連合(日本労働組合総連合会)の芳野友子会長は、12月中旬、衆院選2021の総括を発表し、立憲民主党の敗北の原因は日本共産党との共闘にある、としました。芳野会長は、日本共産党について「連合とは真逆」とまで言い切りました。

芳野会長は「共産党は非民主的だ」と、おっしゃりたいのでしょう。しかし、そのお言葉は特大のブーメランである、と連合組合員OBとして指摘せざるをえません。

筆者は、ちなみに、現時点では日本共産党さんも支持していません。むしろ、共産党支持者を名乗る人物による執拗な嫌がらせや誹謗中傷を受けており、裁判所もその事実を認めている状況であること、そういう状況で共産党さんを支援することは筆者の支持者の理解を得られないことを付記しておきます。それでも、芳野会長のひどい発言は反論せざるを得ません。

◆連合推薦以外のまともな女性候補を応援すると幹部は激怒

筆者にいわせれば、連合会長が自分たちの非民主性を棚にあげて共産党批判とは笑止千万です。

筆者は、2000-2011年の県庁マン時代、連合加盟の自治労広島県職員労働組合の組合員でした。支部の執行委員などもつとめさせていいただきました。

連合広島さんは、国政・地方関係なく、選挙において、ごく最近まで「まともな女性候補」を推薦することがありませんでした。このことが、広島県内において、女性衆院議員が一度も誕生しない背景にもなっていますし、県議会においても、野党の女性県議が2021年12月現在、ひとりもいない背景になっています。

当時から介護現場の労働条件の惨状を介護保険担当の役人として存じていた筆者は、女性議員があまりにも少ないことが、女性労働者が多い現場の待遇の悪さにある、と考え、まともな女性候補者を地方、国とわずして、応援していました。その延長で広島市の男女共同参画審議会委員などものちにさせて頂いています。

しかし、連合広島がまともな女性候補を推薦することがなかったので、当然、連合推薦以外の候補を応援する形になってしまいます。当時の連合広島のトップは激怒し、わたしを目の敵のようにされていました。

連合もジェンダー平等(ジェンダー解消、というべきだが)は掲げてはいます。しかし、それはあくまで「ふわりとしたお題目」の範囲であって、わたしが、本気で実現しようとまともな女性候補応援に回ると激怒するわけです。組合として誰それを推薦するというのを決めたとしても、個人が誰を応援しようと自由です。そんなに怒るなら、まともな女性候補を連合広島さんも擁立すればいいではありませんか?

そんな連合が、共産党のことをあれこれ言えるのでしょうか。芳野会長のご発言を聞いて、大笑いしてしまいました。

◆3.11後も原発存続にこだわる連合、忖度する広島の野党第一党

その後、筆者は、当時からお金をたくさん使う選挙で有名だった河井案里さんと対決するために県庁を退職。県議選2011に立候補しました。これは、案里さんの対抗馬だった連合広島推薦の民主党女性候補があまりにも頼りなく、問題のある言動も多かったからです。結果として、案里さんが当選し、民主党候補とわたしは及びませんでした。

その県議選の直前に東日本大震災、東電福島原発事故が発生。しかし、それでも、広島でも大きな影響をもっている労働組合が原発推進であること、地元の民主党衆院議員がブログで島根原発の必要性を強調するなど、原発推進であったことに筆者は激怒しました。

県議選後、筆者は「原発推進の労働貴族は打倒しなければならない。」「原発推進労組とズブズブのA衆院議員を打倒しよう!」と200mくらいおきに自転車で移動しながらきめ細かく街頭演説。ポスティングも万単位でおこないました。落選運動ですから手段に制限はありません。きめ細かい戸別訪問も行いました。

その後、筆者が演説してまわった地域では連合広島推薦の市議は誕生していません。筆者のせいとまでは言えないかもしれません。ただ、筆者がお示しした情報と連合さんの日頃の行動も参考に、地域住民が原発推進労組(に推された候補)を拒絶されたということでしょう。もちろん、候補者個人に落ち度はないし、それなりの見識を持たれた方なのですが、いかんせん、組合の評判が悪いわりに、選挙運動では頼りにならない、ということでしょう。

その後、2013年以降は衆院選2012で圧勝して総理に再登板した安倍晋三さんの暴走が目立ったため、安倍暴走をとめるための「大人の対応」として、国政選挙では連合さんと同じ候補者を2014年、2017年、2021年の衆院選では推薦させていただきました。

それでも、中央の立憲さんが市民連合さんと「原発なき脱炭素」で政策合意したあとも、立憲広島の候補者の中にはあいまいな態度を取られる方も多く、原発推進労組の連合内での影響の大きさを痛感しました。

◆日本共産党と市民連合による連合への忖度こそ、衆院選2021補選最大の敗因では?

いっぽうで、とくに広島の日本共産党さん、市民連合さんにも苦言を呈したいのです。
日本共産党さん。「連合に忖度する立憲」に忖度して、貴党の「良さ」である、「ガツンと庶民の暮らしを重視する」「ガツンと核兵器禁止、脱原発」が後退したのが、衆院選2021での敗因ではありませんか?

市民連合さん。「政策で野党が割れる」ことを警戒して、どちらかといえば「河井批判」や「連合を怒らせない程度のフワリとしたジェンダー平等」ばかりが前面に出されたのではないですか?

そのことが、広島の立憲・共産が小選挙区でも比例でも議席を取れなかった原因ではありませんか?そして市民連合さんが中心になって擁立した候補が衆院選2021の2週間後の県議安佐南区補選で、自民党候補はおろか、評判が最悪のはずの克行受刑者の元秘書の後塵を拝して惨敗した原因ではありませんか?

衆院選2021から、さかのぼること半年。広島では案里さんの当選無効による参院再選挙がありました。

結果として、立憲などがかつぎだした宮口はるこさんが当選したのですが、筆者のほうが先に野党には手を挙げていました。市民連合さんは「宮口さんは連合が推すから」という理由で筆者が開催を要請した公開討論会なども開かれず、宮口さんを推しました。

わたしは、それでも、ギリギリまで一本化を模索。宮口陣営に接触して「伊方原発を含む原発即時0」を条件にわたしがおりるという線を探りました。しかし、「候補は具体的な政策がわかる人ではない」ということで、交渉にならず、わたしはそのまま立候補を決めました。

市民連合の幹部からは「ただしいことを言っても力がないとだめだ」というご批判を多くいただきました。それはまだしも、「お前は俺の地域には2度と出入りするな」という脅しを電話でされた立憲民主党支持者もおられました。もちろん、意に介することなく、その方の近くの路上と、その方の裏山の道路から街頭演説をしましたが。

とにかく、要約すると「正しい政策をガツンというさとうは邪魔だ」「いまはとにかく、河井批判だ(ほかのことを言うやつは許さん)」という圧力が津波のように押し寄せてきました。

だが、そうまでして市民連合さんが応援した宮口さんは、11月に安佐南区補選では市民連合さんが擁立した候補の応援に来てくれませんでした。いっぽう、あれだけ罵詈雑言も浴びせられたわたしは、れいわ新選組のボランティアのみなさまと、同候補の応援に参上しました。

市民連合さんも共産党さん。もう、これ以上連合に忖度する必要はないのではないですか?

「力がないとだめだ」とおっしゃるが「ただしいこと」さえ言えないのでは話になりませんよ。まずは「ただしいこと」(もちろん、中身は有権者の生活状況などで変化はしますが)を言うのは必要条件であり、その上でどうやってそれを実現するかでしょう?

そして、状況は変わりました。「河井批判」は賞味期限切れです。衆院選2021では「原発などの政策は触れずに、河井批判やフワリとしたジェンダーで連合から共産党までまとめて」も箸にも棒にもかからない結果だったのです。わたしも、選挙の終盤で「このままでは野党が政策がないと思われる」と危惧し、立憲の小選挙区応援に入らずに、れいわの比例カーのマイクを握りました(もちろん、選挙区はライアン真由美(立憲)、比例はれいわ、と叫びましたが)。

◆参院選2022広島、各野党は候補を出して力をつけるところから出直し!

参院選2022広島。改選数2です。野党共闘は必要ありません。

各野党は候補を出して次期衆院選では「あわせて勝てる」くらいまでは、力をつけるところから出直せばよいと思います。

民主主義の原点へ さとうしゅういち

筆者はすでにれいわ新選組公募に応募していますが、公認が出ない場合でも、「徹底した財政出動で庶民の暮らしを立て直す」とともに「平和憲法をいかし、核兵器禁止と原発なき脱炭素のエコでフェアでピースな世界」を実現する先頭にガツンと立つ覚悟です(れいわを含む政策が一致する野党に推薦をお願いしますがわたしの政策・政治姿勢をゆずることはありません。)。共産党さんもすでに候補を決められております。とりあえずは、お互い、有権者に訴えたい政策をそれぞれガツンと訴えていけば良いではありませんか?

「いいたいこと」を無理に抑えても、不満がお互いたまります。勝てばいいですが、負けたときに、それこそ、遠心力が強まります。今回の参院選2022広島に限ってはまずは、お互い、独自にがんばりあいましょう。次の衆院選で合わせれば勝てるようにしましょう。

◆最後に やはり小選挙区制は廃止しかない

最後に申し上げたい。やはり、有権者に選択肢をおしめしするためにも、再選挙でわたしが主張したとおり(写真右)、小選挙区制は廃止すべきです。小選挙区制では与野党とも無理に一本化するしかなくなる。そして、比例代表しか立候補していない政党は姿が有権者から見えなくなる仕組みです。せめて、第一歩として、比例代表単独の候補者も小選挙区候補者と同程度の運動ができるような法改正を提案します。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年1月号!

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情報公開制度が形骸化している。開示請求を受けた公的団体が、自分たちにとって不都合な情報は開示しない、あるいはたとえ開示しても、肝心な部分は黒塗りで公開することが半ば当たり前になってきた。

情報の透明化を求める世論が広がる一方で、情報を密室に閉じ込めてしまおうとする力も強まっている。その具体的な実態を最高裁事務総局に対する情報公開請求を例に紹介しよう。

◆「報告事件」とは何か?

