堀田春樹
◆貴方はどんなジムが好きですか
2020年6月28日掲載の「キックボクシングジム開設での物件探しの苦悩!」に続くジムの興味深い在り方について取り上げてみました。
昨年末に足立秀夫(格闘群雄伝No.35)さんから電話があって「俺ももうすぐ70歳だよ!」と言った語りから、「ジムは続けている。昔ながらの古めかしいジムだから一度撮りに来て欲しい!」という希望も仰られました。練習生は3名程。昔のような厳しい指導はしていないという。
足立氏は引退後、静岡県袋井市で東大門ジムを開いたのが2000年頃。これは行って見るのも面白い。いや、東大門ジムだけでない、地方のジムは都心には無い、昭和初期や終戦後に建てられたような、昔ながらのバラック小屋のジムがあるものです。2022年6月に閉鎖され、翌月には解体された千葉ジムもジム建屋としては51年継続した伝統のジムでしたが、あのトタン屋根のジムが今もあれば買い取ってキックボクシング界の世界遺産にしたいものです。


タイでも同様で古めかしい昔ながらのバラック小屋は少なくなり、近代的ジムが増えています。

◆都心と過疎地
都心の街角を歩くと、ビルの一角に極真空手道場を見付けたことがありました。ボクシングジムにしてもキックボクシングにしても、何とか見付けた物件に正規のリングを入れたら他のスペースが無くなるような空間を工夫して練習スペースを構えていると窺えます。
近年の都心のジムは雑居ビルの一室であっても内装はキレイで明るい。女性会員の更衣室もシャワー室も完備しています。
都心から離れるとやや広い物件を借りたり、所有する土地にプレハブ小屋を建てたり、倉庫を改造して、リングを構えてもまだ広い空間にいろいろなトレーニング機器を取り揃える理想的な造りでありながら、駅から遠い辺鄙な立地だったりで練習生は集まり難い不便さもあったりします。
NKBで活躍中の棚橋賢二郎が所属する新潟県の拳心館は空手道場として1954年(昭和29年)に創設され、現在のジム建屋は1970年に建てられた広い空間で冬は寒く夏は暑い。昔は水も飲ませて貰えず、厳しさ滲み出る古き良き雰囲気だが、現在は女性会員も居て指導は昔よりは柔らかくなったとか。

◆入門生多いジムと少ないジムの違い
都心と地方の条件だけでなく、現在も昔ながらの厳しい指導のジムは入門希望者が寄り付かない傾向にあるようです。
昭和時代、旧国鉄新小岩の駅前で帰宅ラッシュの通行人が大勢通る中で、選手に罵声を浴びせながらミット蹴り指導したという当時の凄く怖い某ジム会長のエピソードもありました(因みに渡邉ジムではありません。現在なら道路交通法や迷惑防止条例ですぐ退去させられるでしょう。昔は規制が緩かった)。
ドスの利いた声で「ウチが一番厳しいんだぞ!」と、そんな圧力受けた私(堀田)でしたが、こんなジムが現在にあったら一般の大多数は寄り付き難いでしょう。
現在、元・全日本ライト級チャンピオンの金沢久幸氏がSNSで「実績ゼロのジムに“人が集まる残酷な理由”」と題したコメントを配信していましたが、「繁盛しているジムは“格闘技”を売っているのではなく、“スマホの向こう側にいる人の悩み”を解決しているからです。」と根性論で人を集める時代はもう終わったという中で、「多くのベテラン指導者は指導力(Instruction)を磨き、若手経営者は入口(Marketing)を磨いています。若手たちはSNSを駆使して“今、この瞬間に悩んでる人が欲しい言葉”を24時間自動で届けています。何十年も指導して来たベテランが、ジムの客足が遠のいている現状で、若手に負けているのは“腕”ではなく、伝え方のルールを知らないだけです(配信から一部引用)。」
これはジム経営だけではない、SNSは現代のあらゆるビジネスの営業戦略となっているだろう。
◆優しい丹下段平ジムは出来るか
そうは言っても昔ながらのバラック小屋のジムは好きな者には好まれる渋い味があります。
一見流行らなさそうな、潰れそうな雰囲気を醸し出しながら、ここで若い経営者が今、悩んでる人が欲しい言葉に応えるジムであったなら、令和の時代に活きるギャップあるジムとなって注目を浴びそうである。
見た目は、あしたのジョーの丹下段平ジム。中身は「運動不足で自信が無い自分を変えたい」「仕事帰りにストレスを捨てたい会社員」「子供に礼儀や自信を持たせたい親」といったこの場所に期待を持った人が集まる場所。
いずれ足立秀夫さんのジムを覗いてから、可能であれば人が集まる方向に導いてみたいものである。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
