斎藤元彦・兵庫県知事(写真右のガッツポーズしている男性、折田楓社長NOTEより)。

 

渡瀬元県民局長(2024年7月自死とみられる)による内部告発文書について自ら犯人探しをしてしまうなど、公益通報者保護法の趣旨に反する行動から議会による不信任案可決で失職。しかし、2024年11月17日執行の兵庫県知事選挙で劣勢の下馬評をひっくり返し、〈逆転勝ち〉しました。

10月に入ってSNSでは、#さいとう元知事がんばれ というハッシュタグが流行。また、筆者が斎藤元彦知事の疑惑を追及する動画などを投稿すると、アクセスが殺到し低評価が大量につくという状況がありました。

斎藤知事=既得権益と闘う正義の士=ネットで真実を探し当てた市民vs稲村候補=外国人参政権推進の極左、大半の自民党系市長が推す既得権益=テレビなどオールドメディアという構図が、ネット上で出来上がりました。そもそも、冷静に考えれば、極左と自民党など水と油なのですが、そんな論理矛盾もお構いなしに、事実と異なることがあっという間に広がりました。

◆県の仕事をしている社長がフルコミットした斎藤選挙

選挙後、これは何だろう?と思っていたのですが、その種明かしを、仕掛け人自らがネット上でしてしまいました。その仕掛人とは、株式会社merchuの折田楓社長です(写真のガッツポーズしている女性。)。折田社長は、斎藤陣営の広報全般を仕切っていたことをご自身のノートで報告しました。ホームページなどによると折田社長は1991年生まれ。フランスESSEC大学留学 後 慶応義塾大学をご卒業され、フランス大手金融機関に勤務。きらびやかなご経歴です。その後、母親の会社を手伝いながら、株式会社merchu創業されたとのことです。

 

折田社長のnoteより

斎藤知事が就任された 2021年より兵庫県地方創生戦略委員、2022年より兵庫県eスポーツ検討会委員、2023年より兵庫県空飛ぶクルマ会議検討委員 をされているほか、会社のある西宮市で産業振興審議会委員もされています。兵庫県、広島県、山口県、徳島県、高知県、神戸市、藤沢市、倉敷市、広島市、江田島市、由布市、株式会社リクルートや有馬グランドホテルなど、これまでに150以上の行政・企業・団体の広報・PRを手がけておられるそうです。

その折田社長のもとを斎藤知事自ら訪れ、会議を行われたそうです。プロフィール写真撮影、コピー・メインビジュアルの一新、斎藤知事を応援するSNSアカウント立ち上げ、「#さいとう元知事がんばれ」ハッシュタグをはやらせること、などを立案・実行。

選挙期間中には折田社長が「私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用」されたそうです。

◆事実なら買収罪か規制法違反が成立 「詰み」の状態 

とにかく、委員会の委員など県の仕事をされている社長が斎藤元知事(当時)の選挙運動を必死でされたわけです。それも広報全般を請け負ったということです。SNSの広報は、これは、代価を受け取った場合は、公選法違反になります。車上運動員、運転手、事務員以外の給料=報酬が発生すればアウトです。他方で、折田社長がやった仕事は、どうみても、社員を一か月半動員しています。無償でやった場合は、労務の提供になる。おそらく、1000万円くらいの仕事になるだろう。個人が政治家にできる寄付の上限は150万円です。政治資金規正法でアウトになります。

また、委員など県の仕事を継続できることと選挙運動が引き換えだった場合も公選法上の買収罪が成立しかねません。いずれにせよ、斎藤知事も折田社長も将棋で言えば「詰み」です。

斎藤知事は、現時点では「法に触れることはしていない」としておられます。しかしそうなると、折田社長の公表した記事とどう見ても矛盾してきます。折田社長と斎藤知事。どちらが正しいのでしょうか?あるいは、どちらがどの程度嘘を言っているのか。特に公職にある斎藤知事には説明責任が求められます。

◆前提「斎藤=既得権益と闘う正義の士」は本当か?

ネット上では斎藤知事の支持者により、折田社長に対する困惑のコメントも相次いでいます。既得権益と闘う正義の士・斎藤知事の足を引っ張るな、と言う趣旨です。しかし、そもそも、斎藤知事の支持者の皆様の既得権益のイメージが古すぎるのではないでしょうか?

既得権益と言うと、一定年齢以上の方は、土建屋さんとか公務員とか、そんなイメージの方が多いかもしれません。それは、自民党よりも、どちらかというと、いわゆる野党やマスコミによって煽られていた面もあります。

しかし、今は、原材料費の高騰や賃金の高騰などで、土建屋さんも大変です。公務員も、昔のような(給料が安い代わりに)楽な仕事でもない。

この10年くらいで随分と地方行政における意思決定過程も変わっています。米国など外資系の企業に近い首長(広島県の湯崎英彦知事もその典型例)とか、広島で言えば、平川理恵・県前教育長や今回登校する折田社長のように、きらびやかな海外経歴の女性・若手の「躍進」が目立ちます。言い換えれば、政治・行政の米国化が進んでいます。

むろん、まだまだ、昔風の特に年配男性のエライ人も健在ではある。そういう中で、実際には、地元で地道に頑張っていたようなタイプの中堅・若手、すなわち、多数派を占める人たちが意外と割を食っている感じがします。そうした中で、割を食った中堅・若手がアホらしくなって県外へ流出する、そういう構造が広島でも起きています。広島の教育現場でも現場の先生が平川氏の「改革」に振り回された後遺症に悩まされています。

そうした構造を把握した上で、行政・政治を批判していかないと、あるべき方向と明後日の方向に兵庫も広島も日本も向かいかねません。ちなみに、折田社長は、広島県や広島市でも仕事をしておられます。折田社長的な人たちに県や市の仕事をしていただいていて、本当に広島のためになっているのだろうか? 広島市民・県民、また市議や県議の皆様にも改めて注意を喚起する次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

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横浜地裁の法廷で医師から、「うさんくさい患者」で「会計にも行ってないと思います」などと名指しで罵倒された患者が、医師の証言は事実無根で名誉を毀損されたとして、神奈川県警・青葉警察署に刑事告訴した事件に展開があった。青葉署はこの案件を横浜地検へ書類送検したが、地検は不起訴に。これに対して患者は、10月30日、横浜検察審査会へ処分の審査を申し立てた。

審査申立書の一部(P01-P02)

審査申立書の一部(P03-P04)

審査申立書の一部(P05-P06)

◎審査申立書の全文 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/11/MDK241121.pdf

検察審査会制度とは、不起訴処分になった事件の妥当性を審査する組織で、処分に対して、事件の当事者を含む一般市民から不服の申し立てがあった場合、一般市民から選ばれた11人の検察審査員が、処分の妥当性を審査する制度である。

医師の証言の中で、患者が病院の「会計にも行ってない」ことを前提事実として、「うさんくさい患者」と人物評価を下したのだが、会計に行った証拠があった。診療報酬を支払ったことを示す領収書が残っていたのだ。

患者が検察審査会に提出した審査申立書の文面からは、尋問の場で医師がいかに根拠のない証言をしたかが、浮かび上がってくる。事実に基づいた患者の人物評価であれば、その内容が他人の名誉を毀損していても、法的な責任を免責されるが、事実とはかけ離れたことに基づいた人物評価は、たとえ法廷の場であっても、刑事責任を問われることがある。

なお、この事件の概要は、下記の通りである。事件の概要を把握している読者は、概要をスキップして、「証言は事実とは異なる?」の節に入っても、内容が理解できる。

【事件の概要】(以下、敬称略)

この事件の発端は、2016年までさかのぼる。この年、横浜市青葉区にあるすすき野団地に住む藤井将登・敦子夫妻は、煙草の副流煙をめぐるトラブルに巻き込まれた。おなじマンション棟に住むA夫と妻、それに娘の3人が、将登が吸う煙草の煙で健康を害したとして、藤井夫妻に対して自宅での禁煙を申し入れてきたのである。

将登は喫煙者であるが、1日に2本、3本の煙草を嗜む程度である。ヘビースモーカーではない。しかも、喫煙場所は防音構造になって外部とは完全に遮断された音楽室だった。将登の職業は、作曲や演奏を担当するミュージシャンで、自宅にいるときは、その大半を音楽室で過ごしていた。仕事の関係で自宅を不在にすることも多かった。従って煙の発生量は微量だった。近隣へ迷惑をかける量ではなかった。

それに音楽室から、A家の窓までは8メートルほどの距離(空間)があり、しかも、両家の位置関係は、藤井家が1階、A家が斜め上の2階になっていて、常識的には、音楽室から漏れた煙草の煙がA家に入り込む余地はなかった。またA家も、窓をビニールで覆うなどして、外気の侵入を防ぐ措置を施していた。こうした状況からすれば、副流煙による被害を直訴すること自体が不自然だった。

 

◆       ◆        ◆

なお、煙草の煙の成分を含む化学物質による人体影響に警鐘を鳴らしている専門医の中には、科学的な見地から「香」による被害を訴えて来院する患者の中に精神疾患に罹患しているケースが多く存在するという見解を発表している者もいる。たとえば千葉大学予防医学センター特任教授の坂部貢医師は、被害を訴える患者の約80%が精神疾患に罹患していると環境省に報告している。

しかし、将登は、隣人の訴えに配慮し、念のために2週間ほど喫煙を止めてみた。元々、ヘビースモーカーではないので禁煙することに苦痛はなかった。しかし、それでもA家の3人による藤井家にたいする苦情はやまなかった。A夫が将登の行動を病的なまでに観察していたことも、後にA夫が裁判所へ提出した自らの日記により明らかになっている。

そのうち藤井敦子もヘビースモーカーだという噂が、団地の中に広がり、何者かが元日早々に、藤井夫妻の自宅のポストに敦子を誹謗中傷する怪文書を投函するに到った。敦子は非喫煙者だった。喫煙したことはあるが、それは10年以上も前のことだった。煙草も吸わないし、酒も飲まない。

しかし、事態はさらにエスカレートしてA家の弁護士が、将登に宛てて内容証明郵便で禁煙を申し入れてきた。提訴もほのめかしていた。また、神奈川県警青葉署の刑事らが、2度に渡って藤井家を訪れ、敦子を事情聴取し、将登の音楽室に入って、喫煙の痕跡を調べるに至った。

藤井夫妻は、煙草をめぐる尋常ではないトラブルに巻き込まれ、平穏な日常を奪われたのである。

◆       ◆        ◆

この事件が社会的に注目を集めるに至る直接的な出来事は、2017年11月に起きた。A家の3人が藤井将登を被告とする裁判を起こしたのである。この訴訟で、A家は4518万円の金銭支払と、藤井将登の自宅での禁煙を求めてきた。敦子は訴外だった。

藤井夫妻は、夫はミュージシャン、妻はフリーランスの英語教師という身の上で、高額所得者ではなかった。裁判官が判決で、高額な金銭支払いを命じた場合、自己破産に追い込まれる怖れがあった。

◆       ◆        ◆

この別件裁判で、A家を全面的に支援し続けたのが、日本禁煙学会理事長で、当時、日本赤十字医療センターに勤務していた作田学医師であった。

作田は、A家3人のために「受動喫煙症」の病名を付した診断書を発行し、そのなかの1通で、「1階のミュージシャン」が煙の発生源であると事実摘示を行った。

通常、診断書には、裏付けのないことは記入しないものだが、作田は現地を取材することもなく、A家の訴えを信用して、将登が副流煙の発生源であることを事実摘示したのである。

