M君リンチ事件関連訴訟、いよいよ最終盤 鹿砦社特別取材班

5月10日、本通信に鹿砦社代表松岡の《[カウンター大学院生リンチ事件 対李信恵訴訟控訴審に向けて]私たちは、社会運動/反差別運動内部の暴力を容認しリンチに加担した一審(大阪地裁)不当判決に抗し最後まで闘います! 5・25第1回弁論(大阪高裁第2民事部、午前10時~、別館82号法廷)に圧倒的なご注目と応援を!》が掲載された。「M君リンチ事件」にかんしての法廷闘争は、最終盤を迎えている。当事者であるわれわれにとっては、長い道のりであり、また不可思議と、怒りの連続でもあった。

われわれが現在闘っている裁判はいったい、何を問われているのか、そしてこれまで一連の裁判はどのように推移してきたのか、今一度整理しておこう。というのは、この事件に関心を持ってくださる方々の中にも「今やってるのは何の裁判?」と質問される方も少なくないからだ。

◆なぜ裁判を提起しなければならなかったのか──M君対野間裁判勝利から対5人裁判へ

 
闘いの舞台=大阪地裁、大阪高裁

そもそもわれわれが、「M君リンチ事件」の情報に初めて接したのは2016年3月だ。初対面のM君と松岡、のちに代理人を担っていただくことになる大川伸郎弁護士、そして特別取材班の数名が、M君から事件の概要と、事件後にM君が置かれていた想像を絶する状況を知ることになる。

加害者への刑事処分はすでに終わっており、金良平と李普鉉には罰金が科されていたものの、リンチ現場に居合わせた李信恵、伊藤大介、松本英一にはお咎めなしの処分だった。李信恵も警察の事情聴取を受けてはいるものの、不起訴になっていた。

刑事事件には「推定無罪」の原則がある。そのことを考慮して刑事事件は処理されるべきである。2005年、「名誉毀損」容疑で松岡が神戸地検に逮捕され、192日も勾留された(あの事件は「冤罪」であった、と鹿砦社もわれわれも考えている)という苦い経験がある。100歩譲って刑事責任が問われなかったことは仕方がないにしても、李信恵は「なんやねん、おまえ」とM君に最初に掴みかかったことは自ら認めており、リンチの先鞭を切ったことは間違いない。

 
釘バットで虚勢を張る野間易通

〈刑事事件の判断と民事事件の判断は必ずしも認定水準が同様ではなく、まして司法でクロと判断されても「冤罪」は確実に存在するし、逆に司法が責任を問わずとも、社会通念上許されない行為もあるのではないか〉……

これまでの経験則から導かれたわれわれの認識は、特別取材班全員が共有していた。M君からの事件についての情報を得たわれわれは、当然事実の確認(裏取り)と周辺取材に着手した。大川弁護士は刑事記録入手に動いた。結果としてわれわれは、M君が伝えてくれた情報はすべて、正確でありかつ事件の背後には「正体不明の不気味な勢力」の意図が動いていると判断した。

M君は熾烈な集団暴行に遭いながら、その時点で1円の賠償も加害者からなされていなかった。そこでM君は、加害者5人を相手取り「損害賠償請求」の民事訴訟を起こす準備に取り掛かった。

その途中で野間易通がTwitter上で、M君の本名を明かしただけではなく、散々な誹謗中傷を行ったため、5人に対する「損害賠償請求」訴訟と相前後して、「ネット荒らし」こと野間易通を「名誉毀損による損害賠償」請求事件として提訴し、M君は野間に完勝した。判決が最初に確定したのは、M君が野間を訴えた裁判である。

 
なぜか朝日新聞にモテる野間易通(2020年6月17日付朝日新聞)

次いでM君が李信恵、伊藤大介、金良平、李普鉉、松本英一に対して損害賠償を請求した裁判の判決が大阪地裁で下された。判決では賠償金額80万円で、金良平と李普鉉、伊藤大介の責任を認定したが、そのほかの人物の共謀は認められなかった。

李信恵については、M君が李信恵から殴られた形態を、刑事記録や法廷証言などで「平手」か「手拳」かを変えている(しかし、M君は「殴られたこと」自体を一度も翻したことはない)ことに拘泥し李信恵の責任を認めなかった。大阪地裁におけるこの不可思議な判断を是非ご記憶いただきた。というのは、その後の裁判にも【「平手」か「手拳」か問題】が大きな影響を及ぼすからだ。

