横浜IR誘致計画の背後に菅義偉官房長官 安倍「トランプの腰ぎんちゃく政策」で、横浜が荒廃する

突然、横浜市(林文子市長)がIR(カジノをふくむ統合型リゾート計画)誘致を発表した。林市長は市議会に誘致に関連する約2億6000万円の補正予算案を提出し、2020年代後半の開業を目指す考えだという。IRをめぐっては大阪府、大阪市、和歌山県、長崎県が誘致を進める方針を表明しているが、首都圏では横浜市が初めてだ。

横浜市のIR誘致は、横浜港の山下ふ頭を再開発する計画の中で議論されてきた。そのなかで林文子市長は、この2年あまり一貫して慎重に検討する姿勢を示してきた。知事選挙のときも「カジノは白紙」の公約だった。ところが、ここにきて「積極的に誘致」と、君子豹変したわけだ。その豹変の裏側には何があるのだろうか?

◆港運協会が反対を表明

その日のうちに、横浜港運協会は絶対反対を表明した。藤木幸夫会長は「大きく顔に泥を塗られた。俺一人になっても反対する」「私は命をかけている」「反対のためなら、もうおとなしくはしていない」と記者会見で発言し、絶対反対の意思をしめした。

地元のFMラジオ局の社長や横浜スタジアムの会長を務める藤木氏は、政財界にも顔が広く、“ハマのドン”と呼ばれている人物だ。もともと林市長の後援者でもあり、横浜自民党にも大きな影響力を持っている。その藤木氏が態度を硬化させたことで、林市長が掲げたカジノ構想は早々に大きな壁にぶつかったことになる。市民の間にも治安悪化やギャンブル依存症の増加に対する懸念も根強く、はやくも市民団体が市庁舎に押し掛けるなど、反発が全面化している。

気になるのは日本政府のうごきである。カジノ構想自体は20年以上前から具体的に検討されてきたが、安倍政権になってから本格化した。そしてトランプ政権の登場によって具体化したのだ。そこには、ある人物の暗躍があった。

◆仕掛人は菅官房長官だった

2014年の夏、永田町からほど近いホテル内の日本料理屋で、数人の政界関係者による会合が催されている。その日の座の主役は、2012年12月いらい安倍内閣において官房長官を担い続ける菅義偉氏だった(「週刊新潮」)。

その場にいた政界関係者によれば、雑談の流れの中で「統合型リゾート整備推進法案(カジノ法案)」の話になったという。
「やっぱり、候補地はお台場が有力なんですかね」
という政界関係者の問いに、菅氏は顔色を変えずに応じた。
「お台場はダメだよ。何しろ土地が狭すぎる」
それではどこが適地なのか。沖縄か、大阪か? そんな場の雰囲気を察したように菅氏はこう言ったのだ。
「横浜ならできるんだよ」

この時点において、横浜を候補地としてあげる声がないわけではなかった。しかし、それはごく一部で囁かれているに過ぎず、あくまでダークホースの扱いだった。そんな中で現職の官房長官の口から、自らの地盤でもある「横浜」の二文字が語られたわけだ。

じつは、横浜IR立候補に反対を表明した藤木会長は、菅官房長官の有力な支持者でもあった。自民党神奈川県連の幹部はこう語る。
「(菅氏が政治家となった横浜市議選で)藤木幸夫さんは、“あいつ(菅氏)を勝たせる”と言って相当応援していた。藤木さんはいろんな会社をもっていて、その下に大勢の従業員がいる。そんな彼らは“藤木軍団”と呼ばれていて、選挙の半年前くらいから動いてくれる。菅の最初の選挙の時は藤木さんの側近が入っていたはず。ただ、藤木軍団は選挙事務所には来ず、独自に動く。それを選挙事務所は把握していないし、報告も受けない」

別動隊として動くというのだ。奥ゆかしいのか、それとも独自の力で議員を支配しているのか。いずれにしても、選挙こそ議員の泣きどころであるのを知っているのだ。その意味では、林市長も藤木会長の怒りには圧力を感じることだろう。

市議に当選した後も、菅氏と藤木氏の関係は続いた。ある横浜市議が語る。
「ある時、藤木さんに会食に誘われた。無所属だった私を自民党に入れようとしたようで、会食の席で藤木さんから“信頼できるヤツ”として菅さんを紹介されたんです」
「国会議員になってからも、菅さんは藤木さんに頭が上がらないようだった。携帯に電話がかかってくると、“会長!”と言っていた」(永田町関係者)という。そしてその藤木会長も、菅の横浜カジノ誘致には積極的だったのだ。菅の横浜誘致構想に藤木が賛意をしめすと、マスコミはこぞって「ハマのドンがカジノ誘致にうごく」と報じたものだ。

その藤木会長が、「おれの顔に泥を塗らせたやつがいる。安倍総理の腰ぎんちゃく(菅官房長官)だ。そして安倍総理は、トランプ大統領の腰ぎんちゃくだ」と、真っ向から反旗をひるがえした、いや堂々と正論を述べたのだ。おもて向きは「ギャンブル依存症を勉強すると、たいへんなことになるのがわかった」「港湾労働者たちが、おカネも食べるものもなく、黙って働いて築いてきた場所を、ゴロゴロ(ギャンブル)の場にするなんて、とんでもない」と、林市長の態度の変化に憤っている。じつは、カジノ資本による横浜占拠への危機感、そしてアメリカの日本買いへの危機感が、藤木会長を動かしたといわれている。

◆安倍政権のトランプ追従政策がその根源だ

今回の横浜市の発表に合わせて、アメリカのギャンブル企業(経営者は強力なトランプ支持者)が大阪構想からの撤退と、横浜誘致計画への参入を表明した(発表は同日であった!)。ここにこそ、今回の事態の本質が顕われているといえよう。カジノは賭博であり違法行為であるとか、眠たいことを言っているのではない。今回の計画はアメリカの横浜買いであり、安倍政権のトランプ追随の副産物なのだ。

藤木会長が言うとおり「ギャンブルは五秒で高額な財産をうしないかねない」危険な遊びである。パチンコのように数百円、千円単位で遊ぶものでもない。いや、パチンコですら、ギャンブル依存として街金から多重債務になる依存症患者が出ている。これらギャンブル依存症によって成立する国家財源を、はたして健全といえるだろうか?

仮に誘致が実現すれば、同市の試算ではインバウンドをふくむ訪問者数は年間2000万人を上まわり、区域内での消費額は4500億円以上。さらに建設時に7500億円、運営時には年間6300億円を超える地域経済への波及効果が見込まれ、最大で1200億円の増収が期待できるという。しかしこれは取らぬ狸の皮算用というほかない。たとえばラスベガスのように、アメリカの富と享楽を代表する都市は、きわめて限られた娯楽都市にすぎない。

筆者もマカオやフィリピンのセブ島などのカジノを体験したことはあるが、貧困地域に世界の金持ちを集めるコロニアリズムの残滓である。ベガスには遠く及ばない。横浜の経済規模でも中途半端なものしか出来ないであろう。韓国ではすでに十カ所の海外客向け、1カ所の国民向けのカジノを持っているが、収益は微々たるものだという。ラスベガス級のものを計画すれば、横浜市全体を享楽都市化するしかないだろう。現在の計画では山下埠頭のみだが、みらい地区や山下公園、元町にも近接している。カネをすり減らしたギャンブル依存者たちが、これらファミリーリゾートやカップルの聖地で犯罪をおかすことも考えられないではないのだ。

なお、の3つの枠を競うのは現在、横浜市、和歌山県、大阪府と市、長崎県の4カ所。このほかにも北海道、東京都、千葉市、愛知県などが誘致を検討しているという。林市長は将来の財源のためにカジノを誘致したいという。しかし国の未来、子供たちの将来を、ギャンブルとアメリカに売り渡す愚策こそ、覆えされなければならない。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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ウソまみれの「東京五輪」に「開催反対」を唱える政党がなぜ出てこないのか?