2021年11月29日、筆者は最高裁事務総局から1通の通知書を受け取った。それは、筆者が同事務総局に対して開示を求めていた裁判官人事に関する文書類を開示しない決定通知だった。

今年の3月22日、筆者は次の文言の情報公開請求を申し立てた。

「裁判官の人事に関する文書の全タイトル。期間は、2018年4月から2021年2月。」

この情報公開請求の目的は、最高裁事務総局による「報告事件」についての調査である。「報告事件」というのは、最高裁事務総局が下級裁判所に対して審理内容の報告を求め、国策などにかかわる判決が下る可能性が浮上すると、担当裁判官を交代させることで、判決の方向性をコントロールする裁判を意味する。元裁判官らが、この種の制度が存在すると話しており、筆者は、その信ぴょう性を確認するために「報告事件」の調査を始めたのである。

◆東京高裁、野村武範の在任日数30日

しかし、その直接の発火点になったのは、筆者が取材していたある裁判の不可解な判決だった。この裁判は、俗にいう「押し紙」裁判で、原告は千葉県内の元新聞販売店主、被告は産経新聞東京本社だった。

原告の元店主は、「押し紙」(新聞のノルマ部数)によって損害を受けたとして、約2400万円の損害賠償を求めていた。

判決は、2020年12月1日に下された。元店主の敗訴だった。この裁判は、当初から店主側が有利に審理を進めていた。実際、裁判長は2度に渡って産経新聞に和解を勧告していた。「押し紙」裁判は、その前年あたりから販売店勝訴の流れが生まれ始めていた。

ところが2020年4月にコロナウィルス感染拡大により緊急事態宣言が発令されて、東京地裁が半休眠の状態に陥った後、予期せぬことが起こる。5月に裁判長が交代になったのだ。そのこと自体は特に珍しいことではないが、新しい裁判官の経歴が明らかに不自然だった。

裁判官の名前は、野村武範。経歴は次のようになっている。

R 2. 5.11 東京地裁判事・東京簡裁判事
R 2. 4. 1 東京高裁判事・東京簡裁判事
H29. 4. 1 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事
H25. 4. 1 最高裁裁判所調査官(東京地裁判事・東京簡裁判事)
H22. 4. 1 東京地裁判事・東京簡裁判事
(略)※出典 https://www.sn-hoki.co.jp/judge/judge2182/

上記の経歴が示すように、野村判事が東京高裁に着任したのは、R2年(2020年)4月1日である。その東京高裁から東京地裁に異動したのは、1か月後の5月1日である。そしてただちに産経新聞「押し紙」裁判の裁判長に就任したのだ。この時点で裁判は、すでに本人尋問、証人尋問(いずれも3月)を終えていた。つまり野村判事の役割は、実質的には判決を書くだけだった。それ以前、審理には加わっていない。

東京高裁の在任期間が1か月というのは常識的にはありえないと、多くの法曹関係者が言っている。

緊急事態宣言が解除されると、野村判事は早々に裁判を結審させた。そして原告の元販売店主の請求を棄却する判決を下したのである。

◆筆者の体験、最高裁で逆転敗訴

ちなみに筆者個人が被告になった裁判でも、不自然な裁判体験をしたことがある。やはり新聞社がらみの裁判で、原告はP新聞社だった。(最終的に筆者が敗訴したので、新聞社名は匿名Pとする)。P新聞社と社員4人は、2008年に筆者が執筆した記事で名誉を毀損されたとして、喜田村洋一・自由人権協会代表理事を代理人に立て、約2200万円の損害賠償裁判を起こした。

しかし、地裁は請求を棄却した。筆者の勝訴だった。喜田村弁護士は解任となり、別の弁護士が出てきた。P新聞社は控訴した。しかし、控訴審でも請求は退けられた。筆者の勝訴だった。が、それでもP新聞社は納得せず判決を不服として最高裁へ上告した。

とはいえ最高裁で判決が覆ることはめったにない。まして地裁でも高裁でも勝訴した裁判で、判決が覆る可能性は極めて低い。そんなわけで筆者は、裁判のことは忘れていた。

ところが最高裁(竹崎博允長官)が、口頭弁論を開き、判決を高裁へ差し戻したのである。高裁は筆者に対して110万円の損害賠償を命じた。判決を下した裁判官を調査したところ、P新聞に少なくとも2度登場していることが分かった。2度にわたり裁判員制度についてのインタビューを受けていたのだ。これを知ったとき、筆者が巻き込まれた裁判はペテンではないかと思った。

◆野村武範判事に関する情報公開請求

筆者は最高裁事務総局の裁判官人事についての調査に着手した。まず2021年1月に次の文言で情報公開請求をおこなった。

「野村武範判事が東京高裁に在任中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書」

野村武範判事が1か月の期間で、裁判官として本当に業務を行ったのか、あるいは勤務実態があったのかという疑義があるので、上記の情報公開請求を行ったのだ。しかし、最高裁事務総局は、これに関する「文書類は、作成又は取得していない」という理由で開示しなかった。

◆「報告事件」に関する最初の調査

次に筆者は、報告事件の存在を調査するために、今年の3月22日、次の文言で情報公開請求を行った。

「最高裁が下級裁判所に対して、審理の報告を求めた裁判の事件番号、原告、被告を示す文書。期間は、2018年4月から2021年2月」

この情報公開請求に対して、最高裁事務総局は資料を開示したが、大半の記述が黒塗りになっていた。しかし、少なくとも国が原告や被告になっている裁判が「報告事件」に指定されている例が存在することが分かった。

最高裁事務総局が下級裁判所(名古屋家裁)に対して、裁判の「勝訴可能性等について」報告させたことを示す黒塗り文書

詳細は次の記事に詳しい。

◎[関連記事]最高裁長官を退任後に宮内庁参与へ、竹崎博允・元長官ら、「勤務実態」は闇の中、最高裁に関する2つの情報公開調査のレポート 

◆「司法行政文書ファイル管理簿」

この調査と並行して、筆者は冒頭でふれた裁判官人事に関する文書類の調査を進めたのである。しかし、すでに述べたように情報は開示されなかった。

請求内容の文言は、繰り返しになるが、「裁判官の人事に関する文書の全タイトル。期間は、2018年4月から2021年2月。」だった。

これに対して最高裁事務総局は、具体的な文書を指定するように要請してきた。そこで筆者は5月25日に、請求内容を変更した。新しい請求内容は、最高裁事務総局がウエブサイトに掲載している「司法行政文書ファイル管理簿」のうち人事関連の全ファイルだった。もちろん具体的なファイル名も明記した。最高裁事務総局が存在を公表している文書ファイル名を具体的に指定したわけだから、本来であれば閲覧を断られる理由はない。

ところがいつまで待っても文書は開示されない。約5か月後の10月20日になってようやく最高裁事務総局から1通の通知が送られてきた。そこには、次のような記述があった。

「上記ファイル管理簿(注:筆者が指定したファイル)には、主に職員団体に関するファイルが記載されていますが、職員団体の構成員に裁判官が含まれないことから、あなたが開示を求める司法行政文書の特定に疑義があります。
 ついては、本件開示申出の趣旨を確認するために、別添補正書に記載のうち、該当する項目にチェックを入れた上で、下記の宛先に、11月4日までに提出してください」

同封されている「補正書」には、補正するかしないかを確認する項目がある。そのうえで、「提出期限までに同補正書の提出がない場合は、補正する意思がないものとして取り扱わせていただきます」と記されている。

筆者は、補正の意思がないので、「補正書」を提出しなかった。ところが11月29日に、情報を開示しないことを通知する書面が届いたのである。「補正書」を提出しなかったことがその理由となっていた。

10月20日付けの文書では、「補正書の提出がない場合は、補正する意思がないものとして取り扱わせていただきます」と明記されていたので、筆者は、補正書を提出しなければ、全文書が開示されるものと思っていた。そう解釈するのが普通だ。

◆自由と民主主義の国?

その後、筆者は最高裁事務総局の情報公開担当者と電話で、この点について交渉した。担当者によると、開示対象になる文書の量があまりにも膨大になるために、不開示にしたとのことだった。そこでまず文章のタイトルだけの開示を受けるということで合意して、再度請求の申し立てを行うことで合意した。

最高裁事務総局がどのようなかたちで情報を開示するのか、今後、注視していきたい。たとえ黒塗りで公開されても、どの部分が黒塗りになっているかを確認することで、最高裁事務総局が何を隠蔽しようとしているのかが判明する。それなりに効果はある。

「自由と民主主義の国」の内情を確認するうえでも、情報公開請求は、大事なプロセスだ。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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海老原竜二は4人トーナメントの決勝となる王座決定戦で、若い龍太郎を撃破。

前・女子(ミネルヴァ)ライトフライ級チャンピオン.sasori(テツ/PRIMA GOLD)は紅絹(NEXT LEVEL渋谷)と、ぱんちゃん璃奈(STRUGGLE)と1ラウンドずつのエキシビションマッチ。更に師匠と1ラウンドのエキシビションマッチを行ない、引退セレモニーでテンカウントゴングに送られてリングを去った。

最後の打ち合いを楽しむsasori

エキシビションマッチで交わった、ぱんちゃん璃奈と紅絹と並んだsasori

鎌田政興は6月19日に半澤信也の飛びヒザ蹴りで敗れて以来の再戦を、雪辱のKO勝利。

過去、新日本キックで日本ライト級4位だった渡邉涼介はウルフ・タツロウに判定負け。

◎NKB必勝シリーズ 7th / 12月11日(土) 後楽園ホール 17:30~20:21
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第9試合 第9代NKBバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/53.5kg)
     vs
3位.龍太郎(真門/2000.12.25大阪府出身/53.2kg)
勝者:海老原竜二 / TKO 3R 0:34 /
主審:前田仁

龍太郎が蹴りとパンチで積極的に前進し、接近気味に距離を詰める。海老原竜二は待ち構える体勢も、少しやり難いか手数が少ない。やや距離を保てば海老原のミドルキックが攻勢に流れそうだが、パンチとローキックの圧力で下がらない龍太郎。

