《書評》『紙の爆弾』3月号特集 菅義偉「迷走・失政・泥船」政権という危機

季節のうつろいは早いもので、3月号の紹介ということはもう2月である。東北および北陸方面は豪雪に見舞われているというが、関東はいたって温暖な冬で、風雪に苦しむ人々には何だか申し訳ない気がする。

 
タブーなき月刊『紙の爆弾』2021年3月号!

政権発足当時こそ、苦労人宰相(菅義偉)がお坊ちゃま総理の限界に取って代わった、という好意的な評価で高支持率をほこった菅政権も失速。あっと言う間に支持率40%を割るところまで、政権への国民的な支持は落ち込んだ。その大半は失政によるところだ。

したがって3月号は、実質的に菅政権批判特集となった。

「菅義偉・小池百合子のダブル失政が『第四波』を招く」(横田一)、「『菅迷走』の根本原因」(山田厚俊)、「泥船と化した自公野合政権の断末魔」(大山友樹)、「『自助』と『罰則』だけの菅コロナ政策に終止符を」(立憲民主党・杉尾秀哉参議院議員に聞く、青木泰)といったラインナップである。

◆菅の懐刀という人物が画策する「政権延命計画」とは?

横田は「最初のミスは、新政権発足から間もない10月1日にGo To トラベルの東京除外を解除したことだった」と指摘する。菅と小池が責任をなすりつけ合いながら、年末まで感染を加速度的に拡大し、1月7日の緊急事態宣言に至ったのは、まさに失政といえよう。知事が判断するべきだったのか、国が判断するべきだったのか。ここでの尾身会長(コロナ対策分科会)および都医師会の尾崎会長の証言は、歴史に刻まれるべきであろう。政治家は医師たちの提言を無視したばかりか、相互に対立(菅と小池の不和)することで、国民の犠牲者を出したのだ。

さて菅がGo To に固執する理由だが、インバウンド需要を頼みにせざるを得ない日本経済の現実とともに、二階俊博の観光業界利権があるのは明白である。この点でのファクトが欲しいところだ。表題の「第四波」とは、菅総理の懐刀とされる人物の「五輪選挙」である。この人物の言動に注意だ。

◆菅には資質がない

山田は菅義偉が師と仰ぐ梶山静六の事績を紹介し、菅の「政治家の覚悟」のなさを指摘する。とりわけ「批判の排除」という、菅の小心さのなかに梶山とは比べ物にならない、いや教訓を守らなかった決定的な違いが見いだせる。

そしてもうひとつ、菅が梶山静六の教えを守っていない「説明の大切さ」を指摘する。菅のポンコツ答弁は、官房長官時代は切って捨てるようなものでも事足りたが、総理となればそうはいかない。官房長官時代の「逃げ」や「拒否」など、総じて事務的な答弁では済まないのだから。

とりわけ、メモ頼みにもかかわらず「読み間違い」が多いのが致命的である。この点を山田は、ドイツのメルケル首相との対比で明らかにしている。メルケルといえば、極右ポピュリズム運動で政権そのものが不安定に晒されてきた。きわめて困難な政治基盤のなかで、しかしこのコロナ危機を国母のごとく国民をまとめてきた。その会見は「真っすぐに正面を見据え、時折声を震わせ、顔を歪ませながら、コロナ禍の猛威のなか必死に現状打開の策として過酷な制度を強いるリーダーの姿がそこにあった」(本文から)。

かたや、わが菅総理と云えば、メモを見るために顔はうつむき、目はしょぼしょぼと、しかもたびたび誤読する、そして口ごもる。およそ訴える力は皆無なのである。そもそも演説や答弁の不得手な人間が、なぜ政治家をこころざしたのか。資質に問題があるとしか思えない。政治が必要とするのは、鮮やかなまでのパフォーマンスであり、聴くものを圧倒する演説力なのである。

たとえば、国民を分断する極右思想で、しかも政治哲学といえば戦後政治(民主主義)の一掃という、およそバランスを欠いた内容にもかかわらず、立ち姿の好感度と音楽のような演説力で選挙に圧勝してきた、安倍晋三前総理。少なくとも政治家にもとめられることを、かの政治名家の御曹司は知っていた。ようするに、菅には資質がない、のである。

携帯電話料金やマイナンバーカードの徹底など、省庁レベルの施策の音頭はとれても、大局感のある政治哲学は語れない。しょせんは国家レベルの政策がない政治屋なのだ。

◆創価学会の焦りとは?

大山は「泥船と化した野合政権」のうち、公明党の危機に焦点をしぼった。記事によると、創価学会の池田大作会長はこの1月2日に、93歳になったのだという。健康問題で学会員の前には姿を見せられないものの、健在であるという。その日、創価大学は箱根駅伝で往路優勝、復路ものこり2キロまでトップをまもり、総合2位に輝いたのである。

しかし、菅政権の支持率低下とともに、学会は危機感に駆られているという。自民党との長期政権のなかで、公明党の支持層が先細ってきたからだ。いっぽうでは自公政権への批判票として、共産党の票が伸びるという事態も起きている。自公政権への危機感は、自公選挙提携の見直しにつながる。

焦点になるのは、河井克行元法相の衆院広島三区ということになる。公明党はここに斎藤鉄夫副代表を、中国ブロックから鞍替え出馬させる。大山は『第三文明』(創価学会系総合誌)における、斎藤候補と佐藤優(作家)の対談を紹介し、学会から自民党へのメッセージとしている。自民のいいとこ取りだった自公連立を、公明党の側から積極的に変えていく。それはある意味で、自公政権の崩壊の序曲にほかならない。

◆高騰する株価の謎

このコロナ禍で、人々が不思議に思っているのは株価の高騰であろう。この記事を書いている2月8日の正午現在、株価は30年ぶりの2万9000円を突破した。30年前といえば、バブル経済の時期である。

このバブル株価を、広岡裕児は「『コロナと株価』の深層――広がり続ける実体経済との乖離」として解説する。

実質GDPが0.9%減(1~3月期)、7.9%減(4~6月期)と、コロナ禍のもとで衰退に向かった日本経済の、どこに株価が急騰する要素があるのか。広岡によれば、そのひとつは海外投資家の日本買いであり、今後のワクチン効果を見込んだ投資だという。もうひとつは、ファイナンスマシーンと化した株取引のIT化である。実体経済とは無関係に、あたかもゲームのような取引が日常化しているというのだ。「社会と市場(マーケット)の分離」がもたらすものは、経済の空洞化ではないだろうか。

◆部落解放同盟の見解をもとめる

巻末には「『士農工商ルポライター稼業』は『差別を助長する』のか?」の連載検証第5回として、鹿砦社編集部(鹿砦社および「紙の爆弾」編集部)の中間報告が掲載されている。ここまで、鹿砦社側の見解(依頼ライターをふくむ)で検証が進められてきたが、部落解放同盟としての見解を求めていると明らかにしている。今後の議論に注目したい。(文中敬称略)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

新型コロナウイルス感染拡大の危険を孕むスポーツジムの時間短縮 林 克明

◆法律にもとづかない「お願い」

《スポーツジムの時間短縮営業は、本当に危険だ。3日ほど前から近所のジムが夜8時で閉まるようになった。閉まる直前に人が集中し、ほとんどコロナ前と同じ感じ。夜11時まで営業のときは、人が分散してまばらだった。なぜ人が密になるようなことをするのか。夜8時まで営業という同調圧力のせいだろう》

