小沢一郎の逆襲か? 訪朝で野党再編も ── 「外交は内政である」という言葉が、再び日朝関係で明らかに

◆拉致問題で立ち止まってしまった安倍外交

米朝首脳会談の不調によって、日本の役割りが相対的に大きくなりそうだとの観測が多い。交渉が手詰まりになった北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がトランプ政権との取り持ち役を安倍政権に頼むとの見方だが、それは幻想にすぎないだろう。南北交流を重視している韓国の文政権をおいて、アメリカとのパイプを増強することはできない。そしてその文政権と歴史問題で決定的な溝を埋められないのが、ほかならぬ安倍政権だからだ。ひたすら拉致問題の解決をトランプに頼り、みずからは動こうとしない安倍晋三総理に、甘い期待を抱くのは猫にお使いを頼むようなものなのだ。たとえがヘンか。

とにかく、安倍政権には日朝交渉の構想も具体性もないのだ。なぜならば、最重要の課題としている拉致問題において、北朝鮮側のパイプを一方的に切ってきたからだ。すなわち2015年に、日本の民間外交団に対して北朝鮮の朝日国交正常化担当大使(宋日昊氏)が、平壌のホテルで日本外交のお粗末さを暴露しているのだ。

日朝両政府はストックホルム合意に基づいて、日本政府の要員を平壌に派遣したが、調査目的(拉致被害者の捜索)を果たさないまま帰国していたというのだ。そして北朝鮮側の調査報告書(全員死亡・入国記録なし)を受け取らないことによって、調査が「中止された」ことにしているのが安倍政権なのである。残念ながら拉致問題は北朝鮮が発表するかぎりで、いわば終了しているのだ。

このことを受け入れられない拉致被害者家族会の手前、安倍政権は「未解決」としているだけなのだ。したがって、拉致問題の解決が前提とする日朝交渉は、安倍政権であるかぎり永遠に行なわれない、と断言することができる。安倍政権は拉致問題で立ち止まってしまったのだ。

しかしながら、北への太陽政策が行き詰まりをみせている文政権に代わって、南北・日朝・米朝間の手詰まり状況を打開できる政治勢力がないわけでもない。しかもそれは、韓国やアメリカの政治家でもない。わが小沢一郎氏がその役割を買って出ようとしているのだ。そのことは、国際政治で注目を浴びるとともに、日本の野党再編にも大きな影響力が発揮される可能性が高い。

◆猪木議員の会派入りが決め手だ

小沢一郎氏と山本太郎氏が率いる自由党は、昨年末に国民民主党と同一会派を結ぶことを確認した。そしてこの動きに呼応したのが、アントニオ猪木議員だった。過去に30回以上も訪朝している猪木議員は、さっそく訪朝することで野党外交を展開することを小沢氏に進言したという。そして小沢氏もかつて自身も参加した金丸訪朝団をモデルに、超党派の訪朝団づくりを構想しているという。

朝鮮半島には政治的に手足も出なくなった安倍政権の、まさにアキレス腱を衝くかたちで政治攻勢に出ようとしているのだ。おそらく国際的にも注目を浴びることになるだろう。そしてそれは、参院選および衆参同時選挙を見すえた野党再編を射程に入れたものにほかならない。というのも、政界復帰が噂される橋下徹氏へのアプローチがあるからだ。


◎[参考動画]アントニオ猪木氏が小沢・玉木氏らと会見 国民会派入り報道(THE PAGE 2019年2月21日)

◆やはり橋下徹が目玉か

この1月に橋下徹氏が司会役をつとめるインターネット放送のAbemaTV番組に、小沢一郎氏と国民民主党の玉木雄一郎代表がゲスト出演した。小沢氏と玉木氏はしきりに「政界復帰」「大きな野党のかたまり」を主張し、橋下氏の政界復帰をうながしたのだ。

昨年11月には、小沢一郎氏と橋下徹氏が国民民主党の前原誠司元外務大臣と三人で「極秘裏」に会食したことが報じられている。最近の著書で「強い野党の必要」や「政権交代が可能な野党勢力の結集」を訴えてきた橋下氏にとって、国民民主党の接近は願ってもないことであろう。著書の中で小沢一郎氏について「かつて自民党の中枢で権力闘争に揉まれ続けてきた人であり、権力の本質について一番理解されている」などと、最大限に評価している。


◎[参考動画]NewsBAR橋下#16|ゲスト:玉木雄一郎&小沢一郎(AbemaTV公式2019年2月12日)

これまでの橋下徹氏の政治遍歴でいえば、みずから立ち上げた維新の党を全国組織にしたものの、組織運営において不得手なところを見せた。政治は経験である。と同時に、自分の不得手な部分を経験豊富な人物と共同することで、じゅうぶんに補えるのが政治組織である。その意味では、素人集団にすぎなかった維新の会での蹉跌は、自分を知る意味での経験だったはずだ。そしてそこから導かれる方針は、いみじくも小沢氏に「自分は嫌いな人を含めてまとめることができません」と語っているように、組織を統率できる人物との提携であろう。そのうえで、彼の政策や政治力、あるいは「ケンカ力」は発揮されるのだから──。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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