さらに作田は、裁判の審理が進む中で、次々と意見書を提出してきた。その総数は5件にも及ぶ。意見書の中でも作田は、煙の発生源は、藤井将登であると摘示し、将登が禁煙することが最も効率的な解決策であるとまで述べている。大上段に振りかぶって将登を罵倒し続けたのである。

しかし、やがて風向きが変わる。作田がA家の3人に対して交付した診断書に重大な疑惑が次々に浮上したのだ。まず、A娘の診断書が2通存在し、双方の診断書の病名が異なっていた事実である。これは単純な表記ミスだったが、ひとりの患者の診断書が2通存在すること自体が不可解だった。

第2に作田が、A娘を直接診察せずに「受動喫煙症」の病名を付した診断書交付していた事実である。これは患者を診察することなく診断書を交付することを禁じた医師法20条に違反する。もちろんインターネットを通じた診察も行っていない。つまり、作田はまったく面識のない人物に対して診断書を交付したのだ。

第3に診断書のフォーマットが、作田が外来診療を行っていた日本赤十字医療センターのフォーマットとは異なっていた事実である。自分のパソコンで診断書を作成した可能性が高い。

これらの点に不信感を抱いた藤井敦子は、作田がどのようなプロセスを経て診断書を交付しているかを直に調査するために、2019年7月17日に酒井久男を伴って、日本赤十字医療センターの作田外来を訪れた。酒井は非喫煙者で、煙草の煙やほこりに対するアレルギーがあった。

酒井が藤井敦子の計画に協力したのは、敦子の夫が高額訴訟の法廷に立たされた後、敦子も心身ともに疲弊していたのを、見るに忍びなかったからである。敦子の髪の毛は、夫が法廷に立たされた後、真っ白になっていた。こうした状況の下で、将登が敗訴すれば、パニックにも陥りかねないと心配したからである。

酒井は、藤井家が勝訴するための証拠を集めるために協力するのが人道だと考えたのである。それにA夫妻の言動を熟知していた。A家の訴えも、どこかおかしいと思っていた。酒井は、青葉区の土着の人だった。

そこで、酒井は、地元のユミカ内科小児科ファミリークリニックを受診し、MRI検査などさまざまな精密検査を受け、担当医に作田外来を受診するための紹介状を交付してもらった。

2019年7月17日、酒井は精密検査のデータを持参し、藤井敦子を伴って日本赤十字医療センターの作田外来を訪れた。作田は、酒井が持参した検査データを確認することなく、問診を行っただけで診断を下し、即座に診断書を交付した。問診の中で、酒井は煙草の煙だけでなく、衣服の繊維を吸い込んでも、咳き込んで仕方がないと訴えた。しかし、作田は診断書に「煙草の煙のないところでは全く症状が起こらない」と記し、「受動喫煙症」の病名を記していた。

ちなみに、受動喫煙症という病名は、作田が理事長を務める日本禁煙学会が独自に定めたものに過ぎず厚労省では認めていない。もちろん世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類(ICD)にも入っていない。つまり受動喫煙症という病気は、公式には存在しないのだ。受動的に副流煙を吸い込む状況はありうるが、それを病名に転換するのは論理に飛躍がある。日本語としてもおかしい。副流煙を吸い込んだ結果、たとえば気管支炎になったという表現なら十分にありうるが、受動喫煙症とう病気は存在しない。

◆       ◆        ◆

藤井将登を被告とする別件裁判は、2020年10月、将登の勝訴で終わった。A家の訴えは、まったく認められなかった。判決が確定したのを受けて、藤井将登夫妻は、A家の3人と作田学を相手どって「反スラップ」訴訟を起こした。訴権の濫用によって精神的・経済的な被害を受けたというのが提訴理由だった。

この訴訟の尋問の場で、作田は裁判の争点とは直接関係のない藤井敦子と酒井久男による作田外来受診の件を持ち出し、「うさんくさい患者さんでした。」「うさんくさい人だなと思いました。」、「当然、会計にも行っていないと思います。」と供述したのである。作田によるこれらの言動が酒井の名誉を毀損するかどうかが、刑事事件の争点だった。ちなみに酒井は、この事件で民事訴訟も起こしている。

 

◆証言は事実とは異なる

さて冒頭で述べたように、この刑事事件の争点は、作田医師が法廷で行った証言が、酒井の名誉を毀損したかどうかという点である。その発言とは、「会計にも行ってないと思います」という事実摘示を前提とした「うさんくさい患者」という人物評価である。

作田医師の言い訳は、酒井と藤井敦子が診察室を立ち去った後、3分後に煙草の匂いがしたので、女性職員に2人の後を追わせ、構内放送も行ったが、2人が診療室へ引きかえさなかったから、酒井が会計をせずに病院を立ち去ったものとみなし、「うさんくさい患者」と評価したというものだった。従って作田が女性職員に酒井を探すように指示していなければ、人物評価の前提事実がないわけだから、「うさんくさい患者」という人物評価は事実に基づかない暴言ということになる。

既に述べたように、酒井は、刑事告訴とは別に作田に対する民事訴訟も起こしている。その訴訟の本人尋問の中で作田は、女性職員に酒井を探すように指示した行為について、弁護士の質問に答えるかたちで、次のように述べている。作田が女性職員に酒井らの後を追うように指示したかを見極めるために重要な部分なので、引用しておこう。

弁護士 陳述書でも書いていただいたように、一つには診察が終わった後に男女の2人組みが出てったら、うっすらとたばこのにおいがしたんだと。それで事務方の方にも確認してもらって、やっぱりたばこのにおいがすると。これは、もしかしたら誤った診断書を出してしまったかもしれないと思って、慌てて後を追ってもらったんだと。ただし見つからなかったという報告があったと。こういう出来事があったことが一点でいいですか。もう一点としては、後に提出された酒井さんの診断書には、検印、割り印ね。病院の印鑑が押してなかった。この2点がまず挙げられているということでいいですかね。

作田 はい、そのとおりです。(略)

弁護士 診察した後に書類を整理していたら、たばこのにおいがしたというわけですね。

作田 はい。

弁護士 そのたばこのにおいがしがしたというのは、患者さんと思われる二人組が出ていってから何分ぐらい経っていましたか。

作田 まあ、3分ぐらいでしょうね。

作田は尋問の中で、自分が酒井に対して「誤った診断書を出してしまったかもしれないと思って」、事務の女性に後を追わせたと証言しているのである。従って、特別な事情がない限り、酒井の診断記録を訂正するはずだ。ところが作田が、酒井の診断記録を訂正することはなかった。

この点については、酒井を作田に紹介したユミカ内科小児科ファミリークリニックに対する情報公開請求で明らかになった。酒井が、同クリニックに対して作田から送付されたはずの診断記録の開示を求めたところ、開示された診療記録には、「受動喫煙症」などの病名が記されていた。訂正はされていなかった。

つまり作田が酒井らの後を女性職員に追わせたという証言は事実とは異なる可能性が極めて高い。法廷での暴言を正当化するつくり話だったと考え得る。「うさんくさい患者」で「会計にも行ってないと思います」といった証言は、事実とは異なる暴言であり、酒井の名誉を毀損しているのである。

余談になるが、酒井らが立ち去って3分後に煙草に匂いがしたというのも、不自然な証言である。

しかし、横浜地検はこの事件を不起訴とした。ただ、酒井が刑事告訴をした時期には、作田医師の証言(タバコの匂いがしたので、診察の間違いに気づいて、酒井のあとを追わせたという証言)は、証拠として警察に提出されていなかった。検察審査会に審査を申し立てるに際して、酒井はこの証言を証拠として提出している。今後、検察審査会の判断が、注目される。

本稿は『メディア黒書』(2024年11月20日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

一つの事件が一人の人生を狂わせることがある。この事件もそうだ。被害者M君は関西の某国立大学大学院博士課程に通う若き研究者だった。〝かの事件〟さえなければ、今は、どこかの大学で学生に囲まれ研究者生活を送っているだろうと思うと不憫に感じられて胸が詰まる。さらには今でもリンチのPTSDに苦しんでいる。それを仲間とのラクビーで紛らわせているという(おそらくラクビーで鍛えた体力がなければ、壮絶なリンチで亡くなっていただろう)。一方加害者の李信恵は能天気に講演三昧の生活を送っている。行政機関や弁護士会、市民団体などが、リンチ事件の存在を知ってかどうかわからないが、李信恵のしたり顔に騙され「もっともだ、もっともだ」と聞き惚れている。世の中どこか狂っている。

10年前の2014年師走12月17日未明、大阪一の盛り場・北新地、その一角で、〝かの事件〟は起きた。 ──

〝かの事件〟から10年が経とうとしている。ここでは2回に分けて、この事件を振り返り、現代の社会運動における〈意味〉を考え、加害者、これに連なる者、あるいは被害者M君やわれわれに敵意さえ抱きトンデモ判決を出した裁判所、無視・隠蔽を決め込んだマスメディア、「知識人」らの〈責任〉を問いたい。

さて、〝かの事件〟とは、「反差別」運動の象徴とされる李信恵ら5名が、この中の1人、金(本田)良平がネトウヨ活動家から金銭を授受したとの噂を撒いたとして深夜、仲間だったはずの大学院生M君を呼び出し激しいリンチを加え瀕死の重傷を負わせたという事件である。

事件の詳しい内容は、私の話を聞き驚き途中から真相究明活動に加わったジャーナリストの黒薮哲哉が本誌、みずからのサイトMEDIA KOKUSHO、「デジタル鹿砦社通信」などでレポートし、なによりわれわれは「特別取材班」を作り、精力的に調査・取材を行い、これまで6冊(紙の爆弾増刊)の本にまとめ発行しているので、本誌では紙幅の都合もあり、ここでは省く。それらをぜひご一覧いただきたい。

ただ、私に対し意図的な誹謗中傷を振り撒く人間がいるので、一言だけ述べておく。かつて構造改革系の新左翼系小党派のリーダーだった笠井潔という人が、リンチ加害者側に立って被害者M君を執拗に攻撃し提訴され敗訴した野間易通と昵懇(共著もある)の仲ということからか、私を「デマゴギスト」などと言いふらしているようだが、われわれはそう言われないように、これまでになくヒトとカネを使って最大限の調査・取材を行い、これはそれなりに評価されている。

ちなみに、笠井にはかつて一度だけ会ったことがある(1985年)。原稿執筆の依頼で尼崎で行われた、その党派も含む構造改革系の追悼集会でだったと記憶する。彼の文章は『敗北における勝利』という本に掲載され、彼は田舎に引っ込んだりで、以来会ってはいなかったが、そんな誹謗中傷を行っているということで思い出した次第だ。それなりの知識人だと思っていたが見損なった。彼は私たちが心血を注いで取材した本を読んで私を「デマゴギスト」と言ったのだろうか? おそらく読んでいないだろうと思い、関係者を通じ届けるように送っておいた。読んだのであれば、読後感を聞きたいところだ。それでも「デマゴギスト」と言うのか!?