2020年東京五輪で実施されるマラソンスイミングのテスト大会が11日、東京・お台場海浜公園で行われ、高い水温に加え、水質問題では選手から悪臭に懸念が示された。(時事通信8月11日配信)

2020年東京五輪・パラリンピックのテスト大会を兼ねたパラトライアスロンのワールドカップ(W杯)は17日、会場となる東京・お台場海浜公園のスイムコースの水質が悪化したとして、スイムを中止してランとバイクのデュアスロンに変更された。大会実行委員会によると、16日に実施した水質検査で大腸菌の数値が国際トライアスロン連合(ITU)が定める上限の2倍を超えた。(共同通信8月17日配信)


◎[参考動画]大腸菌が基準値超え…トライアスロンでスイム中止(ANNnewsCH 2019/8/17公開)

◆「復興五輪」?「コンパクトな五輪」?

2019-2020 licensing road map

無謀にも灼熱地獄の中で予定されている東京五輪・パラリンピック。上記報道の通り東京湾の汚染により「海に入れない」状況が生じることが証明された。そうでなくとも(東京在住の方には失礼当たるが)東京湾の汚れ具合は周知の事実で、あんなところで、よく海水浴をするな、としきりに感心していた。東京湾の海底にはヘドロが堆積し、福島原発から垂れ流されるストロンチウムなども漂着しているのではないか。

そうまでして、東京五輪にしゃかり気になるのは、どういう人たちだろうか。その筆頭は、日本政府だ。「復興五輪」(ちょっと考えれば「復興」と「五輪」はまったく関係ないことは誰にでもわかろう。外国人労働者を本格的に差し向けなければ足りないほど、作業員の不足が著しい、福島第一原発事故現場の収束作業に当たることができる人が、五輪のための建築現場などに大幅に吸収されている)。

もうこれ以上アスファルトで埋め尽くす場所はない、といっても過言ではないほど舗装の行き届いた東京。1969年とはわけが違うのに、金の使い方は当時の比にならない。「コンパクトな五輪」を謳っていたいた当初の姿勢は見せかけで、運営費だけでも3兆円かかると大会実行委員会は開き直りだした。最終的にはもっとかかるだろう。実行委員会のある理事は「これほどスポンサーの皆さんとスムースに仕事ができるのは実にありがたい」と述べていた。

そりゃそうだろう。朝日・毎日・読売・産経・日経に加えて北海道新聞までがスポンサーになっている東京五輪に、根源的な批判が向けられるはずがない。。その他のスポンサー数や業種も「よくぞここまで便乗するな」とあきれるほどだ。便乗企業の商品化カタログは180頁にわたる(https://tokyo2020.org/jp/organising-committee/marketing/licensing/)。引出物のカタログでも180頁の商品カタログに、庶民はそうそうお目には書かれまい。

そして、存在自体が反自然の観点からは「犯罪」ですらある、「東京」という町である。大きなポスターだけでも結構威圧感があるのに、最近は広告表示が液晶にかわった。東京駅で新幹線を降りて改札口を抜けると液晶に写される動画広告に、気分が悪くなるので、わたしは下ばかり向いて歩く。

◆「万博」だの「五輪」などは、すべて行き着く先が「政治」である

ところで、この国は、こういう「乱痴気騒ぎ」をやっている場合だろうか。福島をはじめとする東日本大震災の被災者の方だけではなく、広島、熊本、など自然災害の被災地は全国に及び、いまだに仮設住宅で暮らしている方々、あるいは仮設住宅を追い出されて。青色吐息でこの猛暑の中暮らしている方々が何万人もいるではないか。

自然災害と人災の被災国日本は、

《日本国憲法第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。》

を享受できていない人たちが、膨大に目の前にいるじゃないか。

「万博」だの「五輪」などは、すべて行き着く先が「政治」である。いま、既成政党で「東京五輪」に明確に「開催反対」を唱える政党があるだろうか。わたしは、日本人のこういった「集団主義」に虫唾が走る。逃げ出したくなるがそうもいかないから、数少ない読者諸氏に訴えるしかない。毎年夏の暑さは「命にかかわる」レベルが当たり前になった。そんな中で意味のない金を使い、広告代理店や、一部大企業を儲けさせる、イベントに“庶民”が何かを期待する「愚」はもうそろそろ終わりにしよう。

この国際化が進んだ時代に、恥ずかしくも隣国への侵略史を直視できない日本が、五輪を開催しても何の意味もない。便乗商法で儲かる企業と、一部のアスリート。そして「踊らされる」庶民が騒ぐ。新聞もテレビも五輪一色。そういう時に、悪政や、儲けにさとい連中は着々と準備を進めるのだ。

いまからでも遅いか、遅くないかは関係なく、無駄と浪費、弱者切り捨ての「東京五輪」に反対の意を再度明らかにする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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日韓問題の深層

ゆるぎない確信があるわけではない。情報源は、マスメディアと知人からの個人筋をもとに、わたしが感覚的に推測するだけだ。歴史の勉強も人並みにしていない知識からの予感が外れる可能性が大きいであろう。だが敢えてわたしの直感を書こうと思う。

不確かな未来予想は好きではない。わたしは、この国が2030年にはおそらくいまの形では残存しない、と考えていることを本通信で何度か明らかにしてきた。そちらの予想にはかなりの自信を持っている。ここでは述べないが数々の根拠があるからである。

◆一周遅れの「統一」へ

韓国とこの国の関係が険悪になっている。中途を飛ばしていきなり結論を述べよう。

《韓国と朝鮮(水面下では米国・中国にも通告。両国の内諾を得、日本は無視)は、具体的な時期は見通せないものの、「統一」に向けて合意をした》

冷戦時代には、国境を接して同じ民族が分断国家にされていた。世界的にその影響が顕著だったのは東・西ドイツだろう。「ベルリンの壁崩壊」により統一をみたドイツと、同様の悲劇がなぜ朝鮮半島では放置されてきたのであろうか。

ソビエト社会主義共和国連邦、最後の最高権力者、ミハエル・ゴルバチョフは、東ドイツの最高権力者、ホーネッカーから相談を受け、実質的な東西ドイツ「統一」を認める許可を出した、と何度も語っている。

冷戦の処理もやはり欧州が優先されたのか。ベルリンの壁崩壊から四半世紀以上が過ぎ、東西ドイツの統一と比較すれば、またしてもアジアの悲劇は後回しにされたのか。との斜めからの分析もこじつけには聞こえない。「歴史は相変わらず欧州優先なのかと」(東西冷戦終了後に欧州で発生したユーゴスラビアなどの内戦から目を離すわけにはいかないが)。アジアは世界の秩序整理のなかで、欧州の問題が片付いた後にしか、気を回してもらえないのか(欧州、アジア格差もさることながら、アフリカにおける実効的な植民地支配が終わらない現実は、さらに悲劇的である)。

◆民主派の系譜

軍政の時代が終わり、民政に移管しても韓国の保守勢力は日本の保守反動勢力と戦前以来の気脈を通じていた。李承晩、朴正熙、李明博、朴槿恵らはその系列の大統領だ。ときに、「反日的」カードを切ることがあっても、日本占領時代からの性癖が抜けず、財閥優先の経済政策と近親者優遇の悪癖が続いており、日韓の保守反動地下水脈の利益の軌道は、つねに表には出なくとも一致を見ていたのである。重要なことは「韓国の保守勢力は心の中では『日本が嫌い』だが、自分の利益のためには、日本の利権と手を繋ぐのに躊躇しない」点である。

他方、文在寅大統領は、金大中、廬武鉉と続く民主派の系譜にある人物だ。10親等までの親戚づきあいを拒否できない、儒教習慣が、いまだに残る韓国では、革新的な指導者であっても、賄賂や近親者優遇から無縁でいることは、日本とは比較にならぬくらいに難しい。廬武鉉氏の自死もそのような件に絡む自責が理由だった。

韓国の民主派勢力は幅が広い。左翼勢力も変動は激しいものの、必ず一定の力を保持している。ローソクデモで朴槿恵を大統領の座から引き摺り下ろした主役には、梨花女子大学の女子学生の力だった。彼女たちは日頃、学生運動の戦士ではない。ファッションには、かなり神経もお金も使う。ボーイフレンド選びにも、熱心である。だが、ここぞというときには反政府行動に身を投じることをいとわない。なぜか。韓国の民族史も理由になろうが、彼女たちは「親の背中」を見て育っているのだ。当然ながら、日本には残念ながら梨花女子大と学風が匹敵する大学はない。

