滋賀医科大学附属病院問題をめぐるMBSのTVドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」今晩深夜0時50分より放送!

前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学附属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が6月30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。

◎MBSのドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~」
https://www.mbs.jp/eizou/backno/190630.shtml

 
MBSのドキュメンタリー「映像'19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」6月30日深夜(7月1日午前)0時50分放送

滋賀医大病院をめぐる問題については、本通信でも継続的に取り上げてきたが、いよいよ在阪キー局であるMBSが1時間のドキュメンタリーを今夜放送する。

MBSはTBS系の大阪にある放送局だ。歴史的にTBSへの対抗心が強く、これまでも優れた報道番組を多数生み出してきている。滋賀医大病院問題とは関係ないが、わたしたちが子供のころから現在まで続く「仮面ライダー」シリーズをテレビ化したのも、MBSだった。

「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」のディレクター、橋本佐与子氏が、取材班とともに問題の現場へ登場されたのは、今年の早い時期だったと思う。滋賀医大病院問題については、わたしが関わる前から、朝日新聞が継続的に報じていたが、テレビメディアで継続的な取材・報道を続ける局はなかなか出てこなかった。患者会の皆さんは昨年の秋以降、短期間で2万8千筆の署名を集めた。「岡本医師の治療継続」を求める声は、厚労省、文科省、国会議員へ届けられた。その場面にも橋本ディレクターはじめ、MBS取材陣の姿があった。

しかし、まさか1時間もの長編ドキュメンタリーを放送することになろうとは、わたしも考えなかった。大手メディアとは異なり、小さな影響力しか持たないわたしのようなフリーライターにとっても、橋本ディレクターとMBSのアクションは、うれしい誤算だった。この問題を取材し、話すと「ああよくある医学界の話ね」と反応する方が少なくない。正直な感想なのであろうが、こういう問題が「よくある」ことであってはならない、とわたしは痛切に感じる。

たとえば、現在滋賀医大のHP「病院からのお知らせ」には、6月11日に「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載されているが、その内容は国立がん研究センター発表の報告を、明らかに改ざんしたものだ(この問題については6月28日、本通信で【[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん──岡本メソッドに対する印象操作か?】が黒藪哲哉氏により報告されている)。

こういう明らかな改ざんが、病院長の名前で堂々と行われて問題はないのか?
黒藪氏の報告の中に映像が紹介されている。この映像(https://youtu.be/w3rPzAk9G3E)をぜひご覧いただきたい。

質問をする女性に対して事務職員は、明確に「この資料は国立がん研究センターが作成したものです」と語っている(映像では質問者と回答者の名前も確認することができる。不審に思われる読者諸氏は滋賀医大病院の当該職員に直接確認されたい)。

 
滋賀医大小線源患者会HP

さらに、6月25日にも「病院からのお知らせ」に、一部明らかな虚偽が掲載された。

続発する問題の発生源、滋賀医大病院を橋本ディレクターはじめMBS取材陣はどのように描き出すのか? 視聴可能区域にお住まいの方は、是非ご覧いただきたい。拙宅にはテレビがないので、わたしは既に知人のお宅にお邪魔する準備を整えた。なお、滋賀医大病院にかかわる問題の総体は、以下のサイトに詳しく掲載されている。引き続き正当な「解決」を見届けるまで、この問題は追及したい。

◎滋賀医大小線源患者会HP https://siga-kanjakai.syousengen.net/

◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

安倍イラン訪問と国益の危機 ── タンカーが攻撃されて戦争が起きようとしていた時、この男は何も出来ずに晒しものになっていた!

◆単に「会った」というだけの外交

帰国した安倍総理が、イラン訪問の「成果」を誇っているという。銀座のステーキ屋で森喜朗元総理らと会食し、「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に会えたのは自分だけだ」と「成果」を誇示したというのだ。

自分の訪問中に日本の企業の船舶が「攻撃」され、帰国後にはアメリカの無人機偵察機が撃墜されるという交戦事態が起きた。これが偶発的なことではない証拠に、アメリカは戦争を準備していたのだ。帰国と入れ替えにアメリカによる「戦争の危機」が迫っていたというのに、この男はそれを「成果」だと言っているのだ。

つまり、国際的な政治危機のなかで、なんら具体的な政策を持たずにイランを訪問してみたものの、アメリカの説によればその訪問国によって自国のタンカーが攻撃され、みずから「同盟国」としているアメリカはイランを攻撃しようとしていたのだ。悪くすれば、アメリカとイランが戦争を始めているなかで、安倍は出国できなくなる可能性すらあったのである。


◎[参考動画]“仲介役”の安倍総理 イラン最高指導者とも会談(ANNnewsCH 2019/6/13公開)

◆訪問が戦争への「最後通牒」になっていた可能性も

そもそも今回のイラン訪問の最大の目的は、アメリカとイランの「対話」を仲介することだった。そしてそれは、ハメネイ師によって明確に否定されたのだ。「アメリカは体制転覆を狙う意図を持っていない」というトランプ大統領のメッセージが、安倍首相を通じてイラン側に伝達された。これに対してハメネイ師は「アメリカは体制転覆の意図を持っていないのではなく、体制転覆を引き起こす能力を持っていないだけだ」と喝破したという。

「トランプはメッセージをやりとりするには、ふさわしい相手ではない」(ハメネイ師)と言うのを、黙って聞いているしかなかった安倍総理が「日本外交の成果」などと言えたものか。もしも20日のイラン攻撃が中止(10分前にトランプがビビった)されていなかったら、安倍総理は「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に最後通牒を伝えたのは自分だ」ということになっていたはずだ。植民地国のかいらい政権よろしく、アメリカの「特使」のような立場でイラン訪問をしていたことになる。

アメリカは10年に一度は戦争をしないと成り立たない、軍産複合体(産業関係者は家族をふくめると3000万人で、人口の11.5%にあたる)を、その社会に抱えている国家だ。戦争が産業であり、戦争をやめてしまうと失業者が出る戦争国家なのだ。したがってその外交は平和を維持するためにものではなく、戦争を生じさせるために緊張感を高める役割をもっている。今回、安倍総理はアメリカの戦争のためにイランを訪問した。その本質をあますことなく暴露するものとなった。

◆歓迎されてあたりまえの日本とイランの関係

イランは親米だったパーレビ国王を倒したイスラム革命(「アメリカに祖国を売るシャーに死を!」)から40年である。反米思想は社会の隅々にまで浸透している。中東諸国では初等教育時から広島・長崎の原爆投下の残虐性が教育されているという。トルコやイランなど、中東諸国が日本に友好的なのは、ロシアの脅威を日露戦争が取り除いたことに始まり、イランにおいては日章丸事件での日本の原油輸入によるものだ。

すこし解説しておくと、1953年当時イギリスが支配権を継続していたイランの原油を、出光石油の日章丸が海上封鎖をくぐりぬけて日本にもたらしたもので、イギリスの植民地支配を最終的に終わらせる結果となった。いわばイラン独立を日本が支援したといえるのだ。

こうした両国の歴史から、安倍総理が歓待されるのは当たり前のことなのである。出光佐三および出光計助ら当時は中小企業にすぎなかった出光石油の功績によるものなのだ。イランをよく知るジャーナリストによると、1991年湾岸戦争直後に、イラン領内に逃れたクルド難民支援をしているNGOに携わるボランティアとしてであったが、「日本は、次はいつアメリカと戦うんだ、次回は事前にイランにも教えてくれよ」と事あるごとにイラン人に言われるのに閉口したという。

そんな反米思想をもっているイランに、こともあろうか安倍総理はアメリカの手先として訪問したのである。トランプが離脱した核合意など、もっぱらアメリカへのおもんぱかりで、日本のイランからの原油輸入はかつての30%近くから一桁にまで減っている。その分、サウジなど価格の高い国から買わざるをえない、国の損益を招いてきた。安倍外交は、まさに国益を損ずることにのみつながりそうだ。

