僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由〈7〉最終回 使用済み核燃料棒は、地上で1000年保管する 平宮康広(元技術者)

◆2.4. 代替案

自民党富山県連が、富山県内での高レベル放射性廃棄物=ガラス固化体とTRU廃棄物の地層処分に反対する姿勢を見せてくれた後、僕はNUMOや経産省の職員に、「経産省資源エネルギー庁とNUMOは、無知と無能を組織化した反知性的集団である、高校生をアルバイトで雇い、サクラに仕立てて説明会を盛り上げる反社会的集団でもある」などというようになりました。

怒ったNUMOのある職員に、「あなたは無責任だ、我々の代が出した核のゴミは、我々の代に処分しなければならない、子孫にツケを回すことなどできない」などといわれ、経産省のある女性職員に、「そんなに私たちをバカにするのなら、賢いあなたが代替案を出してください」といわれたことがあります。

しかし、我々の代が出した核のゴミを我々の代に処分するなどというのは、思い上がりです。我々の代に、核のゴミ処分などできるはずがません。我々の代ができることは、ただちにすべての原発を停止し、これ以上核のゴミを出さないようにすることだけです。

それでも、キングギドラのような形相をした、経産省の怖い女性職員に、地層処分の代替案を出せと強いられました(ひょっとして、自民党富山県連が、僕以上に、無知だの無能だのといって罵ったのかもしれません)。

僕の代替案は、使用済み核燃料棒の1000年保管です。保管する場所は地上です。NUMOでさえ、使用済み核燃料の放射能は1000年後に100分の1になるといっています。地上で使用済み核燃料棒を1000年保管し、その後地層処分すればよい、これが僕の代替案です。

我々は、ふつう、科学者の発見の下で技術者が新しい発明をする、と考えます。しかし、技術者が新しい発明をした後、科学者がその発明の「科学」を事後説明する場合があります。そして、我々は、既存の科学の「壁」を打破して新しい発明をする人間存在を、「天才」と呼んでいるように思います。1000年間のどこかで、「天才」が放射能の半減期を人為的に短縮する方法を発明するかもしれません。

使用済み核燃料棒を地上で1000年保管し、処分を未来の天才に委ねることは、まちがいではないと考えます。仮に天才が登場しなくても、使用済み核燃料棒の放射能は1000年後に100分の1になるのはあきらかです。僕のような凡才にも対処できるでしょう(まあ、僕なら「もう1000年地上で保管しましょう」といいますけど!)。

使用済み核燃料棒の地上での1000年保管に技術上の困難はありません。コンクリートの耐用年数は100年しかないといい、それを根拠にして、地上での使用済み核燃料棒の1000年保管は困難である、という人がいます。ならば石材を使えばよい。世界には、1000年以上存在する石造物(石材建造物)が多数あります。イスタンブール市のソフィア大聖堂は約1500年前に建造された石造物で、西暦557年の大震災にも耐えました。しかも、エジプトのピラミッドとちがい、建造時の記録、建造後の記録がしっかり残っています。

ヴェネツィア市のサン・マルコ大聖堂や、アルセレナーレ(工房)も1000年以上前に建造された石造物です。アルセレナーレでは、2万5000名の労働者が働いていた、といわれてもいます。中世の技術から知見を得て、地上で使用済み核燃料棒を1000年保管することは可能です。

インドのパッタダカル寺院群やアイホーレ寺院群、エローラ石窟群やアジャンター石窟群も1000年以上前に建造された石造物と石窟の遺跡です。とりわけ石窟が参考になりそうです。小笠原諸島の父島列島にある婿島と弟島は無人島で、巨大な岩石ですが、エローラ石窟群やアジャンター石窟群から知見を得て石窟を掘ることは可能でしょう。

◆2.5. おわりに

放射性物質の崩壊熱は、時間に比例して小さくなります。原発敷地内で100~150年以上冷却すれば、使用済み核燃料の表面温度は気温と同程度になると考えられ、コンパクトなキャニスタ入れて、石窟での保管が可能になると思います。
廃炉を断念すれば、使用済み核燃料棒を原発敷地内で冷却することができ、中間貯蔵施設が不要になりますね。僕は、原発の廃炉=解体処分に大反対で、反対する理由を本誌に何度か寄稿しました。機会があれば、また寄稿したいと思います。

最後に、国会議員のみなさんに、お願いがひとつあります。最終処分法を改定していただきたい。最終処分法の改定作業は簡単です。「地下300m以深」という部分を、「地下300m以深の花崗岩層」と書き直すだけです。それだけで、原子力カルト教団と経産省資源エネルギー庁、NUMOの暴走に歯止めをかけることができます。

(僕は、文系の学者さんたちは、とりわけ法的側面で運動に貢献していただきたいと思っています。先日、長谷川公一さんという東北大学名誉教授の講演をビデオで視聴して、文系の学者さんたちを含む多数の学者さんたちの地層処分に対する日本学術会議の提言を知ったのですが、残念なことに、最終処分法への言及がなかったですね)

文系の学者さんたちには、TRU廃棄物や解体した原発=廃炉の炉心等金属類や制御棒の地下70m以深の処分(中深度処分)にも何らかの法的歯止めをかける努力もしていただきたいと思います。無知で無能で、そのくせ傲慢で卑怯者の原子力カルト教団、そして日本原電および経産省資源エネルギー庁とNUMOは、地下70m以深は泥岩層であると考えているでしょう。しかし、日本の礫層の深さはたいがい地下100m以深で、150m以深の場合がおそらく多い。地下70m以深が泥岩層であるとの保障はまったくありません。(おわり)

◎平宮康広 僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由(全7回連載)
〈1〉日本原燃が再処理工場を新設する可能性
〈2〉ガラス固化体の発熱量は無視できても、地温は無視できない
〈3〉NUMOがいう地下300m以深の「岩盤」は、本当に「天然のバリア」なのか
〈4〉ガラス固化体以外の廃棄物が低レベル放射性廃棄物であるとの考えは、乱暴すぎる
〈5〉地震や豪雨・豪雪で地下水系は大きく変わる
〈6〉寿都町も神恵内村も玄海町も、その岩盤層は地層処分に適さない
〈7〉使用済み核燃料棒は、地上で1000年保管する

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。