MAGNUM.44 キックの原点は、「打倒ムエタイ」にあり!

ヨードヤーンガームvs江幡塁。どんな技でも倒せるひとつの試運転パンチで圧倒
ヨードヤーンガームvs江幡塁。ローキックをブロックされても問題無し

今興行テーマは「より強く」──。江幡塁、緑川創、重森陽太、喜多村誠、ラジャダムナン王座挑戦を目論む臨戦態勢の選手たち。緑川以外は挑戦経験ありますが、再度挑戦を狙う立場でもあります。「打倒ムエタイ」は選手個人の目標であり、キックボクシング発祥の老舗団体を受け継ぐ新日本キックボクシング協会の野望でもあります。

江幡塁は第1ラウンドに左ハイキックでダウンを奪い、ローキックも鋭くヒット。2ラウンドには、ヨードヤーンガームにそれまでにダメージあったか、左ローキック一発で倒し、レフェリーが即座に試合を止めました。「どんな技でもどんな相手でも倒すことができます」──。圧倒的勝利後のアピールに、いよいよ近いかと予感させる、塁にとって4年ぶりのラジャダムナン王座挑戦が見えつつあるところです。

江幡塁vsヨードヤンガーム。この左ローキックで悶絶ノックアウト
緑川創vsゲン。手応えあったと言う左右ボディブローを打つとゲンは苦痛の表情で倒れ込んだ

  

左右フックのボディブローで悶絶ノックアウトした緑川創は、8月20日の「KNOCK OUT vol.4」出場予定で、対戦相手がWBCムエタイ・スーパーウェルター級チャンピオンの宮越宗一郎(拳粋会)に決定。「70kg級ではいちばん強いこと証明します」と宣言していた緑川。宮越との対戦も過去、実現し難かった団体間の壁がありましたが、ここに来てKNOCK OUTに於いて道開けました。いずれ、一度勝利しているT-98(=今村卓也/前・ラジャダムナンSW級C)との再戦も実現すればラジャダムナンへ向けても興味ある対戦が続くでしょう。

緑川創vsゲン。KOに結び付ける上下を揺さぶるローキックの緑川
緑川創vsゲン。ボディブローは息苦しさで心折られる苦痛、とりあえずコーナーに戻ること促されます

重森陽太も鋭い右ローキック一発で仕留める圧勝。苦痛の表情で倒れ込んだタヌーペットでした。重森も「KNOCK OUTvol.4」出場予定で、話題豊富な村田裕俊との対戦が予定されており、フェザー級路線の戦いに注目が集まる存在となるでしょう。

喜多村誠は、昨年12月に緑川がKO勝利しているイッキュウサンを、終始威圧的に攻め、パンチやミドルキックのヒットでイッキュウサンをたじろがせるも返してくるイッキュウサンのしなりある蹴りに喜多村の脇腹が腫れ上がり、攻められながら凌ぎきったイッキュウサンのしぶとさもあって僅差となりましたが、キック的には喜多村誠の圧勝の流れでした。

◎MAGNUM.44 / 7月2日(日)後楽園ホール17:00~20:15
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.8kg)
VS
ヨードヤーンガーム・デットラット(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/タイ/55.6kg)
勝者:江幡塁 / TKO 2R 0:56 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(前・日本W級C/藤本/70.0kg)
VS
ゲン・ペットプームムエタイ(元・アーウナーンスタジアムSL級C/タイ/69.2kg)
勝者:緑川創 / TKO 1R 2:13 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

タヌーペットvs重森陽太。重森のこのローキックで悶絶KO
タヌーペットvs重森陽太。2歩ほど後退して痛々しく倒れ込んだタヌーペット

◆59.0kg契約 3回戦

日本フェザー級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/58.9kg)
VS
タヌーペット・ペットプームムエタイ(タイ/58.65kg)
勝者:重森陽太 / KO 1R 1:02 / カウント中のタオル投入
主審:仲俊光

◆70.0kg契約 3回戦

喜多村誠(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原新潟/69.7kg)
VS
イッキュウサン・ペットプームムエタイ(タイ/69.5kg)
勝者:喜多村誠 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-29. 仲30-29. 桜井29-28

イッキュウサンvs喜多村誠。喜多村の攻勢も脇腹には痛々しい腫れが残る
イッキュウサンvs喜多村誠。パンチでは負ける要素無し、喜多村の攻勢

◆68.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城/67.6kg)
VS
MA日本ウェルター級チャンピオン.為房厚志(二刀会/68.0kg)
勝者:渡辺健司 / 判定2-1 / 30-29. 29-30. 30-29.

◆53.0kg契約3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/53.0kg)
VS
森下翔平(M-BLOW/52.65kg)
勝者:泰史 / 判定:3-0 / 30-26. 30-25. 30-25.

他、6試合は割愛します。

《取材戦記》

揺るぎない新日本キックの永きテーマ、「打倒ムエタイ」に重点を置くことで、
これを目指して来ました。近年は外国人選手のラジャダムナン王座獲得が目立ちましたが、現役の中では、T-98は防衛1度、梅野源治は初防衛成らず、厳しい洗礼が待ち受けている殿堂スタジアムです。

この日勝利した4名と江幡ツインズ兄、睦を含む5名で一気に挑戦ができれば ビッグマッチとなる、そんな興味も沸く新日本キックボクシング協会へのファンの声も聞かれます。

“イッキュウサン”は日本での試合用リングネームかと思いましたが、タイでの通常のリングネームであるようです。在日タイ選手に使われることも多い、日本語混じるリングネームですが、タイ選手にはタイ現地で使っている、そこで支持を受けたリングネームの方が実績が解りやすく、本物である証明のような気がします。

しかし考えてみれば、タイは頻繁にリングネームが変えられる場合があり、日本人もタイに渡ると現地の名前に替えられたりしますので、仕方ないかと思うこともあります。

プロボクシングでさえ、勇利アルバチャコフや、グッシー・ナザロフ、マル・マトベイなど、あまり違和感無く、分かる人には分かる”日本用”リングネームがありました。

考え方が古くなると、頑固な拘りになりつつあることに気付く日々であります。という反省も心に想い、キックテーマもイッキュウサンとなって(一休みして)、タイの旅レポートに気分転換している日々となっています。

「タイは若いうちに行け」、若い選手にそんな忠告もあった昔、今や幼いうちからタイに行かせている現状も見に行きたいものです。

勝利者賞を受けて記念撮影に収まる江幡塁

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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神風シリーズ vol.3 NKBを背負いし者たちの戦い!