◆世襲議員の「澱」

1965年に不平等条約である「日韓条約」が締結されると、この国の中では大韓民国だけが朝鮮半島における、合法的な主権国家であるとの態度が示される。しかし、それは国際社会の中にあって、圧倒的に異端な規定であった。日本は、国際法上正当と主張する「日韓併合条約」を大韓帝国に締結させているのだ。「日韓併合条約」の強制的締結前、数年の歴史を日本の受験生のほとんどは、知らない。否、受験生だけでなくわたしたちはおしなべて日本が朝鮮半島を侵略した歴史の詳細をほとんど知らない。そして「日韓併合条約」と「日韓条約」の決定的矛盾をこの国の学者、報道は問題にしようとはしない。しかし、「侵略」された側の韓国・朝鮮のひとびとは、苦難の歴史を義務教育から教えられる。

河野太郎が外相に指名されるとは思わなかった。彼の父河野洋平は「河野談話」を残した人物であるし、河野太郎も平議員のときは、福島第一原発事故後、毎日放送の「種蒔きジャーナル」に出演して「僕は確信的な反原発です。自民党の中にもそう思っている人は結構いると思います」と無責任な発言をしていた。

所詮世襲議員とは、「澱」が溜まっていくもので、くそ生意気に河野太郎は「外相専用機が欲しい」だの、今般の韓国との間での関係悪化では、あろうことか駐日韓国大使を呼びつけて「無礼だ!」とまで調子に乗った。

いいか。河野太郎。一度吐いた言葉は戻らないんだよ。

安倍を中心とする、歴史修正主義者と、与野党含め根源的な政権批判すらなくなった「大政翼賛会」状態で、「歴史を知らない」日本人の多くは、やはり「歴史を知らない」マスコミが作り上げる「反韓国」世論に、簡単に便乗させられる。朝日新聞も、読売新聞も、なんとか民主党も、だれもが「韓国批判」が正義であるかのように、羞恥心を失い馬鹿なことばかりを発信する。

わたしは、極めて不愉快だ。そしてひとつだけ「反韓国」の論調を先導する、
あるいはそれに領導される、無知なひとびとに問いたい。

「あなたはこれまでに、いったい、何人の韓国人と腹を割って話をしたことがありますか? そこまでの関係ではなくても、韓国人や朝鮮の人が歴史的に、日本をどう見ているかを知っていますか。そしてそれが事実であることを」

反日有理。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)
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日韓はもはや敵対国関係に どう収拾するつもりだ安倍晋三!

◆安全保障レベルでも手切れの日韓

ついに韓国文政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると宣言した(8月22日)。この措置によって、わが国は対北朝鮮のミサイル情報が得られなくなる可能性がある。日韓は安全保障レベルでも、同盟国・友好国ではなくなったのである。いまや両国の観光産業は疲弊し、民間交流も途絶えがちだ。どうしてこんなことになったのか?

相手が「反日と反共」「容共と反日」の「分断国家」とはいえ、そうであるがゆえに揉めれば泥沼化するのはわかっていたはずだ。張本人は安倍晋三、そのひとである。安倍晋三の脅してみたい「感情」から発した韓国イジメが、いよいよわが国の安全をおびやかすところまでやってきたのだ。この男に国政をまかせたままでいいのだろうか?

もちろん最大の原因は、大統領が代わるたびに前大統領が殺されるか投獄されるという、ひとつの国家のなかに「保守反共」と「容共親北」政権が入れ替わり、反日という国是を統治原理にする韓国に起因するものだ。それはしかし、日帝支配36年の「恨」が生んだ二重の分断国家なのである。いわば大日本帝国の侵略行為がつくった国であり、その国民性なのである。


◎[参考動画]韓国 GSOMIA破棄を発表(ANNnewsCH 2019/8/22公開)

◆「謝罪」をもって、宗主国としての「権威」をしめせ!

たとえば自由をもとめる動乱を余儀なくされている香港の民衆は、ユニオンジャックを掲げて民主化をもとめている。かくあるべきはずの宗主国の「権威」と「正義」が、朝鮮半島においては「反日」エネルギーとしてしか横溢していないのだ。そんな韓国国民の「反日」と「恨」をも了解の上で、日本の民間人たちは「友好関係」を築こうとしてきた。その多くは中高生であり、民間ボランティアである。そしてビジネスマンたちだった。

ところが、わが安倍総理においては韓国の政権交代の展望も政治工作もないまま、事実上の「禁輸措置」をもって経済戦争に突入してしまったのである。落としどころもない、その意味では無策の経済戦争である。たとえば朴槿恵政権時には、二階幹事長が独自の政治外交をして従軍慰安婦問題への「謝罪」を約するなど、まだしもチャンネルが確保されていた。ところが安倍政権には、まったく何もないのだ。


◎[参考動画]河野大臣が談話「見誤った対応 断固抗議」(ANNnewsCH 2019/8/22公開)

◆韓国はふたつの国家である

ソウル発の時事電によると、韓国の調査機関リアルメーターが8月7日に発表した世論調査では、8月24日に期限を迎える日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、延長せずに「破棄すべきだ」との回答が47.7%に達し、反対の39.3%を上回っていたという。

調査によると、文在寅大統領を支える革新系の与党「共に民主党」の支持者のうち、破棄賛成が70.8%、反対15.6%。一方、保守系の最大野党「自由韓国党」支持者では賛成14.6%、反対76.5%で、与野党の支持者の間で延長の是非をめぐる意識のずれが鮮明になっていた。このように韓国はふたつの国家なのである。そうであればこそ、安倍総理は文政権を倒すために今回の「禁輸措置」に踏み切ったのであろう。だが、それを担保するものは何なのか?


◎[参考動画][NEWS IN-DEPTH] Korea withdraws from GSOMIA amid trade tensions with Japan(ARIRANG NEWS 2019/8/22公開)

◆何だって報復手段になるのだ

世耕弘成経産相は22日の閣議後の記者会見で、日本が対韓輸出管理を厳格化したことへの事実上の対抗措置として、韓国政府が日本産食品などの放射性物質の検査強化を発表したことについて、「(日本の措置は安全保障上)国際的に認められた措置であり、他の分野に波及させるのは好ましくない」と述べ、韓国側を批判したという。現在の情勢の下では、ほとんど寝言にしか聞こえないコメントだ。

これほど政治をわかっていない人物が、経産大臣を務めているのだ。小学校の学級会ではあるまいし、このかんの徴用工→禁輸措置(ホワイト国除外)→WTO提訴およびGSOMIA破棄、そして放射税物質の検査強化という、一連の流れが読めないのなら政治家失格である。国家と国家が外交戦を展開しているのに、「それは本題とは違うんだ」とか、そもそも成り立つはずがないではないか。そればかりではない。

◆ふたたび文化鎖国への道

韓国のミスコリア運営本部は8月5日、11月に日本で開かれる国際コンテスト「ミス・インターナショナル世界大会」への不参加を発表している。「日本の『経済報復』に対して全国民が不買運動などを行っている時期に、日本で開かれる大会に参加することはできない」という理由だ。

主催する国際文化協会(東京)によると、世界大会は日本企業の協賛で行われ、韓国代表も毎年参加していた。大会期間中に日本国内の観光ツアーや文化体験なども含まれており、韓国のミスコリア運営本部は「日本文化や日本ブランドの広報役を義務的に行うことになる」ことも不参加の理由に挙げたという。つまり韓国は、ふたたびの文化鎖国に踏み切ろうというのだ。軍事的な手段に至っていないとはいえ、(経済)戦争なのだから何でもする。いまや可能な範囲で、総力戦が始まっているのだ。

「日本外し」の動きはスポーツ分野にも及ぶ。ソウル市は10月に予定する「ソウルマラソン大会」の協賛企業から、スポーツ用品大手ミズノの韓国法人の除外を決定したと発表。市は決定理由を「市民感情を考慮した」などとする。市によると、大会ではミズノが提供する大会記念Tシャツが参加者に配布される予定だったという。このうえ韓国が、本気で東京オリンピックをボイコットしたら、安倍晋三の名は外交をわかっていなかった無能宰相として名をとどめるであろう。