日本の貿易会社がチャーターしたタンカーが攻撃をうけても、ソマリアに派遣されている自衛隊護衛艦あさぎりは動かなかった。アメリカが派遣している空母打撃団がイランに攻撃されたら、どう動くのだろうか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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日本は多言語社会になりうるか?──言語とメディアリテラシー(前編)

最近は外国からの移住者が増え、教育の現場でも外国にルーツを持つ児童が増えてきたし、地域によっては横浜のいちょう団地のように住民の4分の1が外国籍というところも出てきた。ここまで来ると、日本語だけわかればよいという状況ではもはや対応できない。

日本では言語教育については、ほとんど英語と日本語の2つだけについてしか論じられない。「グローバル化の急速な進展に伴い英語は必須」「国語力がしっかりしないとどっちもつかずになる」といった賛否両論がある。私にはこれらの類の議論には、メディアリテラシーを高めるためだという観点が決定的に欠けているように思えてならない。


◎[参考動画]10ヵ国の児童が学ぶ 驚きの多国籍小学校(SUMIYA Spa & Hotel 2019/1/13公開)

日本語で「韓国人 ムスリム」と検索した様子

◆言語とメディアリテラシー

そもそもなぜ外国語を学ぶのかというと、海外との接点を持ちそこから情報を集め、視野を広めるためである。英語はあくまでそのためのツールにすぎず、より本質を突き詰めると「他の言語を使いこなしそれによって多角的に物事を俯瞰できる」能力が重要になる。

言語が異なると同じテーマであっても、発信情報はかなり異なってくる。韓国について日本語で検索するとネガティブな内容が多い。例えば、Googleで「韓国人 ムスリム」と検索すると韓国人によるムスリムへの差別的な行為などがヒットする。韓国は悪い国だと言いたい内容が多い。

しかし、英語で「korean muslim」と検索すると韓国人の改宗者の話などがヒットする。中立的な立場から韓国におけるムスリムの状況が書かれている。同じことでも言葉が異なると、検索結果も異なるのである。これが日本語や英語だけではなく、中国語やフランス語などの検索結果なども含めると様々な視点を得ることができよう。

英語で「korean muslim」と検索した様子

(余談だが、日本人が想像している以上に韓国の国際的な評価は高いと思われる。あるチュニジア人女性と話した時に韓国について聞くと、アラブ世界では韓国は「礼儀正しい国」「イノベーションの国」と認知されているという。また韓国ドラマも多数アラビア語に翻訳され、チュニジアでも放送されているとのことであった。私たちはアラブ世界やヨーロッパといった第三者の観点から韓国を見ることが重要なのかもしれない)

日本語は日常生活から高度な学問用語まで網羅しており、日本で暮らすにあたっては日本語しか理解できなくてもビルの清掃員やバーテンダー、プログラマーや大学教授、ペットショップの従業員に至るまで様々な職に就くことが可能である。しかしメディアリテラシーの観点から考えると、日本語しかわからないということは極めて致命的なことである。

そもそも日本語を公用語している国は日本だけである。そのため、日本語で発信された情報の圧倒的多数は日本発になる。それは日本一国からの視点に偏りがちになる。英語ならば公用語とする国は米英の他にシンガポール、ケニア、フィジーと数多く、よって英語で発信された情報は様々な国からの視点を持つ。スペイン語にしても公用語とする国は、メキシコ、アルゼンチン、赤道ギニアなど数多く、やはりスペイン語で発信された情報も多くの視点を備えている。多くの日本人は日本語しか理解できないため、ネットで情報収集する時も日本語で検索しがちである。その結果、日本的視点でフィルタリングされた情報ばかりを取得することになる。

過去に話したことのあるシンガポールからの帰国学生の意見によると、日本政府は「日本人が海外の情報を閲覧しないように英語能力をあえて低くしているのではないか」とのことであった。真偽はともかく、これは政府にとっては極めて都合がよいことである。日本語しか理解できないゆえに国民が「自発的」に日本から発信された情報しか見ないとすれば、中国のようなファシズム大国のようにわざわざ高度な検閲システムを構築しなくてもすむからである。(つづく)

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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見当ちがいの年金改革 在職老齢年金制度(減額制度)の見直しとは? 

厚生労働省は、給与のある高齢者にたいする「在職老齢年金制度」の廃止・縮小を検討する方針を決めた。給与を得ている年金対象者が、年金を減額されることから、働かなくなるのを防止するための措置である。

具体的に、現状の制度をみてゆこう。60歳以降で給与と年金の合計が28万円を超えると、超過分の半額を年金から差し引くことになる。たとえば給与が20万円で年金が14万円の人の場合、34万円-28万円=6万円÷2=3万円。つまり3万円が年金から差し引かれ、手取りは28万円+3万円で、収入31万円ということになる。だったら、給与を17万円に抑えようということになるかもしれないが、この程度なら気にすることもないはずだ。

給与が35万円、年金が25万円の場合はどうだろう? 35万円+25万円で60万円の収入がある人は、60万円-28万円=32万円÷2=16万円で、収入が44万円ということになるはすだが、そうではない。現行制度では60歳以上で47万円を超える場合は、超過分の全額が差し引かれるので、60万円-47万円=13万円(超過分)で、60万円-13万円となり、収入47万円ということになる。60万円が47万円になるのだから、35万円も稼がずに22万円でいいや、となるかもしれないのだ。ちなみに、65歳以上は47万円から半分減額である。減額されるのなら、仕事を辞めようと思うかもしれない。

◆5人に1人の「減税」措置

そこで減額制度の廃止・縮小をとなってきたわけだが、これは実態をかけ離れているのではないだろうか。60歳以上64歳までで現行制度の対象になっているのは約88万人、65歳以上では36万人である。人口比では、ほぼ五分の一と考えていいだろう。つまり5人に1人のための減税措置なのだ。思わず減税措置と書いてしまったが、年金を減額しないということは年金拠出の増加である。その年金が税収から捻出せざるをえない将来を考えると、これは明らかに高額所得層への「特定減税」であろう。そしてこの年金減額分の見直しでは、1兆円の拠出が見込まれているという。将来世代の年金の食いつぶしである。

考えてもみてほしい。ふつうのサラリーマンは定年後、企業に嘱託として残る道しかない。現役時代に額面40万円だった給与は20万前後に減額され、諸手当も出なくなる。いや、いまどき額面40万円というのは大手企業、および大手の傘下にある中堅企業であろう。中小零細のサラリーマン・労働者は年収300万すなわち25万前後の給与がふつうではないか。いや、40歳代のロストジェネレーション世代においては、時給1000円すなわち年収200万弱、月額給与15万円がいいところではないだろうか。つまり年金改革は社会のうわずみの人々を対象にしたものにすぎないのだ。

◆年金制度は国が補償せよ

現行の年金制度では、定年後2000万円が別途に必要になると政府は言う。国は面倒をみきれないから、若いころから投資運用などで蓄財をはかれというのだ。失敗つづきの年金基金の株式運用を真似ろというのだろうか。蓄財をはかれという方針自体、消費の低下をうながす経済政策にほかならない。物価は徐々に上がっている。しかるに給与は企業の内部留保(400兆円)によって抑えられたままだ。これで景気が良くなるはずはないのだ。