これは、新型コロナウイルスに感染リスクを心配した筆者が1月17日にFacebookに投稿した内容である。

2月2日、栃木県を除く10都府県を対象に緊急事態宣言を1か月延長すると政府は決めた。1月7日に11都府県に緊急事態宣言が出され、2月7日まで昼も夜も外出自粛を要請し、飲食店を中心に営業を夜8時までに短縮するように要請してきた。

なぜ、8時で営業を止めると感染者が減り、それ以降営業していると感染者が減らないのか。「なるほど」と納得するような根拠がわからない。

時短営業の対象者は主として飲食業である。とくに酒類を提供する事業者は夜7時にアルコール提供を止め、8時には店を閉めろという要請内容だ。

このほか、スポーツジムやパチンコ店、雀荘、映画館等にも営業時間短縮の「お願い」をしている。しかし、こうした業種に対しては、法律に基づかない「お願い」なので、協力金などの補償は出さない。

だから、飲食店ばかりか、広範囲のサービス業従事者が相当な打撃を受けるだろう。肉体的には生存していても、社会的・精神的に死ぬ人は膨大になると思う。


◎[参考動画]緊急事態宣言延長で分科会 「対策強化」提言(TBS 2021年2月2日)

◆8時営業停止でスポーツジムは人が密集

「8時以降の営業中止」に疑問を感じていた1月11日か12日の18時50分ころ、筆者は近くのスポーツジムに行った。受付で熱を測り会員カードチェックを経て館内に入ったとたん、いつものと違うとすぐ気づいた。

ロビーに人が多いのである。ロッカールームに行くとさらに驚いた。空いているロッカーをすぐ探せなかったのである。

というのは、感染拡大防止策として、一つおきにロッカーを封鎖し、隣どおしで利用できないようにしてあるからだ。空いている場所がほとんどなく、一番隅にある不便な場所のロッカーをようやく確保した。

トレーニングマシンやスタジオ、フリーウエイトのスペースがある階に行ってみると「いつもと景色が違う」とハッとした。

ランニングマシーンは、9割がた人で埋まっており、エアロバイクも空いているのは一つか二つ。

ダンベルやバーベルを使用するフリーウエイト・ゾーンに行くと人が多く、ダンベルなどを扱っているとほかの人にぶつかりそうで危ない。

ウエイトトレーニング・マシーンも、機械が空くのを待っている人がいる。

これは完全にコロナ以前の日常風景だ。というより、筆者が通っている時間帯に関しては、コロナ以前より混んでいる。いまこの時期にはありえない“幻影”を見ているようだ。

運動を終えて風呂に行ってみると「ああ、ダメだ」と思わず声に出しそうになった。カランは全く空いていないし、サウナの前には次に入ろうとする人が待っている。

浴槽も入るスペースがない(詰めて入れば可能ではあるが)。腰かけることもできず、浴槽にも入れない数人が、ただ立っている。

翌日以降も、同じような状態だった。政府や自治体の要請にしたがって営業時間短縮を実施したことで、感染リスクは高まったのだ。これは、他のスポーツジムでも同じだろう。

◆夕方5時から8時に顧客が集中

どの施設でもそうだと思うが、筆者が通っているジム(東急スポーツオアシス)では、新型コロナウイルス感染拡大のため、大変な努力をしてきた。

冬でも数か所の窓を開けて換気するのに加え、機械を使って室内の空気を外に出す。ロッカーは一つおきにしか使えない。あらゆる場所にアルコールとペーパータオルが用意され、スタッフや会員が頻繁に使用した器具や場所を吹いてウイルスを除去するようになっている。

もちろん、ランニングマシーンやエアロバイクは透明のパーテーションで区切ってある。スタジオを利用したレッスンも時間帯や人数を制限は当然のこととして行われてきた。風呂場には風呂内のマスクなしでの会話禁止を訴えるノボリも。

定期的に館内放送で、感染拡大防止のための具体的な行動を呼びかけ、利用者もこれに応じてきた。

せっかく、スタッフと利用者ともども創意工夫と努力を重ねてきたのに、8時営業終了によって、どう考えても感染リスクが高まってしまったのである。

おかしいと思っていたら、1月27日、スポーツジムから会員向けメールが届いた。2月1日から7日までを通常営業に戻すという内容である。

《ご利用状況を調査した結果、特に17時以降の利用率が顕著に高くなっておりました。 社内で検討した結果、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、混雑緩和へ向けた取り組みとして、ジム、プール、ロッカー、浴室のご利用を通常営業時間に変更させていただきます》(送信されたメールより抜粋)

きわめて妥当な判断だろう。日経電子版(1月8日付)によれば、スポーツジム大手のコナミスポーツ、ティップネス、セントラルスポーツ、RIZAPグループなども夜8時までの営業時間短縮を実施するとされていた。

スポーツジムにおける営業時間短縮は、経済的被害を拡大さるばかりか、感染拡大防止の観点からも誤りだったとみていいだろう。さっそく各社は方針転換をはかるべきではないか。

▼林 克明(はやし まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

2・4『暴力・暴言型社会運動の終焉 ── 検証 カウンター大学院生リンチ事件』(紙の爆弾3月号増刊)発行と、1・28対李信恵第2訴訟不当判決について 鹿砦社代表 松岡利康

私たちは2016年春先から「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「M君リンチ事件」)に関わり続けてまいりました。早いものでもう5年が経とうとしています。

 
2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!!

そうして昨年からその「検証と総括」の作業に努めてまいり、これはきちんと一冊にまとめ形のあるものとして残すことにしていました。こういう事件が再び起きないようにとの願いを込めてのことです。

想起すれば、5年近く前に本件が持ち込まれ、この被害者M君のリンチ直後の写真を見、リンチの最中の録音を聴いた際に、素朴に「これは酷い」と感じ、加えて被害者M君はリンチ後1年余りも、わずかな友人・知人を除いて孤立無援の状態にあったことも聞き、少なくとも人道上放置はできないと思い、本件に関わり続けて来ました。若い大学院生が、これだけの凄絶な集団リンチを加えられ、藁をも摑む気持ちで助けを求めているのに突き放すことは、私の性格からして到底できません。爾来、昨年広島原爆投下75年に際し被爆二世をカミングアウトした田所敏夫をキャップとして取材班と支援会を発足させ、微力ながら被害者救済・支援と真相究明に携わってきました。この選択は間違ってはいなかったと今でも思っています。

当初、M君に話を聞き、提供された資料を解読し、「今の成熟した民主社会の社会運動内に、いまだにこうした野蛮な暴力がはびこっているのか」と驚きました。しばらくは半信半疑で取材を進めましたが、仮にM君の話がデマや虚偽であったならばすぐに撤退するつもりでした。

リンチの加害者とされる李信恵ら5人には一面識もありませんでしたので、私怨や遺恨などありません。

しかし、取材を進めるうちに、いろいろな事実が判ってきました。李信恵という人が、この国の「反差別」運動の象徴的な人物として名が有ることは知っていましたが、こういう事件に多かれ少なかれ関わっていることに驚きました。ちょうど極右・ネトウヨ勢力によるヘイトスピーチ華やかりし頃で、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」制定も企図される頃でした。