◎[参考動画]South Korea-Japan trade war tensions flare(South China Morning Post 2019/08/21公開)

◆戦争と核武装を廃棄させ、南北統一をリードせよ

左派政権であれ右派政権であれ、韓国人の本音は日本を圧倒したいのだ。そうであれば、核熱戦争を回避する南北統一でわが国を圧倒させてやればいいではないか。それが極東戦争の回避につながり、朝鮮半島の非核化を実現するのであれば、宗主国としての度量をしめすことになるはずだ。

すでに文在寅大統領は「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追い付くことができる」「経済強国として新しい未来を開いていく」と発言している(8月5日)。韓国でも現実離れしているとして真意を疑う見方が強いとはいえ、「日本経済が韓国よりも優位にあるのは経済規模と内需市場だ」「今回のことで平和経済が切実であることを再確認できた」と率直に述べ、いわばわが国を範としながら南北統一を展望しているのだ。宗主国として、手を差し延べればいいではないか。圧倒されればいいではないか。

何の展望もなく、腹立ちまぎれに経済戦争を仕掛けて、その落としどころもわからない。それがわが安倍政権なのだ。この事態を「子どもっぽすぎる」(山本太郎)というのは、至極当然のことである。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
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仮処分に対する滋賀医大病院の異議申し立て却下される! 仮処分の判断を大津地裁の裁判官6名が岡本医師の主張を全面支持! 同時に本訴6回目の弁論行われる

8月22日15時30分から大津地裁で、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内明宏、成田充弘 両医師が23名の患者さんに施術の実績がないことを伝えずに手術を行おうとした「説明義務違反」の損害賠償を求める裁判の6回目の弁論が開かれた。また前日21日大津地裁から、原告弁護団に「22日に債務者(滋賀医大)が申し立てた『異議』についての審尋結果を報告する」との連絡がはいり、急遽22日の午前中に債権者(岡本圭生医師)の弁護団が大津地裁に結果を受け取りに行ったところ、債務者(滋賀医大)の主張はすべて退けられ、5月20日に下された「決定」が引き続き維持された。

この裁判報告も6回目の期日を迎え、毎回似たような記事構成になり、読者の皆さんにも退屈される恐れがあるので、今回は同日のイベントを時系列とは逆にご報告する。

16時から弁護士会館で記者会見が行われた。

期日の説明を行う井戸弁護団長

井戸弁護団長がこの日法廷でのやり取りと、仮処分に関する説明を行った。

「午前中に保全異議についての決定が出ましたので、これについてご報告いたします。記者の方のお手元には決定の写しがあると思います。主文だけ見るとちょっとややこしい。いったいどうなっているのか、と印象を受けられたかもしれません。主文の1に書いてあることは、『7月1日から7月17日までの取り消しを求める部分を却下する』。(大学が)異議の申し立てをしたのが7月18日だったので、17日までの妨害禁止、もう過ぎたことについては、『異議の申し立てができません』そういう話です。そして第2項の7月18日から11月26日までの妨害禁止を命ずる部分を認可する』これは5月20日の大津地裁決定が、相当であるからそれを認める。滋賀医大側の異議の申し立ては認めない。そういう内容の決定です。
 理由については基本的に5月20日の決定と同じ考えに立っています。(この審尋を)構成した裁判官は仮処分決定のときと違います。いずれも大津地裁民事部の裁判官ですが、合議体は違う裁判官が構成しています。したがって大津地裁の6人の裁判官が、この仮処分を認めたと受け取って頂いてよいと思います。
 異議段階で新たに出た滋賀医大の主張に対しては、判断を示しています。1つは『岡本医師の被保全権利が特定されていない』。妨害禁止と言われても、滋賀医大としていったい何をしていいのか。何をしてはいけないのかということがわからないから、裁判所が『どこまで許されて、どこから許されないかわからないような明確ではない決定をすべきではない』という趣旨の主張です。これについては『6月まで岡本医師がしていたことを、同じ体制でやれ』と言っているだけで、特定されていないということはない。特定されている。問題ないんだという判断です。医療ユニットの内実は何なのかですか、となるわけです。
 1つは理屈の問題です。それから保全の必要性について、『7月1日以降、小線源治療はできないにしても、いままでの治療実績をまとめたり、研究活動はできるわけであって、6月間治療ができないにしても、岡本医師の教育研究活動をする権利を、制限するものではない』というのが滋賀医大の主張でしたが、小線源講座の特任教授として、どういう治療・研究活動をするのかは、岡本医師の広範な裁量に委ねられているのであり、6カ月治療をさせないでもよい、という理由は成り立たない、と明確に述べています。
 岡本医師側の主張を全面的に認めた決定である、とご理解いただいていいと思います。これに対して滋賀医大側がどうしてくるかですが、保全抗告の申し立てをしてくるか、これで断念して受け入れるか、どちらかです。しかし、大津地裁の6人の裁判官が同じ判断をしたということ。しかも5月20日付けの決定を踏まえた主張も、ことごとく退けられているわけですから、滋賀医大としてはこれを受け入れ、保全抗告をしないで今後11月26日まで、期限は切られていますが、小線源治療の実施に協力すべきであると思います。
 現在毎月の第一火曜日の小線源治療の治療枠については、岡本医師にさせないという態度をとっていますが、それも撤回して11月26日までは全面的に岡本医師の小線源治療に協力する。そういう姿勢を取るべきだと改めて強調したいと思います。
 それから本日の訴訟口頭弁論の結果を御報告いたします。準備書面は今回被告側から準備書面6が出てきました。あまり大した内容はないのですが、前回被告が使っていた「責任教授」という概念、小線源講座における責任教授が河内医師である。岡本医師は特任教授であり河内医師が責任教授であると主張していたので、『責任教授とは、なにに基づく概念なのか』とこちらが説明を求めました。それに対して『規則上定められた概念ではない。診療科や講座について、運営の責任を負う教授を指す事実上の表現である』と、なんら根拠のある概念ではないと説明をしてきました。
 そして被告側から証人尋問、本人尋問の申請がありました。従前原告側からは原告4名の本人尋問、岡本医師の証人尋問、それから塩田学長と松末病院長の証人尋問の申請をしておりました。今回被告側は被告河内・成田医師の本人尋問の申請、証人としては塩田学長、松末病院長、それから放射線科の河野医師、トミオカ氏(事務職員)、オカダユウサク(以前泌尿器科の教授)の申請をしてきました。裁判所はトミオカ、オカダ証人については必要がないと却下されました。その結果尋問をするのは、原告4人と被告の河内・成田医師、補助参加人である岡本医師。それ以外に河野、塩田、松末。10人の尋問をすることになりました。
 次回期日は10月8日11時30分に決まりましたが、次々回と次々々回が尋問の期日で、きょう証人の予定者の都合がわからないということで、正式には決まりませんでした。11月、12月、一番遅くても1月14日までに2期日取って、10人の尋問をすることが決まりました。ずいぶん先になるなと印象を受けられた方もおられるかもしれませんが、裁判所の実情からすれば、かなり熱心に前向きに、早く尋問をしようと臨まれたと思います。西岡裁判長は来年3月に転勤が決まっているそうですが3月までに判決を書くと法廷に名言されました。この事件に積極的に臨まれていると評価していいのではないか、と思います」

