さとうしゅういち
◆神谷代表にお返ししたい「ふざけるな」
参政党代表の神谷宗幣さんは、参院選中は「日本人ファースト」を叫び、「外国人特権」をなくすかのようなイメージを醸し出し、バカ受けしました。比例代表では広島県内でも二番目の得票となりました。だが、選挙が終わったら「外国人特権?無いんじゃないですか?」と記者に答弁しておられました。
参院選中、街頭演説で、神谷さんは「ふざけるな」と反対派に対して反論しておられました。だが、そのお言葉はそっくりそのままお返ししたいの気持ちです。
◆介護現場の崩壊、忘れ去られる
そして、参政党ブームで十分議論されなくなった問題も多くあります。
その一つが介護現場の崩壊です。ご承知のとおり、介護職員が足りない。だけど他産業より賃金が低いからどんどん辞めていく。賃金が低いのに労働がきついからさらに辞めていく。そんな悪循環に陥っている実態があります。特に、訪問介護では、2024年の報酬改定で引き下げられてしまいました。ただでさえ、若い人が就職してこない中で、職員自身も高齢者が多いという笑えぬ実態がありました。今回の報酬引き下げで、撤退する事業所が相次いでいます。
こうした中、筆者が最近、勤務していた介護施設では、外国人労働者が全員正社員で、日本人のパート労働者より高い時給をだしていました。時給で言えば日本人派遣労働者>外国人正社員労働者>日本人パート という感じです。
いまは、参政党や一部の政治家が言うような、「外国人労働者がくるから日本人の給料が下がる」という単純な話でもないのです。無論、安く使い捨てにする狙いで自公政権が研修生→技能実習生という形で外国人労働者受け入れを進めてきたのも事実です。しかし、安く使い捨てにする仕組みを作ってきたのは日本人についても同様です。30年前の1995年、日経連の「新時代の日本的経営」が出てきて、非正規労働者は増えていたのです。
ともかく、介護の場合は、もともと安すぎて日本人が来ないところにやむを得ず、日本人より高めで外国人労働者に来てもらっているのです。今必要なことは、日本人も含めて介護に従事する労働者の給料を抜本的に上げることです。そうしないとそのうち日本人の若手労働者も海外に行くようになるでしょう。
介護現場が崩壊すればどうなるか?それは高齢者の家族を直撃します。それこそ、いわゆるビジネスケアラー(介護をしながら仕事)、ダブルケアラー(子育てをしながら介護)、ヤングケアラー問題をさらに深刻にします。
◆介護保険についてのアンケートに答えぬ参政党女性候補
こうした中、「高齢社会を良くする女性の会・広島」は介護保険についてのアンケートを行いました。 https://www.wabashiroshima.org/answer.pdf
この団体は別にいわゆる左翼団体でもなく、保守系の地方議会議長経験者も含む幅広い方が活躍される女性団体です。今回のアンケートについて、自民の男性候補さえも賛否は別として「それなり」の内容で回答しています。立憲の男性候補は「はい」「いいえ」の回答はされていますが、具体的な記述がありません。れいわ新選組のはんどう候補は、党の基本政策に基づき、「民間事業者だけでは必要なサービスの量と質がまかなえない、過疎地域で訪問介護サービス事業所がないなど、個別の事情により介護を断られる利用者等に対応するため自治体の福祉職を増員し、「公務員ヘルパー」を創設する。」「年間3兆円の財政投資で介護従事者の給与を月10万円引き上げ、介護現場で働きたい人を増やす」を掲げています。」などと回答しています。
ところが、今回、大健闘された参政党の女性候補は、アンケートに回答すらしていません。
◆「女性だからよい」時代は終わり
「れいわ新選組」と「参政党」で迷った、という有権者も今回は多数おられました。「どちらも反グローバリズム・積極財政だから」という方も多くおられました。しかし、今後は、個々の政策について、候補者のスタンスをきちんと精査していただきたい。また、今回の参政党は女性候補を多く出しました。女性の当選者は今回の参院選では125人中39人と過去最多になりました。そのこと自体は良いのですが、「女性だからよい」というわけでもないのも、留意しておく必要があります。
◆新自由主義グローバリズムの是正は当然だが……