「反差別」の錦の御旗を立て、極右・ネトウヨ勢力の跳梁跋扈を阻止しヘイトスピーチに反対するという大義名分の蔭で、このような悲惨な事件が起きていたことに驚きました。

かつて、私たちの世代は、反体制運動における「内ゲバ」や「連合赤軍事件」を知っています。これらにより一時は盛り上がった学生運動や反戦運動、社会運動が解体(自壊)していった歴史を見て来ています。実は私自身、早朝ビラ撒き中に対立勢力に襲われ激しい暴行を受け病院送りにされ5日ほど入院した経験があり、また、ジャーナリストの山口正紀さんも、M君の訴訟で大阪高裁に提出した「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』に収録)の中で、やはり学生時代に暴行を受けたことを記述されています。山口さんは重篤なガンで闘病中ながら、今回その「意見書」も含め長大な渾身の論考として寄稿いただきました。

M君リンチ事件の被害者支援と真相究明に関わり始めた当初、「この問題は奥が深いな」と感じたのが正直のところです。やはりその予想通りでした。

 
リンチ直後の被害者大学院生M君

M君リンチ事件関係では、関連の訴訟も含め5件の民事訴訟が争われました。M君が野間易通による暴言の数々を訴えた訴訟(M君勝訴)、M君が李信恵らリンチに連座した5人を訴えた訴訟(M君勝訴)、鹿砦社が李信恵による暴言を訴えた訴訟(鹿砦社勝訴)、そして李信恵がこの反訴として鹿砦社を訴えた訴訟(一審鹿砦社敗訴→これから控訴審)、それに「カウンター/しばき隊」の中心メンバーにして元鹿砦社社員を訴えた訴訟(係争中)です。上記3件、判決内容や賠償金額などに不満はあるものの当方(M君、鹿砦社)の勝訴で確定しています。神原弁護士は「正義は勝つ!」などと全てみずからの側の勝訴と嘯いていますが事実ではありません。

ちなみに「正義は勝つ!」というのであれば、神原弁護士が事務局長を務める『週刊金曜日』植村隆社長の訴訟では、確定判決で負けてしまったことをどのように言い訳なさるのでしょうか? 世の中、必ずしも「正義」が勝つとは限りません。ここに悲劇があったり喜劇があったり不条理があったりします。殊に、裁判所における「正義」はえてして市民感覚とは異なります。

ついでながら、植村社長は、一昨年(2019年)、鹿砦社創業50周年記念の集いにお越しいただきご挨拶賜りました。また、社長就任後に会食も共にしたこともあります。最近も「上京されたらご連絡ください」とお誘いを受けていますが、神原弁護士との関係に配慮し、あえて連絡をしないでいます。『週刊金曜日』今週号(2月5日発売)に『暴力・暴言型社会運動の終焉』の1ページ広告が掲載される予定です。

こうして、この5年間のM君リンチ事件に関わってきた「検証と総括」作業を進め書籍の編集過程にあった中で、突如起きたのが、M君リンチ事件にも連座した伊藤大介による暴行傷害事件です(昨年11月25日午前1時30分頃)。前日24日、今般判決のあった訴訟の本人(証人)尋問が終わり、深酔いし、複数で極右活動家・荒巻靖彦を呼び出し暴行に及んだところ、無抵抗だったM君とは違い逆襲に遭い刃物で刺され、双方負傷した事件です。この事件は、伊藤らが仕掛けたものですが、6年前のM君リンチ事件と同じパターン(裁判が終わり酔って相手を呼び出し暴行に及ぶ)です。「歴史は繰り返す」とはよく言ったものです。これが現在の「反差別」運動というのであれば、あまりに悲しいです。

この事件もあり、編集途上のところ、すでに原稿が届き編集も終わっていたものを中心に急遽まとめ発行したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』です。

これまでのM君リンチ事件に関する本は、M君対李信恵らとの訴訟のポイント、ポイントで発行されてきましたが、今回は関連訴訟(対李信恵第2訴訟)の判決直後の発行となりました。

一審判決は、残念な結果になりましたが、控訴審で、心機一転捲土重来を期します。一審判決には決定的な間違いが散見されます。一つ目についた箇所を挙げれば、当該の書籍にて取材した者のインタビューを記しているにも関わらず、その者に取材して確認していないなどと判断(誤判)していたり杜撰なものです。

李信恵は鹿砦社取材班の取材や書籍、「デジタル鹿砦社通信」などの記事で「苦しめられた」などと申し述べていますが、本件での最大の被害者は、言うまでもなくM君です。裁判所は、リンチ直後のM君の顔写真をしかと見よ! 1時間にもわたる凄絶なリンチの阿鼻叫喚を聴け! いまだにPTSDに苦しむM君の心身共にわたる苦しみに比べれば、さほどのことはないと言わねばなりません。

昨年11・24の本人尋問で、リンチ直後のM君の画像を李信恵に見せ、「これを見てあなたは人間としてどう思いますか?」と問い質す松岡。李信恵は沈黙を通した(赤木夏・画)

私たちの闘いはこれからも続きます。確かに一審は負け(今のところは)賠償金を背負うことになりましたが、M君がリンチによって負った傷に比べれば大したことはありません。

今後とも、更なるご支援をお願い申し上げます。M君訴訟では皆様方のカンパにより訴訟費用をまかないましたが、鹿砦社訴訟では自弁ですので、『紙の爆弾』や多種多様な書籍などを買ってご支援ください。

ちなみに、M君訴訟のカンパの約6割は在日コリアンの方々で、その他、情報収集や取材などにもご協力いただきました。これは明かしてもいいかと思いますが、第4弾書籍『カウンターと暴力の病理』でリンチの最中のCDを付けようとしたところ、これも「私に任せてください」と在日の方が韓国でプレスしてくださいました。さすがに日本国内ではやれませんから。そうした方々のご協力で、これまでやって来ましたが、これに報いるためにも私たちは挫折するわけにはいきません。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

《緊急出版》鹿砦社が明日投下する“紙の爆弾”『暴力・暴言型社会運動の終焉』 その“爆薬”の中身はこれだ!! 鹿砦社特別取材班

裁判期日が終わる→仲間と飲みに行く→散々飲んで気が大きくなる→気に入らない人間を呼び出す→暴行に及ぶ。

 
2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』明日4日発売!!

この定型式にどこかで既視感はないだろうか。鹿砦社がこれまで出版した「M君リンチ事件」に関する5冊の書籍をお読みいただいている方であれば、瞬時に気がつくことだろう。

そうだ。「M君リンチ事件」発生時とまったく同じ展開で、またしても暴行事件が発生したのだ。この日は、鹿砦社対李信恵第2訴訟の本人(証人)尋問の日だった。これが終わり、事件発生前には李信恵と、のちに逮捕される伊藤大介が、飲食を共にしている写真が、李信恵発信のツイッター、フェイスブックにより確認できる。時刻は11月24日18:30頃だ。

その後、日付が変わった25日深夜1時30分頃、この間、かなり飲み食いしたのだろうか、伊藤は酔った勢いで、極右活動家荒巻靖彦を呼びだした。どのようないきさつでもみあいになったのかまではわからないが、新聞報道によれば伊藤らが荒巻に殴り掛かり、荒巻は逆襲、刃物を持っており伊藤はその刃物によって、全治1週間の怪我をさせられている(一方荒巻は伊藤に顔面を殴る蹴るされており、左手小指を骨折している)。場所は大阪市北区堂山町。監視カメラが張り巡らされ、人目の多い場所でもある。怪我をした伊藤、もしくは周囲にいた人物が110番通報をした模様で、駆け付けた警察官に荒巻は現行犯逮捕されている。

 
リンチ直後の被害者大学院生M君

刑事事件については、推定無罪を適用すべきだと、われわれは考えるので、荒巻並びに、伊藤の処分についての詳述は避ける(荒巻は罰金刑で、伊藤はこれから傷害容疑で公判にかかる模様である)。

しかしながら、伊藤自らが「しばき隊」であると公言しているので「しばき隊」特有の行動については本文の中で詳述した。「しばき隊」の人間は、どうしてこのように「混乱必至」な行為に及ぶのであろうか。暴力を振るい暴言を虚偽発信し、これを繰り返す「しばき隊」の行動パターン、とりわけこの日伊藤が事件に手を染める前の様子から、詳しいレポートをお届けする。取材班は法廷内の傍聴席でも伊藤らを包囲し(おそらく伊藤らはその存在には気づかなかったであろう)、注意深く伊藤の行動をも観察していたのだ!