われわれ国民は、破綻に瀕している年金制度を「保証」せよとはもう言わない。国民の生活を年金で「補償」しろと言っているのだ。なぜならば、政府はそれ自体、そもそも国民の税金で成り立っているのだ。政治家はもとより、省庁の官僚・職員・自治体職員は、国民への公共サービス産業の従業員なのである。税収が途絶えれば、即座に食い扶持をうしなう公共サービスの役人・政治家たちが高給を取りながら、働き手である国民の年金の増減を操る構造こそ、おかしなものではないか。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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秋篠宮が会見 小室さん問題の迷走と皇位継承問題

秋篠宮が会見をひらいた。27日からの海外公式訪問(ポーランド・フィンランド)を前に会見されたわけだが、注目されたのは、もちろん小室圭さんと眞子内親王の婚約問題についてである。「結婚の件については、わたしは娘から何も聞いていません」というものだった。昨年の「それ相応の対応をしなければ」「国民に理解されない状態では納采の儀もみとめられない」から比べると、いくぶん穏やかな雰囲気だった。しかし、何も聞いていないというのは、ふつうの家庭では考えられないことだ。皇族の中でも自由な家庭を築こうとしてきた秋篠宮家において、親子の会話がないことが端無くも露呈したかたちだ。


◎[参考動画]秋篠宮ご夫妻が会見 代替わり後初の外国訪問を前に眞子さま結婚見通し語る(テレ東NEWS 2019/6/21公開)

◆天皇家と秋篠宮家を両天秤にかけるメディア

秋篠宮家をめぐる報道は、小室さん婚約問題にかぎらない。悠仁親王が通うお茶の水大学付属中で起きた「刃物事件」が、秋篠宮家の自由主義的な教育方針による結果で、学習院に通わせていれば事件は起きなかった。佳子内親王のダンス好き、あるいは眞子内親王の恋愛が本人の希望通りにと発言したことへの批判などというかたちで、バッシングに近いものとなってきていた。婚約問題、教育問題にかぎらず、秋篠宮家の「公私」の厳格な分け方に、宮内庁の関係者も戸惑うことが多いという。ぎゃくにいえば、ふつうの家庭を築こうとする宮家に、それは許さないという宮内庁関係者の思惑が、メディアを通じて圧力をかけているとも考えられる。

そしてこの秋篠宮家批判は、天皇陛下と雅子皇后を称賛する報道、とくに雅子皇后の外交力(トランプ夫妻歓待での英語での接待など)を称賛し、返す刀で対照的に秋篠宮家を批判するというパターンで繰り返されてきたのだ。これはこれで、即位まではどちらかといえば雅子皇后(当時は皇太子妃)が適応障害で仕事を果たせず、なんとなし天皇(当時は皇太子)に批判的な論評が多かった反動で、こんどは天皇皇后夫妻を評価する半面、何かと自由な発言をする秋篠宮家を叩くという、メディアの話題づくりによるものだ。

◆恋愛の自由、教育の自由が天皇制を崩壊させる

とはいえ、小室さん問題が象徴天皇のアイドル的な側面において、きわめて注目にあたいするテーマであるのは確かで、国民的な興味の的というわけである。本欄では、皇室の民主化・天皇制の民主化(自由恋愛・自由教育)が、それを徹底することで政治権力と天皇家、国事行為と私的行為の矛盾が拡大すること。したがって、天皇家の文化的な性格を政治から分離し、非政治化することが不可能ではない。そしてその過程で天皇家が首都をはなれて本来の御所である京都を住まいとし、あるいは政治(政府と国会)が天皇家を必要としなくなる可能性。つまり天皇制が廃止されることまで展望できると考えてきた。

皇室の民主化とは、たとえば新天皇による剣璽等継承の儀に、女性閣僚(片山さつき地方創生担当相)は参列したのに、皇室の伝統は女性皇族を参列させなかった。つまり国民感覚とはかけな離れた旧皇室典範によって、信じられない光景が現出したのだ。これは眞子内親王の自由恋愛問題と同根である。ふつうに恋愛をしようとしたら、相手の母親に「借金」があるから許されないというのだ。ふつうの自由主義を貫こうとしたら、かならず天皇および天皇制の枠組みに触れてしまう。そこから天皇制が崩壊する可能性がある。口先だけで、天皇制廃絶などとくり返すよりも、天皇および天皇家を徹底的に民主化する、憲法上の矛盾すらも民主化することによって、それは大いに可能なのだ。

◆兄弟の確執が背後に?

さて、今回の会見で秋篠宮は、宮家の当主としてよりも皇位継承権第一位(皇嗣)の立場から、無難にこなしたというのが実際のところだ。それはとりもなおさず、秋篠宮家バッシングとでもいうべきメディアの攻撃を避けつつ、眞子内親王への批判を緩和し、悠仁親王の皇位後継者としての資格に曇りがないように配慮したとみるべきであろう。

秋以降、安倍政権は女性皇族の扱い、とりわけ女性宮家の可否について国民的な議論をしなければならないと提唱している。それは当然のことながら、女性天皇という最大の案件をけん制してのものである。今後、愛子内親王を皇位継承者とするのか、それとも悠仁親王を継承者とするのかについても、国民的な議論をへなければ立ち行かない皇室の事情がある。この議論の背景に、天皇と秋篠宮の隠然たる確執があるからだ。

◎[参考記事]
秋篠宮さまの注目会見、即位に関し意思表示した場合の波紋(2019年6月17日付け女性セブン)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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組織ぐるみで西山美香さんを「殺人犯」に仕立てた滋賀県警は責任をとれ!  湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんに1日も早く無罪判決を!

6月16日、大阪市大国町の社会福祉法人ピースクラブで、3月に再審開始が決定した「湖東記念病院事件」の冤罪被害者・西山美香さんと、主任弁護士の井戸謙一さんを招いて講演会を開催した。最初に井戸弁護士より事件の経緯と問題点を解説してもらった。

6月16日(日)大阪で開催された「湖東記念病院事件」冤罪被害者・西山美香さんを囲む会

2003年5月22日明け方、湖東記念病院に入院中の男性患者(74歳、半年間植物状態、呼吸器で命を長らえていた)が意識不明で発見され、その後死亡が確認された。当初「業務上過失致死容疑」で開始された捜査は、1年後の7月2日西山美香さん(当時23才)が任意の取り調べで「(呼吸器の)管を抜いた」と自白したことから「殺人事件」に切り替わり、滋賀県警をざわつかせた。7月6日「殺人罪」で逮捕された美香さんは、その後起訴され、懲役12年の実刑判決が下された。美香さんは何故ウソの自白をしたのか? 井戸弁護士の解説から、当時美香さんを取り調べた滋賀県警の山本刑事と美香さんの関係に言及された箇所に焦点を絞り、検証してみる。

◆「業務上過失致死容疑」が「殺人容疑」に! 舞い上がる滋賀県警!

男性の死亡後、滋賀県警・愛知川(えちがわ)署は、人工呼吸器の管が外れ、アラームが鳴っていたのを見過ごし、窒息死させたとする「業務上過失致死罪容疑」で、当夜当直だった看護師A、Bと看護助手美香さんを取り調べた。その際A看護師が「管が外れていた」とウソをついてしまう。男性患者の痰の吸引を2時間ごとにする義務があったが、1回行っていないことから、怠慢を問われると案じ、咄嗟についてしまったウソだ。しかし管が外れている場合鳴るはずのアラーム音を聞いた者は誰もおらず、「呼吸器の不具合」との病院側の主張も、鑑定で「問題ない」となった。

1年後、前任に代わり美香さんを担当したのが滋賀県警から派遣された若い山本誠刑事だった。密室の取調室で山本は、死亡患者の写真を置いた机をバーンと叩き、椅子を蹴りあげ、美香さんに尻もちをつかせるなど威嚇しながら「アラームが鳴っていただろう」と迫った。怖くなった美香さんは「アラームは鳴った」とウソの供述してしまう。そのとたん山本は急に優しくなったという。

◆精神科に通うまでに美香さんを追い詰めた滋賀県警!