1995年の〈新時代の日本的経営〉をスタート地点に竹中平蔵さん、小泉純一郎さんが推進し、野党第一党の支持基盤の労組も一時黙認してしまった感のある新自由主義グローバリズム自体は是正されるべきなのは、一定程度共通認識になっています。
また、米国主流派やイスラエル首相・ネタニヤフ被疑者が推進してきた急進的なポリコレもやりすぎで、貧困層のマイノリティーが置き去りにされてしまった。LGBTを推進しつつパレスチナ虐殺のネタニヤフ被疑者など、問題外です。
新自由主義グローバリズムとポリコレ両方の推進者であるバイデン氏ら米国主流派が、評判が悪くなったのも歴史的必然です。バイデン政権では、男子大学生が女性を自認して、女子水泳大会で優勝しまくるという事件がありました。差別はいけないが、これはやりすぎです。トランプがこういうことが起きないように大統領令を出したのは政策的には正しいと思う(ただし、手続き的には疑問がある。筆者は米国法には詳しくはないが、正々堂々、議会で法律で決めるべきではなかったかとも思う。)。
◆「プロの腐敗」から「ど素人の暴走」へ
また、日米欧問わず、超大手企業や高級官僚、既成政治家らいわば「プロ」による腐敗が目に余るのも事実です。小選挙区制を背景に、日本でも新自由主義グローバリズム・緊縮財政二大政党による実質的な独裁が続いてきました。身近なところでは広島県知事・湯崎英彦さんの4期16年にわたる長期政権の弊害は目に余るし、広島市長も、ほころびが目立ってきました。広島を、日本を市民、県民、国民の手に取り戻すのは緊急課題です。
参政党は「政治を腐ったプロから取りもどす」イメージを醸し出しています。しかし、「メロンパンを食べたら翌日に死んだ人がいた」という前共同代表のご発言。同様の小麦否定の文脈で「小麦は戦後に入ってきた」という神谷代表のご発言。ほとんど、カンボジアをかつて支配し、大混乱に陥れた農本主義政党・ポルポト派ではないか?と思われるような近代科学否定です。
そして、まるで、朝鮮(金氏)並みの権威主義国家にしようとする同党の憲法案。「プロの腐敗」から「ど素人の暴走」へ、ともいえるでしょう。その流れの中で今、バカ受けしているのが参政党、ということになるでしょう。
◆他党の課題 罵倒の応酬ではなく、「真の反グローバリズム・反緊縮」提示を
参政党支持者は、ネット上でもちょっとでも反論されると「お前、日本人か?」などと突っかかって来られる傾向が強くあります。ただ、他党の支持者がその挑発に乗ってしまうのはいかがなものか?
というか、そもそも、参政党の支持者がやっているような罵倒は、最近では日本共産党系の方がよくやっておられました。日本共産党は昔は、割と礼儀正しい人が多かったのですが、最近ではネット上でもリアルでも品の悪い罵倒をしてこられる方が目立ちます。実際、筆者自身も、複数の日本共産党系の活動家に酷い誹謗中傷に遭い、情報開示を請求。裁判所で日本共産党系活動家による筆者への名誉棄損が認定され、最終的に筆者が勝利的和解をしています。
特に日本共産党系の方に申し上げたい。参政党の選挙活動に、似たような口汚い言葉で抗議するくらいなら、対抗馬の選挙運動を応援された方が効果的ではないでしょうか?
また、前出の米国で男子学生が女性を自認しただけで女子水泳大会において優勝しまくる事件を正当化するような言動はやめた方が良いでしょう。参政党のメロンパン云々と同様に、失笑の的になりかねない。まして、同事件を批判した筆者らを誹謗中傷するような行為は慎むべきです。
自民党支持の70代女性は取材に対して「少子化対策というけど、介護も大事。参政党には怒りを覚える」とおっしゃいました。別の自民党支持で自民党候補を熱心に応援された50代女性も「参政党は途中からおかしいと思った。実際には広島でトップ当選の勢いがあり、自民党候補が落選の危機にあったが、参政党のおかしさに気づく人が増えて自民党候補が助かった」と証言します。
参政党自体は、自壊していくと思う。ただ、他党が、参政党の挑発に乗って、罵倒的な対応をすると思うつぼです。また、参政党の外国人問題云々の提起に過剰反応して、経済面での政策の打ち出しが弱くなるのも避けるべきでしょう。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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