次いで岡本医師が見解を述べた。

厳しい表情で滋賀医大の不正を弾劾する岡本医師

「私が本学に抱いている基本的な不信感は、なにを目的に異議申し立てをおこなったかです。裁判所の時間を使い、エネルギーを使ってなにを求めているのか全く理解できません。お手元の資料にありますが6月25日に『本院における泌尿器科の小線源手術を7月から開始します』と書いてあります。ところが(泌尿器科による小線源手術は)行われていないのです。非常に由々しき問題です。
 このコメントの中には、私が治療継続していることも、一切触れられていない。つまり泌尿器科が7月から小線源治療を行うことは、1年半前からずっと言ってきたことです。仮処分に関係なくやろうとしていたのですが、実際患者さんは一人もいない。何人かそこにトラップされた患者さんたちは、私のところへ逃げてきています。話を聞くと私が並行して手術をしていることを全く説明されていない。国立病院がやれもしない、患者さんのいない計画を、いまでも世間に向けてはやっていることになっているわけです。
 もう一つは、もし我々が仮処分を打たなければ、何が起こっていたか。7月も8月も9月も患者がいないわけですから、小線源治療手術室、スタッフなにも使われないわけです。ただ手術室を空室にして、病院としての役割を果たさずに、ここにおられる仮処分後に治療を受けられた方々に、治療をさせない。これが病院にとって合理的である、管理の権利であるなどと主張していますが、言語道断です。
 このようなことを認めていたら国立病院は成り立たない。泌尿器科に患者がいて、私の治療とバッティングして手術ができない、そういう主張であれば理解できますが、実際に患者はいない。この状況で1週目の治療枠を(泌尿器科が)とって、9月に至っても手術室を使わずに患者さんの治療機会を流す(失わせる)。このようなことを院長がやっていること自体を社会は許してはいけないと思います。まったく合理性がないどころか、反社会的行為としか言いようがない。
 それから私に対するバッシングをいろいろな形でやっています。資料にある6月11日、前回の口頭弁論の期日です。この日に病院長名で『前立腺がんについて』がホームページに掲載されました。これを見ると国立がんセンターのロゴが出てきます(※この部分説明が詳細に及ぶので割愛。なお、本問題については6月28日付、黒藪哲也氏の報告を参照されたい)。「岡本の治療に来なくても他へ行ってもいい」といいたいのかもしれませんが、このような情報操作のようなものを、平気で書き出してきて病院のHPにわざわざ書く。なにを狙っているかと言えば、明らかに岡本メソッドの誹謗中傷だと思います。問題は、このような情報は患者さんの判断を混乱させることです。やっていることが幼稚・稚拙でこのようなことを国立大学病院の院長が旗を振ってやっててもいいのだろうか。倫理も教育も成立しないのではないかと危惧します」

と、滋賀医大による行為の不適切性と、理不尽さに対する強い弾劾が語られた。

そのあとに仮処分申し立て人のお二人と裁判原告のお一人が、感想を述べた。

昨年8月1日にはじまった、本裁判も1年を経過した。私は提訴時の記者会見に出席して以来、本問題を追いかけている。当初はメディアの関心が高くはなかったが、MBSが1時間ものドキュメンタリー番組を放送したり、この日もMBS、ABC、関西テレビなどのほかに10社以上の新聞記者が詰めかけていた。メディアの関心は確実に高まっている。一方滋賀医大病院の厚顔無恥ぶりは度合いを増すばかりだ。どのメディアがどんな質問をぶつけようが、滋賀医大は内容のある回答を返さない。私も数度にわたり滋賀医大の広報担当に質問をしたが、回答にならない答えばかりであった。

岡本医師の治療継続を求める、多くの患者さんの行動は、仮処分の勝利という史上初の画期的勝利を得た。私見ではあるが、本訴訟も初回からすべてを傍聴してきた感触から、原告勝利は動かないように予想する。しかし岡本医師が執刀できるタイムリミットが迫ってきているのは冷厳な事実である。滋賀医大の狙いはズバリ、時間切れによる逃げ切りだ。その証拠にこの日の法廷で証人尋問の日程調整を裁判長が提案した際、被告弁護士は、早い期日の候補日には「証人の都合がわからないので」と回答しながら、遅い期日の候補日を耳にするや「その日は大丈夫です」と口にしていた。

裁判前の集会

開廷前には恒例となった、大津駅前での患者会の集会には蒸し暑い中、約80名の方々が集まり力強い声を上げた。55席しかない傍聴席には当然入りきることができない人数だが、これも毎回のことである。22日も法廷撮影があった。MBSが法廷撮影を行うのは、これが3回目である。証人尋問の期日は未定であるが、2期日で10人をこなすため、11月後半から1月中盤までの3期日の候補を持ち帰り、調整することとなった。証人尋問まで日があくが、いよいよこの裁判は大詰めを迎える。

歴史的な仮処分勝利を得ながら、岡本医師の治療継続をどのように実現するのか。非常に困難であるが、患者会の皆さんの真剣な取り組みと、無私の行為に対して社会はいずれ「賞賛」の評価を下し、現在の滋賀医大執行部や不正に加担した人物には「歴史が有罪を宣告するだろう」。その「歴史」は思いのほか早いかもしれない。
 

大津地裁へ向かう患者会の皆さん

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

好評の『紙の爆弾』9月号は参院選挙総括号! 安倍政権の終わりの始まり

『紙の爆弾』9月号が好評発売中だ。帰省中の時間の余ったひとときに、休みではない方は仕事中のリラックスタイムに、ぜひ一冊。マスメディアではわからない政界事情、政治情勢を把握するには、話題を追うばかりの週刊誌では足りない。

 
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というわけで、参院選挙後の政治再編が特集の大ネタである。

朝霞唯夫氏は、れいわ躍進によって始まる次の展開を、政治再編としてぶった切った。まず自民党は実質的に敗北したのであって、とくに改憲発議に必要な3分の2をうしなったことで、公明党の山口那津男の「憲法を改正する必要は今、どこにあるのかはっきりしません」という言葉をすっぱ抜いている。改憲をねらう安倍政治が行き詰った以上、秋の内閣改造で今回の「小敗北」を糊塗するしかない。

はたして朝霞氏が記事で予告したとおり、小泉進次郎への入閣要請が「結婚ご祝儀」として、このかん明らかになった。まことに慧眼である。初入閣が小泉進次郎にとって、試練になるのも当然のことだが、安倍にとっては政権批判を封じる一手となる。安倍は当面の敵を入閣することで封じ、小泉進次郎の人気を取り込むことで、政権の延命をはかろうとしているのだ。

小林蓮実氏は、れいわ新撰組の選挙に貼りついていた立場から、選挙運動の実態を伝えてくれる。今後とも、山本太郎が総理大臣になるまで、ともに闘ってほしい。大山友樹氏は、公明党・創価学会の得票数の低下、得票率の低下に助けられた「勝利」をあばいてくれた。組織力の低下とともに、れいわ新撰組への現役創価学会員・野原候補への衝撃がすさまじい。いずれ、執行部は憲法問題で追い詰められるとしている。もともと平和の党なのだから。

浅野健一氏は、公安警察とメディアによる「安倍自民党勝利」が「創作」されたと指弾する。今回の選挙で顕著だったのが警察によるヤジ封じであった。大音量で演説を妨害するのならともかく、いっさいの批判を封じるやり方は独裁国家のものである。その公安警察の街頭ヤジを封殺する「警護」はメディアでも報じられたが、そのメディア自体がキシャクラブをテコに安倍応援団にまわった。とくに、れいわ新撰組をブラウン管からパージすることで、政権の意に沿おうとした。しかしその目論見は、れいわの躍進によって覆されたというべきであろう。

◆メディアの政権賛美こそ、民主主義の危機である

平岡裕児氏は「2000万円不足問題」はフェイクであり、今回の報告書は金融業界の要請にほかならないと喝破する。横田一氏は秋田県民の選択、すなわちイージスアショアを焦点にした参院選で、配備に反対する野党統一候補が自民現職を破った壮挙をレポート。巨像をアリが倒した原因を、安倍のフェイク演説にあると指摘する。

政治のフェイクを見破るほど、選挙民は成熟しているというべきであろう。問題なのは、政治離れを促進するメディアの安倍政権賛美と忖度、そして政権の顔色をうかがうメディアの体質にある。井上静氏は、ハンセン病国賠訴訟の政府側控訴断念を、安倍総理の「司法の政治利用」として批判する。NHKが安倍政権に忖度しつつ、参院選挙前の政権評価にうごいたのは紛れもない事実だ。韓国に対する「禁輸措置」とともに、これら選挙用のメディア政策があったにもかかわらず、国民が安倍にNO!を突きつけたことは明記されるべきだろう。