◆事件は1年以上隠蔽された

くだんのリンチ事件は、加害者側に立つ者らによって必死の隠蔽工作が図られ、なんと1年余りも隠蔽された。さらに驚くのは、やはり加害者側につながる人物が当社内にもいたことが発覚し、3年も勤め、それでも尻尾を出さなかった。

当時われわれは「西宮ゼミ」といわれる市民向けのゼミナールを隔月ペースで開いていたが、たびたびこれに参加していた者が「相談があります」と言って別の日に資料などを持ってやって来て初めて、このリンチ事件の事実を知ったのである。なかでも驚いたのはリンチ直後の被害者の顔写真だった。言葉もなかった。これが2016年の1月のこと、事件から1年以上が経っていた。

この間、被害者M君らが手を拱いていたわけではなかった。メディアの記者に会ったり、弁護士に会ったりしながら、その都度失望の目に遭ってきた。あえて名を出すが阿久沢悦子なる、当時大阪朝日社会部の記者に相談し、関西の社会運動のいろんなところに顔を出している自称「浪速の歌う巨人」歌手・趙博を紹介され、貴重な資料一式を渡し、われわれとも会い加害者糾弾を共に行おうと約束したが、この直後、趙は李信恵に会い謝罪するという掌返しに行っている。その資料がどこに行ったのかわからないが、万が一権力に渡ってでもいたら、度し難いスパイ行為である。この男は、関西の社会運動のいろんなところに顔を出しているが用心したほうがいい。一部の党派では「スパイ」と見なされていると聞く。

この事件が1年以上も隠蔽されていたのにはいくつか理由がある。加害者・李信恵が「反差別」運動のリーダーで当時ネトウヨ活動家を相手取り裁判闘争を行っていたこと、いわゆる「ヘイトスピーチ規制法」国会上程が準備されていたことなどが挙げられる。関係者一同、心の中では「なんということをやってくれたんだ」と思っていたとしても不思議ではない。

◆われわれは即刻行動を起こした!

驚いたわれわれが躊躇することはなかった。われわれの出版活動は弱い者の味方ではなかったのか、という素朴な正義感のようなものが自然と沸き起こった。

また、「反差別」運動の旗手といわれる者が起こした傷害事件なのに、なぜマスメディアは報じないのか、という素朴な疑問も湧いた。阿久沢記者のような、スパイ行為に加担するような行為をする者までいるのには驚いた。その後、阿久沢記者は静岡に異動になったりしたが、その際、私たちが追及したところ、驚き狼狽し逃げ回った。今からでも取材に応じるなら静岡でもどこでも行く用意はある。

一方被害者M君の味方は、いなかったわけではないが、正直言って力が弱い者ばかりだった。メディア関係者はいなかったので情報が外に向かうことはなかった。

◆事件前後

ここで少しリンチ前後の情況を振り返ってみる。李信恵ら加害者は、前日夕刻から飲み始め、事件に至るまでに5軒の飲食店を回り「日本酒に換算して1升近く飲んでいた」(李信恵のツイッター)ことをみずから明らかにしている。「1升」といえば、常識的に見れば泥酔の域にあったといえよう。前日は対ネトウヨ訴訟の期日で、これが終わり報告会、そして十三の仲間のたまり場の店・あらい商店で食事をしながら飲み始め5軒の店を飲み歩いていることが明らかになっている。

リンチ直後の被害者M君の顔写真。これを見て何も感じない者は人間ではない!

長時間のリンチ後、加害者らは苦しむ被害者を放置して立ち去っている。人間の心があれば、急救車を呼ぶとかタクシーを拾って乗せるとか、それぐらいはするだろう。それさえせずに……。被害者M君は必死でみずからタクシーを拾い自宅まで戻っている。この時のM君の心中は察するに余りある。異変を感じたタクシーの運転手は運賃を受け取らなかったという。

一夜明け、酔いが醒めた加害者らは、おそらく「しまった!」「まずい!」と思ったに違いない。身近な者らも、「なんということをしてくれたんだ」と思っただろう。

その日のうちに、加害者と昵懇の有田芳生(当時参議院議員)が、そして中沢けいらが相次いで来阪している。そこで何が話し合われたかはわからないが、おそらく混乱していたことは容易に想像できる。

そして、年が明け事件から1カ月余りが経った2015年1月27日、李信恵の姉貴分の辛淑玉が悲痛に「Mさんリンチ事件に関わった友人たちへ」と題する文書を配布する。

また、2月3日には李信恵らによる「謝罪文」も送られ、同時に活動自粛も約束される。

辛淑玉文書にしろ李信恵の謝罪文にしろ、また実行犯の金良平、李普鉉の謝罪文にしろ、のちに反故にされるが、少なくともこの時点では、多少なりとも反省の念があったことは認められる。

しかし、被害者が、ほぼ孤立無援状態であることを見透かした加害者らは反省も活動自粛も反故にし、逆にM君に対して村八分にし、あらん限りの罵詈雑言を加え攻撃に転じる。被害者なのになぜ攻撃されなければならないのか? M君のどこに非があったのか? 加害者、陰に陽に彼らをサポートした者らは、われわれの素朴な疑問に答えていただきたい。月日が経っても、われわれは許さない。

◆訴訟の果てに ──

まずM君は、逡巡しながらも、加害者らの不誠実な態度に怒り刑事告訴に踏み切った。しかし、加害者らは逮捕されるまでもなく略式起訴で、最も暴行を働いたエル金こと金良平に罰金40万円、凡こと李普鉉に罰金10万円、あろうことか李信恵は不起訴だった(2016年3月1日)。この刑事処分には大いに疑問が残る。これだけの傷を負い、今に至るもPTSDに苦しみ、人生を狂わせられて、これか。あまりにも理不尽だ。

しかし、M君の苦難は、以後の民事訴訟でも続いた。 ──

民事訴訟は、鹿砦社の顧問弁護士の大川伸郎弁護士を中心として進められた。当初弁護団に名を連ねた弁護士でサボタージュしたり利敵行為を行った者もいて、それなりに加害者(特に李信恵)防衛で一致する加害者側弁護団に比すると脆弱さは否めなかった。

実際に、被害者M君が李信恵ら加害者5人を訴えた訴訟では、勝訴したとはいえ、金額的にも内容的にも被害者、およびM君に寄り添ったわれわれにとっては不満の残るものであった。金良平(控訴審で賠償金113万円+金利確定)、李普鉉(同1万円+金利確定)に賠償金が課されたとはいえ、李信恵ら5人は免責された。特に実質的首謀者と見なしてきた李信恵に何の咎も課されなかったこと、そして共謀を認めなかったことには被害者のM君のみならずわれわれにとっても意外だったし大ショックだった。普通の感覚で常識的に見れば、李信恵の教唆、5人の共謀は当然と言えるが、裁判官という人種の眼は常人とは異なるようだ。

司法はもはや被害者の味方ではない。われわれには計り知れない〝力〟が働いているのかもしれない ── 実際に、М君対加害者5人組との訴訟、鹿砦社対李信恵との訴訟、あるいは鹿砦社対藤井正美(鹿砦社の元社員にしてしばき隊/カウンターのメンバー)との訴訟にしても、裁判官は1件(後述)を除いて、ハッキリ言って公平・公正ではなかった。むしろわれわれに対し敵意さえ窺われた。

こうしたことを認識したわれわれは、訴訟合戦の後半になって、「日本裁判官ネットワーク」の中心メンバーで「市民のための司法」を目指して活動してきた、元裁判官の森野俊彦弁護士に依頼、森野弁護士は受任され、一審で全面敗訴に屈した、李信恵が原告、鹿砦社被告の訴訟の控訴審では、著名な精神科医・野田正彰によるM君の「精神鑑定書」、国際的な心理学者・矢谷暢一郎ニューヨーク州立大学元教授、ジャーナリスト寺澤有の意見書を提出し真っ向から押し戻し、大阪高裁は李信恵の非人間性を認定した。さすがに、瀕死の重傷を負わせておきながら、無垢のままにしておくわけにはいかなかったのだろうか。裁判官としての良識の欠片は残っていたといえよう。一部を挙げ、ひとまず本稿を擱く。

「被控訴人(注:李信恵)は、本件傷害事件の当日、本件店舗において、最初にMに対し胸倉を掴む暴行を加えた上、その後、仲間である金がMに暴行を加えている事実を認識していながら、これを制止することもなく飲酒を続け、最後は、負傷したMの側を通り過ぎながら、その状態を気遣うこともなく放置して立ち去ったことが認められる。」

「本件傷害事件当日における被控訴人の言動自体は、社会通念上、被控訴人が日頃から人権尊重を標榜しておきながら、金によるMに対する暴行については、これを容認していたという道義的批判を免れない性質のものである。」

「被控訴人の本件傷害事件当日における言動は、暴行を受けているMを目の当たりにしながら、これを容認していたと評価されてもやむを得ないものであったから、法的な責任の有無にかかわらず、道義的見地から謝罪と補償を申し出ることがあっても不自然ではない。」(以上、令和3年7月27日、大阪高裁第2民事部判決から)

(松岡利康)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

斎藤元彦知事の不信任決議・失職に伴う兵庫県の出直し知事選挙は11月17日執行され、斎藤知事が返り咲きました。序盤では、立憲民主党や国民民主党、連合兵庫、県内の多くの市町長に推された前尼崎市長の稲村和美さんに大きくリードされていましたが、猛追、そして劇的な逆転勝ちとなりました。

当選 斎藤元彦 無所属前  1,113,911
   稲村和美 無所属新   976,637
   清水貴之 無所属新   258,388
   大沢芳清 無所属新    73,862
   立花孝志 無所属新    19,180
   福本しげゆき 無所属新  12,721
   木島ひろつぐ 無所属新  9,114

斎藤元彦さんは1977年神戸市須磨区生まれ。東京大学経済学部ご卒業後総務省を経て、大阪府の財政課長などを歴任。2021年の知事選挙で当時の上司だった吉村洋文大阪府知事=大阪維新の会代表=に命じられる形で立候補し、自民党(現在は裏金問題で離党・無所属)西村康稔元経産相ら自民代議士にも応援され、元副知事や共産党推薦候補を下して初当選しました。現在手掛けている目玉政策としては、県立大学の県民向け完全無償化が挙げられます。

しかし、2024年3月、渡瀬元県民局長(当時)が斎藤知事によるパワハラや、物品の「おねだり」疑惑、片山安孝副知事らが中心となった信用金庫への補助金をタイガース・バファローズ優勝パレードにキックバックさせた疑惑など県政私物化を告発する文書を県議やマスコミに送付。これに対して斎藤知事らは、公益通報者保護法に基づいて第三者に任せることをせずに、自分たちで「犯人捜し」をしてしまいました。そして、すでに再就職先も決まっていた渡瀬元局長の退職を取り消したうえに、内部調査だけで「懲戒処分」にしてしまいました。こうした中で、パレード担当課長が自死。さらに、百条委員会で証人尋問される前に渡瀬元局長自身も自死したとされています。

その後、9月に県議会は斎藤知事の不信任案を86対0の全会一致で可決。斎藤知事は、9月30日、失職し、出直し選挙となりました。こうした中で、前尼崎市長の稲村和美さんや、維新の参院議員だった清水貴之さん、共産党系の医師の大沢芳清さんらが対抗馬として手を上げましたが、稲村さんが優勢と言われる状況が10月中旬にはありました。

しかし、ネット上ではいつの間にか「斎藤知事は公務員の既得権益に切り込もうとしてクーデターを起こされて引きずりおろされた」という「神話」が広がっていきました。これを選挙の終盤には旧統一協会が機関紙「世界日報」で取り上げるなどし、斎藤候補を援護射撃しました。