高橋一眞vs村田裕俊。村田のパンチもヒット、後に引けない両者の交錯
村田裕俊vs高橋一眞。打ち負けない我慢比べが一眞に傾く
村田裕俊vs高橋一眞。ムエタイ技でも蹴り負けなかった一眞のヒザ蹴り
村田裕俊vs高橋一眞。一眞の返し技、村田より強く蹴り返したヒザ

またも感動を呼ぶ試合を行なった高橋一家。4度目の対決となる、因縁膨らむ村田裕俊vs高橋一眞のNKBライト級王座決定戦。新人3回戦時代に2度KOで勝利している高橋一眞は、昨年4月、NKBフェザー級王座決定戦で村田に判定で敗れる失態。続けて対森井洋介戦、対鷹大戦と3連敗を喫する。その後ライト級に上げ、今年2月に洋介(渡辺)に5Rにハイキック一発KO勝利し復活を遂げるも、心理的にもライト級としての体格に於いてもまだ不安の残る状況でした。

昨年の村田裕俊は、ムエタイ修行の成果を出してチャンピオンになって以降、10月にノンタイトル戦でWMC日本同級チャンピオン.久世秀樹(レンジャー)に判定勝利、12月に優介(真門)に5R・KOでNKBフェザー級王座初防衛。更に調子を上げ、今年2月に「KNOCK OUTイベント」において実績ある森井洋介と引分ける善戦で存在感アップさせるも、4月に高橋三兄弟三男・聖人に判定で敗れる意外な敗北で評価は大きく後退。互いに階級アップしたライト級での実績不足と、それぞれの敗戦から精神的に立ち直れているか不安定な中での再戦は王座を争う戦いでもあり、それまでの展開はファンの関心を高める中、一眞が接戦の攻防を制する展開を見せました。

一旦劣勢になれば挽回は苦しくなる為、互いに打ち負けない踏ん張りが見られました。一眞はこれまでよりガードを固め、首相撲では組み負けない圧力、微妙な差でしたが、攻められても返し技が早く、一発当てた後の繋ぎ技が効果的でした。
苦戦強いられる試練が続き、一戦一戦が感動を呼ぶ三兄弟というのも注目集まる要因でしょう。

次、目指すものは「“KNOCK OUT”に出たい」と語る一眞でした。また三兄弟での同時チャンピオン君臨も近い将来の目標。「KNOCK OUTイベント」も三兄弟で同時出場できれば、それも叶わぬ夢ではない大きな目標となるでしょう。

◎神風シリーズ vol.3 / 6月25日(日)後楽園ホール17:30~21:10
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第15代NKBライト級王座決定戦 5回戦

NKBフェザー級チャンピオン.村田裕俊(八王子FSG/61.1kg/27歳)
VS
NKBライト級1位.髙橋一眞(真門/61.2kg/22歳)
勝者:髙橋一眞 / 判定1-2
主審 前田仁 / 副審 川上50-49. 鈴木48-49. 佐藤友章48-49

高橋一眞vs村田裕俊。一眞の前蹴りも好印象を与える
村田裕俊vs高橋一眞。多彩に攻めヒジ打ちもヒットさせた一眞
西村清吾vsチャンデー。技は健在、チャンデーの底力

◆ミドル級3回戦

NKBミドル級1位.西村清吾(TEAM-KOK/72.4kg/38歳)
VS
チャンデー・ソー・パランタレー
(元・ルンピニー系ライト級チャンピオン/タイ/70.0kg/44歳)
勝者:チャンデー / 判定0-3
主審 川上伸 / 副審 佐藤彰彦29-30. 鈴木29-30. 前田29-30

おそらく20年以上前のルンピニーチャンピオンだったチャンデーは速くて重い蹴り、ヒジ打ちと接近戦でのヒザ蹴りの上手さが目立つ。ミドル級での試合、ブランクを経た勘の鈍りはあるにしても西村を突き放すテクニックは充分でした。5回戦だったら展開は変わっていたかもしれない西村のパンチと蹴りの踏ん張りもあり、互角に近い攻防で会場を沸かせました。

チャンデーvs西村清吾。パンチしか勝機がなかった西村の反撃

◆フェザー級3回戦

NKBフェザー級2位.優介(真門/57.0kg/32歳)
VS
同級9位.坂本秀樹(大塚/56.7kg/30歳)
勝者:優介 / KO 1R 2:26 / カウント中のタオル投入による棄権
主審 佐藤友章

◆ウェルター級3回戦

NKBウェルター級4位.稲葉裕哉(大塚/66.5kg/29歳)
VS
チャン・シー(SQUARE-UP/66.6kg/33歳)
勝者:稲葉裕哉 / 判定2-0
主審 鈴木義和 / 副審 前田30-29. 川上30-30. 佐藤友章30-29

◆バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.海老原竜二(神武館/53.2kg/26歳)
VS
同級6位.佐藤勇士(拳心館/53.2kg/25歳)
勝者:佐藤勇士 / 判定0-2
主審 川上30-30. 前田29-30. 佐藤友章29-30

◆57.0kg契約3回戦

NKBフェザー級4位.安田浩昭(SQUARE-UP/57.0kg/30歳)
VS
NKBバンタム級1位.松永亮(拳心館/56.1kg/27歳)
勝者:安田浩昭 / TKO 2R 2:38 / カウント中のレフェリーストップ
主審 鈴木義和

他、5試合は割愛します。

元・NKBミドル級チャンピオン.若生浩次が高橋三兄弟を育てました

《取材戦記》

6月4日(日)に、興行本部長の小野瀬邦英氏が東京ドームホテルで結婚式・披露宴が行なわれました。新婦は真季さん。列席者総勢200名。梅野源治氏、小野寺力氏、かつてのライバルで、今もライバルのガルーダ・テツ氏も列席され盛大に行なわれた披露宴でした。

「やっぱりこの男強いなあ」と思ったのは、人生に於いて、私生活においていろいろ苦難が圧し掛かる中、興行を継続していくことの難しさに音を上げそうになるも、渡辺信久連盟代表から「男なら言い出したことは最後までやれ」と檄を飛ばされたことや、「苦しい時に支えてくれたのが妻・真季でした」と13分に渡る締めの挨拶の中のカッコいい言葉でした。

心が強ければ嫌でも音を上げることなく、星一徹のような頑固者の渡辺代表を越え、他団体興行に負けない、小野瀬体制興行は延々続いていくということになるでしょう。

私が、キックボクサー現役時代の試合や実績を見て、この男は引退しても次の世界で大きなことをやると予感できる選手が何人かいました。その内の一人が小野瀬邦英氏でした。SQUAER-UPジムを経営し、連盟興行本部長を務める今後もキックボクシング界を改革できる中の一人になるでしょう。

高橋三兄弟をやたら引き上げるのは、注目を浴びる三兄弟としての話題とチャンピオンを狙える強さ、彼らの素直さ、直向きさにあります。NKBに於いては彼らが必要な時代でしょう。ただこの先が順風満帆には行かない大きな壁が立ちはだかります。国内でのその壁を乗り越えた上、活性化している世界タイトルやムエタイ殿堂王座まで行けたら凄いものです。真門ジムや小野瀬氏の力も必要になりますが、この連盟の鎖国状態で過去に全く無かった飛躍をして欲しいものです。

日本キックボクシング連盟次回興行「神風シリーズvol.4」は9月23日(土)後楽園ホールにて17:30より開催されます。メインイベントはNKBミドル級タイトルマッチ、チャンピオン.田村聖(拳心館)の初防衛戦は王座決定戦で争った西村清吾(TEAM-KOK)です。過去、田村聖の1勝1分です。

NKBを背負いし小野瀬邦英の結婚式。祝福の拍手の中を歩く新郎新婦

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

6月18日興行、WBCムエタイを舞台に戦い続けるNJKF!

