3・11甲状腺がん家族の会、設立会見詳報《6》会員ご家族による質疑応答(2)

2016年3月12日、3・11甲状腺がん家族の会が設立された。設立時の正会員は5家族7人、代表世話人には河合弘之さん(弁護士)と千葉親子さん(元会津坂下町議)が就いた。これまでほとんどタブー視されてきた福島での被曝被害の核心を伝える貴重な設立会見を7回に分けて詳報する。第6回は前回に続き福島におられる会員ご家族のお二人と東京の会見会場をスカイプで繋いでの質疑応答。

◆質問4=福島県では声を上げづらい環境にあるといいますが……

【Q4】 福島県では、放射線など、声を上げづらい環境にあるといいますが、そういう中で、家族会がどういう存在になっていくことを期待したいですか?

【A】(白い服の方) 今まで誰にも話すことができなかったわけです。この会ができて、同じ境遇を持つ方とお話ができて、自分たちの様子や相手の様子だとかを話すことができて、今まで何の情報も無かったものですからこれでお互い情報交換をし、少しでも話すことだけでも気持ちが楽になったということが私の中で非常に大きいと思います。

【A】(黒い服の方) 数えるほどしか会は持てていませんが、それぞれ子供たちの状況がこうであったと、情報交換ができるだけでも、家族会が支えになってくれているなと思っております。

◆質問5=どういう形で孤立しがちになってしまうのか?

【Q5】 家族の方にお聞きしたいのですが、孤立している状況があると思うが、どういう形で孤立しがちになっているのか。その思いをもう一度お聞かせ願いたいです。

【A】(白い服の方) 同じ様なことになるかもしれませんが、自分の子供が癌であるということを誰にも言うことが出来ませんでした。子供自身も友達などに言うことができず、学校には伝えましたが、公に相談することができないため、家族だけで悩むということが色々ありました。誰に相談していいかということも正直分からなかった。病院に行った時に医師に話すだけで、他では甲状腺がんを周りの人たちに話すことができなかった状態です。

【A】(黒い服の方) 孤立というか、自分の子供が癌と診断され、赤の他人に相談できるかといえば、多分、そのように出来る人は、なかなかいないと思います。癌を治すのはどうしたらいいのか。『癌=死』というのが強かったものですから、怖かったというのが正直あります。

◆質問6=政府、県、東京電力に訴えたいこと

【Q6】 政府、県、東京電力に訴えたいことがありましたら、お聞かせ下さい。

【A】(白い服の方) 放射線の影響とは考えにくいとという見解がされているが、もし放射線の影響ではないならば、他の原因とは一体何なのか、みんなに、166人の方々に、原因が何なのかを言ってもらいたい。

【A】(黒い服の方) 因果関係が無いと言っているが、本当は、そこには何があるのかということを知りたいです。

◆質問7=東電に関して訴えたいこと

【Q7】 東電に関して訴えたいことはありますか。

【A】(白い服の方) 今のところ思い当たるまでにはないです。

【A】(黒い服の方) 今の段階では、東京電力さんが確たる原因だというところにはないので、その辺はコメントは控えさせて頂きたいと思います。

◆質問8=家族会を設立しなくてはならなくなった具体的な理由

【Q8】 先ほどから、ご家族の孤立が言われていますが、もう少し具体的に、たとえば本来であれば病院だとか行政が、相談、ケアするということがあると思います。今回、家族会を設立しなくてはならなくなった理由を具体的にもう少し教えていただきたい。

【A】(白い服の方) 病院に行った時しか先生に話すことができない。その病院も、非常に混んでおりまして実際、診察時間が5、6分くらいじゃないかと思います。その中で色々聞くということが、ちょっとできない状況でして、あと行政の方にも、相談というのはしていないが、手術後の体調が悪かったりとか、そういうことがありまして、健康増進に関する課がありまして、そこには一度、相談したことがあります。

【A】(黒い服の方) 病院の方から、限られた時間で、忙しくなかなか聞けなかったということもありますが、なんというか、その当時、息子は病気について、病院、行政などにも相談はしないでほしいということを言っていたので、敢えて、相談ということはしていませんでした。(つづく)


◎[動画]20160312甲状腺がん患者家族会設立記者会見(UPLAN三輪祐児さん公開)

▼白田夏彦[取材・構成]
学生時代に山谷、沖縄などの市民運動を訪問。その後、9・11同時多発テロ事件をきっかけにパレスチナ問題の取材を開始。第二次インティファーダ以降、当地で起こった非暴力直接行動を取材。以降、反戦や脱原発などの市民運動を中心に取材。現在、業界紙記者。

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