G7広島サミットから1年が経過した2024年5月19日、広島県の湯崎英彦知事が原爆資料館北側に建設していたG7広島サミット記念コーナーが完成しました。

しかし、この日、サミットに参加し、「核のない世界を目指す」と原爆資料館で記帳したバイデン大統領が14日に三度目の未臨界核実験を強行していたことが発覚。原爆資料館の「平和監視時計」が記念コーナー会館とほぼ同時刻にリセットされてしまいました(撮影は核実験実施後8日後の早朝)。

[左]原爆資料館北側にできたG7広島サミット記念コーナー/[右]原爆資料館の「平和監視時計」(撮影は核実験実施後8日後の早朝)

世界で最初に戦争で被爆した広島は、いまや、世界で最初で最後に核兵器を使った上に、ろくに反省も謝罪もしない米国に完全に舐められています。

結論から申し上げます。広島市長と広島県知事、そして爆心地選出の代議士としての岸田総理は核実験に抗議するとともに、世界で最初で最後に核兵器を使った米国に謝罪と反省を要求すべきです。

松井市長や湯崎知事は、平和宣言やあいさつでそのことに言及すべきです。

◆米国に譲歩を重ねた上にこけにされた広島

そもそも、G7広島サミット自体が、広島が大幅に譲歩したものと言って良いのではないでしょうか?同サミットで採択された「広島ビジョン」自体が、核兵器禁止条約はおろか、核兵器による先制攻撃禁止にすら言及せず、ロシアのによる核威嚇は批判しつつも、米国による核攻撃は批判すらせず、それどころか、米国の核保有を防衛目的と正当化するしろものでした。

それでも核兵器のない世界につながれば、ということで、湯崎英彦知事も松井市長ももろ手を挙げてサミットに期待してしまいました。そして、広島市の平和教材から「はだしのゲン」や「第五福竜丸」を削除するなど米国に忖度する動きも強めました。

また、広島市はサミット後には米国政府からの要求を受け入れ、平和公園とパールハーバーの姉妹協定を締結しました。繰り返しますが、原爆投下=世界で最初の核兵器使用=の加害者で今まで反省も謝罪もない米国政府と広島市が組む、と言うこと自体、屈辱的な譲歩ではないでしょうか?

また、サミット直前の広島県議選2023では、本社社主・さとうしゅういち以外の県議候補は自民から共産まで、ほぼ全員がマスコミや市民団体の候補アンケートに対して「G7広島サミットに期待する」「G7広島サミット誘致を評価する」などと回答してしまいました。さとうしゅういちは、もちろん「期待しない」「評価しない」と回答しました。

そもそも、G7サミット自体が米英仏独伊といった旧白人帝国主義国ともいえる国々で構成されています。そうした会議に何を期待するのでしょうか?しかし、藁をもつかむ思いで期待してしまった方々も多い。だが、残念ながら、広島は米国に譲歩に譲歩を重ねた上、いわば、コケにされたのです。

◆最初で最後に「核」を使った米国の謝罪・反省無くして露中朝批判に説得力なし

2024年現在、世界で最初で最後に核兵器を使った国は米国です。最初に広島、最後に長崎です。

これは動かせない歴史的事実です。しかし、その米国は核兵器使用について反省も謝罪もしていません。その米国を広島市は平和式典に呼んでいます。一方で、広島市の松井市長はロシアが核で威嚇したことを理由に、2022年から三年連続で平和式典から排除しています。この対応は説明がつくのでしょうか? あるいは、朝鮮や中国の軍拡への批判がどれだけ、説得力を持つでしょうか?

米国内や日本国内ならともかく、グローバルサウス諸国の人たちを説得できるように思えません。

また、日本国政府が原爆への謝罪や反省を要求してこなかったことは米国政府にとり「成功体験」になってしまったのではないでしょうか?

そのこと背景に、米国政府は例えばイラク戦争などの侵略戦争を行っているのではないか?

あるいは、イスラエルによるパレスチナ虐殺を全面的に応援するなどしているのではないでしょうか?

ちなみに大日本帝国政府は1945年8月10日に米国政府に対して原爆投下について国際法違反だと抗議しています。しかし、日本国になってからはそういうことはまったくしていません。司法で言えば地裁レベルでNHK朝ドラ「虎に翼」のモデルで有名になった三淵嘉子・東京地裁判事(当時)が1963年に「原爆投下は国際法違反」という判決を出してはいます。しかし、それが政府の政策を変えることにはなっていません。

◆“We American never repeat wrongs “言わせずに8.6に米国政府呼ぶ意味なし

もちろん、今まで、広島市の平和行政、あるいは一部の例外は除いて平和運動団体などの先輩方も被爆者の「自分たちと同じ思いをする人を二度と出したくない」という思いを原点に米国政府への謝罪や反省はぐっとこらえて来られました。それはそれで当時の状況から「あり」だったと思いますし、被爆者でもない筆者があれこれ申し上げる筋合いのものでもありません。

しかし、最近の米国政府の増長ぶりは目に余ります。結果論ですが、長年にわたり、米国政府に対して謝罪や反省要求が弱かったことが響いていますし、松井市長や湯崎知事のすり寄りがそれに拍車をかけてしまったのではないでしょうか?

“We American never repeat wrongs“
(我々米国人はあやまちは繰り返しません)

8月6日にどうせ米国を招くなら、これくらいのことを原爆慰霊碑の前で米国政府の代表に8月6日に言わせようではありませんか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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