弁護士への大量懲戒請求者たちを「差別主義者」扱いすることに賛同できない

 
「余命三年時事日記」は書籍化もされヒットしているらしい

「余命三年時事日記」というブログの呼びかけにより巻き起こったとされる弁護士大量懲戒請求騒動。懲戒請求を受けた弁護士たちが提訴などによる反撃の意向を次々に表明し、注目を集めている。

報道によると、騒動のきっかけは全国各地の弁護士会が朝鮮学校への補助金の交付を求める声明などを出したことだという。在日朝鮮人に差別的なことで知られる同ブログの運営者は、この声明を「犯罪行為」と受け止めて弁護士たちへの懲戒請求を呼びかけ、これに賛同した人たちが一斉に大量の懲戒請求を実行したという。

そのような経緯のため、大量の懲戒請求を行った者たちのことを「差別主義者」と決めつけ、批判する声が多いが、本当に彼らは「差別主義者」なのだろうか? 私はそんな疑問を抱き、問題のブログを調べてみたのだが、結論から言おう。私は彼らのことを「差別主義者」だとみなす意見に賛同できない。

◆あのブログの信者たちが案の定訴えていた「集団ストーカー被害」

私は今回の騒動をうけ、「余命三年時事日記」というブログに初めてアクセスしてみたが、ブログ上では、運営者のファンとみられる人々の投稿が多数紹介されていた。その内容を検証したところ、「案の定」と思える記述が散見された。それは、「集団ストーカー」被害を訴える記述である。

 
問題のブログ「余命三年時事日記」

集団ストーカーとは、統合失調症の患者が訴えることの多い妄想被害の1つとして知られる。訴える具体的な被害は、「24時間盗撮・盗聴されている」とか「尾行されている」とか「部屋に勝手に入られた」などで、犯人としては在日朝鮮人や在日中国人、創価学会、ユダヤ人、同和地区の人たちなどがよく挙げられる。

また、社会的な注目を集める大事件の犯人が統合失調症に陥っており、集団ストーカー被害を訴えているケースもよくあり、私が過去に取材した中では、当欄でお馴染みのマツダ工場暴走事件の引寺利明や淡路島5人刺殺事件の平野達彦らがそうだった。

では、「余命三年時事日記」には、具体的にどんな集団ストーカー被害関係の記述があったかというと、次の通り(以下、〈〉内は引用。行替えと句読点は読みやすくなるように改めたが、それ以外は原文ママ)。

〈反日勢力から組織的嫌がらせ(集団ストーカー・テクノロジー犯罪)を長年受けている日本人です。一年半前から嫌がらせが激化し、ブログを書くようになりました。その流れで、ネットに接する機会が増えました。ある被害者ブロガーさんの記事で、余命三年時事日記を知りました。余命三年時事日記には、今まで受けてきた嫌がらせや違和感の正体が全て書かれていました。主犯(黒幕)が日本人でなかったことに安堵し、ブログ記事に感動し、初めて希望を持つことができました。感謝の念に堪えません〉

〈初めて書き込みさせてもらいます。日本には反日勢力による組織的な殺人、集団ストーカーというものが存在します。これらの被害に遭うのは保守の人たちが多いようです。それらに対抗しうる余命主導の何かを立ち上げて欲しいです〉

〈集団ストーカーについて読者からの投稿を時折、ブログに載せて頂きましてありがとうございます。多くの日本人に、この犯罪を広く認知されるのが解決への第一歩だと思っています。そうすれば、在日帰化人達が声高に叫ぶ「共生」が絵空事だと、日本人に理解して頂けると考えております〉

〈投稿させてもらいます。余命三年時事日記をネットで知らない人のため、集団ストーカー・創価学会・朝鮮人あたりで検索に引っかかるように出来たら余命さんファンも増えるんでは増えるんでは^^;〉

文脈からすると、このブログのファンたちのうち、集団ストーカー被害を訴えている者たちは在日朝鮮人が集団ストーカーの犯人だと思い込んでいるようだ。彼らは今回、それゆえに大量の懲戒請求に走ったのだ。

◆精神疾患に冒された人たちである可能性を念頭に置いた対応を

この他、投稿者の中には「電磁波攻撃」や「テクノロジー犯罪」の被害を訴える者もいたが、それらも統合失調症の患者がよく訴える妄想被害だ。ということは、このブログの運営者や、大量の懲戒請求を行ったこのブログのファンに対処する際には、彼らが統合失調症を患っている可能性を考慮しないわけにはいかない。

今回の大量懲戒請求騒動に関するSNS上の意見を見ていると、懲戒請求を行った者たちのことを「ネトウヨ」とか「差別主義者」と呼んで批判したり、「頭の弱い人たち」とバカにしたりする人が目立つ。マスコミ報道も総じて、そのような論調だ。

それでは、何の解決にもならないどころか、病識の無い彼らを頑なにさせ、むしろ事態を悪化させかねないのではないかと私は懸念する。彼らが「差別主義者」ではなく、精神疾患に冒された人たちである可能性を念頭に置き、慎重な対応をすべきだ。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)