しかし第3ラウンド開始間もなく、ガードがやや低い龍太郎の顔面に海老原の左ハイキックがヒット。龍太郎は崩れ落ちるも立ち上がろうとするが、足にきてバランスが保てずカウント中にレフェリーに止められてしまった。海老原の先を読むキャリアの差が出た試合。海老原竜二は22戦13勝(6KO)9敗。龍太郎は8戦3勝(1KO)4敗1分

海老原竜二の左ハイキックが龍太郎のアゴにヒット

立ち上がろうとするも崩れ落ちる龍太郎。更に立ち上がろうとする

意識はハッキリ、悔しがる龍太郎

◆第8試合 70.0kg契約3回戦

JKAミドル級1位.光成(ROCK ON/1989.12.3神奈川県出身/69.9kg)
     vs
カズ・ジャンジラ(ジャンジラ/1987.9.2東京都出身/69.45kg)
勝者:カズ・ジャンジラ / 判定0-3
主審:仲俊光
副審:加賀美28-30. 佐藤28-30. 前田29-30

光成の前進を止め、パンチで攻勢を保ったカズ・ジャンジラ

NIIZMAXは変則的に見映えいい技も繰り出すも、攻勢に持ち込めず

序盤は長身の光成の蹴りが効果的に目立つ。カズも次第にパンチで返していき、距離を詰めることで光成のリズムを狂わせ、パンチの連打で攻勢強める。

最終ラウンド残り少ない終了間際で打ち合いに出てきた光成と打ち合ったカズ。互角の打ち合いながら、光成がやや圧力有った終了間際。会場が盛り上がる見せ場となった。

◆第7試合 60.5kg契約3回戦

KEIGO(BIG MOOSE/59.9kg)vs NIIZMAX(クロスポイント吉祥寺/60.15kg)
引分け 0-0 / 主審:川上伸
副審:加賀美30-30. 前田30-30. 鈴木30-30

蹴りから縺れ合って崩れ落ちること多い展開。有効打は無く、差が出ない引分け。

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

渡邉涼介(ホライズン/62.0kg)vs ウルフ・タツロウ(アント/61.9kg)
勝者:ウルフ・タツロウ / 判定0-3
主審:佐藤友章
副審:加賀美28-29. 仲28-30. 川上28-30

ウルフ・タツロウに掴まれてのヒザ蹴りに突破口開けなかった渡邉涼介。

組みつかれての揉み合いでスタミナ消耗がキツイ展開。パンチしかない渡辺は勝機を見出せなかった。

ウルフ・タツロウと打ち合いう渡邉涼介も巻き返しに至らず

◆第5試合 フェザー級3回戦

半澤信也(トイカツ/57.15kg)vs 鎌田政興(ケーアクティブ/56.85kg)
勝者:鎌田政興 / KO 2R 2:46
主審:鈴木義和

前回6月19日は一瞬の隙を突かれて半澤の軽く飛んだヒザ蹴りに敗れた鎌田政興が、今度はしっかり相手を見て油断なくパンチで攻勢を続けた。

半澤は何度かけん制気味に飛び技を繰り出すも効果無く、最後は鎌田がパンチからヒザ蹴りを加えた猛攻でレフェリーが止める3ノックダウンとなって雪辱を果たした。

冷静に進めた鎌田政興がパンチで半澤信也を圧倒、雪辱を果たした

◆第4試合 バンタム級3回戦

ナカムランチャイ・ケンタ(team AKATSUKI/53.05kg)vs 幸太(八王子FSG/53.5kg)
勝者:幸太 / 判定1-2 (30-29. 28-30. 28-30)

昨年10月デビュー戦の幸太はナカムランチャイにTKO負け。そのデビューから3連敗も、スプリットデジションながらナカムランチャイに雪辱を果たした。

◆第3試合 63.0kg契約3回戦

YASU(NK/62.4kg)vs カミシロ(PHOENIX/62.45kg)
勝者:カミシロ / TKO 2R 0:40

カミシロのムエタイスタイルが活きたヒジ打ちでYASUの左眉尻をカットさせ、更にヒザ・ヒジの攻勢を続けた後、YASUは傷の悪化で、ドクターの勧告を受入れたレフェリーストップで終了。

◆第2試合 ライト級3回戦

辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/61.2kg)vs 高平雅申(上州松井/58.85kg)
勝者:辻健太郎 / KO 1R 2:27

辻健太郎の右ロングフックで高平雅申をテンカウントで仕留めた。

◆第1試合 ウェルター級3回戦

ゆうき(BIG MOOSE/66.2kg)vs 田村大海(拳心館/65.4kg)
勝者:ゆうき / 判定3-0 (28-27. 29-27. 29-27)

チャンピオンとなって抱負を語る海老原竜二「NKBと格闘技界を盛り上げたい」

《取材戦記》

NKBバンタム級王座は、高橋亮(真門)が2015年12月12日に、王座決定戦で松永亮(拳心館)を制して獲得して以来のタイトルマッチとなった。高橋亮はフェザー級に上げ、2019年に二階級制覇を果たしています。防衛戦が無かったのは挑戦者が居なかった。と言うのはランキングが埋まっていないことが実情。団体が多くて活動の差があれば、そんな王座も多いものです。

「格闘技界を盛り上げたい」と応えた海老原竜二。チャンピオンとなった以上は他団体交流も増えると考えられます。これからのチャンピオンロードで、ローカルタイトルで終わるか、日本トップクラスに立つか、真価を問われる戦いが続くでしょう。

レフェリーに止められた後の龍太郎は、フラつくことも椅子に座ることもなく、挨拶を済ませ悔しい表情でリングを下りたが、一瞬の隙を突かれた形で、交通事故に遭った瞬間に似ているかもしれないあのハイキックは、もう少しガードが高ければ、ちゃんと見えていればまだ戦っていただろうと後悔が脳裏を過ぎる悔しさだろう。

引退セレモニーで興行を締め括ったsasari。メインイベントのタイトルマッチの後、会場を去る観客も居たものの、多くの支援者は残っていた様子。試合と試合の合間より最終イベントとして行なう方が、後に控える試合が無いので落ち着いた進行でやれる感じはありました。延べ30分かかったものの、エキシビションマッチで1ラウンド2分制ながら、3人相手に計3ラウンド行なったことはsasoriにとって充実感が残るリング上だったでしょう。

第6試合出場の渡邉涼介は、元々は伊原新潟ジムで、新日本キック脱退後、フリーとしてホライズンジムに名を変え、会長も代わらず乙川敏彦氏が務めています。渡邉涼介は8月28日に日本キックボクシング連盟新潟興行で橋本浩介(PCK大崎)にヒジ打ちに敗れ、今回はウルフ・タツロウに判定負け。他団体進出で険しい道程も今後も戦いは続きます。

日本キックボクシング連盟2022年興行は2月19日、後楽園ホールに於いて開催。10月から延期となっていたNKBライト級タイトルマッチ、高橋一眞(真門)の3度目の防衛戦として棚橋賢二郎(拳心館)の再挑戦を受けます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

平壌「日本人村」から、「手紙」の執筆者は魚本さん以外でもいいのか、という相談が以前あり、もともと私はみなさんが代わるがわる書くものと考えていたと回答。このやりとりが手紙らしくなるまでまだ時間はかかりそうだが(苦笑)その後、よど号メンバー・現リーダーの小西隆裕(こにしたかひろ)さんから「デジタル鹿砦社通信 小西ラブレターです」の件名でメールが届く。彼らとの往復メールの前回・第4回のテーマは「『デジタル化』を口実に情報をアメリカに売り渡し、権力を乱用するのか」とした。今回・第5回は私から、10月31日に投開票された衆院選をテーマとしてリクエストしておいたのだ。

「コロナの中、お元気ですか。こちらは、ゼロコロナ。皆、歳の割には元気でおりますから、ご安心ください。総選挙に関する原稿を書きましたので送ります。お役に立てれば幸いです。」とのこと。役立つかどうかをあてにしているわけではないが、私が読者のプラスになるようにまとめる責務はあるだろう。たとえそれが成功しなくても許してほしい。

大同江(だいどうこう/テドンガン)を背景に、平壌「日本人村」事務所のベランダに立つ小西隆裕さん。遠くに対岸の農場が遠望できる。今週は暖かいそうで、雪はなし。このベランダからは夜間、満天の星を楽しめる。

◆「先の総選挙、野党惨敗の根因を問う」 小西隆裕

よど号メンバー・現リーダーの小西隆裕さん

「この国の民はどうしてこうなのか」。先の総選挙結果に接しながら、こうした思いが頭をかすめた識者は少なくなかったのではないか。

しかし、「民」としては、そう言われても立つ瀬がないのではないかと思う。何しろ各党が言っているのを聴いても、皆同じようで、どこを選んでよいか分からなかったのだから。実際、玄界灘を超えた彼方から見ても、与野党どこも、代わり映えがしなかった。

政権交代を目指すのなら、与党との対決点が明確なその目的がはっきりと示されなければならなかったのではないか。

ところが、それがどうも見えてこない。これでは、野党候補を一本化しても、数合わせのための野合だという誹謗中傷が正当性を持ってしまう。

どんなに主義、理念が違っても目的が一致しているなら、いくらでも共闘できる。そのような誰もが納得する政権交代の目的を打ち出し、それを与党との闘いの争点にすることができなかったことに最大の問題があったのではないだろうか。

なぜそうすることができなかったのか。それはそれだけ、彼ら野党が国民の生活と運命に切実でなかったからだと言わざるを得ない。

もし彼らがそれに切実で、国民と一体になっていたなら、それを反映する政権交代の目的を野党共闘の統一した政策として提示することができていたに違いない。

自らの足腰を強くする前に、何よりもまず、国民の意思と要求を反映した路線と政策を政権交代に向けた野党連合統一の目的として掲げるために、野党はもっと国民大衆の中に深く入ることが問われているのではないだろうか。

それともう1つ、日本において国民の生活と運命に切実であろうとするなら、与党自民党政権の背後にいてそれを動かしている米国の動きにも無関心ではいられないはずだ。しかし、それがよく見えてこない。政権交代の目的にもそれが全く反映されていない。

