尾﨑美代子
5月7日、西成区内に2館の外資系ホテルが開業した。西成区では初めて。
米マリオネット・インターナショナル経営の「シティエクスプレス・バイ・マリオット」、1館は新今宮駅の近くなでホテル名は「大阪新今宮」、国道26号線沿いの花園町の激安スーパー玉出に近い場所にできた2館目の名前は「大阪難波南」が付く。おい、難波に近い隣駅の大国町あたりでマンション名に「難波南」とつけるところは見かけるが、ここで難波南は無理じゃないか。「難波から2.8キロ南」ならわかるが、どちらかというと「花園町北」だし。ホテルの担当者が「西成にはローカルな魅力がある」とアピールするならば、「激安スーパー玉出南」でもいいのではないか。
それにしても最近やたらと「西成の魅力」が叫ばれる。でもその中身は本当なのだろうかね? 西成は貧しい人、生活困窮者、あるいは刑務所を出た人、家族、会社などから逃げてきた人、いろんな意味で問題を抱えている人でも、ここにくればどうにか生きていける場所だったはず。
しかし、この間そうではなくなっている。それはジェントリフィケーションが進んでいるからだ。ジェントリフィケーション自体の説明は「ジェントリフィケーション、原口剛」などで検索してみて。
10数年前、原口さんに話を聞こうと思ったきっけけは「今釜ヶ崎で起きていることはただの再開発じゃないな」と思ったからだった。ちょうどその頃、原口さんの新刊本『叫びの都市 寄せ場、釜ヶ崎、両道的下層労働者』が発売され、原口さんと酒井隆史さんのトークショーーが難波ジュンク堂であるとわかった。私は時間がなかったが、仲間に行ってもらい、トークショーを録音してもらった。それを聞いたとき「えっ、そんなことが起こるの?」と驚いたものだった。その内容がそのまんま、ある意味順調に進んでいる。
ジェントリフィケーションは世界中で起こっている。それは「ダークワード」で外国などでは、「ケッ、ジェントリフィケーションだ」と周囲の人に睨まれるような内容だ。
ということは釜ヶ崎の町もどんどん悪くなるということ、貧困層が住みにくくなるということだ。
私たちが原口さんの話をまとめ、ジェントリフィケーションの冊子を作り、あちこちで拡散したとき、こんなことがあった。釜ヶ崎で活動するある人がX(当時Twitter)でジェントリフィケーション問題をとことん腐す投稿を始めた。原口さんは「似非学者」とまで言われた。もちろん私たちはそれが誰かすぐにわかった。ネトウヨのような人を馬鹿にする文章の特徴はそうそう変えられないものだ。彼については、ある日、皆で一斉にブロックした。すると投稿をやめた。
何故彼がそんな投稿を続けたか? 答えは簡単だ。彼も「ジェントリフィケーションはダークワード」と認識している。でもジェントリフィケーションを大阪維新の会と共に進めようとしている彼としたら、まさか釜ヶ崎を悪くしようと思われたら困るということだ。常日頃「労働者を守ろう」と言っているからだ。
まあ、そんなことはいい。ジェントリフィケーションは確実に進行して、10数年前原口さんの話を聞き「おいおい、そんなことホントに起こるのかよ」と思ってたことが現実となっている。今後、ここに住む人たちが更に苦しくなるのは必至だろう。
ジェントリフィケーションは町をどう変えていくか、キーワードは「釜ヶ崎の魅力の上澄み(うわずみ)をかすめとる」。
神戸大教授の原口剛さんはこう説明する。
「現在西成で進められるジェントリフィケーションについて、先の強制排除など直接的な排除のほかに、家賃や土地の値段が上がることで住みにくくなることや、街の雰囲気が変わることで、長く住んでいた人たちが住みづらくなる『雰囲気による排除』があると指摘する。
そして、この『雰囲気による排除』にかかわる重大な問題として、「たんに『人情がなくなる』のではなく、一方で『人情』がやたらと強調されたり演出されたりしながら、他方で人情が潰されていくという事態」が起こり得るとし、肝心なのは「生きられる人情」と「売りになる人情」の違いであると指摘する。
「そもそも『人情』というのは、センターで労働者が集まって日常を過ごすとか、そういったことも含めて、いろいろな生活の営みの中で、じっくり長い時間をかけて培われてきたものです。これに対してジェントリフィケーションというのは、実は何ひとつ発明することができない。例えば『人情』の上澄みだけ吸い取って、それを商品化して『下町らしさ』というパッケージにして売り出すということです。そうして『売りになる人情』へと仕立てながら、そもそも『人情』を生み出した担い手を追っ払ってしまう」と。(つづく)
▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