兵庫県知事選 「告発はクーデター」説バズり“パワハラ知事”斎藤元彦氏、逆転か

◆NHKではなくデモクラシーをぶっ壊す「立花孝志」さん

特に、知事選挙の候補者の一人・立花孝志さん(無所属ですが、NHK党党首)は、渡瀬元県民局長が「10人の女性職員と不倫をしていた」さらには「10人と不同意性交していた」などと、後でご自身も根拠薄弱と認めるデマを堂々と政見放送やポスターなどで拡散していました。さらに、百条委員会の奥谷委員長の自宅兼事務所にも選挙演説と称して大勢で押しかけ、奥谷委員長は母親を避難させる事態になっています。また、立花候補が煽った誹謗中傷を背景に、同じく百条委員会で活躍していた竹内英明県議が辞職に追い込まれるという異常事態が起きています。

口から出まかせのようなことを繰り返し、注目を浴びた立花候補。斎藤候補は、自らの手を汚すことなく、対抗馬を引きずり落とすことができました。両者の間に面識はない、ということですが、両者をつなぐ大物がいた可能性もあります。

ともかく、立花候補が「NHK党で10人候補を出す」などと大ぼらを吹いたおかげで、兵庫県選管は公営掲示板を急遽増設し、空振りに終わりました。これだけでも、県費と労働力(ただでさえ人手不足なのに)、木材の無駄遣いで、大迷惑です。

また、今後、立花候補のようなことをするものが出ないよう、公選法による規制が厳しくなる恐れもある。結果として行政の選挙運動への介入も強まりかねない。立花候補はNHKをぶっ壊すどころか「デモクラシーをぶっ壊す」男です。

◆稲村陣営も『反斎藤』まとめられず失速

一方、対抗馬の稲村さんも、急激に失速した感は否めません。今回の選挙の大義名分は、「自分についての告発文書が出たら第三者機関に任せずに自分で犯人捜しをしてしまう組織のトップは失格」ということです。政策うんぬんではないのです。そこを押さえておく必要がある。稲村さんは、「斎藤候補は組織のトップ失格」だという人の票をまとめる必要があった。その点が、今回は弱かったように思えます。その結果、求心力が低下していった。

保守の方の中には『稲村さんは外国人参政権を推進していた左翼だから支持できない』という人が現れました。他方でいわゆる左派やリベラルの中には『稲村さんは維新でもやらなかったような保育園廃止をガンガンやるなど新自由主義者だ』という声も強くなってきました。

出口調査では、れいわ支持層の半数も斎藤候補に流れました。これは、稲村さんの新自由主義的な部分を嫌った可能性がある。アンチ新自由主義が一番の判断基準の人が多いから、維新の清水さんもダメ、最近れいわ攻撃を強めている共産党の大沢さんにもいれたくない。消去法で斎藤君と言う人も多かったのかもしれません。それが正しい選択だったかは別として、です。むろん、『さとうしゅういち後援会』の兵庫県内の会員は稲村さん支持で、選挙を手伝うなどさせていただきました。ただ、れいわ支持者全体の動きにはなりませんでした。

とにかく、呉越同舟で反斎藤ということでまとまる絵柄を出せればよかったのだが、それがなかった時点で斎藤候補に付け入るスキができました。

筆者の個人的な稲村さんについての政策的な評価は、小池百合子氏と蓮舫氏を足して二で割った感じです。だから保守からは左に見えるし、リベラルからはネオリベに見える。戦略を間違うと意外と票がのびなくなるのです。  

なお、東京の場合は、一定年齢以下のインテリの共働き夫婦が小池岩盤支持層で、石丸氏(大金持ち及び若いシングル男性が支持基盤)もそこは食い込めず勝てなかったのです。この層は国政では立憲、都政は小池ファースト、経済政策はネオリベだけど子育て支援は推進で選択的夫婦別姓やLGBT関係は推進という感じの方が多いような印象があります。原発問題についてはまあまあ脱原発寄りで環境重視。しかし、その層は兵庫県内では薄かった。そのことも、『兵庫の石丸』ともいえる斎藤候補に有利に働いたとみられます。

とにかく、告発文書が出た時点で、自分で犯人探しをしてしまう人は首長としてアウト。この一点での選挙にできなかったのが稲村さん陣営の最大の敗因です。あとは横綱相撲を取りすぎた、言い方を変えれば、戦術レベルでガバガバ過ぎたという情報が入っています。男子大学生にマイク納めのマイクを握らせているのを動画中継で拝見し、コロナ感染の後遺症でふらふらしていた筆者は椅子から崩れ落ちました。もともと、稲村さんは、市民派の白井文市長(どちらかといえば日本共産党に近かった)が二期連続務めた後、後継者としてわりと楽な選挙で3回当選しています。周囲にも油断があったかもしれません。

◆そもそも「公務員の既得権益」とは何ですか?

今回、斎藤知事は「公務員の既得権益を打倒する正義の味方」として持ち上げられました。しかし、そもそも「公務員の既得権益」とは何か?

近頃の公務員は、労働条件で言っても昔と比べてもキツイ面も多いのです。例えば、モンスターカスタマー(住民)も多い。例えば、名札を名字だけに等の対応もせざるをえない状況が広島市役所でも起きています

実は、公務員の労働環境がきつい状況は10年くらい前からありました。

2011年、筆者は広島県庁を退職しましたが、その後、後輩たちの状況は急速に悪化していたのです。2014年の広島土砂災害の直後、あるイベントの場で『私たち公務員だって大変ですよ!』と、後輩の女性正規職員からガツンと指摘されました。後輩諸君の労働条件がそんなに厳しいのか、と驚いたのをおぼえています。その後も、最近、広島県でも、他の都道府県でも、20代、30代の職員の退職が増えています

そもそも、公務労働者とは労働基本権が制限される代わりに、人事院勧告で給料・労働条件が決まるものです。

人事院が民間企業の労働条件を調査し、それをもとに決めるのです。そして、各都道府県にも国からそれを通知し、各自治体もそれをもとに人事委員会勧告を出し、議会の議決を経て決まるのです。従って、高すぎもしなければ低すぎもしない、と言えます。政治家は、こういう仕組みをきちんと市民に知らせるのも仕事です。

公務労働者が労働基本権を制限されたり、政治活動を制限されたりしていることをいいことに、叩きまくるのは禁じ手です。これは、別に斎藤候補だけでなく、尼崎市長時代に職員のボーナスを削りまくった稲村候補、あるいは「元祖・公務員叩き」の維新の参院議員だった清水候補にも申し上げたいことです。

公務労働者が安心して働けなければ、防災や教育、福祉と言った住民の暮らしに不可欠なサービスが成り立ちません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

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月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは12月号(11月7日刊行)の注目記事2本の一部を紹介します。

◆税金を浪費して弱体化する防衛産業 防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態
 取材・文◎清谷信一

 

 

 低品質の国産装備を不当に高く調達する防衛省

防衛省の調達では、他国よりも性能や品質の劣った国産装備に対して何倍、あるいは一桁高い調達費や維持費を払っている。問題はこのような現実を、防衛省や自衛隊への取材の機会を独占している新聞・テレビ・通信社など記者クラブ会員の媒体がほとんど報じてこなかったことだ。これが防衛以外であれば大問題となっているだろう。

たとえばある自治体が、隣の町では10億円でつくっている小学校を、技術が低い地元の建設会社に50億円や100億円で発注し、しかも手抜き工事で雨漏りや耐震構造もいい加減な欠陥校舎が出来上がれば大問題となるだろう。だが防衛調達では、これが不思議と問題にならない。

国産機の調達をみてみよう。財務省によれば川崎重工が開発した空自のC‐2輸送機の維持費は、ステルス戦闘機で通常の戦闘機の二倍以上するF‐35Aよりもさらに高い。CPFH(Cost Per Flight Hour=飛行時間あたりの経費)も当然高い。

財務省の資料で公開されている、川崎重工製C‐2のCPFHは約274万円。対して米空軍の輸送機のC‐130Jが約61.8万円、C‐17が約150.9万円(※1ドル=112円。平成30=2018年度支出官レート)高コスト・低性能の輸送機「C-2」と哨戒機「P-1」。ともに川崎重工製だ(※参考:再生審議会資料『防衛』平成30年10月24日)。つまりC‐2のCPFHはC‐130Jの4.4倍、C‐17の1.8倍にもなる。

ペイロード(積載量)1トンあたりのCPFHは、C‐2は10.5万円(最大26トン)、C‐130Jは3万円(同20トン)、C‐17(同77トン)は1.96万円である。C‐2はC‐130Jの約3.5倍、C‐17の5.4倍と、比較にならないほど高いのだ。

さらに1機あたりのLCC(ライフ・サイクル・コスト)はC‐2が約635億円、C‐130Jが約94億円、C‐17が約349億円。C‐2はC‐130Jの6.8倍、C‐17の1.8倍である。

ペイロード1トンあたりにするとC‐2は24.4億円、C‐130Jは4.7億円、C‐17が4.5億円。ここでもC‐2はC‐130Jの5.2倍、C‐17の5.4倍となり、これまた比較にならないほど高い。C‐2の調達および維持費が、輸送機としては極端に高いことがわかるだろう。

調達単価、CPFHの面からもC‐2は極めてコストが高い。直近の令和3(2021)年度の補正予算での調達単価は243億円。これはペイロードが3倍近いC‐17と同等以上だ。

この極めて高額なC‐2輸送機を大量に買い、また空自は電子戦機のRC‐2やスタンドオフ電子戦機などもC‐2ベースの派生型として開発している(編集部注・電子戦とは電磁波を使った通信妨害などを伴う戦闘)。

これら派生型は、既存機と整備や訓練などを共用化、効率化できるなどメリットが大きいことはいうまでもない。だが先述のように、C‐2はそのものが調達単価も維持費も超高額であるため、それらのメリットは消し飛ぶ。そもそもC‐2の大きなペイロードは電子戦機に必要ない。

対して米空軍はビジネス機のガルフストリーム550をベースに電子戦機EC‐37Bを開発した。550の調達単価は70~80億円程度にすぎず、C‐2の約3分の1程度だ。維持費も一桁は違うだろう。いったいどちらがまともだろうか。

 欠陥哨戒機P‐1をめぐる海幕と石破茂長官の攻防

同じく川崎重工が開発した哨戒機P‐1も、コストがバカ高い欠陥機だ。現首相の石破茂氏が防衛庁長官だった2002年、彼はP‐1の開発に反対した。P‐1が低性能・高価格となることは必然だったからだ。しかし、内局や海上幕僚監部(海幕)に詰め寄られて、最終的には開発を認めざるを得なかった。官僚たちが一斉に反対することで、彼は孤立無援化してしまった。

海幕は、機体・エンジン・システムすべてを新規に開発する方針をとった。米国ですら既存の双発旅客機である737をベースに開発していたにもかかわらず、新規にエンジンを4発にし、整備コストを大幅に引き上げた。

実はその当時から川崎重工がライセンス生産していきた哨戒機P‐3Cですら、整備予算が足りずに既存の機体からパーツを剥がして使う、いわゆる「共食い整備」をしていた。同機は世界的なベストセラー機として信頼性が高かったのだが、それですらこの有り様なのに、機体もエンジンもシステムも全部専用となれば、調達・維持コストが高騰するのは目に見えていた。

海幕は石破氏に対して「4発の方が双発に比べて生存性が高いです、長官には現場の隊員の気持ちがおわかりになりませんか」と詰め寄った。だが石破氏は「現場は信頼性の低い4発のよりも信頼性の高い双発がいいと言っていたのだが」と筆者に後に語っている。

確かに、同じ信頼性のエンジンであれば、双発よりも4発のほうが信頼性は高い。しかし、信頼性の低いものが4発ではその理屈は通用しない。そして現実にP‐1は低稼働率にとどまっている。主原因はエンジンの信頼性だった。