メディアなどの宣伝によって国民の意識から「米国」が消されてしまっている中、この「タブー」に野党が挑戦しないのは、正しい判断なのか。

国民の意識にないからこそ、野党は米国が今、その最前線に日本を押し立ててきている「米中新冷戦」が「日米新時代」のかけ声とともに、日本を米国に吸収統合しようとしてきている事実などに基づき、岸田政権がまさにそれを遂行する「新冷戦体制」づくりのための政権であることなどを明らかにしながら、それに反対する闘いの路線と政策を掲げていくべきだったのではないだろうか。

国民は、広くこのことの本質を受け止め、賛同してくれるのではないだろうか。

私は、この辺りに先の総選挙、野党惨敗の根因を見ているのですがどうでしょうか。

◆次の選挙に向け、どうすればよいのかを一緒に考えよう

前回の結びに対するお返事は特にないようだが、改行が多い(笑)。

さて、5野党一本化の勝率は28%とのこと。選挙制度の問題はあれど、芳しい結果とは言い難い。争点については、岸田が首相となってさらに見えにくくなり、野党共闘側の各党の先鋭的な主張が目立つようになったかもしれない。今日までに私は、やはり地域の仲間などと選挙について意見を交わした。小西さんも触れていることに関連するが、「アンチを唱えて希望がない。50年後、100年後の未来を担う心づもりが感じられない。未来像が見えてこない」。これが最も大きな問題ではないか。

権力をもつ与党をチェックすること、アンチを唱えることは野党の仕事で、必ずしも対案を出す必要はない。だが、選挙では、どのような社会をつくるのかを伝える必要がある。そうでなければ、政治を托す相手を選べない。また現在、失われた年月が増大するばかりで、先が見えず、また新型コロナウイルスの影響もあって失業や自殺が重なっている。先日、久方ぶりに東京に行ったら、野宿の方々のスーツケース所持率の高さ、そして若年層への拡大が目に入った。支援グループへの相談も増えていると聞く。

そのようななか、唯一、未来の希望を語り続け、議席を増やしたのは、やはりれいわ新選組だった。山本太郎代表は、「衆院選挙で3議席を獲得。永田町や物知り顔の評論家から、1議席も難しいと言われていたことを考えると、躍進です。この結果はいうまでもなく、これまで何があっても見放さず、コツコツとれいわを支援くださった皆さんのお力です。100%市民の力で作られた政党が、ステージを上げました。しっかりと地獄を是正する活動を国会内外で繰り広げます。」と公式サイトに記す。

れいわの支援者の中にも、共闘を疑問視する声がある。特に、「消費税ゼロ」を掲げるれいわが共闘によって「減税」にトーンダウンしたことにより、アピールが弱まったという意見が多い。

また結局、立憲民主党は共産と距離をおくことを強調し、11月末に就任した泉健太代表は「政策立案政党」「人に温かい資本主義」「人にやさしい持続可能な資本主義」「穏健中道路線」を訴えている。だが、個人的には、候補者をおろして共闘した共産党に対して失礼でもあり、また結局は「資本主義」のさらなる推進を掲げるなら、もはや立民の存在意義はかなり危うくなるものと思われる。提案内容についても全体的にピンと来ないので、ここで改めて取り上げることはしない。もはや本来的には、自民・国民・立民は左・右・中に分かれて3つに整理し直してほしいくらいだ。と考えていたら、すでに分裂の声もあるらしい。労働者同士を争わせるように仕向ける竹中平蔵は、ベーシックインカム論ですら民営化と自己のビジネスを想定していると思われる。表面的な政策でなく、根本的なもの、方向性を私たちは見定めねばならない。

若者が自民党に投票していることが次第に明らかとなり、また日本維新の会が票を集めた。これらも、自らや周囲の現状が酷すぎないと思い込み、前向きで力強いメッセージを伝えてくれていると感じさせるに足るメディア露出などに支えられ、できあがったものだろう。マスコミ、政治家、野党支持者、1人ひとりが考え直し、取り組みを改める必要がある。

本来は現場から政治家をあげていくのがいいかもしれないが、現実的にはなかなか難しい。まずは各党の1つひとつの選択について意見を明確に発し、来年の参院選に向かって私たちも動きを明確にしていく必要があるだろう。個人的には共闘よりも、やはり総合的にかなり指示できる政党を、もっとしっかり応援しなければいけないなと思う。なかなか何か起こればぶれてしまう。それにはまず、近くの仲間との意見交換を継続することが重要ではないかと考えている。

ところで月刊誌『紙の爆弾』202年1月号に、「野党共闘の成果と課題 岸田文雄『長老忖度政権』と闘う方法」をテーマとして横田一さんが寄稿していらっしゃる。野党共闘の成果もきちんと評価されているので、ご一読を。

連合の中を垣間見た立場からは、民主党系がそこを票田としてあてにするうちはいろいろなことが困難であろうと考える。50年後、100年後を見据えたうえで現在、何をなすべきかを、政治家の方々にも示してほしいと思ってしまう。

◎[連載リンク]平壌からの手紙 LOVE LETTER FROM PYONGYANG 

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター、編集者。労働・女性・オルタナティブ・環境 アクティビスト。月刊誌『紙の爆弾』202年1月号に、「請求棄却で固有種絶滅の危機 森林伐採問う 沖縄『やんばる訴訟』」寄稿。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年1月号!

〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

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東京オリンピックが招致された数年前から、反対運動は活発だった。本通信も開催反対の論陣を張ってきたが、オリンピックにかかる利権の深さを知るにつれて、何があっても開催が強行されることを確かめないわけにはいかなかった。

やむなく開催時には思いきって開き直り、酷暑のなか現地報告をしたものだ。

そこでは、あまり報じられなかった自衛隊の警備出動が、かなり過剰なものだったと判明した。追いかけ記事で、自衛隊の警備出動を報道したのは、「紙の爆弾」と「週刊金曜日」だけではなかったか。それはともかく、暑かった夏のメモリーを再読していただければと思う。

[関連記事]
《現地報告》猛暑の中で始まった呪われた東京オリンピック・パラリンピック[前編]スポーツを賛美しつつ、戒厳令的交通規制を見学してきた 2021年7月26日

《現地報告》猛暑の中で始まった呪われた東京オリンピック・パラリンピック[後編]警備費用こそが大会開催費の大部分ではないか 2021年7月27日
 
大きな成果もあった。ぼったくり男爵こと、バッハIOC会長のえげつない態度が、今回のオリンピックを通じて全世界に伝えられたことだ。これはオリンピックの将来に向けて、ひとつの指標になったのではないか。「平和の祭典」は利権と政商のスポーツショーである、と。


◎[参考動画]IOCバッハ会長「ガンバリマショウ」 五輪組織委を表敬訪問(2021年7月13日)


◎[参考動画]バッハ会長歓迎会に波紋 与党幹部「世論がおかしい」(2021年7月19日)

来年の北京オリンピックにむけて、ふたたびバッハ会長の振る舞いが問題視されている。何があっても、オリンピック開催という利権は失いたくない。もはや政商そのものというべきであろう。

すなわち、中国の女子テニスのトッププレーヤー・彭帥(ポン・シュアイ)選手の告白とされる文章がネット上に公開され、そのニュースが連日高い関心を集めている一件だ。

その内容は、「中国の前副首相から性的関係を強要された」というもので、選手の安否や北京オリンピック開催の是非、外交ボイコットをめぐる問題にも発展している。中国共産党の権力闘争と考えられる面もあるが、女性の「MeToo」であることに変わりはない。

激しい批判を前に、バッハ会長が中国当局を擁護するパフォーマンス(彭帥選手とのPC会談)を行なって、批判をかわそうとしたのである。

WTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモンCEOは、適切な調査が行われなければ、中国での大会の開催などを見送ることも辞さないという考えを示し、躊躇わずにそれを断行した。

もともとWTAは、大会賞金の男女格差是正を契機に立ち上げられた団体であり、女子選手の立場を護るのに積極的である。北京大会への影響(女子テニスが行なわれない)が注目されるところだ。

もしもこのまま紛糾して、女子テニスが大会からはずれるようなことがあれば、バッハはとんだピエロということになる。

さて、オリンピックが利権であり批判に値するとはいえ、スポーツそのものを否定するような批判の論調は少々危うい。身体を動かすことが健康を保つのは、狩猟・採取時代から濃厚時代に至っても、それが人類の本源的な行為であるからだ。

自動車が戦車や戦闘機の代替え行為である、という大戦後の消費スタイルとともに、スポーツも戦闘行為の代償として存在してきた。読売球団が「巨人軍」などという戦闘集団の名称を頂くのも、スポーツを戦闘と見做しているからにほかならないのだ。


◎[参考動画]「彭帥さん本人」IOCバッハ会長 別人の可能性否定(2021年12月10日)


◎[参考動画]CNN speaks to WTA chief on decision to pull tournaments from China(CNN 2021年12月2日)

◆国家的育成スポーツが、国民を疎外する

そこで、スポーツの祭典を否定するのではなく、将来の在り方を検討していかなければならない。そこで考えられるのは、近代オリンピックが、そもそも個人およびチーム単位での参加から始まった事実なのである。なるほど国家単位でしか資金は得られなかったし、国別対抗競技であるからこそ、オリンピックは戦争に代わる「戦闘行為」たりえている。

そして、国の代表になるためにはある意味で特別な資格、すなわち強化選手になる必要があるのだ。その強化選手になってこそ、育成が遅れていた日本でも味の素オリンピック強化センターなどの施設に入れるし、スポーツに専念できる育成費も支給される。海外派遣費も支給されるので、自前で海外に行く必要がなくなる。

問題なのは、このスポーツのエリート化である。かつて、ソ連および東欧諸国で行なわれていた、サイボーグ的な国家レベルでの強化策ばかりになってしまうと、国民はスポーツを観る人たち、選手は国家的プロジェクトで育成されたエリートということになる。エリートがいてはダメだ、と言うのではない。観る者と演じる者の断絶、スポーツの底辺が形成されない、国民のスポーツからの乖離がそこに発生するのである。


◎[参考動画]Tokyo 2020’ye hazır(Al Jazeera Turk 2016年8月22日)

[関連記事]
床屋政談的オリンピック改革論 ── 国単位ではなく、チーム・個人参加がよいのではないか? 2021年8月10日

それにしても振り返ってみれば、おびただしいオリンピック利権の数々である。利権に付きものの犠牲者(自殺者)も出ている。政商竹中平蔵、スポーツ界に君臨してきたドン・森喜朗、そして国民をコロナ禍に危機にさらした菅義偉。
オリンピックへの幻想が明白となった、2021年であった。

[関連記事]
嘉納治五郎財団の闇 犠牲者があばく収賄劇 ── 追い詰められた菅義偉の東京オリンピック 2021年6月15日 
東京五輪強行開催で引き起こされる事態 ── 国民の生命危機への責任が菅政権を襲う 2021年7月14日 
やはり竹中平蔵は『政商』である──東京五輪に寄生するパソナのトンデモ中抜き 2021年6月5日 
森喜朗=東京オリ・パラ大会組織委員会会長の辞任劇 何が問われていたのか 2021年2月13日 


◎[参考動画]滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013年9月8日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年1月号!

〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

2021年12月6日、れいわ新選組代表の山本太郎代表は、参院選2022や次期衆院選、そして統一地方選挙2023の候補者公募を開始しました。期限は12月27日までです。

【候補者公募!】れいわ新選組 次期衆議院及び参議院、自治体議員選挙
https://reiwa-shinsengumi.com/start2021koubo/

筆者も、参院選2022広島(改選数2)で応募することとしました。広島選挙区については、まだ、れいわ新選組として、候補者を出すとも出さないともはっきりは決めていません。しかし、筆者としては、2021年4月25日執行の再選挙に立候補し、20848票、6人中3位の得票をいただいたこの選挙区で捲土重来を期す覚悟です。


◎[参考動画]れいわ新選組候補者公募に参院選広島で応募します2

衆院選立候補予定者の竹村かつしさん(左)と対談する筆者

筆者再選挙後、れいわ新選組の政策・政治姿勢を支持し、地元の広島のれいわ勝手連のみなさまと活動をともにさせていただきました。衆院選2021でもれいわのマイクを握り、自身の支持者のみなさまにもれいわへの投票をよびかけました。なんらかの選挙で公認をいただくなられいわ新選組以外に考えられません。

◆被爆地・広島の世襲高級官僚と原発推進大手企業労組による議席独占を崩せ

筆者は、「世襲高級官僚と原発推進大手企業労組による議席独占」を崩し、「ガツンと「あなた」の暮らしを立て直す政治」、そして、「平和憲法をいかし、核兵器も原発もなくす政治」をガツンと、この広島から打ち出していく覚悟です。

「広島は被爆地で平和都市だから、脱原発派や(自民・維新的な)改憲への反対派の国会議員もそれなりにいるに違いない。」と思い込んでおられる県外の皆様も多いですが、事実はまったく違います。

広島県内、それも広島市ほど、超保守王国なのです。まだ、東部(旧備後国)の山間部をふくむ広島6区には、佐藤こうじ衆院議員がおられ、立憲でも保守系ながら、脱原発寄り、護憲寄りでいらっしゃいます。しかし、安芸郡も含めたいわゆる広島都市圏(旧安芸国)には、「脱原発派」「(自民・維新的な)改憲への反対派」双方を満たすような国会議員は存在しません。

参院議員は毎回、自民党さんと原発推進企業の影響が強い連合広島さんが担ぐ方で、議席を分け合ってきました。

今回、改選対象になるのは、自民党公認が故宮沢喜一総理のおいで父も県知事や参院議員をつとめた宮沢洋一さんで、連合広島系が、原発や武器をつくる大手企業労組幹部の柳田稔さんです。ただし、柳田稔さんは引退の意向ですが、過去の経緯から、原発推進労組かそれに近い方しか後継になれないとみられます。

他方で、日本共産党さんも公認候補は出されますが、どちらかといえば、比例区での仁比聡平さん(元議員)の国会復帰を重視した活動をされるとみられます。

◆過去の成功体験から卒業できぬ自民党と原発推進労組

自民党さんはもちろん、原発を全国各地につくってきました。さらに、とくにこの四半世紀は、新自由主義を進め、貧困を広げ、広島もふくむ地方を衰退させています。

一方で、連合広島さんのカラーが濃い立憲民主党さんの参院議員はどうしても、中央の市民連合と立憲民主党さんも合意している原発なき脱炭素に後ろ向きです。また、正直、連合さんは、まだまだ大手企業正社員男性中心です。筆者が従事する介護や保育などの労働者、あるいは公務員でも女性が多い非正規労働者の抜本的な待遇改善には正直、冷たいのです。そのことをずっと筆者は自身が連合系自治労広島県職員労組の支部の役員をさせていただいた県庁マン時代から疑問に思っていました。また、わたしと連合さんとの対立の背景にもなっています。

自民党さんも原発推進労組さんも、どちらも広島が原発製造も含む重工業でとくに栄えていた1975年ころの「過去の成功体験」から卒業できていない勢力であるというのがわたしの評価です。

広島でいままではばを利かせてきた大きな組織は否定しません。しかし、自民党さんにせよ、連合さんにせよ、大きな組織が汲み上げられなくなったニーズがあまりにもおおくなったのです。消費税廃止や教育費無償化などでひとりひとりの暮らしをガツンと底上げする。また、いままで女性の仕事だからとないがしろにされてきた介護や保育、あるいはDV相談員含む非正規公務員などの労働者の抜本的な待遇改善でみなさまの暮らしの安心を高める。もちろん、原発をなくし、グリーンニューディールを進める。平和憲法をいかし、海外派兵ではなく災害救助で貢献する日本へ。こうしたれいわ新選組の政策・スタンスを広島の既存政治への対抗提案としたいのです。

◆「政権選択」の衆院と、「ガツン」が存在意義の参院は違う

衆院選2021の小選挙区ではそうはいっても、立憲民主党さんも、中央では消費税減税や原発なき脱炭素に同意されていました。そのため、「3区はライアン真由美、比例はれいわ」とれいわのマイクを握って叫びました。

しかし、参院選は複数区です。そして、参院選はなにより、衆院をガツンとチェックするのが憲法上定められた機能です。その意味からも、衆院より、ガツンと物申す人がふさわしい。

また、筆者の場合はそもそも、非正規労働者の問題でも原発でもガツンと物申してしまうために、連合さんが「うん」とはいわないでしょう。そのことの自覚もあるため、基本的に小選挙区の衆院議員は目指しません。改選数が複数の参院選広島でガツンと物申す。これがわたしの当面(向こう数年)のスタンスです。


◎[参考動画]さとうしゅういちIN古市橋 コロナ対応は改憲ではなく災害指定で ただちに一律給付を 消費税は廃止 介護保育給料10万アップ れいわ新選組 伊方原発再稼働にNO 原発なき脱炭素

◆河井批判よりも制度改正の前向きな議論を

案里さん・克行受刑者の罪はもちろん誠に重大です。お金をもらった方もただちに腹を切っていただきたい。しかし、地方議員を買収することはほかの自民党国会議員の多くも「政治献金」という形でやっていたことです。今後は河井夫妻個人への批判よりも、国会議員による地方議員への金配り禁止などをきちんと立法化すべきです。

再選挙で当選された立憲民主党系の方は残念ながら、国会議員による地方議員への金配り明文禁止については「どちらとも言えない」というスタンスをマスコミのアンケートに答えておられました。河井批判を利用して支持を得られながら、この対応はあり得ない、と感じました。

正直、衆院選2021や安佐南区県議補選で野党が惨敗したように、河井批判自体が、賞味期限切れです。前向きな制度改正の議論をしていくほうがよいと思います。

◆参院選2019で河井案里さんを支持した皆様にも呼びかけたい

参院選2019で河井案里さんを支持された皆様にもよびかけたい。皆様の大半は案里さん・克行受刑者からお金をもらったから、案里さんを支持されたというわけではないと思います。むしろ、案里さんに、従来型の「世襲や大手企業出身や高級官僚出身の男性政治家」とは違ったものを感じられたからでしょう。

とくに女性の方にそういう傾向を強く感じます。実際に、2019年に案里さんを応援した女性が再選挙2021では筆者に投票し、周りにも筆者への投票をよびかけてくださったということも起きています。

旧来型男性政治家はあまりにも介護や保育などの分野に冷たかったのも事実。地方自治のあり方でもとくに広島は中央官僚のいいなりだったのも事実。原発への固執など産業政策も古くさいのも事実。

そういう広島の与野党の旧来型男性政治家へのアンチテーゼとして案里さんを選ばれた方にも、積極的に筆者は協力を呼びかけます。広島の旧来型政治にかわるあたらしい政治をご一緒につくりませんか?

最後に、3分間をめどにした想定街頭演説をご紹介します。

昨年の再選挙に続いて、今回はれいわ新選組公認で参議院に挑戦します、介護福祉士・元県庁マンのさとうしゅういちです。

コロナの前から厳しく、コロナが追い打ちをかけた皆様のくらし。徹底した財政出動で、ガツンと立て直します。あなたの所得をふやし、あなたの負担を減らし、あなたの暮らしに安心・安定を。

さとうしゅういちとれいわ新選組は消費税を廃止します。消費税を増税して社会保障を充実させると言ってきた自公政権。実際にはお年寄りの負担もふえるばかりです。消費税廃止で中小企業にも賃上げの余裕を!そして全国一律の最低賃金1500円も実現しましょう。

さとうしゅういちは、介護・保育で働いている人のお給料を10万円upします。現場で働く人を大事にしてこそ、みなさまの子育てや老後の安心があるのです。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、学費はただ、奨学金はチャラにします。若い人が借金の重荷なしで人生をスタートできるよう応援します。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、医療や保育や介護、防災はじめ、学校の先生など現場の公務員を増やします。非正規公務員の皆様の正規化を進めます。広島県は全国2番目に市町村を減らし、保健所も全国以上に減らしました。その結果、4年前の水害の復旧がおくれ、コロナ対応のために1年で2年分以上働かされる県庁職員もおられます。先生の不足も深刻です。広島にこそ、れいわの政策がぴったりではありませんか?

