安芸高田市長の石丸伸二さん。突然、再選出馬をせずに、東京都知事選挙に立候補する、と表明しました。東京中心の日本を地方分散で変えるとのこと。筆者もびっくりしましたが、広島県内では驚きの声が広がっています。


◎[参考動画]広島 安芸高田市の石丸市長 都知事選へ出馬を表明「東京を変えて日本を変える」(TOKYO MX news 2024/05/17)

 

安芸高田市ホームページ

安芸高田市は、広島県北部に位置します。筆者の住む広島市からは、公共交通では芸備線か国道54号線経由のバスが便利です。筆者も、この安芸高田市内の病院兼高齢者施設で仕事を3年間させていただいた元在勤者です。元々は高田郡だったのですが、平成の大合併で安芸高田市となりました。戦国大名・毛利元就の本拠地・郡山城は旧吉田町内にあります。広島市中心部からはバスが便利です。また、Jリーグのサンフレッチェ広島の本拠地があるなど、スポーツの街としても知られています。

さて、市長の石丸伸二さんは今年、41歳。安佐南区にある県立祇園北高校を経て京都大学をご卒業後、東京三菱UFJ銀行へ。2020年、河井案里さんが当選無効になった公選法違反事件に連座して当時の安芸高田市長が引責辞任。それに伴い行われた安芸高田市長選挙で、当選が確実視されていた元副市長を破って初当選されました。

地元生まれとはいえ、政治経験が全くない石丸さん。市議会で居眠りをしている議員に「恥を知れ」などと発言をしたことで、一躍有名になりました。議会との対立を面白おかしく市の公式YouTubeで発信。自治体のサイトとしては全国一のアクセスを誇るようになりました。

しかし、議会との対立から、全国公募で選んだ副市長の人事がご破算になる、また、目玉施策の一つの無印良品の道の駅への誘致も議会の反対でご破算になる、という事態が起きています。

ネット上には石丸さんのファンの方も根強くおられます。そうした方からすれば「頭の固いおじいさん、おばあさんの議員が悪い」ということになります。

ただ、地方自治の実際を知る筆者からすれば、「もうちょっと、政策実現のために、反対派を切り崩すなどなぜしなかったのか?結果として面白おかしくはなっているが、どうなのか?」という疑問があります。

相手を意固地にすれば、ネット動画としては面白いのですが、妥協もなければ前には進みません。

また、そもそも、市長就任早々、いきなり、全国から副市長を公募、というのもいかがなものか? 確かに、広島県北部の権威主義的な政治風土は筆者も良く存じています。しかし、優秀な若手・中堅も庁内にはいます。そういう人を、登用した方がよかったのではないか?

石丸さんは政治経験がないからこそ、地元の優秀な人を大事にすべきではなかったか?

確かに、副市長人事を巡る対立も、面白おかしい動画にはなったが、それでよかったのか?疑問は尽きません。

◆ご出身高校の近所では散々な評価も、遠い県沿岸部では高評価?

広島市安佐南区。石丸さんが高校時代を過ごした場所です。その近所の方に5月17日、筆者は取材しました。

「彼は何考えとるのじゃ。安芸高田市もまとめられないものが東京へ行くなんて」。
「政治をおもちゃにしている」
「東京へ行ったら若い者が味方してくれると思い込んだのだろうが」。
「石丸氏はアメリカかぶれすぎる。地元の若い者をまず大事にすべきだった。」

などなど。もちろん、判断されるのは都民ですけど、安芸高田市以外ではあるが同じ広島3区、それもご自身の出身高校がある近くでの石丸さんへの風当たりは非常に強いです。

一方、安芸高田市から距離が離れている沿岸部の呉市では、広島瀬戸内新聞のA記者によると、石丸さんの評判はいいようです。やはり、距離が遠くなって、石丸さんの人となりが知られていない地区で評判がよくなっている状況があります。

◆小池VS石丸 グローバリスト対決では現職有利では?

いきなり広島の小さな自治体の首長から日本最大の自治体の長に挑む。石丸さんのその胆力には敬意を表したい。しかし、残念ながら、苦戦は免れまい、と筆者は感じます。

なぜか? 小池知事と石丸さんの違いはわかりにくいからです。

どちらも、いわばグローバリスト、アメリカンポストモダニストです。アメリカかぶれなのです。それなら現職の小池さんが有利になってしまうでしょう。

◆湯崎英彦知事の小型版                   

石丸さんに対しては、広島県知事待望論もネット上にはあります。しかしながら、広島県政の主要課題について、湯崎知事と石丸さんの違いはほとんどみられません。ズバリ申し上げれば、外部の企業、外部のお気に入り人材重視という点では違いが見当たらないのです。両者ともアメリカかぶれのポストモダニスト。違いがないなら、現職の湯崎さんが圧倒的に有利です。

湯崎知事は、平川教育長を登用し、平川氏は官製談合事件やお友達の赤木かん子さん優遇事件などを起こしています。また、女性副知事には、ご自身の高校・大学・経産省の後輩を充てています。県病院廃止・巨大病院建設を進める健康福祉局長には中央官僚の若手女性を充てています。他方、石丸さんも、副市長人事でご自分が全国公募で選んだお気に入りの方を、議会の反発を買って失敗しています。

そして、広島県の場合は、安芸高田市という狭い範囲よりはそれなりに優秀な人材や企業が県内に揃っています。安芸高田市政以上に県政では湯崎・石丸的な外部優遇より、地元で地道に頑張っている中堅・若手とか、企業を応援した方が良いのです。

また、湯崎知事が強行する三原本郷産廃処分場稼働継続や、県病院潰し・1300-1400億円の巨大病院、平川前教育長を庇う姿勢などにきちんと石丸さんが湯崎知事との違いを出せるかと言えば疑問です。

もちろん、石丸さんがガチガチに硬直化しきった地域の政治文化に突撃して、かき回したということは言えると思うし、歴史の一コマではあったと思う。ただ、石丸さんに長居されたらたまったものではありません。地味に地元で頑張っている中堅や若手、企業の力を活かせるようなリーダーが必要だと思いますし、筆者が広島県知事に就任すればそうします。

筆者が思うには、ここ20年の日本の悲劇は、森元総理的なコチコチの老害と、小泉・竹中・湯崎・小池・石丸的なグローバリストの挟み撃ちで、地域で地道に頑張っている中堅、若手や企業が割を食ってきたことだとも思います。  

◆勝ち目のない東京都知事選挙より県内・三原市長選挙に立候補はいかがか ── 百歩譲った筆者の提言

ここまで、ネガティブなことを石丸伸二さんに申し上げてきました。石丸さんは支持できない。しかし、批判ばかりで対案がないと言われたくもないので、百歩譲って、以下のことを石丸さんに進言します。

何か実績を上げるおつもりなら今夏、実施される県内・三原市長選挙に立候補されたらどうか?この三原市も4年前に、当時の天満市長が河井事件に連座して辞任しました。新たに岡田現市長が選ばれました。この三原市は、水源地のど真ん中に湯崎英彦知事が許可した三原本郷産廃処分場があり、汚染水を垂れ流しています。そこで、石丸さんが立候補し、「三原本郷産廃処分場即時停止」を訴えれば、当選確実ではないでしょうか?

当選したらもちろん、極めて厳しく産廃を規制する条例を作る。そして、同処分場を廃止に追い込むのです。極論すれば、とりあえず、産廃処分場を止めてくれるなら、新自由主義は議会や市民世論による修正で対応する。それくらい、三原の産廃は酷い問題なのだから。石丸さんは、同じ広島県内である三原でもそれなりに、知名度はあるだろうから。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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