インター王座奪取し、健太と並んでNJKFのエース格へ進出のMOMOTARO

MOMOTAROは技の多彩さが勝機を導く展開でした。初回は勢いあったカルロスでしたが、MOMOTAROは蹴りの伸びやスピードが優っていました。蹴り勝つMOMOTAROは、2ラウンドに連打から左ストレートパンチでカルロスのアゴを捉え、ダメージ深いカルロスは立ち上がれず、担架で運ばれる衝撃の終了でインター王座奪取となりました。

20代最後の試合となった健太は、初回は様子見で、浅瀬石はパンチで威圧的に攻めるが、劣勢には至らない健太。2ラウンドから健太が出始める。パンチからヒジと圧力を強め、経験豊富な修羅場の底力を発揮、3ラウンドにはヒザ蹴りでダウンを奪う。4ラウンドも多彩に攻め、ヒジで浅瀬石を流血に追い込むTKO勝利で初防衛に成功。 今後もブランクを空けないハイペースで、他のイベント興行出場も含め世界進出を狙う意欲を感じます。

前田浩喜が蹴りとパンチでの速攻で2度のダウン奪ってレフェリーストップによる2階級制覇。金子貴幸は勢いに乗る前に仕留められてしまいました。

玖村修平は2度のバックハンドブローによるダウンを奪うこと含むパンチでの3度ダウン奪って王座獲得しました。

◎NJKF 2017.2nd 6月18日(日)後楽園ホール 17:05~20:50
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟
認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆WBCムエタイ・インターナショナル・フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.カルロス・セブン・ムエタイ(スペイン/27歳/56.75kg)
VS
WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.MOMOTARO(OGUNI/26歳/56.95kg)

勝者:MOMOTARO / TKO 2R 2:04 / カウント中のレフェリーストップ
主審 多賀谷敏朗

カルロスの技量を見極め、グングン蹴り込んだMOMOTARO
ハイキックで攻めるMOMOTARO
カルロスは立ち上がれず、MOMOTAROの完勝
健太がヒジで追い込むも流血しながら諦めない浅瀬石

◆WBCムエタイ日本ウェルター級タイトルマッチ 5回戦

第6代チャンピオン.健太(E.S.G/29歳/66.68kg)
VS
挑戦者NJKFウェルター級チャンピオン.浅瀬石真司(東京町田金子/37歳/66.45kg)

勝者:健太 / TKO 4R 1:54 / タオル投入による棄権
主審 竹村光一

健太がしぶとい浅瀬石を追い込むが、簡単には倒れない頑丈な浅瀬石
浅瀬石真司vs健太。健太の最後の一撃、この後タオルが投入された
いつもの健太ポーズを加藤愛香さんととる健太
前田浩喜のハイキック、距離感が一気に勝利に導いた
NJKF2階級制覇した前田浩喜のベルト姿
日下滉大vs玖村修平。バックハンドブローでKO勝利した玖村修平
玖村修平のベルト姿

◆58.0kg契約 3回戦

NJKFフェザー級チャンピオン.新人(E.S.G/28歳/57.7kg)
VS
Bigbangスーパーフェザー級チャンピオン.駿太(谷山/35歳/58.0kg)
勝者:駿太 / 1-2
主審 少白竜 / 副審 竹村30-29. 大澤29-30. 多賀谷29-30

◆NJKFスーパーバンタム級タイトルマッチ 5回戦

第5代チャンピオン.金子貴幸(GANGA/28歳/55.2kg)
        VS
挑戦者同級1位.前田浩喜(CORE/36歳/55.2kg)
勝者:前田浩喜(第6代C) / TKO 1R 2:52 / カウント中のレフェリーストップ
主審 山根正美

◆第10代NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.日下滉大(OGUNI/22歳/53.4kg)
VS
2位.玖村修平(K3B/20歳/53.2kg)
勝者:玖村修平(第10代C) / KO 4R 2:59 / 3ノックダウン
主審 大澤武史

◆69.5kg契約3回戦

NJKFスーパーウェルター級チャンピオン.YETI達朗(キング/32歳/69.2kg) 
     VS
NJKFウェルター級3位.山崎遼太(OGUNI/25歳/69.5kg)
勝者:YETI達朗 / KO 2R 1:39 / 3ノックダウン
主審: 多賀谷敏朗

◆女子(ミネルヴァ)55.0kg契約3回戦(2分制)

NJKF女子スーパーバンタム級チャンピオン.杉貴美子(TenClover/36歳/54.75kg)
VS
同級5位.和乃(新興ムエタイ/29歳/54.4kg)
勝者:杉貴美子 / 3-0
主審 竹村光一 / 副審 大澤30-27. 多賀谷30-27. 山根30-27

他、3試合は割愛します。

健太vs浅瀬石真司戦はダブルタイトルマッチではありません。下位タイトルの浅瀬石が上位タイトルの健太に挑んだ試合です。ボクシング的に言えば、負けた浅瀬石の王座剥奪はありません。いずれにせよ、この展開での剥奪ルールは無いキック団体です。

《取材戦記》

この団体での国内王座からインターナショナル王座へ挑むこと多くなったWBC傘下のタイトルを狙う選手たちです。そしてヨーロッパ勢との絡みが多くなるインター王座ですが、ムエタイ技術とパワーを持った強さが目立ち、苦戦すること多く簡単には獲れない王座です。

しかし、強豪ヨーロッパ勢に打ち勝つ技術を持った日本人選手が居ることも確かで、過去には2012年9月に大和哲也(大和)がスーパーライト級で奪取、2014年4月に梅野源治(PHOENIX)がスーパーフェザー級で王座奪取し、昨年7月、テヨン(キング)がスーパーライト級で、TOMONORI(OGUNI)フライ級で奪取しました。

11月には期待の健太(E.S.G)はウェルター級王座決定戦で強豪サモン・デッカーに敗れ惜しくも奪取成らずでした。世界の前に立ちはだかる壁としては良い試練となるインター王座なのかもしれません(他にも奪取した選手いたと思いますが割愛させて頂きます)。

しかし、キック系世界王座はWBCムエタイだけではない現実があり、更にそれを越える伝統のムエタイ最高峰があり、そこまでにそれぞれが目指す方向が違って日本人頂上決戦が行なわれ難い現実があります。選手同士は戦いたくても、プロモーターの権力と思惑が大きく遮る結果ともなっています。ファンの夢を噤む、そんな事態はもう終わらせたい今後のキック界でしょう。

NJKF 2017.3rdは9月24日(日)後楽園ホールで17:00より開催予定です。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

梅野源治に続きT-98(今村卓也)もムエタイ王座陥落!

賭け屋の怒号が飛び交うバンコク・ラジャダムナンスタジアム2階席
ワイクルーを踊るT-98

5月25日(木)、タイ・バンコクのラジャダムナンスタジアムでスーパーウェルター級王座2度目の防衛戦に臨んだT-98(=今村卓也)は戦略通じず大差判定負け。

◆タイ国ラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級タイトルマッチ(154LBS) 5回戦

チャンピオン.T-98(=今村卓也/クロスポイント吉祥寺/69.85kg)
VS
同級9位.シップムーン・シットチェフブンタム(タイ/69.85kg)
勝者:シップムーン・シットチェフブンタム
判定:0-3 (47-50. 47-50. 47-50)

3R。シップムーンの左ミドルキックは最も脅威
3R。シップムーンは攻めさせておいて強烈な左ミドルキックを放つ
3R。動きを止めたいT98、前回のようにいかないもどかしさ。

◆厳しい洗礼のラジャダムナン王座

T-98は昨年6月1日、REBELS興行でチャンピオン.ナーヴィー・イーグルムエタイ(タイ)に判定勝ちし王座奪取。同年10月9日、現地ラジャダムナンスタジアムにて初防衛戦を行ない、プーム・アンスクンビットを3R・TKOで倒し、初防衛に成功しています。

今回の挑戦者、シップムーンは昨年10月の新日本キックボクシング協会MAGNUM興行で、緑川創(藤本)と対戦し引分けている選手で、実力は測れている選手でしたが、本場のリングに上がれば相手の本気度が違ってきます。