さとうしゅういちの父は原爆直前まで原爆で全焼した地域に住んでいました。引っ越しが遅れたらわたしは存在しません。核兵器禁止はわたしの原点です。核兵器禁止条約に署名するとともに、平和憲法をいかし、災害救助で国際貢献する日本を世界最初の戦争被爆地・広島から打ち出します。防災庁をつくり、気候変動で多発している国内外の災害に対応します。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、広島から原発なき脱炭素をガツンと進めます。広島の技術をいかして、地域密着の環境にやさしいエネルギーを進めます。伊方原発ふくめ、原発はすぐやめます。原発関係の会社のみなさまもご安心ください。廃炉担当の公務員として仕事をしていただきます。

参議院の広島は大きな組織をバックとする方、すなわち自民党と大手企業の労働組合の方で2議席をずっとしめています。わたくしは、あなたと一緒に、この構造に風穴をあけ、あなたに忖度して、ガツンと国会で物申して参ります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

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◎鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000689

◆維新の会が躍進した「秘密」にせまる

年末ということもあり、総選挙を総括する記事が重なった。とくに維新の会の躍進をどう分析するか。

これはもっぱら、大阪に足のある評者にお願いしたいと思っていたところ、西谷文和の「維新一人勝ちの謎を解く」が掲載された。まさに時宜にかなった、しかも正鵠を得た内容だった。最新号のキャッチは「維新“一人勝ち”の謎を解く」である。

西谷文和は、総選挙全体の野党共闘の「敗北」の原因を、①1万票以内で競り負けた31選挙区、②立民枝野代表の「また裂き」、③自民党総裁選挙のメディア過剰、であるとする。これらは要点を得て、うなずけるものがある。

それ以上に、唸らされたのは維新の会の組織力の分析である。大阪府の過去2回の住民投票、19年の参院選挙の選挙結果。このふたつの投票率と得票数をもとに、維新の会が持っているのが140万票。および140万票を、70万票に二分する組織力が分析できる。その分析手法はあざやかで、一読にあたいする。

さらには、200におよぶ維新の地方議員のドブ板選挙。この記事で維新の会の躍進の「謎」「秘密」が解明するのである。お見事! 西谷文和は吹田市役所勤務経験のあるジャーナリストだ。

◆野党共闘が勝つ「方法」とは?

西谷文和は自・公・維新を倒す方法として、「5:3:2」の法則を挙げ、棄権5割のうち2割が投票行動をすれば、選挙には勝てるという。それを可能にするのは、野党共闘がさらに3%の得票率を獲得できるよう、ドブ板的な活動量、有権者にひびく言葉を投げかけることだと。

横田一も「野党共闘の成果と課題――岸田文雄『長老忖度政権』と闘う方法」において、東京8区の教訓を挙げている。周知のとおり、東京8区は野党候補が錯綜し、山本太郎(れいわ新選組代表)がいったん出馬を表明しながら撤回するという事態があった。

その後の山本のパフォーマンスが、吉田晴美候補の当選につながったと評価する。北海道4区、大阪10区では自民が最終段階でひっくり返し、ぎゃくに神奈川13区では野党共闘が甘利明自民党幹事長を敗北させた。れいわは5議席を獲得し、NHK出演の政党要件(5名)を満たしたのである。これら選挙パフォーマンスにおいて、立民党の枝野代表の動き、発信はいかにも緩慢であり、有権者に届かないものだった、と横田は批判する。けだし当然であろう。立民の新しい執行部が、山本太郎並みの発信力を身につけ、本気の野党共闘をつくり出すことが、勝つ「方法」の核心だとする。

◆安倍晋三に何が起こっているのか

山田厚俊は「大安倍派誕生も 自民党の変容と安倍晋三の終わり」として、安倍晋三が早期に引退するのではないかと指摘する。というのも、キングメーカーとして君臨するつもりだったが、急速に求心力が低下しているというのだ。安倍晋三に何が起こっているのか? その原因は、派閥のいびつな構造にあるという。

清和会(安部派)93名は、自民党の圧倒的多数はである。にもかかわらず、いやそうであるがゆえに、一枚岩ではないのだ。福田閥、安倍晋太郎閥、小泉閥、晋三閥を抱えている。それゆえに、総裁候補を出しにくい構造にあり、それが自民党全体のなかでは派閥のバランスに配慮しなければならない主流派ゆえに、派閥内には不満が渦巻いているという。

そして、徐々にカタチを顕わしつつある「対安倍包囲網」。それは山口3区で衆院入りした林芳正の外相抜擢にあらわれていると、山田は指摘する。林が安倍を仇敵であり、外相抜擢が将来の総理候補であるからだ。

このあたりは、やや視点は違うが本通信の記事を参照して欲しい。安倍派の内部抗争に注目だ。

[関連記事]「安倍派の誕生 ── 息づく「院政」という伝統」2021年11月12日

◆公明党の危機とは?

大山友樹「『10万円給付』の裏に公明・創価の狙い」NEWSレスQが、葛飾区区議選での公明党議席減に、公明党の危機を指摘している。前々回(11議席)から3つの議席をうしなったことになる。公明党にとって、参院東京区と地方議員は絶対当選の要件である。得票率は700万票(09年は805万票)を切るか切らないかに低減している。大山が指摘するのは連立政権の中で、自民党抜きには選挙にも勝てなくなっている現実、そして自民党並みの腐敗。すなわち遠山清彦元代議士の「闇献金」問題によって、大波が押し寄せていることだ。

すこし横道に逸れるが、NEWSレスQには気になる情報が載っている。マリエの「枕営業」(相手は島田紳助)と日大理事藪本(被告)の愛人情報だ。このあたりのスキャンダルを、もっとワイドかつディープに取り組むジャーナリストはいないものか。

◆メディアの「選挙協力」

浅野健一は「『反共』『壊憲』扇動の大本営発表」として、朝日新聞をはじめとする記者クラブ、内閣記者会の問題点を指摘する。

立民党の代表選挙が、自民党総裁選挙よりも「知性・品格もはるかに優れていると感じた。経歴・党歴も様々で、今後、日本をこう変えたいという理念や情念がよく伝わった」(記者クラブ主催の討論会)にもかかわらず、「キシャクラブ」の報道は「共産党との共闘の今後」が争点になったと、勝手に報じたと批判する。

朝日「天声人語」の筆者を山中季広論説委員と特定して、そのバランスを欠いた書き飛ばしを批判する。その歯に衣着せぬ批判は、いつもながら痛快である。問題なのは「岸田演説に日当五千円動員」(茨城6区、国光文乃議員選挙)である。告発のゆくえが注目される。

◆選挙制度の欠陥

「権力の腐敗はなぜチェックされないのか――総選挙と西東京市長選に見る選挙制度の悪用」(青木泰)は、虚偽事項を満載した怪文書が「法定ビラ」として大量に撒かれた事件のその後である。東京高裁は違法性(公選法違反)を指摘しつつ、当選無効の判断はしなかった。現在の司法には無理であろう。

青木は今回の総選挙で、森友事件を追及してきた立民の川内博史(鹿児島1区)、辻元清美(大阪10区)、今井雅人(岐阜4区)、黒岩宇洋(新潟3区)らが、ことごとく落選した背景に、自民党が長期間をかけて落選させる準備をしてきたと指摘する。だとすれば、自民党の周到な計画がどのようなものなのか。そんなレポートを期待したい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

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2014年4月、釜ヶ崎で見つけた除染作業員の求人募集

釜ヶ崎で右の求人募集を見たのが2014年4月、東電は、当時すでに高線量地域の除染作業員には1万円の危険手当を出していた。しかし、看板では高線量の特別地域で1万6000円、ここから危険手当1万円を差し引くと6000円、生活地域1万円より低くなるのだ。

事務所を覗くと、ソファにふんぞり返る強面の男が1人、完全な人夫出し飯場だ。11月には、釜ケ崎の労働者が仕事を探すセンター(西成あいりん総合センター)1階の柱に「センターは除染の求人は認めない」とのチラシが張られた。悪質な業者に、センターは責任取れないということだろうか。

周辺でも除染に行った人が増えてきた。「半年で、長年原発の仕事行っている人より多く被ばくした」との話も聞いた。そこで私は、釜ヶ崎の仲間と作った「西成青い空カンパ」
で、「釜ヶ崎から被ばく労働問題を考えよう」と題した講演会を始めた。

1回目に「被ばく労働を考えるネットワーク」の中村光男さん、2回目に写真家の樋口健二さん、3回目に「被ばく労働を考えるネットワーク」のなすびさんと原発元作業員の池田実さん、そして4,5回目になすびさんと共にお呼びしたのがあらかぶさん(通称、あらかぶはカサゴの地方名)だった。

◆福島原発被ばく労災「あらかぶさん裁判」の意義

九州で鍛治工をしていたあらかぶさん(当時36歳)は、2011年10月~2013年12月までの2年間、福島第一原発(東電)の収束作業や、玄海原発(九電)の定期検査などに従事した。知人から「福島の原発の収束作業を手伝わないか」と誘われ、「東北の人たち、福島の人たちの役に立てるなら、自分の溶接の技術が役に立つなら、少しでも力になりたい」と、仲間と共に福島へ向かったのだ。福島第一原発では高線量の現場で作業し、この間受けた被ばく線量は総計19.78ミリシーベルト、年平均限度の20ミリシーベルトに迫る数値だった。

その後、九州に戻ったあらかぶさんは、風邪のような症状に悩まされ続けていたが、年明けに受けた検査で「急性骨髄性白血病」と診断された。その後「妻と幼子を置いて死ぬかもしれない」という恐怖からうつ病も発症。入院したあらかぶさんは、一時は敗血症で危篤状態に陥りながらも、ドリルで胸や腰の骨に穴をあけるなどの過酷な治療に耐え、8月に退院。

2015年10月、福島第一原発の収束・廃炉作業に従事した作業員として初めて、被ばくによる白血病とうつ病の労災が認定された。厚労省の専門家検討会が詳細な審議を行った上で、あらかぶさんの白血病とうつ病は、原発での業務が原因と判断されたのだ。労災が認められたとはいえ、治療費や休業補償の一部が支払われるだけで、そのことで奪われた様々なことへの補償はない。それでもあらかぶさんは「よし」としようと決めていた。

そのあらかぶさんが、東電と九電を訴えたのは、労災認定翌日の新聞で、東電が「作業員の労災申請や認定状況に当社はコメントする立場にない」とコメントしていたことを知ったからだ。安全管理に法的責任を負うべき東電が謝罪もなく、こんな無責任発言をしていては、今後も被ばく労働者は使い捨てにされるだけだ。自分のためだけではなく、これから被ばく労働に就く仲間のためにもと思い、2016年11月、東電と九電を相手に損害賠償請求訴訟を提訴、コロナの影響もあり、裁判は長びいているが、12月7日20回目の期日を私は初めて傍聴した。

あらかぶさん

◆原発作業員の「使い捨て」を許すな!