さらに、4発にすることでコストが高騰し、P‐1は整備用パーツを十分に確保できないことも予想されていた。当時のP‐3Cですら前述のように「共食い整備」を強いられていたので、それよりも維持費が何倍もかかるP‐1ではなおさらだ。果たしてP‐1の調達費は初年度(2008年度)で予定の100億円から157億円に高騰、来年度では421億円と、当初の目論見の4倍以上に膨れ上がっている。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/ne319308be297

◆優生保護法めぐる訴訟が排除した本当の被害者
 野田正彰(構成・本誌編集部)

 

 

2024年7月3日、最高裁は旧優生保護法(1948~96年)を違憲とし、国の賠償責任を認める判決を下した。10月8日には同法の下で不妊手術が強制された被害者に1500万円、配偶者に500万円、人工妊娠中絶手術を受けた人に200万円を支払う「旧優生保護法補償金支給法」が、参院本会議で全会一致で可決・成立。被害者に謝罪や差別の根絶を表明する決議も採択された。

この最高裁判決をもって、今から6年前の2018年1月、宮城県の60代の女性の提訴に始まった旧優生保護法下の強制不妊手術問題は一応の決着をみた、ということになっている。

私も判決は画期的であったと思う。しかし、優生保護法騒ぎには、根本的なごまかしがある。

一連の裁判は「精神障害者への優性手術が違法であると確認された」と報じられた。しかし、そこで対象とされたのは、本当に精神病者なのか。私がマスコミ関係者や弁護士、精神科医など十数人にこの問いを投げかけると、全員が「当然そうです」と答えた。だが、彼らの中には一人として、この法律の主たる対象であったはずの精神分裂病者(現在は「統合失調症」という名に変えられた)が原告団にいないことに気付いた人はいなかった。

各紙が原告と弁護士の喜びの姿を報道した。しかし、そこに長期間、精神科病院に強制入院させられた人らしき姿がないことに気付いた人はいない。先の十数人に聞くと皆、「当然、いるんじゃないですか」と口を揃えた。

実際は、原告は全て知的障害か、何らかの神経疾患である。ただ1人、実名を明かして訴え出た小島喜久夫さんは、精神分裂病と故意に病名を仕立てられて強制手術を受けた人だ。しかし、本誌2019年2月号で詳述したように、彼は10代のころ養父により札幌市内の中江病院に強制入院させられると、何の症状もないのに医者が問答無用で「精神分裂病」と診断して手術を強行した。小島さんは数カ月後に病院を脱走。その後、タクシー運転手として働くなどして70歳過ぎまできちんとした人生を送ってきた。

私は精神科医として彼を診察し、札幌地裁で証言した。彼のケースは素行が悪かった青年を意図的に精神分裂病と診断したものだ。すなわち、そもそも優生保護法の対象に当たらない人への犯罪(傷害)である。

 日本の精神医学の根幹にある優生保護法

私は1973年、「朝日ジャーナル」(2月16日号)に「偏見に加担する教科書と法」、翌74年(9月20日号)にも「偏見改まらぬ教科書――再び精神科医の立場から」を書き、優生保護法は人権抹殺思想であると訴えた。その経緯から、今回の最初の裁判が起こされると、朝日・毎日をはじめ多くの記者が取材に来た。

優生保護法の犠牲者の85%が精神病者であり、その多くは統合失調症者であった。この事実こそ、この問題の根幹であることを私は何度も強調した。なかでも熱心だったのが毎日新聞で、記者らは長時間をかけて私の話を聞いていった。しかし、大きく紙面を割いたインタビュー記事は、この重要な事実に触れなかった。私が抗議しても書かない理由を答えなかった。

毎日だけではない。全メディアが意図的に報道から除外した。毎日新聞グループは新聞協会賞をとり、2019年に『強制不妊――旧優生保護法を問う』(毎日新聞出版)まで出版した。

優生手術の主たる対象が精神病者であるという事実が重要なのはなぜか。そして、なぜマスコミはその事実を報じないのか。

私は1969年に北海道大学医学部を卒業し、精神科医として働きはじめた。当時の私は精神の病理を通して人間の精神全体を研究したいと思っていた。研修を始めてすぐ、戦後の民主化の時期に子ども時代を過ごした人間として、そして安保闘争や大学闘争に関わってきた青年として、日本の精神医学は誤っているという問題意識を強く持った。

医学部学生から精神科医へと進む過程とは、実は自ら人間性を失う過程でもある。たとえば私が通った北大では、すり鉢状の大教室の講義で諏訪望教授が助手に命じ患者を連れてきて、学生の前で意味もなく電気ショックをかけた。助手に押さえつけられた患者の全身が大きく痙攣する様子を、学生は黙って見ていた。

私は授業の後、抗議しなかった自分を責めた。電気ショックがどういうものかを学生に見せるために、患者にかけてみせる。患者はどれほど苦しい思いをし、自尊心を踏みにじられたことか。それに誰一人として無関心となるようにすることが、精神科の医学教育である。

卒業後、札幌市立の静養院を訪れると、板張りの大部屋に置かれた木製の大机で患者たちが昼食をとっていた。その大半はロボトミーやロベクトミーされていた。

ロボトミー手術は、電気ショックで意識を失わせたうえ、眼瞼の上から先の曲がったメス状のピックを差し込み扇状に動かし、前頭葉の周囲の動脈をずたずたに切断し壊死させる。脳には人間の血液の多くが流れ込む。その血管を開頭もせずに当てずっぽうに切り裂くことで、多くの人が亡くなっていった。ある病院では、術後数カ月の死亡率が3~4割に達したという。ロベクトミーは開頭して前頭葉を切除する手術を指す。

「臺(うてな)実験」と呼ばれた、1950年頃に東京都立松沢病院で行なわれた人体実験がある。廣瀬貞雄がロボトミー手術をした患者から生検用の脳組織を切除した。それが学会で問題となると、主導した臺弘は、ロボトミーで大脳皮質を壊死させるのだから問題ないと、まるで廃物利用したかのように言ってのけた。臺はその後に東京大学、廣瀬は日本医科大学の教授となった。廣瀬は札幌医大の中川秀三教授とともに「日本のロボトミスト」と呼ばれる人物である。こんな人がこんな殺人医学で教授になり、その思想を医学生に伝承してきた。

松沢病院に勤めていた吉田哲雄医師が、被害者のカルテを探し出し、記載内容を次のように発表した。

〈手術前、手術台上にて「どれ位切るんですか、かんべんして下さいよ、脳味噌取るんでしょ、どれ位とるんですか、止めて下さいよ、馬鹿になるんでしょ、殺されてしまうんじゃないですか、殺さないで下さい、お願いします、家ヘ帰らせて下さい、先生、大丈夫ですか、本当に大丈夫でしょうか、死なないですか、先生、先生、本当に死なないでしょうか、先生、先生、先生……」といった調子で執劫に情動的な訴えを繰返す。Grazieが全然ない。左側白質切載が終ると途端に自発的に口をきかなくなる。〉

患者は約一週間後に亡くなった。「Grazie(グラチー)」とはドイツ語で「優美」という意味で、精神医学では人間としての精神の自然な流れを指す。殺人医師が殺す人を、死を覚悟する優美さがないとカルテに書く。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/ne23bed47f158

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

『紙の爆弾』2024年 12月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2024年11月07日発売

野田正彰
優生保護法をめぐるお祭り訴訟 犯人と被害者のいない殺人事件

清谷信一
税金を浪費して弱体化する防衛産業 防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態

内海聡(医師)×長井秀和(西東京市議)
日本人と日本社会が罹った薬と政治の「依存症」

広岡裕児
ハマス攻撃「10・7」から一年 ネタニヤフは何を考えているのか 

足立昌勝
袴田巌さん再審無罪判決が切り拓く死刑廃止への道

浜田和幸
拉致問題を「解決させない」のは誰か 日本と北朝鮮の間の語られざる闇 

青木泰
公明党代表・石井啓一は元森友大ウソ国交大臣 

横田一
兵庫県版“石丸現象”で斎藤前知事再選も 兵庫県知事選で問われる“民意”とは何か 

浅野健一
札幌・安倍晋三ヤジ訴訟 最高裁は「憲法の番人」の役割を捨てた 

木村三浩
フィリピンの「キングメーカー」ロドリゲス前官房長官 「アジア版NATO」よりもアジア諸国の団結を 

上條影虎
なぜ世界は戦争を終わらせようとしないのか? アメリカが牽引する歪んだ正義の正体

小西隆裕
終焉するグローバリズムと新自由主義 日米一体戦争体制から日本が脱却するために

片岡亮
ジャンポケ斎藤事件の背景 「観るべきではない」メディアに堕したテレビ現場の惨状 

“嵐”来年3月復活説の背景 NHKも全面協力 ジャニーズ「幕引き工作」

佐藤雅彦
「来た、見た、逝った」架空体験記「SEXPO 2025」 

青柳雄介
シリーズ 日本の冤罪54 袴田巖冤罪事件 

山口研一郎
一九七四年「学園闘争」から半世紀 長崎大学医学部闘争の全資料発掘 

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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広島県の産廃行政は〈穴だらけ〉どころか〈穴だけ〉ではないでしょうか?

 

11月15日に行われた控訴審の口頭弁論。原告団のSNSより

11月11日、広島県は、三原市と竹原市の水源地のど真ん中に許可している〈三原本郷産廃処分場=JAB協同組合=〉から基準値の7.5倍のBOD(Biochemical Oxygen Demand=生物化学的酸素要求量)が検出されたとして、同協同組合に警告の行政処分を行いました。

一応、同組合は、操業を一旦停止して対策を立てるとのことです。しかし、これまでも同組合は2023年夏以降、何度も県から〈警告〉や〈指導〉を受けていました。業者がその場しのぎの対策にもなっていない対策を行い、県も〈それでよし〉とし、また汚染水が流出する。その繰り返しです。こうした中、産廃処分場許可取り消しを求める住民裁判の第4回口頭弁論が11月15日、行われました。

◆県が裁判を引き延ばす間に汚染が広がる

そもそも、2023年7月には、住民が県を相手取って、産廃処分場の許可取り消しを求める裁判で県は敗訴しました。産廃処分場の許可取り消しを命じられています。普通なら、ここで判決を受け入れるものですが、湯崎英彦県知事はこれを控訴。さらに、広島高裁での控訴審では県は、業者を裁判に県側で補助参加させ、県が業者と一体となって、県民に敵対しています。県が裁判を引き延ばしている間に、汚染がどんどん広がる。これが実態です。

 

◆6割の田んぼで作付け断念!

すでに、周辺の農業への影響は深刻です。日名内上地区の田は2024年春、250アールのうち157アール稲作付けを断念しました。ほぼ毎日農業用水の参考基準値のCOD(Chemical Oxygen Demand =化学的酸素要求量)が6mmg/リットルを超えています。6月からは100~300という数値が毎朝夕検出されています。三原市は川の上流の水を流す管をつけましたが、それは上部の少しの田にしか届きません。また、10月には三原側だけでなく、竹原側の川でも泡水が出ました。三原市、竹原市の農業はもちろん、パン作りやお酒造り、さらには漁業にも大きな影響が出かねません。湯崎英彦知事は、2024年度の県政の大きな柱として「広島の食材・料理のPR」を掲げています。しかし、穴だらけというより穴しかないような産廃行政をそのままにして、有効な施策になるのでしょうか?

