【カウンター大学院生リンチ事件報道訴訟を検証する〈3〉】敗北における勝利! ── 私たちは “名誉ある撤退” の道を選び、上告はしないことにしました 鹿砦社代表 松岡利康

言うまでもなく、本件リンチ事件の最大の被害者はM君です。私たちの出版物等で「被害」を受けたと強弁し「名誉毀損」で訴えた李信恵ではありません。ここのところをごまかされてはいけません。万が一、李信恵が鹿砦社の出版物等で「被害」を受けたにしても、1時間もの凄絶なリンチによって半殺しの目に遭わされたM君の〈被害〉に比べれば大したことはないでしょう。昨年11月24日の本人尋問でもそうでしたが、下手な三文芝居はやめていただきたい。

 
大阪地裁/高裁

M君は、リンチ事件後1年余りもの間、村八分やセカンドリンチに晒され孤立していたところを私たちの元に助けを求めてきました。私たちは人道的な見地から、この青年の話を聞き、手を差し延べることにしました。以来5年半──今回の高裁判決に至ったのですが、M君を救済しようとして関わり始めたにもかかわらず、不条理にも賠償金を課されてしまいました。なんという皮肉でしょうか。

しかし、私は「負けて勝つ」、あるいは「敗北における勝利」と自己総括しています。8月10日が上告期限でした。バカはバカなりに胃に穴が空くほど悩み抜きましたが、大川伸郎/森野俊彦両弁護士はじめ衆智を汲み、本件訴訟は、ここでキリをつけ、あえて上告はせず、“名誉ある撤退”をすることにしました。最後は私一人で決めました。

1%の可能性がある限り徹底抗戦するのも一方途でしょうが、これまでの多くの訴訟経験から、最高裁は証拠調べをせず形式的な事務処理で不受理、あるいは棄却することが濃厚であること、またM君の訴訟で、李信恵が殴った事実と共謀が認められず、これらが最高裁で確定していること等の理由からです。

私たちの“名誉ある撤退”をご理解ください。

控訴審判決文(1ページ目の主文)

◆李信恵がリンチに連座し関与したことを認定した大阪高裁判決に従い、李信恵ら加害者5人、及び加害者らをバックで支えた「コリアNGOセンター」、神原元/上瀧浩子弁護士、そして隠蔽に加担したすべての者たちに、反差別運動を後退させないため公的な謝罪を求めます!

 
反省していない李信恵のツイート

本件訴訟控訴審判決(大阪高裁第2民事部)で最大の成果は、リンチ(集団暴行事件)が現に存在し、これに李信恵(1審原告、2審被控訴人)が連座し関与したことを裁判所が認定したことでしょう。これにより李信恵らが声高に喧伝してきた「でっち上げ」との表現こそが、まさに“でっち上げ”であることが司法によっても認定されました。李信恵側も上告しないようですので、この判断は確定です。

確かに高裁判決では、減額されたとはいえ賠償金が課されたことで鹿砦社(1審被告、2審控訴人)にとっては敗訴は敗訴でしょうが、原判決の大幅な「変更」を勝ち取ったことで、李信恵らにとっては勝訴は勝訴でも、“まさか”との思いが強い、いわば“苦い勝訴”といえるでしょう。M君が加害者5人を訴えた訴訟では、賠償金を勝ち取ったとはいえ、内容的には李信恵の関与や殴ったことも共謀も認められず、M君にとっては“苦い勝訴”でした。

当該訴訟(M君が李信恵ら加害者5人を訴えた民事訴訟)では、李信恵がM君を殴ったのが「平手」か「手拳」かが混乱しM君の供述が信用できないとされました。また共謀もなかったとされ、これが最高裁でも確定してしまいます。李信恵が鹿砦社を訴えた本件訴訟の一審大阪地裁判決でも「平手か手拳か問題」が持ち出されました。これらを突破するために心理学者の矢谷暢一郎、精神科医の野田正彰両先生の知見を持ってきましたが、にもかかわらず本件でも覆すことができませんでした。この2点で賠償金110万円! どう考えても高いと言わざるをえませんが、それでも“アリの一穴”を空けることができたことはよかったと思います。ダムも“アリの一穴”から、やがて決壊するといいます。

私の体験でも、16年前の「名誉毀損」出版弾圧事件では、弾圧に加担した主だった者らが続々と失脚していきました。当時、彼らは私よりも遙かに社会的に“格上”でしたが、裏で良からぬことに蠢いていたことで、続々と失脚していきました。「鹿砦社の祟りか松岡の呪いか」と揶揄される所以ですが、今回のリンチ事件で、加害者ら、彼らを支援し隠蔽に加担した者らには必ず「祟り」が訪れると予期しています。

M君訴訟一審判決後の「祝勝会」と称する狂態。リンチの後遺症で苦しむ者がいるのに、この人たちの人権感覚を疑う
第5弾本『真実と暴力の隠蔽』発行後の伊藤大介のFB。「諸悪の根源は鹿砦社の松岡だね」(ん?)
 