一方でA看護師はアラーム音を認めてなく、美香さんの供述との食い違いを迫られノイローゼになっていた。そのことを知った美香さんは「A看護師はシングルマザーで、逮捕されたら生活できない。自分は正看護師でもないし、親と暮らしている」と、一旦認めた「アラーム音を聞いた」の供述を撤回した。しかし山本刑事は受け入れない。6月23日深夜2時30分、美香さんは一人で愛知川署を訪れ、当直に山本刑事への手紙を託した。撤回させようと必死だったが、撤回は叶わなかった。

7月2日、美香さんは午前中、精神科を受診している。カルテはあるが、美香さんにはその記憶がないという。それほどまでに追い詰められていた。その足で警察署を訪れた美香さんは「故意に管を抜いた」と供述してしまう。7月6日美香さんは「殺人罪」で逮捕。「えっ? 私、逮捕されるの? なぜ、誰も殺してないよ?」。美香さんはパニック状態に陥った。「管を抜いた」が「殺害した」になるとは夢にも思っていなかったからだ。

3月に設立した「冤罪犠牲者の会」共同代表の青木恵子さん(東住吉事件)。右後ろに並んで座っている冤罪被害者・西山美香さん(後ろ右)と主任弁護士の井戸謙一さん(後ろ左)

◆滋賀県警に組織的に追い詰められ、自白してしまった美香さん

長い取り調べの間、山本刑事は美香さんの話を親身に聞き、相談に乗ったりもした。時には自分の私生活を話すこともあったという。幼い頃から友達を作るのが苦手で、当時つきあう男性もいなかった美香さんは次第に山本刑事に惹かれていく。携帯電話の番号も交換しあった。美香さんの警察への出頭日数は、5月は6回、6月は17回、うち6回は呼び出しもないのに自主的に出頭している。警察への出頭や捜査への協力が、山本刑事に会いたい一心からきていることがよくわかる。

逮捕後も滋賀県警と山本刑事は組織的に美香さんを包囲し、追い詰めていく。家族に会えない美香さんに「上司が毎日両親に会いにいっているから心配するな」とウソをつき、その上司のもとに美香さんを連れていき、上司に「山本の言うことだけ信じていればいい」と言わせた。「弁護士は信用できない」などと言われた美香さんはますます「山本刑事しか信じられない」と洗脳されていく。なお逮捕から起訴まで留置された大津署で美香さんは、山本刑事が持ち込んだマクドナルドのハンバーガー、ケーキー、ミスタードーナッツのドーナッツを食べている。飲み物は3回ともQOOのオレンジ。若く、社会性もまだ乏しい美香さんを、滋賀県警は組織的にあの手この手を使い洗脳したのだ。

何故、美香さんはウソの供述をしたのか? それについて井戸弁護士は、美香さんのシングルマザーのA看護師に対する罪悪感や、アラーム音についての供述を撤回させて貰えないことから、仕方なく供述してしまったのではないかという。さらに山本刑事を好きになったが、当時A看護師の「アラーム音を聞いてない」と、美香さんの「聞いた」が矛盾することから、捜査は膠着し、呼び出されなくなっていたため、新しいことを言えば、山本刑事が自分に関心を持ってくれるのでは、と考えたからではないかとも述べている。

◆アラーム音を出さずに窒息死させる方法を美香さんに教えた滋賀県警・山本刑事!

そもそもアラームは鳴っていない。管も外れていない。では美香さんの「故意に管を抜いた」(窒息死させた)との自白は、どう維持できたのか? 逮捕後、コロコロ変わる美香さんの自白から、滋賀県警や山本刑事が見立てたストーリーに合わせ、美香さんの自白が作文されていた可能性が出てきた。書いたのはもちろん山本刑事だ。

7月2日の供述では「(管を)外して病室を出た。アラームは10分鳴り続け、A看護士が消した。動機はA看護師が寝ていたので腹が立って、偶発的にやった」だったが、A看護師が「アラームは絶対鳴っていない」「居眠りしていない」と供述、さらに子供の付き添いの親が「10数回ナースコールをしたが、アラームは鳴っていない」と供述するや、7月10日には「アラームは鳴っていない。私が消音ボタンを押し続けた」に変わった。同じ日、滋賀県警は「アラームを鳴らさずに窒息死させることはできるのか」と、人口呼吸器の実況見分を行っている。

その結果から編み出されたのが「消音ボタンを1回押せば1分間(60秒)アラーム音が消える。1分直前に再度ボタンを押し、アラーム音が消えた状態を継続させる。それを3回続け、患者を窒息させた」という供述だ。しかも偶発的ではない、ほかの患者も殺そうとした計画的犯行だとした。しかし看護師ですら知らない、消音時間が正確に60秒であることや消音状態継続機能を、資格も専門知識もない、看護助手の美香さんが知り、かつ確実に実行できると、ふつう考えるだろうか?

冤罪・鈴鹿殺人事件の加藤映次さん(長野刑務所に収監中)のご両親

◆盛りすぎた供述調書で、ウソが暴露された滋賀県警・山本刑事!

美香さんの最終的な自白内容は、「動機は病院に対する恨みを晴らすことであり、出勤前から犯行を計画していた、(ナースステーションから様子がうかがえる患者のベットの)カーテンも閉めず、枕灯もついたまま、素手で患者の人工呼吸器の管を抜いた、アラームがピッと鳴ったのでボタンを押して音を消した。頭で数を数え、1分たつ前にまた押した。患者はハグハグと苦しそうにしていた。2~3回で死んだのでチューブをつなぎ、点灯ランプを消し、ナースステーションに戻った」となっている。

しかしこの自白には、なぜ美香さんが消音状態継続機能を知っていたかの説明がない。また正確に60秒を数えるために、美香さんが腕に巻いた時計を利用してないこと、カーテンを閉めない、枕灯を消さない、(殺害を実行する際に)指紋がつくことを気にしないことなどについて多くの疑問が残されている。

有罪認定された判決は、美香さんの自白について「現場にいた人でなければ語れない迫真性に富む」としている。「口をハグハグ」「目をギョロギョロ」の箇所だ。しかし亡くなった患者は大脳が壊死しており、苦しみを感じないから、そもそも「口をハグハグ」や「「目をギョロギョロ」することは、医学的にありえないと弁護側は反論する。では、この「口をハグハグ」「目がギョロギョロ」という供述調書は、誰が作文したのか? 山本刑事だ。

6月16日、井戸弁護士が山本刑事が作成した調書の一部を紹介した。「壁の方には、追いやった呼吸器の消音ボタン横の赤色のランプが、チカチカチカチカとせわしなく点滅しているのが判りました。あれが、Tさんの心臓の鼓動を表す最後の灯だったのかも知れません」。何とも劇画チックな表現だ。彼の調書は全編このような感じだという。「私は~」からと一人称で始まる調書は、あくまでも容疑者が話したことを、刑事が文章にまとめたものだ。果たして美香さんがそのようなことを話すだろうか?

予定を変更し、急きょかけつけてくれた桜井昌司さん(布川事件冤罪被害者)

再審決定の骨子は「入院患者は自然死の可能性がある」「捜査段階の自白は誘導や迎合による虚偽の疑いがある」「西山さんが犯人とする合理的な疑いが残る」としている。検察は再審裁判で有罪主張すると宣言していたが、先の三者協議では「弁護団の主張を見てから判断する」などと筋違いなことを言ったという。いい加減にしろ!メンツのために長々と裁判を引き伸ばすようなことをせず、正々堂々と公判で有罪を主張してみればいい!自ずと美香さんの無罪は明らかになるはずだ。

なお、井戸弁護士のお話のあと、西山美香さんへのインタビュー、冤罪・鈴鹿殺人事件の加藤映次さんのご両親のアピール、3月に結成された「冤罪犠牲者の会」の共同代表・青木恵子さん、サプライズでかけつけた桜井昌司さんのアピールが続いた。美香さんのインタビューと、冤罪・鈴鹿殺人事件については、後日、改めて寄稿したい。

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さん渾身の現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」、井戸謙一弁護士インタビュー「『子ども脱被ばく裁判』は被ばく問題の根源を問う」を掲載!
創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号

滋賀医大附属病院HPの謎 なぜこの時に松末院長はこんな文章を掲載したのか?