T-98は初防衛戦のように1ラウンドからプレッシャーをかけ前進。ロープ際に詰めれば右ローキック、右ストレートとダメージを与えていく戦法も、シップムーンは自分の距離感を掴んで巧みにかわし、T-98は大きなダメージを与えられない流れが続き、重要なポイントとなる3ラウンド以降はT-98が追う形は変わらずも、シップムーンはロープ際に詰まりながらも的確に返す左ミドルキックが有効的に決まる。T-98のローキックも単発でシップムーンのペースを崩せず大差が付いてしまいました。

先日の梅野源治に続いてT-98も大差を付けられる敗戦。賭けの対象となる接戦の展開が多いムエタイで、チャンピオンが大差を付けられる展開は、厳しい本場ムエタイの洗礼を受けた防衛戦となりました。

2010年以降、本場ムエタイ最高峰の外国人の王座奪取が増えた感じでしたが、王座を獲ることは出来ても防衛を重ねることの難しい展開が続いています。

今回、久しぶりに現地撮影を行ない、現場の雰囲気や関係者の話で感じたことは、半年以内の防衛義務を果たしつつ、1年以上の王座保持はより難しいと思えたことでした。単に「強豪揃いの中では、連続防衛は難しい」というだけでなく、興行の裏側にはプロモーターのサジ加減が在り、1年も経った頃、「そろそろ王座を返して貰うよ」と言わんばかりのちょっと厄介なテクニシャンを当ててくる。そんな厳しい印象を受けました。

3R。パンチで攻めるT-98
3R。ブロックの上からでも蹴ってくる
4R。蹴っても次に繋がらない
4R。ブロックしても蹴られ続けては腕も殺されてしまう

ムエタイ最高峰に挑戦するだけでも大変な道程ですが、王座奪取したとしてもそれが日本で獲っただけではファンが認めない第三者の厳しい目があるのも事実で、現地の賭け屋の群集の厳しい目で見られ、支持を受けてこそ本物と言われる難問は、更に高いレベルにあることを感じたラジャダムナンスタジアムでした。

休む間も少ないT-98は6月17日に「KNOCK OUT」興行出場があり、71.0㎏契約5回戦で、ISKA世界ライトミドル級チャンピオン.廣虎(ワイルドシーサー群馬)との試合が組まれています。

梅野源治とともに、二人ともモチベーションは落ちることなく、再起を誓っている現在、再びラジャダムナンスタジアムのリングにチャンピオンとして立つことへのファンの期待も大きいところでしょう。

5R。T-98が蹴りで反撃ももう時間が無い第5ラウンド
5R。終了間際の右ストレート、時間が足りなかった

《取材戦記》

2000年の新日本キックボクシング協会が敢行した「Fight to MuayThai」以来のラジャダムナンスタジアムを訪れました。外観は特に変化はありませんが、館内は映像で見たことあるとおり、リング上の照明設備が以前の白熱灯からLED照明へ明るく変わり、高感度フィルムでもキツかった頃から比べ、デジタルカメラの性能向上もあり、高感度撮影でも楽に綺麗に撮れる撮影となりました。

リング周りも幅広すぎるプラットホーム(エプロン上、ロープから縁)に昔は足まで乗っかり、うつ伏せに這いつくばって撮っていましたが、今はプラットホームは昔ほどではない幅で、私のように足が短いと苦しいですが、背丈170センチもある人なら乗り出して何とか撮れる範囲。

しかし撮影場所の範囲が狭いようで、私が撮影に入れない場合は現地の知人カメラマンに頼むつもりも、その人と、現地で在住する早田寛カメラマンや昔知っていたカメラマンも私に気付いてくれて、互いに老けて気が付くのに時間が掛かったが「大丈夫だ、ここに居ろ」とみんなで指示してくれる有難さ。

賭け屋は昔と変わらない怒号のような歓声が場内を盛り上げていましたが、T-98の試合はメインイベント後の試合となる第8試合で、この日の観衆は結構残っていました。通常は観衆も帰りつつある中で、これがタイトルマッチであっても層の薄いクラスの無名選手の立場でもありました(5月17日の梅野源治の初防衛戦は第7試合のメインイベントでした)。

今後またラジャダムナンスタジアムに行けることがあれば、日本人絡みのメインイベントのタイトルマッチに出会いたいものです。

相手ペースにはまったキツかった試合、悔しさより苦しさが滲み出た表情
ラジャダムナンスタジアム外観。ビッグマッチの日は人で車道が占領されるほど

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』7月号!愚直に直球 タブーなし!【特集】アベ改憲策動の全貌
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

野球通と一緒に観戦すればプロ野球の醍醐味は倍増する

 

ヤクルトVS巨人を神宮球場で見てきたが、野球部出身の友達と一緒で、なおかつ解説してくれると楽しみなことがわかった。たとえばノーアウト3塁でランナーがいて、バッターに選手がたつ。「スクイズがあるのかな」と僕が聞く。すると「このバッターはバントが上手ではないので、まずないです」と答えてくれる。

また満塁の場面では「外野フライを打たれてタッチアップされたくないから、膝から下のボールしか来ないよな」と聞くと「いや、逆をついて高めが来るかもしれません」と解説してくれる。そして友達のいうとおり、高めの釣り玉がきてバッターは三振するのだ。「隣に野球が詳しい解説者がいる」という状況で、プロ野球を見ると、こんなに楽しいのかと思う。

そして、現在、プロ野球に圧倒的に足りないものは何か、という点がこうして玄人とプロ野球を楽しんでいると見えてくるのだ。

「最近は、プロ野球の観戦マナーが悪くなった」という声をちらほらと聞く。この日も、上司の奥さんを連れ出したサラリーマンが、後ろで延々と会社の愚痴を語ってうるさいのなんの。いっぽうで、前の席では赤ちゃんがうどんをベンチにこぼしていた。

神宮球場では、圧倒的に穴場なのは、バックスクリーン横、テレビカメラのすぐそばでヤクルト側だ。ここは、ライトのプレイがいまひとつ見にくい。しかしながら、投手の真後ろだから、ピッチングフォームの狂いがよく見えるのだ。

 

よくど素人とプロ野球を見に行くと、「なぜ打たれたのだろう」と首をかしげている。こうした人はまったくプロ野球の観戦には、向いていない。よく見ると、投手が手投げになっていたり、体重が後ろに残っていたりするのだ。

また、神宮球場では、男性のビールの売り子を目にした。「2年前から、女性の売り子が減ってきた」と、ビールの売り子のキャスティング会社のスタッフは嘆く。「ひと昔前は、芸能界やグラビアガールへの登竜門だったビアガールですが、今は重労働ですし、客からのセクハラもあるので、志望者は少なくなりました」
それでも、今年の神宮球場のビアガールのレベルはものすごく高い。

たしか、生まれて初めて連れて行ったプロ野球では、1年目の掛布がものすごい打撃をしており、王選手は見事にレフトに突きさすようなホームランを放った。今、登場するだけで歓声があがるのは、残念ながらヤクルトの山田哲人くらいのもので、ほかの選手はさしてときめかないのか、歓声があがらない。

今年、20億円近い補強した巨人のていたらくを見ていると、現代の野球はとてつもなく緻密に戦略をたてないとだめだとよくわかる。たとえば1アウト2塁でも攻撃の形は20パターンくらいある。それも、バッターのカウントにより変わってくるのだ。

もし機会があれば、野球部出身の人とプロ野球観戦をお勧めする。倍楽しめることは必須なのだから。

(伊東北斗)