これまでの主な流れは以下です。

2020年4月  広島県が三原本郷産廃処分場の設置を許可
      住民側、県に許可取り消しを求める住民訴訟、業者に操業しないよう求める仮処分

2022年秋  処分場操業開始

2023年初夏 処分場から汚染水流出発覚
   7月  広島地裁、県に許可取り消しを命じる判決。湯崎英彦知事は控訴。
          汚染水流出で県が業者を指導。業者は無視。
          業者による無視に対して「警告」
   8月  業者、井戸を真水で洗浄し検査に〈合格〉。警告解除。

2024年6月 三原市議会、水源の保全に関する条例を県内で初めて可決。
      不十分ながらも立ち入り調査や氏名公表などの権限が市に。 
  7月頃 汚染水がさらに激化(写真、筆者撮影)。
   8月 県、鉛が検出されたとして業者を〈指導〉
   9月 指導を解除
   10月 三原側だけでなく竹原側でも泡の立った水。
11月11日 BOD超過として県が業者を〈警告〉。
11月12日、住民が県に対して業者への厳しい行政処分を陳情。
11月15日 控訴審第四回口頭弁論。次回口頭弁論は1月17日(金)13時10分、その次は3月14日で調整中。

11月15日の裁判では県や業者からは特に新しい主張もなかったそうです。住民たちは病院や仕事、家族の介護などの算段をして裁判に臨んでいます。そして、裁判がのびればのびるほど、ゴミは流入してきます。最近ではフクシマの原発事故で汚染されたゴミも規制の甘い広島を目指している状況もあります。高裁の裁判官は、十分にまだ状況を把握されていない、というお話も弁護士からはうかがいましたが、しっかり把握した上で結論を出していただきたい。

また、業者はゴミに対して、即日覆土していません。立木を勝手に伐採し、埋めかけている。一トン土のうのようなフレコンバックをダンプからおろし、展開検査をせずにすぐ埋め立てている状況があります。現行法すら、全く守っていません。三原市には今夏作った条例により立ち入り調査を実施し、同時に排水口で水質検査をしていただきたいものです。

何度も繰り返す通り、広島県はとびぬけて産廃規制が全国でも緩い。こんな広島県が自主的に動くのを待っていては手遅れになりかねません。国の廃棄物処理法を改正し、全国一律で厳しく規制(要は甘すぎる広島以外に合わせる)ことも、参院選など次期国政選挙を前に議論していくべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

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昨年10月7日パレスチナ自治区であるガザを支配するハマス(「イスラム抵抗運動」)がイスラエルを侵攻してから1周年を迎えた。周知のように、イスラエルは「自衛権の行使」だとしガザ地区に連日、空爆を行い、ガザ地区の占領をおこなった。この一年で4万2千人のパレスチナ人が犠牲になった。主に女性、子供たちだ。さらに1万余りの人々が収容所に拘束されている。生き延びた人々は飢餓と薬不足に苦しんでいる。

また、戦禍はレバノンにもおよびイスラエルの空爆により数千名が犠牲になっている。イスラエルはイラン滞在中のハマス最高指導者ハニヤ氏をミサイルで殺害し、レバノンのヒスボラ指導者ナスララ師ら幹部20名も地下施設を破壊する強力な爆弾で犠牲にした。その報復として、イランが180発の弾道ミサイルでイスラエルを攻撃した。イスラエルはヨルダンにたいする地上侵攻をすすめる一方、イランにたいする報復をいかにおこなうかについてアメリカと協議したうえ、原油施設を攻撃した。

こうして、この一年の間にイスラエルは侵略戦争を拡大させている。世界はいつイスラエルの侵略をやめさせることができるかを憂いている。日本政府はイスラエルの空爆に憂慮を示しているが、アメリカのイスラエル支援を容認したままだ。

◆ハマスの攻撃はパレスチナ人民の総意であり、衰退するアメリカ覇権勢力にたいする先制的な打撃を与えるもの

ここでハマスの攻撃の意義をよく見ることが重要だと思う。ハマスを「テロ組織」、ハマスを支持するパレスチナ人をテロ分子だとする考え方がアメリカをはじめG7諸国で基調となっている。1年前のハマスのイスラエル攻撃をその最大のテロ行為だと声を上げて非難している。

しかし、イスラエルが英米の支援のもとで1948年パレスチナの地に国家を建て、450万人ものパレスチナ人が追放され、ガザ地区と西岸地区に壁で囲まれた青空だけがある天井のない監獄のような場所に閉じこめられ、シリア、レバノン、ヨルダンなどアラブ諸国の難民キャンプで流浪生活を余儀なくされてきた。

一方、イスラエルは四次に亘る中東戦争とたえざる植民を通じて領土を拡大してきた。イスラエルは侵略と略奪のなかに生まれ肥え太ってきたが、そのイスラエルは英米が中東地域を抑えるための覇権主義の拠点であるということができる。

抑圧があるところに反抗と戦いが生まれるものだ。それゆえ、ハマスのイスラエルにたいする抵抗と攻撃はパレスチナ国家創建をめざすパレスチナ人民の正義の戦いであるといえる。その戦いのなかでハマスが生まれ、ガザを支配するまで強化された。

自己の主権国家の創建をめざすパレスチナ人民の戦いは単にイスラエル国家にたいする戦いだけではなく、イスラエルを軍事経済的に支援するアメリカをはじめとする欧米覇権勢力との熾烈な戦いが伴っている。2国間共存を謳ったオスロ合意は、イスラエルのラビン首相の暗殺とシャロン政権により踏みにじられた。欧米諸国は「二国間共存」を言ってきたが、イスラエルの植民地主義を庇護、支援してきたので、パレスチナ国家が創建されないどころからパレスチナ人民はいっそう悲惨な奴隷の境遇におかれてきた。

それゆえ、ハマスのイスラエル侵攻はパレスチナ人民の正義の戦いであるといえる。かつ、ウクライナ戦争が長期化し、NATO側の敗色が濃くロシア側が攻勢を強めている時期にあって、しかもサウジアラビアがイスラエルとの国交交渉がおこなわれパレスチナ問題が忘れかけられようとした時、ハマスは果敢な攻撃をしかけた。それはアメリカの対ロシア、対中国の戦線を対パレスチナという3正面作戦に引きずりだすという意義をもち、衰退するアメリカ覇権主義をさらに危機に追いつめるものだった。

かつてイスラエルとパレスチナの戦いはイスラエル(ユダヤ)の大義とアラブの大義の対立だと言われ、アラブ民族主義を掲げたエジプト、シリアなどが中東戦争の前面に立ったが、今は反米自主をかかげるハマスとともにイランとヒスボラ、イエメンのフーシ派が「抵抗の枢軸」を結成し反イスラエル戦争の前面にたち、覇権主義と反覇権主義の鋭い対立の場をなしている。

◆イスラエル侵攻拡大は反イスラエルの戦いを起こすだけ

イスラエルはこの一年間、「自衛権」を掲げ、ガザにたいする無差別空爆と地上侵攻をおこない、レバノンにたいする無差別爆撃と地上作戦をおこなってきた。ハマスの侵攻を許してしまった「汚名」の雪ぎであり、「復讐」だ。イスラエルは「目には目、歯には歯」どころか、イスラエル人1名が殺されれば100人、1000人殺していく悪鬼と化している。イスラエル国内ではパレスチナ人をすべて殺せという世論が支配しているという。その戦火を拡大していく姿は、あたかもかつて反日勢力にたいし懲罰を加えるという口実で侵略戦争を拡大していった日本軍国主義やナチスドイツを想起させる。それを後ろから支え、督促しているのがアメリカ覇権帝国だ。

しかし、イスラエルが無差別爆撃と地上侵攻を拡大していけばいくほど、人々の反イスラエル感情を燃え立たせ反イスラエル勢力を強化していくことになり、世界からイスラエルは孤立を深めることになる。それゆえ、ハマスやヒスボラの壊滅はありえない。イスラエルは侵攻するたびに反イスラエル戦士を生み出しているからだ。

言うまでもなく、パレスチナ問題の解決はパレスチナ人民が望み、国連をはじめ圧倒的大多数の諸国が求めているパレスチナ国家の創建だ。しかし、それを妨害しているのは覇権主義国家であるイスラエルであり、パレスチナの国連加盟に唯一反対しているアメリカだ。アメリカは口先でパレスチナ国家を認めるが、実際にはパレスチナ国家を認めないイスラエルを支援することによってパレスチナを犠牲にしている。

パレスチナ国家の創建は、これまでの暫定自治政府(西岸地区、ガザ地区)だけではなく、イスラエルが植民化したパレスチナ領土を回復した国家の建設であり、それをイスラエルが認め、不当に占領した地域(ゴラン高原など)から撤退し、パレスチナ国家との友好平和協定を締結することだと思う。そのためには、イスラエル自体が覇権主義を放棄し、平和国家に転換しなければならないだろう。それはユダヤ人自身が決める問題だ。イスラエルが侵略と占領を放棄しないかぎり、パレスチナの抵抗と戦争が終わることがないだろう。

イスラエルはイランをはじめ戦争を拡大していけば、中東情勢は極度に不安定になる。アメリカは中国を最大の戦略的競争相手と位置づけ、その包囲と弱化に集中させようとしており、中東での戦乱拡大を望まず収拾しようとしている。アメリカ主導の停戦の動きがはじまっている。しかし、戦乱の根源であるイスラエルが覇権主義をやめないかぎり、反イスラエルの戦いが起こりつづけ戦乱が収まることはないし、アメメリカは中東での戦乱の泥沼から抜け出ることができないだろう。

 

赤木志郎(あかぎ・しろう)さん

◆問われる日本の対米追随

日本にとって中東情勢の緊迫は、たんに石油やスエズ運河の物流問題だけではない。覇権主義と反覇権主義の戦いでアメリカの覇権主義勢力につくのか、世界の潮流をなしている反覇権主義、自国第一主義勢力の側に立つのか、するどく問われている。いいかれば、日米同盟機軸で覇権の側にたちこのまますすむのか、アジア諸国、とりわけ中朝露との平和的友好関係を構築して日本の非覇権の新しい道を拓いていくのかだ。

アメリカはウクライナ、パレスチナ、中国で三正面対決を迫られ、米覇権の崩壊に直面している。アメリカに従っていくことは、対中代理戦争国家として崩れゆく覇権主義を支える無駄な抵抗でしかなく、日本の滅亡しかない。世界の趨勢である反覇権、脱覇権の自国第一主義の道に進んでこそ、日本の恒久的な平和と繁栄があるだろう。

しかし、岸田政権以降、わが国は「日米同盟新時代」をかかげ対中代理戦争をになうべくミサイル基地の建設、弾薬庫拡充、港湾空港の戦時利用態勢、さらに核ミサイル配備まで容認しようとしている。アメリカの代理戦争の先には、アジア人同士で戦い日本の滅亡があるということは目に見えている。

アメリカに従い戦争の道に進むのか、それとも非戦平和の自国第一の道にすすむのか、その岐路あって脱覇権の根本的な新たな転換をめざしていくことではないだろうか。

▼赤木志郎(あかぎ・しろう)さん
大阪市立大学法学部中退。高校生の時は民青、大学生のときに社学同。70年赤軍派としてハイジャックで朝鮮に渡る。以来、平壌市に滞在。現在、「アジアの内の日本の会」会員

