代が終わりをつげ、それらはネット社会に収れんされていくのだろうか。

◆ヤクザの業態変化

それはともかく、ヤクザ業界はどうなっているのだろうか。20年前には10万人といわれた組織暴力団の人数は、いまや4万人とも5万人ともいわれる。ちょうど半減したわけだが、暴対法および暴排条例によるシノギの狭隘化、合法部門からの排除が進んだ結果とされている。だが、実際には隠れ企業舎弟ともいうべきフロント企業は増えている。というのも、会員誌の『FACTA』や『選択』に掲載される記事の大半は内部告発だが、そこには「記事にならない記事」が水面下にある。

その記事をめぐって金銭が動く、その頂点にヤクザ組織が介在している。あるいは金銭のやり取りに介在しているのが実態なのだ。もはやみかじめ料や用心棒代といった、昭和時代のシノギは激減し、暴力団組織が情報産業化したといえるのではないか。

その意味では、蔓延する「特殊詐欺」も暴力団のシノギの一端といえるのだが、ヤクザ組織は公式には組員が詐欺にかかわることを禁じている。覚せい剤や賭博も禁じている組織が大半だ。博徒が賭博をやらなくなったのは、借金による組織の荒廃。たとえば格が上の親分が、若い組員に「支払いを延ばしてもらえんやろか」と、貫目にそぐわない人間関係が現出するからだという。そもそも賭場よりも、裏カジノなどのほうがわかりやすい。そもそも若いヤクザは博打のやり方を知らない。

◆暴力団の最後の武器とは?

ヤクザの取材が難しくなったのも事実である。ヤクザ取材には二つの方法があって、ひとつは抗争事件の情報が取りやすい末端の組員と仲良くなる。もうひとつは親分と入魂になることで、トップダウンの情報をもらう。後者が前出の「実話時代」であって、親分が優遇してくれるのだから何でもしてもらえる。が、褒め殺し的な記事しか書けない。

末端の組員と仲良くなるのはいいが、親分を介してない関係は、かなりシビアなものになる。取材をおえて記事を書き、雑誌が出たころにファックスが入る。そこには「貴様、殺す!」と書かれてあったりするものだ。わたしはトップダウンの取材方法で、九州の「最悪の暴力団組織」と呼ばれるトップや、Vシネマの脚本を書く関係で広島や四国、山口組の引退親分の回顧録などを執筆した経験がある。

そのなかで、たとえばわたしが親分が滞在するホテルの一室にいると、そこへ現役の大臣から電話がかかってくる。あるいは人気のお笑いタレントが部屋を訪ねてくる。その場でツーショットを撮る。いっしょに会食をするなどの事実。それが政治家とのプライベートなツーショットである場合、その政治家は「誰とでも写真を撮るので、相手が反社だと知らないケースが多い」と言い逃れることが出来るだろうか。講演会の延長で握手したとか、ホテルのロビーでたまたまとかではない、ホテルの一室で親しく会話している写真なのだ。

なるほど、反社会勢力といえども指定暴力団であり、結社の自由の名のもとに結成された団体。つまり、合法的な結社である以上、警察力をもってしても強制的に潰せるわけではない。だが警察が暴力団を潰さない理由は、みずからの権益拡張すなわち、企業や業界団体への暴力団対策要員としての天下り。あるいは防犯団体への天下り先の確保。こうした直接的な利害とともに、政治家と暴力団の癒着をよく知っているからなのだ。それは選挙がらみの集票マシーンとして、政治家が藁をもすがる思いで、ヤクザ組織を頼みにするからにほかならない。

昨年、安倍総理(当時は衆院議員)にかかる選挙スキャンダル。すなわち工藤會系の事業者に選挙妨害を依頼した事件(火炎瓶事件に発展)が、新たな展開をみせながら、肝心の証人(実刑を受けた当事者)が音信不通になるというミステリアスな結末を迎えた。次回はここだけでしか書けないヤクザのエピソード、暴力団と政治家の密通の現場をお伝えしよう。 ※このテーマは、随時掲載します。


◎[参考動画]【山本太郎事務所編集】2018年7月17日内閣委員会「総理とヤクザと避難所と」(山本太郎 2018/8/29公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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