愚直に直球!タブーなし!『紙の爆弾』
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

奇妙な世界に迷い込んだ巨匠リングアナウンサー列伝

立ち位置を意識し、選手が出て来た際は、後に下がる配慮を忘れなかった衣笠真寿男氏(1983.2.5)
衣笠真寿男氏のコールは過去いちばん甲高く力強さがあった(1986.11.24)

「リングの名脇役、リングアナウンサーの任務!」に続くリングアナウンサー物語続編です。

鈴々舎馬風(日本系)
柳亭金車(日本系)
チャーリー湯谷(全日本系)
衣笠真寿男(日本系)
三遊亭貴楽(日本キック→RIKIX)
宮崎邦彦(全日本系)
井手亮(MA日本)
酒井忠康(JBC)
山口勝治(JBC)
冨樫光明(JBC)
須藤尚紀(JBC)
中山善治(JBC関西)

巨匠リングアナウンサーを独断と偏見で選びましたが、この顔ぶれをどれだけ知っている人がいるでしょうか。奇妙な世界とは無縁のプロボクシングも含まれていますが、人真似ではない独特のリズム感でコールする個性ある、人々の潜在意識に残るリングアナウンサー揃いです。このメインリングアナウンサーとなる存在は、その競技・団体の顔となっていきます。

◆JBCでは見事な後継者揃い!

全日本系にも厳しいしきたりあり。選手の後方に控えるリングアナウンサー宮崎邦彦氏(1983.6.17)

プロボクシングでは、いちばん古い酒井忠康氏はファイティング原田氏の現役の頃からコールしていた人で、重量感ある声でリズムとイントネーションで、絶妙なコールでした。メインリングアナウンサーとして担当が長かったので、その技量を長く発揮され、広い世代に知名度がありました。

山口勝治氏はタイムキーパー姿が古い映像にあるとおり、その試合運営経験を経て、酒井氏の指導も受けつつ1980年代前半にリングアナウンサーに移ったようです。その山口氏の指導の下、1年ほど研修を受けてから1999年デビューしたリングアナウンサーが冨樫光明氏で、これらの世代交代はJBCの確固たる組織の表れ。現在活躍する須藤尚紀氏も含め、リングアナウンサーとしての立ち振る舞いや、タイムキーパーやレフェリーとの連携も指導が行き届いたアナウンスを続けています。

◆巨匠と言われるキックボクシングに於いての名リングアナウンサー

矢沢永吉スタイルを貫いた井手亮氏、笑いネタでの人気も高かった(1992.11.13)
幅広い分野で活躍する柳亭金車氏、現在も活躍される息の長いリングアナウンサー(1996.6.30)
先駆者・鈴々舎馬風氏、初期のキックボクシングブームを支えた一人でもある(1996.6.30)

1966年に設立された老舗団体、日本キックボクシング協会で初代メインリングアナウンサーを務めたのが、柳家かえる(後の鈴々舎馬風)氏で、そのコールの力強さは当時TBSの放送で全国に響き渡りました。キックボクシングを始めた野口修氏がボクシングプロモーターだったことはその後にも大きく影響し、酒井忠康氏の陰ながらの指導もあったのではと考えられます。

そのかえる氏に導かれたのが2代目リングアナウンサーの柳家小丸(後の柳亭金車)氏でした。かえる氏よりトーンが高く、また高低激しくコールする力強さがありました。また小丸氏はキックボクシングのブーム全盛期、全国を巡業で回った経験談を持っており、米軍基地での興行は「米兵のもの凄い声援が試合を盛り上げた」とか、「北海道の田舎のある駅のホームで、暇潰しに興行スタッフ一同での垂直飛びで、高さ120センチほどある線路からホームへ飛び移ったのは沢村忠だけだった」という当時の懐かしい旅の話題(規制の緩い昔の田舎の駅での話です)を持つ方で、当然全国各地での多くの経験談があることでしょう。

両氏とも噺家が本業で、リングアナウンサーに集中することは難しくなった時期もあり、後に引き継がれたのが山崎康太郎氏と衣笠真寿男氏、更なる後に吉田健一氏がいました。山崎氏は元はJBCリングアナウンサーだったと思われます。

衣笠氏はテレビ放映の実況の中で軽く紹介されたことがあり、軍隊での号令官だったということから、大声が出せて更にマイクが無くてもよく響く甲高いコールでした。テレビ放映も無くなった1980年代前半(昭和50年代後半)も辞めることなく務めて居られました。後楽園ホールだけの、テレビ放映の無いところで甲高いコールが響いているのが勿体無く、野口プロモーション系スタッフは虚しい思いをした人もいるようです。しかし、衣笠氏は後の復興団体、更に後のMA日本キックボクシング連盟の1988年まで務められ、その美声が発揮されていました。

ルールにも几帳面で、1986年5月に当時の日本ライト級チャンピオン.甲斐栄二(ニシカワ)vs 同級2位、飛鳥信也(目黒)のノンタイトル戦があった際、「これライト級のウェイト越えてないと甲斐が負けたら王座剥奪だよ」と、契約ウェイトの状況を調べに行ったという、他のスタッフが気付き難いところにも指摘したエピソードがあり、現在のリングアナウンサーには無い探究心を持っていました(この試合は63.5kg契約)。

この衣笠氏に斜陽期のTBS放映時代に指導を受けられたのが吉田氏で、低めの声ながらリズムとイントネーションはソックリで、分裂による枝分かれはしましたが、他団体で単発ながら1987年まで務められました。

復興団体で衣笠氏に指導を受けられたのが三遊亭貴楽氏で、更に後の全日本キック復興の際、縁あるジムの意向でそちらに移動されましたが、その直後の1987年5月に査定を受けた芸人Wコミックの井手亮氏が見習い採用された経緯がありました。

残念ながら衣笠氏は翌年、心不全により亡くなられ、最後の弟子、井手氏がメインリングアナウンサーに抜擢されました。井手氏は矢沢永吉さんのファンで、デビュー当時からそのスタイル貫き、「井手さんにコールされると気合いが入るよね」と語る選手も居て、人懐っこさでファン、スタッフ、選手からも人気も高かった人でした。MA日本キック連盟は初期の石川勝将代表の辞任後、団体の体制がまとまらず、リングアナウンサーも入れ替わりが激しくなり、伝統の日本系の個性は完全に崩れた時代に突入してしまいました。

全日本系での巨匠は俳優のチャーリー湯谷氏、伝説の西城正三vs藤原敏男戦のビデオにもある、この試合のリングアナウンサーが英語のアクセントがインパクトあるチャーリー湯谷氏でした。その後にメインリングアナウンサーを務めたのが宮崎邦彦氏で、こちらも独特の力強いコールで、ベニー・ユキーデをコールしたことも幾度かあり、藤原敏男氏の引退興行もメインリングアナウンサーを務め、全盛期の立嶋篤史をコールする時代まで活躍しました。コールでは大声が出せる人ですが、リング下では優しい口調の方で、物静かに佇む姿が思い出されます。

現在に至るまでのキックボクシングの多団体乱立後のリングアナウンサーは、先人の指導の無いまま、次の新人に任される場合が多かった競技です。主催者役員との思想の違いから退任、次から次と新規リングアナウンサーが誕生する場合もあり、試合役員から指導を受けることはあってもそれは大雑把で、そんな団体で育ったリングアナウンサーは後輩ができても、指導するにしても正しいことが伝えられない負の連鎖が続く場合もあります。これではその団体や興行の顔となる存在には成り得ません。

今回、くどいほどマニアックに述べさせて頂いた巨匠たち、こんな不安定で奇妙な世界によくぞ入ったものだと感心する、かつての名脇役リングアナウンサー揃いでしたが、こんな競技でも研究熱心に進行を考え、真摯にクレームを受け止め、前回のテーマに出てきた進化あるリングアナウンサー達もいます。観ているファンにもそれぞれの好みがあり、批判ある場合もありますが、特殊な才能を持った人たちを願わくば、巨匠たちが競技を越えても次の世代へリングアナウンサーの正しい姿を伝えて欲しいものです。

小野寺力氏お気に入り、三遊亭貴楽氏も他団体に渡り、NO KICK NO LIFEまで登場されました(2014.2.11)

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
『紙の爆弾』最新号!森友、都教委、防衛省、ケイダッシュ等今月も愚直にタブーなし!