以上は選挙特集のうちに数えられるが、紙爆ならではの芸能ネタも健在である。本誌芸能取材班は「ジャニーズ・吉本興業・ビートたけし“事件”で見えた芸能界の真相」をレポート。片岡亮氏は「芸能人と反社」の現在をレポートしている。とくに暴力団幹部の誕生会への潜入取材は白眉である。最大の問題は、反社と手を切れない吉本興業に安倍総理が肩入れをし、あまつさえ「クールジャパン関連事業」として、100億円規模の資金調達が行われようとしていることだ。

ほかに、西山ゆう子氏の「本当に殺してないのか? 『殺処分ゼロ』の嘘と動物愛護の現実」、本誌編集部による「役員総入れ替え『エフエム東京』の内紛劇」は」スクープである。FM東京およびMXで、いま何が起きているのか? 佐藤雅彦氏の「偽史倭人伝」は、「トランプのババ抜き、安倍のスッポン抜き」日米外交のバカさ加減を喝破する。

マッド・アマノ氏の「世界を裏から見てみよう」は、大評判の映画「新聞記者」をテーマに。この「新聞記者」は、昼時のランチの場で、あるいは夕方の居酒屋で、サラリーマンたちの話題トップだ。西本頑司氏の連載「権力者たちのバトルロワイヤル」は第三回「株式会社化する世界」。巨大ITメジャーによる国家買いである。

足立昌勝氏は、刑務所医療の実態を暴露する。死刑制度をめぐる新たな動きは拙稿、8月31日に開催される「死刑をなくそう市民会議」の設立集会とその背景にある運動のうごき、および死刑問題議連について簡単なレポート。水野厚男氏は、小6社会科教科書の「天皇への敬愛の念」教化をもくろむ、文部省のうごきを批判する。主要教科書三社の記述を分析する。読み応え満載の「紙と爆弾」9月号をよろしく!

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

あおり運転男の捜査で活躍のドラレコ、もしも「あの事件」の頃もあれば・・・

常磐自動車道で悪質な「あおり運転」を行い、被害男性の車を停めさせて殴りつけた男が指名手配の末、ついに逮捕された。この男を追い込んだのが、テレビとインターネットで公開されたドライブレコーダーの動画だ。

私はこの事件に関する報道を見ながら、四半世紀以上前に起きた「あの事件」のことを思い返していた。

◆茨城県警を早期の事件解決へと駆り立てたドラレコの動画

高速道路で蛇行し、真ん中の車線で後続の車を停止させたうえ、運転席の窓を開けさせて、運転手の男性を力いっぱい殴りつける――。

被害男性の車のドライブレコーダーに録画されていたこの動画は、テレビとインターネットで公開され、容疑者の男の凶暴性は世間を震撼させた。

そんな事件は発生9日目、容疑者の男が大阪市内のマンション近くで警察に身柄確保され、ひと段落ついたが、ここに至るまでにドライブレコーダーの動画が大きな役割を果たしたことに異論はないだろう。

この動画は今回、犯行状況の証拠化や、容疑者の特定に役立っただけにとどまらない。世間にインパクトを与え、ひいては、現場を管轄する茨城県警に少しでも早く事件を解決しなければならないという使命感を抱かせた。だからこそ、茨城県警は容疑者を指名手配するなど意欲的な捜査を展開し、それが早期の容疑者検挙につながったのだ。

そんな一連の流れを報道で見つつ、私が思い返した「あの事件」とは、いわゆる「飯塚事件」のことだ。

◆ドラレコの活躍に思い返す飯塚事件

1992年2月、福岡県飯塚市で小1の女児2人が朝の登校中に失踪し、学校から数十キロ離れた峠道沿いの山林で遺体となって見つかった「飯塚事件」では、2年後、失踪現場の近くで暮らしていた男性・久間三千年さん(当時54)が逮捕された。久間さんは一貫して無実を訴えながら、2006年に最高裁で死刑が確定、2008年に死刑執行されるに至った。

だが、有罪の決め手となった警察庁科警研のDNA型鑑定が当時はまだ技術的に稚拙だったことが次第に知れ渡り、今では冤罪を疑う声が非常に増えている。久間さんの遺族も無実を信じ、再審(裁判のやり直し)を請求している状況だ。

では、私がなぜ、あおり運転事件の経緯を見つつ、飯塚事件のことを思い返したのか。

それは、飯塚事件の頃にドライブレコーダーが今くらい普及していれば、久間さんは容疑者として検挙されず、別の人物が真犯人として検挙されていたのではないかと思えるからだ。

◆ドラレコがあれば「真犯人」が検挙されていた可能性も

飯塚事件は、DNA型鑑定のことばかりが注目されがちだが、久間さんの裁判では、ある目撃証言も有罪の有力な根拠とされている。しかし、この目撃証言も疑わしいものだった。

その目撃証言の主は、急カーブが相次ぐ峠道を車で下に向かって走りながら、路上に停車していた「久間さんの車と酷似する車」を目撃したかのように供述していた。その車の停車場所は、道路脇の山林に被害者たちの衣服やランドセルが捨てられていたあたりだったため、この目撃証言は久間さんの裁判で、有罪の有力な根拠とされたのだ。

しかし、この目撃証言の主は、わずか10秒程度すれ違っただけに過ぎないその車やそのかたわらにいた「不審な男」のことを不自然なほど詳細に供述していた。案の定というべきか、再審請求後、弁護側に鑑定を依頼された供述心理学者もこの目撃証言は信用できないと結論づけている。かくいう私もこの目撃証言はまったく信用できないと思うから、飯塚事件が起きた頃、ドライブレコーダーが今くらい普及していれば・・・と、つい思ってしまうのだ。

ありていに言えば、目撃証言の主の車にドライブレコーダーが備え付けられていれば、久間さんとは別の真犯人や、真犯人の車が撮影されていた可能性があると私は考えている。また、久間さん自身の車にドライブレコーダーが備え付けられていれば、久間さんは事件に無関係であることが証明された可能性があるとも思う。タラレバの話をしても仕方がないが、そういう話をしたくなるのは、私がこの事件を冤罪だと確信しているからだ。

この10月で、久間さんの遺族が再審請求をしてから、ちょうど10年になる。再審請求の可否は現在、最高裁で審理されているが、少しでも早く公正な判断が下されて欲しい。

このあたりで「久間さんの車と酷似する車」が目撃されたことになっているが・・・

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。著書『平成監獄面会記』が漫画化された『マンガ「獄中面会物語」』(著・塚原洋一/笠倉出版社)が8月22日発売。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

N国党と山本太郎新党の同時抬頭が孕む、危険な二大政党制時代への道

不良と秀才がともに人気者になる。いまは知らぬが30年ほど前の中学・高校ではよく見られた現象である。わたしは不良でも秀才でもないから、いつも傍観者であった。いま『NHKから国民を守る党』の立花孝志と『××○○組』党首の山本太郎氏の言動を見ていると、その程度が本質だろうと感じる。

◆極右勢力再編の触媒の役割を果たすN国党

『NHKから国民を守る党』の立花隆じゃなかった、立花孝志氏はかつて自身を『Youtuber政治家』と称したことがあった。非常に的確に自己分析ができている。が、加えて『極右』であることも正直に告白すべきだったろう。

立花氏と直接話を交わしたのは1度切りだが、彼のネット上での「活躍」(?)は何度も目にしていた。若者は新聞はおろかテレビにすら興味をを失い、インターネットが最も身近な情報源となっているこんにちにおいて、立花氏の半分危険なNHKをターゲットとした、集金人撃退や電話での激怒シーンに留飲を下げた視聴者も少なくなかったのではないか。

ところが、『NHKをぶっ壊す!』だけが主たるマニフェストであった、立花氏率いる『NHKから国民を守る党』は議員会館の個室にテレビがあることを知ると「法律で定められているから『契約』は結ぶ、が受診料は払わない」と宣言。しかし数日もおかずに、理屈が全く理解できないが「8割の受信料は払う」と、さっさと敗北・白旗を上げてしまった。