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆1.5. TRU廃棄物と中深度処分

NUMOは、高レベル放射性廃棄物=ガラス固化体の他にTRU廃棄物も地下施設で保管する、といっています。TRU廃棄物は再処理工程の作業で生じた放射性廃棄物です。NUMOは、TRU廃棄物を長さ約90cm、直径約60cmのドラム缶に詰め込んだTRU放射性廃棄物と、長さ約40cm、直径約130cmの金属製のキャニスタに詰め込んだTRU放射性廃棄物に分けています。そして、概算で1万9000立方メートルのTRU廃棄物を地下施設で保管する、といっています。

NUMOは、ドラム缶に詰め込んだTRU放射性廃棄物は、セメントで固めて地下施設で保管する、キャニスタに詰め込んだTRU放射性廃棄物は、複数本のキャニスタをまとめて「廃棄体パッケージ」という金属製の箱に入れ、セメントで固めた後、ベントナイトで包み、地下施設で保管する、といっています。

NUMOが開示している資料を読んだのですが、どのような基準でTRU廃棄物をドラム缶に詰め込むTRU放射性廃棄物とキャニスタに詰め込むTRU放射性廃棄物に分けるのかが、よくわかりません。たとえば、再処理工場では使用済み核燃料棒を細かくせん断した後、硝酸で溶かしてウランとプルトニウムを分離し、高レベル放射性廃棄物を抽出してガラス固化しますが、その場面で、放射能を帯びた多量の希ガスが生じます。希ガスは、放射能半減期が非常に長いヨウ素129を含んでいます。そこで、銀製フィルタでヨウ素129を取り除きますが、NUMOは、使用済み銀製フィルタの残渣をドラム缶に詰め込むつもりでいるのか、キャニスタに詰め込むつもりでいるのかがわかりません。

(再処理工場では、ヨウ素129を取り除いた後の希ガスを環境に放出します。その場面で、多量のクリプトン85や他の様々な放射性希ガスを環境に放出します。関心のある方は、核燃料サイクル阻止1万人原告団のサイト、澤井正子さんが学習会で使用したプレゼンテーション・ファイル等を参照してください)

核燃料ペレットをジルコニウムの被覆管=鞘に入れ、被覆管の両端を金属製のエンドピース=蓋で閉じたものが核燃料棒です。再処理後、ジルコニウムの被覆管の断片と、金属製のエンドピースが放射能を帯びた残渣として残ります。放射能を帯びたジルコニウムの残渣を「ハル」と呼んでいますが、NUMOは、このハルとエンドピースはキャニスタに詰め込むTRU放射性廃棄物である、といっています。しかし、ハルには放射能を帯びた硝酸等放射性廃液が付着しています。NUMOは、放射性廃液はドラム缶に詰め込むといっていますが、付着した放射性廃液をハルから取り除くことは、おそらくできません。NUMOが、放射性廃液とハルをどう仕分けているのか、よくわかりません。

より大きな問題が別にあります。原子力カルト教団と経産省資源エネルギー庁、NUMOは、ガラス固化体だけが高レベル放射性廃棄物であるといい、他はすべて低レベル放射性廃棄物である、といっています。彼らの考えにしたがえば、TRU廃棄物も「低レベル放射性廃棄物」になります。

(ちなみに、原子力カルト教団と経産省資源エネルギー庁、NUMOは、TRU廃棄物の中深度処分も考えているようです。日本原電は、解体した原発=廃炉の制御棒や炉心等金属類を地下70m以深に埋設するつもりでいます。日本原電、および経産省資源エネルギー庁とNUMOは、これを「中深度処分」と呼んでいます。彼らは、中深度処分は、礫層下位の泥岩層に放射性廃棄物を埋設する地層処分なので、地表のピット処分等より安全性が高い、と考えているようです。しかし、地下70mが必ず泥岩層であるとの保障がありません。それについては後述しますが、彼らは、おそらくヨーロッパの地層処分等を参照して、礫層の深度は30~50mである、と決めつけているように思います)

原子力カルト教団と経産省資源エネルギー庁、NUMOの、ガラス固化体以外はすべて低レベル放射性廃棄物であるとの考えは、乱暴すぎます。放射性廃棄物は、少なくとも高レベル放射性廃棄物と準高レベル放射性廃棄物、低レベル放射性廃棄物と準低レベル放射性廃棄物の、4つのクラスの放射性廃棄物に仕分けるべきです。[表2]は、僕が考える、4つのクラスの放射性廃棄物です。

[表2]

[表2]の右列に、各クラスの放射性廃棄物の例を書きましたが、他にも例を書くことができます。たとえば、使用済み核燃料はクラス3放射性廃棄物です。廃炉の金属類等はクラス2放射性廃棄物で、廃炉の放射性コンクリート等はクラス1放射性廃棄物です。

僕には、この4つのクラス分けが妥当なクラス分けであるか否かはわかりませんが、とはいえ放射性廃棄物のクラス分けは必要です。次節から本論に入りますが、放射能については、この4つのクラスの下で論じたいと思います。

(中間貯蔵についても、意見を少し述べさせてください。僕は、中間貯蔵施設の建設に反対です(大反対です!)。しかし、電力資本は、ドライキャスク=乾キャスクに使用済み核燃料棒を格納して中間貯蔵するつもりでいます。原発に反対する人たちの中にも、乾キャスクを推奨する人がいます。たとえば、原発に反対しておられる某公立大学工学部の某名誉教授は、地震対策上、使用済み核燃料棒は乾キャスクに格納して保管するほうがよい、といっています。しかし、乾キャスクは一次的に中性子線を遮断し、二次的にガンマ線を遮断する仕組みのキャスクです。そのため、乾キャスクで使用する鉛の中に多量の放射性鉛が生じます。鉛205の放射能半減期は1.53x107です。鉛204は、アルファ崩壊型放射性核種で、放射能半減期は1.4x1017です。(107=1000万、1017=10京です。鉛204の放射能半減期は、宇宙の寿命より長そうですね)。従来のキャスク=湿キャスクは、一次的にガンマ線を遮断し、二次的に中性子線を遮断する仕組みでできています。そのため、生成する放射性鉛の量は少ないように思います。使用済み核燃料棒は、湿キャスクに格納し、原発建屋内の燃料プールではなく、原発敷地内に堅牢で大きいなプールをつくり、そこに保管すべきでしょう。その場合、放射性鉛の生成量が減少し、また中間貯蔵施設が不要になります。原発は、停止して石棺化し、発電機でなく、使用済み核燃料棒の冷却装置として再活用すべきです)(つづく)

◎平宮康広 僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由(全7回連載)
〈1〉日本原燃が再処理工場を新設する可能性
〈2〉ガラス固化体の発熱量は無視できても、地温は無視できない
〈3〉NUMOがいう地下300m以深の「岩盤」は、本当に「天然のバリア」なのか
〈4〉ガラス固化体以外の廃棄物が低レベル放射性廃棄物であるとの考えは、乱暴すぎる 

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

11月10日(日)大国町ピースクラブで「15年目の矢島祥子さんとともに歩む集い 真実は消えない、つなげる未来」が開催された。会場は満席、ここ数年新しい方の参加者が多いため、私は追悼メッセージの代わりに「あの日何があったのか」を少しお話させていただいた。以下はそのレジュメから。

 

◆あの日、何があったのか?

2009年11月13日 19時45分頃 祥子さんは最後の患者を診終える。

20時過ぎにB職員が、22時頃にC職員と黒川所長が診療所を退出「祥子さんは奥の部屋でパソコン作業をしていた」(C職員)。

23時18分から37分の間、祥子さんが診療所を退室・入室をしていることが、祥子さん名義の警備会社のセキュリティカードの履歴からわかる。

11月14日 4時15分頃 電子カルテがバックアップされる。

4時16分に退出が記録されている。その際、セキュリティカードに誤作動が生じた。それまでも誤作動が生じる場合があったが、その都度祥子さんから警備会社に電話がいくか、警備会社からの電話に祥子さんが出ていた。しかし、その日、祥子さんが電話をかけることも電話に出ることもなかった。そのため、警備会社が緊急出動したが、すでに30分も経過していたため、診療所に問題なしと報告されていた。 同じ頃、祥子さんの携帯から翌日会う約束だった友人Ⅹさんに予定をキャンセルするメールが送信。のちにXさんが遺族と診療所へ報告した祥子さんからのメールの着信時刻が違っていたため、遺族が正確な時刻を確認したいとⅩさんに申し出たが、携帯が壊れたとの理由で確認は出来なかった。 

14日10時過ぎ、出勤しない祥子さんを心配して、診療所の看護師Dさんが徒歩10分ほどの祥子さんの部屋を訪ねた。祥子さんは不在で、施錠されていなかったため中を覗くと、室内は整然としていた。その後も職員らが何度か祥子さんの携帯に連絡をいれたが繋がらず、午後13時10分過ぎ、黒川所長とD看護師が再び祥子さんの部屋を訪ねたが変わりはなかった。翌15日になっても祥子さんが出勤しなかったため、黒川所長らが西成署に相談。捜索願いは親族から提出する必要があるといわれたため、黒川所長は初めて群馬の実家に電話をかけた。

16日深夜、西成区の木津川で祥子さんの水死体が発見される。
  

 

◆祥子さんの死因について

司法解剖した大阪市立大学・前田均教授(当時)は、直接の死因を溺死とした。その結果をうけて西成署は、死因を「溺死」とし「自殺の可能性が高い」と遺族に説明した。 一方、霊安室で祥子さんの遺体と対面した家族は、その目で祥子さんの首に左右対称にできた赤黒い線状の傷や、頭部のたんこぶを確認した。そのため祥子さんの母校・群馬大学医学部付属病院に再度司法解剖を依頼。西成署に対しては「殺人」と「死体遺棄」で捜査するよう要請した。

3ケ月後、遺族が前田教授と面談した際に、前田教授は、後頭部の傷は生前のもの。首の傷は『生前・死後の判別不能』と説明された。(注・後頭部の傷(たんこぶ)について、西成署は川から祥子さんの遺体を引き上げた釣り人が頭部を固いものにぶつけ、たんこぶができたと説明していた)。

12年8月22日 遺族は「殺人」と「死体遺棄」の容疑で西成署に告訴状を提出、受理された。しかし、死体遺棄については同年11月16日時効が成立。 

 

『日本の未解決事件 100の聖域』(宝島社)フリー・ジャーナリストの寺澤有さんが「大阪・西成女医変死事件」を執筆

◆「自殺説」の背景

祥子さんの死亡後、釜ヶ崎の界隈では祥子さん自死説が流れたそうだ。当時、祥子さんを知らなかった私も、そうした説をさんざんきかされた。その背景に何があったかを考えてみた。

①生前、祥子さんとひそかに交際していたという男性Mさんに届いた14日消印の絵ハガキ。そこには「出会えたことを心から感謝しています。釜のおじさんたちのために元気で長生きしてください」と書かれていた。Mさんは西成署にハガキを提出していた。父・祥吉さんによれば「警察は手紙を根拠に過労による自殺の可能性もある」と説明したという。 

2018年、フリー・ジャーナリスト寺澤有さんが『日本の未解決事件 100の聖域』(宝島社)に「大阪・西成女医変死事件」を執筆。釜ヶ崎を訪れた寺澤さんがMさんにアポなし取材を行った。Mさんは祥子さんの死について「自殺だと確信しているが、とくに根拠はない」と、絵葉書について「確かに警察に見せたが、それが遺書で自殺の根拠だと主張したわけではない。あとで警察が知って『どうして隠していたんだ』と追及されるからだ」と述べていた。

②群馬の家族との不仲説 祥子さんのご両親はともに医師で群馬県で病院を経営している。4人兄妹で唯一医師になった祥子さんに病院で継いで欲しいと願った時期もあったそうだが、その後は、祥子さんの釜ヶ崎のおっちゃんらのために働きたいという意思が尊重された。当時この説もさんざん聞かされた。