以下は6月17日正午現在、滋賀医大附属病院のホームページである。
http://www.shiga-med.ac.jp/hospital/index.html

「病院からのお知らせ」の冒頭に6月11日付けで、「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載された。この日は通称「モルモット事件」の第5回口頭弁論が行われた日である。

滋賀医大附属病院のホームページより

「前立腺がん治療に関する情報提供」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、病院長名での文章が現れ、「詳しくはこちらをご覧ください」の「こちら」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより
滋賀医大附属病院のホームページより
滋賀医大附属病院のホームページより

が表示される。冒頭に、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、注意書きのようなものがあるが、これだけではどの部分が「国立がん研究センター」による発表であるのか、また引用はどの箇所かが判然としない。そこで17日国立がんセンターの広報担当に「このような記載が滋賀医大病院のHPにあるが、国立がんセンターのHPを探しても、一部を除いて同じ記述を見つけることができない。このような発表はあったのでしょうか」と質問をした。17日夕刻同センターから、

《お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、
そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。》

との回答が返ってきた。え!この文章には1/3、2/3、3/3とページが付されている。「普通の感覚」で読めば、一連の文章と理解しても無理はなかろう。しかも各病院ごとの治療成績なども「国立がん研究センター」が作成した図表だと思う人が多いのではないか。実際に複数の現職医師(脳外科医、診療所勤務医)に読んでもらったところ二人とも「がん研究センター、不思議な資料を作るね」と、やはり誤解していた。現職の医師でも誤解するのだから、一般人はなおのことであろう。

この文章掲示が、ただちに法的な問題だ、というつもりはまったくないが、少なくともまぎらわしく、誤解を与えやすい体裁であることは間違いないだろう。それにしても、どうして滋賀医大病院院長松末氏は、専門が整形外科にもかかわらず、「前立腺がん」にこのようにこだわるのだろうか。同病院には多数の診察科があるのに、「病院からのお知らせ」10件のうち、4件が岡本医師関係の記載とは、不自然ではないだろうか。読者諸氏にも是非ご覧いただきたい。わたしの感覚がおかしいのだろうか? 

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

【カウンター大学院生リンチ事件】前田朗教授が「お詫び」ブログを公開! 私との公開書簡も、私の質問に答えず一方的に「終了」宣言。はたしてこれでいいのでしょうか? 鹿砦社代表 松岡利康

この間、公開書簡の形でやり取りをしている前田朗教授が「お詫び」ブログ
https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_13.html
を公開されました。

前田教授の『救援』紙に公表された2つの論評は、教授の良心が現われている名文です。前田教授にはリンチの情報が伝わっておらず蚊帳の外に置かれていたようですが、これを私たちが作った本で知られ、教授の懸念と警告が、はたして加害者とこの周囲、神原元、上瀧浩子、師岡康子弁護士らに伝わったか疑問です。

少なくとも前田教授が、くだんの『救援』の2つの論評を書かれた際には、このリンチ事件に対して怒りと運動への懸念があったことは事実でしょう。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)
『救援』(589号。2018年5月10日発行)

ならば、私(たち)からの質問には真正面から答えていただきたかったと思うと残念です。6月13日の通信でも述べていますが、私の一連の通信は前田教授と論争し教授を論破しようということを目的としたものではありません。「お詫び」なんて要りません。真正面から〈対話〉し、このままでは社会運動や市民運動への悪影響は否めませんから、なんとかこれを回避したいと思ったのです。前田教授の見識や立場からすれば、教授が意欲的にリンチ事件の本質的解決・止揚の作業に取り組まれれば、社会運動や市民運動への悪影響を阻止できると考えていました。

今回で、私とのやり取りも「終了」ということですが、読者の皆様方は、どう思われますか? 私の個人的意見としては、「お詫び」なんていらない、私からの質問にお答えいただくことを望むばかりです。そうでなく「終了」すれば、回答に窮し逃げたとの印象を読者の皆様方に与えかねないので、ヘイト研究の第一人者の前田教授にとってもマズイと思うのですが……。

◆リンチ事件訴訟、加害者に約115万円の賠償金支払い確定のM君勝訴!

先週12日、リンチ被害者M君が加害者5人を訴えた訴訟の上告が棄却されたとの報せがありました(正式決定日は11日)。直接の加害者の2人に約115万円ほどの賠償金支払いが確定しました。賠償金も、一審の80万円から増額になっています。当初の願望が大きかったこともあり不満が残る内容ではありますが、M君の勝訴です。もっとレベルアップした内容を求めて上告しましたが、これが棄却されたということです。不満が残る内容があるとはいえ、勝訴は勝訴です。私は長年多くの訴訟を経験しましたが、裁判とはこういうものです。完全勝訴など、ほんの一部です。M君や弁護士の先生、支援していただいた皆様――マスコミも完全無視するなど圧倒的少数派の中で頑張りました。彼らがよく使う言葉〈マジョリティ―マイノリティ〉の力学では、M君や私たちのほうが圧倒的にマイノリティで、マスコミや多くの知識人らを味方にした李信恵氏らのほうが圧倒的にマジョリティでした。

しかし、M君勝訴をかき消そうとしているかのように、加害者側代理人・神原弁護士や李信恵氏らはリンチ事件を「でっち上げ」と言い狂喜乱舞しています。当の加害者側の李信恵氏や野間易通氏らは大学院生M君の実名を出して攻撃しています。M君はまだ学生、日頃「人権」という言葉を口にしているのなら、いささか配慮がないんじゃないでしょうか。敗訴して狂喜する神経も理解できませんが、はたしてこのリンチ事件は「でっち上げ」なのでしょうか? 被害者M君が何の目的で「でっち上げ」ないといけないのでしょうか? リンチ事件(加害者らはリンチという言葉を殊更嫌うようですので集団暴行事件と言ってもいいでしょう)があったことは、私たちの綿密な調査・取材によって明らかになっています。フェイクではありません。これを私たちは5冊の本にまとめ世に問いました。これに対する加害者側からの反論本などは一切出ていません。「デマだ」「でっち上げだ」と鸚鵡返しにツイートするばかりです。

リンチ(集団暴行)があったことは裁判所も認定しており、激しい暴行は李信恵氏がM君の胸倉を掴んだことが口火になったことも認定されています。李信恵氏は決して清廉潔白ではなく、リンチの最中も、悠然とワインをたしなみ、これをインスタグラムで配信するという神経、さらには瀕死の重傷を負ったM君を師走の寒空の下に放置して立ち去ったという非人間性――到底理解できるものではありません。さらには、いったんM君に渡した「謝罪文」を一方的に反故にし活動再開したことも、人間としていかがなものでしょうか?