そして、事件発生後しばらくの沈黙期間をおいて発表された伊藤擁護を企図したC.R.A.C.と「のりこえねっと」の「声明」の筋違いについても、徹底的に分析を行なった。どうして「しばき隊」は同じ間違いを繰り返すのか? どのような思考回路がそれを誘引するのか? 心理学専門家の意見も参考に、「しばき隊」のメンタリティー分析にも是非ご注目を!

『暴力・暴言型社会運動の終焉』には各方面からご寄稿も頂いた。ご自身が被害者となり、その後一時期はかなり熱心に「しばき隊」との言論戦(といってもかなり楽しそうではあったが)を繰り広げた合田夏樹さん。LGBT問題で「しばき隊」に絡まれ、仕方なく応戦した(今もしている)作家の森奈津子さん。このお二人は直接「しばき隊」と言論戦や法廷戦を闘われた方でもあるので、経験談を中心に原稿を書いていただいた。特に合田さんは直接に伊藤大介から脅迫を受けている。

 

尾﨑美代子さんには、「反原連」時代から連中が包含した根深い問題点を、体験と考察を元に分析していただいている。M君とも親しく、「反原連」の問題を知り尽くした尾﨑さんは、当初カウンター活動に参加を試みたこともあったが、やがてそのヘゲモニーが「しばき隊」に握られるようになることを察すると、手を引いたという。慧眼の持ち主はこの問題をどのように総括するのであろうか。

昨日の本通信でお伝えしたように、「M君リンチ事件」ならびに鹿砦社が李信恵を訴えた事件は、すべて司法記者クラブの手で握りつぶされた(記者会見開催を拒否された)。この問題については、フリーライターで大手新聞の「押し紙」問題に詳しい黒薮哲哉さんが、論考を寄せてくださった。

元読売新聞記者の山口正紀さんは、「M君リンチ事件」裁判における一審から控訴審、上告審までの判決の不当性について、精緻かつ長大な分析を頂いた。山口さんは「M君リンチ事件」裁判控訴審に「意見書」を提出いただいたこともあり、本事件に対して司法が果たした(果しえなかった)役割について、厳しい分析を展開してくださった。

 

松岡は「平気で嘘をつく人たち」と、黒薮さんとの合作で「危険なイデオローグ‐師岡康子弁護士」を執筆。そして「M君」自身が「リンチ事件から六年──私の総括」を寄稿した。

このように紹介すると総花的で、散漫なムック本(紙の爆弾増刊号)のようにお感じになる向きもあるかもしれないが、そうではない。現場からのレポートと、直接関係者の体験談、客観的な立場からの観察ならびに分析、2021年における「反差別」と「反差別運動」についての問題提起や方針を示したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』である。この本は、編集部が筆者に編集方針を伝え、それに沿うように原稿を依頼していない。完全に自由で制約のないご意見を異なる立場の方々から頂いた。その結果われわれが幸いであったのは、当初の予想以上に問題の本質に多角的な接近を実現することができたことである。

コロナ禍の中で、大切な問題が埋もれてしまいがちな日常にあり、しかしながら決して度外視することのできない人類の大命題に直接取り組んだ『暴力・暴言型社会運動の終焉』はどなたにとっても、示唆に富む内容であることをお約束する。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

《緊急出版》2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!! 鹿砦社特別取材班

〈差別〉に反対し〈暴力〉を嫌悪する、すべての読者の皆さん!鹿砦社特別取材班が「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「M君リンチ事件」)の取材を開始し最初の出版物『ヘイトと暴力の連鎖』を出版したのが2016年7月。もちろん取材は出版前に開始したので、われわれがこの問題にかかわり、まもなく5年を迎える。

 
『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!!

「M君リンチ事件」は単に、ある集団内で発生した、偶発的な事件ではなかったことがのちに判明する。有田芳生参議院議員筆頭に、師岡康子、神原元、上瀧浩子ら弁護士。中沢けい、岸政彦、金明秀ら大学教員・研究者。安田浩一、西岡研介、朴順梨、秋山理央などフリーの発信者。そして中立を装い、事件を仲裁するように見せかけながら「M君」を地獄に突き落とした「コリアNGOセンター」の幹部ら。

数え上げればきりのないほどの著名人が寄ってたかって、事件隠蔽とM君に対するセカンドリンチと村八分に奔走した。「事件隠蔽加担者」は上記個人だけではなく、すべての大手マスコミ(~関係者)も参加して悪辣極まるものであった。

本通信をきょう読んでおられる方の中に、M君が「しばき隊」の実権者、野間易通を名誉毀損による損害賠償を求める裁判で訴え、勝訴した事実をご存知の方はどれくらいいるだろうか。M君は提訴の際、大阪地裁で勝訴した際、いずれも司法記者クラブ(大阪地裁・高裁の中にある記者クラブ)に記者会見の開催を申し入れたが、一度も実現したことがない。あれこれ理由にならない言い訳を並べたが、結局大手マスコミの記者連中は「M君リンチ事件」を闇に葬ろうとする勢力に加担したのであり、上記隠蔽加担者らと同等もしくは重い役割を進んで背負った。

松岡と裁判前に喫茶店で「偶然の遭遇」をしたという李信恵の虚偽のツイート

だから、本来であればテレビや新聞で大々的と言わぬまでも、報じられて当然のこのニュースが、事件発生後マスメディアで取り上げられることはなかったし、その事実に居座って、事件に関係した連中は、ついぞ反省をすることはなかった。M君と加害者が対峙した証人調べの際に、口頭で謝罪を述べた者はいたが、その後の行動を見れば到底反省したとはいえない。

M君支援と事件関連書籍の出版を進めるうちに、李信恵をはじめ多数の人物が鹿砦社を誹謗中傷し始めた。ただし、われわれは出版を重ねるにあたり、事実関係は徹底的調査し尽くし、関連人物への取材も可能な限り直接行ってきたので、誹謗中傷に熱を上げるものどもは、具体的な批判ができない。幼稚な表現で罵詈雑言を浴びせるか、連中お得意の「ありもしない事実」をでっちあげそれを拡散させる、という卑怯な手法が用いられた。

今日、振り返って痛感することの一つに、「Twitterは人を壊す」ことが挙げられる。限られた文字数に感情の発露と、偽りの「繋がり」や「絆」を求める行動は、エスカレートすることが多く、本件以外にも数々の災禍を引き起こしてきた。李信恵は鹿砦社に対して再現するのも憚られるような、幼稚で下劣な言葉を用いて、幾度も鹿砦社を攻撃してきた。当初われわれは顧問弁護士を通じて、「そのような書き込みを止めるように」警告したが、それでも李信恵のわれわれに対する罵倒は止まらなかった。致し方なく鹿砦社は李信恵に対して名誉毀損による損害賠償を求めた民事訴訟を提起し、裁判所は李信恵の不法行為を認め、われわれは全面勝訴した。

さて、それではどうしてこの時期にわれわれが「2021年最初の爆弾」を投下しなければならないのか。理由は明快である。われわれが取材、出版を続ける中で懸念していた「M君リンチ事件」のような暴力事件の再来──それが現実のものとなってしまったからだ! しかも鹿砦社と李信恵の裁判が行なわれたその翌日未明に!