その代わりなのかどうかは知らないけれども「北方領土返還のためには、戦争しかない」との本音を発露し、維新から除名された丸山穂高衆院議員議員に急接近したり、もう役割を終えたと思われ、多くの人々が忘れていた渡辺喜美氏に「みんなの党」再興を促し統一会派を組むに至った。渡辺喜美氏は橋下徹氏を熱心に応援したファシストであり、自民党の極右路線の中で存在が希薄化していたが、思わぬ触媒により息を吹き返した。

このように『NHKから国民を守る党』は選挙前に立花氏が述べていた通り「理念もありませんし、大きくなりすぎると怖いから党は解散します」が妥当であったのが、いまや「NHK」との対決ではなく、某タレントに攻撃目標を変えながら、政界では極右勢力再編の触媒の役割を果たしている。

非常にたちが悪い。


◎[参考動画]放送法4条違反をしているテレビ局に出演しているマツコ・デラックスに対するデモ行為は今後も続けて参ります(立花孝志 2019/8/16公開)

◆山本太郎氏人気に危険な米国型2大政党誕生の萌芽をみる

一方、山本太郎氏が立党した『××○○組』(天皇制を肯定しないわたしには、あまりにも破廉恥すぎるから、その党名を記すことができない)は、選挙後一気に注目を集め、勢いが収まる気配はない。三流評論家で極右の三橋貴明氏の番組に出たのは、選挙前だったようだが、その後もいわゆる、「MMT」(Modern Monetary Theory=大きな政府、財政出動、自国通貨で国債を吸っている限り破綻はしない)にすがりたい、三橋氏同様の低レベルな藤井聡氏、はては「チャンネル桜」からも一定の評価を得ている。

広範な支持はいいだろう。山本太郎氏が掲げる「消費税廃止」、「累進税率の引き上げ」、「法人税の引き上げ」にはわたしも全く異論はない(彼が主張する前からこのことは主張してきた)。ところが三橋氏は「アベノミクス」賞賛者であり、藤井氏も、最近に至るまで「消費税廃止論」を聞いたことはない。ましてやチャンネル桜が、政策の一部とはいえ山本太郎を応援するなど想像できなかった。


◎[参考動画]【三橋貴明×山本太郎】Part1 絶対にTVでカットされる国債の真実(「新」経世済民新聞 三橋貴明 公式チャンネル 2019/3/18公開)

山本太郎氏は自身を「オポチュニスト」と語っているそうだが、三橋貴明氏や藤井聡氏。差別者の集まりチャンネル桜は山本太郎氏どころの「オポチュニスト」ではない。80年代消費税導入の前に内容は同じだが「売上税」との名称で政府が導入を強行しようとした時期があった。時はバブルのまっただなか。わたしの通う大学の前の通りには、政治に無関心な学生も「売上税絶対反対!」、「売り上げ税 右も左も 絶対反対」といった具合で、「自分が買うものに3%の言われなき税金がかけられることへの」健全な反対があったことが記憶にある。

それ以降は予想通り。あれよあれよというまに、次々と税率が上がり、近く消費税は10%に増税されることがきまっているらしい。この天下一の悪税は税率が上がるほど逆進性が強まる。山本太郎氏の指摘する通りだ。だから「究極的には消費税の廃止」を求める山本氏が立党した政党の「消費税」に対する姿勢に異論はまったくない。

けれども、財政出動はいいが、5兆円を超えた軍事費の削減、や自衛隊の存置についての議論はまったく彼の口から聞かれない。だから三橋氏や藤井氏、チャンネル桜といったいかがわしい連中が、安心して『××○○組』の政策を部分的にせよ評価できるのだ。思い返してほしい。山本太郎氏は園遊会でアキヒトに手紙を手渡した人であることを。そして、これまで一度も公然の場で天皇制批判をおこなったことのない人であることを。


◎[参考動画]【直言極言】戦後日本のなれの果て、山本太郎の皇室軽視について(SakuraSoTV 2013/11/1公開)

6年前、無所属で参院選に出馬したとき、彼の周りには「政治の素人」だけではなく、新左翼(組織された、あるいはノンセクトの)が付きっ切りで応援していた。

日韓問題について質問を受け、「ようは国益の問題だと思うんですよね。日韓の間には6兆円の貿易がある。インバウンドでたくさん観光客も来ている。それをチャラにしちゃうのかっていう視点がないですよね」

もうたくさんだ。!

「国益」、「経済」?あなたの口からそういう言葉が発せられるのは、いよいよ末期症状だ。末期症状とは『××○○組』を核にして次期総選挙もしくは参院選で、米国のように極めて危険な2大政党(かつての民主党とは違う)が誕生する萌芽ををわたしはみるのだ。

山本太郎氏は日韓の歴史を知っている。河野洋平の不肖の息子河野太郎外相よりも、朝鮮半島民衆の抗日史を知っている。その彼が「国益」を口にする。稲川淳二の怪談よりも背筋が冷える。


◎[参考動画]山本代表生出演“天下取り”への勝算は(ANNnewsCH 2019/8/3公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

NHKがキャンペーンする「昭和天皇の反省」  田島道治ノート「天皇拝謁録」

◆史料の焼き直しである

NHKはいまごろになって、何を言っているのかという印象だ。NHKが鳴り物入りで「第一級史料」としている元宮内庁長官・田島道治「天皇拝謁録」である。昭和天皇の戦争への反省を強調して、その思いが吉田茂(国民に選ばれた宰相)の輔弼によって遮られた。それゆえに昭和天皇の戦争責任および「反省」は、言葉にされないままになった、というものだ。

これが事実ではあっても、ことさら目新しいものではない。じつは先行する書籍が何冊もあるのだ。しかもそれらは、ほかならぬ「拝謁録」の記録者・田島道治の日記をもとにしている。

したがって「拝謁録」は、『昭和天皇と美智子妃 その危機に――「田島道治日記」を読む』(加藤恭子・田島恭二、文春新書、2010年)の原資料と考えてよい。その元本は『昭和天皇と田島道治と吉田茂――初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』(加藤恭子、人文書館、2006年)および『田島道治――昭和に奉公した生涯』(加藤恭子、阪急コミュニケーションズ、2002年)である。

不案内な人たちのために解説しておくと、「拝謁録」にある東条英機への「信頼」と「見込み違い」は、そのまま戦犯批判として「A級戦犯合祀問題」に顕われている。この東条英機に関するくだりは、ほんらいは戦犯訴追される身であった昭和天皇が、東条らA級戦犯を批判することで戦後象徴天皇としての地歩を占めてきたことにあるのだ。

◆靖国神社不参拝は、戦争責任からの逃亡である

すなわち『昭和天皇語録』にも収録されている「富田メモ」(元宮内庁長官)の「私は或る時に、A級が合祀され、その上、松岡、、白取(白鳥)までもが、筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが、松平の子の今の宮司がどう考えたのか 、易々と松平は、平和に強い考えがあったと思うのに 親の心子知らずと思っている だから 私あれ以来参拝していない それが私の心だ」と、靖国参拝を拒否することで戦犯と一線を画し、戦争責任を逃れたのである。

2006年7月21日付け日本経済新聞より

鎮魂の旅を重視した平成天皇、その意思を継承する令和天皇はともかく、大元帥だった昭和天皇は、軍人・軍属への「責任」と「謝罪」のために、靖国神社に参拝するのが道義的な責任ではなかったか? その意味では、戦争責任を「下剋上だった」とすることで、戦犯たちに押し付けた脈絡のなかに、昭和天皇「拝謁録」はあるのだ。三島由紀夫が昭和天皇を「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし」と、磯部浅一に呪詛させた(『英霊の聲』)のは、この変わり身のゆえである。

とはいえ、軍部の「下剋上」のなかで、天皇が何もなしえなかった「悔恨」は事実であろう。今回の「拝謁録」に、ことさら虚偽が書かれているわけではない。「終戦というかたちではなく和平のため」にとある。これは「どこかで一度、有利な戦いをやって」「和平に持ち込めないものか」という発言として『昭和天皇語録』ほかにも収録されている。真珠湾攻撃の成功いらい、「戦果がはやく上がりすぎるよ」「ニューギニア戦線に陸軍機は使えないか?」「(特攻作戦は)そこまでやらねばならなかったか」など、第一線の情勢をめぐる大本営陸海軍部の代表への「御下問」も有名な話だ。昭和天皇はまぎれもなく、陸海軍を統括する最高司令官・大元帥だったのだ。