◆私たちがリンチ問題に関わった3年余り前を想起する──

2014年12月以来1年以上も経った2016年2月末に、私はこの事件を知りました。被害者M君は村八分にされ、一部の方(一般には無名の普通の市民)のサポート以外には孤立していました。「いくらなんでも、それはないやろ」という素朴な義憤から、まずは被害者救済/支援のために、M君の話をしっかり聞き資料を精査しようということで、最後までご尽力いただいた当社顧問の大川伸郎弁護士と共に面談しました。2016年3月はじめのことです。慎重な性格の大川弁護士は当初難色を示されましたが、鹿砦社の顧問弁護士でもあり、私が押し切る形で受任いただきました。大川弁護士は、ある事件で国選弁護士に就き、それが敗訴し容疑者が実刑になった際に、「自分の力不足で実刑になり申し訳ありませんでした」と容疑者に土下座して謝ったということを、その容疑者本人から聞き驚きましたが、大川弁護士への信頼は、この事例に基づいています。

◆鄭玹汀さんの本質を衝いたコメント

折りに触れて私のFBにコメントを下さる鄭玹汀さんは今回も次のようにコメントされています。──

「以下の記事(引用者注:6月14日、本通信に先立って公開された私のFBの記事)で取り上げられている問題は、今後の日本社会の人権運動において非常に重要です。しかし、関連記事や本を読まない限り、この投稿だけでは理解するのが難しいと思います。
 特に、ヘイト問題研究の第一人者の前田朗氏がこれまで、リンチ事件の主犯について批判してきたのに、その態度を急に変えて、むしろこれまで複合差別と闘ってきた人だと弁護するようになったのは、決して看過することのできない問題だと考えています。
 私はこの問題について、周りに関心を呼びかけても、ほとんどの方々が自分には関係ないことだと見做していたので、内心驚きました。
 これは日本社会を覆う暗雲といっても決して言い過ぎではありません。」

こうした方がおられるのにはとても勇気づけられます。鄭玹汀さんのような方は現在少数派ですが、こうした方の声が徐々に拡がっていくことを望んでいます。

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

【カウンター大学院生リンチ事件】リンチ被害者M君勝訴! 加害者に約115万円の賠償金支払いが確定! 直ちに賠償金を支払え! 「M君敗訴」などという「誹謗中傷は許さない!」(神原弁護士の言)

M君が上告をしていた対5人裁判で6月12日、上告棄却が代理人に伝えられた(正式決定日は6月11日)。これで大阪高裁の判決が確定することとなり、被告2名に合計114万7,640円(プラス利息)の支払い命令が確定した。

2019年6月12日神原元弁護士の発信

この判決確定までには、かなりの時間がかかったので、あるいは最高裁で弁論が開かれるか、との観測もあったが、大阪高裁判決が確定することになった。「M君リンチ事件」法廷編は、内容的に不充分ながら「M君のほぼ全面勝利」で幕を閉じることになった。

ところが相も変わらず、虚偽発信の印象操作に忙しい人々がいる。判決内容を知らない知人から、「神原元弁護士のツイッターを見たんだけどM君は負けたの?」と問い合わせがあった。

「とんでもない! 負けてないよ。2人に114万円余りの賠償命令が出て『負け』なわけはないでしょ」と回答しておいたが、右記神原弁護士の発信を見れば、勘違いする方々がいても不思議ではないだろう。

参考までに2018年3月19日大阪地裁判決直後の神原弁護士の発信。これを見たら「被告勝訴か」と勘違いする方がいても不思議ではないだろう

神原弁護士は地裁判決後にも「祝勝会」を開く様子を発信し、一部に混乱をもたらしたが、弁護士として、事実と異なる内容を発信するのは問題行為ではないか。しかも、ことは自分が代理人を受任している裁判の判決である。

ネット中毒で何件も裁判で負けている野間易通氏も、C.R.A.C.(何回目にしても、これが「反差別」を標榜する団体の名前とされていることへの違和感は消えない)アカウントから凝りもせずM君(及び鹿砦社)誹謗中傷を発信している。この手の低レベルな人間にはいちいち付き合わないが、問題は数年かけてM君が勝ち取った勝訴を、無きものにしてしまうような悪意と数の力である。

われわれはネット上での連帯や、グループ組織を一切持たない。この期に及んだので明らかにするが、裁判闘争に入る前に、取材班と鹿砦社、支援会の間の議論で申し合わせを行った。それは「M君支援を運動化しないこと」であった。

運動化するとどうしても構成員の中で民主的な意見調整を行わなければならず、それに割く時間と労力、費用は最小限に収めるべきだ、という点で合意を見た。また口頭弁論期日のあとに報告集会を開くべきではないか、との意見もあったが、同様の理由でそれも行わないこととした。

ツイッターへの書き込みでM君から提訴され、11万円の損害賠償判決を受け、M君に賠償金を差し押さえられた野間易通氏の書き込み。嘘満載

例外的に地裁判決、高裁判決後には報告集会を小さな規模で行った。貴重なカンパによって行われる裁判であるから、支援会、鹿砦社は襟をただし、浮かれた気分は微塵もなく最高裁まで闘うことができた。M君からはこの間お世話になった方々への語りつくせない謝辞が伝えられている。取材班、鹿砦社もこれまでご支援頂いた皆様にM君になり替わり、深く御礼と感謝を申し上げる。

皆様、ご協力本当にありがとうございました。

と、きれいに文章を終わりたいのであるが、やはり未だにM君攻撃を止めない中心人物の行動だけは、明らかにしておく必要があろう。仮にこの連中の行動が、日本の法律に抵触しなくとも、連中の行動は重大な「人道上の罪」である。成文法だけで人間は生きているわけではない。法に触れなければいいんでしょ、との言い訳は虞犯者の口にする言葉だ。下記(1)から(8)がリツイートしている人物(団体)、と誰の書き込みをリツイートしているかの一覧である。 

李信恵氏による神原氏・野間氏リツイート

これらのセカンド、サード「ネットリンチ」に手を染めている連中を、読者には是非ご記憶頂きたい。

(1)のりこえねっと=神原氏・野間氏リツイート
(2)ミサオレッドウルフ氏=神原氏リツイート
(3)影書房=野間氏リツイート
(5)香山リカ氏=神原氏・野間氏リツイート
(6)中沢けい氏=神原氏リツイート
(7)有田芳生氏=野間氏リツイート
(8)李信恵氏=神原・野間氏リツイート

いずれもリンチ事件隠ぺいや、事件後のM君攻撃に熱心だった御仁ばかりだ。その他のしばき隊平(ひら)戦闘員も多数、神原氏や野間氏の書き込みをリツイートしている。今回のリツイートで取材班は「のりこえねっと」を「集団リンチ肯定団体」と認定する。

「集団リンチ肯定団体」に「反差別」などを口にする資格はない。大阪地裁で鹿砦社に敗訴した李信恵氏は現在も鹿砦社と係争関係にあるが、M君の対5人裁判の法廷での反省の弁や、「謝罪文」はまったくの出まかせで、まったく反省していないということだろう。あとはいずれ劣らぬしばき隊幹部の面々である。

最後に、普通の日本語理解能力のある方には蛇足ではあるが、再度強調しておく。6月12日、上告棄却、大阪高裁の判決確定により、被告側2名が114万円余りをM君に支払う命令が決定された。どなたにも理解いただけようが、この裁判は「M君勝訴」で幕を閉じた。

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

不当医療行為を組織ぐるみで隠ぺいか? 滋賀医大附属病院「説明義務違反」損害賠償裁判、第5回口頭弁論報告

6月11日13時30分から大津地裁で、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内、成田両医師が23名の患者さんに施術の実績がないことを伝えずに手術を行おうとした「説明義務違反」の損害賠償を求める裁判の5回目の弁論が開かれた。

滋賀医大病院をめぐっては、仮処分や裁判が立て続けに起こされている。有印私文書偽造の刑事告訴も大津市警察に行われ(告訴状は未受理)、患者会の皆さんが大津地裁に集まる頻度も上がる一方だ。