梅野源治、ラジャダムナンスタジアムで王座陥落!

ワイクルーを舞う梅野源治
サックモンコンの左ミドルキックを受ける梅野源治

梅野は現地ムエタイのライト級域の中では警戒されるほどの有名な選手。かつて戦った選手や今後戦う可能性のある選手の中では梅野の弱点は知れ渡っているでしょう。現地での王座奪取や防衛がいかに難しいか、本場の壁が立ちはだかります。

◎5月17日(水)
タイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級(135LBS)タイトルマッチ 5回戦 
チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/135Pond/61.23kg)
VS
同級7位.サックモンコン・ソー・ソンマイ(135Pond/61.23kg)
勝者:サックモンコン / 0-3 (46-49. 47-49. 46-49)

サックモンコンの右ミドルキックを脇に受ける梅野源治
サックモンコンの左ミドルキックを受ける梅野源治
サックモンコンの左ヒジを不用意に浴びる梅野源治

◆戦略が狂ったか?

梅野は計量では1回でのパスではなかったようですが、サックモンコンも予備計量で1.4ポンド(約635グラム)オーバーの様子があったようです。

梅野は第1ラウンド終盤にサックモンコンのパンチでダウンし、戦略が狂ったか、梅野より長身のサックモンコンとの距離を詰め難く、離れた距離からのパンチは流れ、その距離に応じたサックモンコンの蹴りやパンチが効率よく当たる。梅野の距離に持ち込んでも次に繋げる連続技には成り難く、サックモンコンの精度の高いヒットが目立っていく。「どちらがチャンピオンか」と言われるような技術の差も露になった劣勢も挽回出来ず終了。

◆ボクシングとは異質なムエタイの採点基準

キックボクシングやムエタイの世界では、“世界”と名の付く王座より、本場タイの伝統あるルンピニースタジアムやラジャダムナンスタジアムの王座が最高峰と位置付けられる時代が長く続いています。

ラジャダムナンスタジアムは1941年の設立。ルンピニースタジアムは1956年の設立です。その原点には「ムエタイ500年の歴史」やタイの小学校の教科書にも出て来る1774年のビルマとの戦争にまで遡る「ナーイ・カノムトム物語」があります(重複ながら、関心が持たれ難い歴史を再確認する意味で掲載しております)。

ムエタイの採点はボクシングとは異質な基準があります。ムエタイを熟知している人には理解できるでしょうが、ボクシング基準の「ラウンド毎の独立した採点」が固定観念として残っていたり、ムエタイの展開が読めない者から観れば、どうしても不可解な結果が残る場合があります。

頭が当たりそうな危険なヒジ打ちの相打ち
梅野の踏ん張る右ストレート
サックモンコンの左ハイキックをかわす梅野源治

◆持ち味を殺してしまった試合運び

梅野は初回にパンチを貰ってダウンを喫し、それでリズムと戦略が狂って、それ以降も明確に抑えたとは言えないラウンドが続き、大差判定負けとなる結果が残りました。梅野より背が高い相手となると、過去にも非常に少ないタイプ相手だったことも要因でしょう。踏み込めず、ボクシングにあるようなアップライトスタイルのボクサーに打って向かう側のパンチの届かないもどかしさ。届いてもその威力を軽減する術を持つスタイルですからダメージを与えられません。

サックモンコンの蹴り技に凄さがあるわけではなかったですが、梅野の持ち味を殺してしまった試合運びの上手さで勝利を導きました。念願の本場、二大殿堂のひとつラジャダムナンスタジアムで防衛することを目標に頑張ってきたことに対し、このチャンピオンが大差判定負けすることはショックな結果でしょう。このところの激戦続き、怪我も重なり回復したとはいえ、調子の戻らぬままの殿堂登場でした。

◆ここから這い上がれるかをファンは注目している

健闘を称えあう両者、若いサックモンコンが拝む形となる礼儀

こんな展開に「梅野は弱くなったような気がしますね」という声も聞かれましたが、ここから這い上がれるかをファンは注目しているでしょう。かつて梅野が言った試合での「相手の心折る戦略」が大事ならば、梅野自身が心折れることなく、伝説の“藤原敏男を越える戦い”はまだまだ続けるでしょう。

「NO KICK NO LIFEイベント」から続く強豪との対戦や、ヤスユキ(Dropout)戦での顔面負傷、WBCムエタイ世界王座の防衛戦、ラジャダムナン王座奪取、そして「KNOCK OUTイベント」での注目度ある相手との3連戦が続いた中でのラジャダムナン王座防衛戦でしたが、ラジャダムナン王座1本に集中して欲しかったファンも多かろうと思います。今後どうするかは梅野陣営の采配でしょうが、少し休んでから再起し、予定される7月以降のビッグマッチ出場となるのでしょうか。

控室で悔しさが滲み出る表情。反省と後悔と、心折れない胸中はどんなものか

[文]堀田春樹 [画像提供]weekly MUAY TU

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

愚直に直球、タブーなし!『紙の爆弾』

「再び5回戦の時代へ!」は来るか?

瀧澤博人vsHIROYUKI。右ストレートのカウンター、効いた瀧澤がこの後グラつく
HIROYUKIvs瀧澤博人。HIROYUKIと瀧澤のパンチの交差
HIROYUKI、二つ目のベルトで感涙

スターの扱い方も変化し、地方局、衛星放送などの出演も増え、今後のキックボクシング界を支える新しい展開に。

◎WINNERS 2017.2 nd / 2017年5月14日(日)後楽園ホール17:00~21:40
主催:治政館BeWell / 認定:新日本キックボクシング協会 / 後援:(株)ベストン
放送:テレビ埼玉(6月16日、ドキュメント番組を予定)

《主要5試合》

◆日本バンタム級タイトルマッチ 5回戦 瀧澤3度目の防衛戦

チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/53.52kg)
       VS(0-3)
同級2位.HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本/53.52kg)
勝者:HIROYUKI が第12代チャンピオン
主審:椎名利一
副審:和田45-50. 仲45-50. 宮沢45-50

前半はHIROYUKIが大胆な攻勢をかけ、やや優勢に進め、第4ラウンドに瀧澤はハイキックでHIROYUKIをグラつかせるも、迎え撃ったHIROYUKIが右ストレートでダウンを奪う。足にきてフラつく瀧澤、油断しなければHIROYUKIの勝利は動かない中、打ち合いを避けずに攻勢をかけたHIROYUKIが大差判定勝利で二階級制覇を達成。

