計量にドラマあり! いろいろな展開があって面白い!

堀田春樹

◆パンツ一丁で!

計量の場は試合出場権利を得る最後の調整の場。すでに戦いは始まっている第一段階です。深く遡ればマッチメイク成立した時点が最初の始まり。その試合に向けて相手の研究からトレーニングを進め、減量も調整に入ります。

通常の計量は出場選手と担当役員が来場。公開計量は報道陣が対象で、ファンの前で計量が行われることは殆どありません。その計量も勝負に関わる重要な戦いの場。ファンが立ち会えないのは勿体無い気もします。ただ、パンツ一丁で秤に乗るので、見世物にする場所ではない意見もあり、公開する場合には幾らか配慮も必要かもしれません。

健太の毎度お騒がせ計量。いろいろな話題を振り撒いてくれた功労者である(2025年6月7日)

キックボクシングにおいて計量場所は後楽園ホールの場合、5階展示場が主で、「あの団体には貸すのにウチの団体には貸してくれない!」なんて愚痴話も聞いたことありますが、そんな裏事情まで聞き入っていないので真相は定かではありません。そんな事情もあってか、後楽園ホール近くの多目的ビル一室や各団体の加盟するジムで行なわれる場合があります。

◆明暗の目盛り

プロボクシングでは前日計量において、検診が先にあってこれをパスしないと計量に移れません。健康を害してリミットまで落としても意味が無いということでしょう。キックボクシングは厳密な基準は設けず、予算の都合もあるでしょうが、検診は試合当日開場入り後という場合が多いようです。

計量ではリミットちょっと超えの選手は全裸となることも珍しくはない。アンダーウェアとなるパンツは大体50グラム程度で、これで救われる選手、「あともうちょいなのに、オマケしてよ!」と無理を承知で訴える選手も稀に現われます。

4月27日興行(2025年)の前日計量では、ジムの秤との誤差で想定外の350グラムオーバー、残り45グラムの苦戦をした立嶋篤史は過去一度も計量失格は無いだけに、絶対落とすと頑張った。10回ほど秤に乗った後、何とかパス。そこに至るまでの過酷な光景は見守る側も苦しかった。

立嶋篤史の全裸の計量。パスまで悲痛な空気が漂った(2025年4月26日)

7月13日のWMO世界スーパーフェザータイトル戦前日計量でのオーウェン・ギリス陣営は計量オーバーした後、持参したヘルスメーターを指し、「この秤ではパスだった!」と主張したが、これは認められない理不尽な要求だった。

女子選手の計量細かく測る場合、コスチューム分を予め計測し、それを纏った状態で秤に乗った数値からコスチューム分を差し引く手法がプロボクシングにおいて実施されており、キックボクシングでもこれに倣っていると言えるでしょう。

キックボクシングにおいて、過去に「ヘビー級は無制限ウェイトの為、計量は行ないません。」という事例がありましたが、これは競技性から逸脱しているでしょう。細かいリミットが無い無制限だからこそ対戦相手とのウェイト差や前戦と比べての増減を把握・管理する必要があるのです。

◆監視厳しくなるウェイト管理

プロボクシングの場合、計量をパスできなかった場合、リミット3%以上のオーバーは即失格で試合は中止(ペナルティーについては割愛します)。3%未満の場合は2時間の猶予が与えられ、2時間以内なら何度秤に乗っても構わないが、規定の2時間以内に規定のリミットに落ちなければ、試合を行なうか中止を選択。

試合を行なう選択の場合は、試合当日再計量を義務付けられます(時刻はその時の指定)。ウェイトが規定のリミットを8%以上の場合は失格で試合は中止。例としてフライ級(50.8kg)の場合、3%は52.32kg、8%は54.86kg。

キックボクシングの場合、ここまで厳密には決められていませんが、過去には前日計量失格者に上限リミット付きの当日計量を義務付ける特例は行われています。

ジャパンキックボクシングイノベーション(JKI)は、2025年11月21日発表で、選手の安全確保と過度な水抜き防止の為、計量日の2週間前に動画などで自己申告を行なうシステムが導入決定した模様です。

契約ウェイトから8%以上の場合、“要注意”とし、試合1週間前にも自前計量を行い、結果を提出しなければならない。急激な水抜きによる危険行為を未然に防ぎ、リング禍や著しい体調不良による欠場などの不祥事を減らすための対策と考えられます。

近年はデジタル計量器も普及してきました。1グラム単位まで測れるかは機材の性能によりますが、天秤秤とどちらが精密かと言うより、間違いが起こり難いか、精査されていくでしょう。

伊原ジムでの前日計量。岡田彬宏は61.1kg、岩橋伸太郎は60.95kg。こちらではデジタル計量器である(2025年10月25日)

◆試合に向けてのアピール

計量をパスするとリカバリーに入る選手達。最近の計量では多種多様な飲食物を持参する選手は多い。スポーツドリンク、栄養補給ゼリー、炭水化物、バナナなどゆっくり補給。試合まで24時間以上ある前日計量は当日計量よりは、ゆとりある時間でリカバリーに出来るのは今や当たり前の時代になりました。

最近はSNSで発信する為、計量後に両者のツーショット撮影も当たり前のように行なわれるようになりました。

計量後はメディアに対して、フェイスオフやツーショットを行なうこと多い。アントニオ・オルデンと大田拓真(2025年6月7日)

また、両陣営立ち合い計量でも、ここで相手を罵ったり掴み合ったりという事態はほぼ起こりませんが、記者会見が加われば、相手の印象を問われてより過激な発言に至ることはよくある傾向。そこまで煽る場合も在り得るのである。

記者会見となれば言わなくていいことまで言ってしまう嵐と山脇飛翼の舌戦(2025年4月26日)

キックボクシングにおいて、最近は選手のウェイトをアナウンスしないリングアナウンサーが増えていますが、選手コールは単なるパフォーマンスではなく、階級制競技として重要なウェイトはアナウンスしなければならない。計量の場に観衆は立ち会えないのだから、その結果を知らせて欲しいものです。

ウェイトの事前申告も加わる現在。今後、健康管理と計量はどのような進化を遂げていくか。試合に向けて最大限のパフォーマンスを発揮出来るコンディション調整が進めば意義あることでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」