そして「反省」「悔恨」として「私ハどうしても反省といふ字をどうしても入れねばと思ふ」と田島長官に語り(昭和27年2月20日)、「反省といふのは私ニも沢山あるといへばある」と認めて、「軍も政府も国民もすべて下剋上とか軍部の専横を見逃すとか皆反省すればわるい事があるからそれらを皆反省して繰返したくないものだといふ意味も今度のいふ事の内ニうまく書いて欲しい」というのも事実であろう。

これにたいして、吉田茂が「戦争を御始めになつた責任があるといはれる危険がある」、「今日(こんにち)は最早(もはや)戦争とか敗戦とかいふ事はいつて頂きたくない気がする」などと反対したのも事実であろう。それゆえに昭和天皇は、在位50年にさいして「(戦争責任という)文学的なことには不案内である」としてきたのだ。

◆「戦争への反省」を継承した令和天皇

ひるがえってみるに、平成天皇の「さきの大戦への深い反省」は、昭和天皇の薫陶であったのだろうか。あるいは「退位論」におびえつつも、天皇家においては戦争への「痛苦な反省」が語られていたのだろうか。わたしは本欄で何度か、皇室の民主化こそ、天皇制の骨抜き・政治権力との分離につながると提起してきた。

元号や天皇制、あるいは天皇・皇室という存在そのものを批判、あるいは「廃絶」「打倒」などを唱えるのも悪くはないが、そこから国民的な議論は起きない。国民的な議論を経ない「天皇制廃絶」はしたがって、暴力革命や議会によらないプロレタリア革命などが展望できないかぎり、ほとんど空語であろう。コミンテルンとパルタイが30年代テーゼで天皇制廃絶を打ち出してから1世紀ちかく、新左翼が反差別闘争と反天皇制運動を結合させてから半世紀ほど。

いま、昭和天皇が「戦争を反省」していたと、国民的に知られることになった。そこから先に必要な議論は、その「反省」をもって戦争に向かう政治勢力への批に結びつけることにほかならない。8.15の追悼式で「戦争への反省」を継承した令和天皇をして、天皇という伝統的な朝廷文化と安倍軍閥政権が相いれないことを、認識させることこそ戦争回避の道ではないか。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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8月15日に際して あの時代といま、人間のどこが進歩しているのか?

人間(文明)が時間(歴史)とともに「進化」、「進歩」しているという「希望的妄信」は21世紀に入り、より一層怪しくなってきているのではないか。人間が生み出す科学技術は思想をもたないから、従前の蓄積を破棄したり無化することなしに新たな技術が開発される。しかし科学技術の新たな開発は人間の「進化」や「進歩」とはまったく関係ないどころか、人間の退行を引き起こす。

◆技術の進歩と人間の退行

インターネットがあれば、たいがいの疑問や情報を瞬時に得られるが、これは個々の人間の能力が向上したのではなく、「自ら体を使って調べる」行為からどんどん離れて行っていることを意味する。英単語の意味を調べるのには、英和辞書を開き、意味の分からい単語をページを繰りながら探す行為が当たり前だった。面倒くさいといえば面倒には違いないけれども、単語を探す過程で、「この単語のあとのページにあるのか。熟語ではこう用いられるのか。なんだ! 前にも調べていたじゃないか」という「回り道」を経験された方は少なくないであろう。あの「回り道」の時間こそが有機的に知識を広げるためには不可欠な「学び」の手順であり、それゆえ身に着くものが付加的に生じていたのだ。

日々の事務仕事でも同様だった。同じ作業をこなすけれども、どうやったら時間をかけずに完了できるか、効率の良い方法はないものかと知恵を絞るのが、個々の脳に対する刺激であり、設問であった。

デジタルが席巻したように思われる、こんにちの社会ではそのような作為が「無駄」と不当に評価される。義務教育でも持ち込みが許される電子辞書の利用は、確実に生徒の頭脳の低下を招いているし、スーパーコンピュータの演算速度が1000倍になっても会社員の残業は減らない。

おかしいじゃないか。そろばんを使って計算していた時代の1億倍の演算処理能力を皆が目の前のパソコンに持っているのだから、定型業務は1億分の1とは言わないけれども、仕事にかかる時間はなぜ激減しないのだ。

猛暑で頭がどうかしてしまったから、ボヤキ漫才のように愚痴をならべているのではない。科学技術の進歩が誘因する「人間の退行」の惨状を直視すると、「あなたたち、これでいいんですか?」と問わざるを得ないのだ。

◆わかりきっていることを発信できない、発言できない

米国では毎年何度も学校や人込みでの「銃乱射事件」が発生する。そのたびに紋切り型の報道がこの島国の新聞などでもなされる。

馬鹿じゃないかと思う。

兵器産業と政権が結びつき、戦争を筆頭とする定期的な兵器の棚卸と、小売りを続けなければ収支が持たない。「米国」という国家の犯罪性に切り込むことなしに、「銃乱射事件」を止めることなどできないことがどうしてわからないのだ。「銃乱射事件」実行犯の出自や日頃の言動をほじくりだしてなにがわかる。簡単に銃器が入手できる社会病理を「民主主義国」の擬態を被った米国が演じている欺瞞を撃たずに、何が解消するというのだ。

わかりきっていることを発信できない。発言できない。言わない。これが人間の退行でなくてなんだというのだ。この島国には「忖度」という便利かつ恥ずかしい文化がある。諸悪の根源であるとわたしは確信するが、世界は表層のホコリや汚れ、葛藤が拭き取られたように「報じられて」いるけれども、その実、人間の退行は恐ろしい速度で進行してはいまいか。

◆「戦争にルールがある」という違和感

被害者がかつての加害者に、同様あるいはそれ以上の暴虐をはたらく。こんなもの正義でもなんでもないだろう。イスラエルのパレスチナへの暴虐を許容する世界は19世紀のそれと変わらない。20年近く自宅軟禁や逮捕の憂き目にあっていたアウンサンスーチーは軍政とテーブルの下で取引を終えると、途端に少数民族弾圧に手を付けた。よくぞ騙してくれたな(騙されたわたしが馬鹿だったのだ)。「人々の夢を実現するのがわたしの仕事です」の言葉で、それ以前に感じたことのない感動を感じたわたしが馬鹿だったのか、変節した彼女が卑劣なのか。

侵略の歴史を、なにもなかったように横においておいて、韓国攻撃に嬉々とする安倍を中心とする「帝国主義」の復活勢力と、それに便乗する産経を筆頭とするマスコミと庶民。そこにあるのは、第二次大戦中に「国家の一大事」だからと進んで「大政翼賛会」を構成した社会大衆党(自称無産者政党であった)と強圧ではなく、みずから進んで「満州事変」に歓喜した厚顔無恥な大衆の姿もあった。

あの時代といま。人間のどこが進歩しているといえるのだろう。昨年までは「仮想敵国」であった朝鮮が飛翔体を発射したら「Jアラート」なる警報を鳴らし、分別のありそうな大人が「避難訓練」までしていた。あの偽りの危機感はどこへ行ったのだ。朝鮮は最近でも飛翔体を打ち上げているではないか。それでも去年までとはうってかわって、安倍はゴルフに興じている。おかしいだろう。わたしがおかしいのであれば、下段にメールアドレスを明記しているのでご指摘いただきたい。

そして最後に、かねがね疑問であったことを初めて書く。それは「戦争にルールがある」ことである。戦争=殺し合いにルールがあることにわたしはいたく違和感を感じ続けている。捕虜の扱いに関するジュネーブ条約。宣戦布告を戦争開始と定めた不可思議な国際法。これらはいずれも「戦争が起こる」ことを前提に(良心的に理解すれば、その被害を最小にとどめるよう)結ばれた国際法だ。

つまり、国際法は「戦争」という究極の野蛮行為が、「起こり続けること」を是認しているのだ。はたしてこれが「理性」だろうか。真っ当な神経だろうか。なにがあっても「戦争だけは起こさせない」との至極当たり前の前提に2019年8月15日世界は遠く及んでいない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)