◆70.0kg契約5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)
VS
ドゥアンソンポン・ナーヨックエーターサーラー(タイ/70.95kg)
勝者:ドゥアンソンポン / 0-3 (47-49. 48-49. 48-49)
(ドゥアンソンポンは、現ルンピニー系スーパーウェルター級4位、ラジャダムナン系同級3位)

ドゥアンソンポンは前日の予備計量で1.4kgオーバー。これは落ちそうにないなと予測はできたが、当日でも950グラムオーバーで減点1が課せられる試合となりました。しかしランカーの実力は遺憾なく発揮、終始重い蹴りが緑川を突き放した展開。

ドゥアンソンポンvs緑川創。ドゥアンソンポン(左)の重いハイキック、ブロックしてもキツイ
志朗vsアドリアン・ロペス。右ローキックの蹴り合い、まだロペスは負けん気充分

◆ISKAムエタイ世界バンタム級(-55kg)タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.志朗(=松本志朗/治政館BeWell/54.9kg)
VS
スペイン同級C.アドリアン・ロペス(23歳/26戦18勝(9KO) 5敗 3分/スペイン/
55.4→55.1→55.0kg)
勝者:志朗が初防衛 / KO 3R 1:50 / テンカウント
主審:和田良覚

ロペスは前日計量で400グラムオーバー、30分ほど走り込み再計量で100グラムオーバー、その場でパンツを脱いで再々計量リミット一杯でパス。体調に問題は無い様子。

ロペスはパワーとスピードがあるが、一歩先読み打つ戦術は志朗が上手。ローキックでロペスの勢いを止めれば、へたり込むこと読める展開に崩しにかかり、青コーナーに詰めローキックからパンチ連打、ボディから顔面へ最後は左フックで倒す。ロペスはボディが効いたかのような、意識はあるが苦痛の表情で10カウントを聞く。

志朗vsアドリアン・ロペス。ダメージ与えコーナーに導き、パンチでKOに結びつける志朗
ヘルダー・ヴィクターvs麗也。ロープ際に詰め、足の弱そうなヘルダーを崩しにかかる麗也

◆52.0kg契約3回戦

日本フライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/51.8kg)vs同級3位.幸太(ビクトリー/51.8kg)
引分け / 三者三様 (29-30. 29-29. 30-29)

麗也が王座返上以降、インパクトあるチャンピオンが存在しない感があるフライ級。倒せる技が無く、幸太を調子付かせてしまった石川は、次期挑戦者となる流れであろう幸太を今度は力でねじ伏せなければならない。

◆ISKAオリエンタル・インターコンチネンタル・フライ級(-53.5kg)王座決定戦 5回戦

世界6位.麗也(治政館BeWell/53.5kg)
VS
ヘルダー・ヴィクター(22歳/30戦25勝3敗2分/ポルトガル/53.35 kg)
勝者:麗也が王座獲得 / KO 3R 2:25 / テンカウント
主審:和田良覚

互いに距離感掴み難そうな中、麗也のローキックは有効な攻め。第2ラウンドには麗也がパンチとローキックの攻勢を強める。ヴィクターの長身を活かした打撃を注意し、第3ラウンドには更にボディ中心に攻めダウンを奪うが、ギリギリのカウント9で立ち上がるヴィクターを更にボディにパンチ、ヒザ蹴りで2度目のダウンを奪い、ヴィクターは再度立ち上がるも最初のダウンより戦意喪失気味に遅く立ち、カウントアウトされて終了。

麗也vsヘルダー・ヴィクター。ラッシュに結びつける展開へ麗也のパンチ
勝者HIROYUKIを祝福、認定証授与の後
HIROYUKI。お腹の子含めて4人でショット、守るものが増えた

《取材戦記》

この興行のプログラムに書かれていたサブタイトルが「再び3分5Rの時代へ」でした。タイトルマッチ絡みで4試合が5回戦組まれており、いつもより5回戦が多いだけでしたが、今後を何か予感されるようなフレーズでした(ボクシングシステムで運営される競技性上、“3分”とは書く必要無いと思います)。

興行的にはメインイベントは志朗の防衛戦、セミファイナルが麗也の王座挑戦、となるところが、この2試合は “スペシャルマッチテレビ埼玉杯”という枠だそうで、最終試合の日本バンタム級タイトルマッチがメインイベントでありました。
日本では慣習的に“最終試合がメインイベント”となること多いですが、“メインイベント=最終試合”と決まっている訳ではありません。

治政館(BeWell)がISKA路線へ走り出したのが2年前の5月。志朗を筆頭に後輩の麗也も続き、また二人のタイ・バンコクでの主要興行出場も続いているというBeWell戦略が今後も賑やかに盛り上げそうです。志朗は6月にルンピニースタジアムでのテレビマッチ出場が決定しており、多方面から出場交渉がある実力派です(BeWellは治政館が母体の姉妹ジム的存在、志朗の父、松本弘二郎氏運営)。

瀧澤博人の日本バンタム級王座3度目の防衛戦となった元・日本フライ級チャンピオン.HIRYUKIとの対戦は、複数王座に因縁が絡む好カードでした。2014年10月に瀧澤が王座を奪った当時のチャンピオンが重森陽太(伊原稲城)。その重森は階級を上げ、2015年10月に日本フェザー級王座を内田雅之(藤本)から奪いました。HIROYUKIは2014年8月に日本フライ級王座決定戦を麗也に勝利して獲得、初防衛戦で麗也に奪われた後バンタム級に上がり、この日、日本バンタム級王座挑戦に漕ぎ着け、瀧澤から王座を奪取に成功。何かと因縁が続くこの日本タイトル、老舗(旧・日本系)とは枝分かれはしていますが、この老舗を継承しているのが新日本キックボクシング協会で、“日本タイトル”を継承する団体です。昔も日本王座には、因縁ある変遷史がありました。全日本系でも同様です。

2階級制覇となったHIROYUKIは今後について「とりあえず防衛。他は要らない」とあっさりしたもの。試合後の応援団の祝福に囲まれての写真撮影が続く中での発言でしたが、一夜明けて落ち着けばまた更に目指すものが見えてくるでしょう。フライ級では防衛失敗しているので、目黒ジム伝統の「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」をまずは果たさねばなりません。21歳のHIROYUKIはリング上で「妻のお腹には二人目の子が居ます」と発表。守るは家庭と王座。若くして責任重大です。

試合後、リングを降りてすぐ、応援してくれた仲間に御礼を言って回る選手は幾らか見受けられますが、裸のままでは汗も冷えるし風邪引く恐れがあります。
「試合が終わって時間が経つと身体が冷えるので、放送席に長く留ませ、インタビューが長引くのは好ましくない」という昔のボクシング記事を読んだことあります。

選手の皆さん、リング上の照明が消された後や、リングを降りた場所はかなり気温が下がっています。翌日は祝勝会かもしれませんが、身体を冷やさないよう気を付けましょう。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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リングの名脇役、リングアナウンサーの任務!

コンタキンテさん。江頭2:50とコンビを組んでいたこともある芸人さん。取り組む真面目さ素直さは抜群
お宮の松さん。たけし軍団の一員。格闘技の試合経験もある芸人さん

リング上で興行の顔となるリングアナウンサー、選手コールだけなら楽なものですが……。リングアナウンサーというお仕事は、リング上で選手をコールするだけではありません。それだけの起用で呼ばれる巨匠もおられますが、大概は掛持ち雑用が伴います。

場合によってはタイムキーパーも任されます。その他、激励賞の送り主名の読み上げ、採点結果の確認、公式記録の記載、1分間のインターバルでの両選手戦歴経歴の紹介など、団体や競技によってマチマチですが、いろいろな雑用もこなさなければなりません。

◆進化あるリングアナウンサーの存在!