わずか80万円という不当に低い賠償額と、李信恵の責任を認めなかったなど判決内容に不満があったため、M君は大阪高裁に控訴。結果、賠償金額は110万円に増額されたが、なんと伊藤大介の賠償責任が取り消されてしまった(このことが昨年11月25日未明の同種傷害事件に繋がった。詳しくは2月発行の『暴力・暴言型社会運動の終焉』参照)。最高裁に上告するも大阪高裁の判決が確定した。

◆鹿砦社は対李信裁判では勝利した

「M君リンチ事件」を本通信や書籍として出版する中で、李信恵から鹿砦社並びに特別取材班への誹謗中傷がTwitterでしばしばなされるようになった。鹿砦社は大川弁護士を通じて「そのような書き込みを止めるように」警告書を送ったが、李信恵の誹謗中傷・罵詈雑言は止まらず過熱化の兆しがあった。

仕方なく鹿砦社は李信恵を相手取り、「名誉毀損による損害賠償」を求める訴訟を大阪地裁に提起し、大阪地裁では額は少額(10万円)なものの、李信恵の不法行為を認定し鹿砦社は全面勝利した。

松岡がガンつけつきまとったって!? 平気で嘘をつくな! 本人尋問の日のことだろうが、この時点では、松岡は李信恵に会ったこともなかった(2017年12月13日、李信恵のよるツイート)。

◆李信恵苦し紛れの提訴から大阪地裁でまさかの不当判決

この裁判の終盤になって、突然被告の李信恵側が「反訴したい」との意向を示したが、裁判所は反訴を認めず、李信恵は別の事件として鹿砦社を「名誉毀損だ」として損害賠償請求と出版物の発売停止、「デジタル鹿砦社通信」の記事削除などを求める裁判を大阪地裁に起こしてきた。これについて本年1月28日、大阪地裁は、なんと「賠償金165万円」と本通信記事の削除を命じる不当判決を下したのだ。

全くおかしな展開である。1時間殴る蹴るされたM君への賠償が110万円で、その事件を伝えた鹿砦社をTwitterで罵倒した李信恵への賠償命令が10万円。そして事件の詳細を伝えた鹿砦社への賠償命令が165万円!しかもM君への賠償責任で【「平手」か「手拳」か問題】で李信恵は責任を逃れ、鹿砦社への賠償の根拠としても【「平手」か「手拳」か問題】が重大視されているのだ。繰り返す。M君は一度も李信恵から「殴られた」ことを翻してはいない。1時間も顔の骨が折れるほどの凄絶な暴行を加えられて、「正確に被害の形態を覚えていろ」、というのが裁判所の言い分らしい。ちょっと待ってくれ。そんなことは非現実的じゃないか! 

【「平手」か「手拳」か問題】に裁判所は異常にこだわり、李信恵によるM君への殴打はなかった、と決めつけ、M君に対する李信恵の殴打を記載した書籍や本通信記事が「名誉毀損」にあたるという。そんなバカな話があるだろうか。松岡や特別取材班の怒りはここにあるのだ。

事実認定の誤認(間違い)に基づく不当な賠償と記事削除命令。こんな判決がまかり通れば、日本では一切の調査報道は賠償の対象とされてしまい、事実上不可能になろう。【「平手」か「手拳」か問題】で「報道の自由」を蹂躙した、大阪地裁の判決は明確に憲法21条違反だとわれわれは確信する。

李信恵の”迷言”の数々(『真実と暴力の隠蔽』巻頭グラビアより)。リンチの直前のワインバーからのツイートもある

一審で松岡は「陳述書」を4回も書き、「最大の被害者はM君だ」「加害者はM君に真摯に謝罪すべき」等々、と当たり前のことを繰り返し主張している。その意味は紹介したように、一連の裁判で【「平手」か「手拳」が問題】に裁判所が異常なまでこだわり、被害者であるM君にあたかも瑕疵があったかのような判断を繰り返すからだ。それにこだわるあまり、初歩的な誤判がある(ここでは触れない)。しかしながら大阪地裁は、松岡が渾身を込めて書いた4通の「陳述書」をきちんと読んだ気配はない。

複数の裁判が重なり、読者の皆さんが混同され、なかなかご理解いただくことが難しいだろうから、本稿ではこれまでの裁判の概要をご紹介した。

そして【「平手」か「手拳」か問題】を基礎に鹿砦社へ165万円の賠償と本通信記事の削除を命じた大阪地裁判決への“怒りの反撃”として大阪高裁へ控訴し、来る5月25日に初回期日を迎えるのだ。大阪地裁における不当判決は当然取り消されなければならない。さらなるご支援とご注目を!

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『暴力・暴言型社会運動の終焉』