 
リンチ直後の被害者大学院生M君

大阪地裁では鹿砦社が全面勝利した(李信恵が全面敗訴した)裁判の最終盤で李信恵側から「反訴」の意向が示された。しかし裁判長はそれを認めなかったために、仕方なく李信恵は別の裁判を提起し鹿砦社に550万円の支払いと、あろうことか「出版の差し止め」を求めてきていた。2020年11月24日。大阪地裁では、原告・被告双方の本人(証人)尋問が行われていた。その模様についてはすでに本通信でお伝えしてあるのでご参照頂きたい。

事件はその日の裁判終了後に発生した(正確には日付が変わり25日午前1時30分頃)。裁判中には傍聴席にその姿があった「カウンター」の中心メンバー・伊藤大介が極右活動家・荒巻靖彦を深夜電話で呼び出し、双方負傷。伊藤が110番通報したことで荒巻は「殺人未遂」の現行犯で逮捕された。だが,衝撃はほどなくやってきた。伊藤大介が12月6日大阪府警に傷害容疑で逮捕されたのである。

われわれは、この事件発生直後から綿密な取材を開始し本年1月末か2月初頭の出版を目標に、正月返上で準備を進めてきた。しかし 『暴力・暴言型社会運動の終焉』出版については、本日まで完全部外秘とし、ごく一部の人間しかその情報を知りえなかったはずである。販売促進の観点からは、発売日が決まっていれば早い時期から広告を出したり、周知活動を行うのが定石であるが、われわれはあえてそうはしなかった。

 
 

連中はすでにカルト化している。というのがわれわれの見立てである。しかもその中には複数の弁護士もいる。連中が『暴力・暴言型社会運動の終焉』出版に対して出版差止めの仮処分を打たない保証はない(仮処分とは通常の裁判と異なり、緊急性を要する判断を裁判所に求めるものである。通常出版物の仮処分による「出版差止め」は元原稿(ゲラ)などの直接証拠がなければ認められることはないが、上記の通り民事訴訟の中で李信恵は「出版差止め」を求めている。われわれは記事内容には確実に自信を持っているが、それでもどんな主張を展開してくるのかわからないのが連中だからである)。

そうだ! 敵に隙を与えないためには、読者諸氏にも本日までお知らせすることができなかった。そういった理由であるので無礼をなにとぞお赦しいただきたい。書籍の内容? 下記の案内をご覧ください。鹿砦社(メールsales@rokusaisha.com、ファックス、HP)、もしくはアマゾン、書店などで、今すぐご予約を!

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

【緊急速報!!】「カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)」関連対李信恵(第2)訴訟、大阪地裁で、またしても驚愕の不当判決!

28日13時10分から大阪地裁1007号法廷で、李信恵が鹿砦社に対して損害賠償請求550万円、リンチ関係本4冊(5冊目は訴外)の出版の差し止め、「デジタル鹿砦社通信」の記事の削除等を求めた訴訟の判決言い渡しが行われました。

開廷後すぐに、民事24部・池上尚子裁判長は「主文、被告(鹿砦社)は原告(李信恵)に165万円を支払え」「デジタル鹿砦社通信の該当記事の削除」を主旨とする判決文を読み上げました。

無茶苦茶です。M君が半死の状態の暴行を受けて得た損害賠償が110万円ほど。それに対して虚偽発信を続けた李信恵に対する、私たちの論評に165万円もの支払いが命じられたのです。

この不当判決に私たちは到底納得はできません。閉廷間際松岡は裁判官らに向かい「ナンセンス!リンチに加担するのか!」と怒りを込めて吠えました。当然です。

〈暴力行為(リンチ)〉は軽んじられ、憲法で保障された言論がひどく抑圧される噴飯物です。

判決文の詳細はこれから精査しますが、私たちは即刻控訴の手続きに入り、司法に真っ当な判断を求めるものです。

いずれにしても詳細は近日中にお伝えいたします。

ご支援頂いている皆様に朗報をお伝えできなかったことが残念至極ですが、私たちにまったく敗北感はありません。

私たちが、事件発生後1年余りも隠蔽され闇に葬られようとしていたM君リンチ事件を満天下に明るみに出したという社会的意義は確固たるものとしてあります。

さらに〈真実〉を求め、これまで同様に、いや倍する闘志を持って闘い続けるのみです。

こういう、言葉の真の意味での社会的不正義を許してはなりません。

私たちが暴力・暴言型社会運動、似非反差別運動を弾劾することに変わりはありません。

今後とも圧倒的なご注目とご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

不当判決!
2021年1月28日 
鹿砦社代表 松岡利康 
鹿砦社特別取材班 

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

アインシュタインを研究し続けた死刑囚による「人生の集大成」のような手記

「東京五輪が終わるまでは無いだろう」と言われてきた死刑執行。それは裏返せば、東京五輪が終わるか、正式に中止が決まれば、死刑執行が再び行われる公算が大きいということだ。昨年秋に発足した菅内閣で、16人の死刑を執行した実績を持つ上川陽子氏が法務大臣に再任されていることもその見方を裏づけている。

そんな中、ある死刑囚が人生の集大成のつもりで書いたように思える計6枚の手記が筆者のもとに届いた。今回ここで特別に紹介したい。

◆手記の執筆者は「愛犬の仇討ち」で世間を驚かせた小泉毅死刑囚

手記を綴ったのは、東京拘置所に収容中の小泉毅死刑囚(58)。2008年11月、埼玉と東京で元厚生事務次官の男性宅を相次いで襲撃し、2人を殺害、1人に重傷を負わせ、裁判では2014年に死刑が確定した。警察に自首した際、「子供の頃、保健所で殺処分にされた愛犬の仇討ちをした」と特異な犯行動機を語り、世間を驚かせたことをご記憶の方も多いだろう。

そんな小泉死刑囚が裁判中、筆者は面会や手紙のやりとりを重ねていたのだが、小泉死刑囚は特異な犯行動機と裏腹に国立の佐賀大学理工学部に現役合格した秀才で、獄中では「超ひも理論」など物理学の難しそうな勉強に勤しんでいた。このほど紹介する手記も物理学に関するもので、タイトルは『〈絶対性理論〉完成形はミンコフスキー時空ではない!(絶対性理論が完成するまでの話)』という。

実を言うと、小泉死刑囚は裁判中から「アインシュタインの相対性理論に修正すべき点を見つけた」と語り、その考えをまとめた論文の執筆に没頭していた。筆者は何本か論文を見せてもらったが、なかなか本格的な内容に思え、感心させられたものだった。

裁判が終わり、死刑が確定して以降は小泉死刑囚と面会や手紙のやりとりができなくなっていたのだが、小泉死刑囚は獄中で研究を続けていたらしい。そしてこのほど「絶対性理論」という独自の理論を完成させ、そこに至るまでの過程を手記にまとめたのだ。

小泉死刑囚が綴った手記(P1-P2)
小泉死刑囚が綴った手記(P3-P4)
小泉死刑囚が綴った手記(P5-P6)