その後、両親と不仲でないことが様々な形で明らかにされていったが、先日、当時の「不仲説」をいまだに主張する方とあった。彼はあるドキュメンタリー映画を鑑賞したそうだ。両親がともに医師、学者だという両親に育てられた娘がある日突然統合失調症を発症させるという内容だ。彼は、医師など優秀な良心に育てられた子供は様々な葛藤、悩み、生きづらさを抱えるという例として「矢島祥子さんと両親」の例をあげていた。正直私は「まだそんなこと言っているのか」と呆れてしまった。

※こうした「不仲説」を利用する例として、冤罪・東住吉事件がある。青木恵子さんと同居男性、そして娘、息子と暮らしていた家で火災が発生、娘が焼死した。火災の原因を調べているさなか、保険金目的で娘を焼死させたとして青木さんと同居男性が逮捕された。捜査段階で同居男性が娘に性的暴行を働いていた事実が判明。警察は、青木さんに「娘と男性をとりあう三角関係で、娘が邪魔になったのだろう」などと不仲説を煽り、マスコミもまたそのデマに乗り2人の犯行と断定していった。

③証拠の捏造 「矢島祥子さんは自死されたのですが……」から始まる調書 当時、釜ヶ崎では多くの関係者が取り調べを受けたそうだ。その一人、過去に同僚だった女性から数年前の集いでお聞きした。彼女は警察で「矢島祥子さんは自死されたのですが……」から始まる調書を取られたという。彼女はそう考えてなかったため彼女は頑なに否定するが、何度も呼び出されるが調書作成が進まず、最後は仕方なくその調書にサインしたという。母・晶子さんによればほとんどの関係者がそのような調書を取られたという。

※警察が関係者の調書を捏造する。これは先日、再審開始が決定した「福井女子中学生殺人事件」などでも行われている。38年前女子中学生が殺害された事件で、前川彰司さんが逮捕された。決めては複数の関係者の「血をつけた前川を見た」との証言だった。しかしその一人の男性は、第二次再審請求審で弁護側の証人として「血をつけた前川を見たとの証言はうそだった。自分の事件を見逃してもらうかわりに、警察に虚偽証言をさせられた」と証言した。これだけなら「言った、言わない」にもなるが、男性はウソ証言したのちに、担当刑事に結婚祝いを貰ったといい、刑事の名前の入った祝儀袋を証拠提出した。

以上、昨年亡くなった桜井昌司さん(布川事件冤罪犠牲者)が、祥子さんの事件を「逆冤罪だ!」と訴えていたので、今回祥子さんの事件について、実際の冤罪事件で警察、検察が行う虚偽調書の作成、捏造など許しがたい蛮行を当てはめてみた。

大山勝男著『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(アメージング出版)

 

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

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◆《対談》内海聡(医師)×長井秀和(西東京市議) 
 日本人と日本社会が罹った薬と政治の「依存症」
 構成・文責/編集部

 

 

「新型コロナワクチン」として登場したmRNAワクチンは、死亡を含む健康被害が多数発生、医師らも声を上げているもかかわらず、「次世代型」のレプリコンを含めた5種で、10月から新たな定期接種がスタートした。

特にレプリコンは、日本だけで認可され接種が始まった、まさに人体実験の様相だ。これはすでに「医療」とはいえない。東京都知事選や10月の総選挙にも出馬し訴えを続ける医師・内海聡氏と、元お笑い芸人で元創価学会員の西東京市議・長井秀和氏が語る。

 ワクチン拡散に公明党が果たした役割

── お二人はともに、ワクチン問題に取り組まれています。

長井 国会や厚生労働省に目を向けがちですが、地方議会の議事録を読むと、公明党が「ワクチンによって救われた人がたくさんいらっしゃる」と全国で営業部長の役割を果たしてきたことは見逃せません。10月からのレプリコンワクチンを含めた定期接種にしても、補正予算の議論では必ず公明党議員が質疑に立ち、その際には「ワクチンによってコロナで亡くなる方がこれだけ救われた」「東京都から助成金が入る」「65歳以上の方はこんなにお安く接種できます」、そして「新しいレプリコンワクチンを打てます」とアピールしてきました。

── 「救われた」というのは、どういう状態を指しているのでしょうか。

長井 公明党議員の質疑に基づけば、日本でコロナで亡くなった人は他国と比べると少ない、といった論法です。一方で明らかになった健康被害については、日本はわざわざ予防接種健康被害救済制度を用意して対応してあげているのだと強調します。テンプレートが出回っているのではというくらい、各地方議会で異口同音の主張を繰り返しています。

── 救済制度があるといいますが、そもそもワクチンを含め流通する医薬品について、薬害を追跡調査する仕組みが日本にないとの指摘があります。

内海 世界でもほぼ行なわれておらず、一度流通すれば野放しです。そもそも、ある症状が当該医薬品によるものかどうかを証明するのは難しい。採血で異常値が出ても、それが薬害なのかは、別途証明しなければなりません。

それゆえ私のように、薬害関連の臨床を専門とする医師は、論文や過去の研究に頼りすぎず、素人的な発想で見ることが必要となります。最もシンプルなのは時系列で、たとえばワクチン接種から3時間後に亡くなれば、まずワクチンを疑うのが当たり前。しかし、厚労省や御用学者には、その当たり前が通用しない。人間がいつ脳梗塞になるかはわからない。それがたまたま接種後に来ただけ、となります。

そうなれば、司法解剖によって細胞内にワクチンの成分が溜まっていることを示すとか、接種前の検査データをとっておく、といった方法しかありませんが、それでも状況証拠です。ワクチン接種を止めたい専門家も、この証明に四苦八苦しています。

ただし、それらを証明しなければならないという発想自体が間違っているように思います。現在も苦しむ被害者がいるだけで、接種すべきではない理由として十分です。医療被害の制度を根本から見直さない限り、薬害をなくすのは難しいでしょう。

長井 そういう中で、ワクチンの接種拡大が政治利用されてきました。2021年のコロナワクチン接種開始以降、公明党では早々に山口那津男代表(当時)がビル&メリンダ・ゲイツ財団として世界的なワクチン普及を進めるビル・ゲイツと関係を深め、ワクチンの安定供給を創価学会員向けのネット動画で強調。一方で、厚労省が認めただけで843件の死亡例、全体で約8180件(9月27日現在)の健康被害については一切触れません。

内海 ファイザーと創価学会が親密という噂まで出ているようですが。

長井 それは噂の域を出ませんが、そう思わせるほど、公明党のワクチン営業は異常といえる徹底ぶりです。

 mRNA・レプリコンワクチン普及の目的

── レプリコンワクチンについて、わかっていることはあるのでしょうか。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n474402652cbd

◆袴田巌さん再審無罪判決が切り拓く死刑廃止への道
 取材・文◎足立昌勝

 

 

9月26日、静岡地裁は1966年に清水市(現静岡市清水区)で起きたこがね味噌専務宅での強盗殺人放火事件で犯人とされ、一審の静岡地裁で死刑、東京高裁・最高裁でも死刑判決が維持されていた袴田巌さんに対し、捜査機関による証拠の捏造を認定して無罪を言い渡した。

畝本直美検事総長は10月8日、控訴を断念したことを明らかにし、控訴期限の10日に袴田さんの無罪が確定した。

筆者は1972年に静岡大学に赴任した。まさに、事件が発生した隣の市である。青法協(青年法律家協会)静岡支部で、当時から無罪を主張していたジャーナリストの高杉晋吾さんを講師に勉強会を行ない、さまざまな証拠の矛盾を知ることができた。

犯行現場宅の出入り口とされた、かんぬきがかけられた裏木戸を袴田さんは通れないこと、くり小刀とさやとの不一致という矛盾等々。それらはすべて無視され、死刑判決へと至ったのである。当時の静岡地裁や東京高裁の裁判官たちが十分な証拠調べを行なっていたら、このような袴田さんの長期にわたる拘禁生活はなかったであろう。その意味で裁判官も心からの謝罪をしなければならない。

なお、筆者は従来の「袴田事件」という名称は、袴田さんの名誉を永遠に傷つけるものであり、今後は発生した犯罪の内容をそのまま事件名として用いるべきだと考える。

 無罪判決が認定した証拠の捏造

静岡地裁は再審無罪判決で、証拠には次のような3つの捏造があるとした。

①自白したとされる検察官調書は、捜査機関の連携により、肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取調べによって獲得されたものであり、そこには、犯行着衣等に関する虚偽の内容も含むものであるから、実質的に捏造されたものである。

②死刑判決において最も中心的な証拠とされてきた5点の衣類は、1号タンクに1年以上味噌漬けされた場合にその血痕に赤みが残るとは認められず、事件発生から相当期間経過後に発見された時の近い時期に、捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされ、1号タンク内に隠匿されたものである。

③5点の衣類のうちの鉄紺色ズボンの共布とされる端切れも、捜査機関によって捏造されたものである。

結論としては、「他の証拠によって認められる本件の事実関係には、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難である事実関係が含まれているとはいえず、被告人が本件犯行の犯人であるとは認められない」と判断し、無罪を言い渡した。

特に②の5点の衣類については、捜査機関による捏造について、詳細な検討を行なっている。

〈5点の衣類の血痕の色調によれば、1号タンクに新たなみそ原材料が大量に仕込まれた昭和41(1966)年7月20日以前に5点の衣類が1号タンク内に入れられたとは認められない。そうすると、勾留中の被告人が5点の衣類を1号タンク内に入れることは事実上不可能であるから、5点の衣類はその発見から近い時期に被告人以外の者によって1号タンク内に隠匿されたものであり、5点の衣類は本件の犯行着衣ではないと認められる。

そして、5点の衣類を犯行着衣として捏造した者としては、捜査機関の者以外に事実上想定できず、捜査機関において5点の衣類の捏造に及ぶことを現実的に想定し得る状況にあったこと等も併せ考慮すれば、5点の衣類は、本件犯行とは関係なく、捜査機関によって捏造されたものと認められる。〉(判決要旨)

再審判決での証拠捏造の認定は画期的なことであり、捜査機関が、長期にわたり確定死刑囚としての扱いを受けてきた袴田さんに誠意ある謝罪をすべきであることは言うまでもない。

ところが、前述した畝本検事総長談話では、「理由中で判示された事実には、客観的に明らかな時系列や証拠関係とは明白に矛盾する内容も含まれている上、推論の過程には、論理則・経験則に反する部分が多々あり、本判決が『5点の衣類』を捜査機関の捏造と断じたことには強い不満を抱かざるを得ず」「本判決は、その理由中に多くの問題を含む到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容であると思われます」としながらも、結論的には、「袴田さんが、結果として相当な長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致し、熟慮を重ねた結果、本判決につき検察が控訴し、その状況が継続することは相当ではないとの判断に至りました」と述べている。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n177ddc08d48a

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優生保護法をめぐるお祭り訴訟 犯人と被害者のいない殺人事件

清谷信一
税金を浪費して弱体化する防衛産業 防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態

内海聡(医師)×長井秀和(西東京市議)
日本人と日本社会が罹った薬と政治の「依存症」

広岡裕児
ハマス攻撃「10・7」から一年 ネタニヤフは何を考えているのか 

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シリーズ 日本の冤罪54 袴田巖冤罪事件 

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一九七四年「学園闘争」から半世紀 長崎大学医学部闘争の全資料発掘 

〈連載〉
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コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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