ボクシングを含め、過去にはいろいろなタイプのリングアナウンサーが存在しました。個性あるコールは、物真似上手な人でなければソックリには真似出来ない技術があります。そして上手い下手より、その競技や興行の顔となる存在になることが大事な役割とも言えます。

新風を巻き起こしたのは、選手紹介に戦績を加えたのが日本ボクシングコミッションでリングアナウンサーを務めている冨樫光明さんでしょう。コールのリズムとイントネーションが力強く、更に経歴を加えるなど変化を付けて進化を続けました。そんな影響を受ける他競技もあり今後、他者がこれを越える新たな展開を見せることは難しいかもしれません。

タイではリングサイドアナウンサーによって、淡々と手短に両選手同時入場時に選手紹介が行なわれていますが、ワイクルー(ムエタイの戦いの舞)無しで、こんなシンプルさの興行をやってみたいという日本のプロモーターも居て、そんな進行の早そうな興行も観てみたいものです。

また最近は、リング上での選手紹介だけでなく、文字通りアナウンサーとしてインタビューも行なえる技量も必要な場合もあります。そこでは台本(進行要綱)に書かれた台詞を読むのではなく、競技に精通し、選手の経歴を知った上で、その場のアドリブで話を進める機転が必要な場合もあります。しかし、長くボクシングやキックボクシングを観ていても、選手コールは出来ても、なかなか深イイ内容のインタビューが出来る人は少ないところです。

細田昌志さん。今や記者より記者らしい取材力を持つ放送作家
日野実志さん。NJKF事務スタッフから始まった芸人ではないリングアナウンサー
風呂わく三さん。2007年のNJKF新体制から起用された劇団員さん

◆リングアナウンサーの苦悩

選手に贈られる激励賞(祝儀袋)をその後援者が、突然リングアナウンサー席に来て、「頼むよ!」とポンと置いて行ってしまう、リングアナウンサーを単に雑用係と見下して行く観客もいて憤慨することもあるようです。

かなり前の出来事、インターバル中、リング上でウォーキングするラウンドガールを、くどいほど何度も紹介する某リングアナウンサーがいましたが、後々他のジム関係者から事情を聞くと、ある筋の組員が後方から何度も「もう一回やれ」と指示されていたという、一概にリングアナウンサーを責められない事情もあるので、話は聞いてみないとわからないものでした。

20年ほど前、リングアナウンサーではなく、リング下のサブアナウンサーの失態で、勝者を間違えてコールしたことがありました。ジャッジペーパーの確認ミスで、一旦敗者に渡った勝利者トロフィーを返却させ、真勝利者に渡したことがありました。すぐに控室に行って両選手に謝罪したようですが、ジャッジペーパーの確認は複数人でやるべき事態でした。

試合前から選手名を間違えることも間々あることですが、主催者任せの資料に頼らず、自分の足で選手に聞きに回る配慮も必要です。

目まぐるしく機転を利かせて進行するリングアナウンサーなど連係するスタッフは、威圧を受けたり、ミスがあったり、予定に無い余興が発生するパニックになりがちなこともしばしばです。これを乗り越えられるのが経験値となりますが、先人の指導を受けられないまま運営に関わるスタッフの入れ替わりが激しかったりで、同じ失態を繰り返すこともしばしば、傍から長く見ているとそんな状況も見受けられます。

◆リングアナウンサーを勧めたくはないが……

最近のリングアナウンサーは役者さん、劇団員さんなど芸能関係から起用されることが多く、一般人から募集されることは少ないですが、単なる司会業とは違い、やってみると面白い。カッコ良く目立ち、やり甲斐ある任務と言えるかもしれません。現実は上記のようなパニックに巻き込まれつつ、報酬も高くありませんので、決して勧められる任務ではありません。しかし、採用されることは難しいとても貴重な仕事です。こんな任務に興味あり、自信ある方は人づてに挑戦してみるといいかもしれません。

次の機会には、こんなキックボクシングの奇妙な世界に入り込んだ名リングアナウンサーの面々を紹介してみたいと思います。

生島翔さん。元・TBS生島ヒロシさんの次男さん。今年3月から登場。伊原代表の御挨拶の後のプレッシャーかかるマイク投げにもしっかり対応

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』6月号!森友、都教委、防衛省、ケイダッシュ等今月も愚直にタブーなし!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

ビジネスで「滑らない」浅田真央が「MaoMao」ブランド大展開か?

引退会見に白いジャケットを着こんできたフィギュアスケートの浅田真央だが「おしゃれすぎる」「アスリートとしてはかなり洗練されている」との声がアパレル業界からも上がっている。浅田が“趣味”としてスタートさせていたブランド「MaoMao」が本格的に稼働する気配があるのだ。

「浅田のブランドとしては、浅田自身が監修し、コラボしている『浅田真央リカちゃん人形セット』ばかりがクローズアップされているが、すでに数人のデザイナーが着物やトレーナーのデザインを持ち込んでいるとも聞いています。まだ忙しくて対応できていませんが、競技の衣装の作り方やも、大学の卒業式で自らがプロデュースした着物や袴は、『素人の領域を超えている』とアパレル業界でもあまねく知られるところ。あれだけ好感度が高い浅田が乗り出してアイテム数を増やせばひと商売になると、いまは有象無象のアパレル業界者が浅田サイドに営業をかけているという話です」(スポーツジャーナリスト)

現在は眼鏡フレームや小物、フィットウエアなど点数を絞って展開している「MaoMao」。

「だがまだ浅田は本腰を入れていない。本腰を入れればもっと“和”を取り入れて着物や手ぬぐいなどのプロデュースを始めるはず」(同)

浅田の“日本の伝統志向”はかなり強く、祇園のお茶屋『富美代』での懇親会に姉の舞と招待されたり芸妓の京舞に熱心に見入ったりしている。

「ですから、当分はアイスショーやスポーツ番組のキャスターなどをしてすごすのでしょうが、ブランド展開に力を入れる可能性があります。スケート靴に限らず、スポーツシューズで『MAO STYLE』とつけば必ず男女問わず関心を呼ぶはずです」(同)

連日、特別枠をとって引退番組が放映される「国民的人気のアスリート」が展開するブランドを大衆がほおっておくわけがない。

「イチローが引退して野球用品をプロデュースしたらバカ売れするはず。それと同じ論理ですが、こうした話は、海千山千の悪いコーディネーターがお金を持ち逃げしたり、ずさんな経営をして借金したりするケースが多いのもまた事実。あまり事業欲を出してイメージを悪くすることもないでしょう。あいかわらずブランド展開は『趣味の範囲で』我慢しておくのが利口という声もあります」(スケート連盟関係者)

浅田がプロデュースするグッズやウェアがもしアイスショーの会場で販売されれば圧倒的にはけるだろう。また、今なら「サイン入りグッズ」なら飛ぶようにはける。

「金メダルをとった荒川静香も、1年でキャスターや講演にと、だいぶ荒稼ぎをした。浅田はこの1年で相当稼げるはずですよ。でも講演やテレビ出演などでそんな時間がさけるかどうかは心配ですが」(同)という声も。

競技としては、力が落ちて“薄氷を踏む”ような晩年のアスリート生活。だがビジネスでは「滑らない」のが真央流……のようだ。


◎[参考動画]女子フィギュア浅田真央選手が引退会見(2017年4月12日THE PAGEライブ配信)

(伊東北斗)

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