◆メディアで「頭がおかしい」ように書かれた小泉死刑囚の知られざる一面

この手記が筆者のもとに届いたのは、小泉死刑囚の死刑が確定して以降も東京拘置所から特別に面会や手紙のやりとりを許可されていた人が転送してくれたからだ。その人によると、小泉死刑囚から届いた手紙にこの手記が同封されており、小泉死刑囚が「何らかの形で世の中の人に見てもらいたい」という希望を有していることを察し、筆者に届けてくれたとのことだ。

小泉死刑囚は、冤罪の疑いはまったく無く、事件のことを何ら反省していない人物だから、「上川法務大臣による次の死刑執行」の対象に選ばれても何の不思議もない。そんな状況を踏まえると、メディアで頭がおかしい殺人犯のように書き立てられた小泉死刑囚にこういう一面があったことを伝えることに意義があるように思えたので、この手記をここで紹介させてもらった次第だ。

なお、筆者は小泉死刑囚と面会や手紙のやりとりをした結果について、拙著『平成監獄面会記』(笠倉出版社)で報告している。関心のある方はご参照頂きたい。

▼片岡 健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。拙著『平成監獄面会記』がコミカライズされた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。

月刊『紙の爆弾』2021年2月号 日本のための7つの「正論」他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

2021年政治日程を読む〈下〉自民党総裁をめぐる政局 横山茂彦

学術会議任免の支離滅裂な対応、観光利権によるGo To キャンペーンの判断ミス、いっこうに収まらない新型コロナ感染。感染増加による東京オリンピック開催の危機、さらには桜を見る会の虚偽答弁という具合に、菅政権をめぐる材料は悪いものばかりだ。自業自得とはいえ、ご同情申し上げたい。

「総理は疲れており、いつ政権を投げ出しても不思議ではない状態だ」(官邸担当記者)という。

事実、国会答弁(代表質問)では何度も咳き込み、原稿を読むのも噛みがち。もはやポンコツというよりも、リタイヤ寸前のありさまなのだ。4月の衆参補選、7月の都議会選挙に自公が大敗を喫するようなら、即座に「菅おろし」の合従連衡が始まるのは必至であろう。


◎[参考動画]自民・下村氏が釈明 二階氏の“苦言”が影響か(ANN 2021年1月14日)

◆総選挙まで持つか、難破寸前の菅政権

衆院選挙は10月21日任期満了なので、10月中旬には投票となる。その前(9月30日)に自民党総裁の任期満了、すなわち総選挙前に「選挙の顔」を選ぶことになる。おそらく菅義偉総理はこの時点でボロボロになっているか、早々に退場させられていることだろう。

政権担当時から描いていた「五輪を成功させた熱狂のまま、衆院選になだれ込む」という政治シナリオは、オリンピックの可否にかかわらず頓挫しているのだ。もはやポスト菅を議論するべきであろう。

まず「誰がやってもうまくいかない。いまは貧乏くじを引くようなもの」(自民党幹部)であれば、安倍晋三や麻生太郎が忌み嫌ってきた、石破茂の登板が考えられる。すでに石破は水月会の会長を「けじめをつける」ことで退任しているが、いわば「政治責任をとった」かたちの上である。本人は意欲満々なので、菅がコケれば麻生がワンポイントで、石破の急遽の登板も考えられる。

岸田文雄はあいかわらず存在感がなく、課題の発信力も次期総裁には覚束ない。その間隙をぬって、総裁候補ナンバーワンに躍り出たのが、河野太郎行政改革・国家公務員制度担当大臣である。

今回、ワクチン担当を任されたことで、この人事を「菅の河野封じ」などと見る向きもあるが、平時の順送りの禅譲や派閥力学ならばともかく、火中の栗を拾う離れ技がもとめられているのだ。河野の発信力、剛腕な一面を頼ったとみるのが正しい。そこまで菅政権が難破寸前だということなのだ。


◎[参考動画]河野大臣をワクチン担当閣僚に起用へ 菅総理が表明(ANN 2021年1月18日)

そしてもうひとつ興味深いのは、二階俊博幹事長の「長老裁定」で、野田聖子が史上初の女性総理になる可能性がある、という。自民党にしてはウルトラサプライズである。

政局については、以下の記事も参照されたい。

◎[関連記事]「器ではなかった菅義偉総理、退陣までのシナリオ コロナ・東京五輪・総選挙」(2021年1月14日)

◆デジタル化がもたらす棄民

もうひとつ、政局とは別個に注目しておきたいのが、9月に発足する「デジタル庁」である。韓国や中国のデジタル水準、あるいはIT先進国といわれるインドなど、アジアの中で日本のデジタル化は大きく遅れをとっている。

デジタル技術に習熟した若い層と、それに置いて行かれた中高年の落差が、とりわけ大きいとされる。いわゆるIT難民、スマホ難民である。

これはしかし、仕方がないのではないだろうか。スマホ(アイホーン)の普及率は70%弱であり、PCも世帯単位で70%前後で停滞している。ようするに、30%の国民はIT文化に置いて行かれているのだ。

テレビのリモコンですらまともに使えない(たとえば2台のテレビの2個のリモコンがわからなくなる)機械音痴というか、デジタル音痴は、いくら説明しても「面倒くさい」「パソコンを見ると、頭が痛くなる」「携帯電話も充電するのが面倒」という人たちなのだ。FAXと置き電話で仕事は十分という職場すら残っているのだ。

こうした素地の上に、高齢化が電話詐欺を蔓延させているのに対して、政府・自治体も警察も効果的な手が打てないままなのである。

この上さらに、健康保険や介護などセーフティネットをデジタル化することで、ホームレスはもとより高齢者およびIT難民が社会的に排除されるのであれば、それは棄民政策となるであろう。

政府が数十年来の念願としてきた「国民総背番号制」がデジタル化とリンクし、皆保険制度の崩壊やIT難民の社会排除という未来像をもたらすのであれば、消極的なボイコット(ナンバーとか忘れた!)で応じるしかないのではないか。

マイナンバー強制については、以下の記事も参照されたい。

◎[関連記事]「菅義偉政権が推し進めるマイナンバー制度強行普及の不気味 国民ナンバリングこそが独裁権力の本質である」(2020年12月9日)


◎[参考動画]ワクチン接種「情報管理に“マイナンバー”活用を」(ANN 2021年1月19日)

◆真価が問われる温暖化防止の具体性

11月には、気候変動条約国会議(COP26)がイギリスで開催される。

すでに菅政権は、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする方針を表明している。

これまでの「50年までに80%削減」の方針から大転換となるが、その具体策は何ら明示されていない。日本で政策会見するのは、ある意味で言いっ放しのスローガンで済む。メディアが何も中身を追及しないからだ。

ところが、海外のメディアはその具体性を訊いてくる。小泉進次郎環境相が「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきです」などと、ポエムにもならない発言で物議を醸したのは、国連の気候行動サミットにて環境大臣として参加した際のことである(19年9月22日)。

そして今後も石炭を燃やし続けるのか、という海外記者の質問には何も答えられなかった。この年、日本が「化石賞」を受けたのは、COP25における消極的、かつ具体性のない発言ゆえである。

ともあれ、あと30年で「温暖化ガスの排出を実質ゼロ」にすると明言したのである。それだけで日本のマスコミは評価し、国民も何となく実現できるような気になっているが、そうではない。

国民全員が300万円以上の電気自動車、水素自動車を持てるとでもいうのだろうか。運輸業のすべてがあと30年でガソリン・ディーゼル車から電気貨物トラック、電気ダンプカーに本当に転換できるのだろうか。