こんなツイートを発信する者がよく「反差別」だ「人権」だと言えるな

「反差別」とか「人権」とかを声高に叫びながら、みずからに正直ではなく不誠実で、リンチ被害者M君に対する村八分行為(「エル金は友達」祭り)やネットリンチをはじめとするセカンドリンチなど、「反差別」や「人権」を叫ぶ者がすべきことではありません。

李信恵らは反省などしていません。李信恵は、このコロナ禍にあっても涼しい顔をして講演行脚、リンチに連座した伊藤大介は、昨年11月24日の本人尋問の後に泥酔し深夜に極右活動家を呼び出し暴行に及び事後逮捕され現在保釈中で公判が進行しています(経過を明らかにせよ!)。今回の判決で、リンチの加害者、李信恵は出廷、伊藤大介は懲りもせず傍聴していましたが、M君は仕事で来れませんでした。もしM君が来ていたら、李、伊藤の存在自体がM君にとっては、凄絶なリンチを想起させフラッシュバックさせますので、PTSDの要因になりかねません。

また、加害者らの支援者、特に神原弁護士はリンチ事件を「でっち上げ」とし、こちらも日頃「人権派」としての立場を確立しつつも、リンチ被害者M君を追い詰めていったことを、神原弁護士はどのように考えるのでしょうか。神原先生、どう思っているんですか!? あなたこそ三百代言を体現しています。「人権派」弁護士として、人間として「でっちあげ」との言葉を今でも用いていることは、許されるものではありません。恥を知れ! と言いたいと思います。

私は、M君救済・支援、真相究明に携わりつつも、事あるごとに和解を勧めることを公言してきました。それは、このままでは、反差別運動、人権運動にとって決して良い影響は与えない、という確信からです。

大阪高裁判決に従い鹿砦社は賠償金プラス金利合わせ130万円近くを8月6日に支払いました。

一方、李信恵ら加害者も、血の通った人間の心があるのならば、まずは事件直後M君に渡し、その後一方的に反故にした「謝罪文」に立ち返り、李信恵をバックアップした「コリアNGOセンター」や、李信恵裁判支援会事務局長・岸政彦らと共に公的にM君に真摯に謝罪し、本件リンチ事件を反省し〈負〉の教訓とすべきです。私の言っていることは間違っていますか? もう沈黙も隠蔽も開き直りも許されません。

李信恵の”名(迷)言”の数々(『真実と暴力の隠蔽』巻頭グラビアより)

◆精神科医の立場から提出し問題の本質を衝いた、野田正彰先生の「鑑定書」が裁判官の心に響いた!

ところで、今回の控訴審では名高い精神科医・野田正彰先生が「鑑定書」を書いてくださいました。みなさん方にぜひお読みいただきたいと思いましたが、プライベートな箇所も多く、問題が問題でデリケートな要素がありますので、忸怩たる想いで公開を差し控えます。野田先生は、リンチを受けたM君の精神状態を分析し、「疑う余地のない『精神的外傷後ストレス障害』である。今後、この症状は長期にわたって持続するおそれがある。症状の改善は、加害者たちの誠実な謝罪と本人の自尊心の回復に影響されるだろう。」と結論づけています。野田先生も「加害者たちの誠実な謝罪」の必要性を説かれています。

私も学生時代、有田芳生議員がかつて所属し、神原/上瀧弁護士が支持される政党のゲバルト部隊(「ゲバ民」と言われていました)に襲撃・暴行され数日入院を余儀なくされました。さらに今や風前の灯の政党の幹事長が作ったミニセクトによって襲撃され鉄パイプで後頭部を打たれ重傷を負いました。こうした暴力の後遺症は、のちのち表われます。長い期間、偏頭痛が常態化しました。そのミニセクトはその後も私がいた寮を夜間に襲撃し寮生を針金で椅子に縛り付けリンチを加えたこともあり、すでに大阪に出て社会人になっていた私をずいぶん苦しめました(おそらく京都にいたならば発狂していたでしょう)。M君はかなり回復し、口では「後遺症はありません」などと強がりを言っていますが、表面上はそうであっても、暴力の後遺症は将来必ず表われます。

野田先生は、この「鑑定書」が具体的に判決文に反映されていないことに憤慨しておられましたが、矢谷暢一郎先生の「意見書」と共に、裁判官はきっと目を通しているものと思います。判決文の端々に両先生の知見が影響していることが窺えます。さらには寺澤有氏の「陳述書」も。そうでないと原判決の大幅な「変更」はなく、李信恵らが期待したように、あえなく「控訴棄却」となったでしょう。皆様方には感謝にたえません。(文中、一部除き敬称略)

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『暴力・暴言型社会運動の終焉』