裁判期日には、毎回開廷前に大津駅前で集会が行われる。この日は北海道からの参加された患者さんの姿もあった。

学長・病院長・泌尿器科河内教授を批判するプラカード
患者会代表幹事の恵さん

集会では患者会代表幹事の恵さんが、
「5月20日に待機患者の治療を妨害するなとの、仮処分命令が下りましたが、どうしようもない言いがかりをつけて病院は邪魔しようと、異議申し立てをしました。そういう輩なのです。我々は一生懸命闘いますが、あの輩には『情けない人種』だとの気持ちも考慮に入れて。力ずくでは黙り込んだ狸のようなものですので、我々の気持ちが届いているのかいないのかわかりません。熱い気持ちは大事ですが、司法、マスコミの協力を得ながら頭を使ってこれからの闘いに望んでいただきたいと思います」
と、滋賀医大幹部の底抜けのどうしようもなさを指摘し、闘いの方針を提示した。

ついで、代表幹事の小山さんがアピールを行った。小山さんは愛知県在住にもかかわらず、毎週のように滋賀医大前のスタンディングに参加されている。実直なお人柄で社会運動などとは無縁であった方とは思われない日常を昨年以来送っておられる。

毎週愛知県から滋賀医大抗議に訪れる小山さんの訴え

「私たちは滋賀医大病院で前立腺がんの小線源治療を受けた患者とその家族です。滋賀医大病院には高リスクの前立腺がんでも95%以上完治させることができる岡本圭生医師がいます。この岡本医師の卓越した小線源を求めて北海道から沖縄まで、全国から多くの患者が訪れています。ところが滋賀医大病院は今年いっぱいで岡本医師を病院から追い出そうとしています。それはいったいなぜでしょうか。

4年ほど前滋賀医大病院泌尿器科の医師が未経験であるにもかかわらず、それを患者に説明しないまま小線源治療をやろうと計画しました。岡本医師はその危険性を指摘し治療を阻止して23名の患者を救ったのです。

しかしこれをきっかけに滋賀医大病院は、泌尿器科、病院長、学長がそろって岡本医師の排除に向けて動き始めました。200名を超える患者の治療予約を一時的に停止させたり、岡本医師の講座を閉鎖するために学内の規則を変更するなど、患者を無視した嫌がらせのような行動をとってきました。これらは、すべて泌尿器科が行った不当医療行為を、組織ぐるみで隠ぺいするための行動です。

また滋賀医大病院は1年半前、岡本医師による小線源治療は、今年の6月末までとし、その後今年の12月末で岡本医師の治療を終了する、と一方的に宣言しました。しかし、先月20日大津地裁の仮処分決定により、今年の11月まで今まで通り岡本医師の治療を継続することが認められました。

ところが病院側はこの決定を守らず、『泌尿器科も小線源治療を行う』として岡本医師の小線源治療枠を一部横取りして、治療妨害を続けています。そして仮処分決定の取り消しを求める異議申し立てを行いました。新聞報道によると申し立ての理由は、『岡本医師の小線源治療が行われると、治療体制の見直しが必要になること、多くの患者が岡本医師の治療を希望して殺到する可能性が高いこと』を挙げているそうです。

全く信じられないような理由です。多くの患者が希望して、裁判所も継続を認めた治療を行うためですから、治療体制の見直しくらい、なぜできないのか。全く理解できません。やる気がないとしか思えません。2つ目の理由『多くの患者が殺到するから治療継続をやめろ』などということは、まともな病院が言うことでしょうか? 患者の命など全く眼中にないということを示しています。患者の命よりも、内部告発をした岡本医師を追い出して自分たちの地位を守ることが大事なんです。そんな泌尿器科の医師、病院長、学長には即刻退場してもらわねばなりません! 

本日泌尿器科の不当医療により被害を受けた患者さんが泌尿器科の医師を相手に起こした裁判の5回目の口頭弁論が行われます。今後、学長、病院長、泌尿器科の医師を法廷に呼び出して証人尋問が行われます。裁判で不当医療の事実を明らかにして、滋賀医大病院が真に患者ファーストの病院に生まれ変わるよう、闘っていきます。

私たちは抜群の成績を誇る、岡本医師の治療を将来の前立腺がん患者にも受けてほしい、と願っています。そのために来年以降も、岡本医師の治療が滋賀医大病院で継続されることを求めています。市民の皆さん、どうかこの事件に注目してください。多くのがん患者の命綱が繋がるよう、ご支援をお願いいたします」

小山さんが事件の発端から今日の状態までをわかりやすく、訴えた。

大津地裁(西岡繁泰靖裁判長)は5月20日、岡本医師の申立てを全面的に認める決定を下した。笑顔で完全勝利のメッセージを掲げる鳥居さん(左)と宮内さん(右)

次いで5月20日の仮処分で治療の機会を獲得した、鳥居さんが「仮処分」勝利のうれしさと、今後の闘いへの決意を語った。集会前に鳥居さんにお話を伺ったら「手術日が決まりました!」と本当に明るい表情で笑顔を見せてくださった。やはり20日に勝利を勝ち取った宮内さんも、鳥居さんと同じ日に手術が決まったそうだ。宮内さんも喜びと、病院側が仮処分に異議申し立てを行ったことへの憤りを表明した。

次いで患者会代表幹事の宮野さんが、力強い檄を飛ばし集会の「我々は最後まで頑張るぞ!」と気勢を上げた。

我々は最後まで頑張るぞ!

この日も法廷内撮影があった。満席になった傍聴席と原告被告、裁判官の様子が2分間毎日放送により撮影されたのち、開廷が宣言された。裁判では被告が準備書面5を、補助参考人(岡本医師)が準備書面2を、原告が被告準備書面5への反論を弁論(書類を確認)した。その後被告代理人が成田医師が2例目に診察した患者のカルテの送付嘱託(裁判所からの依頼のよるカルテ開示)を裁判官に申し出た。原告弁護団長の井戸謙一弁護士は「必要性を認めない」と却下を求めたが、合議体(裁判官)は送付嘱託を認めた。

被告弁護人は「まだ出ていない証拠のメールがあれば出してほしい」と原告並びに補助参考人代理人に要請し、西岡裁判官も「弾劾証拠以外の証拠は出しておくように」と原告・補助参考人代理人に要請した。わたしは西岡裁判官のこの物言いは、やや必要性の域を超えるものではないかと素人ながらに感じた。これで実質的な弁論終結となったが、次回期日も書証のやりとりとなり、被告側が遅延戦術に出ているのではないかとの印象を受けた。裁判所にも夏休みがあるため、休み前の期日で調節が試みられたが都合がつかず、次回は8月22日、15:00からと決定した。

ここで閉廷となったが、裁判官が法廷を後にしたとき、傍聴席前列から声が上がった。「被告代理人は送付嘱託なんかしなくても『不正閲覧』をしているのであるから、必要ないんじゃないですか! 職員も泌尿器科の医者も不正閲覧しているんですから、裁判所に依頼する必要ないんじゃないですか! どこに必要があるんでしょうね。素人でも不思議ですね」。被告代理人はこの発言をした男性を睨みつけながら法廷を後にしていった。

井戸弁護士

14時からは社会教育会館に場所を移し、記者会見が始まった。井戸謙一弁護団長がこの日法廷で行われた内容の解説を行った。

「今日は被告側から準備書面5、岡本医師から準備書面2それから原告から準備書面5が陳述されました。その内容をご説明いたします。被告の準備書面5には大きく言うと3つの点が書かれています。準備書面4で被告は23名の方々に対する治療は、岡本医師を指導医とする『医療ユニット』によって行われようとしていた。だから成田医師が未経験であることを説明する義務はなかった、と主張していました。法廷で我々は『医療ユニット』とはなんなのかと。そんな言葉は今までに聞いたことがないし、『医療ユニット』について説明してくれと求めました。それに対する回答がまず書いてあります「医療ユニットというのは被告らの代理人である弁護士が作った言葉だ」というのが結論です。大学内部でそのような言葉が使われていたわけではありません、ということです。

