冤罪事件について書かれた本や雑誌の記事を読んでいると、冤罪被害者の書いた手紙がしばしば引用されている。それらを読んで思うのが、世論を動かして無罪を勝ち取る人や、支援の輪が広がっている人は多くの場合、人の心を動かすような手紙を書いている、ということだ。

たとえば、戦後の混乱期に山口県で起きた有名冤罪事件「八海事件」の阿藤周平氏。3人の仲間と共に身に覚えのない強盗殺人罪で逮捕・起訴されたのち、主犯格とされて一、二審で死刑判決を受けながら、最終的に無罪判決を勝ち取った人物だ。弁護人の正木ひろし氏がこの事件の冤罪性を告発し、裁判の流れに影響を与えるベストセラーとなった「裁判官 人の命は権力で奪えるものか」(光文社)の冒頭では、この阿藤氏が上告中に広島拘置所から、まだ弁護人選任前で一面識もなかった正木氏に宛てた手紙が引用されている。

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