東電と九電は「原告が受けた放射線被ばくと白血病及びうつ病との間に事実的因果関係が認められない」と、国がすでに認めた労災すら否定する信じがたい主張で全面的に争う構えだ。更に、あらかぶさんが受けた被ばく線量記録(約20ミリシーベルト)によるリスクは「飲酒・喫煙・野菜不足などと同じレベル」と開き直るような主張を繰り返し、原告弁護団の主張する「あらかぶさんが浴びた被ばく線量(外部被ばく・内部被ばく含め)はもっと多いはずだ」をことごとく否定している。

例えば、あらかぶさんが福島第二原発の水密化工事作業において、現場監督が付けていたAPD(警報付き個人線量計)が1日数回鳴ったと主張したことについて、東電は、当時の現場の空間線量が毎時1マイクロシーベルト程度なので、考えられないなどと否定した。これに対して原告は、当時の現場の区間線量は毎時3マイクロシーベルト程度あったこと、しかもAPDは毎時1マイクロシーベルトでも鳴る可能性もあることから、1日数回鳴ったことも十分考えられると反論した。

またあらかぶさんが、福島第一原発4号機の原子炉建屋カバーリング工事をした際、現場のすぐ近くで「朝礼」が行われていたと主張したことに対して、東電は、それは朝礼ではなく、作業直前に最終確認を行う打合せだったと主張。これに対して原告は、朝礼というかどうか別にして、原子炉格納容器から10メートルしか離れていない場所で、毎日5分~10分作業内容の確認をしていたのは間違いない。本来ならば、そうした打ち合わせは、厚生棟や免震重要棟など被ばくを避けられる建物内でおこなうべきだと反論した。

あらかぶさんは被ばくの危険性など知らされないまま現場に入った上、高線量下の現場で着用が義務付けられている「鉛ベスト」の数が足りず、着用せずに作業したことも何度もあった。東電は、これに対して「元請会社との契約において、各作業員に一定の放射線防護装備を着用させることを義務つけていたが、タングステン製のベストを作業員に着用させるか否かは元請会社の判断」と居直るような主張を繰り返した。

東電、九電のこのような杜撰な労働管理、無責任体質では、これからも続く収束・廃炉作業に従事する作業員が、さらに過酷な被ばくを強いられたうえ、使い捨てにされてしまうことは明らかだ。あらかぶさんの「働く仲間があとに続けるように」との思いを実現させるために、この裁判は必ず勝利させなくてはならない。

裁判後、衆議院第一議員会館において、報告集会と、原発元作業員で「あらかぶさんを支える会」共同代表の池田実さんのミニ学習会「原発作業の『不適合事例』を斬る」が行われた。

最後に挨拶したあらかぶさんは、北九州大学で先日開催された熊谷博子監督の「作兵衛さんと日本を掘る」上映会にゲストとして招かれ、自身の体験を語らせて貰ったこと、映画を観て、当時の炭鉱労働者も自分たちと同じように使い捨てされてきたことなどを学んだと報告された。

第21回口頭弁論 2022年2月25日(金)
10:00~東京地裁前情宣
11:00~東京地裁103号法廷
12:00~報告集会

大法廷を埋めつくそう!!

12月7日、裁判後の報告集会でのミニ学習会

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

12月11日発売!〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

〈原発なき社会〉を求めて
『NO NUKES voice』Vol.30
2021年12月11日発売
A5判/132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ)
定価680円(本体618円+税)

総力特集 反原発・闘う女たち

[グラビア]
高浜原発に運び込まれたシェルブールからの核燃料(写真=須藤光郎さん)
経産省前の斎藤美智子さん(写真・文=乾 喜美子さん)
新月灯花の「福島JUGGL」(写真=新月灯花)

[インタビュー]山本太郎さん(衆議院議員)×渡辺てる子さん(れいわ新選組)
れいわ新選組の脱原発戦略

[インタビュー]水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」原告共同代表)
「子ども脱被ばく裁判」 長い闘いを共に歩む

[報告]乾 喜美子さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
経産省前のわたしたち

[報告]乾 康代さん(都市計画研究者)
東海村60年の歴史 原産の植民地支配と開発信奉

[報告]和田央子さん(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
福島県内で進む放射能ゴミ焼却問題
秘密裏に進められた国家プロジェクトの内実

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
「もんじゅ」の犠牲となった夫の「死」の真相を追及するトシ子さんの闘い

[インタビュー]女性ロックバンド「新月灯花
福島に通い始めて十年 地元の人たちとつながる曲が生み出す「凄み」

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
検討しなきゃいけない検討委員会ってなに?

[報告]森松明希子さん
(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表/原発賠償関西訴訟原告団代表)
だれの子どもも“被ばく”させない 本当に「子どもを守る」とは

[書評]黒川眞一さん(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)
森松明希子『災害からの命の守り方 ─ 私が避難できたわけ』

※     ※     ※

[報告]樋口英明さん(元裁判官)
広島地裁での伊方原発差止め仮処分却下に関して

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈14〉避難者の多様性を確認する(その4)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈23〉最終回 コロナ禍に強行された東京五輪

[報告]平宮康広さん(元技術者)
放射性廃棄物問題の考察〈後編〉放射能汚染水の海洋投棄について〈2〉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
「エネルギー基本計画」での「原子力の位置付け」とは

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
問題を見つけることが一番大事なことだ

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
《追悼》長谷川健一さん 共に歩んだ十年を想う

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
チャーリー・ワッツの死に思う 不可解な命の重みの意味

[報告]佐藤雅彦さん(ジャーナリスト/翻訳家)
21世紀の国家安全保障のために原発は邪魔である!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈14〉現状は、踊り場か後退か、それとも口笛が吹けるのか

[報告]大今 歩さん(高校講師・農業)
「脱炭素」その狙いは原発再稼働 ──「第六次エネルギー基本計画」を問う

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナはおーきく低下した。今後も警戒を続ける
対面会議・集会を開こう。岸田政権・電力会社の原発推進NO!
《北海道》藤井俊宏さん(「後志・原発とエネルギーを考える会」共同代表)
特定放射性廃棄物最終処分場受入れ文献調査の是非を問う
《北海道》瀬尾英幸さん(北海道脱原発行動隊/泊村住人)
文献調査開始の寿都町町長選挙の深層=地球の壊死が始まっている
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
内部被ばくが切実になっているのではないか
《反原発自治体》けしば誠一さん(杉並区議会議員/反原発自治体議員・市民連盟)
脱炭素化口実にした老朽原発再稼働を止め、原発ゼロへ
《全国》柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表)
衆議院選挙中も、原発止めよう活動中―三つの例
《関西電力》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
老朽原発廃炉を勝ち取り、核依存政権・岸田内閣に鉄槌を!
《中国電力》芦原康江さん(島根原発1、2号機差し止め訴訟原告団長)
島根原発2号機の再稼働是非は住民が決める!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
裁判、県との「対話」、乾式貯蔵施設問題
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク、経産省前テントひろば)
島崎邦彦元原子力規制委員会委員長代理の責任を糾弾する!
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『科学・技術倫理とその方法』(唐木田健一著、緑風出版刊)

反原発川柳(乱鬼龍さん選)

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新聞・広告関係者が新聞に折り折り込んで配布する広報紙や選挙公報を水増し発注させて、不正な折込手数料を得ている実態が、水面下の問題になっている。この詐欺的な手口は、何の制裁を受けることもなく続いてきた。新聞・広告関係者は、「知らぬ」「感知していない」で押し通りしてきた。

千葉県流山市の大野富生議員(NHK党)は、この問題について千葉県全域を対象に調査した。千葉県選挙管理委員会に対して情報公開請求を行ったのだ。請求した資料は、2019年7月21日に施行された参議院通常選挙の際に、千葉県選挙管理委員会が委託した選挙公報の新聞折り込み部数(委託部数)である。

請求を受けて千葉県は、折込委託部数が1,769,824部だったとする資料を公開した。ここから不正疑惑が深まった。

と、いうのも同じ時期の千葉県のABC部数は、1,562,908部しかなかったからだ。新聞折り込みを行っていない四街道市(22,515部)と白井市(13,737部)のABC部数を除くと、1,526,656部しかない。

ちなみにABC部数は新聞社が販売店に搬入している部数である。この部数に、千葉日報(ABC協会の非会員)の公称部数、約145,000部を加えると、千葉県下における新聞部数は、総計で1,671,656部ということになる。

以上のデータをまとめたのが次の表である。

千葉県下における新聞部数

上表から分かるように98,168部が水増しされた計算になる。しかし、これは新聞販売店に「押し紙」(広義の残紙)が1部も存在しないことを前提とした水増しの実態である。「押し紙」が存在すればこの限りではない。そして千葉県にも「押し紙」が存在する可能性は極めて高い。たとえば、過去に毎日新聞社と産経新聞社を被告とした「押し紙」裁判が提起され、このうち毎日新聞社は、推定で3500万円の和解金を支払わされている。産経新聞の場合は、「押し紙」による損害賠償は認められなかったが、新聞が過剰に搬入されていたこと自体は認めた。

水増しの程度は、98,000部程度ではすまない可能性が高い。

◆流山市、2016年から5年にわたり広報紙の搬入部数をロック

大野議員は、流山市議会でこの問題を今年の2月から3度にわたって質問してきた。新聞のABC部数が全市で36,836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されていた。この搬入部数は、2016年(平成28年)11月に設定され、今年になって改定されたが、後述するように、依然として水増し状態になっている可能性が高い。

流山市の言い分は、隣接の自治体から流山市へ新聞を配達している販売店があるので、流山市のABC部数と流山市民が必要とする折込媒体の部数は必ずしも一致しないというものである。それが広報紙の部数が、ABC部数を大きく上回っている理由だという。また、市と販売店の間に広告代理店が介在しているので、市が直接販売店を調査することはできないとも言い訳をしている。