では『医療ユニット』の内実は何なのかですか、となるわけです。1つは理屈の問題です。小線源治療学講座は泌尿器科から独立した存在ではなく、あくまで泌尿器科の一部なんだと。寄付講座の治療は泌尿器科の治療として行われたし、カルテも泌尿器科のカルテとして管理されていたと。寄付講座で行われていたことはすべて泌尿器科の一部なんだ、ということが書かれています。ここでなぜこのようなことをいう必要があるのかといえば、結局泌尿器科の科長は河内医師ですから、河内医師の指示・命令に従って小線源治療も行われる必要がある。そういうことを言いたいのだと思います。

もう一つは、河内教授が本件寄付講座の『責任教授』であるという概念を持ち出しています。辞令上河内教授は併任教授です。『責任教授』などという言葉は書いてないし、私どもが調べた範囲では滋賀医大において『責任教授』という概念は職制上用いられていないと思いますが、『責任教授』であると。河内教授が『責任教授』であると、岡本医師は特任教授ですから、趣旨としては寄付講座内部においても岡本医師よりも上だということを言いたいのだと思います。

この二つを言ったうえで寄付講座が始まる直前に、岡本医師を希望してきた患者には岡本医師が施術するわけですけれども、そうではない患者、病院内で診断しか結果、小線源治療が適当だとなった患者については、成田医師が担当することにして、それを岡本医師が指導するということにしたと。そのことを岡本医師に指示したら、岡本医師は異を唱えることはなかったということだけです。『医療ユニット』の実態はこれだけです。

これについて岡本医師は「確かにそのような話はあったけれども、それなら自分自身に直接診察させてくれ。自分が診察しないのであれば責任は持てないからそういうことはできない」と言ったと述べておられます。そのことには一切ふれていなくて、河内医師が指示をして、岡本医師は異を唱えることはなかったのだから、そういう体制でやることになったのだと。いうだけのことであって、そのあと現実に多くの患者の治療について成田医師と岡本医師の間にどういうやり取りがったのか。『医療ユニット』の実態があったのか、なかったのかについては一切触れていません。これが一つです。

二つ目は成田医師は二人の患者さんのプレプランをしています。一人目の患者さんの時に自分は『未経験だとは説明しなかった』が、二人目の時に『説明をした』と主張しています。カルテには説明したと書かれている。それは後から後から書き加えられたもので、虚偽記載であると岡本医師は主張しておられます。その点についてプレプラン時に伝えたから、そのあとの原告の方々の治療が予定されていたわけですが、『こういうことにならなければちゃんと伝えていたはずである』ということが2点目。

3点目は法律上の問題ですが、万が一被告らに責任があるとしても、被告らは責任を負わない。免責されると、そういう主張をしています。これは国家賠償法という法律があります。普通の人が不法行為をして、人に損害を与えたときは、その損害を賠償する責任があります。会社などであればその使用者にも責任があります(民法715条)。行為者は709条によって責任があり、会社も個人も責任を負担するわけです。ところが公務員が公務を執行するにつき、不法行為を犯したときには国、公共団体が責任を負うんですね。そのときに公務員個人も責任を負うのかということについては、学者の間で議論があります。日本の裁判所は公務員は責任を負わないという考え方に立っています。

問題は国立大学法人で医療事故があった場合に、民法が適用されるのか、国賠法が適用されるのかということです。もし国賠法が適用されるのであれば、国ないし公共団体が責任を負うけれども、医療過誤を犯した医師個人は責任を負わないわけです。

民法が適用されるのであれば、両方(病院・医師)とも責任を負うわけです。今回国賠法が適用される事案であるから、原告の主張通りの事実があったとしても、被告である河内氏、成田氏個人は責任を負わないという主張をしていました。国立大学附属病院における医療過誤事故はたくさんあり裁判例もいくつもあります。両方適用している裁判例もありますが、だいたい民法を適用するのが普通だといわれています。だから民法が適用されれば当然個人も責任を負うとなります。被告は例外的な裁判例を引いてきて、「個人は責任を負わない」そういう主張をしてきました。

それに対して補助参加人と原告からそれぞれ準備書面を出したわけです。原告の準備書面は『医療ユニット』が形成されたと言いながら、具体的な中身は何もないのではないか、ということと『責任教授』とはどのような概念なのか明らかにしろ。それから二人目のプレプランをした患者のカルテは虚偽記載であるということ。本件のようなケースは国賠法ではなく民法が適用されるべきであること。そういう内容の準備書面を提出して陳述したところです。補助参加人の主張については竹下先生どうぞ(略)

著者注:竹下弁護士からは小線源講座は泌尿器科から独立していたこと。小線源講座設置の設置目的を根拠とした被告への反論、『責任教授』についての見解。発足当時は学長も小線源講座の独立を認めていたことなどが解説された)

準備書面の内容は以上の通りですね。そ例外にきょう行われたこととして、被告から送付嘱託の申し出がありました。1例目、2例目のプレプランをした患者ですね。2例目の方には説明をしたということが書かれている。それが虚偽であるということを参加人から証拠として提出してあるのですが、そのカルテの全体について送付嘱託をしてきました。

1例目、2例目の方は本件の原告ではないのでこれらの方々の症状は本件とは関係がないと思うし、いったい何を立証したいのかよくわからないので「必要性がない」と意見をだしましたけど、裁判所は採用された。次回期日までに出てくるだろうと思います。今後の予定については被告側は次回までにに人証の申請をするということでした。被告両名だけではなくて、学長、院長のほかそれ以外の大学の関係者。それから医学的評価についての証人も検討しているということですので、多数の尋問申請があるのかもしれません。裁判所はベストエビデンスに反するのではないかということで、ちょっと牽制をしていましたけど次回までに明らかになると思います。次回には主張のやり取りが終わって人証が決まって次々回以降本人尋問、証人尋問に入るという運びになるものと思います。以上です」

続いてこの問題を積極的に取材している毎日放送の橋本記者から、弾劾証拠や、この日の法廷の感想、仮処分決定が本訴訟に与える影響についての質問があった。ABCの浜田記者は原告大河内さんに感想を求めた。

滋賀医大への危機感を語る原告の大河内さん

大河内さんは、「長年、滋賀医大にお世話になった立場からすると、非常に信頼しておりました。今回のこの件で『こんなことがあるんだ』と。滋賀医大は医師を育てる大学でしょ。それが(患者を)医師が実験台というかモルモットという扱いをしていることに、非常に憤りを覚えました。私も危うく命を落とすところだったかなと思っておりました。こういうことがあっては今後よくないということで、訴訟に踏み切ったわけですけれども、そのあとの対応がもっと酷くなっていますね。患者の皆さんの命をを見捨てるような行動に出ている。姿勢を正してくれればいいかなと、いうつもりで始めたのですが、医大の3人組というか4人組というか、そういう人たちが変な方向に舵を切っていって、命を粗末にするようなふるまいをしている。こちらのほうが非常に危険を感じ、危機感を持っています。是非とも滋賀医大が医の倫理を取り戻せるように、我々も頑張りたいし、皆さんも一緒に頑張って頂きたいと思っております」

大河内さんのコメントの後、会場から拍手が沸き上がった。

滋賀医大に関する、訴訟や仮処分で大津地裁に足を向けるのは何回目になるだろうか。大河内さんが指摘されたように、一部の人間により大学病院全体がますますダッチロールの度合いを増しているように感じられて仕方がない。何度も強調するが、自分の生活を犠牲にしても患者に寄り添う医師や医療関係者が大多数の滋賀医大附属病院にとって、3人組もしくは4人組は、文字通り悪の権化である。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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