「実質ゼロ」ということは、CO2買い取り(数字合わせ)や森林資源の増加を見込んでのことだと考えられるが、人工林の増加で支えられている森林面積も、都市近郊部では相当の減少が想定されている。森林面積それ自体は微減だが、天然林は過去40年で13%減なのである。

建設業界が新たな宅地を確保するいっぽうで、空き家でスラム化した旧市街地をどうするのかも対策が立てられていない。街自体が産廃化し、温暖化を促進している現状があるのだ。

ちなみに、EUでは使い捨てプラスチック製品が12月に禁止される。欧州投資銀行は、同じく12月中に化石燃料をともなう事業への融資を禁じる。

以上、菅政権消滅の政局、デジタル化による棄民の危機、カーボンニュートラルの具体性のなさを指摘し、今年は大変な年になりそうだと結論しておこう。国民は自存自衛で生き延びるしかない。


◎[参考動画]温室効果ガス「2050年までに実質ゼロ」【news23】(TBS 2020年10月27日)

◎2021年政治日程を読む
〈上〉オリンピック中止の判断を誰が行うか?
〈下〉自民党総裁をめぐる政局

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

著述業・編集者。2000年代に『アウトロー・ジャパン』編集長を務める。ヤクザ関連の著書・編集本に『任侠事始め』、『小倉の極道 謀略裁判』、『獄楽記』(太田出版)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)、『誰も書かなかったヤクザのタブー』(タケナカシゲル筆名、鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年2月号 日本のための7つの「正論」他

2021年政治日程を読む〈上〉オリンピック中止の判断を誰が行うか? 横山茂彦

新型コロナの大量感染増で、正月気分もそこそこに終焉した日本。いつのまにか1月も終わりにさしかかろうとしている。今年はどんなことが起きそうなのか、政治日程を中心に予測記事を書いてみよう。

わが「宗主国」アメリカでは、トランプ信者およびQアノン、極右団体の連邦議事堂乱入で、バイデンの大統領就任も危ぶまれたが、何とか収拾した。戦後日本が民主主義のお手本としてきた国のクーデター未遂には、惰眠をかこつ大和民族たるもの、度肝を抜かれたというのが正直なところであろう。

有史以来、日本人が流血の政略・権力闘争で政治を切り拓いてきた歴史を思い起こすべし、ではないだろうか。60年安保における国会乱入、樺美智子同志が偲ばれる。流血騒ぎとはいかないまでも、秋までに行なわれる総選挙においては、ぜひとも政権交代に近い党票行動を国民に期待したい。


◎[参考動画]ジョー・バイデン氏が第46代大統領に正式に就任(TBS 2021年1月21日)

◆オリンピックは実質前倒し中止も、声明は出ない?

まず新型コロナワクチンだが、3月に医療従事者および高齢者への接種が始まる見通しだという。実行力・発信力のある河野太郎が担当大臣になったことで、迅速な準備と実行が期待される。政策としての医療拡充計画もなく、入院できない患者が「入院措置を拒否したら懲役刑」などという緊急措置法が上程されようとしている中、河野大臣の仕事を注視したい。

そして注目すべきは、アメリカのメディアが「日本政府が中止の可能性に言及」と報じた、東京オリンピックの帰趨である。いつ、だれが、何を根拠に「中止もやむなし」と宣言するのか。とりあえず、3月25日が五輪聖火リレー開始(スタートは福島)である。

いまのところ、日本側(JOC・東京都)から言い出せば、延期や中止にかかる費用は日本の責任になることから、日本政府・東京都および関係諸機関は、けっして言い出せない。IOCも側もまた、費用を負担しないためには言い出せない。したがって、だれも責任をもった発言をしないまま、ズルズルと7月を迎えることがあるのかもしれない。

そこで現出する光景は、世界各国が選手の派遣を取りやめる中、日本選手団および先行して日本で長期合宿を行なってきた一部の国々の選手だけが、無観客のなかでテレビ放映のみのオリンピックとして開催される。そのなかで「人類の叡智が新型コロナ禍に打ち勝った大会」が宣言されるのだろうか。

そのときこそ、たとえ少数とはいえ、東京オリンピックに反対していた国民がいたことを当局者(政府・東京都・五輪大会委員会)は思い起こすべきであろう。


◎[参考動画]東京オリンピック開幕まで半年、IOC会長 開催実現を強調(ANN 2021年1月23日)

◆2月に第4波変異種感染も

直近の課題にもどろう。2月は中国の春節である。億単位の人々がうごき、日本においても成田と中国をむすぶ航空便が再開された(日本に居住権をもつ人に限定)。14日間の自宅・宿泊施設待機が義務付けられるとはいえ、変異種のウイルスが入ってくる可能性は高い。ちょうど、日本の主要都市が緊急事態宣言から明ける時期であるだけに、コロナ防疫は正念場をむかえる。

変異種ウイルスの本格的な大規模感染が始まった場合、第4波は想像を絶するものになるかもしれない。


◎[参考動画]第3、4波は必然……日本へのルート解明の感染研が警戒(ANN 2020年4月28日)

◆3~4月が正念場の菅政権

3月には千葉知事選挙、4月には秋田知事選挙、衆院北海道2区補選、参院長野選挙区補選と、大型の選挙が総選挙の前哨戦となる。すでに支持率30%台となった菅政権がここで大敗するようだと、秋までにおこなわれる総選挙(10月21日までに選挙)あるいは自民党総裁選挙(9月30日任期満了)を待たずに、菅おろしが始まるのは必至である。

学術会議任免問題での冷酷そうな強権、しかも法律違反が明らかな失態。そして早すぎたGoTo キャンペーンの開始と遅すぎた中止、における判断力・決断力のなさ。そしてスピーチの原稿誤読、および要領をえないポンコツ答弁。もはや「その器ではなかった」と、自民党内からも公然と指摘される菅総理にとって、一敗地にまみれる前の辞職(政権投げ出し)があるのかもしれない。22日に始まった国会代表答弁では原稿読みをトチルばかりか、なんども咳き込むシーンが見られた。体力的にも能力的にも限界に達しているとみるべきであろう。


◎[参考動画]コロナ収束へ万全期す 東京五輪 予定通りに開始(FNN 2021年1月19日)

◆社会保障の拡充なるか

4月は例年、国民生活に密接な関係がある介護報酬の改定が行なわれる。弱者切り捨てになるのか、国民に寄り添う政策がかたちになるのか注目される。いっぽうで高齢者雇用安定法、改正パートタイム・有期雇用労働法が施行される。大きな政府でいいではないか。企業や一部の有産階級(上級国民)だけでなく、国民が大切にされる国でなければならない。


◎[参考動画]高年齢者雇用安定法 改正の概要① ~70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置等について~(大阪労働局 2020年12月24日)

◆訪米日程の遅延で、テレビ会談か?