◆流山市選挙管理委員会の取材

12月3日、わたしは流山市の選挙管理委員会を取材した。2021年10月31日に投開票された衆議院議員選挙で、広告代理店を通じて新聞販売店に委託した選挙公報の部数を尋ねた。それによると、委託部数は、56,000部だった。

対応した職員は、委託部数だけではなく、実際に折り込まれた部数も教えてくれた。それは51,228部だった。わたしは後者のデータが存在することは知らなかった。この数字は、広告代理店からの報告部数である可能性が高い。流山市のデータを、ABC部数も含めてまとめると次のようになる。

流山市のABC部数、委託部数、実折込部数、廃棄部数

このデータから、流山市だけで約4800部の選挙公報が廃棄されたことになる。2019年の参院選でも、2021年の衆院選でも、選挙公報の水増しが行われた可能性が高い。

◆新聞部数のロック、朝日新聞と東京新聞で頻繁に

念のために、わたしは流山市の新聞社別のABC部数の変遷を調べてみた。すると部数がロックされる現象が頻繁に起きていることが分かった。「部数のロック」とは、新聞社が販売店に搬入する新聞の部数を一定期間にわたって固定することである。新聞社が販売店に対して課すノルマ政策である。ノルマ政策の下では、新聞の購読者が減っても、新聞の搬入部数がロックされているわけだから、減紙部数がそのまま「押し紙」になる。当然、折込媒体の水増し状態は解消されない。むしろ悪化する。

次に示すのが、流山市における各新聞社のロックの実態である。

流山市における各新聞社のロックの実態

最も頻繁にロックが観察されるのは、朝日新聞と東京新聞である。

筆者は今年に入ってから、全国の地方自治体を対象にロックの実態調査をしている。そこから浮かび上がってきたデータにより、多くの新聞社が販売政策としてロックを行っている可能性が高いことが判明した。当然、広報紙や選挙公報はいうまでもなく、一般企業の折込広告も水増し割合が上がっている可能性がある。

参考までに大阪府堺市における読売新聞の例を紹介しておこう。

大阪府堺市における読売新聞の部数推移

このデータの初出は、次の記事である。

大阪府の広報紙『府政だより』、10万部を水増し、印刷は毎日新聞社系の高速オフセット、堺市で「押し紙」の調査 

「押し紙」問題は、新聞業界内部の問題だが、折込媒体の水増し問題は、一般広告主や地方自治体を巻き込むことがあるのだ。それを公権力が逆手に取ると、公権力によるメディアコントロール(世論誘導)も可能になるのである。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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◆なくてはならないドクターの存在

モトヤスックvs喜入衆戦。喜入が失神KO負け、頻度は少ないが担架で運ばれるシーンは衝撃を覚える(2021年5月29日)

5月29日にモトヤスックと対戦した喜入衆が失神ノックアウト負けを喫した際、喜入は痙攣し鼾をかく危険状態だった。レフェリーはすぐドクターを要請し、当興行を担当したドクターは迅速に処置に当たったことは見事な対応であった。

喜入は数分後に意識は回復したが、立ち上がることは出来ない状態で、担架に乗せられ青コーナー側、鉄扉のバックステージまで運ばれた。その頃には、すでに救急隊は到着している様子が伺えた。JBC管轄下ではないが、救急搬送出来る素早さは、後楽園ホールならではのスピードだった。

以上のことは、当時の試合レポートで書いたところだが、失神KO負けで意識が回復しない場合は急性硬膜下血腫等の疑いで、すぐに開頭手術準備の必要性があります。後楽園ホールで行われるプロボクシングの場合は、試合直後から1時間以内に手術にかかる準備が整っていると言われています。

◆公式試合に関わる意識

ドクターの迅速な処置で救急隊の到着は速かった喜入衆の場合(2021年5月29日)

キックボクシングに於いて、現在の管理体制とは程遠い、昭和末期か平成初めの時代のこと。試合のラウンド中にタイムストップしているドクターチェックの際に、ヒジ打ちで斬られた選手の傷を見て、「薬塗ってもいいんですか?」とレフェリーに聞いたドクターが居たという。

また、失神ノックアウト負けし、リング上で仰向けに倒れたままの選手をリング外から「大丈夫かなあ!?」と言って覗いているドクターを見たことがあるが、立場が分かっていないドクターも居るものだと思った次第である。

要請がないから診なくていいのではない。KOによる試合終了のゴングが鳴ったら、レフェリーの指示無くてもすぐKOされた選手の様子を診なければならない。それがリングドクターである。

キックボクシング創生期には、ドクターの手配が間に合わず、形式上のドクターとして獣医が呼ばれたことがあるという。そしてブッ倒れている選手の瞳孔に土木工事用のでっかい懐中電灯を照らしたという笑えない話もあった。その後の日本系、全日本系に於いては優秀なコミッションドクターが居たことも事実だが、形式上のドクターとして呼ばれている、競技性と動くべき事態を理解していないドクターが多かったのも長い歴史の中の話である。

郷野聡寛vs臼井壮輔戦。脚の負傷によるKO負けの郷野聡寛。ドクターが様子を診るリング上(2021年4月24日)

◆最高権限者とは?

公式試合には試合進行に必要な役員や審判、ドクターがいます。

1998年頃、キックボクシングのあるジムの会長代行者と食事する機会があり、プロボクシング試合ルールのレフェリーやドクターについて話していた時の話、「ドクターが最高権限者!」と言われました。

「一般人より医学的知識を持ったプロが危険と判断したら、それはレフェリーより確実な判断でしょ!そのドクターが“ストップ”と言ったら誰が逆らう権利があるの?」と自信満々に言われる。

しかし、プロボクシングルールに於いて試合を裁く最高権限者はレフェリーで、ドクターの意見を鑑みて試合を止める判断をするのである。キックボクシングに於いては明確に定められていないが、同じシチュエーションでは判断すべき対応は同じであろうという議論の中での話だった。

その会長代行者は口が達者な人で、口下手な私(堀田)は納得できないまま負けそうだったが、その数日後にあったプロボクシングの取材で早速、JBC役員の安河内剛氏(当時国際担当)に聞いてみました。

「レフェリーが最高権限者です。ドクターがストップを促してもレフェリーが試合続行したこともありますよ。その時は負傷していた選手がすぐ劣勢になったので、間もなくレフェリーが試合ストップしましたけど、それまではレフェリーの判断で続行したのです。」という回答。

後日、またそのキックジム会長代行者に会いに行って、「オイ、やっぱりレフェリーが最高権限者じゃねえか!」と語気強くは言えないが、やんわり言ってやろうとしたところで、その会長代行者は「レフェリーが最高権限者よ!」と悪びれず180度覆してきた。

「先週、ドクターが最高権限者って言ったじゃないですか!」と言い返したところで、「そんな訳ないでしょ!」と言い出す始末。おそらく自分でも調べたのだろう。

後々、JBCに新しく入ったリングアナウンサーの冨樫光明さんが、負傷TKOによる試合終了の際、「ドクターの勧告を受入れ、レフェリーストップとなります!」というコールがされるようになった。この冨樫リングアナウンサー、細かいことまでキッチリアナウンスする几帳面な人だった。

キックボクシングでは「ドクターストップ」と公式記録に残る場合は多い。実際、ドクターの判断が絶対と思って、そのまんま従うレフェリーがほとんどだろう。

プロボクシングでは現在もリングアナウンスを進化させながら「この試合をストップする唯一の権限を持つレフェリーは・・・○○」とコールする冨樫リングアナウンサーである。

テーマずれして、「ドクターよりレフェリーが偉い!」みたいな形になってしまったが、ここは触れておきたい試合の最高権限についてだった。ただ、ドクターは興行に於いてもっと重い権限を持った立場なのである。

高橋亨汰vsリュウイチ戦。レフェリーが止めるタイミングと敗者へのフォローは重要(2021年6月6日)

リカルド・ブラボvs杉原新也戦。ヒジ打ちによる負傷が悪化、ドクターの勧告を受入れる形で試合は止められた光景(2021年6月6日)

◆医師しか出来ない重要な義務

現在はキックボクシング各団体、各興行で見かける範囲に於いてのリングドクターは、冒頭の喜入衆の場合のような、観察力ある視野で選手の動きを追って迅速に動くドクターが増えたかと思います。

プロ・アマとも、格闘技(またはスポーツ全般)に於いてリングドクター(プロボクシングではコミッションドクター)を配置しなければならない理由は、「国民の命と健康を守る為!」といったキャッチフレーズではないが、「選手の命と健康を守る為!」であると共に医学的立場で、リング禍(死亡事故)に至った場合の経過を綴り、救急病院に引き渡す処置が出来る責任者であり、最後まで看取る場合によっては死亡診断書を発行できる重要な義務であろうと考えられます。

人は入院している病院以外で死亡した場合、必ず警察等による検死(検視)が行われます。ドクターが配置されない状態で試合を行ない、死亡事故が発生した場合、どんな面倒なことが起こるか想像は難しくないでしょう。

また、プロボクシングでは試合後の検診が義務付けられていますが、主に瞳孔、血圧、脚気をチェックされると考えられます。

2000年頃にMA日本キックボクシング連盟で、プロボクシングに倣い、試合後の選手の検診を実施していた時期がありましたが(当時は越川貴史ドクターの采配)、現在の各団体興行、試合後は負傷者の治療のみの場合が多いでしょう。試合は無難な勝利でも、ある程度は被弾することは多いもの。過去には帰宅直後に倒れた選手もいたと言われます。経費に関わる問題もあるでしょうが、選手には計量前の検診だけでなく、医学的見地から試合後の検診も義務付けた方がいいでしょう。

ドクターがストップを勧告する場合や、レフェリーが試合ストップする判断は難しい場合があります。「止めるのが早い!」とか「遅い!」といった抗議は起こらないようレフェリーの裁定やドクターの勧告を尊重したいものです。

鎌田政興vs半澤信也戦。KO負け直後は動かさず意識確認。ドクターの迅速さが重要(2021年6月19日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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