菅総理の進退をはかる指標として、2月に「予定」されている訪米がある。バイデン大統領の正式就任とともに、アメリカ訪問(日米首脳会談)が日程にのぼる。宗主国への「参勤」である。

昨年暮れ放送のBSテレ東の番組で、菅総理はバイデン次期米大統領と初会談するための訪米について「できれば(来年)2月中と考えている」と述べ、早期実現に意欲を示していた。「新型コロナウイルスの問題がどう落ち着くかだ」とも語り、米国内の感染状況などを見極めつつ、調整を進める考えを明らかにしていた。

ところがここにきて、総理の訪米にトーンダウンが見られるのだ。いや、もう意欲が感じられないと、官邸に近い報道関係者は漏らしている。官邸は「あっち(アメリカ)が慎重なんだ」と総理の言葉をリークしているが、外交筋はこれも疑問視しているという。

「菅義偉首相の初訪米の時期が見通せなくなってきた。首相は20日のバイデン米次期政権発足後、早期の訪米に意欲を示してきたが、新型コロナの変異ウイルス拡大が直撃。内閣支持率の低迷も影を落とす。テレビ会議形式となる可能性を指摘する声も出てきた。」(朝日新聞、1月19日)。

テレビ会談が悪いわけではないが、宗主国の大統領が就任したのである。とりあえず電話で、というのでもあるまい。

しかも自分自身が「新総理」として、米国民にその存在を刻印するのが、総理訪米ではなかったのか。このポンコツな姿勢にも、きわめて弱気になった姿が顕われているといわねばなるまい。菅総理の動向を注視すべし。(つづく)


◎[参考動画]バイデン政権でも“日米関係重要” “白紙”の次期駐日大使(FNN 2021年1月5日)

◎2021年政治日程を読む
〈上〉オリンピック中止の判断を誰が行うか?
〈下〉自民党総裁をめぐる政局

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

著述業・編集者。2000年代に『アウトロー・ジャパン』編集長を務める。ヤクザ関連の著書・編集本に『任侠事始め』、『小倉の極道 謀略裁判』、『獄楽記』(太田出版)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)、『誰も書かなかったヤクザのタブー』(タケナカシゲル筆名、鹿砦社ライブラリー)など。

タケナカシゲル『誰も書かなかったヤクザのタブー』(鹿砦社ライブラリー007)
月刊『紙の爆弾』2021年2月号 日本のための7つの「正論」他

桶川ストーカー殺人事件・小松和人自死から21年、兄・武史が明かす「弟への憎悪」

1999年10月に起きた桶川ストーカー殺人事件で、被害者の女子大生・猪野詩織さん(当時21)に対してストーカー化していた男・小松和人(当時27)が逃亡先の北海道・屈斜路湖で自死したのが見つかって明後日27日で21年になる。

私は2012年頃からこの事件の犯人たちに取材を重ね、和人の兄で「事件の首謀者」とされる無期懲役囚の小松武史(54)が冤罪であることを確信するに至った。そうなった原因の1つが、弟・和人に対する武史の思いを知ったことだった。

武史から私に届いた膨大な手紙のうち、核心的なことを綴ったものを紹介したうえで説明したい。

小松武史から筆者に届いた手紙の一部

◆実行犯が裁判で証言していた「首謀者の冤罪」

小松兄弟は事件当時、東京・池袋などで複数の風俗店を営んでいた。店では、和人がマネージャー、武史がオーナーと呼ばれていたという。事件前、詩織さん宅周辺などにワイセツなビラを大量にばらまくなどした嫌がらせは、兄弟が営む風俗店の従業員たちが行なったものであり、詩織さん刺殺の実行犯・久保田祥史(55)も兄弟が営む風俗店の店長だった。

そして裁判では、武史が事件の首謀者と認定されたが、その根拠は久保田が逮捕当初、「被害者の殺害は、武史に依頼された」と証言していたことだった。武史は「そんな依頼はしていない」と一貫して冤罪を訴えたが、久保田の逮捕当初の証言が信用されたのだ。

しかし実際には、久保田は武史の裁判に証人出廷した際、「逮捕当初の供述は嘘です」と“告白”したうえで、こう訴えていた――。

「本当は和人の無念を晴らすため、被害者の顔に傷をつけてやろうと思ってやったことでした。逮捕された当初、被害者の殺害は武史に依頼されたことだと証言したのは、武史に“とかげのしっぽ切り”のような扱いをうけ、恨んでいたからです」(要旨)

つまり、武史に対する有罪認定の根拠となった実行犯の証言について、実行犯本人が否定していたわけである。となると、冤罪を疑ってみないわけにはいかない。そもそも、詩織さんにふられ、ストーカー化していた和人ならともかく、武史には詩織さんを殺害する確たる動機は見当たらないのだからなおさらだ。

そして私は2012年頃以降、千葉刑務所で服役する武史と手紙のやりとりを重ね、ある重要な事実を知った。裁判の認定では、武史は、詩織さんにふられた弟・和人の無念を晴らすため、久保田に詩織さんの殺害を依頼したかのように認定されていた。しかし実際には、武史は事件前から弟・和人のことを激しく嫌っていたのである。

◆「ある意味、恐ろしい弟でした…」

武史は風俗店のオーナーになる前、東京消防庁に勤める消防士という本業がありながら、副業で中古車の販売を手がけていた。武史によると、その当時、和人から副業に関して嫌がらせを受けていたという。

〈私は、結婚後、友人の車屋でアルバイトをしており(内緒で)、その当時、和人から、職場の本庁の人事課に2回、チンコロされ、私は大変でした…それと、事あるごとに、私の家に嫌がらせ電話をしてきては、妻が切れて、番号も、2回ほど替えた事がある…ある意味、恐ろしい弟でした…〉(2012年7月24日付け手紙より)
※〈〉内は引用。原文ママ。以下同じ。

なぜ、和人が武史にこんな嫌がらせをしたのかはわからない。しかし、ともかく武史が和人を恐れていことは、よく伝わってくる文章ではあるだろう。

さらに武史によると、風俗店のオーナーになったのも、先に1人で風俗店を経営していた和人から脅され、無理やり引き受けさせられたからだという。

〈弟は、マンションの風俗を始める時も、会社の事務所としてマンションの部屋を貸りると、私の親をだまし、貸りさせて(名義だけ)、それだけでは足りず、私にも頼んで来ましたが、断ってましたが、ことある事に、母親から、私にも言ってこさせてきていて、しょうがなく、名義を貸してやると…そこが、池袋の風俗の、お店になってました…そうなると、私には、どうにもならなくなってきました…私が解約や、反対など、となえた時は…「その時は、どうなるか、分ってるだろうなと、公務員が風俗やってた事が、スポーツ新聞にでも出てみろ、首だぞ、そしたら、家のローンは払えない。一家チリジリだと」よくおどしてくるようになり、どうしょうもなく、私は、その時より、店のお金の回収やとわれオーナーとされました…〉(前同)

千葉刑務所。小松武史は現在もここで服役している

◆和人にだまされ、妻まで巻き込まれた

武史によると、和人は詩織さんに嫌がらせをするためだけに広告代理店をつくり、詩織さん宅周辺にばらまいたワイセツなビラもその広告代理店で作成していたという。その広告代理店についても、武史は手紙にこう書いてきた。

〈私を、だまし、当時の私の妻を、その店の役員として登記までされました!和人は、悪ヂエがよく回り、何かあっても、私に、おっつける予定だったようです〉(2012年7月5日付け手紙より)

実際には、和人は事件後に自死しており、武史は和人から罪を押しつけられたわけではない。しかし、武史が手紙で綴る主張を見る限り、和人のことを嫌っていたのは間違いない。武史は、詩織さんにふられた和人の無念を晴らすため、刑罰を科されるリスクを冒してまで詩織さんの殺害を企てるほどに「弟思いの兄」ではなかったのは確かだろう。

誰もが知っている有名な事件でも、実際のことはほとんど誰も知らない、ということは珍しくない。桶川ストーカー殺人事件は、まぎれもなくそういう事件の1つである。

なお、私は昨年10月、実行犯・久保田祥史が事件の裏側を詳細に綴った手記を書籍化した編著『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)を上梓している。関心のある方は参照して頂きたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史、発行元・リミアンドテッド)など。

月刊『紙の爆弾』2021年2月号 日本のための7つの「正論」他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)